[過去ログ] 鳴護アリサ「アルテミスに矢を放て」 〜胎魔のオラトリオ〜 (917レス)
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718 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:02:49.43 ID:YmW4vmbL0(5/33)
――正面エントランス

上条(フロリスの手を握ったまま、全力で音のした方向へ走ってきた!……つもり、ではある)

上条「……」

上条(探偵モンだとここは最速で駆けつけるんだろうが、あっちはフィクションの話)

上条(ちょっとした多目的ホールばりの広さで、悲鳴の出所は大体検討をつける異常は無理ゲーだって!)

上条(……せめて携帯がありゃ音波感知ができ――)

上条「……」

上条(……普段からアプリ着けっぱなしにするとね、バッテリーがね、うん?)

ランシス「……手、痛いかも……」

上条「ん?あぁごめん、強く引っ張っちまったか」

上条「……いやでもお前、俺の全速力フツーに着いてきたような……?」

ランシス「……移動効率が悪い……別の移動方法を提案する……」

上条「移動?」

ランシス「西側――私達が来た側じゃなく、そっちの東側の通路のドアは全部閉まってる……」

ランシス「あれだけ『通った』声だから、きっと遮蔽物の無い所……ドアは閉められてない」

上条「上か!」

ランシス「いやだから引っ張――」

http://tanakadwarf.web.fc2.com/images/2014/map02.jpg
719 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:05:26.97 ID:YmW4vmbL0(6/33)
――二階

上条(階段を上ってきたのは良いけれど、正面から左右、見渡す限りドア・ドア・ドア――)

上条「……こん中から探すのはちっと難しくねぇか……?」

ランシス「……でも、ない」

ランシス「一号室(仮)まで聞こえて、しかも 『籠もってない』声だから――」

上条「……近くにあって、尚且つ開いてる部屋――あそこか!」



――??の部屋

上条「どうしたっ!?何があっ――」

ランシス「……?」

上条(部屋に入った俺達は言葉を失った。『絶句する』なんて単語が頭に浮かんだのは、相当混乱してるって事なんだろう)

上条(多分ここは――主の部屋だ)

上条(整った調度品の数々、趣味の良い――か、どうかは分からない――ベルベットのカーテンの窓の外では、未だに雷雨が届いていたが)

上条(ベッドの側に倒れている人影は二人……あぁいや、一人と一つって言った方が正しいのだろうか?)

上条(……片方は、さっきのメイドさん)

上条(日本の大通りで客引きしているようなヤツじゃなくって、きちんとした長いスカートとエプロンドレス?の、まぁプロって感じ)

上条(バッキンガム宮殿で、護衛やってたメイドさんと似たような雰囲気ではある)

上条「……」

上条(……問題なのはもう一つ……少し前まで『一人』と数えるべきだったんだろうが)

上条(室内でもロングコート姿で襟を立て、分厚い鉄仮面で頭を覆った変質者――)

上条(――『殺し屋人形団(チャイルズプレイ)』のボスである『団長』が――)

上条(――何故床に突っ伏した姿勢のまま、身じろぎもしないんだ……ッ!?)

上条「……おい、立てる……か?」

メイド「――え、あ―」

上条(……こっちの、『これ』はおかしい。生きているのであれば少しは呼吸なり鼓動なり、反応を見せる筈だろ……!)

ランシス「……どいて……えっと」

上条「――大丈夫だ」

上条(『団長』が急に襲い掛かってこられても対処出来るよう、俺は右手を軽く握ってメイドさんを背へ庇う――ん、だが)

上条(杞憂だった、ってのが結論。それが何故か?)

ランシス「……これ」 ズリッ

メイド「――ひっ!?」

上条(ランシスが襟首を掴んで立たせようとする、その瞬間ズルリとコートだけが捲れた)

上条(何故か『団長』は上着を脱いでおり、頸の後ろから背中が見え、そこには――)

上条「――何も、無い……?」

上条(ポッカリと空いた空洞は、今にも朽ちそうな古木のウロ――英語じゃ『hollow』を彷彿とさせる)

上条(本来そこへ収まって無くてはならない脊椎・肉・脂がごっそり抜け落ち、抉り取られた不思議な何か)

上条(血の一滴も飛び散らさず、現実感に乏しい肉の断面を今も晒し続けているのを見て)

上条(……あぁもうコイツは息絶えるんだな、とようやく俺は理解してしまった)

http://tanakadwarf.web.fc2.com/images/2014/map03.jpg
720 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:09:00.01 ID:YmW4vmbL0(7/33)
――1階 食堂

メイド「……お茶を、どうぞ」

上条「その、無理しなくてもいいんだぞ?」

メイド「あ、いえ、はい。働いていた方が、その」

上条「まぁ、好きなようにしてくれ。気持ちは分かるから」

メイド「……ありがとうございます」

上条(呆然とするメイドさんを正気付かせた後、俺達は一階の食堂へと戻ってきた)

上条(場所的には一階東側の大きな部屋。つってもこっちは使用人達が集まる部屋であって、内装は質素極まりなかったが)

上条(併設してあるキッチンで何か飲み物でも入れよう――とは、思ったんだけど、茶葉の場所も知らない俺じゃ役に立てず)

上条(……結局はメイドさんに入れて貰っちまった訳で……まぁ、美味しいアッサム?だったけど)

上条(ちなみに『団長』の遺体にはシーツを掛け、部屋には鍵をかけて来た。『現場保存』は常識の範疇ではある)

上条「……ま、この世界じゃどこまでマトモか分かんねぇんだけどな」

ランシス「……それは言ったらダメ、結局、手持ちのカードで勝負するしかない……」

上条「深いっすねー。ランシスさん」

ランシス「ってスヌーピーに書いてあった……!」

上条「深ぇなスヌーピー!?それとも俺の知ってる犬とは別種かっ!?」

メイド「あのぅ……私はどうすれば……?」

上条「ん、あぁごめんごめん。ちょっと聞きたい事があるんだ。つーか」

ランシス「(多分この事件を”解決”する事が……鍵、だと)」

上条「(りょーかい。まぁやってみようぜ)」

上条「えっと、そいじゃまずメイドさん、なんであの部屋へ行っ――」

ランシス「――犯人は、お前だ……っ!」

上条「手順すっ飛ばすなよ!?てかせめて話を聞こうぜ!?」

ランシス「……いや、なんかもう……容疑者総当たりで行けばいっかな、って……」

上条「探偵もの全否定っ!?」

ラシンス チョイチョイ

上条「ん、なに?」

ランシス「(刑事の取り調べは二人でする……片方が威圧的になって、もう一方が庇うように)」

ランシス「(……そうすれば容疑者は庇う側を『助けてくれる人』と勘違いして……おけ?)」

上条「(……なんか要らん知識が増えるなぁ……まぁ、おけ)」

メイド「……私が?団長を殺した犯人、ですか……?」

上条「そこは『団長』なんだ?別に偽名でも良くね?」

ランシス「ん……あの部屋は開いてた?閉ってた?」

ランシス「……そもそも用事はなに……?」

メイド「はい、お客様方がいらしたのでご報告に伺かうとしたら、鍵が閉っておりましたので」

ラシンス「……不自然、はいギルティ……」

メイド「待って下さい!何度声をかけても返事がなかったので!」

ランシス「主人の部屋に勝手に入るの……?」

メイド「まだ時間も早いので伏せっておられるのかと、それでとっさに!」

上条「鍵はどこから?普段から持ってんのか?」

メイド「マスターキーは、はい、こちらに」 ジャラッ
721 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:10:00.69 ID:YmW4vmbL0(8/33)
上条(重そうな鍵束。鍵の数は一、二、三……20は無いな)

メイド「いつもは家令が管理しているのですが、今日は外出しておりまして。私が代わりに任されております」

上条「家令?」

ランシス「……すっごい執事……」

上条「せめて執事長ぐらいは言えよ」

ランシス「……肌身離さず持ってる……訳、ないよね。邪魔だもんね」

メイド「はい、私の部屋に置いてありました……あ、でも部屋に鍵はかけていません」

ランシス「……犯人はお前だ……!」

上条「だから早いっつーの」

メイド「……私が鍵を開け、部屋へ入ったら……あんなっ!」

上条「あー、その後に俺らが来た、か……矛盾はないよなぁ」

上条「あ、それじゃさ。ほら、俺達の他に容疑者、ってか泊まってる人は居ないのか?」

メイド「はい、団長のご友人様方がお二人ほど……ですが」

メイド「元々の予定ではもうお一人いらっしゃる筈でしたが、雨で電車が遅れたと伺っております」

ランシス「……おおぅ、ミステリものではお約束……!」

上条「お約束言うな……うーん、って事はそいつらも犯行は出来た――」

ランシス「――とは、限らない。やっぱりあなたが犯人……」

メイド「そんなっ!?わたしが団長を殺したって言うんですかっ!?」

上条「どうやって?あの傷口を女の人一人で作ったのか?」

ランシス「……でも、この状況で真っ先に疑われるべきは、この人……違う?」

上条「そりゃ……そうだな。『団長』殺した後に叫べば出来ない事じゃないが」

メイド「じゃあなたは『私が団長を殺した』と?そういう結論で良いんですね?」

ランシス「……うんまぁ、総当たりで言ってけば、いつか当たる」

上条「意外にクロいな!意外でもねぇと最近分かってきたが!」

メイド「……」

ランシス「……どう?ハズレ……?」
722 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:13:05.26 ID:YmW4vmbL0(9/33)
メイド「……ンーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!残っ念!」

上条「メ、メイドさん?」

メイド「残念ながら『私は団長を殺していない』んですよぉ、いやぁ残念でしたっ!」

上条「お前キャラ変わりす――」

メイド「――で、正解出来なかったランシス様には罰ゲームっ!」

ズプッ

ランシス「……か、え?」

上条(その瞬間、俺は見た)

上条(いつの間にかランシスの側まで回っていたメイドさんが、何の躊躇もなくその右手を開き――)

上条(――ランシスの脇腹を躊躇無く抜き手を突き刺した所を!)

上条「テメェえぇっ!」

メイド「おかけになって下さいお客様。ただ今ランシス様の心霊手術の真っ最中で御座いまして」

メイド「手元が狂うと大切な臓器を傷つけてしまうかも知れません――こんな風に」

ランシス「あ……くっ!?」

上条「……お前……!」

メイド「『Sit down, Please?(座るんだ、ボウヤ?)』」

上条「……」

メイド「そうそう。良い反応ですね。私大好物で御座いますっと」

ヌニュウゥッ

上条(そう言ってメイドは手を引き抜き、距離を取る。その手には何か!)

上条(子供の拳ほどの大きさ、赤黒い肉界が載っている……?)

上条「……罰ゲーム?どういう事だ……ッ!?」

メイド「だってお客様全員へ『犯人はお前だ!』、なんてされると困ってしまいますもの」

メイド「チート防止のためにペナルティを課すのは当然でしょ?ね?」

上条「おま――」

ランシス「『……Loki who is the god of the clown.. laug――』」
(……道化の神であるロキよ、嗤――)

上条(霊装を発動させるのか!?)
723 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:15:40.72 ID:YmW4vmbL0(10/33)
メイド「おっとタイムです。ちょっとお待ち下さい、ランシス様?」

メイド「確かにその、ロキ神の術式で私を倒すのは簡単でしょう。抵抗致しますが」

メイド「けれどその、こちらの手の中にはあなた様の『腎臓』が、文字通り握られてる訳でしてね」

上条「ハッタリだ!ここは夢の中――」

メイド「『夢の中で死ねば現実でも死ぬ』――同様に」

ランシス「……夢の中で怪我を負えば、現実の体もシンクロする……?」

メイド「嘘だとお思いでしたどうぞお試し下さいませ。私達『殺し屋人形団』の術式が、その程度だとお考えなら」

メイド「即死はしないでしょうが即入院。尚且つ『そこ』から足が着くのは避けられないでしょうが……さて?」

ランシス「……ルール、教えて……?」

上条「ランシス!」

ランシス「……乗る、しかない……!わざわざ臓器を潰してない、って事は、元へ戻せる……!」

メイド「仰る通りで御座います。では今からルール説明を致しますので、おかけになって暫しお待ち下さい」

上条「待て!どこ行く気だよ!?」

メイド「お紅茶が冷めてしまいましたので、入れ直そうかと。あ、上条様リクエストなど御座いますか?」

上条「あんたが煎れたもんでなきゃ、なんだっていい」

メイド「畏まりました。では失礼致します」
724 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:17:43.10 ID:YmW4vmbL0(11/33)
――食堂

ランシス「……っく!」

上条「大丈夫かっ……?」

ランシス「……ん、少しだけ痛い、から……」

上条「とても平気そうには見えねぇぞ……ほら、我慢すんなよ」

ランシス「胸が……ちょっと苦しく……んっ!」

上条「胸?胸が苦しいのか?……あれ、腎臓って確か腰の裏辺りじゃ……?」

ランシス「……さすって貰えれば、うん」

上条「そう、だったら――」

メイド「――すいません。私の『心霊手術(Bare-handed anatomy)』は、体外へ取り出しても、意図的に切断しないと入ったまま扱いでして」

メイド「あ、これアルフレドの時空間魔術の応用なんですけどね」

上条「どういう意味だっ!?」

メイド「ランシス様、痛いとか仰ってますけど全然痛くない筈ですよ?物理的には繋がったままですから」

ランシス「……ちっ」

上条「ランシスさんー?どういう事?ねぇ?」

メイド「本当に腎臓抜いた場合に起きる症状は、濾過機能低下により余剰な体液放出をする事での心不全、高カリウム血症と頻尿なので」

メイド「乳腺が痛いとか、おっぱいをさすさすしてほしい、みたいなのは典型的な美人局ですのでくれぐれもご注意下さい」

ランシス「……おのれ『殺し屋人形団』!……なんて恐ろしい敵……!」

上条「お前だな?この期に及んで余計な仕事増やそうとしたのはお前だよな?」

メイド「第一先ほどからお手を繋がれてて、とても仲の良いカップルとしかお見受け出来ませんけれど」

ランシス「……あ、意外に悪い人じゃない……?」

上条「……あれ?ここってそんな穏やかに話して良い場面か?」

ランシス「……殺すつもりなら最初からしてる、筈……それをしなかったのは、出来なかった、だけ……」

ランシス「……多分、『結果的に殺す』しか出来ないんだと思う……間違ってる?」

メイド「ご慧眼です――では、改めまして上条当麻様、ランシス様」

メイド「本日は当館、『悪夢館(Nightmare residence)』へようそこおいで下さいました」

メイド「我ら『殺し屋人形団』一同、心より歓迎申し上げます」

上条「そりゃどーも。それで?このまま無事に帰してくれはしないんだよな?」

メイド「凡愚の身ながら折角趣向を凝らしました故、どうぞ心ゆくまでお楽しみ下さいますよう」

ランシス「言ったってムダ。多分、人形かNPC……」

上条「ノン……なに?」

ランシス「ノンプレイヤーキャラクター……中の人が居ないタイプのアバター……もしくは疑似人格……?」

上条「今みたいな受け答えしてんのにか?」

ランシス「んー……裏で操ってる人が居て、その人が動かしてるだけだから……ま、半自動……」
725 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:19:36.54 ID:YmW4vmbL0(12/33)
メイド「それでは『悪夢館』に置けるルールを説明させて頂きます。まず皆様の勝利条件は『真相の解明』で御座います」

ランシス「……真相?犯人じゃなく……?」

メイド「何度答えを間違われても構いませんが、間違う度にペナルティとして回答された方の臓器をお預かり頂く事となっています」

上条「臓器って……どんなグロいアトラクションでもねぇよ!」

メイド「ご心配なく。肉体から離れましても繋がっております。そういう『設定』の夢ですので、生活に支障は御座いません――が」

メイド「『夢で死ぬと現実でも死ぬ』の通り、そのまま夢が終わってしまえば保証は致しかねます。予めご了承下さい」

ランシス「……で、景品とかは貰える……?」

メイド「何かお望みのものでもあればご用意致します。勿論、現実で」

ランシス「……じゃ、『あなたの本体の場所』……」

メイド「畏まりました。上条様は如何致しましょう?」

上条「俺は保留で」

メイド「ではそのように」

ランシス「時間制限とか、そういうのは……?」

メイド「特に設定は御座いません。現実の体の方は眠っている状態で御座います」

メイド「ただし移動に関しては『他のお客様が居る部屋には同意が必要』であり」

メイド「また現在鍵のかかっている私室に関しても、『第三者の立ち会いが必須』」とさせて頂きます

上条「ゲスト?あぁ他にも二人居るっつったっけか」

ランシス「……私室?」

メイド「物置や書庫、資産を補完してある部屋だと思って下さい」

ランシス「重要なものが隠されている、とか……?」

メイド「常識的に言ってお二人が探偵役とは言えゲストはゲスト、もしかしたら加害者である可能性もあると言う事で御座います」

上条「……まぁな。ミステリもので探偵や相方が犯人だって事は結構あるしな」

ランシス「第三者、って事はあなたじゃなくても……?」

メイド「ゲストの方が同意されるのであれば、鍵はお貸ししましょう」

上条「勿論室外は」

メイド「下手すると『混線』する可能性があるため、GM側としてはあまり行かれない方が宜しいかと存じます」

ランシス「……BAN!……されるとどう、なるの?」

メイド「意識が無意識の海に溶けて消えるでしょうね」

上条「怖っ!?」
726 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:21:07.43 ID:YmW4vmbL0(13/33)
メイド「では今後の方針をお聞かせ願えませんか?ゲストを呼んでくるのでしたら、そのように致しますが」

ランシス「……質問。妨害とか、するの?」

メイド「証拠隠滅という意味では致しません。ただし私は日常業務――お二方やゲストのお世話、館の維持管理をしなくてはいけませんので」

上条「その仮定で『偶然片付ける』事はあると?」

メイド「はい。ですが、事件のあった部屋、また関係のありそうな場所は『警察が来るまで手を触れられない』のは当然でしょうね」

上条「ぶっちゃけ教えて欲しいんだけど、警察、来るの?」

メイド「……この雨と雷ですしねぇ。線路も崩れたとラジオでやっておりましたので、早くて2、3日はかかるのではないでしょうか?」

メイド「到着が遅れているお客様も、もしかしたら一緒においで下さるかも知れませんね」

上条「どうだ?」

ラシンス「んーむ……?ミステリの定番としては怪しい警部が到着、場を引っかき回す……」

ランシス「探偵が問い詰めると……実は遅れていた客の成り済ましだった、かな?」

上条「あー、あるある。どっかの天さ――天才とかな」

ランシス「……物語が行き詰まって新キャラ投入するラノベ……!」

上条「ラノベじゃねーぞ!確かに昔の探偵小説は今読むとアレっぽいのいっぱいあっけどさ!」

メイド「では如何なさいます?」

ランシス「……あなたは私達について来る……?」

メイド「ご希望であれば。無ければ通常業務へ戻りたいかと」

上条「今までの話に嘘は?」

メイド「『クレタ人は嘘を吐かないとクレタ人は言った』で、御座いましょうか」

上条「嘘吐きが嘘を言ってないとは言わないし、この先もどうかは分からない?」

メイド「信頼とは美徳であると存じます」

上条「大規模な術式に巻き込んだ奴の台詞じゃねぇな」

ランシス「んー……じゃ、取り敢えず他のゲストに会いたい……」

メイド「畏まりました。では暫くお待ち下さい」
727 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:23:30.38 ID:YmW4vmbL0(14/33)
――1階 食堂

