[過去ログ] 日向「強くてニューゲーム」 (1002レス)
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1 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/10/02(水) 17:05:58.05 ID:xRikFmwD0(1/3)
ダンガンロンパ2のネタバレあり

この日向は第5章までの記憶を引き継いでます

地の文あり

まったり更新

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1380701157

903 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 06:53:56.97 ID:WBne/CcE0(25/65)
男子2番 / 総合10番 神崎卓也 かんざき・たくや
支給武器イングラムM10サブマシンガン
被害者数--
加害者馬見塚鉄男
現在状況分校体育館(F-4)で馬見塚鉄男に射殺される
流行モノに敏感で、話題のものには何でもとびつく。
クラス内や部活では盛り上げ役に徹するので友達は多い。だが軽薄な面があるので、親友はいないタイプ。
明るいというよりは軽い印象を受ける。
基本的には「みんながやるなら俺もやる」というスタイル。

此花直哉や中屋敷仁と一緒になって島村光をいじめている。
部活動サッカー部
身長176cm
誕生日9月12日
星言葉デルタ・クラーテーリス(仲間意識の強さ)
友人 馬見塚鉄男・向井正太・黒川渚・東儀奈緒子


男子3番 / 総合11番 木村秀成 きむら・しゅうせい
支給武器まきびし
被害者数--
加害者壬生優人
現在状況分校(G-4)で銃声を聞きつけ保健室に駆けつけるが、壬生優人に射殺される
基本的には理性的で冷静なインテリ少年。だが実はカッとしやすい一面もある。結構頑固。
悩み始めるとどんどんドツボにはまるタイプ。やや頭が固い。
恋愛感情が薄く今まで特にこれといった恋をしたことがないせいか、恋愛というものがいまいち理解出来ない。
今は女の子と遊んでいるよりもパソコンをいじっている方が楽しい様子。なのでウブな面がある。

母親は政府の役人でプログラム担当教官の仕事を勤めており、蔭山暗夫とも知り合いだった様子。

同じくコンピュータ部の永谷多樹は3年目のつき合いで、親友でもありライバルでもある。
部活動コンピュータ部
身長175cm
誕生日3月6日
星言葉マルカブ・ペガースィ(直感と計画性とサクセス)
友人 永谷多樹


女子3番 / 総合3番 伊東緋芽 いとう・ひめ
支給武器チェーンソー
被害者数--
加害者姫井祥代
現在状況森(A-2)で放送によって自棄になり姫井祥代を襲うが、逆にチェーンソーで頭を割られ死亡
成金の伊東財閥のご令嬢で他人に大して常に上から目線。
一人娘で甘やかされて育ったためか、わがまま。この世は何でも自分の思うようになると本気で信じている。
目鼻立ちは整っていて美人と言えば美人だが、ツリ目のせいかどこか意地悪そうな印象を与える。
何事にも強気で積極的。基本的にお高くとまって上から目線な態度をとる。
姫井祥代の父が働く会社の上役の娘という立場を利用して、祥代をメイド扱いしている。
沖田良に思いを寄せていたが、メアド交換を拒否されてからは逆恨み中。執着心にも似た思いを寄せている。
部活動テニス部
身長158cm
誕生日11月23日
花言葉極楽鳥花(全てを手に入れる)
友人 姫井祥代
904 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 06:54:23.93 ID:WBne/CcE0(26/65)
女子4番 / 総合4番 氏家菜子 うじいえ・なこ
支給武器ワルサーPPK
被害者数--
加害者壬生優人
現在状況中央公園(B-4)で壬生優人に襲われた傷により失血死する
大人しくて引っ込み思案。男子は親しい人物以外は殆ど話さない。
性格的に幼く、幼馴染みグループでは末っ子の妹ポジションで可愛がられている。

瀬名馨、九条利人、椿さおりの3人とはとても仲が良く、そこでははしゃいだり甘えん坊な一面を見せることもある。
山本光一のことが好き(九条利人談)
部活動/委員会美術部/保健委員
身長153cm
誕生日5月19日
花言葉芍薬(恥じらい)
友人九条利人・瀬名馨・椿さおり

