[過去ログ] 日向「強くてニューゲーム2」 (472レス)
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1 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/15(火) 01:31:59.95 ID:lXuWbvwp0(1/2)
これは日向「強くてニューゲーム」の続きです


前回は最後の方で荒らしが湧いたりしましたが気にせず書き続けていきます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1397493119

2 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/15(火) 01:52:10.56 ID:OVziy0bE0(1)
スレ立て乙
3 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/15(火) 02:50:11.57 ID:lXuWbvwp0(2/2)
日向「……あ…れ…?ここは……」

日向「そうだ!狛枝の爆弾に巻き込まれて、それでっ!」

日向「……死んだ……のか…」

「いいえ、まだアナタは死んではいませんよ」

日向「うわっ!…お前誰だよ」

「僕の名前はカムクライズルです」

日向「カムクライズル?」

カムクラ「……アナタに少し聞きだいことがあるのですが」

日向「なんだよ?」

カムクラ「なぜアナタは他人のために、自分に害成す人間のために、クラスメイトのために、知人のために、データのために、恋人のために、ツマラナイことのために、自分が傷付いてまでそれらを助けようとするのですか?」

日向「それはみんなのことを言ってるのか?」

カムクラ「十神 白夜、花村 輝々、小泉 真昼、九頭龍 冬彦、澪田 唯吹、七海 千秋、弐大 猫丸、終里 赤音、辺古山 ペコ、西園寺 日寄子、ソニア ネヴァーマインド、左右田 和一、田中 眼蛇夢、罪木 蜜柑…………この人たちをなぜそうも助けたがるのか……助けあいなんてツマラナイ……」

日向「それは……」



4 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:36:42.64 ID:fX5a1w8N0(1/24)
神奈川県平沢市立菊谷中学校
3年A組クラス名簿

 

Now 1 student remaining.

students' profile→■

男子1番 和泉直正
(いずみ・なおまさ) 女子1番 麻生咲
(あそう・さき)
男子2番 井上稔
(いのうえ・みのる) 女子2番 斎藍
(いつき・らん)
男子3番 尾花哲也
(おばな・てつや) 女子3番 川上理映子
(かわかみ・りえこ)
男子4番 門脇吉孝
(かどわき・よしたか) 女子4番 国本弘美
(くにもと・ひろみ)
男子5番 坂出慎
(さかいで・しん) 女子5番 黒沢星子
(くろさわ・せいこ)
男子6番 閑谷邦康
(しずたに・くにやす) 女子6番 佐久間佳江
(さくま・かえ)
男子7番 鈴木明也
(すずき・あきや) 女子7番 仙道桜子
(せんどう・さくらこ)
男子8番 勢多翼
(せた・つばさ) 女子8番 高田なつみ
(たかだ・なつみ)
男子9番 高橋良太
(たかはし・りょうた) 女子9番 津川麻保
(つがわ・まほ)
男子10番 堤良樹
(つつみ・よしき) 女子10番 土井雫
(どい・しずく)
男子11番 富田宗
(とみだ・そう) 女子11番 徳永礼子
(とくなが・れいこ)
男子12番 仲山行人
(なかやま・ゆきと) 女子12番 内藤真依子
(ないとう・まいこ)
男子13番 野口素明
(のぐち・もとあき) 女子13番 中野尋代
(なかの・ひろよ)
男子14番 廣岡誠
(ひろおか・まこと) 女子14番 西智美
(にし・ともみ)
男子15番 藤岡照昌
(ふじおか・てるまさ) 女子15番 能勢杏奈
(のせ・あんな)
男子16番 皆川玉樹
(みながわ・たまき) 女子16番 原田千秋
(はらだ・ちあき)
男子17番 美祢達哉
(みね・たつや) 女子17番 日生吹雪
(ひなせ・ふぶき)
男子18番 村山晋一郎
(むらやま・しんいちろう) 女子18番 緑沢風美(みどりさわ・かざみ)
男子19番 吉井英(よしい・すぐる) 女子19番 武藤萌(むとう・もえ)
男子20番 和田純直(わだ・すみなお) 女子20番 矢矧彩乃(やはぎ・あやの)
  

以上40名
5 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:37:16.82 ID:fX5a1w8N0(2/24)
地図  会場の地図。禁止エリアのチェックはここで。
席順  出席番号順に座ったときの座席表。
 

試合開始?序盤戦
Now 40 students remaining.

0?1)書置き 0?2)3年A組
1)プログラム 2)試合開始
3)ずっと一緒に 4)普通の友達
5)事故 6)参加しない方法
7)優しい彼女と 8)勝たなきゃ
9)多重人格 10)守るんだ
中盤戦
Now 30 students remaining.

11)大丈夫 12)子猫と少年
13)ベゴニア 14)優等生
15)狂いゆく少年 16)兄の遺言
17)委員長の義務 18)再会
19)あなたは獲物 20)探してる奴
21)賭け 22)大和撫子
23)人探しデート 24)恋バナ
25)武器入手 26)化け物
27)急襲 28)喧嘩するほど…
29)言いたい事(上) 30)言いたい事(下)
31)裏人格出陣 32)なんでやねん
33)ゴメン 34)死ぬな
35)追いかけっこ 36)信じなきゃ
37)殺してやる 38)涙
39)初めての恐怖 40)もしも…
41)支え合い 42)友との再会
43)誓ったのに 44)仲直りしよう
45)軍人1名変態化 46)ソフト部4番の女
47)殺意
終盤戦?フィニッシュ
Now 11 students remaining.

48)絶対死なない 49)お前だけは
50)うそつき 51)捨て身の戦法
52)世界中の誰より 53)ラッキーボーイ
54)仲間たちの集い 55)狂ったトモダチ
56)みんな狂ってる 57)もう、休もう?
58)ラストバトル
エピローグ・後書き

59)後悔させてやる 60)手紙
61)戦いはこれから   あとがき

6 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:37:58.40 ID:fX5a1w8N0(3/24)
3年A組席順

   

教卓

和泉直正

麻生咲

鈴木明也

高田なつみ

廣岡誠

能勢杏奈

井上稔

斎藍

勢多翼

津川麻保

藤岡照昌

原田千秋

尾花哲也

川上理映子

高橋良太

土井雫

皆川玉樹

日生吹雪

門脇吉孝

国本弘美

堤良樹

徳永礼子

美祢達哉

緑沢風美

坂出慎

黒沢星子

富田宗

内藤真依子

村山晋一郎

武藤萌

閑谷邦康

佐久間佳江

仲山行人

中野尋代

吉井英

矢矧彩乃―――仙崎桜子野口素明西智美和田純直―――
7 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:42:05.69 ID:fX5a1w8N0(4/24)
プログラム参加にあたって。男子1番・和泉直正マジかよオイ…女子1番・麻生咲人を[ピーーー]なんて出来るわけない…男子2番・井上稔記入なし女子2番・斎藍あたしまだ死にたくない!!男子3番・尾花哲也なんでこんなことに?女子3番・川上理映子いや…怖い…助けて…男子4番・門脇吉孝オレ、まだ死にたくないのに!!女子4番・国本弘美あたしが何か悪いことしたんですか?男子5番・坂出慎クソ政府!!!絶対ブッ[ピーーー]!!!女子5番・黒沢星子どうしよう男子6番・閑谷邦康記入なし女子6番・佐久間佳江

行人くんどうしよう…男子7番・鈴木明也なんでこんな事に…女子7番・仙崎桜子パパ、ママ助けて!!男子8番・勢多翼怖い!怖い!怖い!こわい!女子8番・高田なつみふざけないでよ!!冗談じゃない!!男子9番・高橋良太こんなゲーム無意味だ!!女子9番・津川麻保みんなを止めなきゃ…男子10番・堤良樹みんな殺そうなんて思ってないよな?

  
女子10番・土井雫怖いよ…男子11番・富田宗絶対に殺さない女子11番・徳永礼子いやだ…逃げたい…男子12番・仲山行人人生こーでなくっちゃな

女子12番・内藤真依子この国狂ってる

  
男子13番・野口素明行人くん、助けて女子13番・中野尋代だから政府って嫌いなんだ男子14番・廣岡誠夢…じゃねーんだな…女子14番・西智美

先立つ不幸をお許しください男子15番・藤岡照昌いやだいやだいやだイヤダイヤダ女子15番・能勢杏奈記入なし男子16番・皆川玉樹人殺しなんてしたくないよ女子16番・原田千秋最悪なbirthday男子17番・美祢達哉誰とも会いませんように女子17番・日生吹雪記入なし男子18番・村山晋一郎「お母さん…」ってか?ザケンナ政府!女子18番・緑沢風美ウチって不幸な少女やわ男子19番・吉井英誰か助けて女子19番・武藤萌やっぱり来なきゃよかった男子20番・和田純直オレは絶対に乗らない女子20番・矢矧彩乃記入なし
8 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:42:46.61 ID:fX5a1w8N0(5/24)
1995年6月7日午後。
修学旅行も何事もなく最終日を迎え、神奈川県平沢市立菊谷中学校の3年生たちは、帰りのバスに乗り込み、学校へ帰る途中だった。
もちろん、3年A組の生徒40人もだ。
 

サービスエリアに着き、トイレ休憩となった。
バスの中から一斉に生徒たちが出て行く。

「おう、良樹!
 ジュース買いに行こうぜ!」

堤良樹(男子10番)は親友の富田宗(男子11番)に誘われ、バスを出た。
新鮮な空気と爽やかな風が気持ちいい。

「あー…今すっげぇポカリ飲みてぇなぁ…宗は?」

「オレはミルクティ、大人だろ?」

どこがだよ、と2人でゲラゲラと笑いながら自販機に向かっていると、突然後ろからタックルされた。
何なんだ、と良樹が振り返ると、そこにはサッカー部でFWを務めている勢多翼(男子8番)がいた。

「ワリ、今追われてんだよ!」

翼の後ろに目をやると、猛スピードで藤岡照昌(男子15番)が迫ってきていた。
さすが陸上部、素晴らしいフォームだ。

「良樹、宗!
 どっちでもいいから翼を押さえててくれ!!」

「そうはいくかってんだ!!」

翼はするっと良樹と宗の間を抜け、照昌に劣らないスピードで走っていってしまった。

「照昌、こっちだこっちー!」

左を向くと、バスケ部コンビの和泉直正(男子1番)と村山晋一郎(男子18番)が、右を向くと男子委員長の高橋良太(男子9番)と『ラッキーボーイ』という異名で有名な廣岡誠(男子14番)がいた。
なるほど、鬼ごっこね。

 

良樹と宗は自販機の前に着いた。
良樹が飲みたがっていた清涼飲料水は売り切れていたので、どれにするかと迷っていると、後ろからトントン、と肩を叩かれた。

「ねぇ、良樹君…これ、食べない?
 風美のおごりだって」

その声は、良樹の幼馴染の土井雫(女子10番)だった。
その手にはたこ焼きが10個ほど入った箱が乗っていた。

「へぇ、緑沢のおごり?
 景気でも良いのか?」

「ちゃうちゃう、うちの心が海よりも深いだけやって!」

宗の視線の先にいた、大阪からの転校生、緑沢風美(女子18番)がひらひらと手を振った。
しかし、その顔にはしっかりと書いてある。
ジュースの1杯でもおごるんが筋ってモンやろ?、と。
それに先に気づいた宗が苦笑し、ジュースをおごってやっていた。

 

「あ、咲!
 見て見て、これすっごい可愛い!」

「え…あ、ホントだぁ!すごい可愛い!
 玉樹、達哉、見てよこれ!」

お土産コーナーで騒いでいるのは、派手な外見とは裏腹に、とても心優しい麻生咲(女子1番)と、市内でも有数のお嬢様で、大和撫子という言葉がとても似合う仙道桜子(女子7番)。
その後ろで首を傾げているのは、咲の幼馴染だという皆川玉樹(男子16番)と、玉樹とは部活で知り合ったという美祢達哉(男子17番)。
この4人はとても仲がよく、いつも一緒にいる。
咲たちが可愛いと絶賛している物、それは奇妙な形をしたキーホルダー。
玉樹・達哉は何が可愛いんだか…、という顔をしている。

9 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:43:42.92 ID:fX5a1w8N0(6/24)
背後でドスのきいた声が聞こえ、良樹たちはビクッと体を震わせ振り向いた。
そこには、クラスの不良問題児ペアの井上稔(男子2番)と坂出慎(男子5番)が眉間にしわを寄せて良樹たちを睨みつけていた。