アルフレド=W「あ、どーも」

上条「テメェかよ!?もっと他に人居なかったんかっ!?」

アル(アルフレド=W)「オイオイ他人様の顔見た瞬間にご挨拶じゃねぇか、あ?」

アル「挨拶って大事じゃないんですかねっ!おはようからおやすみまで重要なコミュニケーションだと思うんですけどおぉっ!?」

上条「少なくとも敵対してる相手に使うような挨拶は――言ってやれ」

ランシス「……『Shit Happens(災難だと思うんだぜ)』……」

上条「で、充分だコノヤロー」

アル「ウルセぇな、俺だって来たくて来た訳じゃねぇんだっつーの。何か今、みんな忙しくってヒマ持て余してたらな、『団長』が」

アル「『あ、ヒマならちょっと手伝って貰えませんかこのクソヤロー?』って」

上条「意外と喋るんだな。あの顔で」

アル「だよなぁ?意外と喋るんだよ、あの顔で」

アル「こないだなんかな、えっと24時間テレビで小児癌の子供が亡くなったってのをやっててだ」

上条「……おい、危ねー話じゃねぇだろな?」

アル「男の子が頑張って生きたのは良いよ?その子のママが看護婦になったってのも美談だわな」

アル「でもな、その子の写真をバックにして、一体何やるかと思ったら『全然関係ないババアが蕩々と歌う』んだぜ?スタジオで?」

アル「いやいや違うよね?そうじゃないよな?男の子生前ポケモンが大好きらしく、病室には一面ポケモンだらけなんだよ」

アル「だったらポケモンの曲流すのが男の子喜ぶんじゃねぇの?雰囲気ぶち壊しかも知んねーけどさ」

アル「少なくともその子が聞いた事もないような歌歌われてもなぁ、みたいな」

アル「で、そん時『関係ねぇよ、なんで来たババア?』って『団長』が隣で突っ込んだわ」

上条「関係ねぇな!話の本筋に全く必要ねぇ話ダラダラ語りやがって!」

上条「しかもいい歳したおっさんが一緒にチャリティ番組見んなよ!魔術結社のボスじゃねえの!?」

アル「とんでもねぇあたしゃボスだよ」

上条「帰れっ!お前からまともな話が聞ける訳がねぇっ!」

ラシンス「……タイム、仲が良いのは分かったから、イチャイチャしない……」

上条「した憶えはねぇし!テメェも『いやぁそれほどでも』とか恥ずかしがんじゃねぇ!」

アル「ちなみにもう一人の客もクリストフだから、俺と一緒で何も知らん!」

上条「バカじゃねぇの?なんでお前ら狂ってるの?死ぬの?」

上条「ユーロトレインん時も思ったけど、杜撰すぎるわ!あそこで事故ってたらお前も死ぬし!」

アル「……死ねればいいんだけどなぁ、マジで」

上条「何?」
728 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:26:48.04 ID:YmW4vmbL0(15/33)
ランシス「……それじゃ尋問するけど……いい?」

アル「どうぞー?つっても何も知らねぇぞ、いや本当で」

アル「『この部屋で待機して下さい』って奴に言われて、そんだけだし」

アル「途中、お前らの声が聞こえて、『あ、うわ面倒臭せー』とか思ってたぐらいか」

上条「メイドさんの悲鳴は聞こえた?」

アル「あー、なんかしたなぁ」

ランシス「……駆けつけなかったの?」

アル「なんで?」

上条「……お前適当過ぎるだろ……!?もうちょっとロールプレイしろや!」

アル「いやいやいやいやっ!俺悪くねぇって!だって突然すぎるわ!」

アル「寝た瞬間ここだぜ?事前に詳しい説明も無し、事後のフォローも無しで手伝えってそれどんなブラック企業だっつーの」

上条「ウルセぇよブラックロッジ(黒魔術結社)。お前らより黒い所はウチの学園ぐらいだよ」

ランシス「クリストフは……動いた、みたいだった?」

アル「いや……ドアの開け閉めの音はお前らしか聞かなかった、筈だな」

上条「ちなみに何してたんだ?」

アル「やる事ねーし、ラジオぐらいしか電気機器もねぇから不貞寝だ」

上条「……夢の中で寝れんのかよ?」

アル「俺は出来たけどなー」

ランシス「……あなたの術式で犯行は可能……?」

アル「待て待て、ちょい待てよマニア向け体型」

ランシス「『Loki who is the god of the clown.. laugh!』」
(道化の神であるロキよ、嗤え!)

ランシス「『The shout of the giant who shakes the earth crowds――』」
(大地を揺るがす巨人の咆吼を――)

上条「ホントに待ちやがれ!?霊装発動させてんじゃねぇよ!」

アル「ロキ?……ナグルファルか。また嫌らしい霊装隠し持ってんなぁ」

アル「まぁ俺の話を聞けってば。つか気になってたんだけども、『犯行』とかってナニ?何か事件でも起きたん?」

上条「マジで言ってのかよ、それ」

アル「時系列思い出してみろよ。登場人物がお前らと野郎、あと俺らだけだったら誰が教えてくれるんだっつーの」

ランシス「……『団長』が殺された……」

アル「――はい?マジすか?いやあの、マジで?」

上条「疑うんだったら見に行くか?もう一回現場調べる必要もあるだろうし、来いよ」

ランシス「第三者……だし、いっか」
729 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:27:44.99 ID:YmW4vmbL0(16/33)
――2階 団長の私室

上条(鍵を開けて俺達は入る――が、屍体はそのまま、なくなってたりもしない)

アル「……うっひゃー……なんつーか、マジか?つーかこれ死んでんの?」

上条「触るな触るな……グロいぜ」

アル「……なんだこりゃ、だなぁコイツぁ」

ランシス「死因はなんだと思う……?」

アル「あー……頸椎?首と胴体の付け根からゴッソリ持って行かれんな」

アル「断面図も人体標本のようにクッキリと綺麗なお仕事だ」

上条「人間業じゃねぇが……あ、お前には出来るか?」

アル「出来ない事ぁ無い。無いんだが……今、この状態じゃ無理ぽ」

上条「魔術師なんだろ?」

アル「……あんな、カミやん俺らの流儀に散々付き合ってきたのに、それ言うかね」

アル「俺達は基本不可能を可能にするような、ギネス級のバカがわんさり居んだけど、目的ってもんはあらぁな?あ、能力者でも一緒だけどよ」

アル「『○○したい』って目的がまずあって、それに合わせて努力するってぇのがフツーなんだわ」

上条「お前ら今更言われるまでもねーよ」

アル「だったら『こんな殺し方をするような魔術ってなんだ?』とか思わねぇのかよ」

ランシス「……」

アル「なんでわざわざ頸椎エグる必要性がある?」

アル「人体急所にゃ間違いねーけど、体の真後ろ、どうやっても狙いにくいじゃんか」

上条「……確かにそうだな。こんな魔術をかける意味が理解出来ない」

アル「同じ面積エグるんだったら、顔面狙ってブチ抜いた方が早ぇわな」

ランシス「……いいの?私達が有利になるよ……?」

アル「俺が本当の事を言ってれば、そうなるかも知れねぇよな」

上条「お前は『団長』がどんな魔術を使っていたのか、分かるか?」

アル「死んだ屍体と生きている屍体を加工するエキスパートだな」

上条「生きている屍体って」

ランシス「ブゥードゥー……?」

アル「さぁ?本人からは何も聞いてないから分からん」

ランシス「……」

上条「……これだけ鋭利に切り取っておいて、血の一つも飛ばさない……」

上条「キャトル・ミューティレーション?」

ランシス・アル「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーっ!?」」

上条「息ぴったりだな電波系ども」

ランシス「……酷い」
730 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:31:24.58 ID:YmW4vmbL0(17/33)
アル「あー、ないない。アレ確か目とか性器とかくり抜く奴だろ?似てるっちゃ似てっけどよ」

アル「極端な話、目とか性器くり抜かれても即死はしない――し、下手すれば死なないぜ?」

上条「それじゃ何?あの家畜の屍体って、目立つ外傷があったのとは別に、致命傷になるなんかがあったって事か?」

アル「『傷口からは殆ど出血の跡が無かった』のは、裏を返せば『その傷がついた時には死んでいた』つー話だわな」

ランシス「……服、脱がせようか……?」

上条「気は進まねぇけど……するしかないんだよ」

アル「待てよ、服ぐらい自分で脱ぐぜ!」

上条「引っ込んでろ外野!どうしてこの流れでお前の服を脱がせようって話になるか!?」

アル「暇なんだよ!相手してくれよ!」

上条「面倒臭ぇな!だったらそこの本棚でも調べとけ!」

アル「任せろカミやん!」

ランシス「……あ、触りたくないからって逃げた……?」

上条「俺だって嫌だが、あのバカに任せるのはもっと不安で仕方がねぇよ!」

ランシス「それじゃ……」

上条「あぁ」

ランシス「……どうぞ?」

上条「……ですよねー、男の仕事ですもんねー」

ランシス「……あとでご褒美上げるから、うん」

上条「いや。要らねぇけど」

アル「あ、じゃあじゃあ俺が!」

上条「ぶっ飛ばすぞ変態?つーかテメー夢の中でやったって良いんだからな!」

ランシス「本棚は、どう……?」

アル「十字教関係が3割、医学書が2割。後は神聖文字(ヒエログリフ)っつー古代エジプトの文字で書かれた本ばっか」

アル「古いのはパピルスも混じってる……あぁ、これが夢じゃなきゃ高く売れるんだろうがなー」

ランシス「何が書いてあるのかは……?」

アル「詳しく見てないから何とも」

上条「つまり『団長』がエジプト関係の魔術師だって事か?」

アル「さー?どーだろうねー?」

ランシス「質問、あなたが今までに見た『団長』の術式はなに?」

アル「名前は知らねぇが、多分身体強化系の術式?」

上条「フランスの駅で見たアレか」
731 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:33:04.12 ID:YmW4vmbL0(18/33)
アル「それそれ。限界がどのぐらいは知らね。後は『心霊手術(Bare-handed anatomy)』か」

アル「素手で人体からガン細胞引き抜いたりする見世物あんだろ?あれの『ホンモノ』だな、これが」

アル「安曇阿阪から脳を抜いたのも奴の仕事だ」

上条「……ちょい前にライブで見たけどな」

上条(なんて言いつつ『団長』のシャツを脱がしにかかる……いや、予想以上に嫌な行為だわ、これ)

上条(敵だったからそれなりに恨みもあんだけどな。実感がないって言うか、そんな感じで)

上条(――そこで、相変わらず手を繋いだままのランシスが、何かの紙を……?)

http://tanakadwarf.web.fc2.com/images/2014/memo00.jpg
732 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:34:02.05 ID:YmW4vmbL0(19/33)
上条(……『アルフレド、ホンモノ?』……?)

上条(……あぁ了解。その可能性はあるよな。よく似てるが、向こうが用意したNPCだって可能性も十分ある)

上条(こっちに背中を向けたまま本棚を調べる――というよりは物色するアルフレドは俺達のやりとりに気づきはしない)

ラシンス カサッ

上条(少しだけタイミングを置いてランシスはメモ用紙を裏返す。えっと、何々……?)

http://tanakadwarf.web.fc2.com/images/2014/memo01.jpg
733 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:35:59.61 ID:YmW4vmbL0(20/33)
上条(『true→アイシテル、false→キスしたい』)

上条「屍体を前にしてかっ!?このタイミングで言い出すのは変態でも居ないっ!?不自然極まりねぇよ!?」

アル「……なに?どったの?」

上条「あ、いやこれは」

ランシス「……続き部屋に帰ってから、ね?」

アル「……ケッ!爆発しろリア充が!」

上条「違――わねぇけど!お前に言われるのは何か違げーだろ!」

ランシス チラッ

上条(分かってる)

上条「つーかお前すっかりキャラ変わりやがったな!ユーロトンネルの時はもうちっと真面目なキャラだったぞ!」

アル「……いや、俺は昔からこんなものだったぞ……(殺)」

ランシス「……妖怪キャラカブリ良くない……」

上条「俺が悪かったから元へ戻せ。会話のテンポ悪くなっから……あの時はお前がアリサ”に”助けて貰ってたから、イイヤツだと思ったんだがな」

アル「借りがあるがなかろうが、踏み倒すのが俺達の流儀だぜ?悪党に善意を期待する程、滑稽な事はねぇな」

上条「……あっちに戻ったら決着付けるからな」

上条(はいはいニセモノ確定っと。良く出来たアバターでも、記憶は完全に再現されてねぇと)

上条(よしじゃ早速ランシスに伝え――)

上条「……」

上条(――罠だっ!?つーか会話が不自然過ぎるわ!)

ランシス「……どしたの……?」

上条「誰かさんの張ったトラップに行くべきか悩んでんだよチクショー!?」

アル「男だったら戦わなきゃいけない時があるんたぜ、兄弟?」

上条「お前らの同朋なんて死んでもゴメンだが、その心は?」

アル「取り敢えず一回ヤってから考える!」

上条「ラテン系のノリが世界中で通用すると思ってんじゃねぇよ!それで済むんだったら弁護士は食いっぱぐれるわ!」

上条「……て、脱がし終わった、けど」

ランシス「……何もない、よね……?」

アル「どれどれオッサンに見せてみろ――て、確かに何にもねぇな」
734 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:36:53.18 ID:YmW4vmbL0(21/33)
上条「外傷は頸の後ろの1箇所だけ。死因の見当はつかない、な。医学の心得はないし」

アル「いや、その判断で間違ってねぇよ。死因らしい死因が見当たらない」

アル「体には圧迫痕も殴られた跡も無ぇ、綺麗な屍体だぜ」

アル「食い込んでる鉄仮面を外さなきゃ断言は出来ねぇが、毒物を飲まされたら口から吐き出す――その跡も無い」

上条「分かるのか?」

アル「あぁコイツぁまともじゃねぇ、どう考えてもおかしい」

アル「そもそも普通、死んだ後には死後硬直つって筋肉が硬化する現象が起きるんだわ。ミステリもんじゃ定番だよな?」

ランシス「現実の間違いじゃ……?」

アル「まー、あれもそんなに早く起きるもんじゃねぇんだが――こいつが殺されたとすりゃ、少しずつ固まってる最中。だってのに」

上条「――あ、マネキンみたいにすんなり服を脱がせられた!」

アル「始まってすらいねーんだよ、死後硬直」

ランシス「室温の差?」

アル「バラしてみねーとよく分からんが、屍体にしちゃおかしいってのが俺の見解」

上条「……いいのか?そんな事言っちまって?」

アル「……あんなカミやん、昔さ、RPG作るゲームってのが流行ったんだわ」

上条「あー……聞いた事、あるような?」

アル「仲間の強さ決めて、敵はどんな攻撃するとか、ステータスだとか決めんだけど――」

アル「――必ず勝つようなゲームやったって、面白くもなんともねぇだろ、な?」
735 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:39:00.24 ID:YmW4vmbL0(22/33)
――1階 1号室(仮)

上条「……」

上条(物語と違って、探偵が万能と言う事は有り得ない。欲しい時に欲しい知識が得られる――なんて事はまずなく)

上条(あの後、アルフレドを部屋に帰し、戻ってきたメイドさんと他の部屋を探し回ったが、証拠らしい証拠は出て来なかった)

上条(時計は止まったままで分からないんだが、ランシスがそろそろ疲れた顔をしていたので今日はもう休む事にした)

上条「……」

上条(気晴らしにラジオを付けてみたが、そこから流れるARISAの歌は途切れ途切れのもので……)
736 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:40:33.23 ID:YmW4vmbL0(23/33)
『私の虚は満たされない』

『バラを差して飾ったとしても、この心は埋められない……』
『貴方を傷つけ、流れる血潮を飲み干したとしても、喉の渇きは心を裂く』

『墓穴の底から見上げる月はキレイで』
『暗く冥いハコを照らす』
『朝の来ない夜に抱かれ、眠ろう』

『パンドラは閉じられない』
『いらないモノを幾ら詰め込んだとしても、フタが開く』
『貴方を殺めて、溜まった肉を受け入れたとしても、ムネはカラッポだろう』

『墓穴を見下すソラは醜い』
『明るく穢れたハコを映す』
『明けない夜を堪え、眠ろう』
737 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:43:09.83 ID:YmW4vmbL0(24/33)
上条(――とまぁ鬱になるっちゅーぐらい暗い歌詞だ)

上条「……でもアリサ、こんな歌あったっけ……?」

ランシス「……考えててもしょうがない。取り敢えず、寝よ……?」

上条「おお、おぅっ!」

ラシンス「……緊張してる?」

上条「ぜ、全然全然っ!?俺はいつも平常心だぜ!」

ランシス「なんかもうツッコムのも面倒……」

上条「疲れる……あぁまぁ疲れるよな、そりゃ」

上条「外は相変わらずの雷雨で真っ暗、時間感覚はマヒしっぱなしだし、どっから監視されるか分かったもんじゃないし」

ランシス「……確実にされてる、よ……?今でも」

上条「だわな。フツーだったらそうする」

ランシス「……だから内緒話をする……ちょっと待ってて……?」
738 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:44:12.14 ID:YmW4vmbL0(25/33)
ランシス「『Loki who is the god of the clown.. laugh!』」
(道化の神であるロキよ、嗤え!)

ランシス「『The shout of the giant who shakes the earth crowds it about the dead who change the revolt to foolish Cyclops!』」
(大地を揺るがす巨人の咆吼を、愚かなキュクロプスに反旗を翻す亡者の群れを!)

ランシス「『"The dead dye the sky to the previous notice of the flame in red, and do not raise its fist even if it dispels one's melancholy!』」
(天空は炎の先触れに赤く染まり、死者は憂鬱を晴らそうと拳を上げん!)

ランシス「『Give the mistletoe Now blind to the hero! To dispel thine disgrace, all!』」
(さぁ盲目の英雄へ宿り木を持たせよ!全ては汝の屈辱を晴らすために!)

ランシス「『The dead will come! The dead came! All are mangling!』」
(死人が来るぞ!死人が来たぞ!全てはぶち壊しだ!)

ランシス「『――神々の黄昏が来た!』」
(――Ragnarok, Now!)

ランシス「……最大稼働、『死の爪船(ナグルファル)』」
739 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:45:30.52 ID:YmW4vmbL0(26/33)
上条「ここで霊装かよっ!?」

上条(ランシスの両手の爪が赤紫色の鈍い光りを放ち、そのまま30cm程伸びた!)

上条(どう見ても禍々しいそれをこちらへと向け――)

上条(……本当に、というか、そもそも、というか、最初っから、というか)

上条(『彼女は俺の知っているランシス』なのだろうか……?)

