[過去ログ] 八幡「なあ雪ノ下。俺と」雪乃「ごめんなさいそれは無理。だけど――」 (142レス)
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58 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/17(木) 14:47:41.80 ID:nS0KFzpOO携(1)
久々におもしろい俺ガイルSSをみた
59 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/19(土) 23:02:01.77 ID:64BrKdoT0(1)
期待。

そしてあえてのあげ
60 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/19(土) 23:57:28.41 ID:fTMm4ehPo(1)
ageんな
61 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/20(日) 00:33:24.67 ID:d4NhzgFmo(1)
(´;ω;`)
62 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/21(月) 16:56:05.25 ID:zGC+iCNV0(1/11)

>>1です
あるサイトで失踪扱いになってしまっていたので生存報告を。
今夜あたりに投下予定です。


あと>>119には期待
63 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/21(月) 17:27:54.27 ID:/H623sxiO携(1/2)
(>>119は他の俺ガイルSSのコメントをいろんな俺ガイルSSに貼る荒らしなんだよなぁ)
64 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/21(月) 18:34:00.38 ID:1I7f91rYo(1)
どのサイトだよ…
ここではもっと期間が空くことなんてざらだろうに
とにかく期待
65 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 19:50:09.06 ID:zGC+iCNV0(2/11)

眠い。腹減った。死ぬ。あと眠い。
……結局一睡もできずに朝を迎えてしまった。
雪ノ下、小町、それから今日の由比ヶ浜の事を考えていると、どうにも眠れない。
深夜の2時頃、空腹に耐えきれずにリビングに出てみたら本当にお兄ちゃんのご飯なかったよ……。あいつ、2人分完食したんだな。
頑張りすぎだろ。


「ケータイおっけー財布おっけー」


現在午前6時ちょっと。11時に千葉集合なので早すぎる気がするが、小町が起きてくると色々と気まずいので、その前に家を出ることにした。
腹減ったし、早めに出て喫茶店にでも入っていよう。
今から睡魔に襲われたら午前中に起きれる自信もないしな。
べ、別に女の子との初めてのお出かけに胸躍らせてじっとしてられなかったわけじゃないんだからね!
そう、全然胸躍らない。だって、あの由比ヶ浜だよ?アホの子だよ?料理下手だしすぐ俺を変態扱いするしビッチだし誰にでも優しくて俺を勘違いさせようとするし。だけどこんな俺にも優しいし可愛くてトップカーストでおっぱい大きくて空気読めておっぱい大きくておっぱい大きくて……。
そんな奴とのデートなんて全然胸躍らない。むしろ由比ヶ浜がたゆんたゆん。


「うへへへへへ……はっ!?」


いかんいかん!
ついつい変な笑いが出てしまった。
しかも後半由比ヶ浜を罵倒できてないし。お前はおっぱい星人か。
つかデートってなんだよ。ばっちり楽しみにしてんじゃねぇぞ馬鹿野郎。
とりあえず最寄りの駅に向かおう、バスは使わない。
この季節の朝は少々肌寒い。頭を冷やすのにはもってこいだ。


66 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 19:51:49.89 ID:zGC+iCNV0(3/11)

「――ぃ。――」


……ん?なんだ?
誰かが肩を揺さぶっている。折角人が気持よく寝ているのに。
あと378秒だけ……。何分なんだろう?


「起きなって、こんなとこで寝るんじゃない」

「んあ?」


あまりにしつこいので顔を上げると、そこには肩くらいまでの長さの青みがかった黒髪でゴスロリな服装の清楚っぽいお姉さんがいた。目元の泣きぼくろが印象的で、少々エロティック。スカートも短くて最高に目の保養。
……誰だこいつ。


「……」

「……っ!」


誰だか思いだそうとじーっとその店員さんを凝視してしまっていると、心なしか赤くなった顔をプイとそむけた。
あれ?なんで顔赤くなってるの?これきたんじゃね?
ついに八幡にも春が来たか……。やったよ小町!
しかし、本当に見覚えがない。誰だこいつ。
つーかなんで俺はこんなところで寝ているんだ。ここはだれ、わたしはどこ?



67 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 19:53:03.58 ID:zGC+iCNV0(4/11)

とりあえず思いだそうと、周りをぐるりと見渡す。どこか店の中のようだ。
少々暗めの店内は落ち着いた雰囲気を醸し出し、客層も学生ではなくサラリーマンやマダムが大半を占めていて、カウンター席には常連客なのか、店主らしいおじいちゃんと楽しそうに談笑している人もいる。
思い出した。
千葉まで来た俺は、近くにあった喫茶店で時間をつぶしていたのだった。
いつのまにか寝てしまっていたみたいだ。
つまり、このミニスカゴスロリエロティック姉ちゃんはここの店員というわけか。
ふむ、誰だろう。


「あ、あのさ、どうしてここに?」

「え?ああ、ちょっと待ち合わせをしてまして。時間つぶしてるんですよ」


よし、ちゃんと返事できてるな。
綺麗な人に話しかけられて緊張してるのは内緒。


「そちらは?」

「あたしはバイト。近所よりもこういうとこの方が自給いいからさ……」


ふーん、通い詰めちゃおうかな。つか本当に誰なんだろう。
しかし、全然目を合わせてくれない。
もしかして嫌われてる?通いつめるのやめよう。
と、俺が脳内カルタ(意見がひっくりかえるので)をしていると、エロティック姉さん(命名)はふと何かを思い出したようにこちらを見て、


「……なんで敬語?」

「え?」

あれ?この人もしかして同い年なの?
醸し出されるエロさから、てっきり年上だと思っていたんだけど。
アネゴ肌というかなんというか。
三浦はおかん肌。



68 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 19:54:20.58 ID:zGC+iCNV0(5/11)

「あたしのことわかってる?」

「あ、あの」

「……なに?」


こっわ!何これ超怖いじゃんこの人。睨まないでよちびっちゃうじゃんか。
目を合わせてられなくて視線が自然と逃げる。俺マジチキン。
と、テーブルの上にあるマグカップに目が行く。中身は黒々としたコーヒー。
サンドイッチと一緒に頼んでまだ飲みほしてなかったんだ。眠気を覚まそうと思ってブラックのまま飲んでいた。もうすっかり冷めてしまっているが。
しかし黒いな……黒、黒のレース?