「ごごご…ごめん!」

良樹たちは慌てて前を空けた。
この2人に目をつけられれば、次の日には傷だらけで学校に行く羽目になる、という噂もあるほど2人は強暴だ。

「ったくよ…ってポカリねぇし!」

「うわ、最悪…じゃあ、オレコーラでいいや」

慎が100円玉を入れようとした時だった。

「ねぇ、ミノ!!」

「慎も聞いてよ!!」

叫び声が聞こえ、慎は100円玉を落とした。
「だーっ!」と声を上げる慎を横目に、稔は声のしたほうを見た。
そこには咲と玉樹がいた。

「…何なんだ?」

首を傾げる稔に、咲は先ほどの得体の知れないキーホルダーを突き出した。

「これ、絶対可愛いよね、ね!?」

「可愛くないよね、稔!!」

「え…はぁ…!?…あぁ……」

2人に見上げられた稔はどもってしまった。
何とか100円玉を見つけた慎も、そのキーホルダーを見て絶句してしまった。
不良問題児ペアの唯一の弱点、それが玉樹と咲だ。
稔たちに普通に接しているのは、玉樹と咲だけで、達哉と桜子は遠くで怯えて見ている。

 

いそいそとその場を離れた4人は、挙動不審にしている尾花哲也(男子3番)を発見した。

「おう、尾花、どうしたんだ?」

「あ、あ、堤!
 あのさ、頼みが…金貸してくんない?
 英が酔ったみたいでさ、茶とか飲ませたほうが良いかなって…」

見ると、哲也の後ろでは、大柄な哲也とは対称的に小柄な吉井英(男子19番)が蹲っている。
困っている人を放っておけないのも、どこか抜けているのも、哲也らしくて笑いが込み上げそうになるが、本人は必死なので、何とか堪えた。
とりあえず金を貸し、4人はバスに戻ることにした。

 

戻って最初に目に付いたのは、バスの最後部座席で騒いでいた行人グループの面々だ。
グループリーダーである、恐らくクラス1の美男子、仲山行人(男子12番)を中心にして、右で騒いでいるのはクラス1明るい佐久間佳江(女子6番)と、佳江と同じバレー部の内藤真依子(女子12番)。
行人の左側で行人と会話を交わしているのは、クラス1の優等生の鈴木明也(男子7番)と、その左には大人しそうな野口素明(男子13番)。
佳江は行人が好きらしいが、今は明也に行人を取られ、不機嫌そうだ。

 

その前の席で迷惑そうにしながらも、自らの顔に化粧を施し直しているのは、ギャル3人組だ。
リーダーの日生吹雪(女子17番)は最も不機嫌そうにしながら吊り上がる眉を描いている。
その横で矢矧彩乃(女子20番)はマニキュアを一生懸命付けている。
補助席ではクラス1の美少女と言われている中野尋代(女子13番)がビューラーで睫毛を上げている。良樹が話し掛けられるのは、尋代だけだ。あとの2人ははっきり言って怖い。
その斜め前では、門脇吉孝(男子4番)が閑谷邦康(男子6番)に話し掛けている。おそらく吉孝の自慢話だろう。聞いている邦康が気の毒だ。その前にいるのは、大人しい川上理映子(女子3番)と黒沢星子(女子5番)。星子は横にいる無口な国本弘美(女子4番)に必死に話し掛けているが、弘美は無視して読書をしている。その横で楽しそうに話をしているのは、クラス公認ほのぼのカップル、和田純直(男子20番)と原田千秋(女子16番)だ。

「はいはーい、ちょっと道塞がないでくれないかねぇ!」

はっと我に返った良樹が振り向くと、そこには女子委員長の津川麻保(女子9番)をはじめとして、ソフトボール部員の八重歯が印象的な高田なつみ(女子8番)、なつみにしがみ付く、決して男を寄せ付けようとしない徳永礼子(女子11番)、女子バスケ部キャプテンの西智美(女子14番)がいた。

「あ、ワリ、ゴメンな委員長!」
「いえいえ、でも邪魔だからとっととのいてちょうだいな」

何か今日はやたら邪魔者扱いされてる気がする。良樹は苦笑し、自分の座席に着いた。

10 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:44:17.16 ID:fX5a1w8N0(7/24)
「そーいやぁ…」宗がトントンと良樹の肩を突いた。

「彼女、もう苛められてないみたいだな」

「ああ、よかったよな」

2人は斜め後ろの武藤萌(女子19番)に目を遣った。
萌は吹雪らギャルグループに苛められ、3年になったころから不登校になっていたが、修学旅行は担任に勧められて来たようだ。
今は小柄な斎藍(女子2番)と、いつも笑顔を浮かべている能勢杏奈(女子15番)と楽しそうに話をしている。

 

 

「よし、誰かいないやつはいないかぁ?」

担任の中岡が点呼を取り、バスは出発した。

最初はがやがやとざわついていたが、徐々に静まり返っていった。

…あれ、何か眠いぞ…

違和感を感じた良樹は、横の宗を見た。
宗は気持ちよさそうにすやすやと眠っている。

重いまぶたを必死に上げ、前を見た。
ミラーに移るバスの運転手は、ガスマスクのようなものを付けている。

何で……?

眠いせいで頭が働かない。

「何だよ、こりゃ…」

後ろでそんな声が聞こえたような気がした。
相槌を打ちたかったが、そのまま良樹は意識を失ったので、それはかなわなかった。

全員が眠ったころ、バスは他のバスから離れ、山奥へと向かっていった。
11 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:45:31.17 ID:fX5a1w8N0(8/24)
堤良樹(男子10番)は違和感を感じて目を開けた。
壁を見ると、この部屋には1つも窓がついていない。

周りを見ると、クラス全員がパイプ椅子に腰掛け、机に寄りかかって寝ている。
良樹の前には、男子委員長の高橋良太(男子9番)、右隣は大人しい感じの徳永礼子(女子11番)、左隣はいつも暗い国本弘美(女子4番)…この並び方は、出席番号順、テストとかの時の並び方だ。

あれ…? 今日ってテスト…?

少し考え、目を見開いた。
おかしい、テストのはずがない。
なぜなら、今日まで修学旅行だったのだから。

慌てて立ち上がり、右斜め前で眠っている幼馴染の土井雫(女子10番)の肩を揺すった。

「雫! 雫! 起きろ!!」

雫はゆっくり顔をあげ、眠たそうに目を擦った。

「あ…れ? 良樹君…? どうしたの…?」

「おかしい!ここはどこなんだ!?」

良樹は辺りを見回す雫の首を見た。何かがついている。

自分の首を確かめると、やはりついていた。首輪が。
金属製のそれは、あるとわかると重苦しく感じる。
こんな物はつけた記憶がないし、こういう趣味もない。

なんだ…?なんなんだ…?

すると、部屋の前方のドアがガラッと開き、男が4人入ってきた。
桃印の記章がついている、政府の人間だ。 一人は筋肉質で、Tシャツにジャージ。 残りの3人は軍人のようだった。 3人とも弱そうだったけど。 軍人じゃない男の方がよっぽど強そうだ。
軍人の弱体化、これからは役人も筋トレをかかさずに、何かのキャッチフレーズみたいだな。とにかく、筋肉質の男に睨まれたので、良樹は席についた。

「さーあ、みんなぁ! おはよう! 起きたまえ!!」

筋肉質の男は教室を見回し、手をパンパン叩きながら叫んだ。 その声で全員が目を覚ました。 当たり前だ。 鼓膜が破れそうなほど大きい声だったのだから。やがて教室がざわつき始めた。

「あれ?なんで寝てたんだ?」

「ここどこなの?」

「あのマッチョだれだ?」

あちらこちらから声が聞こえた。

「みんな、静かに、静かにー!」

筋肉質の男が再び叫んだ。 部屋は一気に静かになった。その様子を見て、男は爽やかに笑った。 どうでもいいことだが、歯が白かった。 役人も歯が命。

「えー…、オレは今日から君達の担任となりました、名前は進藤幹也!
 幹也先生と呼んでくれたまえ!
 ちなみにこっちのモヤシのような軍団は、先生の補佐だ!
 皆から見た左から順番に、田中、足立、西尾だー!
 よろしくな!」

進藤は親指をぐっと立て、笑った。

…担任?担任って…?

「これはどういうことですか!? 担任って…」

女子委員長の津川麻保(女子9番)が立ち上がった。いつものはっきりとした口調だった。進藤が「あっ」と言った。

「そうだ、大事なことを言ってなかったな! 先生どーも何か抜けてるんだ、ごめんな。 えー…このクラスは、今年のプログラム対象クラスに選ばれたぞ!
 ちゃんとご両親にも伝えておいたからな! 安心したまえ!」

誰かが「うっ…」と呻いた。

何が安心したまえ、だ。安心できるわけがない。プログラム、正式名称、戦闘実験第六十八番プログラム。全国の中学校から任意に選出した三年生の学級内で、生徒同士を戦わせ、生き残った一人のみが、家に帰ることができる、わが大東亜共和国専守防衛陸軍が防衛上の必要から行っている戦闘シミュレーション。この国の、中3なら誰もが知っていて、誰もが恐れているものだ。それが…オレら…? マジかよ…良樹は相変わらず爽やかな笑みを浮かべている進藤を睨みつけた。

12 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:46:01.91 ID:fX5a1w8N0(9/24)
親にも伝えたということは、それに反抗した親は既に逝っているはずだ。 政府の連中は気に入らないことがあると、すぐに発砲するから。 カルシウム不足?

「あの…」

麻保が再び口を開いた。先ほどより弱々しい声だった。

「担任って…な、中岡先生…は…?」

進藤は、横にいた足立に合図をした。すると、足立は一旦廊下に出て、袋を持ってきた。

そして、教卓の上に置き、袋の口を開けた。

「いやあぁぁぁぁぁ!!」

「うわあぁぁぁぁぁ!!」

教卓の正面に座っていた高田なつみ(女子8番)と鈴木明也(男子7番)が同時に叫んだ。

「何だ?」

「何、どうしたの?」

教室がざわめき、袋の中身を見ようと身を乗り出した生徒達が、ガタガタと机や椅子を動かす音がした。そして、その袋の中身を見て、次々と悲鳴が上がった。

良樹は息を飲んだ。

中に入っていたのは、担任の――いや、“元”を付けた方が正確だ――中岡だった。 全身に穴が開き、変わり果てた姿になっている。 中から出てきた中岡の頭の右半分は消失していて、残った左側の顔には赤黒いものが大量についている。 残った右側の目はぼんやり生徒達の方を見ていた。 中岡が着ていた灰色のスーツも黒く変色していて、ちぎれた右腕がボタッと教卓の前に落ちた。

生徒達の叫び声、泣き声はやまなかった。

「もー…このクラスは騒がしいなぁ。
 まあ、元気なことはいいことなんだけど…」

進藤は困った顔をして、頭を掻いていると、進藤の右側にいた田中が教卓のもとに歩み寄り、中岡の死体を持ち上げた(それでまた悲鳴が大きくなった)。 そして、元いた位置に戻り、丁度正面にいた和泉直正(男子1番)と麻生咲(女子1番)の方に投げつけた。 そのせいで、中岡の残った部分の骨がいくつか砕けたらしく、ベキッと鈍い音がした。

「きゃあああああ!!」

咲とその後ろに座っていた斎藍(女子2番)は泣き叫び、横の明也や良太の席の方へ逃げた。 直正は硬直し、ガタガタと震えていた。 直正の後ろの席に座っていた井上稔(男子2番)もただ呆然と中岡の方を見ていた。

「こら!田中ぁ!」進藤が怒鳴った。

「レディーの方にに死体を投げつけるなんて、君は将来お嫁さんがこないぞぉ!」

「す…すいません…」

「ほれ、さっさと片付ける!
 ごめんよ、えっと…麻生さん、斎さん!」

田中が中岡を片付けて(物扱いされていて良樹は気に食わなかったが)、廊下に出した。
咲は黙って席に着いた。 顔色はかなり悪かったが。 
13 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:46:49.79 ID:fX5a1w8N0(10/24)
「よし、じゃあ、ルールの説明だ!
 至極簡単なことだ、最後の一人になるまで殺しあってくれたまえ!
 反則などない!
 仲間を作るもよし、殺し歩くのもよしだ!
 建物に入るのも自由、物も取っても構わない!
 優勝者には、総統様のサイン色紙がもらえるぞ、うらやましいなぁ!」

だったらテメェも参加しやがれってんだ!