上条(この旅行中、なし崩し的に仲良くなったベイロープやフロリスとは違う。俺は彼女の事を殆ど知らない)

上条(だから『彼女』が正真正銘、本物のランシスであるかどうかなんて――)

ランシス「……どう、怖い?」

上条「そりゃ……急、だったしな」

上条「てか、何するんだ?突然霊装なんか持ち出して」

ランシス「……それはきっと、言っても意味が無い」

上条「ん?なんで?」

ランシス「私が何を言おうとも……信じるかどうかはあなたにかかってる、し……?」

ランシス「……口先だけでどんな綺麗事を言っても、本質は変わらない……」

上条「……だな。それはきっと、その通りだ」

上条(どんだけ安心だ安全だ、っつても。言った相手が信用出来ない相手なら、どんなご立派な言葉も上滑りするってだけの話)

上条(……じゃ、俺はランシスを――目の前のランシスの姿をしてる相手を信じられるか……って言ったらまぁ)

上条「……一つだけ、聞きたい」

ランシス「……なに?私のカップ……?」

上条「興味無い――事はねぇが、それは現実に戻ったら拝みこんで聞くさ」

ランシス「んー……?」

上条「お前の故郷の話を聞かせてくれよ。多分それで分かる」

ランシス「……あれ?言った事、無かったよね……?」
740 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:46:50.66 ID:YmW4vmbL0(27/33)
上条「ん、まぁそうだけどさ。時間が許してくれるんだったら」

ランシス「……じゃあまぁ、簡単に」

ランシス「……私の故郷は北アイルランド。とても寒くて厳しい所……」

ランシス「夏は短くて陽射しも弱い……冬は雪が降らなくて、飲み水に困る……」

ランシス「……ケルト発祥の地――とか、一時期持て囃されてたけど、今じゃそうでもないって説が有力らしい」

上条「ケルト?」

ランシス「……うん。妖精や精霊、幽霊みたいな神話が多く、て……」

ランシス「ウィル・オー・ウィスプって知ってる……?」

上条「鬼火だっけか?」

ランシス「……私も昔ね、寮の裏手に光る玉を見つけて、学校で喋ったの。でも」

ランシス「……誰も信じてくれなくって、ちょっと悲しかった……」

上条「まぁ……かも知れないよなぁ」

ランシス「……でもその日の夜、『なんであなた早く言わないんですかっ!』って、一緒に探しに行ってくれたのは……」

上条「……すげーなレッサー」

ランシス「……私、虐められてたから……」

ランシス「長い間……北アイルランドはイングランドにテロをしてた……そのせいもある」

ランシス「誰かが起こした戦争で、誰かが死んだ責任を取れ、とか……たまに言われるけど」

ランシス「……殴ってくれるのは……うん」

上条「……」

ランシス「……私は北アイルランドが好き。人が住むには、少しだけ厳しい所だけど……」

ランシス「けど、今のみんなと出会えて……とても、好きになった」

ランシス「……もし私が北アイルランド出身じゃなかったら……きっと、あの夜も怖くて震えてただけで」

ランシス「レッサー達と友達には、なれなかった、かも……?」

上条「……なぁ、俺達この世界から帰ったら記憶がなくなったりはしないよな?」

ランシス「?……大丈夫、だと思う……よ?」

上条「そか。だったら次からは――」

ランシス「……うん?」

上条「――俺もぶん殴る側に回っから、そん時は呼んでくれよ?」

ランシス「……大丈夫。もう必要無いし……」

ザシュッ……!!!
741 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:49:37.16 ID:YmW4vmbL0(28/33)
――???

上条「……」

上条(体が動かない……てか、いや、あるのか?体?)

上条(夢を見てるような……夢の中で夢を見る?電気羊どこじゃねぇな、これ)

上条(ランシスの霊装で攻撃された所までは憶えてる――な?現実、とは違うが、ありゃ一体何を――)

?『――私に、裏切り者になれ、と……?』

上条(……喋ってるのは、俺か?視線の先にいるのは誰だ?)

?『あなたはそんな……そんな残酷な命を下されるというのか――』

?『――『王』よ……っ!』

上条(俺……てか、コイツが話している相手は『王』……?)

上条(……霞かがって見えないが……)

王『あー、いやいや気持ちは分かりますがね。相性の問題でしてね、単純に』

王『私達が倒した竜だって、ありゃ「魔」のカテゴリへ入っていた訳で』

王『デミウルゴスが切り離した闇の側面。多神教が一神教へ生まれ変わるための儀式』

王『本来であれば一つの神が持っていた闇の部分を排除し、人格――神格を得た、と言いましょうかね』

上条(王様随分フレンドリーじゃねぇか)

王『ですがまぁ、それ故に。この「剣」にとっちゃ相性は抜群だったんですがね、えぇえぇ』

?『だから!私に!仲間を斬れと!?』

王『……そうですね。斬って下さい』

王『出来れば、この私も――ま、そちらは別口が予定済みですがねぇ』

?『……王よ……!』

王『そうすれば貴方の剣には「仲間殺し」――つまり、「魔」が宿る』

?『そこまでして!どうしてそこまでして「魔」を取り入れる必要がおありか……!?』
742 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:51:05.48 ID:YmW4vmbL0(29/33)
?『あなたの「聖剣」!そして「聖杯」で打ち負かせぬ悪などあろう筈が……!』

王『……次の相手は「神」だからですよ。先生の予言に拠ればそう出たと』

王『創聖の力を持ち、世界の有り様すら容易く変えてしまうような、紛れもない存在』

王『彼女相手に私の剣では力不足……』

王『まっ、大ハズレだったらどーしまょうねー?あっはっはっはー!』

上条(突っ込みてぇ、「勝手だな!?」って全力でぶちのめしたい……!)

王『――と、それとは別件なんですが、その、アレがですね?』

王『やはり好きな相手と添い遂げた方がいいんじゃないかなー、なんて思ったりもする訳でしてね?』

?『……王!』

王『あぁご心配なく。私はどうせ本質的な意味で死ねやしませんから』

王『今、この身が死に至ろうとも、それはあくまでも暫しの休息の時に過ぎません』

王『リンゴの園にて死して夢見る永劫の日を重ね――そしていつの日か、きっと』

王『我が王国に危機が及べば、寝床から叩き起こされて、戦場へと馬を駆りましょう』

王『ただそれだけの話ですよ。それだけの、ね?』

?『……』

王『貴方や斬った騎士達も、どうせまた呼んでもないのに駆けつけるでしょうから』

王『それとも……貴方は私にこう言わせたいと――』

王『――最も勇敢で騎士の中の騎士L――よ、我が下命を聞けぬのか、と』

?『……あい分かりました我が王、キャメ――の――よ!』

?『我が忠誠を試されるのであれば、それに応えぬなど騎士の恥!どんな命をも見事成し遂げて見せましょうや……!』

王『……ごめんなさい……貴方に汚れ仕事を押しつけてしまって……!』

?『何を仰る。他人には好きに言わせておけば宜しい――が、もし』

?『逆賊の汚名と引き替えに褒美を賜れるのであれば……ただ一つお願いしたい義か』

王『……えぇ。私に叶えられる事であれば』

?『ならばどうか!貴方の命を受け殉死した騎士、そして私が今から命を奪う騎士――』

?『――次に集う時は彼らの早参をどうかお認め下りますよう……!』

王『また物好きな。どうせB――卿やF――卿の、帰参――』

上条(ノイズ……?段々小さくなっ――)

王『好きにす――L――卿。貴方は戦い――果てぬ――国を――』

王『集う――そう、それが――』

王『――私の、円――へ……!』
743 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:53:46.33 ID:YmW4vmbL0(30/33)
――???

上条「……」

上条「……なんだ。今の夢は」

ランシス「……あ、ゴメ……混線した……」

上条「ランシス……ここは?」

ランシス「夢の中の夢……術式が成功していれば、だけど」

上条(視線がどうも横向きになってる――あぁ横向きになってるのか)

上条(どことも知らない狭い部屋の一室で、俺達は向き合って横になっている……正直、恥ずかしいぐらいに近い)

上条(それもその筈、俺は右手で彼女の左手を握り、俺の左手は――)

上条「……なんだ、これ?……剣?」

上条(俺達二人の間には抜き身の剣――それも、漆黒を固めて作ったような、禍々しい色をした剣が一振り)

上条(俺とランシスはその柄を握り合っている……)

上条「えっと、これは……?」

ランシス「……これは誓い……『私』の話じゃなく、『これ』もカーテナじゃないけれど……」

ランシス「……こうすれば、あの時も……」

上条「カーテナ?キャーリサが振り回してた、イギリスの聖剣、だったよな?」

ランシス「時間が勿体ないから、話を進める……結局、『犯人』は誰か分かった……?」

上条「お、おぅ!そうだよな、まずそっちの心配だよ……な?」

ランシス「……ここは大丈夫。夢の中で、夢を見るように隔離してある……先生が得意だった術式」

上条「……色々文句もあるが、基本スペック高いんだな。お前らの『先生』」

ランシス「『あっち』で監視してる人達には、ただ眠ってるとしか映らない……オーケ?」

上条「了解」

ランシス「……じゃまず、何が起こっているのか、を」

上条「魔術的な誘拐、っつーか意識を奪う?まぁとにかく不思議パワーで俺達はこの館に連れてこられた」

上条「どうしたもんかと悩んでいたら『団長』が殺されて、それを見つけるのがゲームだと言われてる……」

上条「……なぁ、今思ったんだけど『団長』は死んだんだよな?」

ランシス「あの部屋にあった屍体が本人のなら、まぁ……」

上条「だったらこの、あぁいやあっちの『館』を維持してるのって、誰だ?」
744 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:54:48.95 ID:YmW4vmbL0(31/33)
ランシス「普通に考えれば構成員……?……少し捻ればアルなんとか?」

上条「だよなぁ?順当に考えればメイドさんが最有力候補――あ、そうそう、伝えるの忘れてたけど、あのアルフレドはニセモンだった」

ランシス「……メモにはこっそり伝えるサインを書いたはず……」

上条「言えるかボケっ!?あんな切迫した状況で愛の言葉を囁くのはフランス人か変態じゃねーか!」

ランシス「……ちっ」

上条「……いや、てーかさ思ったんだけど、なんであれ『アルフレドである必要があった』んだろうな?別に他の奴でも良かったのに」

ランシス「……必要?顔なじみのアバターの方が作り易いんじゃ……?」

上条「いや、だからな?俺達に謎解きゲームなり、探偵ゴッコを本気でさせるんだったら、アルフレドと同程度の医者?か元警官?とかでも充分だし」

上条「なんでまた野郎のニセモンなんて作る必要があった?どういう必然性がある?」

ランシス「……考えられるのは……『実在する人間を取り込んでる』って思わせたかったのかも……」

上条「なんで?だったら別にアルフレドじゃなくって、そこら辺の一般人を巻き込むフリをすれば良かったんじゃ?」

ランシス「……このシチュエーション自体、最初からあからさまに不自然だった、よ?」

ランシス「肖像画もそう……『団長』やメイドの演技も、過剰だった……」

ランシス「……だから『この世界”は”作り物だけど、登場人物”だけ”は本物』だと……」

ランシス「私達に思わせたかった……」

上条「……それをする事にどんなメリットが――」

ランシス「……想像は、出来る」

ランシス「例えば、こんな無茶な術式、他人の意識を取り込めば取り込むだけ、制御が難しくなるし……」

ランシス「何より遣う魔力がインフレ……」
745 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/02(火) 11:55:33.28 ID:YmW4vmbL0(32/33)
上条「と、するとメイドさんもNPC……いや、でも待てよ?おかしいって違和感が」

ランシス「?」

上条「話から察するに、『館』に居るのは俺達を除いて、NPC――『殺し屋人形団』の誰かが操ってる人形なんだよな?」

ランシス「……多分」

上条「『それがバレるのがどうして拙い』んだ?」

ラシンス「……どういう意味……?」

上条「例えば……そうなぁ、最初から全部が全部作り物めいてただろ?シチュにしろ、演技や台詞もだ」

上条「だったら別に、登場人物がマネキンに服着せたとかで良くないか?デフォルメした人形でも充分――」

上条「……」

ランシス「……途中で、どうしたの?」

上条「……必要だったから、か?……いやいや、そうすると」

上条「リアルなNPCじゃないと、俺達は『勘違い』しない……そう、か?」

ランシス「……」

上条「そう考えると筋が通――」

ランシス「……よっ、と」

キィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!

上条「ひぃぃぃっ!?耳が!耳が耳がっ!?」

上条「――ってテメー何引っ掻きやがった!?」

ランシス「剣を、こう……『死の爪船(ナグルファル)』で、きぃぃっと」

上条「大事な剣に何やってやがんだよ!?」

ランシス「……別に、夢の中だし……?」

上条「意外に現実的だった!?」

ラシンス「……あ、でも壊れたら現実にフィードバックする……」

上条「たまーに思うんだけど、なんでお前ら魔術使えるのに後先考えねぇの?B・ハロウィンの時も思ったけどな?」

ランシス「……で?何か分かった……?」

上条「……何となく、だけど。一通りの理屈はついた気がする」

上条「どうして本物と錯覚させるNPCを使うのか?」

上条「そいつらが本物のフリをしなくちゃいけないのか?」

上条「『団長』の体の痕跡や殺したのは誰か?」

ランシス「……ホント?」

上条「……『充分に発達した科学は魔法と見分けがつかない』って、誰かの言った台詞だけど」

上条「『効率を追求しすぎた魔術と科学は同じ方向へ進化する』――つー、話だよ」

上条「ま、なんだ?つまりは――!」

ランシス「謎は全て解けた……ッ!!!」

上条「それ俺の台詞だっ!?」

ラシンス「犯人はこの中にいる……ッ!!!

上条「え?ここへ来てまさかの二択っ!?」
746 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/02(火) 11:57:20.56 ID:YmW4vmbL0(33/33)
今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

来週でランシスさん編終了。次はレッサー編さんでしょうか。気がついたらこのスレ書き始めて6ヶ月目突入ですね
747 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ] 2014/09/02(火) 13:06:45.75 ID:fwl/+GNno(1)
ランシスいいキャラしてるな
748 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/02(火) 13:24:34.44 ID:jU3ahchj0(1)
乙です!
相変わらずクオリティ高くてすごい!
ランシスって原作でほぼ登場してないようなもんなのにうまいな
でも>>718のフロリスって誤字だよね?
749 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/02(火) 16:09:45.79 ID:1rG7n7Jo0(1)
少し前までバードウェイたちの話だったと思ったらもう半年なのか
時が立つのは早いなあ

750 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/02(火) 18:31:50.29 ID:6FjoIJH+o(1)
乙です
751 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/02(火) 19:45:57.10 ID:1MYE4MIr0(1)
>>714
>鳴護「なんか噂じゃレッサーさん編で終りって話も聞くんだけど、な、ないよね?」

な、ないよね?ちゃんとアリサちゃんもフラグ10本くらい建て増しされて、4人組といっしょにハーレムルートに突入するんだよね?
ね!?
752 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/02(火) 20:31:24.24 ID:cvZMQzBp0(1)

そういえば、国のピンチに復活する的な伝承ありましたねアレ
753 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/02(火) 22:10:41.44 ID:O6SvqQhDO携(1)
乙!!
アリサは今までにないキャラだけど…
手を出したら、代償は命ですからね

美人局一覧
ベイロープ→術式の副作用で縛り付ける(結果論)
フロリス→積極的
ランシス→体質を利用したスキンシップと狡猾な罠

レッサーは露骨過ぎる、アリサは守護者が怖いから加えません
754 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ] 2014/09/03(水) 19:12:10.62 ID:2xFQwTAEo(1)
上二人が圧倒的にかわいい
755 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/08(月) 12:24:06.27 ID:5Av7PpV00(1/21)
>>748
フロリス「Oh,.......やっちまったぜ。ランシスとワタシって下二文字の母音が『イウ』だから、よく間違えられるんだーよねぇ」
フロリス「何度も何度も名前書くと段々ゲシュタルト崩壊するっちゅーかな、うん」
>>752
フロリス「そいつぁSecretで頼むよジャパニーズ。ワタシらの出番が来ない方が楽ジャン?……ま、どーなるかわっかんないケドさ」

真面目な話、『原作の裏設定(※伏線)食っべっちゃっうっぞー?by木原円周』的なつもりで書いてます
756 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 12:29:53.08 ID:5Av7PpV00(2/21)
――『悪夢館』 1号室

メイド「大変です上条様っランシス様っ!アルフレド様が――」

上条「――『部屋の外から声をかけても返事がない』?」

ランシス「……それども『食事の時間に姿を見せなかった』……?」

上条「セオリーからすりゃ、そろそろ次の事件が起きないと読者は飽きる頃だけどさ」

ランシス「……最初にライバル宣言した奴、もしくは友好的な協力者がリタイアするのもよくある話……」

ランシス「大体ゲストキャラのヒロインは死ぬか犯人かの二択……」

ランシス「……ま、専門用語で『当て馬』」

メイド「えぇと、どういう事でしょうか。これは?」

上条「ここは狭い。取り敢えず説明すっから場所を移動しようぜ……そうだな、食堂がいいか」

メイド「書庫でスタンバってるアルフレド様は如何致しましょうか?」

上条「の『屍体』だろ?別に中の人が奴って訳じゃねぇんだから、ほっとけ」

ランシス「……一応見ておく……?」

上条「必要無い、時間の無駄だって。俺達の推測が当たってるのなら」

上条「どうせ『団長』と同じく、『鋭利な刃物で頸椎を抉られ、且つ血の一点も流れていない屍体』なんだろうから」
757 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 12:33:20.61 ID:5Av7PpV00(3/21)
――1階 食堂

上条「んじゃまぁどっから話したもんか。ま、解決編って事になんだろうけどさ」

ランシス「この話の黒幕は……あなた」 ピシッ

メイド「……それ、昨日やりましたから。他の臓器も取って欲しいのであれば、そのように致しますけど?」

メイド「『私が犯人である』――との問いに関して、否定致しましたから」

ランシス「……それは違う。『事件の犯人』”ではない”と言うだけ……」

ランシス「でも、このお話の狂言回しは……メイドさん、違う?」

メイド「具体的には、どのような?」

上条「おかしな話、つーか違和感は最初っからあった訳で」

上条「あんたが一貫して『殺人』とか『犯人』なんて、『自分からは言い出さなかった』のもおかしい」

上条「俺達の言葉を受けて否定する以外じゃ、全くっていうぐらい使ってなかったろ?」

メイド「そうでしたでしょうか?気が動転しておりましたので、あまり憶えておりません」

ランシス「……に、加えてこのゲームの勝利条件が『真相の解明』であって、『事件や犯人捜し』なんかじゃなかった……」

ランシス「これはきっと……私達にミスリードをさせるため……うん」

メイド「ミスリード、で御座いますか……承知致しました。そこまで自信がおありであれば、世間話ではなく『回答』として伺います」

メイド「勿論不正解だった場合には『ペナルティ』が適宜加えられますので、どうかご注意下さいませ」

上条「注意ねぇ?こっちをバラしたくてうずうずしてるようにしか見えねぇが――んじゃ、順番に行くぞ」

ランシス「……ホワイトボードみたいなの、ある……?」

メイド「時代設定と舞台背景としては矛盾致しますが、まぁ――こんな事もあろうとか、こちらにご用意して御座います」 ガラガラ

上条「ご丁寧にどーも。便利だな夢……しかもこれチョーク用のじゃねーか」

ランシス「……おっさんが泣いて喜ぶ昔の学校……」

上条「ウチの学校は今もこのタイプだよ!悪かったな未だに使っててさ!」

上条「……まぁ気を取り直して――この『事件』、大まかに分けて謎が三つある」

1.密室
2.殺害方法(凶器)
3.遺体の傷

メイド「その通りで御座いますね」

上条「それじゃまず密室だ。マスターキーは一つ、部屋の持ち主が持つ鍵は――」

ランシス「……あ、聞くの忘れてた」

メイド「部屋の中にありましたが、というか無かったら指摘しております」

上条「どのようにして密室を作り上げたのか――!」

上条「……いやごめん、全っ然分からなかった」

ランシス「……な、なんだってーーー……」

メイド「……上条様……?」

上条「待て!抜き手のまま近づいてくるな!?せめて話は聞きなさいよっ!」

メイド「あ、いえこれはただの職業病ですのでお気になさらず」
758 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 12:38:05.24 ID:5Av7PpV00(4/21)
上条「どんな仕事?検視官か猟奇殺人鬼以外にないよな?」