905 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 06:55:25.65 ID:WBne/CcE0(27/65)
男子4番 / 総合12番 九条利人 くじょう・りひと 
支給武器フランキ・スパス12
被害者数--
加害者壬生優人
現在状況道路(E-6)にて壬生優人に襲われ、斎賀七瀬と山本光一を逃がし、射殺される
生真面目な優等生。 成績はクラスでも上位に入る。
論理的でやや神経質。饒舌なタイプではないが、話そうと思えば話すことが出来る。
頭の中でいろいろと考えてはいるが、それを口に出すことがあまりない。話してみれば、優しくて気の利く感じのいい男の子。

無口であまり人と関わりを持たないが、瀬名馨、氏家菜子、椿さおりの幼馴染みたちには心を開いている。

女の子とはあまり話さないだけで、幼馴染がいるため女性が苦手なわけではない。話そうと思えば女の子とも話せるし気配りもできる。
斎賀七瀬に一途な思いを抱いている。
部活動/委員会美術部/保健委員会
身長170cm
誕生日10月6日
星言葉ベータ・クルキス(高い理想と秘めた情熱)
友人瀬名馨・氏家菜子・椿さおり


男子5番 / 総合15番 此花直哉 このはな・なおや 
支給武器スタンガン
獲得武器特殊警棒
被害者数2(島村光・山南健太)
加害者沖田良
現在状況川縁(G-4)で山南健太を殺害、沖田良も殺そうとするが返り討ちに遭い死亡
神崎卓也や中屋敷仁を引き連れて島村光をいじめている。
下品な振る舞いが友人にも受けず、男子運動部グループ居内では浮いた存在。
短気で喧嘩っ早く、思考も下品。あまり深いことは考えない。そのうえ執念深く、嫉妬深い。

何かと行動に文句をつけてくる御三家は目障りな存在。
過去に神宮寺麗央那と喧嘩をしてボコボコにされ、それを斎賀七瀬に馬鹿にされた経験を持つ。
そのためこの二人にはかなり深い怨みを持つ。
部活動野球部
身長162cm
誕生日10月21日
星言葉プシー・ケンタウリ(期待と過度の思いこみ)
友人 沖田良・近藤達也・山南健太


女子5番 / 総合5番 大財瑞生 おおたから・みずき
支給武器Cz75
被害者数--
加害者片桐絢香
現在状況キャンプ場(E-2)にて金子ひとみに襲われ致命傷を負ったところを、片桐絢香に止めを刺される。
ギャルグループの一員で、元気玉のような存在感。
うるさすぎるのがたまにキズだが、クラスのムードメーカーでもある。
同じグループの片桐絢香とは幼馴染み。
部活動無所属
身長154cm
誕生日8月12日
花言葉キバナコスモス(野生美)
友人 片桐絢香・金子ひとみ

906 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 06:57:00.04 ID:WBne/CcE0(28/65)
女子5番 / 総合5番 大財瑞生 おおたから・みずき
支給武器Cz75
被害者数--
加害者片桐絢香
現在状況キャンプ場(E-2)にて金子ひとみに襲われ致命傷を負ったところを、片桐絢香に止めを刺される。
ギャルグループの一員で、元気玉のような存在感。
うるさすぎるのがたまにキズだが、クラスのムードメーカーでもある。
同じグループの片桐絢香とは幼馴染み。
部活動無所属
身長154cm
誕生日8月12日
花言葉キバナコスモス(野生美)
友人 片桐絢香・金子ひとみ


女子6番 / 総合7番 片桐絢香 かたぎり・あやか
支給武器ダイバーズナイフ
被害者数3(金子ひとみ・大財瑞生・国分友香)
加害者福森唯
現在状況林(F-4)で福森唯を怒らせ、格闘の末に頭を撃ち抜かれ死亡
大人っぽい色気のある雰囲気をまとう、ギャルグループのリーダー格。
校則を破ってアルバイトをしており、年上の男に言い寄られることも多いためか、同い年のクラスメイトたちを見下している。やや傲慢な面も。
狡猾で頭の回転が速いが、自身の異性関係の豊富さを鼻にかけている中学生らしい面もある。
見た目は色っぽいが口を開くとちょっと残念。下品で口が悪い。

同じグループの大財絢香とは幼馴染み。
自分と似た雰囲気の福森唯を気にかけている。
部活動無所属
身長163cm
誕生日9月10日
花言葉ダリア(華麗)
友人 大財瑞生・金子ひとみ


