ひびき高等学園(元戸畑中央高校) (569レス)
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113: 2017/02/21(火)05:52 ID:BY7DAcLx0(6/12) AAS


槍だった。血だった。道だった。旗だった。鬼だった。力だった。目だった。鼻だった。耳だった。口だった。腕だった。足だった。人だった。人間ではなかった。
昔、人間ではあった。けれど。人間でなくなった。しかし人ではあったのだ。こころが人ではなかった。英雄と呼ばれた。
なにも嬉しくなかった。悲しかった。俺は罪だった。英雄などではない。存在が罪だった。俺が罪だと思っていた。
俺は咎められた。俺に咎められた。俺自身が咎めたのだ。戦争が終わった。金を、貰った。大金だった。欲しくなかった。
俺の目の前には孤児院があった。全部あげて俺は逃げた。走った。走った。走った。
足下は澄んだ湖だった。俺は飛び込んだ。死ねなかった。水が目に入る。水が鼻に入る。水が耳に入る。水が口に入る。全て流されてしまうような――
揺らいだ水泡が瞳に映る。水の中で、何かに囁いた。俺はどうすればいい。答えはなかった。黒い髪から、紅が抜けてゆく。髪はとたんに、ぶわりと。白銀を水中に振り撒いたよう。改めて思った。
俺は罪だった。人を殺した。もう無双の強さもいらなかった。浄化を求めていた。あの金はどうなったのだろう。
誰かが、受け取ってくれたのだろうか。俺は罪を償えただろうか。いや。そんなはずがない。俺は何のために生きているのだ。いいや、そもそも生きているのだろうか。
分からない。二択だ。たったの二択だ。簡単な事だろう。だが、分からない。考えろ。どうすれば、生きていける、のか。どうすれば、ここから前へ進めるのか。
いつ、この苦しみから解放されるのか。気がつけば。自分のことだけを考えていた。
空気を吐き出す。浮き上がる。死ぬよりは、生きよう。生きればみつかるかもしれない。みつかる、か。どうなのだろうな。だがこれ以上、人は殺さない。なら護ろう。護って、生きていこう。
護り、生きる。生きる。生きる?



老人は眉根を寄せた。何かを感じ取った。それは――
西からの風。風。風?



気付くと、俺は見知らぬ街にいた。ここはどこだ? 俺は何をしている? 後ろの男は、何者だ? 目の前には、母。母がいる? 泣いていた。嘆いていた。
思考が、白くなる。それと同時に、俺は思い出す。後ろに、男がいるんだった。後ろを振り向いた。お前はだ――。
誰だ? 誰。誰?


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