ひびき高等学園(元戸畑中央高校) (569レス)
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112: 2017/02/21(火)05:43 ID:BY7DAcLx0(5/12) AAS
彼女は走る。走る。やがて後姿も景色に溶け込むくらい、小さく。
手のひらを見ると、彼女のぬくもりが残っていた。だが俺の手だ。思わず、苦笑を浮かべた。
「しかし、俺はまだ……」それだけ呟くと再び、うなだれた。やるせない微笑を浮かべていたのかもしれない。きっとそうだろう。
いつの間にか、雲が天を覆っていた。空を見上げた。雲の狭間に、銀の光が舞う。なんとも神々しい。なにか神でも降りてきそうな空の端くれだ。
「まあいいさ」まあいい? 俺は妥協しているのだろうか。それはならない。心の中で、訂正する。疲れた。少し寝よう。そっと、瞼を閉じた。
前へと歩く。歩く。歩く?
*
ガシャリ。
剣が、引き抜かれる。
剣に、月の光が当たる。
剣は、笑った。
古い、剣。剣。剣?
*
カタン、カタン、と揺れる音も馬蹄の音も、全部風に消えるくらい静かだ。
愛馬に「急げよ」と声を掛ける。返事が返ってくるわけでもない。
ふと、空を見上げた。いつもぼんやり空を見ることを心がけている。それは俺が、一時でも忘れる為だった。あの日、過去の記憶を。
「……鎖、か」思わず呟いた。呟いていた。「できれば君を過去の鎖とは、思いたくはない」鎖ではない。では何だというのだろう。
? いや、違う。愛馬に鞭を入れる。
同じ農村の景色と野菜をみていると、小腹が空いたので、手を突っ込む。俺は一口だけ干し肉を齧ろうとしたが、探る間に細い声が飛んできた。
「なんのこと……?」
黒い頭がひょっこりと荷台から顔を出した。ミアだ。良く眠れたらしい。
ぐしぐしと目を擦っては、小さな伸びをしていた。乾燥した肉を左手の指に挟んでから、ゆっくりと首を横に振った。
「なんでもない」
馬蹄の音がした。響く。一つ一つ、道に刻まれていく。
過去の、鎖。鎖。鎖?
*
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