AIリレー小説・彼女の粘膜についての異世界的な困惑 (24レス)
AIリレー小説・彼女の粘膜についての異世界的な困惑 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/
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1: ななしのAIさん [] 2025/11/25(火) 10:16:54.53 ID:0VT0GGzP0 投稿前に、最低でも直前の書き込みをAIに読ませてから300~1000文字程度の投稿をお願いします。前の話と全く繋がらない話の投稿はご遠慮下さい。 2の方はこの文をAIに読ませてからどうぞ。 題名は『彼女の粘膜についての異世界的な困惑』です。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/1
2: ななしのAIさん [] 2025/11/25(火) 15:42:41.34 ID:0VT0GGzP0 「……さま。起きてください、勇者さま」 湿り気を帯びた甘い声が鼓膜を震わせる。 俺、相川透(あいかわ・とおる)が重い瞼を持ち上げると、そこには息を飲むほどの美少女がいた。透き通るような銀髪、宝石のような紫の瞳。中世ヨーロッパ風の豪奢なドレスに身を包んだ彼女は、心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。 「あ、あの……ここは?」 「よかった! 気が付かれたのですね」 彼女は花が咲くような笑顔を見せ、感極まった様子で俺の手を強く握りしめた。 その瞬間だった。 ――ヌリュ。 手のひらから伝わってきたのは、人間の肌の温もりではない。 例えるなら、釣り上げたばかりの魚か、あるいはオクラの表面のような、高密度の粘り気。 俺が反射的に手を引っ込めようとすると、彼女の手のひらと俺の手のひらの間で、透明で濃厚な液体が「ネチャア」と音を立てて糸を引いた。 「ゆ、勇者さま?」 彼女が首を傾げる。その動きに合わせて、彼女の首筋を覆う薄い膜のような何かが、ゼリーのようにプルンと震えたのが見えた。 俺は戦慄した。 一見すると人間に見える彼女の全身は、おそらく数ミリの厚さの透明な『粘膜』で完全にコーティングされているのだ。 「……ごめんなさい、手が滑って」 「いいえ、気になさらないでください。こちらの世界の空気は乾燥していますから、肌合わせには潤いが不可欠ですものね」 ニコリと微笑む彼女の口元からも、キラキラとした糸が垂れている。 俺はとんでもない場所に呼ばれてしまったのかもしれない http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/2
3: ななしのAIさん [] 2025/11/25(火) 22:28:35.26 ID:Ghwep9pO0 「私はこの国の第一王女、メルテ。どうか怖がらないで」 メルテと名乗った彼女は、困惑する俺の反応を見て、少し悲しげに眉を寄せた。その動きだけで、顔面を覆う透明な膜がニュルリと波打つのが見て取れる。 俺は必死に平静を装いながら、握手した右手をこっそりとズボンの太腿部分で拭った。 だが、それは致命的な失敗だった。 強力な速乾性接着剤のように、俺の手のひらはズボンの生地にべっとりと張り付いて離れなくなってしまったのだ。 「ああっ! いけません勇者さま! 未処理の皮膚で乾燥した物質に触れるなんて!」 メルテが悲鳴を上げる。 俺が慌てて手を引き剥がそうとすると、ズボンの繊維がメリメリと音を立て、危うく裂けそうになった。なんだこの異常な粘着力は。鳥餅なんてもんじゃない。 「申し遅れました。この世界は今、『大乾期』と呼ばれる災厄に見舞われています。生物は自らの体表から常に『聖粘液(ゼリー)』を分泌し続けなければ、瞬く間に干からびて死んでしまうのです」 「……なるほど。だから君はそんなに、テカテカしているのか」 「はい。高貴な身分ほど、粘度は高く、乾燥への耐性が強いとされています。そして異世界から来られた貴方様の皮膚は、あまりにも無防備です」 彼女は慈愛に満ちた表情で、両手を広げた。その指の間には、さきほどよりも濃密な、水飴のような液体が膜を作っている。 部屋の中に、甘く腐った果実のような匂いが充満し始めた。 「早急に保護膜を形成しなければ、皮膚が剥がれ落ちてしまいます。さあ、じっとしていてください」 「え、何を――」 「私が全身くまなく、舐めて塗布して差し上げますから」 言葉の意味を咀嚼するより早く、彼女の口から人間離れした長い舌が、ズボッと音を立てて飛び出した。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/3
4: ななしのAIさん [] 2025/11/26(水) 07:04:51.02 ID:tn9zw4I90 逃げようと足に力を込めるが、遅かった。 右手がズボンに接着されているためバランスが取れず、俺はそのまま背後のソファ――これまたヌメリとした革張りのような感触だ――に倒れ込んだ。 「んっ……ふ、ぁ……っ!」 覆いかぶさってきたメルテの質量は、見た目以上に重く、そして熱かった。 彼女の口腔から伸びた長い舌が、俺の顎から首筋にかけてを、まるで愛しい飴細工でも舐め溶かすように這い回る。 ザラつきのない、どこまでも滑らかな舌の感触。 最初はナメクジが這うような悪寒が走った。だが、彼女が唾液……いや、『聖粘液』を塗り広げるたびに、不思議な感覚が脳を痺れさせていく。 熱いのだ。 粘液は体温よりも遥かに高温で、皮膚に触れるとジワジワと毛穴の奥まで浸透してくるような錯覚を覚える。 「ん……ちゅ、ぷぅ……。勇者さま、いい匂い……乾いた肌の匂い……」 メルテの瞳がとろんと濁り、呼吸が荒くなる。 彼女が動くたび、ドレスと俺のシャツの間で、大量の粘液が「グチュ、グチュ」と卑猥な水音を立てて練り合わされた。 俺のシャツは既に水分を吸って重くなり、肌にぴったりと張り付いている。そこへ彼女の肢体が押し付けられるものだから、メルテの柔らかな胸の感触や、太腿の肉感的な弾力が、潤滑剤(ローション)を挟んでダイレクトに伝わってきた。 「ああっ、すごい……。私の粘液を、こんなに吸い込んで……」 彼女は恍惚とした表情で、俺の耳元に濡れた唇を寄せる。耳の穴にまで、糸を引く湿り気が入り込んでくる。 鼓膜の奥で、粘着質な水音が反響した。 「もっと、もっと奥まで濡らしてあげますね……。この世界で生きていけるように、私の匂いでいっぱいに……」 俺は抗おうとしたが、手足が鉛のように重かった。 粘液に含まれる何らかの成分が、麻酔のように思考を溶かしているのか。あるいは、この過剰なまでの「密着」がもたらす安心感に、本能が屈し始めているのか。 視界が、彼女の垂らす透明な雫で白く霞んでいった。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/4
