ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」 (716レス)
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604: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/04/12(火)11:06 ID:BbqgF6nP0(1) AAS
…運河(エンバンクメント)沿いの倉庫街…
ドロシー「……よーし、着いたぞ」
…ドロシーとベアトリスは寄宿学校を抜けだし、ネストの一つで地味な格好に着替えるとエンバンクメント沿いまでやって来た……まだ終業時刻には早過ぎるため通りを行き交う人間はほとんどなく、ときたま辺りの倉庫で荷運びをしている労働者が運河にもやって(係船して)いるはしけに荷物を積んだり降ろしたりしているだけだった……と、ドロシーは何やらかすれた文字で会社名らしきものが書き込んである一棟の古ぼけた倉庫を軽く指し示した……そして先ほど言っていた「緑の屋根」という言葉はどうやら冗談か安全策の一つであるらしく、屋根は赤茶色をしている…
ベアトリス「ここですか……私は今まで来たことがないですね」
ドロシー「ああ、ここは情報部が調達してよこした武器装備を調整するところだからな……お前さんには普段アンジェや私が調整したやつを渡しているから、来てもらう必要がなかったのさ」
ベアトリス「それじゃあ今日はどうして私の事を連れてきたんですか?」
ドロシー「なに、すぐに分かるさ……よっこらしょ」たてつけの悪いドアを開けると、倉庫の中に入った……
ベアトリス「ずいぶん蝶番が錆び付いてますね……油を差さないんですか?」
ドロシー「ああ。何しろこれだけキーキーいうからな。誰かがこっそり入り込もうとしてもきしむ音で分かるってわけだ……もし防諜部やスペシャル・ブランチの手入れを喰らっても開けるのに手間取るから、その間に向こうの窓から運河に飛び込めるって寸法さ」
ベアトリス「なるほど」
ドロシー「さて、それじゃあおしゃべりはこのくらいにして……と」唐突に上着を脱ぎ始めるドロシー……
ベアトリス「え、ちょっと……!」
ドロシー「まぁまぁ、そう驚くな……別に手籠めにしようってわけじゃない。こいつを手伝ってほしいだけさ♪」
…そう言って作業机の上に取り出したのは、型紙と大きな牛革の切れが数枚。それに皮革用のナイフと仕立屋のような鋭い裁ちばさみ……そして穴開け用と思われる小さいフォークのようなものや、風変わりな器具が一揃い…
ベアトリス「何ですか、これ?」
ドロシー「こいつは革用の細工道具だよ。普段ピストルを突っ込んでいるホルスターなんだが、情報部がよこす既製品のやつだとぴったり馴染まなくてな……大きさを合わせたり、手作りしたりしてるんだ」
ベアトリス「そうなんですか」
ドロシー「そうさ。何しろ肩吊り用にしろ腰用のにしろ、私やアンジェみたいな若い女が使うようには作られちゃいないからな……モノによっちゃあ普通に革製品の店で注文することもあるが、レディが軍用の.380だの.455口径のピストルに合う肩吊りホルスターなんて買ったら目立つことこの上ないし、何より自分で作れば経費の節約にもなる。 そしてその「ちょろまかした」分で他のモノを買ったり、うまいものを食ったりするのさ」
ベアトリス「……そう言うのっていけないんじゃないですか?」
ドロシー「そりゃあ厳密にいけばいいとは言えないさ……ただ、そうでもしなくちゃ活動費用が追っつかないし、私はコントロールも知ってて黙認していると踏んでるよ」
ベアトリス「そういうものなんですね」
ドロシー「ああ。お互いに成果さえあげてれば言うことなしってわけでね……話がそれちまったが、ホルスターなんか場合によってはイチから作ることもあるんだ」
ベアトリス「すごいですね」
ドロシー「ま、一秒を争うって時に使う道具だから、そのくらいはしないとな。 それで、お前さんには私が革地をあてがっている間、このインクで印を付けてもらいたいんだ……あと、裁断済みのやつがあるから、終わったらそいつの縫製も手伝ってもらいたいな」
ベアトリス「なんだ、そういうことだったんですね。いきなり上着を脱ぐから、てっきり……///」
ドロシー「……したいようなら別に構わないぜ?」
ベアトリス「ち、違いますっ!」
ドロシー「なーに、ちょっとした冗談だよ……それにどのみち、いつも腰が抜けるほどプリンセスに愛してもらってるんだろうからな」
ベアトリス「……ノーコメントです///」
ドロシー「はは、口で言わなくてもその雄弁な表情じゃあなんにもならないぜ?」
ベアトリス「///」
ドロシー「さ、おしゃべりはほどほどにして取りかかろう」
…ある程度のサイズに切ってある革地を肩にあてがうと、ベアトリスが仕立屋のように前後左右と飛び回りながら目安の線を入れていく……時折ドロシーが銃を抜く動作をしてみたり、ホルスターをあてがって脇から吊るしたときの高さを確かめ、しばらくして納得したようにうなずいた……それからけがき線にそってナイフを入れて革を切り、全体を組み立てる前に小さいパーツや留め革の部分をにかわでくっつけ、おもしを載せて作業台に固定した…
ベアトリス「こんな風になっているんですね」
ドロシー「ま、普段は革なんて扱わないだろうからな……そっちを押さえておいてくれ」
…作業台には他にも工程の途中にあるホルスターや何かのポーチのようなものが並んでいて、今度はそれを取り上げて渡した……縫い目となる部分には印の線が引いてあり、そこに「目打ち」(小さいフォーク状の道具)をあて、木槌で「とんとん……っ」と打って、針が通る穴を開けていく…
ベアトリス「縫い方はどうすれば良いですか?」
ドロシー「糸の両側に針を通して、互い違いに縫っていってくれ……糸は縫う長さの四倍はないと足りなくなるから、遠慮しないで多めに使いな」ベアトリスにやり方を教えながら、蝋が塗ってある革用の糸を使ってすいすいと縫っていくドロシー……
ベアトリス「上手ですね、ドロシーさん……いつもはお裁縫なんて全然しないのに」
ドロシー「まぁな……とりあえずここにある出来かけを作り終えたら戻ろう。ついでに屋台のミートパイでも腹に詰めて行くとしようぜ♪」
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