「黒のレース、だと!?」

「こ、声がでかい!店の中でなんてこと言ってんの!?」

「お前、川崎か」

「どこで判断してんのさ……!」


サッと、スカートを手で押さえて俺から距離をとる。
前に見たときは我意に関せずと言った感じだったから、何か心境の変化があったのかもしれない。
髪を下ろしているせいで全然気がつかなかったが、この泣きぼくろは確かに川崎だ。
というかなるほど。今日のパンツは黒のレースなのね。



69 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 19:54:55.03 ID:zGC+iCNV0(6/11)

「いや、大丈夫見えてない」

「言い訳がましいよ変態」


さきさきのいてつくしせん!こうかはいまひとつのようだ!
ふっ……その程度の攻撃はなんともないぜ。
貴様とは踏んできた場数が違うのだよ。
そういや最近のポケモンって漢字表記あるんだよな。時代を感じる。


「お前、こんなとこで何やってんの?」

「いや、バイトってさっき言ったでしょ」

「休みの日に休まないとか馬鹿なの?そんなに自分を追い込んで楽しい?」

「……」

「……あ」


しまったと思った。
こいつの家は兄弟がたくさんいて金銭の余裕がほとんどないんだ。
ついいつもの癖で悪態をついてしまったが、これは軽率だったな。
悪いことをしてしまった。小町いわく捻デレ、違うか。


「いや、すまん。いつもの癖で」

「気にしてないから平気。それより、あんた誰かと約束してんじゃなかったっけ?時間平気?」

「へ?いや、大丈夫だろ。何時からここにいると思ってんだ」


7時ごろにはここにいたはずだ。うたた寝したところで……。
あれ?モーニングの時間にしては遅いのに、客多くね?



70 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 19:55:55.59 ID:zGC+iCNV0(7/11)

「……今何時だ?」

「12時…7分だね」


川崎がかけてある時計を確認して言う。
12時だと!?モーニングどころかランチタイムじゃねーか!
約束の時間1時間も過ぎてんじゃねえか!
やべっ泣きそう。
八つ当たりでしかないのだが、川崎の肩を掴んで揺さぶる。


「なんで起こしてくれなかったんだよ!」

「え!?あ、いや、ち、近いって!」


いつもの強気な様子と違い、顔を真っ赤にしてイヤイヤする川崎。
不覚にもかわいいと思ってしまった。なんかいいにおいするし。
なんで女の子っていいにおいするんだろうね。
小町とか汗かいてるのにいいにおいするもん。同じ生き物な気がしない。


「あ、あたしは、その、シフトが12時で今来たばっかりだったから、あんたが寝てるの知らなかったし、その……」


涙目になってそう訴える。泣きぼくろとあいまって妙に似合ってるというか、エロい。なんか……そそられる。
……はっ!?
いかんぞ八幡。川崎はシフトが始まってすぐに起こしに来てくれたってことじゃねえか。
超いい子じゃないか。劣情を催すとか何事だ。



71 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 19:57:15.86 ID:zGC+iCNV0(8/11)

「川崎」

「ひゃう!?」

「会計頼むわ」

「……え?ああ。わかったよ」


さっさと会計を済ませて由比ヶ浜のところに行こう。かなり待たせてしまっているはずだ。
川崎の肩を離してレジに向かう。俺マジ紳士。



「モーニングセット一点で530円になります」

「ん」


いつかのレストランでも見たが、川崎はこういった接客が様になっている。
となると、心配だな……。また過労していて大志のやつが依頼をしてくるのではなかろうか。


「なあ」

「なに?」


千円札を手渡ししながら話す。目線は合わない。



72 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 19:57:51.41 ID:zGC+iCNV0(9/11)

「また無茶な働き方してないだろうな」

「……大丈夫だよ。学生の範囲内でしっかり働いてる。年齢詐称もしてない」

「そっか」

「470円のお返しになります」

「ん」


なるほど、心配は杞憂だったようだ。
そこで話は終わりのつもりだったが、釣銭を渡しながら川崎は続ける。


「あんたのおかげだよ」

「あ?なんでだよ」


目が合う。


「スカラシップを知らなければ、多分あのまま無茶なことを続けてたと思う。大志とも仲直りできなかっただろうし、だから、あんたのおかげだよ。ありがとう」


まっすぐとした目で、今まで見たこともないような微笑みをたたえて、川崎はそう言い切った。
恥じらうこともせず、臆することもせず。
多分、これが川崎の心からの嘘いつわりのない言葉なのだろう。
……川崎の代わりに恥ずかしくなってしまった。
素直にお礼を言われるのってこんなに恥ずかしいことなのか。俺は嫌われ者でいいや。
なので、照れ隠しに一言。


73 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 19:59:15.23 ID:zGC+iCNV0(10/11)