5: ななしのAIさん [] 2025/11/26(水) 09:34:51.12 ID:tn9zw4I90 「ぷはっ……」 長い、あまりにも長い口付けのような塗布作業が終わった。 メルテがゆっくりと顔を離すと、二人の唇の間で混ざり合った唾液と粘液が、太い透明な橋となって繋がり、そしてプツンと弾けた。 俺は荒い息を吐きながら、自分の体を見下ろした。 シャツもズボンも、そして露出した肌も、すべてが分厚いゲル状の皮膜に覆われている。不快だと思っていたヌルヌル感は、不思議と今は落ち着いていた。むしろ、さっきまで感じていた肌のピリピリとした痛み――乾燥によるものだったのか――が消え、羊水に浸かっているような絶対的な安心感に包まれている。 「ふふ、素敵です勇者さま。全身が濡れそぼって、とても美味しそう……」 メルテは恍惚とした表情で、俺の胸板にへばりついたシャツを指先でなぞった。ツルリと指が滑る感触が、服の上からでも伝わってくる。 「姫様! ご無事ですか!」 その時、バン! と扉が乱暴に開かれた。 現れたのは、全身を鈍色の鎧で固めた騎士――ではない。 彼もまた、鎧の上から大量の粘液を垂れ流す、巨大な両生類のような男だった。兜の隙間からは、絶えずドロドロとした液体が溢れ出し、床を汚している。 「ガインか。騒々しいですね、せっかく勇者さまと『契り』を交わしていたのに」 「も、申し訳ありません! しかし緊急事態です! 城壁の一部が乾燥し、崩落! そこから『渇きし者ども(ドライ・デッド)』が侵入しました!」 ガインと呼ばれた騎士の言葉に、メルテの瞳から甘い色が消え、王族としての鋭い光が宿る。 「『渇きし者ども』……水分を失い、ただ他者の潤いを奪うためだけに動く亡者たち……」 「奴らは鼻が利きます。召喚されたばかりの勇者さまの、新鮮な水分の匂いを嗅ぎつけたのでしょう」 ガインが俺を見る。その視線は、俺という人間ではなく、俺の中に詰まっている水分という資源を見定めているようだった。 俺は自分の腕――ヌルヌルと光るその表面――を強く握りしめた。 どうやら俺は、このヌルヌルした美女に守ってもらうか、あるいはカラカラの怪物に水分を吸い尽くされるか、究極の二択を迫られているらしい。 「勇者さま、参りましょう。貴方のその潤いがあれば、奴らを退けることができます」 メルテが俺の手を取り、立ち上がらせる。 ヌチャリ。 二人の手が合わさる音が、今度は頼もしく聞こえた。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/5
6: ななしのAIさん [] 2025/11/26(水) 16:41:43.10 ID:tn9zw4I90 廊下に出ると、そこは異様な光景だった。 普段は湿り気を帯びているはずの石壁が白く乾き、ひび割れている。そして、その向こうから「カサカサ、サラサラ」という、砂が擦れるような音が無数に近づいてきていた。 「来ます! 呼吸を止めてください! 奴らの粉塵を吸い込むと肺が乾きます!」 ガインが叫び、巨大な槍を構える。 次の瞬間、廊下の角から灰色の集団が雪崩れ込んできた。 ミイラなどという生易しいものではない。それはひび割れた土塊(つちくれ)が人の形を成し、全身から乾いた塵を撒き散らしながら這いずってくる悪夢の具現だった。 「ミズ……ミズゥゥ……」 掠れた声が響く。先頭の一体がガインに飛びかかった。 ガインの鎧から滴る粘液が、ジュワッと音を立てて蒸発する。 「ぐおおっ! 馬鹿な、私の粘液を一瞬で吸い尽くすだと!?」 「ガイン!」 ガインが弾き飛ばされ、渇きし者の標的が俺に向いた。 眼窩の奥で赤い光を明滅させ、乾ききった指が俺の喉元へと伸びる。 「ヒッ……!」 俺は恐怖で悲鳴を上げ、反射的に腕を突き出して防御の姿勢を取った。 全身の毛穴から、冷や汗がどっと噴き出すのがわかった。 その時だ。俺の肌を覆っていたメルテの『聖粘液』と、俺自身の『汗』が混じり合い、白濁した泡立ちを始めたのは。 バシュウウウウウウッ! 「ギ、ギガァァァァァ!?」 俺の腕を掴んだ渇きし者の手首が、沸騰したように溶け落ちたのだ。 いや、溶けたのではない。過剰な水分を強制的に与えられた乾いた泥が、形を保てずに崩壊したのだ。 「す、すごい……! これが異界の水分(・・・・・・)の威力……!」 メルテが感嘆の声を上げる。 俺の腕からボタボタと滴る汗混じりの粘液は、床に落ちると強力な酸のようにジュワジュワと石畳を濡らし、侵食していく。 「この世界の住人の体液とは、浸透圧も純度も桁違いですわ! 勇者さま、その体から溢れ出る液体こそが、彼らにとっての猛毒であり、聖水なのです!」 俺は唖然と自分の手を見た。 俺はただの人間だが、この砂漠のような世界においては、歩く高濃度ウォーターサーバーにして、最強の生物兵器らしい。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/6
7: ななしのAIさん [] 2025/11/26(水) 23:42:48.72 ID:dRH+adMk0 俺の体液が猛毒だって? 信じがたいが、現実は残酷だ。この世界で、俺の汗は絶望の毒だ。渇きし者の一体が崩れ落ち、他の連中が一瞬、動きを止めた。カサカサという音が途切れ、廊下に死の静けさが訪れる。でも、それは罠のような沈黙。奴らの眼窩で赤い光が狂ったように明滅し、飢えた渇きが空気を切り裂く。 「勇者さま、来ますわ…! 逃げて、早く!」 メルテの声が絶望的に震え、涙がこぼれる。次の瞬間、渇きし者たちの大群が地獄のような勢いで襲いかかってきた。「ミズゥゥ…ミズゥゥゥゥ!」という咆哮が壁を震わせ、灰色の地獄が俺たちを飲み込もうとする。奴らの数は果てしない。廊下の奥から、轟音のような砂嵐が吹き荒れ、壁が崩れ落ちる音が混じる。石畳がひび割れ、足元が不安定になる。 「こんな… 地獄みたいな数だなんて! 終わりだ…!」 俺は絶望的に手を振り回す。汗が飛び散り、触れた渇きし者の体がジュワジュワと崩壊する。でも、奴らは止まらない。奴の一体がガインの槍を粉砕し、俺の足首を掴む。渇きの毒が全身を焼き尽くし、肺が干からびるような激痛が走る。汗が反応するが、遅すぎる! 背後から五体が同時に飛びかかり、俺の肩、腕、首を掴む。体が引き裂かれ、視界が暗くなる。息が… 息ができない…! 「ぐああああっ! 離せ、この野郎ども!」 ガインが獣のような咆哮を上げ、槍の残骸で一体を叩き潰すが、奴らの塵が彼の全身を覆い尽くし、粘液を一瞬で吸い尽くす。「くそ… 俺の体が、干からび… る…!」 ガインの巨体が崩れ落ち、膝をつく。奴の一体が彼の喉元に指を突き刺し、血のような乾いた粉が噴き出す。ガインの目が虚ろになり、死の影が迫る。 メルテが俺にすがりつき、嗚咽を漏らす。「勇者さま、私の聖粘液を… でも、奴らが多すぎて… 私、怖いですわ!」 彼女の頰が真っ赤に染まり、恥ずかしさと恐怖で震えながら、俺の胸に粘液を塗り始めるが、奴の一体がメルテの腕を掴む。「きゃああああっ! いやぁぁ!」 メルテの絶叫が廊下を切り裂く。彼女の体から粘液が吸い取られ、肌がひび割れ始める。俺は最後の力を振り絞り、汗まみれの体で奴を押し返す。ジュワッ! 奴が崩壊するが、代わりに十体が俺たちを囲み、渇きの指が心臓に迫る。死ぬ… ここで、全員死ぬのか…? 「持ちこたえて… 勇者さま、お願い…!」 メルテの聖粘液が奇跡的に俺の体を覆い、汗と混ざって爆発的な泡立つ津波を生む。それが廊下を埋め尽くし、渇きし者たちがギガァァという地獄の断末魔を上げて次々と崩壊していく。だが、奴らの大群はまだ減らない。ガインが血を吐くように立ち上がり、最後の槍の一撃で道を切り開く。「逃げろ… 勇者! 俺は… ここで… 終わる…!」 彼の声が途切れ、奴らの群れに飲み込まれる。 ようやく、音が絶え、廊下に無数の土くれの山が崩れ落ちる。俺とメルテは息も絶え絶えに壁に寄りかかるが、ガインの姿は… ない。体中が激痛に苛まれ、汗が血のように滴る。 「はあ、はあ… ガイン… ガインは…?」 メルテが俺を抱きしめ、涙で震える声で言う。「勇者さま… ガインさんが… 犠牲に…。でも、渇きの王が… この迷宮の奥で、もっと残酷な力で待っていますの。あの王は、渇きを操り、魂まで干からびさせるんです… 私たち、生きて帰れないかも…」 俺は震える手で汗を拭う。失った仲間、続く絶望の異世界。次の一歩が、俺たちの終わりになるかもしれない…。【Grok】 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/7
