[過去ログ] 八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「これで最後、だね」 (1002レス)
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536 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/07(月) 07:00:50.87 ID:mT0cW7QdO携(1)
さあ>>1はいくらつぎ込んだかな
SSなんて趣味なんだし、気長に期待しておくしかないさ
537 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ] 2014/07/07(月) 16:07:08.72 ID:mjsJBzeAo(1)
七夕だぜー
538 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/11(金) 20:48:57.30 ID:VXvnpCyS0(1)
今夜、更新します! いつも通り時間は期待せずにいてください。
あと、恐らく番外編は完結するまでもう無いかと。
539 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 20:54:09.88 ID:hmexzZ/YO携(1)
お、1来た! 初リアルタイムで見れるのか!
待ってるから無理せずがんばってくれー
540 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 22:12:04.43 ID:qOTT+5Rbo(1)
もう一生番外編がこないってことやな(すっとぼけ)
541 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 22:12:17.61 ID:E0YtkZJzo(1)
今日更新ってほんとぉ?(子犬目)
542 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ] 2014/07/11(金) 22:14:19.00 ID:h/js30lVo(1)
きたか
543 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:12:37.34 ID:uZAEszqKo(1)
楽しみ
544 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/11(金) 23:33:37.87 ID:SB37hD40O携(1)
30時とかでも今日は今日だしな(錯乱)
545 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 00:28:50.85 ID:HGTUNJ2xO携(1)
4時まで起きてる(予定)
546 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 01:00:39.27 ID:pdt3B715o(1/3)
1時間後くらいにはくるかな(震え声)
547 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 01:28:36.72 ID:q8EA723DO携(1)
今夜50時
548 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:04:36.86 ID:Gl0S96aK0(1/15)
短くて申し訳ないが、そろそろ投下しますで。
549 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 02:09:34.96 ID:djfJq9ph0(1)
キタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!!!
550 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 02:09:37.60 ID:vQCfSdw+0(1)
おはイッチ
551 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:12:41.78 ID:Gl0S96aK0(2/15)
*
アイドル。
それは人々の憧れであり、遠い存在。
テレビの向こう側、雲の上の人、女の子の永遠の夢。
人によってその表現は違うが、どれもが自分とは別の世界のように語る。
それもそうだ。目にする事はあっても、そこに自分と同じ現実味などそう簡単には抱けない。
自分と同い年の少年が、甲子園に出ているように。
自分となんら変わりない少女が、コンクールで受賞されるように。
画面の向こうというだけで、どこか遠く感じてしまう。
552 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:15:00.54 ID:Gl0S96aK0(3/15)
そして、自分と“偶像”との距離を鮮烈に感じた時。
きっと誰しもが自問自答を繰り返すだろう。
俺は、このままでいいのか?
私は、何をやっているんだ?
その自分自身への問い掛けは、自然と俺たちを“ふるい”にかける。
数回で折り合いをつける者は、そのまま何事も無く人生を送るだろう。別に悪い生き方ではない。
数十、数百と葛藤を続けて生きて行く者は、いつしか何かを成すかもしれない。辛いが、やりがいはあるだろう。
そして一度の問いで答えを出す者は、酷く少ない。
しかしそれは、決して諦め妥協する事ではない。誰だって、自分の夢を奇麗さっぱり忘れる事など出来ない。少なからず、その問いと向き合いながら生きて行く。
だからきっと、一度で答えを出せる者はーー
ーー形振り構わず決心出来る、本当に“夢見る”者なのだろう。
553 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:17:18.70 ID:Gl0S96aK0(4/15)
まぁ別に、だからと言って誰々があーでこうだの言うつもりもない。
いつの間にか、俺は沢山のアイドルと触れ合ってきた。
それぞれが自分の信じるものや、譲れないものを持って、懸命にアイドルをやっていた。
そこにきっと優劣は無いし、差別も無い。
俺が何かを言うには、おこがましい程の輝き。
その輝きを、確かに俺は知っている。
例えば、独りの夜に勇気をくれた笑顔の少女。
例えば、勘違いする程に居心地の良い場所をくれた二人の少女。
例えば、俺の隣で、俺を信じて、俺を見てくれている少女。
彼女達のおかげで、この世には確かに“本物”があるって事を、俺は信じることが出来た。
……まぁ、あの二人は別にアイドルではないがな。
かつて苦手意識を持っていたアイドルという存在を、俺は今は受け入れられている。
もちろん、俺が知ってるアイドルが全てではないだろう。
けれど、俺がアイツのプロデューサーでいる限りは、信じていたい。
554 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:19:03.78 ID:Gl0S96aK0(5/15)
アイドルとは、偶像で、憧れで、遠い存在。
そして、夢なのだと。
まぁ、つまりだ。
何が言いたいかって言うと……
八幡「忙し過ぎてハゲそう……」
555 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:21:05.29 ID:Gl0S96aK0(6/15)
ー 月曜 monday ー
シンデレラプロダクション、その事務スペースの一角に、俺はいた。
否、屍が一体。
八幡「……もう昼か」
机に突っ伏したまま時計を確認。
見れば、丁度針が正午を回った所であった。
机の上には企画書やら報告書やらの書類が散らばっており、正直コーヒーのカップを置く所でさえ迷う程だ。
俺はそんな机の上に、無理矢理頭を預けている。結果ノートパソコンを前の席にはみ出す程押しのける形になったが、問題無いだろう。ちひろさんのデスクだし。
しかし、おかしい。
朝出社して、9時過ぎにはレッスンをやってる凛の所まで行こうかなーなんて考えていたのに、今はお昼過ぎだ。ふむ今一度状況を整理しよう。
556 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:23:01.11 ID:Gl0S96aK0(7/15)
とりあえず身の回りの書類の整理をしていたら、お世話になってるテレビ曲のディレクターさんから電話がかかってきて、良いお話を頂けたから直ぐさまスケジュール調整。それが終わったと思えば、今度は前に載せてもらったファッション雑誌の編集さんが挨拶周りにやってきてその対応。ようやく終わり、書類整理を続けようとした所で某有名歌番組からの急なオファーが舞い込み、急いで企画書を作る。やっと完成。←今ここ!
