安価でSCP収容 (70レス)
1-

14: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)12:35 ID:rfjrUrxdO携(1/9) AAS
「やっぱり怪しいのは対象Bでしょう。いっそ効果を確定させちまいませんか?」

「というと?」

「Dクラスの投入です」

第二の案は森住からのものだった。
その意見の過激さに、現場に鋭い緊張感が走る。
特に反応が早かったのは三宅である。
彼女は最初の強張りを再び取り戻し、震える声で反対する。

「そ、それは早計すぎませんか?」
省12
15: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)12:49 ID:rfjrUrxdO携(2/9) AAS
「……ありました。右の肩口に内出血が確認できます。左腕も僅かですが動きが不自然ですね。骨か腱を損傷しているようです」

富士野の指摘。
それは、Dクラス投入前に対象Aの脅威度をもう一度確認したいというものだった。
具体的には、鎮圧を試みた場合にどれだけの火力が必要となるか、だ。

「だろうな。腕は斧になってるが、他の部分の頑強性は変わりないらしい。これなら鎮圧は問題ないだろう」

その確認は割合容易に済んだ。
対象Aは憤怒に任せ、全力で対象Bに攻撃を繰り返している。
ここまで少なくとも40分ほどもだ。
まともな体であれば反動が無いわけがなく、実際にスコープ越しに良く良く観察してみれば消耗はそれなりに生じているようだった。
省5
16: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)13:37 ID:rfjrUrxdO携(3/9) AAS
近隣の支部から派遣されたDクラス職員達が、恐怖を孕んだ足取りでオブジェクト達に近付いていく。
彼らの首には首輪が、腰にはベルトが装着されていた。
指示への反抗や逃走を目論んだ場合に即座に処分するための爆弾だ。
それは本人達も当然知る所であり、躊躇こそ見せるものの大人しく目標に向かって足を進めている。

用意された人員は3名だった。
1人は元教職員の59歳男性。
1人は特定の職についた経験のない57歳の女性。
1人は元教職員の30歳女性。

1人目は対象Bの効果を確定させる事を期待しての選出だ。
省7
17: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)13:50 ID:rfjrUrxdO携(4/9) AAS
10m。
9m。
8m。
7m。
6m。
5m。

そして次の一歩を踏み出した瞬間、変化は劇的に発生した。

まず第一に生じたのは爆発だった。
Dクラスの男の首に巻き付いた爆弾が作動したのだ。
省12
18: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)13:57 ID:rfjrUrxdO携(5/9) AAS
「ひっ、ひやぁぁぁあぁっ!?」

そして最後に響いたのは悲鳴だった。
3人目のDクラス、30歳の女のものだ。
同僚2人の異形への変化と、その死亡。
それは彼女を恐慌に叩き落とすには十分であった。
女はほうほうの体で私達の側に必死に逃げ帰ってくる。

対象Bに接近せよという命令に反する行動だが、咎める事はない。
結果は既に示されている。
他の2人と同じ距離に接近したにもかかわらず、彼女の肉体に変化は見られず、精神状態も正常な反応から逸脱していない。
省2
19: 2023/01/21(土)14:11 ID:s4gvMtAxo(1) AAS
ヨシ! 今の所safeで収容できそうだな!
20: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)14:24 ID:rfjrUrxdO携(6/9) AAS
「対象Aの処分はやはり容易なようですね」

簡易的な実験を終えて、各々が気付いた点を発言する。
まずは私がDクラス2名の死について触れた。
異常性によって作り替えられていても、彼らの肉体は通常の火器が通じるようだ。
アスファルトに横たわった死体は動き出しも再生もせず、通常の死のプロセスに従っている。
計器類にも異常はない。

「変異は対象Bから4mジャストの位置で発生しました。両者とも誤差ありません」

Dクラスとオブジェクトの距離を計測していた三宅が繋ぐ。
これで異常性の影響範囲が特定出来たと考えて良さそうだ。
省3
21: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)14:42 ID:rfjrUrxdO携(7/9) AAS
「俺は48だ」

「39」

「私は……36です」

その流れで各自の年齢を申告する。
上から富士野、森住、私だ。

「に、25……です」
省7
22: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)14:54 ID:rfjrUrxdO携(8/9) AAS
ともかく、これで新たにオブジェクトの性質が判明した。

■ 対象Bは、4m以内に接近した少なくとも57歳以上の人間に異常性を発揮する

■ 対象Bに曝露した人間は、肉体の一部が刃物に変化する

■ 対象Bに曝露した人間は、凶暴化し対象Bに対して怒りや憎悪を抱き攻撃を開始する

■ 対象Bに曝露した人間は、肉体的な頑強性に変化はなく容易に処分が可能
省5
23: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)14:57 ID:rfjrUrxdO携(9/9) AAS
私はチラリと時計に目を落とした。
対象Aが繰り返す攻撃は、そろそろ1時間に及ぼうとしている。
先ほど確認した損傷を念頭に置いて注視してみると、対象Aの動きは徐々に、しかし明確に鈍り出していた。

>>下1 チームの行動
24: 2023/01/21(土)15:44 ID:8+faHUk9O携(1) AAS
対象Aを鎮静化、対象Bから距離を離して対象Aに記憶処置を実施する
25: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)18:54 ID:7alGVdzk0(1/5) AAS
「とりあえずは、対象Aへの対処を提唱する。明らかにそう長くはもたなさそうだ。行動変化に繋がりかねない以上、今のうちに鎮静化させ確保しておくべきだろう」