メイド「冗談で仰っているのであれば、質が悪う御座いますよ」

上条「いや、なぁ?だって考えても見ろよ」

上条「魔術師なら鍵の一つや二つ、どうにでもしそうじゃね?最新式の網膜認証システムとかじゃなかったら」

ランシス「ん……?盗り外せば、可能……」

上条「おっと猟奇的な発言は慎んで貰おうか!主に俺が正気でいられるためには!」

上条「……密室にしたってなー。魔術じゃなくても合鍵だ針金だなんだで開けられるもんだし?」

上条「中のロックしてる部分を動かすとか、構造自体を変えちまうとか」

上条「外から入って来る、透明のままで居る、転移を使う……選択肢は腐る程ある」

上条「他にも常識的に考えようぜ?例えば鍵穴一つにしたって、針金で開けたとするな?」

上条「多分探偵役の奴が『不自然に引っ掻いたような痕跡が……!』とか、言うのかもしんねぇけど」

上条「『こっそり開けようとしてる側にとっては想定内だよね?』って」

メイド「えっと、仰る意味が……?」

ランシス「人を殺す……衝動的か計画的なのかは分からないけど、まぁ仮に盗みに入ったとして主人と鉢合わせ……」

ランシス「もみ合ってる内に誤って殺す、のは杜撰な計画でも可能は可能……」

ランシス「……でも逆に『違法行為をしているのだから、最初から痕跡がバレッバレなのはおかしい』……って」

ランシス「鍵穴にしろ、殺すつもりはなくっても……完全犯罪を目指すだろうから、わざわざバレやすい方法は取らない……」

上条「つーかさ、『この世界はフイクションの探偵ものじゃない』んだ。それが大前提」

上条「俺の言っている意味、分かるか?」

メイド「……すいません、理解出来ません」

上条「フィクションの探偵っては『事件の解決させるために居る』もんだろ?」

上条「だから半端ねぇコネがあったり、同世代だけじゃなく人類レベルで卓越した頭脳を持ってたり、天才的な相棒が側に居たりする」

上条「つまり『登場した瞬間に事件を解決出来る能力を持ち合わせている』んだわ」

ランシス「……ヤな言い方をすれば、凄惨な事件も、悪逆な犯人も、悲しみに打ち震える被害者の家族ですらも……」

ランシス「『探偵を華々しく活躍させるためのギミック』、にしか過ぎない……」

ランシス「……他を全部無能にして、常識すらも踏まえていない――踏まえ”られ”ないような衆愚へ落とし……」

ランシス「『探偵がどれだけ有能で素晴らしく』、引き立てるためだけに……」

上条「……ま、そこら辺は他のジャンルも似たり寄ったりだと思うがなー」

メイド「それとお二人のお立場とが、どう関係されてると?」

上条「ん、まぁ難しいこっちゃなくてだ。俺は、素人だ」

上条「持ってる知識は高校生の大半と大差ないし、犯罪についても、医学についても、トリックなんかは特に専門外だ」

ランシス「……私も、本のジャンルとはしては好きだけど……それだけ」

上条「つまり、つまりだ。俺達が言いたいのは――」

上条「――『最初っからこのゲーム、解けるだけのパズルが用意されてない』って話」

ランシス「……だから私達は『真っ当な方法』での解決は諦めた……」
759 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 12:41:32.98 ID:5Av7PpV00(5/21)
――食堂

メイド「それはまた……ギブアップ宣言なのでしょうか?」

上条「違う。お前のミスだって言ってる。パズルのピースが足りてないんだよ」

上条「必要最低限の情報すら貰えず――それでも解決は出来るだろうな、『探偵』なら」

上条「何故なら『探偵が登場する物語は解決が約束されている』からだよ」

上条「……俺達とは、違う人種だな」

ランシス「……でも、別の方法でなら道はあるかも知れない、それは……」

ランシス「『あなた』の術式の解読……」

メイド「私の、でしょうか?『団長』ではなく?」

上条「惚けるなよ、つーか正確には『お前達』っつった方がいいのか?なぁ?」

メイド「NPCは確かに団員が扮しておりますが」

ランシス「……『団員』の中には『団長』も含まれるよね……?」

メイド「……」

上条「ここで、もう一つ疑問を別口で整理してみる」 カッカッ

1.何故「夢」なのか?」
2.実在の人物を模す意味は?
3.最終目的は何か?

上条「俺達――てか殆どランシスの持ってた魔術知識がベースだけど、大体は見当がついたんだ」

上条「んじゃ順番に追いかけてみると――」

ランシス「……『夢』系の術式は前準備が必要……の、割に、相手は霊装も術式も持ち込めるし、術者本体が無防備になる……」

ランシス「……しかも莫大な無力を消費する上、巻き込む人間が多ければ多い程、制御も困難、消費も桁違い……」

ランシス「造り出す仮想世界……この『館』みたいに、リアルな設定にすると更にヒドい」

ランシス「補足しておくと……『団長』ぐらいの、近接戦闘も出来るタイプなら……直接単身で乗り込んで来られると、ちょっとヤバい」

上条(と、ランシスのダメ出しを箇条書きにする) カッカッカッ

a.事前の準備が面倒。術者本体が無防備
b.相手は霊装を(身につけていれば)持ち込める。術式も使える
c.魔力消費高め+人が増えると比例して上がる
d.リアル設定にすればするほど面倒臭くなる

上条「――と、まぁデメリットだらけで。『今』の魔術サイドじゃメジャーじゃないんだよな?」

ランシス「……うん。獣化魔術と同じ、廃れた技術……」
760 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 12:43:35.07 ID:5Av7PpV00(6/21)
上条「でも『殺し屋人形団』にとっては、そこまでしてもこの術式を使う理由があった」

上条「以上を踏まえて2の疑問。『登場人物に実在の人物を出す意味』なんだが」

上条「あ、ちなみに昨日会ったアルフレドはブラフかけてニセモノだと判明済みだぜ」

上条「ユーロトンネルの中、奴はアリサに助けて貰ったんじゃなく、助けた側。しかも助けられたのは俺だよ」

上条「外見や性格もよく似てると思ったが、似てるだけで本物じゃない。んでランシス」

ランシス「……あれだけ『精巧なニセモノを登場させる必要性が理解出来ない』、よ……?」

ランシス「知り合いの方がイメージはし易いけど……他の人に違和感ないレベルで再現させるのは、相当の観察と調節が必要……」

上条「極端な話、『団長』やアルフレドを出さなくても、ふなっし○のぬいぐるみでも置いて、ナイフ刺しときゃ意味は同じだった筈だ」

上条「『さぁこれは殺人犯が居ますよー、頑張って解決しましょうねー』ってな感じに」

上条「人狼っつったっけ?あれみたいにな」

ランシス「……逆に『これがお芝居じゃないガチ事件です』って思わせるんだったら、リアリティは必要不可欠……だけど」

上条「最初から『これは真相を解き明かすゲームです』って明言してんだから、下手に凝る必要はないってね」 カリカリ

e.不自然なリアリティのキャスト達

上条「で、ここで最初に戻る――メイドさん、あんたがどうして『断定する言葉を使わなかった』って話に」

ランシス「……『殺人事件が起きた』とか、『死人が出た』とか……そういう事は、決して言わなかった……」

メイド「ですが、そう判断されたのは、部屋を見たお二人ではありませんか?」

上条「その通り。『判断したのは俺達』だ。ここ重要だ」

ランシス「……もひとつ大事……」

上条「なに?」

ランシス「今も……『現場』や『遺体』って言葉を使わなかった……」

上条「あー、成程。回りくどい言い方しか出来ないもんな」

上条「言質を取られないようにするため、具体的にどうこうは言えない縛りがある」

上条「……で、ここで質問だ、メイドさん」

上条「『団長』の部屋、あそこにあった”モノ”。多分あんたが悲鳴を上げた原因でもある」

上条「”アレ”はあんたの目にはなんて映った?」

上条「俺達が『団長の屍体』だと思った”アレ”。あんたはどう思う?一体何に見えた?」

メイド「……」

ランシス「……嘘が吐けないけど、沈黙は許される……まぁ、ミスリードを誘っておいて、今更な気もするけど……」

上条「言いたくないんだったら別に無理に言う必要はない」

上条「どっちみちこのゲームの勝利条件は『真相の解明』だから、正解だったら正解って言う義務がある――」

上条「――よな?正解なのに正解扱いされないとか、まさかそこまでデタラメじゃねぇよな?」
761 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 12:49:09.45 ID:5Av7PpV00(7/21)
ランシス「……ん、まぁ向こうがルールを守らないのなら……うん」

上条「……まぁ、いいや。話を戻す、えっとだな」

上条「最初に書いた三番目、『最終的な目的は何か?』って……ま、真相の答えだな」

ランシス「……『犯人を捜せ』じゃない……『事件を解決しろ』でもなく……」

上条「何故か『真相の解明』だ。おかしいだろ、っつー話」

上条「……正直言って、俺達に探偵さんが持ってるようなスキル。例えば医学だったり、話術だったり、博識だったりとか?」

上条「そういう知識があったら、逆に正解へはたどり着けなかった。そんな気がする」

上条「いつも得体の知れない相手の、ワッケ分からん魔術師と能力者の攻撃を受けてなきゃねっ……!慣れっこだもんねっ!」

ラシンス「……よしよし」 ナデナデ

上条「……あんたは何かを隠してる――だけじゃない、誤解させようとしていた」

上条「言い方もそうだし、もっと相応しい呼び方も無視している。それは何のためだ?」

ランシス「精巧に造られた屍体……アルなんとかと寸分違わないNPC……それが用意された理由、推測すると――」

ランシス「――最初っから殺人事件なんて、起きてなかった……!」

メイド「……?」

上条「そもそもで言えば、アレだよ。『団長』は死んでなんか居なかった」

上条「もしそうだったらこの館自体の維持なんか出来なかったろうさ。なぁ――」

上条「――『団長』さんよ?」

上条(そう言って俺は奴をはっきり見据える)

上条(俺の真っ正面ら立ち、先程から下を向いて俯く”演技”をしている――)

上条(――『メイド』をだ!)

メイド「……私が、『団長』だと……?」

ランシス「……そ、あなたが『殺し屋人形団(チャイルズ・プレイ)』のボス……」
762 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 12:52:51.83 ID:5Av7PpV00(8/21)
メイド「では最初の部屋で見た光景は――」

上条「だから殺人じゃねぇんだよ。ありゃタダの『霊装』だ。違うか?」

メイド「あれが?しかし傷付けられていたように見受けられましたが?」

ランシス「……違う……あれはきっと『元々そうだった』から」

ランシス「……エジプトでミイラを作る際に、心臓以外の臓器は体から抜き出す」

ランシス「それをミイラと一緒に『カノプス壺(Canopic jar)』ってツボに入れて、ミイラの側へ置く……」

ランシス「いつか……ミイラが復活した時に必要だから……」

上条「多分、それの応用なんだろ?発想の転換っつーか、狂っているっつーかな」

上条「『団長の本体はカノプス壺』じゃねぇのか?」

メイド「?それはどういう意味でしょうか?」

メイド「仮にその術式だったとしても、それが一体『真相』へ繋がると?」

上条「んー…?なんつーか、学園都市でも似たような話があってだな……あんまり思い出したくはないが」

上条「体の殆どを機械にしちまって、脳の一部分をカードリッジにまで削減しやがって」

上条「そいつを切り替える事で、何人かの人格を一つの体で使い分ける――みたいな話だ」

ランシス「……効率、悪くない……?」

上条「逆にボディさえ無事なら、連続して作業とか出来るって考えじゃねぇの?……理解しちまったら終る気もするし」

上条「――んで、今回のは真逆。狂ったまでに効率重視しやがった学園都市と、あんたが似たような思考へハマっただけ」

ラシンス「……最初から、この『館』の登場人物はたった三人」

上条「上条当麻、ランシス、あとメイドさん――正確には『団長』だ」

メイド「では私室で倒れていたのはどなたでしょうか?」

上条「あれは『人』じゃない。『団長』の霊装だ」

メイド「アルフレド様の――」

ランシス「……それも『団長』が霊装で演じてた、それだけ」

メイド「では私も?」

上条「お前の『体』は霊装。ただし、多分あと何日か経つと死ぬ予定だったんだろ?」

上条「そん時も頸の後ろに、抉り取られたような痕跡の屍体――の『フリ』をする、と」

上条「学園都市とは違う。ありゃ『一つの体を複数の脳で稼働させよう』って話だった」

上条「お前は反対、『一つの脳で複数の体を切り替えて使う』っつー話」

上条「だから『アルフレドとあんたが一緒に動いていた』事がない。何故なら体は何個かあっても、持ってる脳は一つだからだ」

ランシス「……『抉り取られた傷』……も、そこへ『本体』を装着する仕組みなんだよね……?」

ランシス「あなた――『団長』の本体である『カノプス壺』が」

上条「つまり、以上をまとめると――」 カリカリカリッ

A.館では誰も死んでいない
B.屍体に見えたのは『団長』の霊装
C.その本体は『屍体』の頸の後ろ――『抉り取られた跡』に装着する『カノプス壺』
763 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 12:55:50.47 ID:5Av7PpV00(9/21)
ランシス「……ついでに言えば、あなたは最初から解決させるつもりなんてなく……だから」

ランシス「……起こってもいない殺人事件……起きたような言い回しをし、あたかもここで事件が起きているかに見せかけたかった……」

メイド「……」

上条「ついでに3――『最終目的は何?』について、あぁこれは完全な憶測でしかねぇけど」

上条「それも『消費効率』なんじゃねぇかと考えてる」

ランシス「……私達に問題を解かせない……つまり、それは『絶対にここから出したくない』って意味だし……?」

ランシス「……こっちの臓器を人質にとって、ずっと立て籠もっていられる――と、思ったら大間違い」

ランシス「これだけ大きな術式、しかも非効率極まりない……」

ラシンス「……だから仮に私達を上手く騙せたとしても、永遠に維持はムリ……だし」

ランシス「だからあなたは『効率的』な術式を組んだ……そう、例えば」

ランシス「『効果範囲を最小限まで絞る』、とか……」

上条「逆に、だ。あんたがテキトーなぬいぐるみや、俺達の知らない第三者をNPCにしたとしよう」

上条「そうすると、そいつらを知らない俺達は『こいつらNPCじゃね』って疑う。ぬいぐるみだったら余計にな」

上条「そうすりゃ『なんでコイツここまで魔力切り詰めてんの?』って疑われて、そこから『解決の出来ない事件』だってバレる」

上条「だからアルフレドのNPCまで用意して、『あ、コイツの魔力ケチってなくね?』と思わせたかった、と」

ランシス「……以上が『真相の解明』……私達の出した、答え」

ランシス「……どう……?」

メイド「……上条当麻様、ランシス様――」

上条「っ!」

ランシス「……」

メイト「――見事、『正解』でございます……!」

上条「よっしゃ!」

ランシス「……うんっ!」
764 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 12:58:24.79 ID:5Av7PpV00(10/21)
メイド「いや、意外で御座います。僅か二日で真相に至るとは」

メイド「ですが……幾つか足りない所がありましたので補足したいかと存じます」

ランシス「……いいから、体、返して……」

メイド「というかですね。クリストフの『体』を造ったのに、お披露目する機会が一度も御座いませんでした」

上条「そっちの都合だろ」

メイド「いや、双子ですので同じボディを使い回すつもりでしたが」

上条「造ってなくね?」

メイド「ですから『それ』も効率重視なんですよ。霊装を何個も持ち込むと、余分に魔力を消費致しますので」

メイド「その点、双子であれば同じ体を使い回して置けば『効率的』でしょう?」

上条「凄いのかバカなのか……」

メイド「両方でしょう。お話を伺うに学園都市の方々も中々狂っていて好みですよ」

ランシス「……返して」

メイド「より正確にはもう一つだけ間違いもあるのですが……まぁそちらは謎のままにしておきましょう」

上条「負け惜しみにしか聞こねぇが。つか、ランシスの腎臓返せよ」

メイド「ではそのように」 パチッ

上条(ランシスへ近寄りもせず指を鳴らすメイドさん)

ランシス「……?」 ポンポン

上条(と、両手で体を叩いているが、分かるんだろうか?……分かる訳ねぇだろうが)

メイド「――都市伝説の一つにこんなお話が御座います。『親切な医者』というタイトルでしたか」

メイド「ある時、道を歩いていたら調子が悪くなります。すると近くに居た男性が『私は医者だ。診て上げよう』と彼の診療所まで連れて行かれ」

メイド「そこでレントゲンを撮ると『○○が大変だ!これは直ぐに出術をしなければ!』」

メイド「当然お金も持ち合わせていないし、急な話で戸惑いますが。医者はこう言いました」

メイド「『私は大勢の人を助けたい。君からびた一文金銭を取るつもりはない』」

メイド「その後、その日の内に手術が行われ、無事に退院します――が!」

メイド「家に帰って体重計に乗ると、何と昨日とは20kgも痩せているではないですか!」

メイド「どういう事だ、とその医者へ詰め寄ると、彼は平気な顔でこう言いました」

メイド「『言ったじゃないか。”大勢の人を助けたい”って』と」

ランシス「……臓器、抜かれてた……?」

メイド「似たような話は以前から御座います。30年程前には宇宙人、最近は違法臓器の密売とかで」

上条「……で、その心は?」

メイド「酷い事をする人間も居ますね」

上条「お前だよっ!?まさに今!ちょい前まで答えの出ないクイズやらして内臓抜いてたし!」

メイド「あ、いえいえ臓器は結構重いので、体重計に乗って頂ければ軽重で分かると思いますよ、というお話で御座います」

メイド「ランシス様、お気になるようでしたら、丁度いい事に体重計がここに一つ用意しておりますが」

ランシス「……あれは敵の罠……っ!」

上条「まさかっ……!?」

ランシス「旅の間お料理が美味しくて、最近ほんのちょっとだけダイエットしようとか考えてない……!」

ランシス「まさかこれを見越してわざわざ美味しい食事を出していた……!?」

メイド「――『彼』が味方だと、一体いつから思っていました……?」

ラシンス「……くっ!?」

上条「『くっ!?』じゃねーよ!即興でなに人を『実は潜り込んでいた敵』みたいにしやがんだ!仲良いなお前ら!」
765 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:01:10.46 ID:5Av7PpV00(11/21)
上条「……いやいや、そうじゃねぇよ。そんな話じゃなくてだ」

上条「てかさっさと俺達を帰してくれよ、つーか術式解除しろ。今すぐやれ」

メイド「おや上条様、帰してくれ、とは一体?」

上条「惚けんなよ。『真相の解明』をしたら、って約束しただろうが」

メイド「お言葉ですが、私一言足りとも『真相を解明したら術式を解く』なんて約束、した憶えなど御座いませんよ?」

上条「お前……ふざけてんのかっ……!?」

メイド「違いますね、上条様。それは違ごう御座います」

メイド「私達は『狂っている』んですから、くれぐれも誤解などなさいませんよう、謹んで申し上げたく存じます」

上条「……こっちで白黒つけたいんだったら、付き合うけどな?」

ランシス「……ストレス、意外と溜まってる、し?」

メイド「遠慮致します。こちらの『体』は戦闘向けではありませんので――というか、そもそも、お二人は大変な勘違いをなさっているようで」

上条「……なに?」

メイド「『悪夢館(Nightmare residence)が解除出来ると誰が言った』のでしょうか?」

上条「……は?それって――」

ランシス「……ない、の?」

メイド「試せば分かるかと存じます――しかし!」 ズプリッ

上条「――っ!?逃げ――」

上条(とぷん、と。彼女――『団長』の姿は床に沈み、消える)

上条(俺が『右手』を使う前に、そしてランシスが『死の爪船(ナグルファル)』を一閃させる前に!)