「ブラコンめ」

「黙りなシスコン」

「否定はしないね。俺は小町がいれば生きていける」

「……いや、流石にそれはキモい」

「ぐっ」


川崎の目が死んでる、俺よりも死んでる。
これも嘘いつわりのない川崎の本心に違いない。これは弁明した方がよさそうな雰囲気。
ふいんき?ふんいき?多分由比ヶ浜は間違えるんだろうな。正解はふんいき。


「ばっかお前、こんなんで助けになったとかどんだけ悲しい人生を送ってんだよ。それにそんなこと言ったら俺だって、今回お前に起こされなかったらどうなってたかわからねぇぜ?文化祭のときだってお前のおかげで解決したようなもんだし、むしろ俺の方が助けられてるまである」

「ぶ、ぶんしゃかい……」


なぜか俯いてしまった。
照明のせいか、顔が赤いようにも見える。
あとぶんしゃかいってなんだよ。噛みすぎだろ。
……っと、談笑している時間もないな。由比ヶ浜のところに急がないと。


「サンキュー川崎!愛してるぜ!」


言い捨てて全力で走る。あれ?前にも同じことやった気がする。
閉まりかけたドアの後ろからおぉーという歓声となんだかものすごい絶叫が聞こえた気がするけど、とにかく急ごう。



74 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/21(月) 20:01:11.17 ID:zGC+iCNV0(11/11)

ガハマさん期待の人はごめんなさい。
ずっと暗いのは(>>1の)精神的にきついと思ったのでワンクッション入れました。

羞恥に悶えるサキサキかわゆす
75 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/21(月) 20:02:26.03 ID:MpVB60Cyo(1)
サキサキが一番可愛いからしょうがない
76 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/21(月) 20:03:33.59 ID:9OhKAdmio(1)
連絡なしで1時間以上待たされるのは辛いな(´;ω;`)
77 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/21(月) 20:19:20.50 ID:/H623sxiO携(2/2)
サキサキかわゆす
78 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/21(月) 21:11:30.14 ID:j9Y0gfpAO携(1)



つまりガハマさんとの話は相当重い物になると……
79 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:16:47.31 ID:KpYjsv39o(1)
ルーズな友達ならともかく好きな人との待ち合わせで連絡なしで1時間待たされるとか過去のヒッキーのトラウマレベルじゃね
しかも振られるとかガハマさん(´・ω・`)
80 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 15:32:02.17 ID:RWUEYSlk0(1/2)
>>1です
なんか…
ハードル上がってる…
81 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 15:32:02.17 ID:RWUEYSlk0(2/2)
>>1です
なんか…
ハードル上がってる…
82 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:20:09.63 ID:zNif4qXz0(1/21)
>>1です。
上二つが連投になってますね。申し訳ないです。
モバイルはよくわからん……


以下投下

83 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:21:09.57 ID:zNif4qXz0(2/21)

千葉駅前。
昼時だからか、人の流れは店内に集まり、通り自体はそこまで人は多くなかった。
人の間を潜り抜けるスキルの出番はなくなったが、急いでる身としてはありがたい。

現在時刻を確認しようと、ポケットに入っているスマホを取り出した。
多分由比ヶ浜からの連絡も入っているはずだ。が、


「電池切れかよ……」


昨日のあれこれのせいで充電することを完全に忘れていた。
ガラケーならそこそこ電池は持つだろうが、いかんせんスマートフォンは消耗が激しいのだ。
不便だなぁ……。


「あ」


いた。
携帯電話を片手に、心ここにあらずといった風にキョロキョロしている。
時折画面に目を落としては、焦燥感たっぷりにまたキョロキョロしだす。

……なんか、捨てられた犬みてぇだな。
飼い主を必死に探して途方に暮れている感じ。なんなら尻尾が見えるまである。
犬耳とかホント似合いそう。


「わり、待たせた」


駆け寄って、由比ヶ浜の後ろから声をかける。
すると、目頭一杯に涙を溜めた彼女が振り返る。


「ヒッ、ヒッキぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

「うおっ」


憑き物から解放されたかのように安堵の表情を浮かべ、抱きついてくる。
やめろ!なんでリア充はこうも身体的スキンシップをとりたがるかな!?
なんか柔らかいしいいにおいするし体温があったかくてあああああああああああああ!



84 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:22:12.66 ID:zNif4qXz0(3/21)

由比ヶ浜が落ち着いたようなのでとりあえず引き剥がした。
色々とよくない。
周りの目とか俺の精神とか。
マジでやめてくれ。うっかり好きになったらどうするつもりだ。


「大丈夫!?なんか事故に巻き込まれたとか車に轢かれたとか!?」

「いや、むしろ体の方は完全体と言っていいほど元気だ」

「じゃ、じゃあどうしてこんなに……ケータイもつながらないし……」

「それなんだけどな……」


俺は、遅れた事情を話した。
早めに家を出て喫茶店に入っていたこと、そこでいつのまにか寝てしまっていたこと等。
それから、川崎がそこでバイトしていて、もう心配はないということも一応話しておいた。
前の依頼のときは由比ヶ浜もいたしな。報告した方がいいだろう。
すると。


「……ヒッ、ヒッキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」

「うおっ」


さっきの『ヒッキー』とは違う『ヒッキー』だった。
威圧感丸出しで、尻尾があったら逆立っていることだろう。カマクラとか怒ったときには思いっきり毛を逆立てるもん。
それも俺と親父にだけ。小町と母に対しては絶対にそんなことしないのに。
我が家のヒエラルキーがこれだけでわかってしまう。
あれ?もしかして逆立つのって猫だけ?
犬は威嚇するだけだって?ははっ、知らんなあ。