堤良樹(男子10番)は心の中で叫んだ。

「ただ、素手で戦うファイトではない!
 いや、それも好きなんだがね。
 そこで、このデイパックを君等に渡す!」

田中が中岡を廊下に出したついでに、デイパックが大量に乗った大きな台車を教室に入れた。

「この中にはな、水と食料、時計と磁石、そして武器が1つ入ってる!
 武器は一人一人違っている!
 銃器が入っているのもあれば、ハズレ武器が入っているものもある!
 これはどれを誰に渡すか決まっていないから安心してくれたまえ!
 さて、じゃあみんな机の中に入っている物を出してくれ!」

生徒達はガサガサと机の中のものを出した。

中にはボールペンと紙切れ、そして地図が入っていた。

「ここはな、来たことある人もいるかな?神奈川県の相模野原中央公園だ!」

相模野原中央公園。神奈川県の相模野原にある、大きな森林公園だ。

良樹は、この森林公園に来たことがあった。 たしか、小さいころ、土井雫(女子10番)の家族と一緒に。 楽しい思い出を沢山作ったこの場所が殺し合いの会場だなんて――

「正確には中央公園とその周辺だな。
 まあ、詳しくは地図を見てくれ、そこで、殺し合いをするんだ!
 ちなみに、今いるのはI=07エリアにある、プレハブだ!
 えっと、それから…、禁止エリアというものがある!
 皆がちゃんと動き回るように、2時間ごとに1つずつ、入れなくなるエリアを作るんだ。
 これは、1日4回、午前0時、6時、午後0時、6時の4回に放送で知らせるから聞き逃さないようにな!」

そこまで言って、進藤が一息ついた。

それと同時に、後ろの方でガタッと音がした。 良樹が、というよりクラスの全員がそっちの方を見た。

1番端の後ろの席、閑谷邦康(男子6番)が震えながら立っていた。

「ん?君、どうしたんだい?トイレかい?
 尿意とは自然の生理的欲求の1つだからね!
 いいよ、行ってきたまえ!」

進藤が勝手にそう解釈して笑顔でドアを指差した。

「オレ…オレ…」

邦康はガタガタと震えながら消えそうな声で言った。

「オレ…怖い!いやだ!いやだあぁぁぁ!!」

そう叫ぶと、邦康は部屋の後ろの方のドアをガラッと開け、部屋を飛び出した。

進藤はため息をついた。

「なんだ、トイレではなかったのか。
 足立、捕まえてこい。
 殺したらいけないぞ」

足立は頷き、教室を出た。

ドアの方を向いていた進藤は、また前に向き直った。

「はい!注目!
 えっとな…どこまで言ったっけか?…あ、そうだ。
 その禁止エリアには入ってはいけないぞ。
 もし入ると…その首輪に注目!」

進藤に言われて初めて首輪の存在に気づいた生徒もいたようだった。

「その首輪が、生きている人間を認識して…ドッカーン!!と爆発するぞ!
 はっはー!
 あと、首輪を外そうとしても爆発するからな!気をつけろぉ!」
14 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:47:27.58 ID:fX5a1w8N0(11/24)
「え…? な…何だよ…何だよ、この音……」

近くにいた、廣岡誠(男子14番)と目があった。 誠は目を見開き、体を震わせていた。 邦康はゆっくりと誠の方に歩み寄った。

「ねぇ…なんでそんな顔するんだよ…ねぇ…廣岡ぁ…」

誠は何も言えなかった。
僅かに口許が動いていたが、声帯が麻痺したかのように、声が出なかった。

「能勢さん…ねぇ…この首輪…何なの…?」

能勢杏奈(女子15番)は、段々速くなっていく電子音を聞いて、ただぼーっと邦康を見つめていた。

「ねぇ…怖いよ…何で誰も教えて…くれないの…? 藤岡ぁ…」

「う…うわあぁぁぁ…よ…寄るなあぁぁ!!」

藤岡照昌(男子15番)は席を立ち、邦康から離れた。

「え…?どうして逃げるんだよぉ…原田さん…」

原田千秋(女子16番)は体をガタガタ震わせ、「あぁ…」と声を漏らした。

ピピピピピピ、と電子音はさらに速くなっていく。
邦康の表情が引きつったものから、泣き顔へと変わっていく。

「ねぇ!なんなんだよ!君なら教えてくれるよね!?皆川!!」

皆川玉樹(男子16番)は、「邦康…」と震えた声で、泣きそうな顔で、邦康を見つめた。

「いやああああああ!!」

恐怖の頂点に達した千秋が泣き叫んだ。

それと同時にピーッと電子音が鳴り響いた。

ぼん、とごもった爆発音がし、邦康の首が胴から離れた。 先に頭が床に落ち、それからゆっくりと胴も倒れた。 邦康の目はぼんやり天井を見ていた。 胴体は、ビクビクと痙攣していたが、それもやがて止まった。

部屋中が静まり返った。

そして、ソプラノとテノールのコーラスが教室中に響き渡った。

「はい! 静かに! わかったかー!
 こうなるから、決して禁止エリアには入らないようになぁ!」

進藤が手をパンパン叩きながら叫んだ。またあの爽やかな笑顔を浮かべて。

「もしも最後に誰かが死んでから24時間以内に誰も死ななかったら、
 そこで終了!
 生き残ってる人の首輪は、一斉に爆発するぞ!
 まあ、例は少ないから安心してくれていいぞ!」

そこまで言って、進藤が咳払いをした。

「他、質問は?」

誰も何も言わなかった。

良樹は邦康の死体が転がっている方を見た。 誠も照昌も玉樹も顔色が悪い。 当たり前だが。

「質問はないようだな! では、順番に出て行ってもらうぞ!
 あっとその前に…みんな、紙切れがあるな?
 それにプログラムに参加するにあたって、何か書いてくれ!」

良樹はボールペンを右手に持った。

「何でもいい!
 ゲームに参加する意気込みでもいい、親に向けた言葉でもいいぞ!」

生徒達はそれぞれペンを走らせた。

『みんな殺そうなんて思ってないよな?』

良樹は、不安に思っていることを書いた。
少なくとも、オレは絶対に乗らない…そう思いを込めて。

「よっし!じゃあ、出て行ってもらうぞ!」

そう言うと、進藤はポケットから封筒を出し、手で封を切った。 そして紙切れを1枚取り出した。
15 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:48:03.27 ID:fX5a1w8N0(12/24)
「えー…1番最初は…君だ!
 男子16番、皆川玉樹君!」

生徒達の視線が進藤の指差した先、玉樹に集中した。

「ぼ…僕…?」

玉樹の少女と見紛うような表情が引き攣り、体が震えていた。 しかし、側に置いてあったショルダーバッグを持ち、立ち上がった。 バッグを持つ、細い白い手がガタガタと震えていた。

玉樹は部屋中を見回していた。 震えている幼馴染の麻生咲(女子1番)と目が合った。 咲の目には涙が溜まっているようだった。 玉樹は安心させるように笑顔を作っていた。 クラスメイトが目の前で死んだ後だったのでかなり無理があったが。

「そうだ!」

進藤が叫んだ。

「気をつけろよ!
 ここのエリアは、最後のヤツが出て行って20分後に禁止エリアになるからなぁ!
 さあ、皆川君、出発だ!」

玉樹は前に出た。デイパックを受け取ると、そのまま走って出て行った。

2分のインターバルを置いて、進藤が名簿に目をやった。

「次は…女子16番、原田千秋さん!」

千秋の体がビクッと震えた。邦康の死体を避けて、前にゆっくり出て行った。
デイパックを受け取ると、それをしばらく凝視したあと、進藤に投げつけた。

「あたし、いらない!!
 こんなゲームになんか、絶対乗らないんだから!!」

それだけ言い捨てて、千秋は部屋を走って出て行った。

進藤は、千秋を撃ち殺そうとした足立を止めた。

「いいじゃないか、元気で!」

そういうと進藤は爽やかに笑った。

  

次々と生徒達が出て行った。

泣きながら出て行く者、何故か誇らしげにデイパックを掲げる者、何も言わず走り去るもの、名残惜しそうに部屋中を見回す者、政府の連中を睨みつけるもの。
16 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:49:04.40 ID:fX5a1w8N0(13/24)
男子6番・閑谷邦康(しずたに・くにやす)

卓球部。いつも大人しく自己主張をしない。
門脇吉孝(男子4番)の自慢話の聞き役。


支給武器:なし(出発前に死亡)
kill:なし
killed:進藤幹也(担任)
凶器:首輪
 

プログラム参加に怯え、逃げ出す。すぐに軍人につかまり、進藤によって首輪を吹き飛ばされ死亡。
17 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:49:37.26 ID:fX5a1w8N0(14/24)
麻生咲(女子1番)は、一人ずつ教室を出始めてから24分後、デイパックをもらい部屋を出た。
時計を見ると、3時24分を指していた。かなりの時間、寝ていたらしい。

生まれて初めてだ。 人間の死体を見たのは。 それも身近な人間の。

中岡先生…あの人の死に方はひどかった…
あの兵士は狂ってる…普通、死んだ人を人に向かって投げつける?
そのせいで、近くで見てしまった…
頭が半分なくなっていた。顔についてたもの――あれは血と脳味噌だろうか? とにかく、それも見てしまった。

そして、閑谷邦康(男子6番)。 あまり親しくはなかったものの、ショックだった。
教室を出るとき、その死体を見てしまった。 見ないつもりだったのに。 胴から外れた頭。 うつろな瞳は、天井を睨んでいた。 怖かった。

 

外へ出た。

ここが、このふざけたゲームの会場になる。 ゲームと呼ぶこと自体がふざけているけれど。 緑あふれるこの場所で、クラスのほぼ全員が死ぬ。 考えただけで恐ろしかった。

みんな死ぬ…

そう、中岡や邦康のような死体がゴロゴロ転がる。
頭が半分なくなった死体、腕がもげた死体、首が胴から離れた死体…

胃の中のものが突き上げてきた。

咲は茂みの方へ入った。

「うぇ…かは…っ」

ダメ…あの2人の死体が目に焼きついている…

咲は、胃の中の物を出した。 目に涙が滲んでいた。
デイパックのジッパーを開け、ペットボトルを手探りで探した。 ペットボトルのふたを開け、水を口に含み、口を濯いで吐き出した。 まだ口の中に酸の味が残っている。

「もう…ヤだよぉ…」

どうしてこんな目に会わないといけないの?
どうしてウチのクラスなの?
どうして…?

そうだ…こうやっていつも私が泣いているときは…絶対に駆けつけてきてくれて…優しく抱きしめてくれた…
クラスのみんなは知らないだろうけど、一応付き合ってるんだよね、あたしたち。
本当に大好きだから…あたしは…会いたい…会いたいなぁ…

「咲!」

咲は慌てて振り返った。 聞き覚えのある、男子にしては高めの声…

「た…まき…?」

そこにはきゃしゃな体つき、そこらの女子よりも可愛らしい、いつもの皆川玉樹(男子16番)の姿があった。 月の光で白い顔と手がぼんやりと浮かんで見えた。

「咲、よかった…」

玉樹は優しく咲を抱きしめた。咲の茶色の髪を優しく撫でた。

「玉樹…玉樹…会いたかったよぉ…怖かったよぉ…うわあぁぁぁぁ!!」

咲は玉樹の胸の中で、泣いた。
きっとこれは危険行為だ。
それでも玉樹は何も言わず抱きしめていた。 さっきまでの一人きりの恐怖はどこかへ行ってしまっていた。 今あるのは、幼馴染であり恋人でもある、玉樹に会えた事による安堵感、それでいっぱいだった。
18 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:50:11.73 ID:fX5a1w8N0(15/24)
咲は大分落ち着いてきた。フウ、と一つ小さなため息をついた。

「咲、気分は大丈夫?」

「あ…うん、ゴメンね。 こんなところで…こんな場合じゃないのに…」

そうだ、ついさっき吐いちゃったんだ。そんなトコで…

玉樹は首を横に振った。

「いいよ。出しちゃった方がすっきりするでしょ?
 僕もホント…吐きそうだよ。こんな事になって…」

咲は「そうだ」と呟き、自分のデイパックを引っ張り、ジッパーを開けて中を漁り始めた。中には色々入っていた。食料、水、コンパス、懐中電灯…そして、果物ナイフ。そんなものが入っているとは聞いていないから、これが支給武器、というものだろう。

咲は玉樹の方を見た。ズボンのベルトにはベレッタM92Fが差し込まれていた。

これが銃…初めて見た…

ゴクッと唾を飲み込んだ。

玉樹は立ち上がった。

「とにかくここから離れよう?禁止エリアっていうのになっちゃうし…」

「でも…誰かに会うかも…」

「大丈夫だよ」

玉樹が座って自分の方を見ている咲に手を差し伸べた。そしてにっこり笑った。

「大丈夫。咲は僕が守るから」

咲は自分の顔が真っ赤になっているのがわかった。夜だから玉樹には見えてないよね、よかった。何とか立ち上がり、デイパックとショルダーバッグを持った咲は、玉樹に手を引かれ、移動を始めた。
19 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:50:47.47 ID:fX5a1w8N0(16/24)
坂出慎(男子5番)は、デイパックとショルダーバッグを担ぎ、部屋から出た。
逆立てた金髪を生やした頭を掻きながら、外の緑いっぱいの空気を吸って、吐いた。
やっぱ外っていいよな?…あの部屋、血の匂いが充満していやがった…