メイド「あっははははははははははははははははははははっ!勝ちました!ゲームには負けましたが、私のっ勝ちですっ!」

上条「姿を見せやがれ!」

メイド「ここは『私』の造った夢の世界!物理法則は概ね現実に即していますが、ねじ曲げられる意のままにっ!」

メイド「何が『廃れた術式』か!何が『メジャーじゃない』だ!」

メイド「こんなにも強い!素晴らしいのに!思いのままに動く、私の世界がだ!」

メイド「さぁ私の中で永遠に迷い続けろよ『幻想殺し』!答えなどない!真実すらもねじ曲げる『夢』の中で!」

上条「クソッ……!これじゃ――」

ランシス「……私はランシス、魔術結社『新たなる光』の魔術師……」

上条「……ランシス……?」

ランシス「……魔法名、『Lancelot225(弑逆の騎士は行動で示す)』……!」
766 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:04:22.76 ID:5Av7PpV00(12/21)
メイド「その『爪』は私へ届きませんよ?もうとっくに、あなた方の射程距離からは逃れられていますから」

ランシス「……うん、まぁ、そうだよね?ここからじゃ私の『死の爪船』は届かない……」

ランシス「……けど『今』は、だから」

メイド「と、言いま――あ――」

上条「あん?」

メイド「――くっ!?」

上条(今まで余裕だった『団長』の声が、急に……?一体何があって……?)

ランシス「……えぇと、私の先生はパパが夢魔(アルプ)で大変だったって言ってた……」

上条「夢魔?悪魔って奴か、そりゃ」

ランシス「ママが『夜更かしする子はパパに攫われるわよ?』……可哀想」

上条「即物的だな!しかも仲良さげじゃねぇか!」

ランシス「だから私に『夢』関係の魔術を教えてくれてたし……その時に、言ってた」

ランシス「『夢』って魔術は、どうやっても廃れる運命にあるんだ……って、それは何故か」

ランシス「夢を自由に操れる……それは逆に『現実と乖離する』、そう意味している……」

ランシス「……確かに、素敵な夢を見たり、物語の主人公みたいに、思い通りの生き方を出来る……楽しいかも、知れない」

ランシス「でもきっと……楽しすぎる夢は、二度と目覚めたくはなくなる……」

メイド「な、なんだこれはっ!?私の身に、何が、起きて、いる……っ!?」

ランシス「そうやって『自分が正しいと常に錯覚』すれば……正しい認識なんか出来なくなって……」

ランシス「全部が思い通りに行く世界で……そういう『甘さ』は」

ランシス「……命取り、かも?」

メイド「お前がっ!?私に、何を、したっ……!?」

ランシス「……私の『死の爪船』はニブルヘイム(影の国)に居る、死人達の爪で造られている船……」

ランシス「……神々の黄昏で巨人や死人を乗せてアースガルドへ導き、世界を終焉へと至らせる……」

ランシス「……だからゲルマン系の人達は、黄昏を遅らせるために死者を埋葬する時には、爪を切る習慣がある……これ、余談」
767 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:06:19.22 ID:5Av7PpV00(13/21)
メイド「私の肌が!取り替えたばかりなのに皮膚が剥がれてシミが湧く!?これは何だっ!?」

ランシス「『死の爪船』は『老い』を運ぶ……その爪に切り裂かれたモノへ」

メイド「ゲフっ、ゴッホゴホゴホゴフッ!?気管がっ、どうして異常を見せ、る……?」

ランシス「『死の爪船』は『病い』を運ぶ……その爪に貫かれたモノへ」

メイド「か、体が……動か……ぐっ!?」

メイド「胸の奥を締め付ける鎖のような……!?」

ランシス「『死の爪船』は『憂い』を運ぶ……その爪に触れたモノへ」

メイド「馬鹿な……!?一度も触れてなど……!」

ランシス「……この霊装は私が着けている『爪』が本体じゃない……こっちは『影』……」

ランシス「『影の国』で造られた船だから……『爪』の本体は『影』の方……」

上条「もしかして――その爪の『影』に触れるのが発動条件なのか?」

ランシス「……攻撃なんてずっと前から、していた……」

ランシス「……食堂へ入った時から、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……ッ!」

ランシス「あなたが私達の話を聞いてる内に、ずっと……!」

メイド「……自分の臓器が惜しくないというのか……!?」

ランシス「……あぁ、わかった。ずっとに不思議に思ってたけど」

ランシス「……あなたはきっと、自分が大事、死にたくない、ずっと生きていたい……だから、自分のスペアを造った」

ランシス「だから『そんなモノ』に執着する……の」

メイド「生きていたいだろ!?誰だって死ぬのは怖――」

ランシス「……私は、違う……!」

上条「ラシンス……」

ランシス「死ぬ”なんか”よりもずっと怖い事は、いくらでもある……私は、知ってる……」

メイド「……無茶苦茶だ……!お前達こそ狂ってる……!」

ランシス「かも、しれ――」

上条「――いや、おかしいのはやっぱお前の方だよ、『団長』」

メイド「何?魔術も使えないお前が何を……!」

上条「だな、そこは否定しないし、出来ないんだが。少なくともお前よりかは知ってると思うぜ?」
768 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:07:57.36 ID:5Av7PpV00(14/21)
上条「人間はどうやっても死ぬんだよ。寿命だったり、事故だったり、戦いで死んだり」

上条「……まぁ、納得出来るかどうか別にしても、そりゃ当たり前の話って訳で」

上条「でもな、『それ』は大体どこでも、いつの時代でも同じじゃねぇのか?」

上条「人間、決められただけの寿命、持って生まれたカードで、精一杯生きていくんだよ!誰だってな!」

上条「俺達よりか長生きなんだろうが、そんな事も知らねぇで!分からないまま無駄に生きてお前は!」

上条「もしも誰からも、誰か一人だけでも受け入れられるんだったら、今お前の回りには仲間がいる筈だろうが!」

上条「……魔術のセオリーなんて分かんねぇし、理解も出来ないんだと思う。つーか素人舐めんな!何言ってるか分かってねぇかも知んねぇけど!」

上条「だから――ランシスは異常なんかじゃねぇよ!テメェの命賭けられる――」

上条「――大切な、仲間を持ってるフツーの人間だ!」

ランシス「……」

上条「なっ?そうだろ?」

ランシス「……う、うんうん」 コクコクッ

メイド「……」

ランシス「……ホントの事言えば――この世界、私は嫌いじゃなかった……」

上条「なに?なんでだよ」

ランシス「打算だと思うけど、しようと思えば……例えばグログロでゴアゴアなスプラッタ、出来たよね……?」

上条「……想像したくもねぇけどな」

ランシス「……そうすれば、きっと私達にも余裕がなくて。解決は長引いた……筈」

ランシス「……まぁ、手も繋げたし、独り占め……?」

上条「その例えはオカシイ!?」

ランシス「……うん、まぁ悪いけど……そろそろ帰らなくちゃならない、から」

ランシス「こんな私でも待っている人が居る……世界へ」

上条(ランシスはそう言うと、ずっと起動している『死の爪船』を床へ刺す)

上条(ちなみにこの間、つーかさっき起きてからずっと。俺は彼女の手を握っていなかった。それはつまり)

上条(彼女が『封印していたモノ』を解き放つ準備が出来ている訳で――)

上条(――ランシスは、謳う)
769 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:13:36.03 ID:5Av7PpV00(15/21)
ランシス「『We sing soldier's song. 』」
(我等は歌う 兵士の歌を)

ランシス「『Singing voice exaltedly stirred up. 』」
(意気揚々と奮い立つ歌声)

ランシス「『Burn and while enclosing the flame that stands. 』」
(燃え立つ炎を囲みながら)

ランシス「『It is stars in heaven in overhead. 』」
(頭上には満天の星)

ランシス「『A approaching fight cannot finish being waited for, and while waiting for the light at daybreak. 』」
(来るべき戦いを待ちきれず、夜明けの光を待ちながら)

ランシス「『We sing in the silence at night. 』」
(夜の静けさの中 我等は歌う)

ランシス「『Soldier's song. 』」
(兵士の歌を)

ランシス「『……My sword exists for the friend――』」
(……我が剣は友のために在り)

ラシンス「『――Aroundight expressed in loud voices!』」
(――声高らかに謳おう魔剣よ!)

上条(詠唱が終ると共につぷり、とランシスは自らの影の中へ手を――『爪』を潜り込ませる)

上条(数秒程まさぐる動きがした後、何の抵抗もなくするりと引き抜かれたのは――)

上条(――剣の形をした、おぞましい『何か』だった)

上条「……っ!?」

上条(血がついてる訳でもなく、ただ黒く暗い何か。剣と呼ぶには恐ろしい程の何かを圧縮して造ったような、そんなモノ!)

上条(夢の中の夢――で一度は目にした筈が!同じものとは思えない程に異様だ!)

上条(……俺は知らず知らずの内に『右手』で、自分を庇うように上げていると気づき)

上条(だか、しかし)

ランシス「これは『負』の剣。友を斬り、主の血を吸った罪深い聖剣……」

ランシス「でも、それだから、それゆえに……あくまでも『聖』なる儀式だった、オシリス神の術式に効果は覿面……」

ランシス「……多分のこの『夢』も、エジプトの死後に行われる……『死者の心臓を秤にかける』術式……」

ランシス「……だけど」

上条(『魔剣』を翳すランシスの表情が、僅かに曇ったのを見て)
770 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:14:56.44 ID:5Av7PpV00(16/21)
上条「……ヤベぇ。かっけぇな、それ?」

ランシス「…………え?」

上条「『魔剣・特異点・お兄様』は三大中二病じゃね?俺もパラディンになってガッカリしたクチだし?」

上条「なんつーかロマンだよな!『魔剣』!」

上条(バカはバカなりに意地を見せる)

ランシス「……ダメ、これは……うん、最初は嫌いだったけど、それは……」

ランシス「……でも今は……私の、剣、だから……!」

上条(その瞳に力が宿り、口元に笑みが戻った事で珍しく失敗しなかったのだな、と確信する!)

ランシス「……レッサーになんて言おう……?」

上条(……間違ってないよね?俺、選択肢ミスってないよね?)

ランシス「……ま、一度ある事は二度あるし……?」

上条「よーしランシスさん!俺達の世界へ帰ろっかヒアウイゴーっ!」

ランシス「……なんか間違ってるし……」

ザシュッ………………!!!

上条(『魔剣』の一振りで周囲へ闇が氾濫してい――)
771 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:16:30.58 ID:5Av7PpV00(17/21)
――キャンプ場

ランシス「……あ、ヤバ――ふひっ」

レッサー「は――?」

レッサー「……」

レッサー「……はて?今、膨大な魔力に呑み込まれたような……?」

ランシス「……あー、長かった。てか溜めた魔力、殆ど遣っちゃった……」

レッサー「えぇと、もしかして?」

ランシス「……ん。ザックリしてきた……多分、オシリス神の術式で、『夢』」

ランシス「『殺し屋人形団』の、『団長』……」

レッサー「相性ではあなたが一番有利でしたもんね。まぁ巻き込まれたとは言え不幸中の幸いでしたか」

レッサー「そいつぁ大変お疲れ様でした――よし!上条さんをf×ckする権利をやろう!」

ランシス「……ん、貰っとく」

レッサー「なーちゃってーAHAHAHAHAHAN?ツッコミ役が誰にも居ないからボケばっかで話が進まないじゃないですかー」

レッサー「っていうかですね、このパーティ天然着やせボケという、ある種究極の男の願望的な存在が居て、私の存在価値がイマイチ――」

レッサー「――ってランシス?ランシスさん?あなたイマ何か聞き捨てならない事を言っちゃったりしませんか?ねぇ?」

ランシス「――レッサー……?」

レッサー「な、なんです?」

ランシス「……ごめん、ね?」

レッサー「だから!ゴメンってなんですかっゴメンって!?」

レッサー「ベイロープからフロリスからランシスまで!どうして私へ謝るのかと濃い乳時間問い詰めたい!」

ラシンス「……それ、『小一時間』の打ち間違い……」

レッサー「どんな風俗ですかっ!?興味あるじゃないですかっ!」

ランシス「……そっち?」

レッサー「現実逃避に決まってるじゃないですか!言わせんなよコノヤロー!」

レッサー「てかこれ一歩間違ったら修羅場で死屍累々!しかも私が先にツバ着けといたのに全員で裏切るし!」

ランシス「……あ、そういえば解決したらご褒美貰えるんだっけかな……?」

レッサー「聞いて下さいよ私の話をっ!?つーか『新たなる光』の信頼関係ボロッボロじゃないですか!?」

レッサー「ねぇっ!?確かにキチガ×カルテットの半分は墜としましたけど!あまりにも私達が払った代償が重いじゃないですか!」

レッサー「つーかあなた前の前の前の前の時にも言いましたけど、結構手ぇ早ぇっつーか、計算高かないでしょうかねっ分かりませんっ!」

ランシス「あ、ごめん。先行ってるね……」

レッサー「イクってどういう事ですか!?先にイクって卑猥な!つーか私もイキたいんですけどどうすればいいんですかねっ!?」
772 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:17:58.53 ID:5Av7PpV00(18/21)
――朝市

鳴護「レッサーちゃん、なんか騒いでる……」

ベイロープ「何やってんのだわ、あの恥女」

フロリス「薄い本にありそうな卑猥な台詞を連呼してる……誰得?」

上条「ま、まぁまぁ!日本語だし誰も気づかないって!」

フロリス「昔っから仲が良いからねーあの二人、色んな意味でうんうん」

上条「仲が良いのは結構だが――あれ?」

鳴護「どしたの?何か気になった?」

上条「あぁうん、朝市なんて始めて来たし。気になるのは大体全部なんだけどさ。そうじゃなくって」

上条「今、俺達は夢を見ていたような……?」

フロリス「夢?起きたばっかジャンか」

上条「あぁいや、そうじゃなくって、そういう話でもなくてだ」

ランシス「……どったの……?」

上条「ランシス?あるぇ?ちょい前まで俺達――」

ランシス「……あ、あっちの方にジャムの露天が……」

上条「聞けよ話!?」

フロリス「おっ行く行く!オレンジの買ーおっと」

ベイロープ「ブラッドベリーあるといいけど」

鳴護「へー、手作りなんですねー?」

ランシス「……ん、農家の奥さんが趣味でやってたりする」

上条「聞きなさいよ人の話をさっ!何みんなでスルーしやがる!?」

フロリス「ぶっちゃけ夢がどうこう言い出したらフツー、引く」

上条「……ですよねー」

おばさん「いらっしゃい!ウチで採れた果物をジャムにしたんだよ。一つお土産にどうだい?」

鳴護「わー、瓶に手書きのラベルですかー。なんか可愛い」

フロリス「保存料もとか入ってないから安全だぜ?……ま、足も早いんだけど」

上条「日本語上手いな、お前ら」

ベイロープ「あんまりツッコムのは野暮よね」
773 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:19:57.16 ID:5Av7PpV00(19/21)
ランシス「……ん?」

上条「珍しいのでもあったか?」

ランシス「この瓶……」

上条「……ラベルの代わりにメモが貼り付けられてる、と。何々――」

上条「――『I'm here! 』……?」

上条「……うん?何かの待ち合わせのメモと混じったのか?」

ランシス「ちょっと、それ貸して……?」

上条「いいけど――って重っ!?結構あんぞコレ!」

ランシス「問題ない、こっちじゃ『帯』も霊装も身につけてる――」

ランシス「――あ、手が滑った」

ガシャーーンッ!!!

上条「おまっ!?今絶対に振り上げてたし!手が滑ったってレベルじゃねぇな!?」

ランシス「……ごめんなさい、おばちゃん……弁償する」

おばちゃん「ん?いーのよ、別に瓶の一つぐらい。その代わりに何か買っていきな」

ランシス「……うん、ありがとう」

上条(ランシスが叩き付けて割った瓶から、真っ黒なヘドロっぽいジャムが辺りへ飛び散った。何?何の果物?)

上条(……かと思えば日光に当たった側からジューっと蒸発していく……ドライアイス?メタンハイドレイト?)

おばちゃん「……変だよねぇ。そんなジャム、ウチにおいてあったっけ……?」

レッサー「お、こっちのこれお高いんじゃないですかね?向こうの店では半額でしたよー?」

おばちゃん「残念だったね悪ガキ!この朝市じゃジャム売ってるのはここだけだよ!」

レッサー「やりますねっ露天のおばちゃん――はっ!?まさか月極(げっきょく)グループの使いかっ!?」

鳴護「レッサーちゃん、それ”つきぎめ”」
774 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/08(月) 13:20:59.33 ID:5Av7PpV00(20/21)
フロリス「てーかさ中二病発症させるの禁止」

ベイロープ「自制しろ一応リーダー」

レッサー「一応って!?自制をするのが一応なのかっ、それともリーダーなのが一応なのかっ、場合によっちゃ裁判沙汰ですよっ!」

ベイロープ「どう考えても前でしょーが一応リーダー」

レッサー「つまり今のは、一応が『どう考える』へかかるのか、それとも『リーダー』を修飾するのかっ、いやぁ言葉って難しいですねぇ」

鳴護「今度は漢字おじさんになってる」

フロリス「おーい、帰って来ーいレッサー?現実から逃げても、大抵現実は追いかけてくるんだぜー?」

上条(ベイロープに精神的な意味でシバかれそうになってるレッサー、それを見て笑うアリサとフロリス)

上条(その光景を見て『帰って来られた』と俺は一人で安堵の息を吐く――ついでに)

上条(何故か俺の『右手』と手を繋いでいる”彼女”へ、野暮だろうと思ったが、こう聞いたんだ)

上条「な、ランシス」

ランシス「うん……?」

上条「あれは、夢か?それとも現実?」

ランシス「……んーとねーえ、それはー……」

上条「それは?」

ランシス「――『アイシテル』」



――胎魔のオラトリオ・第三章 『悪夢館殺人事件』 −終−
775 田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2014/09/08(月) 13:22:15.98 ID:5Av7PpV00(21/21)
ランシスさん編の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を
来週は予告編入れて、再来週からレッサーさん編予定。スレはそのまま使う方向で

去年の今頃、なにやってたんだろう?と疑問に思って前のSSを覗いてみれば、スレ立てたのが9月3日(火)
結構長い事やってんですねー。その割には人気ありませんが
776 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/08(月) 13:50:20.70 ID:Zcrrlmnco(1)
乙です
777 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/08(月) 13:58:57.33 ID:eCKb5lQ50(1)
乙です!
遂にレッサー編か‥
正直新たなる光が大好きな俺からしたら終わって欲しくないな‥
778 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage] 2014/09/08(月) 14:10:13.99 ID:HgybL7WtO携(1)

779 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ] 2014/09/08(月) 20:22:01.42 ID:2zyntKuFo(1/2)
レッサー編?