「あたしをこんなに待たせてずっとさきさきとイチャイチャしてたの!?ありえないし!」

「いや、川崎と話してたのは10分くらいでだな……」


……違うだろ、ここを弁解してどうする。
由比ヶ浜が怒っているのは遅れたことに対してであって、川崎との遭遇はポイントではない。



85 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:23:27.18 ID:zNif4qXz0(4/21)

「待ってる間いろんな人に声かけられて怖かったんだからね……」


そうか……。
由比ヶ浜はかなりかわいい。クラスでトップ3であることは間違いないし(あーしさんセレクション)、
トップカースト特有のキラキラオーラを纏っているのだ。その辺の男どもが食いつくのも無理はない。

そんな中を1人で待っているのは心細かったに違いない。


「それに、心配もしたんだよ?もしかして、また……」


また、というのは入学式の事故のことを指しているのだろう。
気にしなくていいと言ったのに、本当にいいやつだ。
ほんとに、なんで俺みたいな最底辺とからんでるんだか。


「とにかく、遅れて悪かった。昼飯はまぁ、おごるよ」

「そんなことよりも!さきさきとどんなこと話してたの!」

「え?そこなの?」

「何が!」

「いや……」


ポイントだった。わけわからん。
つーか温度差激しいな……。テンションの変化についていけない。


「別に大したことは話してないな。前半は川崎だって気付かずに話してたし、バイトの話くらいしかしてない」

「へ?気付かなかったって?」

「髪の毛下ろしてたんだよ。いつもはポニテだからな、全然わからなかった」

「ふーん。どんな感じ?」

「そうだな……いつものサバサバした感じが抜けて、キレイ系お姉さんって感じだった」


「そ、そうなんだ……」



86 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:24:23.22 ID:zNif4qXz0(5/21)

すると、由比ヶ浜が上目遣いで濡れた瞳を向けてきた。
上目遣いやめてほんとに。これ以上心臓をドキドキさせないで。不整脈になっちゃう。


「ヒッキーって髪の毛は下ろしてる方が、好き?」

「別に……どっちでもいいんじゃねぇか」


どう返せばいいのかわからなくて、曖昧な返事を返す。
どうしたらいいかわからないときのボッチ流奥義である。
……ギャップ萌えって、いいよね。

と、由比ヶ浜が突然お団子をほどいてしまった。


「ど、どうかな?」

「おう……」


下ろした髪は雪ノ下ほどではないが長く、顔の輪郭を覆っている。
そのため、ただでさえ小顔なのにさらに小さく見える。
いつものビッチっぽさは鳴りを潜め、清楚さを演出していた。
ギャップがすごいな……。川崎もそうだが、女子というのは髪を下ろしただけでこんなにも雰囲気が変わるものなのか。
映画版ジャイアン的な変化だぞ……。

「あんなにビッチっぽかったのになんだか清楚でかわいらしくなってるじゃねぇか」の法則。
略してあなるの法則。異論は認めない。
ただ、若干の外ハネと色の明るさはアホっぽく、それが由比ヶ浜らしいと言えばらしい。


「なんだ、その……いいんじゃねぇか、いつもと違う感じがして」

「そう、かな?えへへへ」


少し頬を染めてはにかむ由比ヶ浜。

こんな時間も悪くないなと思う。馬鹿な話をして笑いあって、時には照れくさいことも話したりして。
由比ヶ浜を見ているとつい思ってしまう。勘違いであることは間違いないが、それでも考えてしまう。もしかしたら、と。


「……」


……雪ノ下は、どんな思いだったのだろう。
彼女はどんな思いで告白をしてくれたのだろう。
そして、その想いを踏みにじった男をどう思っているのか。



87 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:25:05.60 ID:zNif4qXz0(6/21)

「ここか?」

「うんっ」


やけにテンションが高い由比ヶ浜と八幡くんがたどり着いたのは、目的地のハニトーの店である。
もう、店が見える辺りに来ただけで甘いにおいが漂っていた。店の前ともなると、もう都会特有のあの湿りきったにおいも完全にシャットアウトされてしまっていて、すでに胃もたれしそうな感じ。

カラカラン、という小気味のいい音とともに入店する。先ほどの喫茶店と違い、ここはどうやら前払い方式みたいだ。スタバみたいな感じをイメージしてもらえるとわかりやすいと思う。
注文及び会計を済ませ、商品を受け取ってから空いている席を探す。
俺の奢り。財布がまた寂しいことに……。
奥の方の、ワンブロックだけ隔離されたように存在する場所を見つけ、腰かけた。

他の席からは離れているし、会話が聞かれることはないだろう。何かを話すのにおえつらえむきの場所だった。
ガラス張りの為、外からは見えるようになっているのだが、それは大した問題ではないだろう。
デカイ1つを真っ二つにして、2人の前にそれぞれ置いた。


「じゃ、食うか」


自分の分を一口サイズに切り分けて頬張る。うん、甘い。
見た目はまさにパンで、文化祭の時のものと大して変わらなかった。
違いと言えば、クリーム以外にもベリーやアイスクリームが乗っているということだろうか。
……やっぱり昼食に食うもんじゃないな、これ。

コーヒーを一口啜ろうと思い、やっぱり熱くてやめたところで気がついた。
由比ヶ浜はまだ一口も食べていない。
表情も先ほどのハイテンションが嘘のように暗いものへと変わっている。



88 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:26:04.94 ID:zNif4qXz0(7/21)