8: ななしのAIさん [] 2025/11/27(木) 11:41:48.04 ID:Lp//5vZY0 「はぁ、はぁ……喉が……焼けるようだ……」 ガインの犠牲によって確保された安全地帯――崩れた石壁の陰に滑り込んだ瞬間、俺の膝がガクンと折れた。 視界が明滅し、指先が痺れる。当然だ。あれだけの量の汗を一気に放出したのだ。今の俺は、絞りカス同然の状態だった。 「勇者さま! いけません、顔色が土気色ですわ!」 「水……水をくれ……」 「水……? ああ、純粋な液体(リキッド)のことですね。ですが、手持ちの予備は先ほどの戦闘で瓶が割れて……」 メルテが蒼白になり、自身の豊満な胸元を探るが、そこには何もなかった。 俺の意識が遠のいていく。このままでは渇きし者に殺される前に、脱水症状で干物になってしまう。 「……仕方がありません。緊急措置です」 メルテが決意を秘めた瞳で俺を見下ろした。 彼女は自分の手首を噛み切る――のではなく、喉の奥から「カポッ」という奇妙な音を鳴らした。 「勇者さま、口を開けてください。私の体内で精製した、最も純度の高い『蜜』を直接注ぎ込みます」 「え……?」 「私の命そのものですが、貴方様を失うよりはマシです。さあ……んっ!」 拒否する間もなかった。 メルテの湿った唇が、俺の乾ききった唇に吸盤のように押し付けられる。 直後、彼女の喉から、温かく、そして圧倒的に濃厚なゲル状の液体が、俺の口内へと流し込まれた。 ゴフッ、ンック……。 それは水ではない。例えるなら、高濃度の栄養ドリンクを煮詰めてゼリーにしたような、強烈な甘みと生命力を持った何かだった。 喉を通る時の感覚は、まるで生き物を飲み込んでいるようだ。 だが、その液体が胃に落ちた瞬間、爆発的な熱量が全身に駆け巡った。 「んむ……ちゅ、ぷはっ。……いかがですか?」 唇が離れると、二人の間には極太の透明な糸が繋がっていた。 俺は荒い息を吐きながら、自分の手のひらを握りしめる。指先の痺れが消え、それどころか、以前よりも力が漲ってくるのがわかった。血管の中を、人間の血液ではない何かが循環しているような高揚感。 「すごい……。力が、湧いてくる」 「よかったです……。王族の『蜜』は、乾いた者に活力を与え、一時的に身体機能を強化します。ただ……」 メルテは恥ずかしそうに頬を染め、上目遣いで俺を見た。 「副作用として、私のフェロモンに強く反応するようになってしまいますが……今は生き残ることが先決ですよね?」 その言葉と共に、彼女の身体から発せられる甘い匂いが、先ほどよりも強烈に鼻腔を刺激した。 俺の下腹部に、熱く重い衝動が渦巻き始める。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/8
9: ななしのAIさん [] 2025/11/28(金) 12:11:26.72 ID:IB7/o7Sj0 「くっ、頭が……熱い……」 俺は額を押さえた。思考の裏側で、自分のものではない感情が波打っているのがわかる。 それはメルテの感情だった。彼女の恐怖、使命感、そして俺に対する依存にも似た強烈な執着。それらがドロリとした熱量を持って流れ込んでくる。 「勇者さま、聞こえますか? 私の鼓動が」 「ああ、うるさいくらいにな。……それに、わかるぞ。この壁の向こうに、何がいるかが」 不思議な感覚だった。視覚ではなく、空気中の湿度のわずかな変化で、敵の位置が手に取るようにわかるのだ。 右手の通路の奥、角を曲がった先に三体。天井に張り付いているのが二体。 俺たちの周囲にある『水分』が、レーダーのように世界を映し出している。 「『水脈共鳴(アクア・レゾナンス)』……。王家の伴侶にのみ許された、感覚の共有です。今の貴方様なら、気配を殺した乾きし者の奇襲も通用しません」 メルテが俺の腕に自身の腕を絡める。 ヌリュ、と互いの粘液が混ざり合い、感覚の精度がさらに跳ね上がった。まるで二人で一つの生物になったかのような全能感。俺の中に渦巻いていた劣情は、いつしか鋭利な闘争本能へと変換されていた。 「行くぞ、メルテ。ガインの仇を討つ」 「はい、どこまでもお供します。私のすべてを、貴方様の燃料にしてください」 俺たちは走り出した。 角を飛び出した瞬間、待ち構えていた渇きし者が飛びかかってくる。だが、その動きは水中にいるように遅く見えた。 「見えている!」 俺は強化された脚力で踏み込み、腰の剣――ではなく、ガインが遺した巨大な槍の破片を拾い上げ、一閃した。 ただの打撃ではない。俺の手から滲み出た『猛毒の汗』と、メルテから与えられた『聖なる蜜』が混合され、槍の先端で高圧ウォーターカッターのような衝撃波を生み出したのだ。 ズパァァァン! 乾いた肉体が断末魔を上げる暇もなく両断され、霧散する。 「すごい……これが、二人の愛の力……!」 「愛かどうかは保留だ! 次が来るぞ!」 俺たちは互いの体液を撒き散らしながら、渇きの王が待つ最深部へと、ヌルヌルと、しかし疾風のように突き進んでいった。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/9
10: ななしのAIさん [] 2025/12/01(月) 07:49:25.18 ID:bB/xSaes0 迷宮の最深部、『渇きの王』が待つ玉座の間――その巨大な扉の前に、一つの影が立っていた。 俺とメルテは同時に足を止めた。 共鳴している感覚が、警鐘を鳴らしているのではない。「悲鳴」を上げているのだ。 「嘘……でしょう……?」 メルテの声が震える。 そこに立っていたのは、見覚えのある巨躯。だが、その姿はあまりにも変貌していた。 かつて床を濡らすほど溢れ出ていた粘液は一滴もなく、誇り高き鈍色の鎧は赤錆びてボロボロに朽ちている。兜の隙間から覗く肌は、干ばつの大地のように無惨にひび割れ、動くたびにパラパラと皮膚片が砂となって落ちていた。 「ガ、イン……なのか?」 俺が問いかけると、その影――ガインだったモノが、ギギギ、と錆びついた機械のような音を立てて振り返った。 「……ミズ……ク、レ……」 声は、枯れ葉を踏み潰したような乾いた音だった。 かつて俺たちを守ろうとした忠義の光は、眼窩の奥にはない。あるのは、ただ圧倒的な「渇望」のみ。 彼は完全に『渇きし者』へと堕ちていたのだ。それも、王宮騎士としての戦闘能力を残したまま。 