【シャニマスSS】冬優子「vsあさひ、その後で」 (46レス)
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7: [saga] 2020/01/18(土)12:20 ID:K5d2CxghO携(7/26) AAS
「他の子はユニットの活動を優先したいって理由で不参加だ。うちのアイドルは団結力が強いからな」
「あさひには団結力が無いって言いたいわけね」
「はは、そういう訳じゃないよ。
あさひはただ……目の前に楽しそうな事があれば確かめずにはいられないだけだ」
8: [saga] 2020/01/18(土)12:22 ID:K5d2CxghO携(8/26) AAS
「物は言いようね……」
頬杖をついて窓の外を流れる景色をボンヤリと見ながら続く台詞を口にする。
「ねぇ、それってエントリーの枠は1人だけじゃないんでしょ?」
「そうだな、先方には期限までにエントリー人数を伝えればいい事になってる」
「それなら……ーー」
省3
9: [saga] 2020/01/18(土)12:25 ID:K5d2CxghO携(9/26) AAS
「……そうか」
「何よ、文句ある?」
「いや、もちろん無いよ。
283プロからのエントリーは冬優子とあさひだと先方に伝えておく。
そうなると、これから忙しくなるな。ダンスの振り付けにもソロ用にアレンジを加えてーー」
10: [saga] 2020/01/18(土)12:26 ID:K5d2CxghO携(10/26) AAS
アイツが何か話し続けていたけど、ふゆの耳には遠くから流れてくるラジオ放送みたいに朧げにしか聞こえていなかった。
トーナメントで勝ち続ければ、いずれあさひとも戦うことになる……
こんな時でさえ思い出されるのはアイツの無邪気に笑う顔で、それが無性にムカついた。
□□□□□□□
11: [saga] 2020/01/18(土)12:36 ID:K5d2CxghO携(11/26) AAS
【〈Rivals〉オーディション終了後・控え室】
控え室に戻ると同時に忘れていた疲労が押し寄せてきて、思わず深いため息を吐いてしまう。
バタン!!!
息を吐き切るのと同時に背後の扉が勢いよく開いた。
こんな騒がしい音を立てて部屋に入ろうとするヤツなんて1人しかいない。仕方なく振り向く。
12: [saga] 2020/01/18(土)12:43 ID:K5d2CxghO携(12/26) AAS
「冬優子ちゃん!さっきのオーディションっすけどーー」
「あさひ」と、若干語気を強めて最後まで言わせないように言葉を遮る。
「あんた勝利者インタビューまだでしょ?ふゆと話すより先にそっちを済ませなさいよ」
「あ、そういえばそうっすね。じゃ、また後で来るっす!」
嵐のように来たかと思えば嵐のように去っていく。パタパタと駆ける足音が遠ざかっていった後、ふゆは心の底からのため息を吐いた。
省3
13: [saga] 2020/01/18(土)12:45 ID:K5d2CxghO携(13/26) AAS
あさひのオーディションバトルの感想なんて聞きたくない。ましてやそれがふゆを慰めたりするものなら尚更。
まぁ、あいつの性格上慰めや励ましなんて有り得ないけど。
なんで、あいつ絡みだと感情のコントロールが上手く出来なくなるんだろう。
他のアイドルに負けたってこうはならない。
『ふゆも頑張ったんですけど負けちゃいましたぁ』なんて、あざとい振る舞いも当然できる自信がある。
でも、今は無理。
あさひにいつもの態度で接する自信がない。
勝者からの言葉を素直に聞く余裕なんて、ない。
14: [saga] 2020/01/18(土)12:46 ID:K5d2CxghO携(14/26) AAS
コンコン、とドアがノックされる。
「はい」と、告げるとプロデューサーが入ってきた。
「なんだ、あんただったの」
「冬優子、おつかれ」
「あさひの側にいなくていいわけ?あいつを一人にしちゃ何するかわかんないわよ」
省1
15: [saga] 2020/01/18(土)12:48 ID:K5d2CxghO携(15/26) AAS
「あさひは一人でも大丈夫だ。
それより冬優子、今日のパフォーマンスは良かったよ」
「負けたのに?」
心がささくれ立ってるせいでつい意地の悪い言い方をしてしまう。
「それでも、だ。
冬優子の成長が感じられる良いステージだった」
「何、あんたもしかしてふゆを慰めに来たの?