「どうした?」

「うん……」


何か迷ってるような、切り出すことをためらうように視線をさまよわせる。
切り出すと言っても目の前のハニトーではなく、昨日の奉仕部についてだろう。由比ヶ浜が今日を約束の日にした理由は、それなのだから。


「何か話したいことでも?」

「え?あ、うん」


俺から話題を切り出すとは思っていなかったのか、少し驚いたようなリアクションをとる。


「昨日さ、ゆきのんとなにがあったの?」

「……逆に、なんで何かあると思ったんだ?」


質問に質問で返すのはよくないが、まずは情報収集することが大切だ。
由比ヶ浜から見たものをまず把握することで、自分の置かれている状況をより深く知ることを第一とした。


「だって……ゆきのんすぐ帰っちゃったし、ヒッキーだって様子がおかしかったもん。声をかけてるのに『ああ』とか『うん』しか言わないし」

「……ちょっと考え事しててな。周りにまで気が回らなかった」

「どんだけ集中してたの……。とにかく、ヒッキーは反応がないしゆきのんも電話に出ないし、せっかく打ち上げしようと思ってたのに中止にしたんだよ?小町ちゃんも待たせちゃってたし、いろいろ大変だったんだから」

「打ち上げ?文実か?」

「ううん、奉仕部の」


なるほど。昨日の夕飯が異常に遅くなっていたのは予定されてた打ち上げが中止になったからか。
小町もスタンバイしていたから、帰るのが遅くなってしまったのだろう。
これで、由比ヶ浜が部室に来るのが少し遅かった理由もわかった。



89 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:26:40.03 ID:zNif4qXz0(8/21)

「それで、なにかあったの?」

「大した話じゃねぇよ。文実の事とか相模の事とかを話してたんだ」

「それだけ?」

「あとは……1人で抱え込むな、みたいなことも言われたか」


ここまで嘘は言っていない。
ここからは言ってはいけないラインに入るのか。


「……それだけ?」

「ああ」

「ほんとに?」

「いや、それだけだって」


由比ヶ浜の疑問は当然だ。それだけの話題で昨日のような状況が起こりうるわけがない。
濡れた瞳は、疑いのまなざしをやめようとはしない。


「ま、とにかく食おうぜ。大分待たせちまったし、腹減ってんだろ?」


露骨な話題変換。これで意識がそちらへ向いてくれればいいのだが。


「……ゆきのん、泣いてたよ」

「……」

「あたしと通り過ぎる時ね、ゆきのんが目を拭いてたんだ。ゆきのんが泣いてるのなんてはじめて見たし、ヒッキーもなんかおかしいし、これはなんかあったんだなーって」


由比ヶ浜の言葉には、どこか確信めいた響きがあった。



90 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:27:45.17 ID:zNif4qXz0(9/21)

「そうか」

「……なんで、何も言ってくれないの?何も教えてくれないの?あたしたち、友達、だよね?」


笑いながらそう言ったが、最後の方は涙に滲んでしまって聞き取りづらい。聞き取り、辛い。
おそらく由比ヶ浜は、俺や雪ノ下以上に何も知らない。
それゆえ、辛い。取り残され、自分には何も知らされない歯がゆさ。
何もできない……非力さ。


「ヒッキー、あたしじゃ、だめかな?力になれないかな?」

「……お前には関係ない。」

「関係、ないのかなぁ?あたしも奉仕部なんだけどなー」


由比ヶ浜はこぼれそうになった雫を、手の甲でふき取る。
そして、笑った。辛そうに、辛そうに。

……手が、震える。歯がガチガチ鳴って、噛みあわない。
一言でも発してしまえば、何かが決壊しそうだった。


「ねぇヒッキー」

「……ぁ?」


小さく絞りだすのがやっとだ。
いろんな覚悟をしてきたはずなのに、なぜだろう。


「ゆきのんのこと、好き?」


突然の問い。
由比ヶ浜が昨日のことを知っているとは思えないから、きっと当たり障りのない、友人としての印象を聞いているのだろう。
しかし。


「あたしのこと……好き?」

「え?」



91 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:28:16.83 ID:zNif4qXz0(10/21)

雪ノ下の話じゃないのか?
どうしてお前が出てくる。


「あたしは、好きだよ。ゆきのんも……ヒッキーも」

「なにを言って……」

「だからあたし、もう待たない。ヒッキーが近づいてこないならこっちから行く。だって――」


一度言葉を区切って、大きく深呼吸をした。
そして、まっすぐこちらを見据えて言い放った。


「――ヒッキーのことが好きだから」

「っ……!」


心臓が止まるかと思った。
今まで散々勘違いだと、間違えだと遠ざけてきた答えを、他でもない本人によって突きつけられてしまった。

――そして、不意に言葉が溢れだした。


「…めろ」

「え?」


止まらない。


「やめろよ」


さっきまで何も言えなかったのが嘘だったかのように。



92 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:32:03.18 ID:zNif4qXz0(11/21)

「やめてくれ。そんな言葉をかけられても、惨めになるだけなんだよ。そんなお情けの優しさなんざ求めてねぇ」

「ヒッ、キー?」

「めんどくさいんだよ。俺は1人でいたいんだ。こんな休みの日に引っ張り出しやがって……群れたいんだか何だか知らないけど、俺に構わないでくれねぇかな」


拭ったはずの涙が、再び由比ヶ浜の目元に溜まっていく。
しかし、比企谷八幡の言葉は止まらない。


「っつーか、なんでだ?犬を助けたことか?あれは目にとまったから見捨てられなかっただけであって、別にお前だから助けたわけじゃないんだよ。そんな勘違いで好きになっちゃいましたーってか。……笑えるよ」