結局書類整理が終わらんがな!
アニバーサリーライブまでもう二ヶ月を切った。それに加えて凛の人気のアップ。
そう考えるとこの忙しさも納得出来るが……それにしたって体が追いつきませんもの。13人なんてプロデュースした日には発狂もんである。
そんなこんなで、俺は凛のレッスンを見に行く事も出来ずにお昼を迎えるのであった。
八幡「疲れて腹も減らんな……」
何か食おうかとも思ったが、別にそこまで腹も減っていないのでパスする事にする。
さっさと書類整理を終わらせて、午後の仕事に備えた方が良いだろう。
と、そこで視界にある書類の山へ陰がさす。
まだ日が落ちるには早過ぎる。何かと思い顔を上げると、そこには小人を肩車する巨人がいた。違うか。
きらり「にゃっほーい! はっちゃんおはよー☆」
杏「ちーっす」
八幡「……よぉ」
557 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:24:47.68 ID:Gl0S96aK0(8/15)
双葉杏と、諸星きらり。
最近何かと一緒にいる二人が、そこにいた。
つーか、肩車って……
いくら小柄とは言え、同年代を肩車出来る女子はそうはいないぞ?
何、きらりってもしかして夜兎の一族とかなの?
杏「なんかお疲れみたいだねー」グデー
八幡「……」
いや、そんな状態で言われても馬鹿にされてるとしか思えないんだが。
きらりの頭の上に顎を乗せ、これ以上無いくらい緩み切った顔の杏。
この間まで抵抗を見せていたと言うのに、今では懐柔された猫のように丸くなっている。チョロイン乙。
八幡「ちょっと仕事が溜まってたんでな。少し休んでただけだよ」
そう言って、手近な書類に手を伸ばす。
しかしその様子を見て、俺の行動に異を唱える者が一人。
きらり「ダメだよはっちゃん! お昼まだでしょー?」
担いでる杏をものともしない程の早さで詰め寄ってくるきらり。その反動で杏がガックンガックン揺れている。ちょっと面白い。
つーか前から思っていたが、はっちゃんて何だはっちゃんて。潜水艦か俺は。
558 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:26:25.49 ID:Gl0S96aK0(9/15)
きらり「ご飯はしっかり食べないと☆ 大きくなれないよー?」
八幡「そうか……しっかり食べてるとそうなるのか」
きらりを見ながら思わず言葉が漏れる。いや一体どれだけしっかり食えばそうなるのん?
どうせなら、同じ事務所にいる剣道娘に教えてやれ。
きらり「まだ食べないってゆーなら、ここはきらりが……☆」ゴゴゴゴゴ……
八幡「わ、わかったから。だからその変なオーラを引っ込めてくれ…」
きらり「おっつおっつばっちし♪」
怖えぇよ……なんかもうスタンドとか出しそうな勢いだったよ。
つーか、そろそろ大きく動くのは止めとけ。杏がいよいよ気持ち悪そうになってきてる。
その後近くのコンビニへ行き、テキトーな弁当を見繕う。
雑誌コーナーへ行くと城ヶ崎姉妹が表紙の物を発見したので、ついでに購入。
会社へ戻り、休憩スペースで飯を食おうと向かうと、そこには再び杏ときらり。
きらりが杏を抱え、膝の上に載せてソファーに座っている。テーブルには数種類のお菓子とジュース。
視線の先、テレビの画面には、お昼の有名バラエティ番組が映っている。
八幡「……お前ら、仕事に来たんじゃないのか?」
559 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:28:08.26 ID:Gl0S96aK0(10/15)
杏たちとは逆側のソファーへと座り、弁当を袋から取り出す。
やっぱ、からあげクンはレッドだな。
杏「午後からはねー。まぁ写真撮影だけだけど」
口の中でコロコロと飴玉を転がしつつ、気怠げに言う杏。
なるほど、今はそれまでの暇つぶしか。
しかし、仕事前だというのに二人とも全く緊張といったものは感じられない。凄い自然体だ。
……いやまぁ、この二人がそういうキャラじゃないのは重々承知してはいるんだが。
きらり「あれ? そういえばはっちゃん、今日は凛ちゃんはいないのー?」
八幡「あー……今日はレッスンでな。今頃は昼休憩してるだろ」
本当であれば午前中の内に見に行きたかったのだが、時既に遅し。
午後は予定入ってっから行けそうにないしなぁ。
きらり「そっかー、凛ちゃん寂しいねー」
八幡「まぁ確かに今週はもう会えないだろうしな」
杏・きらり「「えっ」」
八幡「あ?」
560 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:30:46.97 ID:Gl0S96aK0(11/15)
二人が急に俺の方に視線を向ける。
俺まで思わず呆気にとられ、弁当を口に運ぶのを止めてしまう。
八幡「……どうかしたか?」
杏「いや今、今週はもう会えないって言った?」
八幡「ああ」
杏「え、なんで? 担当外されたの?」
八幡「んなわけあるか」
つーか、何自然に担当を“外れた”じゃなくて“外された”って言ってんだ。