わぁ、プロデューサーさんってとーっても優しいんですねぇ。ふゆ、感動しちゃいましたぁ」
省2
16: [saga] 2020/01/18(土)12:49 ID:K5d2CxghO携(16/26) AAS
「……別に、落ち込んだりなんかしちゃいないわよ。
ステージ上でのパフォーマンスなんてアイドルの実力の一要素に過ぎないでしょ。
雑誌取材やグラビア……TV番組での対応力とか、アイドルに求められるものは沢山ある。
“アイドル”ってステージの上ならふゆはあさひに負けてるなんてこれっぽっちも思ってないんだから……」
17: [saga] 2020/01/18(土)12:51 ID:K5d2CxghO携(17/26) AAS
言葉がふゆの中で空回りしてる感覚。
喋れば喋るほど訳の分からない感情が満ちてきて、口から溢れ出てくる。
「それなのに、なんで……」
流れ落ちてくるもので頬が濡れるのを感じる。
認めたくないけど、それは涙らしい。
なんでふゆは泣いてんのよ。
続く言葉を口に出せない。
わずかな声の震えでさえ決壊しそうな感情を抑えるのに必死だった。
18: [saga] 2020/01/18(土)12:56 ID:K5d2CxghO携(18/26) AAS
「冬優子が誇り高いアイドルだからだよ。
冬優子は俺の誇りだ」
あ、ダメだ。
空気が読めないのはあさひだけで十分だってのに……
ふゆが泣きたくないのくらいわかるでしょ。なんでそういうこと言うのよ。
ホント、どいつもこいつも……
張り詰めた心の輪郭が緩んで、あとからあとから中身が溢れ出てくる。
省1
19: [saga] 2020/01/18(土)12:57 ID:K5d2CxghO携(19/26) AAS
「勝ち……たかった……!」
言葉を発してから初めて自分の気持ちに気付く。
あさひにどうしても勝ちたかった。
あの日の言葉をずっと後悔していたから。
20: [saga] 2020/01/18(土)12:59 ID:K5d2CxghO携(20/26) AAS
?『……きっとバケモノって、あんな子のことを言うんでしょ。?
普通じゃなくて、特別で、手の届かないような女の子?』?
?ふゆは?あの時、諦めていた。
あさひを理解することを、そして自分の夢を。
それはあさひと過去の自分を侮辱したも同然だ。
あさひがステージ上で動けなくなってから間違いに気付いたって遅すぎる。
一度口に出した言葉は取り消せない。
あさひ本人は知らなくたって、ふゆの記憶には刻み付けられてしまっている。
あさひを違う世界の人間だと区別して、分別を弁えた大人みたいに潔く諦めてしまった自分自身を、ふゆは許せない。
省3
21: [saga] 2020/01/18(土)13:05 ID:K5d2CxghO携(21/26) AAS
理由がよくわからない“?”が散見されるんでもう一回投稿し直してみます。
22: [saga] 2020/01/18(土)13:11 ID:K5d2CxghO携(22/26) AAS
『……きっとバケモノって、あんな子のことを言うんでしょ。
普通じゃなくて、特別で、手の届かないような女の子』
ふゆはあの時、諦めていた。
あさひを理解することを、そして自分の夢を。
それはあさひと過去の自分を侮辱したも同然だ。
23: [saga] 2020/01/18(土)13:14 ID:K5d2CxghO携(23/26) AAS
あさひがステージ上で動けなくなってから間違いに気付いたって遅すぎる。
一度口に出した言葉は取り消せない。
あさひ本人は知らなくたって、ふゆの記憶には刻み付けられてしまっている。
あさひを違う世界の人間だと区別して、分別を弁えた大人みたいに潔く諦めてしまった自分自身を、ふゆは許せない。
だからふゆは勝たなきゃいけなかった。
あさひに“一人じゃない”と伝えるために。
そして何よりも、自分自身の夢を叶えるために。
24: [saga] 2020/01/18(土)13:16 ID:K5d2CxghO携(24/26) AAS
しばらくしてようやく気分が落ち着いてきて、ゆっくりと顔を上げる。
「……悪かったわね、スーツ濡らしちゃって」
「そんな事は気にしなくていい。
少しは気分が落ち着いたか?」
軽く頷く。
「それなら良かったよ」
省4
25: [saga] 2020/01/18(土)13:18 ID:K5d2CxghO携(25/26) AAS
「……もし、冬優子が望むならの話なんだけどな」
「何?」
「オーディションバトルで3回以上勝ち上がったアイドルは翌年の〈Rivals〉でシードが与えられるんだ。
冬優子にはその権利がある。
来年はどうしたい?」
「来年も、出る。絶対に」
あさひが来年も出るかどうかなんてわからない。
けど、その覚悟がなきゃあいつと対等でなんていられない。
省3
26: 2020/01/18(土)13:22 ID:K5d2CxghO携(26/26) AAS
キリがいいので今日はここで一旦終わります。
明日で最後まで投稿するので、読んでくれている方がいればよろしくお願いします。
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