「っ、ぁ……」


涙がぽつぽつと流れ落ち、机の上に染みを作っていく。


「で?もしかして髪を下ろしたのも俺の反応が気になってなの?ご苦労なこったな。似合ってんじゃね?」

「っ!」


由比ヶ浜は走って行ってしまった。
カラカラン、という音がやけに耳に残った。


「……ふー」

緊張から解放された安堵で息を吐く。
あーあ、笑っちまうよ、ほんと。
仕方ないよな。雪ノ下の気持ちを知ったら、由比ヶ浜は奉仕部から離れるに決まってんだから。
でも、由比ヶ浜もか。モテモテだな。
……これで、俺は奉仕部にいられなくなったな。


「ははっ、は……、っ」



93 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:32:52.93 ID:zNif4qXz0(12/21)

しだいに、せき止められていた何かが溢れかえってきた。

濁流に飲み込まれる森のように。
豪雨によって破壊されるダムのように。
すべてが決壊した。

「―――――――――っ」


声にならない、慟哭。

覚悟はしていたんだ。俺があそこから――奉仕部から消えることを。
最悪のケースでも、せめて雪ノ下と由比ヶ浜の二人が元通りの関係のままいられればそれでいいと思ってた。
それなのに、涙が止まらない。
もう、戻れないんだよ。あきらめろ。
そう言い聞かせても、まるで言うことを聞いちゃくれない。

ガラスの外には、誰1人としていない。
隔離された座席には、誰もこない。
1人きりの、独りきり。
覚悟していたことじゃねぇか。元に戻るだけだろうが。

机に残ったのは、真っ二つになったハニトーに、カップが2つ。
目の前のハニトーに手を伸ばし、そのままかぶりつく。
――しょっぺぇ。
誰だよ甘いって言ったやつ。メチャクチャしょっぱいじゃねぇか。
……クソッ。
意味わかんねぇ。


94 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 14:36:26.88 ID:zNif4qXz0(13/21)

本当はガハマさんと比企谷の約束ではカラオケパセラに行くことになっているのですが、物語の都合上勝手に変えました。てへぺろ。

原作に沿った話を書けない>>1の非力をどうかお許しください……
95 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 14:48:03.12 ID:jPmEHBqDO携(1)
早く続き読みたい
96 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 15:09:17.43 ID:Pxaz5KPyO携(1)
なんでもいいから続きをはよ! はよ!!
97 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 17:45:03.14 ID:0QOsxsqCO携(1)
とりあえず落ち着けし
98 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/25(金) 18:08:17.44 ID:C38eSpstO携(1)

やっぱSSLって最高だわ!
99 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 18:24:25.93 ID:lh1ykrHcO携(1)
ええで
100 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 18:34:02.04 ID:svUMlKzK0(1/2)
俺ガイルssとは 八幡とはこうあるべきっていう感じだわ
101 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 18:34:52.67 ID:svUMlKzK0(2/2)
俺ガイルssとは、八幡とはこうあるべきっていう感じだわ
102 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 20:20:28.23 ID:oWH+k9wTO携(1/2)
八幡も難儀な男だな…
103 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 21:02:38.83 ID:1jhrZz3/o(1)
いいよ〜
104 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 21:04:22.50 ID:cabvb7+kO携(1)
あぁ^〜胃がキリキリするんじゃ〜〜
105 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 21:26:38.06 ID:zNif4qXz0(14/21)

書けたので、本日第二弾投下
106 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 21:27:20.46 ID:zNif4qXz0(15/21)

「ひゃっはろー!」

「!?」


なんだ!?
突然の声に視線が動く。
そこには強化外骨格もとい、雪ノ下陽乃が微笑みを浮かべて立っていた。


「どったの比企谷くん?泣いてるの?」

「あ……」


慌てて涙をぬぐったが、もう遅いか……。泣き顔を見られるとは、屈辱である。
しかもよりにもよってこの人に……
あれだけ流れていた涙は、それが嘘だったかのように止まっている。
陽乃さんぱねぇ。一瞬で涙腺を固めてしまった。


「相席失礼するねっ」

「嫌です」


今は怖いものが何にもないので、言いたいことを言ってみた。が、そんな拒絶をものともせずに陽乃さんは目の前に腰かけた。
自暴自棄になってもこの人には勝てないのか……。


「さっきのは彼女さん?可愛い子だったね」

「……雪ノ下さんには関係ありませんよ」


やっぱ見られていか……。
しかし、あれが由比ヶ浜だということには気づいてないようだ。


「んー、関係ないことはないかなー。さっきの見て雪乃ちゃんはどこかに行っちゃったし。ケータイにも出ないんだよねー」

「雪ノ下……?見たって?」


「今日は雪乃ちゃんとお買い物してたんだよ、この辺をぷらぷらと。そしたら突然雪乃ちゃんが固まっちゃってさー。店の中見てるなーって思ったら比企谷くんが女のことデート中だったってわけ!」



107 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 21:28:04.49 ID:zNif4qXz0(16/21)

おねえさんびっくりだよー。と、陽乃さんは由比ヶ浜が注文していたレモンティーを一口あおった。
なんでその一動作が既に眩しいの?蛍光塗料でも塗りたくってんじゃないの?
いや、それよりも気になるのは……