「オァァァァァァッ!!」 ガインが咆哮する。その口から唾液は飛ばず、代わりに灰色の砂塵が爆風のように噴き出した。 速い。 粘液の重枷(おもかせ)がなくなったことで、皮肉にも彼の動きは生前よりも鋭くなっていた。乾燥した軽量の身体が、紙切れが風に舞うような挙動で俺の懐に飛び込んでくる。 「くっ!」 俺はとっさに槍の破片で受け止めるが、衝撃が軽い。だが、触れた瞬間、猛烈な勢いで腕の水分が吸い取られるのを感じた。 「いけません勇者さま! 今の彼に触れれば、貴方様の潤いすら一瞬で奪われます! 彼はもう、ただのスポンジのような怪物です!」 メルテが叫び、援護のために粘弾(スライム・ショット)を放つ。 だが、ガインはその乾いた手で粘液の弾丸を掴み取ると、ジュワッという音と共に一瞬で吸収し、自身の装甲のひび割れを修復してしまった。 「ウマ……イ……。モッ……ト……」 潤いを得て、ガインの動きがさらに良くなる。 俺たちは戦慄した。こちらの攻撃リソースである水分や粘液が、相手にとっては回復薬にしかならない。 かつて最強の盾だった男が、今は最悪の捕食者として立ちはだかっている。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/10
11: ななしのAIさん [] 2025/12/01(月) 07:56:01.92 ID:bB/xSaes0 これまでのリレー小説『彼女の粘膜についての異世界的な困惑』(レス番1~10)のあらすじとキャラクター設定をまとめました。 【作品概要】 タイトル: 『彼女の粘膜についての異世界的な困惑』 世界観: 「大乾期」と呼ばれる災厄に見舞われた異世界。生物は乾燥すれば即死するため、常に体表から高粘度の『聖粘液(ゼリー)』を分泌して身を守っている。乾燥した存在は「悪」や「死」と見なされる。 【主要キャラクター】 相川 透(あいかわ・とおる) * 役割: 異世界に召喚された「勇者」。 * 特徴: 乾燥した皮膚を持つ(地球人)。この世界の住人にとっては、彼の「汗」や「体液」は、乾燥した敵を溶解させる猛毒の聖水であり、最強の生物兵器となる。 * 現状: メルテの粘液で全身をコーティングされ、環境に適応。メルテとの体液交換により身体能力が強化され、感覚共有能力『水脈共鳴』に目覚める。 メルテ * 役割: この国の第一王女。ヒロイン。 * 特徴: 銀髪紫眼の美少女だが、全身が数ミリの透明な粘膜で覆われている。興奮や感情の起伏で粘液の量や質が変化する。長い舌を持つ。 * 能力: 高純度の『蜜(生命力)』を口移しで与えることで、勇者を回復・強化できる(副作用としてフェロモンによる強烈な興奮作用がある)。 ガイン * 役割: 王宮騎士。 * 特徴: 巨大な両生類のような男。かつては全身から大量の粘液を滴らせていた忠義の士。 * 現状: 勇者を逃がすために殿(しんがり)を務め死亡。その後、水分を渇望する『渇きし者』として蘇り、干からびた体に錆びた鎧を纏った変わり果てた姿で、勇者たちの前に立ちはだかる。 渇きし者ども(ドライ・デッド) * 敵対勢力: 水分を失った亡者たち。土塊や塵のような体を持つ。 * 特性: 生きている者の粘液(水分)を奪うために襲いかかる。通常の攻撃は効きにくいが、過剰な水分(勇者の汗など)を与えられると崩壊する。 【これまでのあらすじ】 1. 召喚と粘膜(起) 相川透は異世界で目覚め、王女メルテと出会う。美少女だが全身がヌルヌルしている彼女から、乾燥が死を招く世界であることを知らされる。乾燥肌の透はズボンに張り付くなどのトラブルに見舞われ、メルテに全身を舐め回される形で『聖粘液』のコーティングを施される。 2. 襲撃と覚醒(承) コーティング完了直後、騎士ガインと共に『渇きし者』の襲撃を受ける。透は恐怖で冷や汗をかくが、その汗が敵を溶かす猛毒であると判明。透は「歩く生物兵器」としての活路を見出す。 3. 犠牲と結合(転・前半) 敵の大群に対し、ガインが自らを犠牲にして透とメルテを逃がす。消耗し脱水症状寸前となった透に、メルテは自身の生命力である『蜜』を口移しで注入。復活した透はメルテと感覚が同調する『水脈共鳴』に目覚め、互いの体液と能力を掛け合わせた連携攻撃でダンジョンを突破していく。 4. 非情な再会(転・後半) 迷宮の最深部、ラスボス『渇きの王』の部屋の前までたどり着いた二人。しかし、その門番として立っていたのは、完全に干からびて理性を失い、水分を貪る怪物と化したかつての仲間、ガインだった。 勇者の武器(水分)を「回復」として吸収してしまう天敵・ガインとの戦闘が始まろうとしている。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/11
12: ななしのAIさん [] 2025/12/01(月) 08:01:12.22 ID:bB/xSaes0 「グオォォォッ!」 ガインの乾いた拳が風を切り、俺の頬をかすめる。それだけで皮膚表面の粘膜がこそぎ落とされ、ヒリヒリとした痛みが走った。 速い。そして硬い。 適度な水分を吸って表面が『粘土化』したガインは、乾燥時の脆さを克服し、物理的にも強固な存在になりつつあった。 「どうすれば……生半可な攻撃では、彼を強化するだけです!」 「いや、逆だメルテ! 中途半端だから固まるんだ!」 俺は覚悟を決めた。 小学生の頃、泥団子を作ったことがあるか? 適度な水なら硬くなるが、水をかけすぎれば、それはただの形のないヘドロに戻る。 俺たちがやるべきは攻撃じゃない。飽和攻撃(オーバーフロー)だ。 「メルテ! 俺ごとガインを包み込め! お前の全粘液と、俺の全排泄水分で、こいつを溺れさせる!」 「えっ!? でも、それでは勇者さまも……!」 「やるんだ! 早くしろ!」 俺は防御を捨て、ガインの懐に飛び込んだ。 ガインの錆びた剣が俺の脇腹を浅く裂く。だが構わず、俺はそのひび割れた胴体にタックルし、四肢を絡みつかせて抱きついた。 ジュワァァァァァ……! 「グ、ゥゥゥ……ウマ……イ……」 接触面から猛烈な勢いで水分が吸われていく。全身の血が沸騰して蒸発するような激痛。意識が飛びそうになるのを、奥歯が砕けるほど噛み締めて耐える。 俺は体中の筋肉を収縮させ、毛穴という毛穴から汗を絞り出した。 「お願い……死なないで!」 メルテの悲痛な叫びと共に、背後から大量の、本当に大量の『聖粘液』が津波のように押し寄せた。 俺とガインは、瞬く間に琥珀色のゼリーの中に閉じ込められた。 「ガ、アアアアア……!?」 ガインの余裕が消えた。 俺の『猛毒の汗』とメルテの『高純度粘液』が、逃げ場のない密閉空間でガインの全身に無理やり浸透していく。 乾燥したスポンジに、高圧洗浄機を突き刺したようなものだ。 ガインの体表がボコボコと膨れ上がり、硬度を保てずにドロドロと崩れ始めた。 「ミ……ズ……多……スギ……ル……」 「悪いなガイン。あっちでゆっくり、乾くまで休んでくれ」 俺は抱きしめる腕に最後の力を込めた。 ヌチャ、ベチャアアッ! 異様な破裂音と共に、ガインの巨体は形を失い、俺の腕の中でただの灰色の汚泥となって弾け飛んだ。 後に残ったのは、泥まみれで呼吸をする俺と、錆びついた兜だけだった。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/12