慎は唇を噛んだ。

ふざけんな、あの進藤とかいうマッチョ野郎…

「慎!」

聞き覚えのある声を聞き、その方向を向いた。 不良仲間で短めの茶髪にパーマをあてている、井上稔(男子2番)が茂みから顔を出して、こっちにこい、と合図をしていた。 慎は稔の方に駆け寄り、再会の喜びを表して、右手同士をパンッと合わせた。

「良かったぜ。待っててくれないと思ってたよ、稔」

「何いってんだバーカ。 お前は信用してるぜ?」

2人はハハッと笑い声を上げた。

  

少し移動し、I=07エリアを抜け、森林公園の入り口付近まで来た。 そこで腰を下ろした。

「慎…どう思うよ?」

稔が口を開いた。

「あの進藤とかいうふざけた野郎…」

慎は拳を強く握り、地面を思いっきり殴った。

「オレはあいつをブッ[ピーーー]!
 許さねぇ…あのマッチョ…中岡殺しやがって…」

ニッと稔が笑った。

「オレも同意見だ。さっすが、同じこと考えてたか」

担任の中岡は、パッと見はさえないおじさんだったが、慎にとっても稔にとっても大切な人だった。 小学生時代から荒れていた2人は、親にも見離され、先生達からも呆れられていた。 どの大人も、自分達を構わなかった。 むしろ、存在していないかのように扱った。 そのくせ、何か悪いことがあったらすべてを2人に押し付けた。 そのため、2人は’大人’という存在が大嫌いだった。

しかし、中岡は、そんな2人に他の生徒と同じように接してくれた。 時には叱ったりもするが、何かが出来たときは褒めてくれ、悩んでいるときは相談に乗ってくれた。 これは他の生徒達から見たら何の変哲もない事だったと思うが、2人にとってはそれがとても嬉しかった。

そんな中岡を、政府はあっさり殺した。

許せなかった。

「ブッ[ピーーー]…のはいいけどよ、どうやって…?」

慎は訊いた。許せない、だけど報復の仕方がさっぱりわからない。

「とりあえず…武器、見ようぜ。」

2人はデイパックのファスナーを開けた。

稔のデイパックから出てきたのは、クマデ(あの潮干狩り、とかいうくだらない遊びで使うやつだな)だった。 慎の支給武器は、スコップ(こっちは芋ほりで使うような鉄製の物)が出てきた。

溜息を吐いた。

「おいおい…オレらに砂遊びでもやれってのか?」

「いや…宝探しじゃねぇの?」

プログラムに参加した男子生徒2人が会場で金銀財宝を発見! 新聞のトップ記事はもらったぜ、イエイ! …おいコラちょっと待てよ? これでは復讐なんて出来るわけがない。 返り討ちだ。

「どーするよぉ…」

慎が頭を抱え込んだ。稔はしばらく考えた後、口を開いた。

「仲間…探すか?」

「仲間…かぁ…
 でも、オレらみたいなヤツ信用してくれそうなのって…誰だよ?」

そう、2人はケンカもする、カツアゲもする、タバコも吸う、根っからの不良だった。 クラスでも浮いた存在だった。 そんな2人に、しかもこの状況で、誰が信用してくれるだろうか? おそらく、ほとんどの生徒は、この2人はやる気だ、と思っていることだろう。 ちくしょう。 こんなことになるんだったらボランティア活動でもやっとくべきだったぜ。

20 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:51:30.03 ID:fX5a1w8N0(17/24)
正義感の強い、男子委員長の高橋良太(男子9番)と女子委員長の津川麻保(女子9番)なら、きっとこの状況でも戦おうとはしないだろう。 それに、差別とかは嫌いだから、きっと受け入れてくれるはずだ。 しかし、逆に危険因子だからとかいって殺される可能性がないわけではない。 正当防衛だから仕方がない、とか? まともなヤツほど狂うんだよな、こういう場合。 まぁ、簡単にやられたりなんざしないけど。

「それか…あのへんどうだ?ほのぼのカップル」

今度は慎が言った。

ほのぼのカップル、和田純直(男子20番)と原田千秋(女子16番)は争いごとは嫌いな人間だ。 千秋は、デイパックを進藤に投げつけるほど、このゲームに乗らないと主張していた。 しかし、この2人が自分達を受け入れてくれるかはわからない。

まあ、あとはごくプレーンな堤良樹(男子10番)とか富田宗(男子11番)あたりだろうか。 でも、サービスエリアで少し脅したからな…無理か。

「…やっぱ、咲と玉樹くらいだな…」

「だよな、あの2人なら…」

皆川玉樹(男子16番)と麻生咲(女子1番)は、クラスで唯一自分達に自然に接してくれていた。

 

中2の校外学習の班決めの時だったような気がする。

8人グループを作る、という事になったが、クラスで浮いていた存在の稔と慎には誰も声をかけてこなかった。 どうせさぼるつもりだったから、誰でもよかった。 余ったところにでも適当に入ろうと思っていた。

「ねぇ、井上君、坂出君。 一緒の班にならない?」

教室中が静まり返った。 担任の中岡もこっちの方を見つめていた。

2人に声をかける人間なんていないと思っていたので、驚いて振り返ると、咲が笑顔で立っていた。 外見はいささか派手だけど、誰にでも優しく、よく知らないがクラスメイトにはとても好かれているらしい。

「は?お前バッカじゃねーの?」

稔が咲を鼻で笑った。 すると横から幼馴染とかなんとかいう玉樹が咲の後ろから出てきた。 女みたいなヤツだ、と陰で笑ったことがある。

「バカじゃないよ。
 僕たち今、6人グループで、男子2人足りないの。
 だから、ダメかな?」

慎が玉樹の後ろを見ると、美祢達哉(男子17番)、川上理映子(女子3番)、黒沢星子(女子5番)、仙道桜子(女子7番)が震えているような感じで立っていた。 なんだよ? オレらは妖怪かってんだよ。
21 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:52:32.78 ID:fX5a1w8N0(18/24)
実際に校外学習に行ってわかった。 あの2人は本当に自分達に普通に接してくれていた。 本当にこのクラスには悪い人はいない、と思っている。 それ以来、玉樹と咲には普通に会話もするようになった。 時々、玉樹に『ちゃん』を付けてからかったりもした。 玉樹はそのたびに怒っていた。 どれもこれも懐かしい思い出だ。

「あの2人ならオレらを信用してくれるはずだ!」

「…でもさ、あの2人生きてるのか…?」

「稔…どういう事だ?」

稔は真剣な顔で慎を見つめた。

「あの2人は、このクラスに悪い奴はいない、と思ってるんだぜ?
 だったら、もしもこんなクソゲームに乗った奴に出くわしても…
 全く疑ったりしない…って事だろ?」

慎は目を見開いた。

そうだ! ヤバイ! あの2人ならどんな奴にでもだまされて殺されるかもしれない! 例えば…あの不良ギャル女の日生吹雪(女子17番)とかはやる気になるかもしれない。 そんな奴らに会ったとしても絶対に疑わないだろう。 しかも仲間にしようとするかもしれない。 ヤバイ…マジでヤバイ…

「稔、行くぞ」

慎が立ち上がった。

「行くって…どこにだよ?」

「バカかテメェ! 咲と玉樹を探しに行くに決まってるだろ!」

しばらく慎を見つめていた稔も、頷いて立ち上がった。 どこにいるかはわからないけど、まだそんなに遠くには行っていないはずだ。 まだこの辺にいるかもしれない。
22 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 05:55:08.69 ID:fX5a1w8N0(19/24)
土井雫(女子10番)はその小さな手にボウガンを持っていた。
 

教室を出て、雫はすぐにデイパックのジッパーを開けた。

怖い…怖いよ…誰かが襲ってきたらどうしよう…?
その時、丸腰だったら危険だから、とにかく何か武器を…

中から何かゴツい感じの弓に銃とかの引き金がついたような物が出てきた。 最初はよくわからなかったが、少し明かりがついている廊下で説明書を読むと、なかなか扱いやすそうなものだった。 扱いたくはなかったけれど。

「早く行け!」

見張りの兵隊が雫にマシンガンの銃口を向けた。

「ひ…っ!」

雫は慌てて荷物をまとめて、立ち上がった。

 

この武器を使う機会がありませんように…

雫は必死に祈った。祈りながらゆっくりと廊下を進んだ。
出口が近づいてきたあたりで、雫は足を止めた。

誰かがいる…誰…?

ボウガンを握った手がガタガタ震えた。

「だ…誰?誰なの…?」

雫は震える声で訊いた。

女の子、女の子ならいい…。女の子なら大丈夫だ、きっとやる気じゃない…

「その声…お前、土井か…?」

雫は目を見開いた。

女の子ではなかった。 男の子だ。
しかも、幼馴染の堤良樹(男子10番)ではない。
良樹より6分前に、震えながら慌てて出て行った、勢多翼(男子8番)だ。

「おい…お前、何持ってるんだよ…?」

翼がゆっくり近づいてきた。雫はゆっくりと下がった。「嫌だよ…来ないでぇ…」震える手でしっかりと握ったボウガンを翼の方に向けた。 翼が足の動きを止めた。「土井…オレを…[ピーーー]…のか…? やる気なんだな…?」翼の右手に握られたカッターナイフの刃が月の光に反射して、鈍く光った。「ち…違う! やだ…! 違うよぉ…!」どんなに言っても翼の耳には届いていなかった。「やる気なんだろ? そうなんだろ…? う…うわあぁぁぁぁぁぁ!!」翼がカッターを振り上げ、雫に向かってきた。「きゃあああああ!!」雫は泣き叫び、翼の横を抜けて外へ出た。 その時にカッターの刃が雫の頬をかすめた。 翼が振り返り、再び雫の方へ向かってきた。「オレは死にたくない! 死んでたまるかあぁぁぁぁ!!」カッターを振り上げ、走ってくる。 さすがサッカー部FW、速い。距離がだんだん狭くなる。襲ってくる。あたしを[ピーーー]ために…「やだあぁぁぁぁぁぁ!!」雫は無我夢中でボウガンの引き金を引いた。 その反動でしりもちをついた。勢多君は…?ゆっくり視線を翼の方へ向けた。翼の首に何かが刺さっている。あれは…あたしが撃ったボウガンの矢!?「土…井……や…っぱ…り…」それだけ言うと、翼は前のめりに倒れた。雫は恐る恐る翼に近づき、そして目を見開いた。 首にはしっかり矢が刺さっていて、地面にはゆるゆると血が流れ出していた。「いやああああああ!!」雫の目から涙がぼろぼろ流れた。あたしは…あたしは人を殺した…!あたしは人殺し!人殺し!人殺し!ヒトゴロシ!!「雫!」茂みから幼馴染の堤良樹が出てきた。良樹君は見たんだ!あたしが勢多君を殺したところを!どうしよう!どうしよう!まさかあたしを[ピーーー]気なんじゃ…

23 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 07:05:49.26 ID:Zsp24DS6o(1)
スレ立ておつおつ
24 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 07:19:32.89 ID:tUYehmvzo(1)
おっつ
25 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 07:54:00.14 ID:sb4JHfkso(1)
ID:fX5a1w8N0 [ピーーー]よ。
26 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 07:57:39.23 ID:fX5a1w8N0(20/24)
大東亜共和国の中ではトップクラスの歴史と偏差値を誇る、大東亜国民であるなら知らないものはいない有名な学校であり、初等部から大学部までの一貫教育を行っている共学校である。
初等部から大学部までをずっと帝東学院で過ごす生徒もいるが、中等部・高等部・大学部から推薦入試や一般入試を経て入学する者も少なくない。
初等部からの生徒には、政治家の子息息女や経営する会社の跡取や社長令嬢などの比較的裕福な家の子どもや、“帝東学院出身”という肩書を与えたいと願う親にわけがわからないままお受験をさせられた子どもが多い。
一方中等部からの生徒は、難関と言われる通常入試を勝ち抜いての入学を果たすため学力が総じて高い。
同時に部活動が盛んなため、通常入試で合格するには学力が及ばなくとも、何らかの特技を活かして一芸入試で合格して入学する者も多い。
つまり帝東学院とは、家柄、学力、スポーツなど、何か1つは秀でているものを持つ者たちが集う場所である。

そのような学校ではあるが、朝登校して授業を受け、授業の後に部活動を行う――このサイクルは他の学校と大差ない。
財前永佳(帝東学院中等部三年A組女子六番)も6時間の授業を終えた後は部活動のために美術室へ向かい、キャンパスと油絵用の画材を用意し、前方に置いた果物たちを描くことに没頭していた。
美術が好きかと言われれば、普通、としか言えない。
中等部に上がった時、あまり人と関わらずに時間を忘れて取り組めることがしたいと思い、それが叶うだろうと最初に思いついたのが美術部だった、というだけだ。
人と関わることが嫌いというわけではないのだが、初等部の後半から中学1年生の頃にかけてはとある事情で女子の中で浮いた存在になっており、そんな中で例えばバレーボールやバスケットボールのようなチームプレイができるとは思えなかった。
もっとも、ほとんどが全国クラスである帝東学院の運動部で活躍できるような能力が自分にはないことは自覚しているのだが。