まるで俺が何かやらかしたと確信してるみてーじゃねぇか。
八幡「単純に、スケジュールの都合だよ」
ちらっとホワイトボードのスケジュール表を見る。
八幡「ちょっと今週他の奴らに付く仕事を頼まれてな。凛も一人で出来る仕事が主だったし、一緒じゃなくても大丈夫と判断したんだよ」
きらり「そっかぁ……残念だにぃー」ショボーン
そこで何故かきらりの元気が無くなる。感受性が豊かなのやらなんのやら。
そして杏はと言うと、珍しく、真剣な表情を作っていた。
561 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:33:56.28 ID:Gl0S96aK0(12/15)
杏「……八幡、大丈夫?」
八幡「何がだよ」
杏「いやだって、これじゃあ八幡が真面目な仕事人みたいだよ? そんなのおかしいよ」
八幡「どういう意味だおい」
いや、確かに今の自分が、嫌になるくらい社畜ってるのは認めるけども。
俺だって、うん、真面目ダヨ?
杏「まぁ別に杏には関係無いからいいんだけどね」
八幡「……ならいいだろ」
俺がやれやれと食事を再会すると、しかし、そこで杏は少しだけ悲しそうな表情になる。
杏「……でも、凛ちゃんはそうじゃないからさ」
八幡「あ?」
杏「仕事で忙しいのも仕方ないし、お互い納得の上なら何も言えないけど……ね」
八幡「……」
本当は、今日の午前に会う筈だった。
ともすれば、恐らくこれが今週会える唯一のチャンスだったから。
だが、その為に仕事を棒に振って、凛のチャンスを無駄にするわけにもいかない。
だから、きっとこれが正しい選択なんだ。
きっと。
562 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:35:22.46 ID:Gl0S96aK0(13/15)
杏「……ま、余計なお世話だとも思うけどねー」
見ると、さっきまでの悲しげな表情はどこへやら。
杏は、いつもの飄々とした態度で言う。
杏「これまで何とかなってきた二人なんだから、大丈夫なんじゃない? 知らんけど」
八幡「……お前はプロ雀士かよ」
思わず、苦笑する。
それは杏の珍しい気遣いで、なんとなくレアな物を見た気分になって、少しだけ、元気が出た。
きらり「あっ! はっちゃんもお菓子食べるー? デザートデザート☆」
杏「えー、八幡にあげるなら杏にちょうだいよー」
八幡「別に欲しいわけではないが、そう言われると渡したくもないな」
お昼の休憩時間、少しだけそうして戯れる。
その短い時間だけで、ちょっとだけ元気を貰えた気がした。
一週間は、始まったばかりだ。
563 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 02:37:29.17 ID:Gl0S96aK0(14/15)
そして火曜日へと続く。さて、次回はどのアイドルが出るかな!?
564 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 02:47:40.95 ID:lM3rQZuB0(1)
乙だぜ、この分だと凛のターンは遠いな
565 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 02:52:53.76 ID:2AT1MTd9o(1/2)
乙乙
次の作品内時間は火曜日ということなのか火曜日に次の更新と言う意味なのか
566 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 19:05:21.43 ID:pdt3B715o(2/3)
火曜日(来週とはいってない)
567 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/12(土) 19:59:45.36 ID:Gl0S96aK0(15/15)
ところがぎっちょん今夜投下です。
何曜までいけるかなー。
568 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/12(土) 20:13:01.41 ID:FAGd1/6H0(1)
やっぱり嘘つきじゃないか!!(歓喜)
569 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 20:19:44.91 ID:2AT1MTd9o(2/2)
火曜日は今夜だったのか!
楽しみに待ってます
570 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ] 2014/07/12(土) 20:45:30.21 ID:B5NKW4tBo(1)
!?
え、>>1どうしたの高熱でもあるの!?
571 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 20:52:34.32 ID:6NoQ/lpB0(1)
まさか連続で投下するなんて……
大丈夫か?病院行く?