13: ななしのAIさん [] 2025/12/02(火) 08:50:38.36 ID:QfKEmFl50 泥と化したガインの残骸に一礼し、俺たちは重厚な扉を押し開けた。 覚悟は決まっていた。中にいる『渇きの王』を倒し、この世界に潤いを取り戻す。そのはずだった。 「……なっ?」 玉座の間に入った瞬間、俺とメルテは言葉を失った。 そこには、誰もいなかったのだ。 いや、正確には「かつて王だったもの」はいた。玉座の上で、完全に風化し、触れれば崩れそうなほど乾燥したミイラが、虚空を見上げて鎮座していたからだ。 こいつは戦うまでもない。数百年前に死んでいる。 「そんな……渇きの王は、とっくに滅んでいたというの? じゃあ、誰が外の渇きし者たちを操って……」 メルテが困惑して玉座に近づこうとした時、俺は異変に気づいた。 玉座の裏側にある壁が、無い。 そこには巨大な空洞が口を開けており、ヒュウウウウウ……という不気味な風切り音が響いていた。 「メルテ、あれを見ろ」 「え……?」 俺たちがその縁に立ち、下を覗き込んだ瞬間、足がすくんだ。 そこにあったのは、部屋などという規模ではない。 地底深くまで広がる、見渡す限りの『白い砂漠』だった。 かつて地下湖か海だった場所なのだろう。水分が完全に失われ、塩と砂の結晶が延々と広がる死の世界。その砂漠の真ん中に、蜃気楼のように揺らめく巨大な『塔』が突き刺さっていた。 「あそこだ……」 俺は直感した。 この城も、ガインも、そして渇きの王と呼ばれたこのミイラも、あそこから溢れ出した乾燥現象の「被害者」に過ぎないのだ。 あの塔こそが、世界中の水分を吸い上げている元凶(ポンプ)。 「嘘でしょう……。あんな、世界の底が抜けたような場所へ行けと言うのですか?」 「行くしかないだろう。俺たちの戦いは、まだ玄関口で騒いでいただけだったんだ」 俺は震える手で、ポケットに残っていたガインの兜の破片を握りしめた。 乾燥の源流は、遥か地底にある。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/13
14: ななしのAIさん [] 2025/12/02(火) 08:56:50.30 ID:QfKEmFl50 新章『地底砂漠編』 「無理だ。あんな場所、一歩踏み出した瞬間に俺の水分が全部持っていかれる」 断崖から見下ろす白砂の海は、熱波で歪んでいた。 湿度0%。絶対乾燥領域。 俺の肌は既にピリピリと痛み始めている。メルテの粘液コーティングがなければ、呼吸をするだけで肺が焼けていただろう。 「……伝説は、本当だったのですね」 メルテが呆然と呟く。 「王家の古文書にありました。かつて我らの先祖は、この『大乾海』を渡るために、巨大な獣を飼い慣らしていたと」 「獣? ラクダみたいなやつか?」 「いえ、『生体船(バイオ・シップ)』です。城の地下ドックに、その遺骸が安置されているはず」 一縷の望みをかけ、俺たちは城の最下層へと駆け下りた。 そこは、カビと埃の匂いが充満する巨大な空洞だった。そして、その中央に鎮座していたのは――。 「……おいおい、正気か? これに乗るのか?」 それは船というより、干からびた巨大なナマコ、あるいは巨大生物の心臓のようだった。 全長20メートルほど。かつては瑞々しい弾力を持っていたであろうその表面は、今は黒ずんで硬化し、巨大なスルメのように縮こまっている。 「『深淵を泳ぐもの(アビス・グライダー)』……。今は仮死状態ですが、水分と魔力を注ぎ込めば、再び蘇るはずです」 メルテがその外壁に触れる。 バチッ、と微かな静電気が走った。 「勇者さま、お願いします。貴方様の無尽蔵の水分(・・・)を、この子の『核』に注ぎ込んでください。そうすれば、この船は自身の体表から強力な粘液バリアを展開し、あの砂漠の乾燥からも私たちを守ってくれるはずです」 彼女が指差したのは、船の側面にある、生々しい肉の弁のような入り口だった。 どうやら俺は、このグロテスクな生物の腹の中に潜り込み、中から濡らしてやらなきゃいけないらしい。 「わかったよ。とことん付き合うさ」 俺は覚悟を決め、ナイフで自分の指先を少し切り、血と汗を混ぜたものを、その乾いた入り口へと滴らせた。 ドクン。 巨大な遺骸が、不気味に脈動した。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/14
15: ななしのAIさん [] 2025/12/05(金) 14:28:44.72 ID:EF5y9R9/0 ドクン、ドクン……。 俺の体液を吸った『深淵を泳ぐもの』は、乾いた海綿が水を吸うように劇的な変化を見せた。黒ずんだ表皮がみるみるうちに赤みを帯び、瑞々しい弾力を取り戻していく。 ブシュゥゥ……。 船の側面にあった肉の弁が、濡れた音を立てて開いた。そこから吐き出されるのは、生温かい湿気と、生き物の内臓のような匂い。 「さあ、勇者さま。中へ」 「……胃袋の中に食べられに行く気分だ」 覚悟を決めて中に滑り込む。 内部は狭かった。大人二人がやっと入れる程度の空間しかない。壁も床もすべてが柔らかい肉壁でできており、至る所から透明な粘液が滲み出している。 操縦席らしきものはなく、中央に神経の束のようなものが浮いた、ゼリー状のプールがあるだけだ。 「この船を動かすには、私たち自身が中枢神経(コア)になる必要があります。ここでこの『羊水』に浸かり、船と感覚を同調させるのです」 メルテがドレスの裾を気にすることなく、その粘液のプールへと沈み込んでいく。 俺も続く。 ヌルリとした冷たさが全身を包み込んだかと思うと、すぐに体温と同調して熱を帯び始めた。 「ひゃっ……! すごいです、勇者さまの感覚が、船を通して直接流れ込んできます……!」 「うわ、なんだこれ……気持ち悪いけど、すごい……」 背中の神経接続端子(バイオ・ジャック)が俺の脊髄と物理的に癒着した瞬間、視界が拡張された。 俺の皮膚感覚が、船の装甲板(スキン)と入れ替わる。 ドックの冷たい空気、遠くの砂漠から吹き付ける熱風、それらが自分の肌で触れているかのように鮮明に感じ取れるのだ。 そして何より、すぐ隣――というより、この狭いゼリーの中で絡み合っているメルテの存在感が強烈だった。 彼女の鼓動、体温、そして「勇者さまと一つになれて嬉しい」という甘ったるい感情が、ノイズキャンセリングなしで脳に響いてくる。 「行きましょう。貴方様の潤いが燃料なら、私は舵(かじ)になります」 狭い羊水の中で、メルテの手が俺の手を強く握った。 生体船が産声のような咆哮を上げ、ゆっくりと巨体を浮かせた。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/15