どれくらい時間が経っただろうか。
一応満足できる絵が完成して我に返ると、いつの間にか日は傾き、赤い日差しが永佳を背中から照らしていた。
時計に目を遣ると、長針と短針が真反対を指して午後6時を示そうとしていた。

今日も、あと6時間…か。

ちらり、と美術室の端に置いている鞄に目を遣った。
教科書類はほとんど教室に備え付けられた個人ロッカーに置きっ放しにしているので1,2冊程しか入っておらず、いつもはぺちゃんこに近いのだが、今日はいつもより少し膨らんでいる。
いつもは入れていない“ある物”が入っているのだ。

…多分、無駄になるんだろうな。
しょうがないか、タイミング逃しまくったし、もうすぐ下校時刻だし…
…大体、キャラじゃないよね、そんなの。

小さく溜息を吐く。
“しょうがない”という言葉で色々な理由を作ってやるべきことから逃げる悪い癖。
治るどころか年々捻くれて助長されていくこの癖を持つ自分が、永佳は嫌いだった。

「ひーさかちゃんっ」

心の中に渦巻き始めていた黒い靄を優しく包み消していくような柔らかく温かい声が永佳の名前を呼び、永佳は顔を上げた。
きっちりと着こなした制服、胸元まで伸びた艶やかな黒髪、小さな口とすっと通った鼻筋、大きく優しい瞳――クラスメイトでもあり部活仲間でもある上野原咲良(同・女子二番)がにっこりと笑みを浮かべて永佳を見下ろしていた。
初等部の頃から類い稀なる愛らしい容姿をしていた咲良は、今や中等部どころか高等部にまでファンクラブができている程異性からの人気が高く、帝東学院のマドンナと称されているのだが、当人は自分の人気の高さを自覚していない。
27 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 07:58:12.80 ID:fX5a1w8N0(21/24)
赤みがかった茶髪のボブヘアとブラウスの袖から覗くごついブレスレット、そして吊り上がり気味の勝気さが満ちた瞳――まだ修学旅行の行きしなだというのに既に土産物のまんじゅうの箱を手に取っていた朝比奈紗羅(女子一番)だ。
身長は150cmにも満たない小柄な体格だが、その身の軽さもあってか新体操部のエースの座に君臨する、ややきつい性格をしているが気軽に話せる女の子だ。

「迅と優人がバス酔いしたから、食えそうなモン探しに来たんだよ。
 そっちこそ、土産はまだ早いっしょー」

「いーのぉ。
 せっかくだから、普段食べないこういうのみんなでバスで食べようってなったの」

卓也のツッコミに対したのは、猫っ毛の短めの髪の一部を赤いの飾りのついた髪留めで留めた髪型が愛らしい、いつも眠たそうにしている鳴神もみじ(女子十二番)。

「だからって甘ったるいのばっか食えねぇよ、もっと小さい箱にしろよな!」

もみじが手にしていた大きな箱を後ろから取り上げたのは木戸健太(男子六番)。
男子の中で最も小さいが熱気が身体から噴き出さんばかりの熱血家で努力家の少年漫画の主人公になれるタイプの性格で、卓也とはテニス部でダブルスを組んでいる仲の良い相棒だ。
紗羅ともみじと健太は幼馴染トリオで全員が中等部から帝東学院に入学して非常に仲が良いので、3人をまとめて“庶民トリオ”と陰で呼ぶ者もいる。
小柄な3人がじゃれあう姿は、小動物を見ているようで微笑ましい。

「バス酔いって大丈夫なの?
 あ、飴とか舐めたらいいって聞いたことあるんだけど…どうかしら、瑠衣斗くん」

「あ、確か相葉も日比野も席が後ろの方だったね。
 前の方が揺れがマシらしいから、席替ってもらえば?
 望月たちから離れて、静かに寝てしまうのが1番じゃない?」

それぞれ手に地域限定のお菓子を持った上野原咲良(女子二番)と真壁瑠衣斗(男子十六番)が、バス酔い対策を話し合ってくれていた。
咲良は類い稀なる愛らしい容姿と誰にでも優しい性格で異性人気が非常に高い帝東学院のマドンナ的存在だ。
ここに入る前にちらっと姿が見えた時には、同じサービスエリアに居合わせた他の学校の修学旅行生に声を掛けられていたが、咲良の隣にいた強面で大柄の池ノ坊奨(男子四番)にじろっと一瞥されて彼らはそそくさと逃げて行ってしまっていた。
まるで奨は咲良のボディーガードのようだった(実際は幼馴染らしいのだが)。
本当なら恋人の健太が護ってやるべきだと思うのだが、小さな健太が睨みをきかせてもあまり効果はなかったようだ、お気の毒に。
瑠衣斗は学年一の天才児で、あらゆる試験で常に学年トップの座をキープしている。
表情を表に出さないことが多いのだが、何故か卓也を見る目つきは他の者を見る時とは違い嫌悪感が滲み出ている。
その理由は卓也には見当もつかないので、対処のしようがない。

「あれ、咲良ちゃん…お宅のキングは?」

卓也の問いに、隣にいた英隆がぷっと噴き出した。
28 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 07:58:53.37 ID:fX5a1w8N0(22/24)
女子の集団の中から覗いている茶髪は明らかに城ヶ崎麗(男子十番)のものなのだが、麗は常に満ち溢れる自信とエベレスト級のプライドの持ち主ながら身長は決して高くないので、その顔は卓也たちからは確認できない。
帝東学院中等部の生徒会長でもあり卓也や健太が所属するテニス部の部長でもある麗は、生まれつきの茶髪と白皙の肌と赤みがかった目が特徴的で、口許のほくろが非常に端正な顔立ちに更に色気をプラスさせていることもあり、女子人気は非常に高く今もその容姿に魅かれた他校生に捕まっているのだ。

麗には、カリスマ性が備わっていると卓也は思っている。
卓也は部活での付き合いがあるのだが、彼以上に部長らしい部長はいないと思うし、いつでもつい姿を追ってしまう。
咲良と奨は幼い頃から常に麗の傍から離れないし、紗羅は『麗に憧れて入学した』と豪語しているし、もみじは異様なまでに麗に心酔しているし、健太は麗をライバル視しながらも常に行動を共にしているし、深い人付き合いをしなさそうな瑠衣斗ですら常に麗に付き従っている。
それぞれが、麗に対し何かを感じているのだろう。

「城ヶ崎さん、何をされているんです?
 そんな庶民たちの相手をされるなんて、やはりお優しいですね」

麗に群がる女子たちの間に割って入り麗の腕を引っ張ってその中から救い出したのは、麗を取り巻くグループの最後の1人、高須撫子(女子十番)だ。
麗に群がっていた女子たちが非難の声を上げるが、撫子に勝ち誇った笑顔を向けられると萎縮し、そのままどこかに行ってしまった。
撫子は華道の家元を祖母に持つお嬢様で、艶やかな長い黒髪に上品な言葉遣いと物腰、狐のように吊り上がった目元にキツさを感じるが“大和撫子”と呼ぶに相応しい咲良とは違うタイプの容姿に恵まれた女の子なのだが、恐らくこのクラスで最も家柄に対する偏見が酷い。
中等部から入学した人間に対して、普通に“庶民”という言葉を遣い見下している。
それはいつも行動を共にする健太・瑠衣斗・紗羅・もみじも例外ではなく、特に紗羅との折り合いが悪いように見受けられる。

「お前ら、買うモン決めたか?
 とっとと買って、あっちにある喫茶店にでも入ろうぜ」

麗は髪を掻き上げながら仲間の元に戻ってきた。
クラス1の家柄で育った麗には、外の屋台やフードコートでご飯を食べるということは考えられないらしく、競合店がないからか値が張っているサービスエリアの喫茶店に入ることを当然のように提案していた。
健太たちの財布には少しきついのではないのだろうか、何となくそう感じたが、健太たち“庶民”も異議を唱えることはなくそれぞれ土産物の会計に向かったので、卓也と英隆は麗たちとは別れて胃に優しい物を再び探し始めた。

結局梅干しおにぎりを2つと自分たちの昼食を買ってから売店を出た。
ふとフードコートに目を遣ると、奥の方では恒祐たちが騒いでいたのだが、手前側にも見慣れた顔があった。
先に気付いたらしい英隆が、既にそちらの方に向かっていた。

「あ、ハルカワー!!」

最初に英隆に気付いて大声を上げたのは、クラス1小柄で小学生のように幼い広瀬邑子(女子十五番)、英隆の幼馴染だ。
その手元にはたこ焼きが置かれている。

「へー、たこ焼き売ってるんだ、おいしそうじゃん、邑ちゃん」

「じゃあ1つおすそわけ、どーぞ!」

邑子は持っていた箸でたこ焼きを1つ持ち、英隆の方にやった。
それは所謂“あーん”なのだが、英隆もさして気にも留めない様子で差し出されたたこ焼きを口に入れ、美味しさに顔を綻ばせた。それを見ていた小石川葉瑠(女子五番)と平野南海(女子十四番)と山本真子(女子十九番)がにやにやしながら「おおー」と声を上げた。
29 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 07:59:32.08 ID:fX5a1w8N0(23/24)
くつくつと蓮井未久(女子十三番)が笑い、その隣で阪本遼子(女子八番)が頬杖をつきながら呆れた表情を浮かべていた。

「阪本さんも、圭にやってあげたら?」

英隆が意地悪く言うと、遼子は顔を真っ赤にした。

「はぁ!? 意味わかんない、何であたしが横山にそんなことしなきゃいけないの。
 熱いおでんなら突っ込んでやっても良いけどさ」

「どっかのお笑いタレントか!」

遼子の後ろでツッコミを入れたのは、遼子の相手役に挙げられた横山圭(男子十八番)、遼子とは9年連続同じクラスの腐れ縁だという。
9年連続クラスメイトということもあり、2人は言い争いを続けているのだが、それは息がぴったりの夫婦漫才のようにしか見えず周りはそれを見て笑っている。

「横山テメェ水汲んだら戻ってこいよ」

「そんなの両手に持って喧嘩して、零しても知らないぞ」

離れた場所から圭を呼んでいるのは、いつも圭と一緒にいる原裕一郎(男子十三番)と宍貝雄大(男子八番)だ。
特に裕一郎は圭とはサッカー部で同じポジションを争ったライバル同士ということもあってか日頃から口喧嘩が絶えず、今も圭を睨みつけている。
それでも一緒にいるというのは、雄大がいつも間に入って仲裁してくれるということもあるだろうが、何か通じるものをお互い感じているのだろう。

早く優人と迅のところに戻らなければいけないと思い、背中に遼子と圭の声を浴びながら卓也と英隆は外に出た。
優人と迅のいるベンチには先客がいた。

「…顔色悪っ」

「バス酔いかぁ、お気の毒ねぇ」

「あ、カリカリ梅ならあるよ、これ食べたらすっきりしないかな、迅!」

財前永佳(女子六番)、湯浅季莉(女子二十番)、水田早稀(女子十七番)のギャルグループの面々だった。
永佳は卓也の顔を見ると、ふいっと顔を背けた。
永佳とは彼氏彼女の関係なのだが、永佳は人前では絶対に卓也に寄り付かない。
卓也の周りはそれを変だと言うが、人前で寄り付かないのも悪態付くのも全て永佳の照れ隠しなのだ。
季莉と早稀も永佳のそんな性格をわかっているので、永佳と卓也を交互に見て苦笑を浮かべるだけで、せっつくような真似はしなかった。
ちなみに英隆は永佳とも幼馴染なのだが、永佳は邑子のように英隆に対して親しげに話しかけたりはしないし、英隆もそれに対しては何も言わず、どこか余所余所しい。

青白い顔をしている迅の彼女である早稀は、リュックからカリカリ梅を取り出した。
早稀は無類のお菓子好きで、初等部の頃に遠足で“お菓子は300円まで”と決められた中でも大量のお菓子を持ってきた上に、教師に注意されると真顔で『飴は喉が痛くなった時に痛みをマシにするためのお薬だし、ガムとかグミは噛む力を鍛えるものだし、バナナは果物だし、ビスケットは動物にあげるエサだから、お菓子じゃないです』と言い放ったつわものだ。