ここはレッサー編だけ無かったりすると笑える
780 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/08(月) 20:51:07.52 ID:Dhkj17kC0(1)
かくして、ナイトメアワールドから生還したランシスさんご一行でした。ラリホー。
さてレッサーさんは「お前の願いを三つ言え!」?
781 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ] 2014/09/08(月) 23:10:34.05 ID:2zyntKuFo(2/2)
Hell 2 you!
782 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/09(火) 19:25:18.13 ID:7BWbeXxDO携(1)

やったね、レッサー
ようやくフラグを建てられるよ

てか、ベイロープがリーダーだと思ってました

783 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 11:55:47.36 ID:wBeJ44DSO携(1)

784 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/11(木) 18:26:23.76 ID:JmdL+ZQL0(1)
<<782


と言うか…リーダーベイロープじゃなかった?
785 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 18:53:48.76 ID:ckdfZ9LSO携(1)
つーか乗じて言うとさ、ずっと思ってたんだけどさ、

ここのベイロープさん口調が「〜だわ」じゃん?

原作そんな口調じゃなかったことね?いや「〜だわ」口調もわりと好きだけども
786 sage 2014/09/14(日) 22:53:38.63 ID:SSSxVOdm0(1)
はいむら先生の画集第二弾……描き下ろしが新たなる光の四人だった、よっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!
787 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/16(火) 10:37:54.83 ID:kliE6FzC0(1/17)
>>780
レッサー「フランス[ピーーー]ドイツ[ピーーー]イタリア[ピーーー]。あとアルゼンチンは直々にぶっ飛ばします!」
レッサー「あ、もしくは三つの願い全部使ってトニー=ブレアのクソッタレが可能な限り無惨な死に方をしますよーに」
(※スコットランド独立の引き金引いた元首相。スコットランド出身の俗物)

口癖は原作で車に乗ってるベイロープがレッサーを怒鳴りつける際、「ケツが邪魔で見えないのだわ!」とだけ
リーダーかどうかは原作ではなくSSの設定だと思ってください
788 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 10:43:12.21 ID:kliE6FzC0(2/17)
――揺蕩う微睡みは羊水の中に

 その中に、あたしは浮かんでいました。
 とても温かくて、安心出来て、心が満たされてて。

 お布団の中で微睡んでいるような、休日の朝に時間を気にせず、二度寝出来るような。

 ずっと前から知っていて……?そう、これはきっと、”私”が知らない、知らずに居たもので。
 もしも名前を付けるのであれば、『おかあさん』、なのかも知れません。

 人は生まれる前からずっとおかあさんに一緒に居るから。この世界へ生まれ落ちる際には悲しくて泣いちゃうんだって。
 もしも『ここ』がそうであるならば、何となく気持ちは分かっちゃうような……?良くないのかも知れないけど。

 ……。

 えぇと、確かあたしは……”私”と一緒にエンデュミオンを……止め、んだっけ。
 ”私”と一緒になって――うん、そうだった。

 地上への落下は避けられたのかな?インデックスちゃんや当麻君は怪我しなかったかな?
 御坂さん達も――。
789 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 10:45:09.10 ID:kliE6FzC0(3/17)
……。

 ……なんだろう、凄く、眠くて……。
 意識が……意識が、溶け――。

 このままじゃ……”あたし”が消え――っ!?

 ……。

 ……あぁでも、”あたし”はニンゲンじゃなかったんだっけ……?
 『奇蹟』を望む一人の女の子の願いが――”あたし”を創って。

 ”私”の殆どは元へ戻っ……だから、残った”あたし”は。
 借り物の命だった、あたし、には――。

 ……。

 ――ヤダっ!生きていたいよ……!死にたくなんかない……!

 もっと、もっとインデックスちゃんとお喋りしたいし!
 御坂さん達とも遊びに行く約束したのに!
 このまま消えるなんて……イヤっ!

 ……。

 ……助け……当――。
790 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 10:48:20.60 ID:kliE6FzC0(4/17)
『……』

 ………………意識が……戻っ……て……?

『……』

 溶け出していた”あたし”がまた、一つに……これは……そうじゃ、ない?あなたは……?
 あの世界に――もう一度”あたし”を生まれて――産んでくれる……?

『……』

 ……待って!あたしまだあなたに何も!
 あなたは!あなたがあたしの――!

 ――おかあ――。

 ザザザザザザザザザザッ――。
791 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 10:50:04.02 ID:kliE6FzC0(5/17)
――日本 『安曇氏族(クラン・ディープス)』本部

五和「……いいですか、建宮さん?あちらは日本全国数万社の『安曇神社』を間接的に束ねる方です」

五和「くれぐれも、くーれーぐーれーもっ!失礼のないように!分かってますよねっ!?」

建宮「……あぁいやうん、五和さんの仰る事はご尤もだと思うし、俺も最近悪フザケが酷かったのは悪かったのよ?ま、そこいらは反省してるのよ」

建宮「でもなんつーか、教皇代理っつーか、魔術的にも立場的にも先達な訳であり、そもそも『安曇氏族』とは知り合いだった俺」

五和「ホラいらっしゃいましたよ。平伏して下さいっ」

建宮「あ、はい」

安曇棟梁「――畏まらなくていい。立場は違えど魔術師同士、鯱張る必要はない」

建宮「なのよなー」

五和「教皇代理!」

安曇棟梁「……また今回の件、安曇達の与り知らぬ所とはいえ、一族が迷惑をかけた。謝罪しよう」

建宮「おう、受け入れるのよ。天草式十字凄教教皇代理、建宮斎字の名の下に安曇氏族はこれ以上名誉を失わないと宣言するのよな」

五和「建宮さん……」

建宮「政治にはある程度のプロレスも必要なのよ」

安曇棟梁「顔見知りであっても知らんぷりをする事もまぁ……場合によっては有効だろう。さて」

五和「驚かれないんですね、その」

建宮「以前ちょいとした縁で少々なのよな……ま、その話はいつかするとして、今は大事な話をするのよ」

安曇棟梁「と、言われてもな。五和殿にも話したが、我らは可能な限りの情報を開示している」

安曇棟梁「その上、日本の公文書や神社本庁が所蔵している歴史書や神話の類は、禁書目録が記憶している筈だ」

安曇棟梁「これ以上情報を寄越せ、と言われても正直我らには思い当たる所がない」

五和「と、仰るばかりで」

建宮「……うーむむむ、なのよ」

安曇棟梁「そもそも、で言うのであれば……いや、安曇阿阪の『ミシャグジ神』」

安曇棟梁「我らが入植し、彼の神を習合させたのは今から1400年以上も前の話」

安曇棟梁「安曇阿阪は我らの氏族名を名乗っているが、我らとは術式体系からして違う。教えられる事などない」

建宮「ま、そう……なのよな。常識的に考えてもそう言われるのは分かっていたのよ」

五和「ですよねー。無茶ブリですもんねー」

建宮「――が!これはあくまでも一般論なのよ、と前置きをしての話」

建宮「よしんば知っていたとしても、『自分達は”野獣庭園”とは無関係です』っつースタンスを取るために、知らず存ぜぬで通すのがベターなのよな」

建宮「多分『秘術』の一つや二つあるんだろうが、そりゃどこの魔術結社でも同じ」

建宮「下手に手の内をバラすとなれば、対抗策も打たれる……のよ?」

五和「……棟梁さん?」
792 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 10:53:16.19 ID:kliE6FzC0(6/17)
安曇棟梁「……では私も一般論だが、私の昔の知り合いがこう言っていたな」

安曇棟梁「『救われない者には救いの手を』、だったか。単純な言葉だが、それ故に難しくもある。実行に移すには」

安曇棟梁「その馬鹿者どもは利益にも何にもならない事を進んでする人間達だった」

安曇棟梁「……まぁ正直、羨ましくもあったが。その姿勢には少なからず共感と尊敬を集めていた――が」

安曇棟梁「気がついたら居なくなってたんだが?」

建宮「……あー……」

安曇棟梁「今ではどこか遠くの島国で、文字通りの『狗』に成り下がっていると聞く」

安曇棟梁「そんな相手を警戒こそすれ、胸襟を開けと言うのは無視筋だ」

建宮「……おいおいお前さん、ちぃと言葉が過ぎるのよな?」

五和「教皇代理!」

建宮「分かってるのよ五和。俺はこれぐらいでブチキレたりはしないのよ」

五和「そいつ、殺します!」

建宮「分かってなかったのはお前の方よな?つーか頭を冷やすのよ」

安曇棟梁「……お前達の性格上、この国を離れてでも救いたい者があったのだろう?個人的には理解しないでもないが」

安曇棟梁「だがこの国に産まれ、この国で生き、この国の土へ還る覚悟を決めた人間にとって、甚だ不愉快である、とも」

建宮「覚悟の上なのよ。言い訳も否定もするつもりはないのよ。嘲りたければ、裏切り者と罵るのも好きにすれば良いのよな」

建宮「我らはただ、我らの生き様を続けるだけのなのよ」

安曇棟梁「好きにしろ。九州は元々我らが根拠地でもある」

安曇棟梁「要が消え、濁った泥沼から湧く五月蝿は我らが打ち払う。好きにすれば良いさ」

建宮「恩に着るのよ」

五和「……あのぅ、もしかして、なんですが……?」

建宮「少年とヤンキー神父の関係に似ているのよな、俺達は」

安曇棟梁「例えが分からないが、縁があるとすれば腐れ縁だな。面白い話でもない……さて」
793 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 10:57:37.36 ID:kliE6FzC0(7/17)
建宮「ちゅー事でいい加減全部ゲロって欲しいのよ」

安曇棟梁「無理だ、というか、無駄だな。それは」

安曇棟梁「我々の氏神――安曇大神の情報は開示してある。分かっているんだろう?」

建宮「綿津見――海神なのよな」

安曇棟梁「そうだ。海の神であり、航海の神でもある」

五和「古事記に出てくる『阿曇磯良(あずみのいそら)』ですよね」

安曇棟梁「五和殿、その、神域で御名をみだりに呼ぶのは」

五和「すいませんっ!……ていうか、ここも神域ですか?」

建宮「建物の屋根の形、あれは崩してあるが寝殿造の寝殿なのよな」

安曇棟梁「……まぁ、今はここにおわす訳ではなし。また一々怒りもしないだろうが」

建宮「あぁ俺らが聞きたいのは彼の神じゃなく、『ミシャグジ神』の方なのよ」

安曇棟梁「何故だ?」

五和「えっ!?そうだったんですかっ!?」

建宮「……五和さん?お前さん一体今まで何をしていたのよ?」

五和「え、えっとですね?」

安曇棟梁「女衆から朝晩料理を熱心に習っている、と評判だな」

五和「ち、違うんです!これは日常の中にある術式を取り入れるためにですね!」

五和「決して『こうなったら胃袋から掴むしか……!』なんって疚しい気持ちじゃ!えぇもう本当に!」

建宮「……まぁ良いのよな。出来ればウチのお嬢様にも見習って欲しいぐらいだが」

安曇棟梁「ミシャグジ神か……」

建宮「イギリス清教の関係者が妙に気にしてるっちゅーか、『濁音協会』の横の繋がりを知りたいそうなのよ」

安曇棟梁「つまり?」

建宮「もしかして『崇める神』繋がりなんじゃねぇか、と当りを付けた寸法なのよな」

安曇棟梁「ミシャグジ神の持っている属性から、相手の傾向を読むか……ふむ」

安曇棟梁「……我らの神は海神であり、そこから派生して航海、暦、天候の神でもあるな」

五和「航海は分かりますけど、暦と天候はどうして?」

建宮「昔の航海術は月や星、天体の動きで自分達の位置を把握していたのよ」

安曇棟梁「船乗りが北極星を頼りに船を動かしたのと同じ。北関東一帯で崇められる彼の蕃神も、元々は古い天候の――」
794 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 10:59:11.51 ID:kliE6FzC0(8/17)


ジジッ


795 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 11:01:47.89 ID:kliE6FzC0(9/17)
安曇棟梁「その流れを汲んで、我が神は月の神であったとも言われてはいる」

五和「海の神様が、空に浮かぶ月に関係あると?」

建宮「まーるいお月様も、天へ昇る前は地平線の下――海の向こう側に隠れているのよな?」

五和「……成程。昔は世界が丸いなんて考えもしませんでしたもんね」

安曇棟梁「その神とミシャグジ神は習合され、合一の存在となった。然るにある程度の共通性があり――」

建宮「どうしたのよ?」

安曇棟梁「……なぁ建宮斎字。断片的にしか聞いていない、我らはな」

安曇棟梁「だが、だからこそ。部外者だから言える事があるとも思う」

建宮「何なのよ」

安曇棟梁「連中は『クトゥルー』を崇めていると表しているんだったな?それは本当にか?」

建宮「ん?あぁまぁ一応は、なのよ。専門家はブラフだって結論に行き着きそうなのよな」

建宮「そうじゃなければわざわざ日本へ戻って、知り合いへ頭を下げには来ないのよ」

五和「いや建宮さん、下げてませんよね……?」

安曇棟梁「……そうか。ならばこれは思い過ごしなんだろうな、忘れてくれ」

建宮「何なのよ?笑ったりはしないから、言うだけ言ってみるのよな」

安曇棟梁「……」

五和「手かがりになればラッキーかも知れませんし、教皇代理が笑ったら私がぶっ飛ばしますから!ねっ?」

建宮「五和さんっ!?」

安曇棟梁「……相変わらずお前の所は家族なのだな……まぁ、いい」

安曇棟梁「ただ、これは突拍子もない話。与太話として聞いて欲しい」

建宮「勿体つけるのよな」

安曇棟梁「我らが情報を得ているのは、五和殿から聞いた範囲でしかない。『野獣庭園』がミシャグジ神の術式を持っている事」

安曇棟梁「そしてまた連中がクトゥルー系の魔術師だと標榜している事か」

建宮「他の連中の話をしても良いんだが、そうなると本格的に巻き込むのよ」

安曇棟梁「是非もない――と、言いたい所だが、北関東から東北にかけて別口の魔術結社が暗躍している」

安曇棟梁「そちらの対応で手一杯――な、上に『学園都市』の案件である以上、下手に手が出せない」

建宮「……ま、立場は違えども向いている方向は同じなのよな、きっと」
796 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 11:03:42.65 ID:kliE6FzC0(10/17)
安曇棟梁「で、あくまでも少ない情報からパッと浮かんだ、あくまでも部外者の与太話なんだが」

五和「……随分回りくどいですね」

建宮「立場上断言する訳にはいかないのよ、察するのよな」

安曇棟梁「我が神は海神、大海原の底に座し、我が国を守り給うモノだ」

建宮「なのよな」

安曇棟梁「当然『習合』されたミシャグジ神も『海』の属性を持っている。ここまでは分かるな?」

建宮「さっさと結論を――」

安曇棟梁「それじゃ、ルルイエはどこにある?」

建宮「……っ!?」

五和「……はい?」

安曇棟梁「こうしている間も死して夢見る邪神は居る――在るのかも知れない」

安曇棟梁「人間が到達出来ない深い深い海の底に」

建宮「待つのよ!それじゃまるで――」

安曇棟梁「『――ミシャグジ神はクトゥルーと同一の存在』じゃないのか?」
797 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 11:05:20.65 ID:kliE6FzC0(11/17)
――悪夢の残滓

カツ、カツ、カツ、カツ……

アル「……」

アル「……つーかな、アレだよ。カミやんにも言いたいんだけどな」

アル「てーかまぁ?俺自身も無茶な事を言ってる自覚はある。あるんだよ、一応はな。でも」

アル「折角人が体張って『SUKE-KIYO』やってたっつーのに、無視って酷くないか?なぁ?」

アル「スルーってどういう事?折角人が日本からDVD取り寄せて探偵映画研究したのに、無視て!」

アル「てかあの映画『殺すにしても無駄リソース割きすぎじゃね?』って誰も突っ込まなかったのかよ!原作は読んでねーけども!」

アル「他のシリーズも基本活躍するのが少年て!いや大人が働けよ!小林君にほぼ丸投げってどういう事!?」

アル「……それでいいのか日本?そこまでする必要があったのか?」

アル「小学生になったってっても元々は高校生だぞ?逮捕権も捜査権も認可制じゃねぇのかよ……凄ぇなニッポン……」

アル「あの世界の神様が……『もうボスは登場している……!(キリッ)』」

アル「……」

アル「光彦逃げてー!?灰原ファンから死ね死ね言われてる光彦君逃げてー!」

アル「……」

アル「そういやこないだエロゲーをやっていたら、歩美ちゃんの中の人がだな」

アル「てか早く神採系の新作をだな」

ジジッ

アル「……あぁクソ、愚痴ってる場合じゃねぇなぁ」
798 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 11:06:11.44 ID:kliE6FzC0(12/17)
――1号室(仮)

アル「……」

アル「シーツは………………」 ポンポン

アル「……まぁ、この状況でヤッてねぇよな。このシチュで手を出さないのも尊敬するっちゃするが」

アル「ゴミ箱……あぁいやそうじゃねぇ。こっちだこっち――」

アル「――って重っ!?何でこんなに重いんだ!?設置型っつー訳じゃねぇだろ!」

?『……』

アル「窮屈ってぇ言われても、なぁ?まだ完全に分化してねえんだから、筺ん中に入んのは当たり――なに?分かってる?」

アル「だったら――あぁまぁ文句の一つも言いたくはならぁな。ニンゲンだもの、みつを」

アル「んで、どうだった?間近で見た感想は?」

?『……』

アル「あー……うん、まぁ?分かるけど!」

アル「アレがデフォであって、下手に手を出したらルート決定すんだろ言わせんなよ恥ずかしい」

?「……」

アル「……その通りだぜ。もう少し、あとほんの少しで!俺達の願いは達せられる!」

アル「第一の時代を以て誕生は成り、この暗い闇の中へ嬰児は生まれ堕ちた!」

アル「第二の時代を以て競争を過ぎて、爪と牙の世界で高らかに産声を上げる!」

アル「第三の時代を通り、機械は電気羊の夢を見ないと証明された!」

アル「ルルイエにて死して夢見る我らの王よ!夜の闇から我らを助ける慈悲深き”シィ”よ!」

アル「このクソッタレな世界に永久のシジマ(静寂)を……ッ!!!」
799 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 11:07:32.61 ID:kliE6FzC0(13/17)
?「……」

?「『彼ら、空を睥睨せよ。”私”は容易く星を射落さん』」

?「『竜尾が弧を描き、歌姫は反逆の烽火を上げる』」

?「『――静謐な黒き大海原よりルルイエは浮上し、私は再び戴冠せり』」

?「『久遠に臥したるもの、死することなく――』」

?「『――怪異なる永劫の内には、死すら終焉を迎えん――』」

?「『――我が“SLN”の名の下に』」

?「『……』」

?「…………………………………………………………………………きひっ」
800 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 11:09:06.17 ID:kliE6FzC0(14/17)
――次章予告

