ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」 (716レス)
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549: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/07/10(土)11:16 ID:USquDalD0(1) AAS
…当日…
ドロシー「しかし、やっぱり引っかかるんだよな…」ウェブリーに弾を込め、念のため予備の弾をコルセットの隠しスペースに詰めていく…
アンジェ「…そうね」
ドロシー「アンジェ、お前もそう思うか?」
アンジェ「ええ…情報を受け取ってからあがきが取れないほど監視されていたはずのエージェントが、急に接触を試みるわけがない……たとえ導火線に火が付いた爆弾だとしても、被害を被る人間は最小限に抑えるよう行動するはず」
ドロシー「だよな……となると、誰かが「餌」としてわざと監視を緩めたってところか」
アンジェ「それが一番ありそうね…どう、準備は出来た?」
ドロシー「ああ、ばっちりだ…お婆ちゃん♪」
アンジェ「結構ね。それじゃあ行きましょう…」
…ドロシーは緑色のデイドレスにアルスターコートを羽織り、頭には目線を隠しやすい大きめの婦人帽をかぶっている…一方のアンジェはランデヴーの場所が聖堂と言うことで、お祈りに熱心な老婦人に化けている…肩に灰色のショールをかけて頭には同色のボンネット、それに灰色と紫色が合わさったような、何色とも表現しようがないスカートと上着…
ドロシー「よし……さぁお婆ちゃん、お手をどうぞ♪」少し背中を屈め、よちよち歩きになっただけで急に小さな老婦人へと化けたアンジェに舌を巻きながらも、おどけて手を差し出した…
アンジェ「ありがとねぇ、キャスリンさんや……」
ドロシー「キャスリンじゃなくてメリルですよ、お婆ちゃん」
…数時間後…
ドロシー「どうやら無事に着いたな」
アンジェ「ええ…今のところ監視も尾行もなかったわね」
ドロシー「ああ」
…二人がやって来たのは、国教会が主流のアルビオンでは少数派であるカトリックの聖堂(カテドラル)で、かつては排斥されたり攻撃されたりもしたが、今ではある程度の立場を認められ、信徒こそ少ないながらもそれなりに活動している……それを象徴するように、聖堂はそこまでの大きさこそないとはいえ、厳かな姿を見せて夕空にそびえ立っている…
ドロシー「……ここだな」
アンジェ「ええ…」
…薄暗いゴシック式の聖堂に入った二人は、拝廊(聖堂の入口付近)からさっと左右を見渡した……柵の向こうに伸びる身廊(聖堂の中央にある、柱で挟まれた広い部分)は静まりかえり、柱から伸びて天井を構成する高い扇形の穹窿(きゅうりゅう)は陰影を際立たせるような彫刻が施され、夕闇の中に霞んでいる……窓には聖書の場面を描いたステンドグラスがはまっていて、昼間なら陽光を取り込み聖堂を万華鏡のように照らしているのだろうが、日が落ちたこの時間帯では暗い一枚の板でしかなく、左右の側廊(聖堂左右の柱より外側の部分)も薄暗く沈んでいる…
ドロシー「…」ドロシーは「右側を頼む」と軽く身振りで示すと、柱に沿って奥の祭壇の方へと近づいていく…
アンジェ「…」小さくうなずくと慎重に歩を進めた…
男の声「……夕刻の礼拝には少し遅すぎるようですな」唐突に男の声が響くと、白い衣をまとった太めの男が物陰から現れた…
ドロシー「…っ!」
白い衣をまとった男「おっと、そう慌てないでもよろしい……ここは祈りの場であり、主の家でもある。そして貴女方をここへ導いたのは他ならぬこのわたくしですからな」
ドロシー「そりゃあどうも……で、どこのどちら様なのか自己紹介を頼めるかな?」
男「わたくしはアレサンドロ司祭と申します…主のご加護を」
…アレサンドロと名乗った司祭は白い僧服にミトラ(司祭の帽子)をかぶり、胸元には金の十字架を提げている……丸く血色のいい顔は愛想笑いを浮かべているが、目はずるそうに小さく動いている…
ドロシー「ご丁寧にどうも…それで、司祭様が私たちにどんなご用で?」
アレサンドロ「ふむ、では率直に申し上げましょう……貴女方が欲している文書はわたくしどもが預かっております」
ドロシー「文書?何のことだい? 私はただお婆ちゃんを連れて墓参りに来ただけなんだがね」
アレサンドロ「隠さなくてもよろしい……それに主の御前では嘘、偽りを申さぬことです」
ドロシー「汝、偽りを申さぬこと…十戒か」
アレサンドロ「さよう」
ドロシー「それじゃあ司祭様、一つお尋ねしますがね……私たちが会うはずだった間抜けはどこにいる? 正直にお答えいただこうじゃないか」
アレサンドロ「重要な点はそこではありますまい……貴女方が欲しているのはとある文書だったはず。そしてこちらとしてはそれを引き渡すつもりがある、ということです。無論相応の代価が必要ではありますが……」ドロシーの質問を黙殺し、両手を広げて迎合するような姿勢を取った…
ドロシー「なるほど…だが聖書にあったよな「イエスは『私の父の家を商売の家にするな』とおっしゃられ、鞭を持って商人たちを追い出された」…とね」
アレサンドロ「残念ながら交渉決裂ですな…」片手を上げて合図をすると、入口から修道士や神父が一ダースばかりなだれ込んできた…いずれも手にはモーゼル・ピストルや、口径10.4×22ミリRのイタリア製リボルバー「ボデオ・M1889」を持っている…
ドロシー「主のお言葉は銃口から発せられるってわけか……アンジェ!」
アンジェ「…ええ!」
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