572 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 20:56:33.40 ID:P6ovP14Lo(1)
お前らひどいな。
素直に待ってます
573 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 20:57:12.73 ID:EBoy8DkFO携(1)
蝋燭は消える前にってやつか…
お大事に
574 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 20:57:30.29 ID:pdt3B715o(3/3)
やったぜ。
575 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 22:18:15.67 ID:2h+5wgfj0(1)
どうゆう事だ。俺たちを騙してもナンの得にもならんぞ
576 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/12(土) 22:49:30.87 ID:vFCUIJvwo(1)
大人はそうやって僕らを誑かすんだ
577 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 00:54:15.61 ID:+xJEd9qmo(1)
そろそろかなー
578 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:14:58.41 ID:0NkGZsnF0(1/10)
本当に短いけど、火曜日だけ投下しますー。
579 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:17:55.27 ID:0NkGZsnF0(2/10)
ー 火曜 tuesday ー
都内にある某スタジオ。
カメラや機材がいくつもある、いかにもな薄暗い室内。
その中で、白いバックペーパーの前でポーズを取る一人の少女。
カメラへ向かって笑顔を振りまき、時折ポーズを変えている。
天真爛漫という言葉がピッタリな、まさにアイドルを思わせる光景だ。
そしてその少女は、俺の担当アイドル、渋谷凛ではない。
みく「こーんな感じかにゃ?」
カメラマン「いいねぇ、次は前で腕を組んで…」
同じシンデレラプロダクションの所属アイドル、前川みくである。
580 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:19:44.03 ID:0NkGZsnF0(3/10)
今日はとある雑誌の写真撮影と取材の為、こうして俺が付き添いとして出向いている。
ぶっちゃけ、あまり必要性は感じられないんだがな。
その後30分程で撮影を終え、次の取材に備えて休憩時間に入る。
こちらに戻ってくる前川を目で捉え、寄っかかっていた壁から背を離す。
八幡「ほれ、お疲れさん」
そう言って手渡すのは、先程自販機で購入しておいたペットボトルのお茶。
緑茶もあったが、何となく紅茶を選んだ。ティータイムは大事にしないとネー。
前川は少しだけ驚いた様子を見せた後、嬉しそうな笑顔でお茶を受け取る。
みく「ありがとっ、ヒッキーは気が利くにゃ♪」
八幡「……」
え、お前もその呼び方で俺を呼ぶの?
どこぞのガハマさんを思い出させるその言葉。誰かの差し金とかじゃないだろうな……
みく「ウチのPちゃんも、いつもこれくらい気が遣えればにゃあ」
八幡「Pちゃん? え、お前キムタクと知り合いなの?」
みく「誰もスマスマの話はしてないにゃ! みくのプロデューサーのことっ!」
581 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:21:29.99 ID:0NkGZsnF0(4/10)
あーなんだそっちか。
思わずアイドルってスゲーと思ってしまった。いや分かって言ったけどね。
ポンキッキーズとどっちにしようか迷ったが、まぁそこはどうでもいい話。
八幡「まぁ俺が言うのも何だが、確かに……なんだその、あー……」
みく「頭悪そう?」
八幡「いやそこまでは言わんけど……まぁ」
みく「あながち間違いでもないにゃ」
間違いでもないんですね。
しれっと言いのける前川。良かったなPちゃん、担当アイドルお墨付きだぞ。
みく「大体、Pちゃんはみくの事ちょっと面白がってる節があるにゃ!」
八幡「と、言うと?」
みく「お魚苦手なの知っててグルメロケに出演させたり、ドッキリ系のお仕事よく取って来たり、楽屋のお弁当がお魚だったり!」
つまり魚が嫌いなんだった。
いやでも楽屋のお弁当はどうしようもなくねぇ?
582 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:23:30.20 ID:0NkGZsnF0(5/10)
みく「全く、少しはみくの事も考えてほしいにゃ!」プンプン!
八幡「……その割には、楽しそうに話すのな」
みく「え?」
八幡「今日の写真撮影、好きだった雑誌の特集なんだろ? 自分の為に頑張ってくれたって、さっき嬉しそうに話してたじゃねーか」
思い出すのは、撮影が始まる前のスタッフさんとの雑談。
社交辞令も含まれていただろうが、確かにあの時話していた言葉には、前川の本音が込められいた気がする。
自分のプロデューサーに対する、信頼と感謝が。
しかし俺のその言葉に、前川は少しばかり恥ずかしそうに目を逸らした。
みく「そ、それとこれとは話が別にゃ」
拗ねたように言うその態度に、思わず苦笑が漏れる。
ま、本人がそう言うなら、そういう事にしておこう。
八幡「けど実際、俺なんかに付き添いを頼むんだから変わった奴だよ」
数日程前、奉仕部経由で前川のプロデューサーは俺に依頼してきた。
なんでも得意先の会社のお偉いさんと打ち合わせが入ってしまい、誰かに付き添いを頼みたかったとか。
583 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:25:28.71 ID:0NkGZsnF0(6/10)
探せば他にいくらでも変わりはいたと思うのだが、頼まれたからには引き受けるしかない。
そして前川だけでなく、今週一週間は毎日そんな感じ。なので、凛には出来るだけ一人でこなせるスケジュール組んだ。
伊達に場数をこなしてはいないからな。恐らく問題は無いだろう。
みく「Pちゃん、ヒッキーの事結構信用してるみたいだよ? 中々根性のある奴だ、って」
八幡「根性は無い自信があるがな。そんな事言ってくれんのは、お前と新田んとこのプロデューサーくらいだよ」
実際、俺の事務所内での評判はあまりよろしくない。
主に一般Pからのものではあるがな。なんというか、妬みやらも多分に含まれているのだろう。
奉仕部とかいう立場にかこつけて、複数のアイドルに手を出してるだとか。
他の一般Pと関わろうとせず、愛想も態度も悪いとか。
事務員を買収して、デスクや情報を貰っているとか、な。
……本当にあながち間違いでもないから困る。
そんな中で、こうして俺に依頼を出してくれる前川のプロデューサーは、珍しい部類と言えた。
だからこそ、引き受けた所もあるんだがな。