3度目の提案は富士野だ。
理屈の通ったものであり、反対の声は上がらない。
むしろ全員が積極的に賛成し、案を煮詰めて無力化を目指すことで一致した。

対象Aの発生がもっと特別な条件が必要で”再生産”が困難であれば違った意見もあっただろうが、既にDクラス2名の変異が確認されている。
対象Aは唯一無二のサンプルとは到底言えず、ここで失ったとして問題は何もなかった。
ここで対象Aの異常性を除去し無力化できるのならば、安全性の観点から見れば狙わない理由はない。

となれば、と私は頭の中で筋道を立てて発言した。

「これまでの情報を踏まえると、薬品が効かないという事は恐らく無いでしょう。鎮静剤、あるいは麻酔を投与し抵抗能力を奪い、対象Bの効果範囲外へ牽引した後、記憶処理剤による精神影響の除去を試みる……というプランでどうでしょう」
省2
26: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)19:07 ID:7alGVdzk0(2/5) AAS
「対象Aの意識喪失を確認。よし、こっちに引きずってきてくれ。対象Bとの距離に注意しろよ」

作戦の序段は特に問題なく完了した。
対象B以外に注意を払わない背中に麻酔銃を命中させるのは実に容易く、そして麻酔の効果も正常に発揮された。
命中から数分の時間をおいて対象Aは昏倒し今やアスファルトに身を横たえている。
麻酔銃に対する反撃にも警戒していたが、結局倒れるまでこちらに視線を向ける事さえなかった。
当然、牽引も全く抵抗なく行える。

対象Bから20mの位置まで運ばれた対象Aは、まずその体を拘束された。
両肘から伸びる斧は重ねて束ねる形でまとめられ、強靭なワイヤーで厳重に縛り付けられている。
実際に確認した斧の鋭利さでは到底切り裂ける強度ではない。
省4
27: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)19:17 ID:7alGVdzk0(3/5) AAS
そのまましばし、対象Aの麻酔が切れる時間を待つ。

とはいえただ棒立ちで待っていたわけではない。
これまで得られた情報をまとめ、後方への通達を同時に行いながらだ。

結果として、対象Bの収容の目途が立った。
おおよその性質と効果範囲がほぼ確定し、確保の妨げとなる対象Aがこうして拘束できた以上、障害は最早ない。
4m以内に人間が進入しないよう重機と大型コンテナを用いて移送すれば安全だろうとの判断が下ったのだ。
こうなれば後は機材の到着を待てば良いだけとなった。
もちろん油断は出来ず、三宅は対象Bの監視に注力する事となったが。

さて、そうして時間が経過した。
省3
28: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)19:27 ID:7alGVdzk0(4/5) AAS
「寺田さん。寺田秀一さん。わかりますかー?」

富士野が屈みこみ、対象Aの名前を呼んで意識を確認する。

「あああ、あああぁあぁぁ、うぁ、ああああ!」

「寺田さん、落ち着いてください、大丈夫、大丈夫ですよー」

「ああああ! ああああああ! いいいいぃぃあああ!! うぅぅぅぅ!!」
省6
29: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/21(土)19:32 ID:7alGVdzk0(5/5) AAS
(……ん?)

と、その時だ。
私はふと、対象Aの様子が若干変化した事に気付いた。

「あぁ、ぁ……うぁ、あああ……!」

叫びに含まれる感情に違うものが混じり始めている。

嘆き。
あるいは悲しみ。
そう呼ぶべきものが、激しい怒りの陰から漏れ出している、ような。
省1
30: 2023/01/21(土)20:18 ID:WStYR2RWo(1) AAS
拘束したまま対象Bの四メートル以内に持っていって反応の変化を見る

(Aが範囲にいないとBが凶悪化すると見た)
31: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)08:53 ID:Kj0ngkiY0(1/7) AAS
「対象A、様子が変わったように見えます」

その気付きを、私は即座に共有した。
こういった時に最もまずいのは、気のせいだろうなどと勝手に判断し変化の兆候を見逃してしまう事だ。
勘違いだったならば後で笑えば良い。
オブジェクト絡みで悪い事態が引き起こされてしまったならそれすら出来なくなるのだ。

私の発言を受けて、富士野と森住が対象Aを覗き込む。
そして同時に表情を引き締めた。
2人とも、私が感じたと同じように対象Aの呻き声から嘆きや悲しみを見て取ったのだろう。

「対象Bから引き離した事が原因か? 戻してみるか」
省3
32: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)09:01 ID:Kj0ngkiY0(2/7) AAS
「いや、私は前者の案に賛成したい」

「……む」

それを、私は止めた。

確かに森住の言う通り、安全面だけを考えれば対象Aは処分してしまった方が良い。
唯一無二のサンプルでないと確かめられた現状では無理を押して保護する理由はない。

だが、対象Aは本来全く異常性のない一般人である可能性が極めて高く、つまりはただの被害者だ。
記憶処理による影響除去には失敗したが、回復が完全に見込めないとはまだ言えない。
ここで殺害してしまうのが正解だとは私には思えなかった。
財団職員として余計な感情ではあるのだろうが。
省4
33: ◆kTml9wRQIIYK [saga] 2023/01/22(日)09:08 ID:Kj0ngkiY0(3/7) AAS
そうして、対象Aは対象Bの効果範囲内に戻された。

「あぁ、あぁぁ……」

しかし、対象Aの悲嘆は収まらない。
むしろ強くなったようだ。
目の前の対象Bの見上げ、そこに手を届かせられない事を嘆いている……ように見える。

「鎮静化、はしているみたいですね……」

対象Bの至近に居た三宅が私の横に立ち、対象Aを覗き込んで言う。
省2
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