安価でSCP収容 (70レス)
1-

26: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)19:07 ID:7alGVdzk0(2/5) AAS
「対象Aの意識喪失を確認。よし、こっちに引きずってきてくれ。対象Bとの距離に注意しろよ」

作戦の序段は特に問題なく完了した。
対象B以外に注意を払わない背中に麻酔銃を命中させるのは実に容易く、そして麻酔の効果も正常に発揮された。
命中から数分の時間をおいて対象Aは昏倒し今やアスファルトに身を横たえている。
麻酔銃に対する反撃にも警戒していたが、結局倒れるまでこちらに視線を向ける事さえなかった。
当然、牽引も全く抵抗なく行える。

対象Bから20mの位置まで運ばれた対象Aは、まずその体を拘束された。
両肘から伸びる斧は重ねて束ねる形でまとめられ、強靭なワイヤーで厳重に縛り付けられている。
実際に確認した斧の鋭利さでは到底切り裂ける強度ではない。
省4
27: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)19:17 ID:7alGVdzk0(3/5) AAS
そのまましばし、対象Aの麻酔が切れる時間を待つ。

とはいえただ棒立ちで待っていたわけではない。
これまで得られた情報をまとめ、後方への通達を同時に行いながらだ。

結果として、対象Bの収容の目途が立った。
おおよその性質と効果範囲がほぼ確定し、確保の妨げとなる対象Aがこうして拘束できた以上、障害は最早ない。
4m以内に人間が進入しないよう重機と大型コンテナを用いて移送すれば安全だろうとの判断が下ったのだ。
こうなれば後は機材の到着を待てば良いだけとなった。
もちろん油断は出来ず、三宅は対象Bの監視に注力する事となったが。

さて、そうして時間が経過した。
省3
28: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)19:27 ID:7alGVdzk0(4/5) AAS
「寺田さん。寺田秀一さん。わかりますかー?」

富士野が屈みこみ、対象Aの名前を呼んで意識を確認する。

「あああ、あああぁあぁぁ、うぁ、ああああ!」

「寺田さん、落ち着いてください、大丈夫、大丈夫ですよー」

「ああああ! ああああああ! いいいいぃぃあああ!! うぅぅぅぅ!!」
省6
29: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)19:32 ID:7alGVdzk0(5/5) AAS
(……ん?)

と、その時だ。
私はふと、対象Aの様子が若干変化した事に気付いた。

「あぁ、ぁ……うぁ、あああ……!」

叫びに含まれる感情に違うものが混じり始めている。

嘆き。
あるいは悲しみ。
そう呼ぶべきものが、激しい怒りの陰から漏れ出している、ような。
省1
30: 2023/01/21(土)20:18 ID:WStYR2RWo(1) AAS
拘束したまま対象Bの四メートル以内に持っていって反応の変化を見る

(Aが範囲にいないとBが凶悪化すると見た)
31: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)08:53 ID:Kj0ngkiY0(1/7) AAS
「対象A、様子が変わったように見えます」

その気付きを、私は即座に共有した。
こういった時に最もまずいのは、気のせいだろうなどと勝手に判断し変化の兆候を見逃してしまう事だ。
勘違いだったならば後で笑えば良い。
オブジェクト絡みで悪い事態が引き起こされてしまったならそれすら出来なくなるのだ。

私の発言を受けて、富士野と森住が対象Aを覗き込む。
そして同時に表情を引き締めた。
2人とも、私が感じたと同じように対象Aの呻き声から嘆きや悲しみを見て取ったのだろう。

「対象Bから引き離した事が原因か? 戻してみるか」
省3
32: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)09:01 ID:Kj0ngkiY0(2/7) AAS
「いや、私は前者の案に賛成したい」

「……む」

それを、私は止めた。

確かに森住の言う通り、安全面だけを考えれば対象Aは処分してしまった方が良い。
唯一無二のサンプルでないと確かめられた現状では無理を押して保護する理由はない。

だが、対象Aは本来全く異常性のない一般人である可能性が極めて高く、つまりはただの被害者だ。
記憶処理による影響除去には失敗したが、回復が完全に見込めないとはまだ言えない。
ここで殺害してしまうのが正解だとは私には思えなかった。
財団職員として余計な感情ではあるのだろうが。
省4
33: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)09:08 ID:Kj0ngkiY0(3/7) AAS
そうして、対象Aは対象Bの効果範囲内に戻された。

「あぁ、あぁぁ……」

しかし、対象Aの悲嘆は収まらない。
むしろ強くなったようだ。
目の前の対象Bの見上げ、そこに手を届かせられない事を嘆いている……ように見える。

「鎮静化、はしているみたいですね……」

対象Bの至近に居た三宅が私の横に立ち、対象Aを覗き込んで言う。
省2
34: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)09:16 ID:Kj0ngkiY0(4/7) AAS
「あぁぁ、ぇぁ……う、うぁ、えぁ」