みく「……ヒッキーは、陰口とか、周りに悪く言われてても平気なの?」
見ると、何処か悲しげな、というよりは心配しているような表情の前川。
しかしその気遣いは、嬉しいが杞憂と言わざるを得ない。
584 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:27:20.54 ID:0NkGZsnF0(7/10)
八幡「俺を誰だと思ってんだよ。総武高校の“いないもの”とは俺の事だぞ? こんくらいは日常茶飯事だ」
みく「全然威張って言う事じゃないにゃ……」
というか現在進行形で本当に総武高校にいないんだから凄い。
恐らく、ウチのクラスでは何事も変わりなく授業が進んでいるのだろう。良かったね。これで殺人事件も起きないね。
八幡「そんなどうでもいい事は気にしてんな。お前は、自分ん所のプロデューサーと頑張りゃいい」
みく「……うん」
未だやり切れない様子ではあるが、何とか頷く前川。
その様子だけで、こいつが本当に優しい女の子だという事を実感する。
少しばかりおつむが弱そうな所はあるが、いつも明るく元気で。
人の事を心配して、一緒に悲しんでくれて。
優しいその人柄は、呼び方も相まって、あの少女を思い出す。
やっぱり優しい女の子は、嫌いだ。
いつも、勘違いしそうになってしまうから。
585 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:28:46.59 ID:0NkGZsnF0(8/10)
と、休憩時間が終わったのか、記者さんがこちらに呼びかけてくる。
この後は取材を兼ねたインタビューだ。
八幡「ほら、取材が始まるから行ってこい」
みく「あっ、うん!」
お茶を預かり、前川は小走りで向かっていく。
しかしそこで、彼女はふと歩みを止めた。
八幡「? どうした」
みく「ヒッキーっ!」
八幡「うおっ」ビクッ
思いがけない大きな声に、思わず体が反応する。
前川は、真っ直ぐな瞳で俺を見ていた。
みく「他の人がどう言ってても、みくもPちゃんも、ヒッキーの事ちゃんと分かってるから!」
八幡「っ!」
586 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:31:26.22 ID:0NkGZsnF0(9/10)
「そこだけ忘れないでよね!」と言い残し、彼女は笑顔でスタッフの元へと走っていった。
……まさか突然あんな事を言われるとは思っていなかったので、少しばかり唖然としてしまった。
そして、遅れて苦笑が漏れる。
あのプロデューサーあって、このアイドルあり、か。
家族でもないが、どこか似通ってしまうものなんかね。
前川といい、臨時プロデュースしてきた奴らといい。
どうしてこう、俺の予想の及ばない事をしてくれるのか。
それで嬉しいと、気持ちが軽くなっている自分がいるのだから、どうしようもない。
本当に。
優しい女の子は、苦手だ。
587 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/13(日) 01:32:43.22 ID:0NkGZsnF0(10/10)
次回は水曜! しばらくはこんな感じで進んでいきます。
588 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 01:38:03.26 ID:3cLvDobDO携(1)
乙乙
589 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 01:41:43.98 ID:QZv9koJyO携(1)
乙!優しい女の子は嫌い→苦手になってヒッキーも少しずつアイドルに変えられていく……
こんな感じということは短いのをちょこちょこやってく感じかな?
590 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 02:14:40.33 ID:AMRIW/nco(1)
こんな一週間を過ごしてたら
凛に勘ぐられそうだなw
591 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 02:24:36.95 ID:pB64bAFs0(1)
感動しました。みくにゃんのファンになります
592 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 02:54:04.71 ID:OCDgc/EKo(1)
乙乙
一週間凛に会えないけど他のアイドルと仲良くなったよ!
593 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/13(日) 03:05:11.83 ID:QiWBGwgZ0(1)
乙
水曜も期待してるよ。
594 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 03:21:19.12 ID:ovFG7y3Y0(1)
おつ
月曜→土曜
火曜→日曜
つまり水曜は……
595 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 04:15:54.50 ID:hvUDveddo(1)
他版権キャラのプロデューサーssは許せるけどこのスレは吐き気を催してんのはなんでだろうね
596 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 04:48:39.62 ID:ZSR+/j+Y0(1)
一週間でアイドルとある程度親しくなったヒッキーを見て凛は何を思うのか
楽しみだな〜
597 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 05:32:36.04 ID:W+KmjWKwo(1)
信じて送り出したプロデューサーが(略
598 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 11:32:37.53 ID:h23iFVwUo(1)
乙
<●><●>凛視点
599 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/13(日) 16:35:38.87 ID:YiTqG4oD0(1)
>>595
急な気候の変化で風邪でもひいたんじゃないの?
つベンザブロック
600 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/14(月) 01:12:01.28 ID:r3sHoTi00(1)
凛は俺が付き添ってるから大丈夫だぞお前ら
601 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/14(月) 20:19:35.08 ID:D7IRc7bC0(1)
今日もぼちぼち投下しますだ。時間はお察し。
602 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 20:20:22.63 ID:r426S3TjO携(1)
本当にどうした!?