「早稀ちゃん、俺には?」

「えーあたしの大事なおやつをどうして優人なんかにあげなきゃいけないのー?
 1個は迅のでしょ、もう1個はあたしのだもーん!」

「そんご無体な…!!」

凹む優人を見かねて、迅は溜息を吐いて早稀の手からカリカリ梅の入った袋を取り、1つを優人に手渡した。
そしてもう1つを自分が齧った。

「ちょっと迅、あたしの…――ッ!」

批難の声を上げた早稀の口に、迅は自分が齧ったカリカリ梅を入れた。早稀は目をぱちくりさせていたが、何が起こったのかを理解すると頬をぽっとピンク色に染めた。
30 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 07:59:58.97 ID:fX5a1w8N0(24/24)
この場にいない永佳たちの仲間である星崎かれん(女子十六番)は非常に大人びた容姿と性格をしており、同い年の人間との付き合いにはあまり関心がないらしい。
援助交際をしているという噂が立っており、交友関係を広げることが得意な卓也ですら少し敬遠してしまっているクラスメイトの1人だ。

卓也は購入したばかりの鮭おにぎりを頬張りながら、周りを見回した。
まだ5月末で冷たい物を食べるには時期が早い気がするが、ソフトクリームを売っている屋台の前には、荻野千世(女子三番)・佐伯華那(女子七番)・鷹城雪美(女子九番)・室町古都美(女子十八番)といった文化系女子グループの面々がいた。
確かに“濃厚ミルクソフトクリーム”と書かれれば食べたくなる気持ちはわかる。
卓也の傍でも、早稀が物欲しそうに屋台を見ている。

視線に気付いた雪美がこちらを見て怪訝そうな表情を浮かべたので卓也は慌てて視線を逸らし、反対側に顔を向けた。
目に入ってきたのは、芥川雅哉(男子二番)と奈良橋智子(女子十一番)という世にも奇妙な組み合わせだ。
智子はA組の副委員長で大人しく人と関わっているところをあまり見ない程に人付き合いが良くないが、とても真面目な優等生だ。
一方雅哉は銀髪に赤メッシュを入れた奇抜な髪形に着崩した制服が物語っているように真面目とは正反対の問題児で、授業の大半は寝ているし体育も参加しているところを見たことがない。
2人に共通しているのは、普段親しくしている友人がいないことくらいだ。
声は聞こえないが、智子が心配げな表情で雅哉に何事かを話し掛けるが、雅哉はへらへらと笑いながらそれを受け流してバスの方へ戻って行った。
智子が卓也の視線に気付き、びくっと身体を振るわせるとお手洗いの方へ掛けていってしまった。

「何きょろきょろしてるの、気持ち悪い」

永佳にぼそっと呟かれ、卓也は周りを見回すのをやめた。
ふと腕時計に視線を落とすと出発時間の10分前になっていたので、風に当たったことで体調が回復してきた優人と迅も連れて、卓也たちはバスへ戻った。

慌てて飛び乗ってきた恒祐たち男子主流派フードコート組が席に着いたところで担任である国語教師の塚村景子が人数点呼を行い、40人全員がバスに乗り込んだことを確認した後、バスは発車した。
高速道路の本線に戻る頃には車内は騒がしくなり、後部座席を陣取っている麗たちのグループは土産物を広げ始め、卓也の後ろの席に座っている恒祐と龍輝は子どもの頃に見ていた少年向けアニメの主題歌を歌い出し、その音程の外れっぷりに葉瑠や南海といった女子主流派の騒がしい面々からブーイングが飛んだ。
圭と裕一郎は恒例の口喧嘩を始め、雄大がそれを止めている。
何か楽しいことを話していたのだろう、早稀と季莉の高笑いが車内に響く。
卓也もバス酔いから復活した迅や英隆と話に花を咲かせた。

30分程経った頃、卓也は車内の異変に気付いた。
随分と、車内が静かになっていたのだ。
隣に座っている英隆はこくりこくりと舟を漕いでいるし、酔い止め薬の効果があったのかもしれないが迅と優人も完全に寝入っている。
立ち上がって見渡すと、最後列ではもみじと健太が麗に寄り掛かり麗も健太に体重を預けるように眠っていたし、前の席の瑠衣斗の手がだらんと通路に伸びていた。
前方を見ると、錬、堅物の榊原賢吾(男子七番)、委員長の芳野利央(男子十九番)といった普段から寡黙なトリオも眠っているし、先程何事かを話していた雅哉と智子それぞれの隣に座る林崎洋海(男子二十番)と如月梨杏(女子四番)も窓に身体を預けて眠っていた。
31 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 10:16:24.31 ID:NvGu31GU0(1)
まーた変なのが沸いてんな
32 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/15(火) 10:21:39.29 ID:nsQszFGpo(1)
新スレキター!!
>>1おつです

てかコイツもしかして少し前に禁書スレ荒らしたのと同じ奴か?
33 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga] 2014/04/15(火) 10:48:05.13 ID:ebVR4CjNo(1)
ここ最近はロンパスレ荒らすのに夢中になってるキチガイだよ
相手するだけ無駄だから現れたら黙ってNGして焼き依頼出せばいい

BBSバーボン規制解除、焼きまたはあぼーん依頼スレッド
vip2chスレ:operate

まあ最近は焼き依頼スレすら荒らされてて対応遅いけど、依頼出さないよりはいい
34 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/15(火) 22:46:20.36 ID:XH8XFDrb0(1)
クライマックスまで頑張ってください
35 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/21(月) 22:24:50.37 ID:Qf7PNxWq0(1/4)
カムクラ「愛だとか友情だとか……僕はそんなもの信じていません。人間なんて簡単に他人を騙し、平気で嘘をつきます。君も薄々気がついてるんですよね?」

カムクラ「自分たちが『絶望』であるということに」

日向「……あぁ」

カムクラ「ならなぜ助けようとするのですか?世界を壊した絶望たちを」

日向「……約束、したからだ」

カムクラ「約束?」

日向「俺を信じて、命をかけてまで助けてくれた友達と約束したんだ。だから俺はみんなを助ける!絶望も希望も関係ない」

カムクラ「ここから出た後はどうするつもりなんですか?未来機関からの追っ手は?自分たちがしてきた罪は?」

日向「そんなものはここから出てから考えればいい」

日向「今は俺の意志で、やりたいことをやるだけだ!」




36 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/21(月) 22:29:22.05 ID:Qf7PNxWq0(2/4)
カムクラ「…………ぷ」

日向「……?」

カムクラ「ククク…なるほど、これはオモシロイ」

日向「はぁ?」

カムクラ「僕もオモシロそうな君を信じてみたくなりました。だから、少しだけ力を貸します」

日向「それはありがたいけど……ッ!」

日向(急に……眠気が……)

カムクラ「また、会えたなら会いましょう」

カムクラ「おやすみなさい」



37 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/21(月) 22:34:58.61 ID:GSo/myep0(1)
クソスレ
38 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/21(月) 22:41:10.77 ID:Qf7PNxWq0(3/4)
〔倉庫〕

狛枝「…これだけやれば十分だと思ったんだけどね」

狛枝「はぁ…ボクの周りの人はね、ボクの才能のせいかかなりの確率で死んでいったんだ。ボクの大切な人も、両親でさえも」

狛枝「憎いと思ったこともない人たちだよ。ましてや殺したいなんて一度も思わなかった。それなのに、死んだよ」

狛枝「そんなボクがこの島に連れて来られて初めて人を殺そうと本気で思ったんだ!その人を殺すために計画を練って、使えるものはすべて使ったつもりだよ」

狛枝「なのに……なんで生きてるのかな?」

狛枝「日向クン」

日向「お前を…助けるためだ」フラフラ

狛枝「アハハ!お腹にパイプが刺さってるんだよ?凄い生命力だね!」


39 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/21(月) 22:55:55.82 ID:Qf7PNxWq0(4/4)
日向「狛枝…寂しいのなら、助けてほしいなら俺たちを頼ってくれよ」

狛枝「…助けが必要なのは日向クンのほうじゃないかな」

日向「お前が希望に縋るのは、希望だけが自分を助けてくれると思ったからだろ」

狛枝「……で、そうだとしたらどうなのかな?」

日向「俺はお前を支えてやれる」

狛枝「アハ……アハハハハハ、ハハハハハハハハ!ボクを支えられる?絶望に染められたボクを絶望であるキミが助ける!?」

狛枝「ボクが求めてるのは希望なんだ!『絶望』であるキミには」

日向「ならその絶望を希望で打ち砕けばいい」

狛枝「絶望が希望を抱けるわけないよ!」

日向「過去がどうだったかは知らない。だけど今の俺たちは絶望に染まってるか?」

狛枝「…うるさい」



40 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/21(月) 23:32:03.27 ID:YbSvcwqdo(1)
マイナスとマイナスをかければプラスになる理論でなんとかなる(確信)
41 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/24(木) 21:15:31.06 ID:88l0F4fl0(1)
期待
42 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/26(土) 03:04:14.94 ID:+akjwaVm0(1/3)
日向「もう一人で悩まなくていいんだぞ」フラフラ

狛枝「うるさい!」

日向「お前は、俺たちの……仲間なんだか……らな」ドサッ

狛枝「ーーーーッ!!うるさいうるさいうるさい!ボクは希望が見たいんだよ!絶望がボクを惑わすな!そうだよ……ボクは一人でも平気なんだよ。馴れ合いなんかで絶対に希望は生まれない!」

罪木『創さん!』ドンドン

七海『日向くん!』

九頭龍『おい狛枝ぁ!いるんだろうがよぉ!ここ開けろやッ!』ドンッ

終里『どいてろ!はぁぁぁぁ…おりゃ!』ゴシャ

十神「日向!大丈夫か!?」

弐大「これはどういうことじゃ?説明してくれんかのう、狛枝」



43 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/26(土) 03:39:32.63 ID:+akjwaVm0(2/3)
左右田「お、おいおい。なんで日向の腹にパイプが刺さってんだよ!」

狛枝「はぁ……ぐ…うぇ…」フラ

弐大「答えんか狛枝ぁ!」

十神「放っておけ!今は日向の傷の方を優先しろ!」

十神「弐大はパイプを抜け!罪木は傷の治療を!九頭龍や辺古山、終里はありったけのタオルを持って来い!」

狛枝「く……くそ」フラフラ

小泉「…………」カキカキ

小泉『どこに行くつもり?』

狛枝「……小泉さんか」

小泉「…………」カキカキ

小泉『なにがアンタをそうさせるの?』



44 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/26(土) 03:41:17.75 ID:+akjwaVm0(3/3)
今回はここまでにします

更新遅くてすみません!

大学が想像してた以上に忙しくてまったく書けてないです…

45 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/26(土) 12:16:34.33 ID:3VYpximp0(1)
良かったら前スレのリンクお願いします
46 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/26(土) 12:31:47.51 ID:9ndj7eo+0(1)
(⌒-⌒; )
47 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/26(土) 16:04:45.66 ID:tpUkOs170(1)
>>45
日向「強くてニューゲーム」
vip2chスレ:news4ssnip
48 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/28(月) 14:21:56.56 ID:lgDYrUYD0(1/2)
七海が極端に低いのは割と新しい気がする
49 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/28(月) 14:22:26.44 ID:lgDYrUYD0(2/2)
ごめん誤爆った
50 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/29(火) 21:46:06.91 ID:T8Q/bznD0(1)
続きがあってよかった
51 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/29(火) 22:59:32.29 ID:qJN7Ts7z0(1)

52 ◆1oe0d9MS0Y [saga] 2014/04/30(水) 02:23:24.55 ID:UtO9j78Z0(1/6)
狛枝「…………」

小泉「……」カキカキ

小泉『ねぇ狛枝…』

西園寺「おいそこの陰険野郎!小泉おねぇの話聞いてる?」

狛枝「……」

西園寺「無視すんな!」

狛枝「11037」

西園寺「はぁ?」

狛枝「遺跡のパスワードだよ。知りたいことはたぶん遺跡の中にある」

左右田「それってどういう……」

罪木「創さぁん!」

左右田「なにかあったのか!?」

罪木「創さんの血が……止まらないんですよぅ!」

左右田「おいおい、それってヤバいんじゃねぇのか!?」

十神「そんなことはわかっている!おい、どうすればいい!」



53 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/30(水) 02:24:33.81 ID:UtO9j78Z0(2/6)
酉間違えた?
54 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/30(水) 02:29:54.92 ID:UtO9j78Z0(3/6)
罪木「血さえ……止まれば……」

十神「だからその方法を聞いているんだ!」

罪木「止血する道具がないんですよぅ!」

終里「タオル!タオル持って来たぞ!」

花村「それに水も持って来たよ!」

十神「タオルで早く押さえろ!」グイ

罪木「止まって……止まってくださぁい!」

「……やっぱりオモシロイ」

九頭龍「誰だよ……なにがおもしろいってんだコラァ!」

「叫ばないでくれませんか」



55 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/30(水) 02:39:58.23 ID:UtO9j78Z0(4/6)
罪木「!!…創さん!」