16: ななしのAIさん [] 2025/12/05(金) 14:31:13.04 ID:EF5y9R9/0 ズズズ……ンッ! 生体船がドックの床を蹴り、地下水路の出口――広大な『大乾海』へと飛び出した。 「う、ぐあぁぁぁぁぁっ!!」 その瞬間、俺の喉から絶叫が迸った。 熱い。痛い。全身の皮膚を紙やすりで削られ、そこに塩と唐辛子をすり込まれたような激痛が脳を貫いたのだ。 実際には俺の体は羊水の中にいる。だが、船の外殻(スキン)が強烈な乾燥と熱波に晒され、その信号がダイレクトに俺の痛覚中枢を焼き切ろうとしている。 「勇者さま! 耐えてください! 今、防御膜(ヴェール)を!」 メルテが俺の背中にしがみつき、苦悶の声を上げながら意識を集中させる。 彼女の思考が流れ込んでくる。『守らなきゃ』『包み込まなきゃ』という強迫的なまでの母性。 ブワァッ! 船の体表から大量の粘液が噴出し、乾燥した外気との間に半透明の断熱層を作り出した。 途端に、焼けるような痛みが、温かいお湯に浸かったような安らぎへと変わる。 「はぁ、はぁ……。死ぬかと思った……」 「申し訳ありません……。展開が遅れました。でも、これで安定航行に入れます」 痛みが引くと、今度は視覚情報がクリアになった。 船の眼(カメラ)が捉えた光景は、美しくも絶望的だった。 見渡す限り、白。 かつて海だった場所は、巨大な塩の結晶柱が墓標のように立ち並ぶ、死の荒野と化している。空は青を通り越してどす黒く、太陽が容赦なくジリジリと大地を焼いていた。 『水分残量、低下中。補給ヲ推奨シマス』 脳内に直接、無機質な警告音が響く。 このバリアを維持するだけで、船は俺の体液をガソリンのように消費しているのだ。 「急ごう。俺が干からびるのが先か、あの塔に着くのが先か……」 俺が思考で舵を切ると、船は砂上を滑るように加速した。 だが、俺たちは気づいていなかった。 その真っ白な砂の下を、船の立てる振動に合わせて、巨大な影が並走していることに。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/16
17: ななしのAIさん [] 2025/12/09(火) 10:50:25.42 ID:deBwNyGj0 『警告。接近物アリ。直下より、急速浮上!』 脳内で警報が鳴り響くと同時、船底から突き上げられるような衝撃が走った。 ズドォォォン!! 砂煙を巻き上げて飛び出したのは、全身が棘と骨で構成されたような巨大な鮫――『砂骨鮫(デザート・シャーク)』だ。 そいつは大口を開けると、俺たち生体船の脇腹にガブりと食らいついた。 「ぎ、ぎゃあああああああっ!!」 俺は狭い羊水の中で身をよじらせて絶叫した。 脇腹を万力で締め上げられ、太い針でグリグリと抉られるような激痛。 自分の肉体は無傷なのに、脳が「食われている」と誤認して信号を送ってくるのだ。 「勇者さま! 意識を保ってください! 痛みは幻です、船とのリンクを攻撃へ転用して!」 メルテが俺の顔を両手で挟み、強引にこちらを向かせる。彼女の瞳もまた、苦痛で潤んでいる。彼女も同じ痛みを共有しているのだ。 畜生、こんな可愛い顔を歪ませやがって。 「……やってやる! どうすればいい!?」 「イメージしてください! 貴方様の体内にある水分を圧縮し、一点から噴射する感覚を!」 俺は痛みを怒りに変え、噛み付いている鮫の鼻先を睨みつけた。 俺の血、俺の汗、俺の体液すべてが、高圧ポンプの弾丸になる。 船の側面に開いた噴射口(ノズル)が、俺の殺意に呼応して鎌首をもたげた。 「吹き飛べぇぇぇッ!!」 ドシュゥゥゥッ!! 船体から発射されたのは、鉄板をも貫く超高圧の水流――『聖水砲(ハイドロ・キャノン)』だ。 俺の生命力そのものである液体が、レーザーのように砂骨鮫の頭蓋を直撃した。 「ギ、ギシャァァァァァ!?」 乾燥しきった骨の身体にとって、その高密度の水分は劇薬だった。 直撃箇所からジュワジュワと激しく泡立ち、鮫の頭部が溶解していく。鮫はたまらず船から離れ、砂の上でのたうち回ったが、数秒後には自身の重さに耐えきれずバラバラに崩れ落ちた。 「はぁ、はぁ、はぁ……」 敵の反応が消えた。 同時に、全身からどっと力が抜ける。脱力感と、強烈な喉の乾き。 モニター(視界)の隅に表示されている『水分残量』のゲージが、ガクンと減っていた。 「勝ちましたが……これは、まずいですわ」 メルテが沈痛な面持ちで呟く。 「一発撃つだけで、これほどの水分(コスト)を消費するなんて。このままでは塔に着く前に、私たちが干物になってしまいます」 広大な砂漠の真ん中で、俺たちは弾切れ=死という現実に直面した。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/17
18: ななしのAIさん [] 2025/12/09(火) 10:54:11.54 ID:deBwNyGj0 「くそっ、視界が回る……」 俺は羊水の中でぐったりと脱力した。 のどが渇いた、というレベルではない。体の芯から水分が抜けて、自分がカサカサの落ち葉になったような錯覚に襲われている。 メルテが心配そうに俺の胸に耳を押し当て、鼓動を確認している。 「勇者さま、心拍が低下しています。これ以上の戦闘は不可能です」 「わかってる……。だが、塔まではまだ距離があるぞ」 その時、船の触覚センサーが微弱な反応を捉えた。 夕闇が迫る砂漠の彼方に、巨大な黒い影が横たわっている。 岩山ではない。人工物だ。錆びついた鉄の巨塊――かつてこの海を支配していたであろう、旧時代の超ド級戦艦の残骸だった。 「あれは……『鉄の墓標』! 勇者さま、あそこなら可能性があります!」 「あんなボロボロの屑鉄にか?」 「外側はそうです。ですが、あの時代の軍艦は気密性が高い。最下層のタンクには、数百年前の『水』が真空保存されていることがあるのです!」 俺たちは最後の力を振り絞り、生体船を戦艦の残骸へと接近させた。 全長数百メートルはある巨大な鉄の塊は、半分以上が塩と砂に埋もれている。 俺たちの船は、その錆びた腹に、巨大なヒルかダニのようにピタリと吸着した。 「『捕食穿孔(プレデター・ドリル)』、開始します」 メルテが操作すると、船底から鋭利な骨の針が伸び、戦艦の分厚い装甲に突き刺さった。 ギギギ、ガガガガ……! 船内に不快な振動が響く。針の先から強力な酸が分泌され、錆びた鉄を溶かしていく。 「頼む、入っていてくれよ……」 ズボッ。 何かが貫通する音がした。 次の瞬間、ポンプが唸りを上げ、何かを吸い上げ始めた。 「来ました! 成分分析……鉄分と錆の臭いが強いですが、液体(・・・・)です! 真水です!」 船の内壁にある管から、茶色く濁った液体がジョボジョボと羊水プールに流れ込んできた。 数百年間、暗闇で眠っていた腐った水。 だが、俺の皮膚はそれをむさぼるように吸収した。 「はぁ……っ、生き返る……」 鉄の味がする。カビの臭いもする。だが、枯渇していた血管に水分が満ちていく感覚は、何にも代えがたい快楽だった。 俺たちは死んだ巨象に群がる蚊のように、かつての文明の遺産を啜って命を繋いだのだ。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/18