体調悪くないか?(錯乱)
603 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 20:20:29.54 ID:tosH2zPGo(1)
>>595
お待たせ!ネギしかなかったんだけどお尻出してもらえるかな?(ゲスマイル)
604 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 21:08:02.50 ID:kwOJtI0qO携(1)
次は誰だろうか
高垣ノ下さんか
歩くセク○スさんか
アーにゃんか
1週間って土日も入るんですよね!?
605 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 22:12:51.67 ID:6d3Ap1MV0(1)
余命でも宣告されましたか?
606 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:19:47.97 ID:UzIS/L2x0(1)
お前ら酷いな
>>1はただ仕事の時間が無くなっただけだってのに
607 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:25:49.15 ID:MVlsBTMvo(1)
闇金に手出して追われてるんじゃないの?
608 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/14(月) 23:34:32.62 ID:rkptunF9o(1)
本当に体調不良でベッドの上で暇してる可能性も
609 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/14(月) 23:56:05.66 ID:cZ6fMyj70(1)
今日も更新!?寝れなくなったぞ
610 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 00:28:40.48 ID:+MhMjAL00(1)
頑張る>>1に失望しました。みくにゃんのファンやめます
611 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:36:27.91 ID:U0sZprrf0(1/15)
よっし更新するでー
612 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:41:26.94 ID:U0sZprrf0(2/15)
ー 水曜 wednesday ー
少しだけ、急ぐ。
足は自然と小走りで、そんな気も無いのに急いてしまう。
自動ドアの開くタイミングと合わず、少しだけつんのめる形になった。
ドアが開いた瞬間、あの独特の匂いが鼻につく。
正直に言えば、あまり好きではない匂い。
というより、好きな奴などそうはいないだろう。
有り体に言えばーー
消毒液の、匂いだ。
613 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:43:00.74 ID:U0sZprrf0(3/15)
その後受付で面会の許可を取り、以前の記憶を頼りに足を進める。
前に来たのは、もう三ヶ月以上も前になる。まさか、また来る事になるとはな。
途中迷いそうになりながらも、なんとか目的地付近まで辿り着く。
自分の記憶が正しい事にホッとしていると、目的の部屋の前で人影を目にする。
白衣に身を包んだ、20代前半くらいの女性。
柔和な印象を与える整った顔立ちに、きっちりと纏め上げられた奇麗な茶髪は清潔感を思わせる。
首には聴診器、手にはクリップボード。挟んである紙は、恐らくはカルテだろう。
一言で言えば、看護婦さんである。
ナースキャップが眩しい。
その看護婦さんは丁度部屋から出て来た所らしく、すぐに俺に気付いた。
俺の顔を見ると、ニコッと笑顔を作る。
「お見舞いですか?」
八幡「ええ、まぁ」
しかし本当に美人だな……
こんなに奇麗な看護婦さんに看病して貰えるなら、入院生活も案外悪くないかもしれん。
きっとさぞ優しくお世話してくれるんだろうな。
「たった今定期検診が終わったので、もう面会しても大丈夫ですよ」
八幡「ありがとうございます」
614 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:44:57.03 ID:U0sZprrf0(4/15)
無難にも程がある返事を俺がすると、看護婦さんはまた少しだけ笑みを見せる。
「以前にもいらっしゃってましたよね。彼氏さんですか?」
少しばかり、からかう様な言い方。
なんとも悲しくなる事を訊いてくれるものだ。分かって言ってる?
つーか、まさか俺の事を覚えてるとはな。そっちの方が驚きだ。
八幡「そんなんじゃないですよ。あいつとは仕事の…」
と、そこまで言って言葉が止まる。
なんとなく、こんな事を言ったら怒られそうな気がしたから。
誰に、とは言わない。
八幡「……いえ。友達の、お見舞いです」
そう言って、言ってから恥ずかしくなる。
世間ではこんなこと平気で言えるのかもしれないが、俺には大分ハードルが高い。
顔があっついなクソ。
「そうですか」
そして看護婦さんはまた微笑み、満足そうに頷いた。
615 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:46:50.86 ID:U0sZprrf0(5/15)
八幡「今度、社長に紹介でもしておくか」
そう呟いてから、今日の目的がそんな事ではないのを思い出す。
念のため、部屋の前に貼ってある名前を確認。ここで間違えたりしたら笑えないからな。
そしてゆっくりとノックをし、返事を待つ。
これも、前回の反省をちゃんと踏まえてだ。というか、あれは完全に奈緒のせいだ。俺は悪くない。
やがて中から声がし、俺は無事に入室の許可を得る。
扉を開くと、そこには見知った顔の少女がベッドに掛けていた。
加蓮「やっはろー。八幡さん」
八幡「……その分じゃ、大事は無さそうだな」
熱のせいかは分からないが。
少しだけ紅潮した加蓮が、そこにいた。
髪を降ろし、またいつぞやと同じパジャマのような病院服を来ている。