「僕はあなたたちの知っている日向 創ではありません」

澪田「創ちゃんだけど創ちゃんじゃない?あ、わかった!多重人格ってやつっすね!」

「詳しいことは後で……」

「焼けた鉄はありますか?」

左右田「ちょっと待ってろ……熱っ!」

十神「これを使え」バサッ

左右田「おぉ、サンキュー。つうかこれでなにすんだよ……」

九頭龍「もしかして……おいペコ!罪木以外の女共を全員外に出せ!」

辺古山「わかりました。さぁ、ここから出るぞ」

七海「でも日向くんが……」

辺古山「私たちがここにいてもなにもできることはない。だから私たちは包帯や薬を取りに行こう」

九頭龍「弐大と十神は日向を抑えていてくれ」



56 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/30(水) 02:51:32.94 ID:UtO9j78Z0(5/6)
弐大「なにをする気なんじゃ?」

九頭龍「ただの応急処置だ」ビリビリ

九頭龍「罪木!焼いて傷口だけは止める。その後の手当ては任せたぞ」

罪木「はい!」

「こんな仲間に恵まれて日向くんが羨ましいですね」

九頭龍「あん?」

「いえ、なんでも」

九頭龍「左右田は足を抑えてろ。花村は日向が舌を噛まないようにタオルを巻いとけ!」

左右田「おう」

花村「うん、わかったよ」

九頭龍「しゃあ、いくぞ」ジュウ

「ーーーーーー!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁあ゛あ゛!!」

十神「くっ!暴れるな」

弐大「ふん!」

罪木「創さん!」

「ぐぅぅぁぁ!ーーーー」

九頭龍「もう少しだ……よし、罪木!」

罪木「はい!」

辺古山「ぼっちゃん!薬を持って来ました!」

罪木「あとは……」




57 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/30(水) 02:54:00.67 ID:UtO9j78Z0(6/6)
今回はここまでです


58 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/30(水) 02:57:30.89 ID:YMLTjpZK0(1)
乙〜
59 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/30(水) 03:50:59.22 ID:uiPTmu6RO携(1)
乙。
正しい方向に行ったカムクラは頼りになるねぇ。公式で江ノ島に正面から対抗し得る唯一の存在と言われただけある
60 ◆aeDXC8CSFA 2014/04/30(水) 16:57:54.83 ID:lMVIc7/W0(1)
乙乙!

このシリーズ大好き!

これからもがんばってください!
61 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/01(木) 01:22:22.44 ID:tCib4Maa0(1/4)
〔森〕

狛枝「はぁ……はぁ……」

モノクマ「失敗しちゃったんだね、狛枝クン」

狛枝「モノクマ……」

モノクマ「狛枝クンはホント役に立たないよね。変なところで幸運だし、人望はないし、希望にもなれないし、言動は一致してないし、殺す対象だった日向クンに簡単に揺さぶられるし、最後まで読み切れてないのに先走るし」

モノクマ「あのファイルだけで全部わかった気になってたの?」

狛枝「……どういうことだ」

モノクマ「うぷぷ、もうそろそろこのゲームも終わりだよ」

狛枝「おい、モノクマ!」

モノクマ「遺跡には後からでも入れるようにしとくから」

モノクマ「ま、来なくてもいいんだけど」

モノクマ「じゃあボクは日向クンの所に行こうかな」

狛枝「…………」




62 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/01(木) 01:34:18.84 ID:tCib4Maa0(2/4)
〔倉庫〕

罪木「応急処置、終わりましたぁ!」

十神「よし、すぐに病院に連れて行くぞ!」

モノクマ「喚ばれて飛び出て!」

ソニア「どうやって運べばよろしいのでしょうか?」

弐大「ワシの背中に乗せればよかろう」

モノクマ「おいオマエら!ボクを無視するな!」

花村「も、モノクマ!?」

九頭龍「今はてめぇに関わってる時間はねぇんだよ」

モノクマ「しょぼん……仕方ないからせっかく呼んだ救急車は帰ってもらおうかな」

九頭龍「……今なんつった」

モノクマ「フフン、ボクはカワイイですよ!」

九頭龍「救急車があんのか?」

モノクマ「ツッコんでくれない」

十神「茶番はいらん。あるのかないのかどっちだ」

モノクマ「あるよ」

左右田「あんのかよ!」

モノクマ「ちゃらららっちゃらー、救急搬送車ー!」

モノミ「きゃー!これがあれば日向さんを助けられまちゅね!」

左右田「増えたぁっ!」



63 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/01(木) 01:44:50.11 ID:tCib4Maa0(3/4)
モノクマ「使わせてあげるからさ、日向クン。少しボクの質問に答えてくれないかな」

「…………」

モノクマ「いや、カムクライズル」

カムクラ「お久しぶりです」

モノクマ「覚醒したんだね」

カムクラ「いえ、ここには長くいられません。すぐに消えてしまいますよ」

モノクマ「そうなんだ」

終里「なんの話してんだ?」

モノクマ「まぁいいや。さ、乗りなよ」

カムクラ「では遠慮なく」フラ

罪木「創さん!」ガシッ

カムクラ「すみません、迷惑をかけてしまいました」



64 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/01(木) 01:45:56.85 ID:tCib4Maa0(4/4)
今日はここまでにします


そろそろ書きためないと…
65 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/01(木) 02:59:45.43 ID:ttoLGGspO携(1)
乙ー
希望に目覚めたカムクラ君期待
66 作者じゃないわよ! ◆Vsw5JAuOCU 2014/05/03(土) 02:27:52.73 ID:P9WYR64J0(1)
次は、いつかなぁ……。
67 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/06(火) 21:41:03.68 ID:uuvW0uB70(1)
まだ?
68 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/06(火) 22:01:51.01 ID:h3rHUQFY0(1/5)
十神「フンッ!これで一安心といったところだな」

カムクラ「…………」

九頭龍「おい日向?日向!?」

罪木「創さん!……眠っているだけみたいです」

九頭龍「脅かすなよ……」

モノクマ「もういい?それじゃあ出発するよ」


〔病院〕

ソニア「日向さん、起きませんね」

十神「罪木が付いている。大丈夫だろう」カッカッカッ

西園寺「そう言いながらも貧乏揺すりしてるよね。本当は心配なんじゃないの?」

十神「フンッ!」カッカッカッ

左右田「……てかよぉ、結局日向って何者なんだ?」

七海「どういうこと?」


69 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/06(火) 22:12:00.69 ID:h3rHUQFY0(2/5)
左右田「お前らだって見ただろ?あのモノクマと仲良さげに喋ってたんだぜ?」

左右田「しかも今さっきの雰囲気……普段の日向じゃなかったしよぉ。もしかして裏切り者って……」

ソニア「ありえません!だったらなぜわたくしたちをここまで助けてくださったのですか!?」

左右田「小説とかでもあるじゃないですか。最後の最後で仲間だと思ってたやつが実はスパイでした、とかそういう話が」

九頭龍「日向のこと裏切り者だって疑ってんのか?」

左右田「……あぁ、疑ってるよ」

九頭龍「てめぇ!日向がどんだけ俺ら全員を助けようとしてたか知ってんだろ!?それなのによくそんなこと言えるな!」ガシッ

左右田「俺だって思いたくねーよ!だけどよぉ……さっきのもそうだし日向がモノクマと関係があるのは確かだろ!」

七海「ストップ」

九頭龍「あぁ?!」

七海「もうやめようよ。今私たちがケンカしてどうするの?」

九頭龍「……チッ。頭冷やしてくる」ガチャ


70 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/06(火) 23:20:04.99 ID:h3rHUQFY0(3/5)
辺古山「ぼっちゃん!」ガチャッ

終里「あ、おい!」

十神「放っておけ。九頭龍のことは辺古山がどうにかするだろう」

十神「それよりもこれからのことが重要だ」

小泉「…………」カキカキ

小泉『そういえば狛枝が言ってたんだけどさ、あたしたちの知りたいことは遺跡の中にあるって』

澪田「遺跡の中っすか?でも遺跡に入るにはパスワードがわかんないっすよ」

西園寺「それも狛枝が言ってたよ。11037だって」

左右田「それって信じられんのか?狛枝が言ってたことだぞ?」

十神「嘘をついていたのなら俺が気づいている」

弐大「左右田よ、さっきからどうしたんじゃ?」

左右田「……どうした、じゃねぇよ。なんで平気でいられんだよ!日向が裏切り者で俺たちがモノクマの手のひらで踊らされてただけかも知んねぇんだぞ!?」

十神「落ち着け。なにをそんなに怯えている」

左右田「日向に裏切られるかもって思うとこえぇんだよぉ……」


71 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/06(火) 23:39:25.32 ID:h3rHUQFY0(4/5)
花村「……ねぇ左右田くん」

左右田「なんだよ」

花村「日向くんが記憶のこと話してくれたときのこと覚えてるかな」

左右田「……あぁ」

花村「あのときの日向くんもきっと怖かったと思うよ。もしみんなが記憶のことをことを信じてくれなかったらどうしようってさ」

花村「それでも話してくれたのはぼくたちを信じてくれたからじゃないかな」

左右田「…………」

花村「ぼくは日向くんが信じてくれるなら、ぼくも日向くんを信じるよ」

左右田「……日向が悪いやつじゃねぇってのはわかってるよ……でもよぉ……怖いんだよ……どうしようもなく怖いんだよ」

七海「だったら日向くんが起きたら聞いてみない?私たちをどう思ってるのかって」

左右田「口ではなんとでも言えるだろ」

七海「そうかな?」

左右田「そうだよ!」

七海「でもさ、信じてみないと前には進めないと思うよ。友達なんだし」

左右田「……それができねぇやつもいるんだよ」ボソ

七海「なにか言った?」

左右田「なんでもねぇよ」


72 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/06(火) 23:49:58.91 ID:h3rHUQFY0(5/5)
今日はここまでにします


GWももう終わりかぁ……

学校行きたくない……



73 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 07:53:08.37 ID:waxp30ZU0(1)
学校くらいサボっても問題ないさ。
左右田君の過去混ぜてきたか、うまいね。
おつ
74 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/05/09(金) 18:17:54.07 ID:Ti2cjVCw0(1)
遅いけど乙

左右田って過去に親友に裏切られたんだよね……。
75 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/09(金) 22:28:20.96 ID:ODu+4K3A0(1)
糞スレ
76 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/10(土) 13:38:33.55 ID:cIEZc+Hh0(1)
>>75 黙ってROMってろ

糞だと思うなら来なくていいんじゃないかなあ?
77 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/11(日) 04:22:05.37 ID:k5vyljAU0(1/7)
〔ライブハウス前〕

九頭龍「…………」

辺古山「ぼっちゃん、ここにいたんですか」

九頭龍「ペコか」

辺古山「隣、座っても?」

九頭龍「……あぁ」

辺古山「では失礼します」スッ

九頭龍「いつものお前らしくねぇな。普段はそんなこと気にしねぇで抱き付いてくるだろうが」

辺古山「私も空気くらいは読みますよ」

九頭龍「ハッ!全っ然読めてねぇだろ」

辺古山「フフ」

九頭龍「…………左右田の話もわかるんだよ」

辺古山「日向がモノクマの仲間だという話ですか?」

九頭龍「あぁ。さっきの日向は雰囲気が日向のモンじゃなかった。それにモノクマにはカムクラと呼ばれてやがったしよ」

辺古山「ですがぼっちゃんは日向のことを信じているのでしょう?」


78 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/11(日) 04:23:06.87 ID:k5vyljAU0(2/7)
〔ライブハウス前〕

九頭龍「…………」

辺古山「ぼっちゃん、ここにいたんですか」

九頭龍「ペコか」

辺古山「隣、座っても?」

九頭龍「……あぁ」

辺古山「では失礼します」スッ

九頭龍「いつものお前らしくねぇな。普段はそんなこと気にしねぇで抱き付いてくるだろうが」

辺古山「私も空気くらいは読みますよ」

九頭龍「ハッ!全っ然読めてねぇだろ」

辺古山「フフ」

九頭龍「…………左右田の話もわかるんだよ」

辺古山「日向がモノクマの仲間だという話ですか?」

九頭龍「あぁ。さっきの日向は雰囲気が日向のモンじゃなかった。それにモノクマにはカムクラと呼ばれてやがったしよ」

辺古山「ですがぼっちゃんは日向のことを信じているのでしょう?」


79 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/11(日) 04:23:34.37 ID:k5vyljAU0(3/7)
〔ライブハウス前〕