「それで、その雪ノ下はどこに?」

「さあ?一目散に駆けて行っちゃったからわかんない」


そして、今度は由比ヶ浜のハニトーを一口食べた。
口の端に付いたクリームを舐める動作が淫靡でエロい。
というかさ、と雪ノ下さんは続ける。


「あれってガハマちゃんだよね?」

「……そうですけど」


気付いてましたか……。
やっぱ髪下ろしてたくらいじゃそう変わらないよな。


「そっかー、ガハマちゃんだったかー……。雪乃ちゃんの入り込むスキはなかったわけね―。で、その可愛い可愛い彼女はどこ行っちゃったのかなー?」

「……っ」


フラれた?もしかしてフラれちゃったー?と、陽乃さんは机を乗り出して顔を近づけてくる。
香水か何かだろうか。うっすらと花のような香りが漂ってくる。
そんな香りも、今は不快感を増長させるものにすぎず。


「なんだっていいじゃないですか」

「雪乃ちゃんがおかしいんだよね」


「……」

またこっちの話を無視して話し始めたよ……。
しかし、そのおかしくなった原因には心当たりがある。



108 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 21:29:23.30 ID:zNif4qXz0(17/21)

「いつもなら絶対に私の買い物になんて付いてこないのにさ。今日は二つ返事でオッケーだったんだよ?なんかおかしいと思わない?いつもは軽くかわされちゃう雑談にも耳を傾けてくれるしさー。……ちょっと、面喰らっちゃったよね」

「……文化祭の貸し借りの延長なんじゃないですか」


これは、別に嘘というわけではない。雪ノ下は貸し借りを作ることを嫌うし、作ってしまった借りのせいで強く出られなくなったということは十分に考えられる。


「まあ、それも考えたんだけどね。けどさ、私は今日の君たちと重ねて考えた方が面白いと思ったよ」

「おもしろいって……妹の異常でしょう?楽しむものじゃないと思うんですけど」


俺は、小町が困ってたら絶対に楽しもうとはしないだろう。
何が何でも助けるね。死んでも助ける。あ、これ八幡的にポイント高い。


「面白い、とは言っても楽しむって意味じゃないんだよ?ただ、こう考えた方が深みが増すなと思ったの」

「深み……?」


陽乃さんはニコッと笑い、


「雪乃ちゃんは比企谷くんに告白してフラれた」

「!?」

「そして、元気のない雪乃ちゃんを不審に思った由比ヶ浜ちゃんは比企谷くんに相談、そこで勢い余って告白してしまう。でもフラれちゃう。そして今に至る。どう?」



109 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 21:30:01.03 ID:zNif4qXz0(18/21)

正解だ……。
なんだよこの洞察力は。異常すぎるだろ……。


「一体、何の根拠があってそんなことを?」


こんな聞き方じゃ肯定してるも同じだ。
しかし、それでも素直に認めるわけにはいかなかった。鎌をかけられてるだけだったら自ら告白することになってしまう。
それだけは避けたかった。


「ん?それは、雪乃ちゃんが2人を見て逃げたから、かな。顔を合わせにくい状況とすると、そういうことかなーって思って」

「……自分以外の部員が集まっていたらショック受けると思うんですけどね」


これは実際ショックだ。
いつかのテストのとき、雪ノ下と由比ヶ浜が2人で勉強会をしているのを見たときは相当辛かったなぁ……。
なんで俺も誘ってくれなかったんだろ。


「それはないかな」

「ふっ、あなたが思っているほど雪ノ下は強くありませんよ」


なぜか強気になる俺。


「そうじゃなくて」

「え?」

「遠目からじゃガハマちゃんだってわからないよ、あれ。凄いイメチェンだよね。」

「え、じゃあ、なんで雪ノ下さんはあれが由比ヶ浜だってわかったんですか」


聞けば聞くほどわからない。
さっきから質問ばかりしていて、すっかりこの人のペースに乗せられてしまっていることだけはひしひしと伝わってくるが。



110 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 21:30:35.98 ID:zNif4qXz0(19/21)

「私がこのお店に入ったのは、イチャついてる2人を懲らしめようと思ったからなんだ。でも、ドアの前のところでガハマちゃんが泣きながら出てきてさ。ここでやっとさっきの可愛い子がガハマちゃんなんだ―って気付いたの。だから、多分雪乃ちゃんは知らない」


懲らしめるとかいう不穏な単語が聞こえた気がするけどとりあえず放置で……。

だが、そうなると雪ノ下はなぜ走り去って行ったのか。
俺と共にいた彼女(仮)は雪ノ下からしてみれば敵で、敵前逃亡は雪ノ下が最も嫌うような事ではなかったか。
……陽乃さんも様子がおかしいと言ってたし、昨日のことで参ってしまっているのかもしれない。


「ねえ、比企谷くん」

「あ、はい」


あ、ってなんだよ。合いの手なの?


「さっき君は雪乃ちゃんは強くないって言ったけど、その通りだよ。あの子は弱い。脆弱で、多分君が思っているよりもはるかに脆い。繊細で、今にも消えてしまいそうなんだよ」

「……」


反論したい部分がたくさん、いやむしろ全部と言っていいほどあったが、陽乃さんの表情を見て口を引っ込めた。
そこにはいつもたたえている微笑みはなく、真剣そのもののまなざしがあった。
彼女は強化外骨格を脱ぎ捨ててこうして俺と向き合っている。ならば、それは真剣に受け止めなければならないと思った。


「だから、私は雪乃ちゃんに強くなってもらいたいと思ってる。君にはもうばれちゃったけど、雪乃ちゃんに対してやってる嫌がらせは、彼女に乗り越えるべき壁を作るためなんだよ。そして、そんな雪乃ちゃんを強くしてくれるのは」


と、陽乃さんはそこで言葉をいったん切って、俺の目をまっすぐ見つめてから続けた。
君だよ、と。



111 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 21:31:13.05 ID:zNif4qXz0(20/21)