ホント、大した事無くて良かったよ。
電話でまた入院したって聞いた時は、正直心臓が止まるかと思ったぞ。
本人は軽い風邪だから心配無いと言っていたが、そんなもの信用ならないからな。放っておくわけにもいくまい。
午前の仕事を出来るだけ早く片付け、お昼に時間を作ってこうして出向いてきた。
午後も仕事があるので、あまり長くはいられないが……まぁ、顔を見れただけ良しとするか。
616 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:49:14.71 ID:U0sZprrf0(6/15)
すまぬ。 >>614と>>615の間。
「では、ごゆっくり」
そう言い残し、彼女は去っていった。
なんというか、不思議な雰囲気の人だったな。
咄嗟に名札を見たが、柳……せいら? さんで良いのだろうか。
あの人なら、アイドルとしてもやってけそうな気がするな。
617 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:52:21.87 ID:U0sZprrf0(7/15)
加蓮「八幡さん、ホントに来てくれたんだ…忙しいんだから、無理しなくてよかったのに」
八幡「無理なんてしてねーよ。むしろ仕事をサボれてラッキーまである。それよか、本当に平気なのか?」
加蓮「えっ?」
八幡「いや、実は余命宣告されたとか…」
冗談めかして言ったが、ちょっとおっかなびっくり聞いてみる。
加蓮「もう、ただの風邪だってば」
八幡「ホントに?」
加蓮「ホントだよ」
可笑しそうに笑う加蓮。
そうか、ただの風邪か。いやー良かった……なんかお前が体調崩したって聞いただけでヒヤヒヤもんだわ。ぶっちゃけこっちの心臓に悪い。
八幡「ほら、テキトーに差し入れ持ってきてやったから、これ食って大人しくしてろ」
そう言って、持って来ていたビニール袋を手渡し、ベッド横の椅子に座る。
中にはコンビニで買ったプリンとかゼリーとか、飲み物とかも入っている。風邪引いた時って、なんか無性にこういうの食いたくなるよな。
それを見て、加蓮を目を丸くする。
その後苦笑しつつ、照れたように言う。
加蓮「もう、こんなに買ってきちゃって…食べ切れないよ」
その割には嬉しそうにしてるのだから、なんともむず痒い。
まぁ、いらないと突き返されなくて安心したよ。
618 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:55:55.30 ID:U0sZprrf0(8/15)
八幡「よく食わないと大きくなれないらしいぞ。身長180センチ強の女子にこの間言われた」
加蓮「誰が言ったか直ぐに分かる上に、凄い説得力だね……」
しかしプロフィールを見れば分かるが、あいつ身長の割に体重軽過ぎなんだよな。
むしろかなり痩せてる方。少し心配になる八幡なのでした(小並感)。
八幡「具合はもう良いのか?」
加蓮「うん。熱も大分下がったからね。明日には退院出来るってさ」
電話で聞いた限りじゃ、元々入院する程の事でもなかったらしい。が、前科が前科な為、今回は念のためお休みを取る事にしたそうだ。
病弱キャラってのも考えもんだな。いやキャラってわけでもないが。
加蓮「最近レッスン増やしてたから、ちょっと疲れが溜まってたのかな」
八幡「……やっぱ、アニバーサリーライブの為か?」
約二ヶ月後に控えている、シンデレラプロダクション主催のアニバーサリーライブ。
その推薦枠に入るため、ここ最近のアイドルたちの間には、何かと緊張が走っている。
それも当然。上位枠のメンバーは既に発表されているが、推薦枠はまだだ。
近々発表予定だが、それまでに出来るだけ成果を上げておきたいという気持ちがあるのだろう。
加蓮「うん。でも、それで身体壊してたら意味無いよね……アハハ」
619 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:57:26.39 ID:U0sZprrf0(9/15)
そう言って加蓮は、少しだけ顔を伏せる。
笑みを浮かべてはいるが、その表情は心なしか暗い。
その乾いた笑いは、自分の不甲斐なさを笑っているように思えた。
加蓮「多分、今回ので大分評価落ちたよね。体調が戻っても、選ばれるのは無理かぁ」
八幡「……」
加蓮「あーあ……ライブ、出たかったなぁ……」
天井を仰ぎ、加蓮のその言葉は、虚しく響くばかり。
だから、俺はそんな加蓮にーー
八幡「ほれ」
加蓮「わぷっ」
一枚の書類を、顔に突きつけてやった。
加蓮「もう。なに、する…の……?」
その紙を見て、加蓮の表情が変わっていく。
書類には、こう書いてある。
620 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 00:59:17.29 ID:U0sZprrf0(10/15)
『“シンデレラプロダクション アニバーサリーライブ”の参加メンバーの一人に、“北条加蓮”を推薦する事をここに明記する』
加蓮「こ、これって……!」
八幡「おめでとさん。お前はちゃんと選ばれたよ」
瞬間、何かが俺に向かって突撃してくる。否、それは分かり切っている。
加蓮が、俺に抱きついて来たのだ。
加蓮「やった! やったよ八幡さんっ! 私、ライブに出れるって!!」
八幡「知ってるよ! つーか、は、離れろ……!」
あまりに突然だった為、椅子から転げ落ちそうになるが、なんとか踏みとどまる。
興奮し切っている加蓮を押しのけ、ベッドに戻す。
…………。
……ふー。さすがはトライアド・プリムス1のむn…………いや、なんでもない。
八幡「落ち着け。熱ぶり返したりしたらどうすんだ」
加蓮「ごめんごめん。でも、すっごく嬉しくって!」
加蓮のその表情は、見ているこっちまで元気が出てきそうな、そんな笑顔だった。
それを見れただけで、教えた甲斐があったよ。
621 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 01:00:54.96 ID:U0sZprrf0(11/15)
八幡「ホントはまだ発表じゃないからな。あんまし周りには言うなよ」
加蓮「それって……入院してる私に教えに来てくれたって事?」
八幡「……うっ」
いや、別にそういうわけじゃないよ?