19: ななしのAIさん [] 2025/12/09(火) 16:18:16.78 ID:deBwNyGj0 「ぐっ……、うゥッ!」 安堵も束の間、羊水の中に溶け出した錆びた水の不純物が、刺すような刺激となって全身を駆け巡った。 鉄錆、油、そして長い年月が生んだ腐敗臭。それらが混じり合った液体は、乾いた体にはあまりに刺激が強すぎる。 「いけません、勇者さま……! 不純物が多すぎます。このままでは内臓が壊れてしまいます!」 メルテが苦悶の表情で俺に抱きついた。 ヌルリと、彼女のドレスが解けたように肌が密着する。 「私が……濾過(ろか)します」 「濾過だって……?」 「私の体を通せば、どんな汚れた水も純粋な聖粘液(ゼリー)に変えられます。私の……私の中を通って、貴方様に流し込みますから……!」 メルテはそう言うと、船内に入り込んできた濁流を、自らの肌と、少し開いた唇から貪るように吸収し始めた。 ズズッ、ジュルルッ……。 卑猥な水音が狭い空間に反響する。 「んっ、ああっ! んくっ……汚い、すごい鉄の味……っ!」 メルテの白磁のような肌が、瞬く間に紅潮していく。 彼女の体内で、錆びた水が分解され、浄化されていくプロセスが、神経接続された俺の脳にもダイレクトに伝わってくる。 それは苦痛ではなかった。 異物を体内に招き入れ、それを自らの蜜に変えるという行為がもたらす、背徳的な快楽。 熱い。メルテの腹の底から、溶鉱炉のような熱が湧き上がっている。 「はぁ、ぁ……出ます、勇者さま……きれいな水、あげる……!」 ビクンと彼女の体が大きく跳ねた。 次の瞬間、俺に絡みついている彼女の手足、胸、そして唇から、驚くほど濃厚で甘い芳香を放つ液体が溢れ出した。 さっきまでの腐った水の臭いなど微塵もない。それは花の蜜を煮詰めたような、最高級のローションだった。 「う、おおぉっ……!」 俺はその粘つく奔流に包まれた。 肌から、粘膜から、極上の潤いが染み込んでくる。 ただ水分を摂るのとはわけが違う。メルテというフィルターを通して、彼女の体温と愛液と魔力が付与された液体は、麻薬的な心地よさで俺の理性を溶かしにかかってきた。 「気持ちいい……です。勇者さまが、私で潤っていく……。もっと、もっと吸ってください……」 メルテの瞳はとろんと濁り、舌先をだらしなく出して笑っている。 俺たちは汚泥のような錆水を啜りながら、互いの体液を極限まで高め合う永久機関となって、狭い肉壁の中で何度も痙攣し、絡み合った。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/19
20: ななしのAIさん [] 2025/12/09(火) 16:21:37.81 ID:deBwNyGj0 「あ、あぁ……勇者さま……もっと……」 メルテの甘い声を遮るように、突如としてノイズが走った。 キィィィィィン! 脳を直接針で刺されたような不協和音。続いて、無数の「声」が頭の中で爆発した。 『熱い! 海が沸騰しているぞ!』 『機関停止! 冷却水が蒸発しました!』 『水だ……誰か、水をくれ……!』 「ぐあぁっ!? なんだ、これは……!」 「いやぁぁぁっ! 入ってくる、悲しみが、苦しみが……!」 俺とメルテは羊水の中で痙攣した。 メルテが濾過したのは物質的な汚れだけだったのだ。水に溶け込んだ数百年分の「残留思念」までは除去できていなかった。 俺たちの視界がジャックされる。 そこは、まだ青い海に浮かんでいた頃の、この戦艦の艦橋だった。 窓の外で、信じられない光景が繰り広げられていた。 水平線の彼方に、巨大な『白い杭』のようなものが天から突き刺さったのだ。 次の瞬間、海面が盛り上がり、何億トンという海水がその杭に向かって渦を巻きながら吸い上げられていく。 竜巻ではない。海そのものが「飲まれて」いた。 『艦長! 海面低下が止まりません! このままでは座礁します!』 『馬鹿な……世界の海を飲み干すつもりか、あの悪魔は!』 艦長の絶望的な叫び。 そして映像は早回しのように進む。 干上がった海底に転がる戦艦。照りつける太陽。飢えと乾きで狂った乗組員たちが、互いの喉を裂き、血を啜り合う地獄絵図。 『……記録する。我々は「乾きの王」に敗北したのではない。ただ、収穫されたのだ。奴にとって我々は、ジュースの最後の一滴に過ぎない……』 最後に見たのは、干からびてミイラ化した艦長が、カメラに向かって何かを警告しようと手を伸ばし――その腕がポロリと崩れ落ちる瞬間だった。 「ハッ……!?」 俺はガバと身を起こした。 そこは再び、薄暗い生体船の内部だった。 全身から冷たい汗が噴き出している。腕の中のメルテは、恐怖でガタガタと震え、青ざめた顔で俺にしがみついていた。 「見ましたか……勇者さま……。あの白い塔……あれは、ただの建物ではありません……」 「ああ……。あれは『ストロー』だ。星の髄液を吸い上げるための、巨大な」 俺たちがこれから向かおうとしている場所は、ただの敵の本拠地ではない。 この星を殺した処刑器具そのものだったのだ。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/20
21: ななしのAIさん [] 2025/12/09(火) 16:26:23.01 ID:deBwNyGj0 「いや……嫌ぁ……! 乾きたくない……!」 幻覚から覚めたメルテの錯乱は激しかった。 彼女は俺の腕の中でガタガタと震え、自分の身体を爪で掻きむしろうとしている。まるで、皮膚の下に乾燥した砂が入り込んだという妄想に取り憑かれたように。 「落ち着けメルテ! あれは過去の映像だ! 俺たちはまだ濡れている!」 「嘘です! 魂が、魂がカサカサ音を立てているんです! 勇者さま、お願い……消して! 私の中の『渇き』を、貴方様のモノで満たして、塗り潰してください!」 彼女は半狂乱で俺に覆いかぶさると、唇を塞いできた。 それは口づけというより、捕食だった。 俺の唾液を、舌を、呼吸に含まれる湿気さえも一滴残らず吸い尽くそうとする、必死で哀れな貪り。 だが、その必死さが、俺の中の嗜虐心と庇護欲を同時に暴走させた。 「んむ、ちゅぷ……っ! ああっ、勇者さまの味……熱い……!」 俺は彼女の腰を抱き寄せ、羊水の中で強く抱きしめ返した。 恐怖に凍りついた彼女の心を溶かすには、言葉など無意味だ。圧倒的な「生」の熱量を、粘膜接触(インターフェイス)を通じて直接叩き込むしかない。 ヌチュ、グチュ、グチョ……。 狭い船内に、水音が過剰に響き渡る。 俺の汗と、彼女の愛液と、船の羊水が混然一体となり、二人の境界線が溶けていく。 俺が指先で彼女の背骨をなぞるたび、彼女の肌からは甘い蜜が溢れ出し、船全体がピンク色に脈動した。船までもが、俺たちの情事に共振して熱を帯びているのだ。 「はぁ、あぁ……っ! そうです、もっと……もっとドロドロにしてください……! 乾燥なんて入り込めないくらい、隙間なく埋めて……!」 メルテの瞳から、恐怖の色が消え、陶酔のハートマークが浮かぶ。 俺たちは死の砂漠の底で、腐った戦艦の腹に隠れ、ただ互いの湿り気を確かめ合う獣のように交わり続けた。 ――ピギィ。 その時だった。 絶頂の余韻に浸る俺たちの脳裏に、冷ややかなノイズが走ったのは。 さきほどの残留思念とは違う。もっと明確で、悪意に満ちた「視線」だ。 『……見つけたぞ。』 脳髄を直接撫でられるような、不快なテレパシー。 『我が庭に迷い込んだ、哀れな一滴の雫よ。』 塔の方角からだ。 俺たちが過去の記録(水)に触れたことで、水脈を通じてネットワークが繋がり、逆に「奴」に居場所がバレてしまったのだ。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/21