男子6番 / 総合16番 近藤達也 こんどう・たつや 
支給武器メリケンサック
被害者数--
加害者壬生優人
現在状況森(E-3)で沖田良と笹川比奈子を逃がすが、壬生優人に銃殺される
柔道部の主将を務め、クラス一の体躯を誇る。
嘘をつくのが苦手で、強面にも関わらずそれを豪快に破顔させて笑うので、怖いという印象はない。

明るく陽気で人当たりも良く、義理人情に熱くて涙もろい。
情熱的で懐も広く、癖の強い柔道部を上手いことまとめ上げていて、クラスでも中心的な人物。
正義感が強く、憎めない好青年。
沖田良、山南健太とは親友。
氏家菜子に淡い思いを抱いている。
部活動/委員会柔道部/学級委員
身長185cm
誕生日8月9日
星言葉アスピディケ(明朗快活な行動力)
友人 沖田良・此花直哉・山南健太

907 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 06:57:37.95 ID:WBne/CcE0(29/65)
男子7番 / 総合18番 早乙女辰巳 さおとめ・たつみ
支給武器ワイヤー(極細)+軍手
被害者数--
加害者花園ライアン
現在状況教会(C-6)で花園ライアンにナイフで喉を刺され、死亡
場を盛り上げるのが好きで、3年C組ムードメーカーの一人。
実は会話が止まると焦る、かなりの気遣い人間。
普段はおちゃらけているが、根は真面目で優しい。そんな面を知っている吹奏楽部員からの信頼は厚い。
部活動吹奏楽部
身長169cm
誕生日9月4日
星言葉46・レオ・ミノリス(面倒見の良いお節介)
友人 中屋敷仁・花園ライアン・壬生優人・加藤彩希・藤島詩歩


女子7番 / 総合8番 加藤彩希 かとう・さき
支給武器探知機
被害者数--
加害者花園ライアン
現在状況教会(C-6)で花園ライアンにボウガンで額を打ち抜かれて死亡
仲間内では元気で明るくノリもいい、わりと騒ぐタイプだが、それ以外では大人しい。少しヒステリックな面もある。

藤島詩歩とは同じ部活なせいもあってつき合いも長く、親友同士。
嫌味な物言いが気にくわないのか、部員仲間でも中屋敷仁とは始終揉めている。
部活動吹奏楽部
身長155cm
誕生日4月7日
花言葉ディモルフォセカ(元気)
友人早乙女辰巳・中屋敷仁・花園ライアン・壬生優人・藤島詩歩
908 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 06:58:32.20 ID:WBne/CcE0(30/65)
女子一番・朝比奈紗羅
「雅哉みたいに女の子なら誰彼構わずそんなこと言う軽いヤツはお断りっ!
 悠希はすっごい良いヤツだと思うよ、頭良いし運動できるしイケメンだしね!
 まあ、麗には負けるけど♪」


男子三番・雨宮悠希
「え、俺麗には負けないけどなぁ。まあ朝比奈さんは麗一筋だから仕方ないか!
 麗一筋と言えば、池ノ坊もずっと麗と一緒にいるボディーガードみたいだね。
 あまり喋ったことないけど、律義な良いヤツってのはわかるよ!」


男子四番・池ノ坊奨
「ありがとう雨宮。自分は麗さんの傍にいるのが当然なんだ。
 咲良さんも自分と似た家の生まれ。昔から可愛らしくてとても優しい人。
 口下手な自分のことをわかってくれる人」


女子二番・上野原咲良
「奨くんにそういう風に思ってもらってたんだ、嬉しいな、ありがとう。
 千世ちゃんはとってもおっとりしてて、すごく癒されるの。
 ほんわかした関西弁も、とっても可愛いよ」


女子三番・荻野千世
「いややわぁ、上野原さんの方が万倍可愛いのに。
 川原くんはどこにいても聞こえるくらいおっきい声しとる。
 体育会とか球技大会とかって、川原くんのための行事やんなぁ」