ただこのタイミングで体調崩して、落ち込んでるだろうなーとかは思ってたけども。
お見舞いにはどっちみち来ようとは思ってたし? べ、別に、お前を喜ばせようと思ったわけじゃないんだからね!
と、懇切丁寧に説明したが、加蓮は嫌な笑みを浮かべるだけだった。
なんだその皆まで言うな的なしたり顔は。
加蓮「……ありがとね、八幡さん」
そして真顔になったかと思えば、微笑んでこんな事を言ってくる。
ホント、俺じゃなきゃ騙されてるぞ。
八幡「別に、お礼を言われるような事はしてねーよ。頑張ったのはお前だ」
だから俺は、いつも通りこう言ってやる。
純粋に、そう思っているからな。
……本当に、皆よく頑張った。
622 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 01:03:03.34 ID:U0sZprrf0(12/15)
その後いくつか会話を交わし、その場を後にする事にする。
しかしその別れ際、加蓮はこんな事を言ってきた。
加蓮「……八幡さん。お願いがあるんだ」
その表情は、真剣でいて、どこか悲しげだった。
八幡「どうしたよ。そんな改まって」
加蓮「……凛を、よろしくね」
八幡「? なんだよ急に」
凛をよろしく……とは、また急だな。
そもそも、担当アイドルなんだから世話を焼くのは当然と言える。
しかし、加蓮が言いたいのはそういう事ではないようで。
加蓮「最近、あまり凛と会ってないでしょ?」
八幡「まぁ、な」
というか今週一週間会えないのだが、それを言ったら更に何か言われそうなので黙っておく。
623 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 01:05:24.61 ID:U0sZprrf0(13/15)
加蓮「凛は……あの子は、あまり我が侭とか言わないからさ。仕方ないとか、仕事だからとかって、自分の気持ちを押さえ込むとこあると思うんだ」
八幡「……」
加蓮「まぁ、これは八幡さんにも言える事なんだけどね」
「似た者同士だよね」と言って笑う加蓮。
いや、別に今はそこはいいだろ。なんかハズイ。
加蓮「……だからさ、凛のこと、大事にしてあげてね」
八幡「…………善処する」
なんと答えたものかと考えた挙げ句、何ともぶっきらぼうな言い回しになってしまった。
しかし、加蓮はそれで満足したらしく、笑っていた。
……これも加蓮たってのお願いだ。
ここは素直に、受け取っておくとしよう。
624 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 01:07:07.55 ID:U0sZprrf0(14/15)
加蓮「それじゃあ八幡さん。今日はありがとね」
八幡「いいって。……そうだ加蓮」
加蓮「ん?」
扉を閉める直前、このまま言われっぱなしも癪なので、お返しとばかりに俺も言ってやる事にする。
八幡「一応アイドルなんだから、むやみやたらに男に抱きつくのはやめとけよ」
加蓮「っ!」カァァ
瞬間、紅潮する加蓮。
俺は満足し、扉を閉めて病室を後にするのであった。
去った後の部屋からは、「もーう!」という声が響いたそうな。
625 ◆iX3BLKpVR6 [saga] 2014/07/15(火) 01:08:23.89 ID:U0sZprrf0(15/15)
お次は木曜!
皆さんの優しさが染み渡ります。しまいにゃ泣くぞ!
626 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 01:11:17.12 ID:taMhn5vHo(1)
乙
泣いてもいいけど更新よろ
627 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 01:47:02.85 ID:7Prn8tEs0(1)
乙
おう泣けそしてそれを糧にしてくれ
628 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/15(火) 02:03:56.38 ID:+ZHo64Lc0(1)
ギリギリ更新に間に合わなかったorz
629 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 02:28:22.62 ID:BwQjb99Ho(1)
乙乙
次の更新も近かったり
630 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 07:28:17.10 ID:I+y2TR26O携(1)
乙!
どうしてこんなに加蓮はかわいいんだ!次回の更新まで全裸待機して待ってます。
631 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 10:07:52.11 ID:fIVcF+7To(1)
乙!
おい>>630、ネクタイ忘れてるぞ
632 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 17:51:24.22 ID:nqGoMv9SO携(1)
靴下くらいはけよ
633 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 20:34:23.74 ID:8YtckZ/6O携(1)
最初の頃の更新ペースはコレぐらいだったような
これが>>1の本来の力ということか
634 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/15(火) 23:32:58.22 ID:Ygg2vnVU0(1)
清良さんは所見では読めないよな俺も最初せいらさんだと思ってた
華蓮が可愛かったです(小町並感)
635 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/16(水) 06:15:54.58 ID:2D/4DlE40(1)
今の>>1はポイント高い(小町並感)
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