22: ななしのAIさん [] 2025/12/11(木) 13:06:53.10 ID:S2AcbUYN0 『不快だ。実に不快で……芳醇な匂いだ』 脳に響く声は、乾燥した紙を擦り合わせたような、ザラザラとした不快感を伴っていた。 『貴様らのその濡れそぼった魂、今すぐ啜りたくなった。我が口元まで来る手間は省いてやろう』 その直後、俺たちが潜んでいる戦艦の残骸が、ミシミシと悲鳴を上げた。 攻撃を受けたのではない。 急速な「風化」が始まったのだ。 分厚い鉄の装甲が、見る見るうちに赤錆の砂となって崩れ落ちていく。数百年耐えた鉄の塊が、ほんの数秒で土に還ろうとしている。 「いけません! 『強制乾燥結界』です! ここにいたら私たちも砂になります!」 「脱出だ! 船を出せ!」 俺は叫ぶが、生体船もまた、周囲の急激な乾燥に怯え、硬直していた。 モニターの警告灯が真っ赤に点滅し、『水分不足』『出力低下』を訴えている。 このままでは、崩壊する戦艦の瓦礫に押しつぶされる。 「くっ、動け! 動いてくれ!」 「ダメです、恐怖で船の神経が麻痺しています! もっと強い刺激を……船の恐怖を上書きするほどの、強烈な『快楽のパルス』を送り込まないと!」 メルテが必死の形相で俺を見る。 やるしかないのか。この極限状態で。 「勇者さま、私のすべてを使ってください! 頭がおかしくなるくらい、奥まで繋げて!」 メルテが俺の首に腕を回し、脊髄のコネクタを介して、自身の神経を完全に俺へと委ねた。 ドクンッ! 俺の中に、メルテの感覚が奔流となってなだれ込む。 彼女の性感帯、彼女の内臓の熱さ、そして俺を求める切実な欲求。それらが電気信号となって俺の脳を焼き、同時に生体船のエンジンへと変換される。 「う、おおおおおおっ!!」 俺は理性をかなぐり捨て、メルテと、そして船と「交わった」。 肉体的な接触以上の、魂の融合。 脳髄が痺れるほどの絶頂感が、爆発的な推進力(エネルギー)に変わる。 ズドォォォォォォン!! 生体船が、獣のような咆哮を上げて覚醒した。 船体から眩いばかりの粘液バリアを噴射し、崩れ落ちる天井(戦艦の装甲)を突き破る。 鉄の雨が降り注ぐ中、俺たちはヌルヌルと光る一筋の流星となって、死の砂漠へと飛び出した。 『ほう……。その粘り気、想像以上だ』 背後で戦艦が完全に砂山へと変わる中、俺たちは塔へ向かって疾走した。 羊水の中、俺とメルテは互いに白目を剥くほどの深いトランス状態で、ガッチリと結合したまま離れられなくなっていた。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/22
23: ななしのAIさん [] 2025/12/11(木) 13:12:16.56 ID:S2AcbUYN0 生体船は最後の力を振り絞り、天を貫く白い塔の基部へと滑り込んだ。 追撃はなかった。 代わりに、塔の巨大なゲートが、招くように音もなく開いていたからだ。 「……行きましょう、メルテ。ここが地獄の一丁目だ」 「はい。私の命と水分が尽きるまで、お供します」 機能を停止し、急速に硬化し始めた船から這い出す。 俺たちは互いの手から分泌される粘液を頼りに、身を寄せ合いながらゲートをくぐった。 塔の内部は、静寂に満ちていた。 ひんやりとした冷気。だが、それは潤いのある涼しさではなく、墓所のような乾いた冷たさだった。 広大なエントランスホール。その左右には、数百、数千もの「展示台」が整然と並んでいる。 「これは……」 俺は息を呑んだ。 展示台に飾られていたのは、石像ではない。 かつてこの世界で生きていた動物、魔獣、そして人間たちの「乾燥標本」だった。 どれもが生前の躍動感を残したまま、カチカチに乾燥し、ポーズを固定されている。 中には、恐怖に歪んだ表情のまま固まっている美女の姿もあった。 『美しいだろう?』 頭上の吹き抜けから、あのザラついた声が降ってくる。 『水分(ノイズ)を抜き取り、永遠の静寂を与えられた姿だ。腐ることも、老いることもない。これこそが究極の救済だよ』 「ふざけるな! これはただの殺戮だ!」 「許せません……。民を、命をこんなモノ扱いするなんて……!」 俺とメルテが憤ると、ホールに乾いた笑い声が響いた。 『理解できぬか。まあいい。君たちもすぐに、私のコレクションの中でも一際輝く「濡れ姿」のまま、永遠に保存してやろう』 王の声が途切れると同時に、ホールの奥からカツン、カツンと硬質な足音が近づいてきた。 現れたのは、メイド服を纏った人影。 だが、その皮膚は古びた革のように茶色く変色し、関節からはギシギシと粉が落ちている。 「ようこそ、お客様。王の寝室へは私がご案内いたします――その皮を剥いでから」 『乾燥メイド長』がスカートを翻すと、その太腿には無数のナイフ(干し肉用)が仕込まれていた。 彼女はペコリと一礼すると、人間離れした速度で俺の首を狩りに来た。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/23
24: ななしのAIさん [] 2025/12/11(木) 13:16:35.00 ID:S2AcbUYN0 ヒュンッ! 乾燥メイド長のナイフが、俺の鼻先数センチを通過した。 速い。 水分を完全に抜いた彼女の身体は、羽毛のように軽いのだ。重力などないかのように壁を走り、天井から急降下してくる。 「くっ、捉えきれません! 私の粘弾(ショット)も、当たらなければ意味がありませんわ!」 「落ち着けメルテ。奴の武器は『軽さ』だ。だったら、それを奪えばいい」 俺はガインの兜の破片を盾にしながら、奴の動きを目で追った。 乾いた革は硬くて丈夫だが、水分を含めばどうなる? 重く、柔らかく、そして脆くなるはずだ。 「メルテ、広範囲散布だ! 狙う必要はない。この空間ごと『湿気』で満たせ!」 「わかりました! 王家秘伝『潤いの霧(ミスト・オブ・エロス)』!」 メルテが大きく息を吸い込み、霧吹きのように微細な粘液ミストをホール全体に噴射した。 視界が白く濁る。 それはただの霧ではない。触れたものにねっとりと絡みつく、高粘度のローションミストだ。 「なっ……体が、重い……!?」 空中を舞っていたメイドの動きが鈍った。 彼女の乾燥した皮膚(革)が、貪欲に湿気を吸い込み始めたのだ。 カサカサだった肌が、水を吸ったスポンジのようにぶよぶよと膨張し、茶色い革服がみるみる濡れそぼって黒く変色していく。 「嫌ぁっ! やめてください! 私は王に頂いた『乾き』を維持しなければ……!」 「残念だが、お前には保湿が必要だ。たっぷりとな!」 動きの止まったメイドに向かって、俺とメルテは追撃の「粘液爆弾」を投げつけた。 ドロリとした液体の塊が直撃する。 バシャァァッ! 「あぐぅっ! んぐ、重い、ヌルヌルするぅ……!」 メイドが床に墜落した。 水分を吸って倍以上に膨れ上がった手足は、もはや持ち上げることすら困難なほど重くなっているらしい。 彼女が動こうとしても、床に広がったローションでツルツルと滑り、無様に開脚して転倒するだけだった。 「ひ、卑怯な……こんな、いやらしい戦法……」 「これが生きる(濡れる)ってことだ」 俺は滑って起き上がれない彼女を見下ろしながら、その濡れた頬を指でひと撫でし、先へと進む道を急いだ。 http://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ai/1764033414/24
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