――キャンピングカー 移動中の運転席

レッサー「あのぅ、ベイロープさん?ちょっといいですかね?」 ゴソゴソ

ベイロープ「遊んで欲しいんだったら後ろ行け、後ろ」

レッサー「いやあの、そーではなくちょっとご相談がありまして」

ベイロープ「……どうしたのよ。お金?お小遣い足りなくなっちゃったの?」

レッサー「その反応も失礼だと思うんですが……そーでなく、その」

ベイロープ「いいけど。あ、今マイク切るわね」 カチッ

ベイロープ「てかまた?もしかしておっぱいが大きくなったとかネタじゃないでしょうね?」

レッサー「い、いやいやっ!そういうのではなく!てかあれはあれで大真面目な話だった訳ですし!」

ベイロープ「……あの頃のレッサーは可愛かったなぁ」

レッサー「今も可愛いじゃないですかっ、シャインッ!」

ベイロープ「だかにそーゆートコがダメだっつってんの」

レッサー「や、そうではなく……今度こそ、きちんとした病気、だと思うんですよ」

ベイロープ「まぁ前のもネタじゃないと言えばそうなんだけど」

レッサー「はい。これでボケだったらケツを百叩きして貰っても構いませんよ!」

ベイロープ「……それ前振りにしか……いや考えすぎよね、多分」

レッサー「やあっだなぁそんな訳ないじゃないないないですかーベイロープさーん」

ベイロープ「今、あからさまにナイが大量発生していた気がするんだけど?」

レッサー「はっ!?期待されたらついボケてしまうこの体質が恐ろしい……!」

ベイロープ「前っから言おう言おうと思ってたんのよ、あなたはもう少し自粛しなさい、ね?」

レッサー「そこに熱湯風呂があって前の人が『押すなよ!?絶対に押すなよ!?絶対だからな!』と言われれば、誰だって押しません?」

ベイロープ「芸人だけね?友達とバンジーかスカイダイビングに行った時にそれしたら、まず間違いなく絶交されるわよ」

レッサー「いやでもこないだランシスとバンジーしたら、バンジー後に親指立ててましたが?」

ベイロープ「あなた達は、おかしい。てか昔っから影でコソコソと何やってんだか」
801 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 11:10:12.57 ID:kliE6FzC0(15/17)
ベイロープ「んで?」

レッサー「実は少し前から胸が痛くって」

ベイロープ「よし、ケツを出せ。デトロイト・テクノのビートを刻んでやるのだわ!」

レッサー「違います違います!ギャー!?『鋼の手袋』出してやる気になっておられる!?」

レッサー「てかテクノとは意外な趣味ですねっ!?」

ベイロープ「なんか『ビョーク好きでしょ?』って言われるのよ、外見だけで」

レッサー「あー……そんな感じですね」

ベイロープ「こっちはアシッド時代、ジャングル入った頃からのリッチー=ホァウティン聞いてんだっつーのよ!文句ある?」

レッサー「イメージと合わないですよねー」

ベイロープ「てがビョークはアイスランドよ!スコットランドを北欧繋がりで括るな!」

ベイロープ「てかボケじゃんネタじゃん真面目じゃないでしょーがっ!!!」

レッサー「ま、待って下さい!?まだ話に続きがありまして!」

レッサー「別に成長痛だって訳じゃないですから!明らかに違いますし!」

ベイロープ「……なに?まだなんかあんの?」

レッサー「その、痛みだけじゃなくってですね、こう、きゅうっ、と」

ベイロープ「……痛いんじゃない」

レッサー「いえ、なんて言いましょう。痛いんじゃなくって、締め付けられるように」

ベイロープ「カップが合ってない?……て、結局同じじゃないの」

レッサー「ですからそういう事ではなく!……ドキドキ、的なのもありますし?」

ベイロープ「動悸か……それだったら医者に診て貰った方がいいんじゃないの?素人にどうこう言ったってしょうがないっつのーに」

ベイロープ「……それとも『呪い』かしら?基本私達の口に入る物は『幻想殺し』が触ってるから」

ベイロープ「空気感染、も術式としてはあるかー……向こうは廃れた魔術のエキスパだから、伝染病関係かも?」

ベイロープ「ローマ正教に借りを作るのは嫌……ま、適当な魔女でも紹介して貰って解除――」

レッサー「いやですよっ!恥ずかしいじゃないですか!」

ベイロープ「恥ずかしいて。別に女医さんか魔女なら平気でしょうに」

ベイロープ「私へ相談するぐらい深刻ってんなら、さっさと看て貰って安心した方がいいのだわ」

ベイロープ「大した事なきゃ笑い話で終るし、そうじゃなくても早期治療が最善だし」

レッサー「だからっ!そうじゃなくて……言うのが、ですよ!」

ベイロープ「……んー?要領を得ない話……」
802 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/16(火) 11:11:01.93 ID:kliE6FzC0(16/17)
レッサー「……」

ベイロープ「……あれ?」

レッサー「聞いてますか?ねねっ?」

ベイロープ「もしかして『恥ずかしい』って、『医者に症状を話すのが』って事か?」

レッサー「他にある訳ないじゃないですか!」

ベイロープ「……」

レッサー「……」

ベイロープ「……なぁ、もしかして、なんだけど」

レッサー「な、なんです?」

ベイロープ「胸の痛み、動悸、あときゅーっとするだっけ?」

レッサー「えぇはい、そうですが」

ベイロープ「それってもしかして、あのツンツン頭を見てると――」

レッサー「あーーーっ!ああーあーあーーあーあーああーあーっ!」

ベイロープ「……あんたねぇ」

レッサー「……はい?」

ベイロープ「取り敢えずケツを出せ。全力で引っぱたくから」

レッサー「何でっ!?」

ベイロープ「お約束だからよ」

レッサー「ならしょうがないですよねっ!」

ベイロープ「ツッコミなさいよ」



――最終章『ダンウィッチ・シティ』予告 −終−
803 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/16(火) 11:13:00.36 ID:kliE6FzC0(17/17)
今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を
来週からレッサーさん編へ
804 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/16(火) 18:59:56.72 ID:a2eDQJEGo(1)
乙です
805 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/16(火) 19:59:23.75 ID:PP/mEHNF0(1)
レッサーが……ついに―――デレ、たーっっ!!??
806 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/17(水) 10:37:34.17 ID:wQjRktL/0(1)
>>785
「〜だわ」の口調は、
『「だからっ!!引っ込めろとっ!!言ったはずだわッッッ!!」(無印17巻220ページ)』
を参考にしています。頻度はこの一回ですが、麦野さんの「〜でしょうよ」と同じく、印象深いのでちょこちょこ使っています
>>782・>>784
リーダーの件に関しては誰かは明言されていない……筈、だったような?
学芸都市(禁書アニメ二期特典SS)でもベイロープの命令ぶっちぎってレッサーが単独行動(後に連携)してますし、
『チームを引っ張っていく役割』がレッサーさんではないかと解釈しています
またフロリスさんが騎士派に掌返されてから、「ベイロープの馬鹿野郎」と言ってるように、
仮にベイロープさんがリーダーだとしても関係は非常にユルいようですが

SSの構成上B――がアレだとアレしますし、折角四人全員の名前がR――にハマる上、性格もまぁまぁこんな感じっぽい?
なのでここはレッサーさんがリーダー役だと、ある伏線に繋がると思ったのでそうしています
原作と食い違うかも知れませんが、まぁそれなりに意味があります
807 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/19(金) 21:45:24.49 ID:tPUejM9SO携(1)
乙。

どうもなのだわー

まー形的にはベイさんがリーダーっぽいけど形骸化してる感じだったしSSですし面白いですし
808 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 12:32:01.89 ID:e9+Q4qj/0(1/18)
胎魔のオラトリオ・最終章 『ダンウィッチ・シティ』

――キャンピングカー 昼

レッサー「――と、言う訳でっ!掴みますよ胃袋を!」

レッサー「男性にあると言われている四つの袋!これを征した者が勝負に勝ぁつ!」

ランシス「えっと……」 ピトッ

レッサー「AHAHAHAHA?私の額に手ぇ当たってますよー?」

ランシス「あててんのよ?」

レッサー「じゃあしょうがないですよねっ!確信犯ならねっ!」

ベイロープ『誰かー?運転で今ちょっと忙しいから、ボケ二人へ代わりに突っ込んでやってー?』

上条「……」

鳴護「当麻君、ご指名みたいだよ?ほらほら」

上条「ちょっと待とうかお前ら?ベイロープが運転してるとツッコミが一人しか居なくなるのは、まぁ良いと思うんだよ」

上条「てか話の流れからするに、ツッコムのも俺の仕事みたいな?……まぁ、百歩譲って慣れたよ、それはな」

上条「でも何で俺が『レッサー係』みたいになってんだよ!?ツッコミついでに後片付けしなっきゃ、みたいな空気はナニっ!?」

上条「お前らのチームなんだから付き合ってあげればいいじゃない!ボケもきちんと処理してあげて!?」

鳴護「えぇっと、うん、分かるよ?あたしはね?」

上条「AahRISAさんっ!」

鳴護「そんな外国のアーチストみたいな饒舌に発音されても困るけど……でも、ほら、見て上げて?レッサーちゃん?」

レッサー チラチラッ

鳴護「『四つの袋があります!』からボケが流されて悲しそうにこっち見てるよ?」

上条「だったらツッコんでやりゃいいんじゃねぇかよ!最近のアイドルはお笑いだってするし!」

上条「つーかな!俺が一番ハラ立ってんのはレッサーじゃねぇよ!面倒臭ぇとは思うけども!」

上条「運転放棄しないでツッコミ放棄しているベイロープ!レッサーと一緒に俺”で”遊ぶ気満々のランシス!」

上条「そして着やせしながらも基本天然のアリサ!それは別にいいんだよ!」

鳴護「その情報要らないよね?天然じゃないし、あたし」

上条「何が一番ムカつくかって騒動が起った瞬間、たった今までモノポリーで俺の不動産を奪ってたヤツが真っ先に寝たふりしやがったって事だよ!」

フロリス「……ウーン……ムニャムニャ……」

鳴護「あ、海外でも寝言は『ムニャムニャ』なんだねー」

上条「疑おう?もうちょっとアリサさんは計算さんを疑って上げて?」
809 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 12:37:24.96 ID:e9+Q4qj/0(2/18)
上条「ボケてるのにスルーするどころか受け入れるって、ある意味公開処刑だからね?」

ランシス「……がんばー。そろそろレッサーが我慢の限界に来てるとみた」

鳴護「限界を超えると?」

ランシス「んー……?まぁ、脱ぐ?意味も無く」

上条「――おぉっとレッサーさん!袋は四つじゃなくって三つだな!こやつめアハハハー!」

レッサー「……そこで速攻否定されると私の乙女心が折れそうになるんですがっ!」

ベイロープ『乙女は、脱がない』

レッサー「ですが私のリサーチした結果ですと、本を開いて二ページ目にはですね」

上条「薄い本な?どうしてお前がそれを知ってんのかは知りたくもない、つーか予想つくが!」

フロリス「アレを『乙女』だと断言するレッサーのメンタルないなー」

ランシス「カテゴリ的には、まぁまぁ……言えなくも?」

上条「そこっ残念な子に理解を示さない!この子が伸び伸び育っちゃってるのはアンタらの責任もあるんですからねっ!」

鳴護「当麻君、子供の教育方針で言い合ってるお母さんっぽい」

ベイロープ『……私と先生が常日頃どんっっっっっっっっっっっだけっ!苦労してっ!いるかっ……!』

上条「……そりゃ、うん、良くやってるよ?分かってるからさ?」

上条「だからもう少しだけ力抜いてハンドル握れ、な?さっきから微妙に車体がフラフラしてっから」

レッサー「――日本の殿方を射止めるため!奥さんは三つの袋をしっかり握ると言い伝えられています!」

フロリス「へー、そなの?」

上条「あー……結婚式で仲人のオッサンがひと笑い取る、定番のネタっちゃネタだよ」

鳴護「でも最近だと『せくはらー』とか言われて、自重するお父さん多いって」

ランシス「オチ読めたしぃ……」

上条「まあシモでオトすんだろうな−、とは思うけどな」

レッサー「まずは第一の袋――清野袋(せいのふくろ)!」

上条「待てやコラ!最初からボケるってどういう事!?」

鳴護「せいのふくろ……?」

レッサー「アーモリー県にある地名です。キャノンのモーション操作系工場がある所ですねー」

ベイロープ『……ねぇ?そこまでしてボケたかったの?』

ベイロープ『多分辞書かなんかで調べたり、ググってまで探したのよね?○○袋』

レッサー「イエッサ!他には米ヶ袋(よねがふくろ)もありましたっアーモリー!」

鳴護「アーモリー、じゃなくって青森なんだよね?きっと」

上条「袋関係の地名多いな。米処だから?」

ベイロープ『言っとくけど日本……稲作の品種改良と農法近代化が始まるまでは、東北じゃ安定した米の生産なんて出来なかったわよ』

ベイロープ『てか現代に至っても、収穫前に天災が起きれば一年間の努力が水の泡――って、何よ?』

ランシス「詳しいね……?」

ベイロープ『「野獣庭園(サランドラ)」が生まれ育った地盤を調べるのは当然でしょうが』

ベイロープ『大抵同族食ってのは、極めて困窮した経済状況か逼迫した食糧事情が絡んでくるものなのよ。人間以外でもね』

フロリス「よっ、流石はリーダー!きちんと考えてる!」

レッサー「待ちましょうか。取り敢えずこの私からリーダーを奪うにはですね、まずジャンケンで10回勝負に勝った上で、ケイドロで勝利した後――」

上条「イギリスにもあったんかケイドロ」

鳴護「あたしの学校だと『増やし鬼』、だったような?」
810 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 12:41:08.62 ID:e9+Q4qj/0(3/18)
鳴護「あたしの学校だと『増やし鬼』、だったような?」

上条「別の遊びじゃねぇのか、それ――てかさ、結構前から思ってたんだが」

ランシス「78のB」

上条「お前ホンッとにブレねぇな!?つーか律儀に夢の中での公約果たしやがった!」

ランシス「『団長』もキルスコアに……」

上条「……あ、俺『解決したら何でも叶えてくれる権利』、行使する前に話が終ってた――じゃ、ねぇよ。そんな話はしてない」

上条「お前らのリーダーってレッサーで良いの?それで本当に後悔しないの?」

フロリス「んーむ?後悔するしないで言えば、たまーにするケド」

ラシンス「……別にリーダーとか決めてなくて、あくまでも魔術”系”のサークルみたいな」

ベイロープ『厳密な意味で私達、イニシエーションやら聖体拝領はしてないのだわ』

鳴護「いにしえ?」

フロリス「魔術師は基本マグス――日本語訳だと『導師』とか『師匠』から教わるんだよ。ま、独学でどうにかなるようなもんじゃないしー?」

ランシス「中には先天的に能力を発揮出来るような『原石』――」

ベイロープ『十字教じゃ「聖人」って呼ばれる人でもなきゃ、無意識的に術式を行使出来ないの』

鳴護「へー……凄い人も居るんだなぁ」

フロリス「――ベイロープ?」

ベイロープ『んー……ま、今は、ね』

ランシス「おっけー……」

上条「今妙な意思疎通が計られてた……?」

ベイロープ『――で、私達は?ご覧の通りにいい加減な結社未満の存在だから』

ランシス「レッサーが『リーダー私がやってあげますよっ!べ、別にあんたのタメじゃないんだからねっ!』と……」

上条「後半要らなくね?1%も盛ってないのは何となく分かるけど」

鳴護「えっと……ユルいよねっ、良い意味で」

上条「見なさいよ!ウチのアリサさんだってだって珍しく言葉を選んだんだからねっ!」

フロリス「やっだなぁ、ARISAちゃん程じゃないぜ?」

鳴護「……あれ、暴言を吐かれているような……?」

上条「お前アリサに冷た――く、もないな。割かしフツーか」

フロリス「『好き』の反対は『無視』だーよねぇ」

上条「……成程。そんなこんなで『リーダーやりたいです!』宣言して、まぁどうぞどうぞ?みたいな、ゆっるーい感じなのな」

レッサー「――最後にフランス大使館へ『さっさと王族ぬっ殺したのにベルサイユ宮殿観光資源にしてるのどうなの?!』」

レッサー「『入り口の説明パネルに”王族処刑してその10年後にナポレオンを皇帝にしたバカどもの巣”って書いた方がいいですよ?』

レッサー「って電凸かまして国際問題に発展させれば、まぁ一人前ですね」

上条「お前はお前でリーダー勝負からズレてきてる。ってか碌な事してねぇな!」

ランシス「マジでするから始末に負えない……」

鳴護「お察しします」

ランシス「でも私も嫌いじゃない。むしろ一緒にする」

鳴護「お察ししません」
811 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 12:44:47.82 ID:e9+Q4qj/0(4/18)
フロリス「まー、そんなワケでリーダーはレッサーなのさ。つっても仕事持ってくるのは先生かベイロープが多いんだケド」

ランシス「あと、ま、基本方針も話し合い、だし?」

ベイロープ『現場でどう動くか、ってのも大筋決めた後に個々人が動き回るだけだしね』

レッサー「待って貰いましょうか!それ以上私を追い詰めると大惨事になりますよ!」

上条「具体的には?」

レッサー「なんかもう、ガイアが私へ全裸になれと囁いてる感じですか」

上条「俺、ガイアさんギリシャの神話の神様だ、ぐらいしか知らないけど、そんな事言わないと思うよ」

ランシス「どっちかって言えば……アルテミス、かな?言うとすれば」

ベイロープ『キュベレとフェンリルのハイブリッドよね』

鳴護「まぁまぁ、それで?レッサーちゃんは何が言いたいのかな?」

レッサー「や、まぁ大したこっちゃないんですけど、私達が旅を始めて結構経ちますよね?」

フロリス「だーよねぇ。『ARISAのサイン貰いましょう!なぁに大丈夫です、知り合いジャーマネやってますから!』って」

フロリス「着替えも準備も無しで、気狂い魔術結社とドンパチやるハメになったってのに」

レッサー「まぁ人生罪オーガ馬と言いますし」

上条「『塞翁が馬』な?ちょっと見てみたいぜオーガ馬」

フロリス「ひっつよう最低限の霊装しか持ってないしー?だからって『鞄』で取り寄せる準備もねぇんだっつの」

上条「あれって距離制限あったんじゃ?」

フロリス「Hay boy! Will you combine pants put on to the school with pants when it dates the boyfriend? Aha?」
(おい少年!お前は学校へ履いていくパンツと彼氏とデートする時のパンツを一緒にするんか?あん?)