「俺が、雪ノ下を?」

「うん!」


そこで、またいつもの微笑みに戻ると、陽乃さんは立ち上がった。


「待って下さいよ。それ、どういうことですか」

「言葉の通りだよ。君はきっと、雪乃ちゃんを強くしてくれる。だから、雪乃ちゃんの思いを、ちゃんと受け止めてあげてほしいな」


その言葉が「だから」でつながるのはおかしいと思ったが、きっと彼女の考えは俺なんかよりもずっと深く、広いものだ。
じっくり行間を読めということだろう。……読み取れる気がしねぇ。


「比企谷くん」

「はい?」

「君の自己満足に雪乃ちゃんを巻き込むのはやめてね。おねえちゃん、許さないよ」


にっこり笑ってそう言うと、強化外骨格は満足そうに去って行った。
あれほど恐ろしい笑顔は見たことがありません。やはり小町は陽乃さんには遠く及ばないな。安心安心。

……きっと、あの人には俺の考えや行動などすべてお見通しなのだろう。
不本意ではあるが、気を落ちつけることができた俺は、冷めたコーヒーを一気にあおると席を立った。
ハニトーはほとんどが残っているが、食べる気にはならない。
もういろんなもんで、腹がいっぱいだった。

112 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/07/25(金) 21:33:58.25 ID:zNif4qXz0(21/21)

以上です。

実は地の文の改行を少し増やしました。
以前と比べてどうでしょうか、意見があったらお願いします。
113 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 21:35:03.89 ID:Ml8hSab50(1)
読み易いし面白いよ
114 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 21:38:47.66 ID:M83FrduOo(1)

良かったです。良かったですが…ものすごくぶん殴りたくなる八幡ですねww
まあこれが原作に近い八幡なんでしょうけど、ほんまめんどくさい男よ
115 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 21:38:52.72 ID:6AN0zuRAO携(1)
面白いっす
116 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 23:55:03.44 ID:oWH+k9wTO携(2/2)
八万の過去の境遇を考えると仕方無いのかな、と思う ゆきのんと結衣には申し訳ないけれど
117 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 00:10:47.34 ID:OhthewtOo(1)
今6巻の後だから校内の八幡の評判は最悪なんだよね
118 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 01:45:02.45 ID:yb9M8a+UO携(1)
ゆきのんが幸せになってるとこを早く見たいけどそうしたらこのSSは終わってしまうという
119 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 09:53:34.92 ID:I8VkRzGno(1)
散々待たされたのにまず心配の言葉が出てくるガハマさんマジ天使
しかしいくら過去があるにしてもほんとめんどくさいなー
ラノベ界で一番攻略だるいんじゃないか
120 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 10:17:52.12 ID:5bnma7vxo(1)
いくら原作の八幡でもここまで酷い対応はしねぇよ
121 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 11:17:59.45 ID:tcmjceXKO携(1)
全く人の気持ち考えてない話し方だもんな
122 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 14:18:46.37 ID:++h3t6ZDO携(1)
感情がよくわからないからこその理詰めだからね、仕方ないね
123 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 14:35:26.00 ID:zlurOOYCO携(1)
原作者の学歴は?
124 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 16:55:10.05 ID:qFIGK2oXO携(1)
Wikipedia見たら明治大学卒だって
125 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/27(日) 03:11:25.12 ID:aqfFZ9E7o(1)
まじかWikipediaすげえ
126 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/27(日) 19:23:50.76 ID:JECSwryL0(1)
>>1乙
これ収集つくのかwwwwww
127 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/27(日) 21:28:12.75 ID:JB4G4F/ro(1)
風評被害
128 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/01(金) 07:12:24.12 ID:hSqlt3KDO携(1/2)
乙、追い付いた
面白い

このSSの八幡は序盤から色々あって、かなり感情的になってるから原作よりも対応が酷くみえるんだと思う
129 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/01(金) 07:13:58.26 ID:hSqlt3KDO携(2/2)
ごめんなさい。あげてしまった
130 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/01(金) 09:08:43.13 ID:0Ex+3IKN0(1)
>>1です
ちょっと停滞気味で、まだ次回分書けてません。しばしお待ちを…
131 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/05(火) 13:45:05.65 ID:cOzzYdM4O携(1)
待ち遠しい
132 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/21(木) 07:47:44.13 ID:AxB5Yuiho(1)
ここからさきさきのいいとこ取りが始まる
133 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/22(月) 07:02:30.91 ID:UHxxZSM/o(1)

134 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/23(火) 16:04:31.56 ID:lP7WMbXL0(1)
…もう書かないっぽい?
135 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/25(木) 14:49:45.70 ID:fa/JPH3d0(1)
中絶するの多いよな
136 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/26(金) 04:05:37.14 ID:rxfQGUu8o(1)
ダメみたいですね
137 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/26(金) 16:08:13.58 ID:6LU0cgAf0(1)
残念ですな。
煮詰まった所から挽回する方法が浮かばなかったのかも。
138 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/10/04(土) 19:02:10.51 ID:eU5p11DiO携(1)
遅れてすみません。

もう少し時間かかります。
139 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/04(土) 19:34:26.38 ID:9KzcTimDO携(1)
ガタッ
140 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/04(土) 19:38:20.07 ID:pqklf1IVo(1)
SSLを手打ちしてる時点でお察しだな
141 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/04(土) 19:57:01.05 ID:cUKkQ0rN0(1)
期待してます
142 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/05(日) 01:28:49.16 ID:jxSazMBE0(1)
末尾がもしもしになってるぞ
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