男子五番・川原龍輝
「おっ、千世ってば言ってくれるなぁ、確かに俺のための行事だけどな!
 如月はなんかすっげー頭良いよな!!
 インテリ眼鏡美人!!…こんな風に書いて大丈夫なのか、俺」
909 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 06:59:17.20 ID:WBne/CcE0(31/65)
心の中に渦巻き始めていた黒い靄を優しく包み消していくような柔らかく温かい声が永佳の名前を呼び、永佳は顔を上げた。
きっちりと着こなした制服、胸元まで伸びた艶やかな黒髪、小さな口とすっと通った鼻筋、大きく優しい瞳――クラスメイトでもあり部活仲間でもある上野原咲良(同・女子二番)がにっこりと笑みを浮かべて永佳を見下ろしていた。
初等部の頃から類い稀なる愛らしい容姿をしていた咲良は、今や中等部どころか高等部にまでファンクラブができている程異性からの人気が高く、帝東学院のマドンナと称されているのだが、当人は自分の人気の高さを自覚していない。

「ねえ永佳ちゃん、テニスコート行かない?
 さっき家庭科部にちょっとお邪魔して、マドレーヌ作ったの。
 帰りがてら、差し入れに行こうと思うんだけど」

「…行かない。
 咲良が1人で行ったらいいじゃない」

「そんなこと言わないで、お願い、ね?
 みんなで外で食べようよ。
 さっき華那ちゃんも食べてくれて、美味しいって言ってくれたから味は大丈夫!」

“華那ちゃん”――クラスメイトの佐伯華那(女子七番)は確か家庭科部に所属していたと記憶しているので、華那に頼んでお邪魔させてもらったのだろう。
のんびり屋でぼーっとしている印象しかない華那のことだ、何も深く考えることなしに咲良のお願いを受け入れたのだろう。

「…わかった、片付けるから待ってて」

永佳は諦めて画材を片付け始めた。
クラス内で一緒にいることはあまりないのだが、部活で付き合いを始めてから丸2年を超えたので、咲良のお願い事はやんわりとしているようで有無を言わせないところがあるためにどうせ断ることはできないことがわかっている。
それなら、早々に折れた方が時間を浪費せずに済むという話だ。
それに、咲良が永佳を誘う理由はわかっている。
ストレートに言えば永佳が意地になって拒否することを咲良もこれまでの付き合いで知っているから、わざわざお菓子を焼いて自分の用事を作りそれに永佳を連れて行く、という状況を作ったのだ。
そういう気遣いの出来る子なのだ、咲良は。

片付けを終えると、永佳と咲良は美術室を出た。
美術室のある校舎からテニスコートまでは少し離れているし、様々な部活動が終わる時間帯なので、歩いていると多くの人と出会う。
男子生徒の半分以上は、すれ違い様に咲良に声をかける。
さすがは男子生徒憧れの的。
愛らしい容姿に穏やかな性格で気配り上手、更に頭も良ければ運動もできるという、欠点らしい欠点のない神様に愛された子。
そんな咲良の隣を歩くのは、少し辛い。
襟足を長く伸ばしたツンツンとした漆黒の硬めの髪も、決して大きくないやや鋭い目も、中性的と言われる顔立ちも、全てを隠してしまいたくなるし、両耳に開けた沢山のピアスは馬鹿にしか見えないのではないかと思う。
強い光に当たれば当たる程濃い影ができるのと同様で、咲良の隣にいると自分の悪い面がより一層強調されてしまいそうで、自分のことが嫌になる。
910 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:01:12.29 ID:WBne/CcE0(32/65)
どうやら川原龍輝(男子五番)が相葉優人(男子一番)の弁当のから揚げを無断で食べたらしく、優人が怒りの声を上げていた。
その様子を見て、雨宮悠希(男子三番)と内藤恒祐(男子十二番)と望月卓也(男子十七番)が机や手を叩きながら大笑いし、控えめな性格の田中顕昌(男子十一番)はおろおろとして止めようとしているがどうにもできず、集団のリーダー格である春川英隆(男子十四番)は苦笑いを浮かべて優人を慰め、日比野迅(男子十五番)は呆れ顔で龍輝を窘めていた。
クラスの中心で盛り上がるお気楽な集団。
たかがから揚げ一つでそこまで騒げるなんて、なんてお気楽でなんて幸せなの。

「うわぁ、麗さまのお弁当相変わらず豪華ぁ!」
「おせちみたいじゃねぇか、そんなん広げて嫌味かテメェ」
「は? 普通だろこんなの別に」
「普通じゃないでしょ、少なくともあたしらのみたいに冷凍食品とか入ってないよ! いいないいな、なんかちょうだいよ、麗!」