上条「……ベイロープさん?」

ベイロープ『意訳すると「学校に持っていく鞄とデートの時のは違うよね?」かしら』

鳴護「パンツって単語が入ってた気が……?」

レッサー「あん時は隠密性重視でしたからねー。制限を外しゃもっとロング行けます」

上条「――つかさ、お前らベストの状態じゃないのに魔術結社とやり合えたんだ?そっちの方がスゲー……」

ベイロープ『常在戦場。騎士――じゃなく、魔術師だけに決まった事って訳でもないわよ』

レッサー「ウクライナを見れば少々頭のネジが緩んだ――もとい、外れて無くしてぶっ壊れた人間でも理解出来ると思いますが」

レッサー「『よーいドン!』で始まる戦争なんてどこにもないんですよね−、これが」

フロリス「『ウクライナ正規軍とガチでやり合えるゲリラ兵』なんて、明らかにソチ五輪の大分前から用意したに決まってんジャン」

上条「ウクライナの正規軍がショボイって話じゃねぇの?」

ベイロープ『ウクライナ空軍はロマノフ朝時代から航空産業が発達してた上、ソビエト崩壊時に持ってた機材や人材をそのまま得ているのよ』

ベイロープ『だもんで東側諸国へ航空兵器を売却したりして、ウザかったウザかった』

ランシス「……裏を返せばそれだけ他国にとっても脅威でー」

フロリス「精度については、ん?な部分もあるケド、航空産業に関しちゃ輸出出来るレベルだったと」

レッサー「そしてロシア軍が警戒しすぎた結果、マレーシア旅客機撃墜へ至ります。合掌」

レッサー「出会った二人が突然恋へ落ちる事もあるように、昨日まで平和と融和だった世界が、一転混沌へ叩き込まれるのはある話」

レッサー「ましてや『万全の状態』で始まったりするのなんてとてもとても。いきなり戦場に叩き込まれるのも良くある話」

上条「……否定出来ない……!」

鳴護「……思い当たる節の多い当麻君の今後が、そこはかとなく心配になるよねっ!」

レッサー「てな訳で、いつどこで誰と勝負しても良いように、私は常日頃勝負パンツをですね」

上条「待て恥女。パンツの話はしていない」

フロリス「てか魔術師同士のガチンコの話から、一瞬でエロい話へ持っていく、だと!?」
ベイロープ『いや別にエロくは』
812 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 12:48:34.55 ID:e9+Q4qj/0(5/18)
ランシス「……ま、でもタイミングはベスト……スコットランド独立騒動で煩かったし」

ラシンス「こっちに移動したのは悪くない、と」

レッサー「ですなー、私達があのまま残っていればちょっと面倒だったかも知れません」

上条「お前らなら嬉々として投票邪魔しそうだが?」

レッサー「やっだなぁ上条さんテロリストでもあるまいし。まさかそんな大それた事」

上条「うん、イギリスのクーデター実行犯の一人は、流石に別格だよね?」

レッサー「クーデターですって!?よぉしっそんな野蛮なヤツぁレッサーちゃんが懲らしめてあげましょうかっ!」

ランシス「てか、レッサーは悪いとなんて全っ然思ってない……」

レッサー「さぁこの私の前にっテロリストを差し出して下さいなっ!さくさく殺っちゃいますよっ!」

上条「戻って来て下さいベイロープさん!ツッコミ役が俺一人じゃ足りませんからっ!」

フロリス「Heyやめるんだ!ベイロープ本当に戻ってくるんだから!」

ベイロープ『あ、ごめん。なんだって?』

上条「都合の悪い事は聞き流すスルースキルを獲得してるっ!?」

レッサー「いやいや流石にボケを潰すのはイクナイと判断しただけに過ぎませんよ。ジョークに一々構っては居られないと」

フロリス「話戻すけどタイミングは良かったかーもねぇ。ねー?ベイロープ?」

ベイロープ『面倒なだけなのだわ』

上条「あぁスコットランド出身なんだよな」

レッサー「いやいやいやいやっ、今運転席で他人事みたいな顔してやがる女は元スコットランドの王族ですからねっ!」

ベイロープ『おいレッサー!』

上条「マジで?」

鳴護「お姫様ー?あー、言われてみれば」

レッサー「由緒正しいスチュアート朝のお姫様()ですよっ!お姫様っぷーくすくす!」

レッサー「っても王位継承権は今のウィンザー朝のババアが持ってますし、放棄もしているんですがねー」

レッサー「世が世なら、な、なんとぉぉっ!この騎士気取りがお・ひ・め・さ・まっ!」

ベイロープ『……その口を閉じるのだわ』

レッサー「にゃーはっはっはっー!どれだけ吠えようとも!あなたの牙は私には届きませんよ!運転席のベイロープさんにはねっ!」

レッサー「てーかですね、今時姫騎士なんてオークさんか触手さんに前から後ろからエロいコトされるのがお仕事であっですね」

レッサー「マジで目指すなんて有り得ないじゃないですかーやだー」

鳴護「……ね、ちょっと聞いて良いかな?前から少し気になってたんだけど」

フロリス「あに?」
813 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 12:52:16.82 ID:e9+Q4qj/0(6/18)
鳴護「明らかに、というかもう最初から崩すためのハンマー置いてあるのに、なんでレッサーちゃんはジェンガを積もうとしているの?」

鳴護「てか常識に考えれば――」

レッサー「さぁっ!悔しかったらかかってカモンっ!運転席を離れられるのであれば――」

キキィィィィィッ!

鳴護「――って、普通はブレーキかけるだけだよね?」

フロリス「まぁ、『レッサーだから』以外の答えはない、かな?」

ランシか「……ま、考えたら負け。感じても……分からない」

レッサー「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOッ!!!?」

ベイロープ「あなたって子はァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

上条「あ、丁度スーパーに停まったみたいだし、何か食料買ってくるわ」

フロリス「――ならワタシも付き合ったげるさ」 ギュッ

上条「だからくっつくなっつーの!……ってお前も」

ラシンス「んー?」 ギュッ

鳴護「……当麻君?」

上条「いや違うんですよ鳴護さん、これはね?あのーこいつらが俺で遊ぼう的な発想でしてー」

上条「あくまでも俺は受け身って言うか、決してフラグ管理を怠ったつもりもなく」

レッサー「では私もちょっくらイーツ的なものを探しに――」

ベイロープ「――レッサー?」

レッサー「じゃ、ないですよねっ!ジョークですともっえぇっ!」

上条「あ、俺ら外してくるからごゆっくり」

レッサー「いやそのお気遣いなく?ってかむしろ早めに戻って頂かないと、私の貞操的なもの――アイタタタタッ!?」

鳴護「ベイロープさん、何か欲しいものありますー?」

ベイロープ「あ、いや気にしなくて良いわよ?こっちはこっちで楽しくやっとくから」

レッサー「楽しいのはベイロープさんだけですよね?私は恐怖に打ち震えるだけじゃないですかねっ!?」

上条「……まぁ、ごゆっくり」

レッサー「ちょ待っ――」

パタンッ

『……ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ……!?』

鳴護「ね、当麻君?」

上条「聞こえない聞こえない、俺は何も聞こえない」

鳴護「現実逃避してないで、レッサーちゃんの叫びが断末魔っぽい響きなんだけど」

鳴護「あたし達が戻ってきたら一人だけしか居ないとか、そういうのはないよね?」

フロリス「――つーワケでワタシ達五人の旅もいよいよ佳境だよねー」

鳴護「もう既に一人減ってた!?」

ランシス「リーダーからの命令……プレッツェル食べたい」

上条「へいへい、あるといいなー」

鳴護「えぇっと、次のリーダーも内定済み……?」

フロリス「ヘイ、アリサもジェラード食べる?バニラでいーよね?」

鳴護「あ、トッピング選べるんだったらバニラとチョコとミントとチョコチップとストロベリーでっ!」

上条「盛れんのかよそれ」
814 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 12:55:48.93 ID:e9+Q4qj/0(7/18)
――キャンピングカー

レッサー「……ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ……!?」

ベイロープ「……」

レッサー「……」

ベイロープ「……行ったみたいね」

レッサー「ふっ!どうやらこの私の迫真の演技に騙されたようですねっ!」

レッサー「ちゅーか流石ベイロープさん、年の功より亀の甲!」

ベイロープ「あ、シバくのはシバくわよ?」

レッサー「なんてこった!?チャプターが変わったからリセットする仕様じゃないんですか!?」

ベイロープ「いや、さっさと本題へ入りなさい」

レッサー「つーか私が食事を作ろうって話なのに、まだ本題にすら入れないってのは一体……」

ベイロープ「よし、ケツを出すのだわ」

レッサー「――で、本題なんですけどね!その」

レッサー「アリサさんについてです」

ベイロープ「良い子よね。ウチに欲しいぐらいだわー」

レッサー「これで私とキャラが被らなきゃ、その線もあったんでしょうがね」

ベイロープ「性別と年齢近いぐらいしか共通項ないわよ。てか時間ないんだから簡潔に話なさいな!」

レッサー「脱線させたのベイロープだと思うんですが――今回の件、どーにも妙な感じがしませんか?」

ベイロープ「と言うと?」

レッサー「敵さんの動き全般、ほぼ全てに散見される戦略性の無さ、でしょうか」

ベイロープ「具体的には」

レッサー「ユーロトンネルでの『アレ』を退治するには、高火力での兵器で灼かなければ叶わない」

レッサー「たまたまそこへ乗り合わせたベイロープが、しかも一人囮として居残って勝ちましたね」

ベイロープ「そうね。随分前の出来事に感じるわ」

レッサー「『知の角杯』、しかも『銀塊心臓』なんて奥の手を遣い――そうですねぇ、下手な聖人クラスの威力まで高まりますよね?」

レッサー「そこまでしないと勝てない相手……まぁ、これは偶然としておきましょう」

ベイロープ「何か変な言い方よね」

レッサー「次に『Kingdom that eats frog(カエル食い王国)』」

ベイロープ「自重しなさい。つーかそのスペルでフランスだって分かる私もどうかと思うけど」

レッサー「あちらでも『野獣庭園』の『安曇阿阪』達の襲撃を受けました――が」

レッサー「同じく”偶然”に居合わせたフロリスによって撃破。やったね!」

ベイロープ「いや、だから」

レッサー「下位種とはいえ曲がりなりにも『竜』へ獣化し、相対したのが『DragonSlayer(竜殺し)』の霊装を得意とするフロリスに、ですよ?」

レッサー「これは『偶然』でしょうか?」

ベイロープ「……」
815 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 12:57:40.44 ID:e9+Q4qj/0(8/18)
レッサー「んでもって一昨日っ!イタリア国境入る直前ぐらいに奴らは夢の中でかかって来やがったぜBaby!」

レッサー「だがしかぁしっ!ランシスの『魔剣』でスッパリ解決さHAHAHAHAっ!」

レッサー「――『負』の魔剣で『聖』なる術式を――」

ベイロープ「――まるで示し合わせたように?」

レッサー「さて、私達が同じ立場だったらどうでしょうね?」

ベイロープ「私には奥の手があるけど、フロリスじゃ脱出は無理でしょうね」

ベイロープ「普通の魔術師だったら、術式をかけられた瞬間に『詰む』のだわ」

レッサー「上条さんは良い感じに『勘違い』されてますけどねぇ。つーか多分目が肥えすぎてるだけっつー気もしますが」

レッサー「『並の魔術師』じゃなく、『その筋ではトップクラス』の魔術師ばっか見てるから、まぁ誤解したまんまですか」

レッサー「下手に深刻ぶるよりはそっちの方がずっとマシですけども――さてさて」

レッサー「『アレ』はさておき『安曇阿阪』と『団長』、どちらもハマったら全滅レベルの難敵です」

ベイロープ「『物理攻撃』、特に対人戦や対魔術師戦で堅めた相手には、まさに死角からの攻撃となる……」

レッサー「物理的に――って言葉が正しいかどうかさておくとして――ブーストした”だけ”の術式じゃ厳しいと」

ベイロープ「作為的、よね。ここまで来ると」

レッサー「そもそも『アレ』に関しても、ユーロトンネルの中で助かった部分があるんじゃないですかね」

ベイロープ「逆じゃないの?逃げ場が無い――あ、そうか」

ベイロープ「私達に逃げ場が無いって事は、『アレ』だって逃げる所が無いのよね?」

レッサー「地下鉄、メインストリート、デパートに博物館。どこへ放しても大惨事確定でした」

レッサー「無限に分裂しながら逃亡すれば、収集なんかつく訳が無い――ですが」

レッサー「反対に密閉空間の中で戦えば進化の方向性も限定される、と」

ベイロープ「方向性?」

レッサー「えぇっとですね。基本的に洞窟の中にいる節足動物は多足類が多いんですよ」

レッサー「空を飛ぶよりも地面を這った方が入り組んだ地形に対応出来ますし、捕食もし易いと」

レッサー「爬虫類や魚類であっても目が退化した代わりに、別の感覚器官を発達させた種族は多いんです」

レッサー「……んが!日光の元で進化させるとその方向性がどこへ行くのか見当もつきませんよ」

レッサー「羽を生やして天敵から逃れたり、人そっくりに擬態して欺くのか」

レッサー「蟻のようなコロニーを作られたら手がつけられません」

ベイロープ「あぁ成程ね」
816 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 12:59:27.67 ID:e9+Q4qj/0(9/18)
レッサー「……ま、そっちに関しても思い当たる点はあるんですが――アリサさん、どうです?最初の質問へ戻りますが」

ベイロープ「どっかの甲斐性無しに入れあげてる以外は、まぁ将来が楽しみよね」

ベイロープ「最初は……無理にテンション上げてたみたいだけど、最近じゃ極々自然体になって――ってのは、多分」

ベイロープ「あなたが聞きたい答えじゃないのよね?」

レッサー「えぇ、私も概ね同意見ですが、一部分は特に同意したい所ですし」

レッサー「気のせいかも知れませんけど、最近妙に明るくなったと言いましょうかね。何となく……違ってきてませんか?」

ベイロープ「別人にすり替わった?有り得ない」

レッサー「それはそうなんですけど……どーにも、普通すぎて」

ベイロープ「遠回しにDISってる?」

レッサー「いえいえ真面目な話。やはり存在の定義からして、なのでしょうかね」

ベイロープ「『奇蹟』」

レッサー「ですんでちょいと先生へお伺いを立てて貰えませんかね?私達だけの知識ではどうにも」

ベイロープ「了解。てか」

レッサー「……えぇまぁ機会を見て話すべきでしょうね。そうしないとアリサさんの命――いえ、存在意義に関わるかも知れませんから」

レッサー「これがアカの他人であれば『ゆっくり生きていってね!』で済ませたんですがねー」

ベイロープ「ま、情は移るわよね……ね、レッサー?ずっと悩んでたんだけど」

レッサー「何です?急に、てか即断即決のあなたにしては珍しい」

ベイロープ「話する少し前ぐらいから悩んでた――って言うと大げさだけどね」

レッサー「おっ!相談ですか?私がスバッと解――」

ベイロープ「アルゼンチンバックブリーカーとカナディアンバックブリーカー、どっちが程良いダメージを残せると思う?」

レッサー「私への処刑の話でしたかっ!」

ベイロープ「あの子達が帰って来た時に無傷だったらおかしいから、仕方なく、ね?」

レッサー「嘘だ……ッ!ベイロープさんは嘘を吐いてませんかねっ!?」

ベイロープ「大丈夫大丈夫?全然全然?人の履歴をバラしやがってとか、根に持ってはないわよ、うん」

レッサー「てーかもう完全にフラグじゃないですかありがとうございましたっ!」

ベイロープ「……私が政争に巻き込まれるってのは、まぁ生まれだし仕方が無いんだけど。慣れてるっちゃ慣れてるし」

レッサー「Bitch of the Wales(ウェールズの売女)ともその繋がりでしたっけ」

ベイロープ「……もし何かあったら、どっこからでも首突っ込んでくるバカを”二人”知ってるのだわ……」

レッサー「あー……奇遇ですねぇ。私も一人そんな奇特な方を知ってますわー、えぇ」

ベイロープ「つーコトで背骨一本で許したげるから、ほら早く」

レッサー「じゃしょうがないですね――なんて言いませんよっ!ペナルティ重くないですかねっ!?」
817 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga] 2014/09/22(月) 13:04:32.22 ID:e9+Q4qj/0(10/18)
――キャンピングカー

レッサー「……」

鳴護「あのぅ、レッサーちゃんが逆ツチノコみたいなポーズで固まってるんだけど……?」

ベイロープ『――で、あーまぁ、何よえっと……あぁ、スコットランドの話だっけ?』

フロリス「一応55:45ってスコアで否定にはなったみたいだケド」

ランシス「ベイロープ、利用されそう……?」

ベイロープ『血縁関係があるって言っても、王朝時代は断絶してる訳だから。心配は要らないわよ』

上条「でもなんか利用されそうじゃないか?」

ベイロープ『イングランド人の文学者、「地獄への道は善意で舗装されている」が、有名なサミュエル・ジョンソン』

ベイロープ『彼が残した言葉の一つに、「愛国心は卑怯者の最後の隠れ家」という言葉があるの』

ランシス「日本では何故か『愛国心はならず者の最後の拠り所』と訳される……」

ベイロープ『が、これはサミュエルが「スコットランド出身の首相へ対し、支持率が下がってきたからって愛国心利用してんじゃねぇぞ」と言ったのが残ったのであって』

ベイロープ『今まさにスコットランドじゃ「愛国心」――スコットランドへの帰属意識をわざと高めてる”ならず者”が居るのよ」

ランシス「……一応先進国で、しかも文化水準もトップクラスのブリテンから独立て、何のジョーク?」

フロリス「まー、でもそんなモンじゃないかね?どこの国も分離主義者がダダこねて空手形を切りまくってるカンジ?」

フロリス「声がデカくて論説戦になっても『相手の言っている事が理解出来ない』人間が多くなっちゃってるカンジ?」

ランシス「……ゲーテ曰く、『論戦で絶対に勝つ方法とは、相手の主張を一切受け入れず、最後まで自分の話を繰り返せば良い』と」

上条「……はーい、質問」

ベイロープ『何?』

上条「今スコットランドの首相つったよな?つーかニュースじゃ、300年ぐらい前に併合されたっつーか」

レッサー「ちなみにその時に即位したのがベイロー――アイタタタッ!?首がっ!?」

ベイロープ『ナイス』

ランシス「いぇーい……」

フロリス「それ言っちゃうと色々問題になるから、止めとこうねー?」

鳴護「一体何が……?」

上条「そのサミュエルって人は」

ベイロープ『同じく300年ぐらい前の人よ』

上条「スコットランド、300年前から首相搬出するって事は、イギリスに馴染んでるってコトじゃねぇの?」

フロリス「前の首相、トニー=ブレアもスコットランド系だぜ」

上条「ニュースで見たけど、イギリスとスコットランドの人口比って10:1ぐらいなんだろ?」

上条「それでも首相出るんだから、別に政治的に孤立してたり、経済的に置いてきぼりになってるとか、主張おかしくねぇか?」

レッサー「……いや、ですからおかしいんですよ。最初っからね」

レッサー「独立派の主張は『スコットランドは搾取されている被害者なんだ!』がデフォなんですが――具体的にどうこう、ってのは何一つ」

レッサー「『ロンドンに搾取されている!』が良い例なんですけど――普通、首都って人もモノもカネも集まりますよね?」

レッサー「日本で言えば東京と地方自治体、遣える予算や公共サービス、やっぱり都会の方が有利ですもんね」

上条「そりゃそうだろ。つーか当たり前だろ」

レッサー「北海油田――文字通り海上油田の開発を続けてきたのは、ブリテンの国策としての成果ですし」

レッサー「それを国が『ブリテン国民』へ還元するのは当たり前では?」

ランシス「……反対に『スコットランドだけ』に還元したら非難囂々」

鳴護「あ、難しい単語知ってるんだー?」

ランシス「使いたくなった」
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