九頭龍「…………」

辺古山「ぼっちゃん、ここにいたんですか」

九頭龍「ペコか」

辺古山「隣、座っても?」

九頭龍「……あぁ」

辺古山「では失礼します」スッ

九頭龍「いつものお前らしくねぇな。普段はそんなこと気にしねぇで抱き付いてくるだろうが」

辺古山「私も空気くらいは読みますよ」

九頭龍「ハッ!全っ然読めてねぇだろ」

辺古山「フフ」

九頭龍「…………左右田の話もわかるんだよ」

辺古山「日向がモノクマの仲間だという話ですか?」

九頭龍「あぁ。さっきの日向は雰囲気が日向のモンじゃなかった。それにモノクマにはカムクラと呼ばれてやがったしよ」

辺古山「ですがぼっちゃんは日向のことを信じているのでしょう?」


80 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/11(日) 04:41:41.07 ID:k5vyljAU0(4/7)
九頭龍「…………」

辺古山「ぼっちゃん?」

九頭龍「俺に左右田を責める権利なんてなかったんだよ」

辺古山「どういうことですか?」

九頭龍「俺も最初は左右田と同じで日向が裏切り者じゃねぇかって思ってたんだ。だけどあいつが裏切り者だろうがモノクマの仲間だろうが俺たちを助けようとしてたのは本当だ」

九頭龍「だからどんな結果だろうが日向を信じようと思った矢先に左右田にあんなこと言われてな……」

辺古山「ですが今は日向を信じているのなら」

九頭龍「いや、俺が日向を信じてるのは……信じようとしたのは日向が裏切り者かも知れないって考えから逃げただけなんだよ……」

九頭龍「左右田に図星をつかれて腹が立ったんだ。そんな弱い俺に左右田を殴ろうとする権利なんてなかったんだ……」

辺古山「ぼっちゃん……」

九頭龍「それに比べて左右田はつえぇな。臆病なだけかもしんねぇけどよ、あんなに自分の思ったことを言えるなんてな」

辺古山「……」

九頭龍「完璧な妹のことも、極道の組のことも、日向のことからさえ逃げ出した弱い俺に仲間を語る資格もあそこに戻る資格もねぇ」


81 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/11(日) 05:00:07.81 ID:k5vyljAU0(5/7)
辺古山「それは違いますよ」ギュッ

九頭龍「……」

辺古山「ぼっちゃんは強い方です。さっきだって日向を救ったのはぼっちゃんです」

九頭龍「違う。あれは日向がやろうとしたことを手助けしただけだ」

辺古山「それは誰でもできることではないですよ」ニコ

九頭龍「……ありがとな。またお前に甘えちまってる」

辺古山「人は一人ではできないこともあります。でも……ぼっちゃんには私が付いていますよ。私がぼっちゃんを支えます」

辺古山「だからぼっちゃんはぼっちゃんの信じている人を支えてあげてください」

九頭龍「……なぁペコ」

辺古山「はい」

九頭龍「少しだけ俺を抱きしめたままでいてくれ」

辺古山「……はい」ギュッ

九頭龍「今だけは、甘えさせてくれ」

辺古山「はい」



82 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/11(日) 05:08:15.91 ID:k5vyljAU0(6/7)
九頭龍「……」

辺古山「…………」ナデナデ

九頭龍「…………」

辺古山「ハァ……ハァ……」ギュウゥゥ

九頭龍「……ペコ」

辺古山「なぁ……今何色のパンツ履いてるん?」ハァハァ

九頭龍「どこでそんな変な知識身に付けやがった!!」

辺古山「ジョークですよ」ジュルリ

九頭龍「嘘つけ!」

辺古山「なぁ、すけべしようや……」

九頭龍「もう意味わかんねぇから離せ」グググ

辺古山「力なら私の方が上ですよ」

九頭龍「ふざけんな!てめぇになんか負けるか!」グググ

辺古山「私が満足するまでは抱きしめさせてもらいますね」ニコ

九頭龍「クソがぁぁぁぁ!」


83 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/11(日) 05:12:08.59 ID:k5vyljAU0(7/7)
今日はここまでにします



ペコがこんなキャラになってしまうのは嫌いだからじゃなくて好きだからですよ!


……一番好きなのは罪木ですが

84 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/11(日) 06:26:55.89 ID:mgpgsVODO携(1)
おつん

忠誠心は鼻からと言うやつか
85 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/11(日) 16:38:41.27 ID:YKPhObDT0(1)
そんな>>1にオススメの動画
http://www.youtube.com/watch?v=5J2VVtalC6Y
86 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/11(日) 19:06:24.48 ID:sTzj/T/w0(1)
なんか感情的な面での話の流れが適当やな
87 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/14(水) 10:09:38.46 ID:XlsXU8S40(1)
今日更新予定です
88 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/14(水) 10:26:15.98 ID:EnefK/150(1)
待ってます
89 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/14(水) 19:24:35.21 ID:qYy6veKn0(1/2)
来てくれるんですね。更新が待ち遠しいです。
90 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/14(水) 23:58:05.72 ID:qYy6veKn0(2/2)
はよ
91 sage 2014/05/15(木) 00:01:18.76 ID:PHQgCtoC0(1)
希望なんてなかった・・・
92 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/15(木) 02:03:41.02 ID:oW96PCCN0(1/9)
〔病院〕

澪田「日寄子ちゃんなに食べてるんすか?」

西園寺「グミだけど……なに、欲しいの?」

澪田「欲しいっす!」

西園寺「あげるから顔近づけないで!はい」

澪田「うはー!日寄子ちゃんは優しいっすねー!」

十神「なんだこのフワフワした雰囲気は」ソワソワ

小泉「…………」カキカキ

小泉『落ち着きなよ。アタシたちがピリピリしたって仕方ないんだから』

十神「フンッ」

九頭龍「すまねぇ、今戻った」ガチャ

辺古山「みんなすまない」

左右田「…………」

七海「おかえりー。もう大丈夫なの?」

九頭龍「あぁ。おい左右田」


93 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/15(木) 02:11:54.79 ID:oW96PCCN0(2/9)
左右田「な、なんだよ。言っとくけどな、俺は謝らねーからな!」

九頭龍「いや、あれは俺が悪かった。すまん」

左右田「だいたい……はっ?」

九頭龍「俺もあんな大層なこと言ってたがよ、心の奥底では少し日向を疑ってた。見透かされたみたいでついカッとなっちまった。すまねぇ!」

左右田「……あー、いや……俺も悪かったわ。全然場の空気とか読めてなかったしな。悪い」

七海「じゃあ仲直りの握手でもする?」

左右田「いやいやいや!そんなの必要ないって!そもそもこいつがやりたがらないだろ」

九頭龍「ちっ……仕方ねぇな」スッ

左右田「すんのかよ!」

九頭龍「んだよ、文句あんのか?」

左右田「ひぃぃ!ごめんなさい!なんでもないです!」

九頭龍「ほら、これで手打ちだ」スッ

左右田「お、おう」ギュッ


94 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/15(木) 02:23:47.56 ID:oW96PCCN0(3/9)
九頭龍「だがよ……」

左右田「へ?」

九頭龍「日向は俺のダチだ。日向がどんな奴であろうが信じる。テメェが日向の敵になるってんならそのときは遠慮なく潰すからな」ボソッ

左右田「ぎゃあぁぁぁ!!握られた手が痛い痛い痛い!」バタバタ

ソニア「ふふ、左右田さんも九頭龍さんと仲直りできた嬉しさのあまり歓喜のダンスを踊られてますね。これが真のマブタチってやつですね!」

左右田「ソニアさん違いますから!気づいてください!」

辺古山「ぼっちゃん」

九頭龍「けっ」パッ

左右田「…………羨ましいな」

七海「左右田くん」

左右田「ん?」

七海「ちゃんと仲直りできたんだね」

左右田「まぁ、俺も悪かったしな……って背伸びしてなにやってんだ?」

七海「少ししゃがんでくれない?」


95 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/15(木) 02:31:09.63 ID:oW96PCCN0(4/9)
左右田「なんでだよ」

七海「いいから」

左右田「しゃーねぇな、ほら」スッ

七海「ん、仲直りできてえらいえらい」ナデナデ

左右田「お……おぅ?」

西園寺「むー!」バシッバシッ

左右田「いってぇ!なにすんだよ!」

西園寺「べっつにー?誰かさんが頭撫でられて鼻を伸ばしてたような気がしたから気合いを入れてあげようと思っただけ」

左右田「伸ばしてねーよ!つうか伸ばしてたとしてもお前には関係ねーだろ」

西園寺「やっぱり伸ばしてたんだ!」

左右田「だから伸ばしてねーよ!」

西園寺「男なのに言い訳するの?ま、仕方ないよねー、左右田おにぃってチキンだもんねー」



96 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/15(木) 02:41:11.03 ID:oW96PCCN0(5/9)
左右田「チキンじゃねーよ!俺だって勇気くらいあるっての!」

西園寺「ぷぷぷ、子ども相手に本気になっちゃってダサーい。だから左右田おにぃはモテないんだよ?」

左右田「ぐぐぐ……ちくしょう」

西園寺「ま、まぁ……誰にも貰われなかったらわたしが貰ってあげても……」ボソボソ

左右田「まだ悪口言ってんのかよ!」

西園寺「なんでもないよハゲ!」

左右田「ハゲてねーし!」

罪木「み、みなさん……創さんが意識を取り戻しましたぁ」

九頭龍「本当か!?」

罪木「でも、あの……傷の方は重傷だから本当はゆっくり寝かせてあげないといけないんですけど……」

西園寺「あーもう!まどろっこしいな、ハキハキ喋れよゲロブタ!」

罪木「す、すみませぇん!」

七海「怒鳴っちゃったら相手が怯えちゃうよ」

罪木「あ、あの……創さんがどうしてもみなさんに話しておかないといけないことがあるみたいで……」


97 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/15(木) 02:49:45.59 ID:oW96PCCN0(6/9)
十神「わかった。日向の容態が悪くなったら無理やり休ませればいいだろう」

罪木「はい、お願いします」

終里「だったら早く日向のとこに行くぞ!」ダッ

罪木「病院内では走らないでくださぁい!」

花村「走ってくれた方がぼくは嬉しいな。だって風圧でスカートが捲れるよね?……あとは言わなくてもわかるでしょ?」

九頭龍「くだんねーこと言ってねぇでいくぞ」


〔病室〕

十神『日向、入るぞ』コンコン

カムクラ「どうぞ、鍵は開いてますよ」

十神「調子は……悪いみたいだな」ガチャ

カムクラ「はい。もう僕には時間がないみたいです」

ソニア「時間がないとはどういうことでしょう?」

カムクラ「もうすぐ僕は消えてしまいます」



98 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/15(木) 03:03:09.67 ID:oW96PCCN0(7/9)
十神「……お前が消えれば日向はどうなる。まさか……死ぬのか?」

澪田「イズルちゃんも創ちゃんも死んじゃうんすか!?」

カムクラ「死ぬというよりも今までみたいにまた眠りにつくといったほうが正しいですね」

カムクラ「つまり今まで通りの日向 創に戻るだけです」

十神「そう……か。だったら早く話すがいい。時間もないみたいだしな」

カムクラ「話しが早くて助かります。それと僕だったときの記憶は日向 創のほうでは覚えていません。だから僕が消えたあとは誰か彼に説明してあげてください」

七海「わかったよ」

カムクラ「ではあなた達に言わなくてはいけないことが3つあります」

カムクラ「まず最初にここは現実の世界ではなく、バーチャルの世界だということです」

十神「!?」

七海「…………」

カムクラ「未来機関は僕たちの記憶の一部を消し、意識だけをこの電脳世界に飛ばしました」

弐大「ここで未来機関が出てくるとは意外じゃのう」

九頭龍「意外でもなんでもねぇだろ。そういう仮定はあっただろ」

終里「俺たちをここに閉じ込めたのは未来機関なんだよな?だったら悪いのは全部未来機関のやつらじゃねーか!」



99 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/15(木) 03:34:12.71 ID:oW96PCCN0(8/9)
カムクラ「いえ、むしろ未来機関……未来機関の一部の人が僕たちを助けるためにここに送ったんです」

十神「コロシアイをさせることが俺たちを助けるとでもいうのか?」

カムクラ「それは全てモノクロがやらせたことです。モノクロが介入してくることは未来機関にとっても予想外のことだったみたいですよ」

カムクラ「彼らは僕たちがちゃんと更正したらここから出すつもりだったようです。1人を除いて、ね」

七海「…………」

ソニア「なぜその1人さんだけを未来機関さんは出そうとしないのですか?それにその1人って誰なんですか?」

カムクラ「それが誰かも、理由もすぐにわかるよ」

花村「でもなんでぼくたちを更正させる必要があるのさ?ぼくたちは何も悪いことしてないよ」

カムクラ「それは2つ目の話に関係するのですが……とりあえずここが現実の世界ではないことは理解していてください」

ソニア「だったら……だったら田中さんはどうなるのですか!?」



100 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/05/15(木) 03:36:27.14 ID:oW96PCCN0(9/9)
今日はここまでにします


昨日更新できなくてすみません!


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