「え?」

対象Aの漏らす呻きは徐々に弱く小さくなっていく。
そしてその代わりに、何か意味のある音に変化しつつあるように聞こえてくる。

「うぅ、ぁ、れた」

「……意識が回復しつつある?」
省6
35: 2023/01/22(日)10:22 ID:FQ2WpUUso(1) AAS
このままサイトに収容すればいけそう
範囲年齢から外れていると思われる人員で対象Bの移動を試みる
36: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)13:23 ID:Kj0ngkiY0(5/7) AAS
が、その変化を私は問題ないものと見なした。

対象Aがどれほど呪いじみた感情を見せたところで、既に腕の斧は無力化されている。
拘束を解く事が出来ないならば何を言おうが関係はないだろう。

「ぬすまれ、た、ぬすまれた、ぬすまれた……!」

「盗まれた? どういう事でしょうか」

「さぁ……しかし鎮静化はしているようだし、このまま収容も可能そうですね」
省4
37: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)13:29 ID:Kj0ngkiY0(6/7) AAS
「あぁ、あぁ、かえってこない……とりかえせない」

ちょうど支援チームの準備も整ったようだ。
重い音を立てて接近する重機を見やり、片手を上げる。

「もうもどらない、にどと、にどと、にどと……!」

その間も対象Aは嘆き続ける。
いよいよしっかりとした言葉になってきていたが、やはり私は特段の対処を行わなかった。
38: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)13:31 ID:Kj0ngkiY0(7/7) AAS
そしてそれが。

「かえせ、かえしてくれ、ぬす、ぬすんだ、わたしの───」

どうしようもなく、致命的な失敗だった。

>>下1 コンマ

0-1 頭
2-3 首
4-5 胸
6-7 腕
8-9 脚
39: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)15:13 ID:vY8L/LAJ0(1/10) AAS
■ 自分で踏んで書きます
40: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)15:25 ID:vY8L/LAJ0(2/10) AAS
「わたしの、あしを、かえしてくれ……!」

その言葉を耳にした瞬間、私は自分の体が倒れていくのを理解した。
地面が急速に近付き、踏みとどまる事が出来ない。
どころか、私の下半身から全ての感覚が失われていた。

「っ!?」

「うぁっ!?」

咄嗟に腕で受け身を取ったものの、アスファルトに体を打ち付けた衝撃で一瞬思考が止まる。
隣では同様に、三宅が地面に転がっていた。
省1
41: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)15:30 ID:vY8L/LAJ0(3/10) AAS
「大塚! 三宅! 何があった!」

異変に気付き、富士野と森住がこちらに注意を向ける。

「あぁ、かえせ! かえしてくれ!」

混乱する私達の耳に、吐き出され続ける対象Aの嘆きが届く。
対象Aの声量は徐々に大きくなっていくようだった。
今はもう、離れた位置の2人にも届いてしまうだろう。

原理は分からない。
だが、何かまずい事態が進行している事だけは理解した。
そしてそれが、対象Aの「脚を返せ」という言葉をきっかけに引き起こされた事も。
省5
42: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)15:38 ID:vY8L/LAJ0(4/10) AAS
オブジェクトの処分を確認してから、富士野と森住は私達に駆け寄ってきた。
富士野は三宅を、森住は私の体を支え起こし、尋ねる。

「状態を報告しろ!」

「あ、脚の感覚がありません。そこに何もないみたいに───」

「───あ?」

そして三宅が返答した瞬間に、2人もまた地面に倒れ込んだ。
省7
43: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)15:43 ID:vY8L/LAJ0(5/10) AAS
私はようやく、自身の判断の誤りを理解した。

オブジェクトの異常性を甘く見た。
特定の人間の体を作り替え、凶暴化させるだけのものと油断した。
その結果がこれである。

悔恨に沈みながら、急速に遠ざかり退避していく支援チームの判断に安堵する。
今ここに近付くべきではない事だけは確かだろうから。

私達が何らかの異常性に感染した事は、最早明らかだった。

■ 挑戦を終了します
44: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)15:44 ID:vY8L/LAJ0(6/10) AAS
■ オブジェクトの性質公開

外部リンク[html]:dotup.org

パスワード:sssokuho
45: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)15:46 ID:vY8L/LAJ0(7/10) AAS
■ そのうち流れるので直接書き込み(内容は上と同じ)

アイテム番号: SCP-238-SS
オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル:
SCP-238-SSは低脅威度保管ケースに格納した状態で、10m×10m×10mの施錠された部屋の中央に、高さ4.5mの架台に乗せて安置されています。
また、収容室はそれ以外の区画から、完全防音が可能な隔壁によって隔離されます。

室内に無許可の人員が立ち入る事のないよう、2名以上の警備員を出入口前に常駐させます。
警備員は全身を防刃スーツで防護し、一般的なヒューマノイドを確実に殺傷可能なだけの武装を装備させ、聴覚が機能しない状態を保つ必要があります。

SCP-238-SSを用いた実験は現在凍結されています。
省31
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