前方で騒いでいるのは、医療方面に特に大きな力を持つ城ヶ崎グループの跡取だという超が付くお坊ちゃんの城ヶ崎麗(男子十番)を取り巻く一団だ。
豪華な弁当を前に騒いでいるのは、麗の取り巻きたちの中の庶民幼馴染トリオの鳴神もみじ(女子十二番)・木戸健太(男子六番)・朝比奈紗羅(女子一番)だ。

「ちょっと、食事中に騒がしいですよ、埃が立つでしょう! これだから庶民は…っ!」
「君の声も大概騒がしいよ、高須」
「もー瑠衣斗くん、撫子に喧嘩売るのやめて。 ご飯は楽しく食べないと」
「咲良さんの言う通りです…」

騒ぐ3人を咎めたのは黙っていれば大和撫子という言葉が相応しい出で立ちなのだが非常に気の強い高須撫子(女子十番)。
その撫子に静かに意見した真壁瑠衣斗(男子十六番)は中等部からの入学以来ずっと学年首席の座を守り続けている天才だ。
2人を宥める上野原咲良(女子二番)と池ノ坊奨(男子四番)は幼い頃からずっと麗に付き従ってきており、まるで麗の家来のように見える。

恐らく何不自由ない裕福な家で生まれ育った麗、奨、咲良、撫子と、類い稀なる頭脳を持って生まれた瑠衣斗、部活ではそれぞれエース級の活躍をしているという健太、紗羅、もみじ――誰も彼も、幸せに満ちた顔をしている。
きっと彼らにとっては極道の抗争なんてドラマの世界でしか起こり得ない出来事だと思っているのだろう。
911 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:02:28.45 ID:WBne/CcE0(33/65)
どうやら川原龍輝(男子五番)が相葉優人(男子一番)の弁当のから揚げを無断で食べたらしく、優人が怒りの声を上げていた。
その様子を見て、雨宮悠希(男子三番)と内藤恒祐(男子十二番)と望月卓也(男子十七番)が机や手を叩きながら大笑いし、控えめな性格の田中顕昌(男子十一番)はおろおろとして止めようとしているがどうにもできず、集団のリーダー格である春川英隆(男子十四番)は苦笑いを浮かべて優人を慰め、日比野迅(男子十五番)は呆れ顔で龍輝を窘めていた。
クラスの中心で盛り上がるお気楽な集団。
たかがから揚げ一つでそこまで騒げるなんて、なんてお気楽でなんて幸せなの。

「うわぁ、麗さまのお弁当相変わらず豪華ぁ!」

「おせちみたいじゃねぇか、そんなん広げて嫌味かテメェ」

「は? 普通だろこんなの別に」

「普通じゃないでしょ、少なくともあたしらのみたいに冷凍食品とか入ってないよ!
 いいないいな、なんかちょうだいよ、麗!」

前方で騒いでいるのは、医療方面に特に大きな力を持つ城ヶ崎グループの跡取だという超が付くお坊ちゃんの城ヶ崎麗(男子十番)を取り巻く一団だ。
豪華な弁当を前に騒いでいるのは、麗の取り巻きたちの中の庶民幼馴染トリオの鳴神もみじ(女子十二番)・木戸健太(男子六番)・朝比奈紗羅(女子一番)だ。

「ちょっと、食事中に騒がしいですよ、埃が立つでしょう!
 これだから庶民は…っ!」

「君の声も大概騒がしいよ、高須」

「もー瑠衣斗くん、撫子に喧嘩売るのやめて。
 ご飯は楽しく食べないと」

「咲良さんの言う通りです…」

騒ぐ3人を咎めたのは黙っていれば大和撫子という言葉が相応しい出で立ちなのだが非常に気の強い高須撫子(女子十番)。
その撫子に静かに意見した真壁瑠衣斗(男子十六番)は中等部からの入学以来ずっと学年首席の座を守り続けている天才だ。
2人を宥める上野原咲良(女子二番)と池ノ坊奨(男子四番)は幼い頃からずっと麗に付き従ってきており、まるで麗の家来のように見える。

恐らく何不自由ない裕福な家で生まれ育った麗、奨、咲良、撫子と、類い稀なる頭脳を持って生まれた瑠衣斗、部活ではそれぞれエース級の活躍をしているという健太、紗羅、もみじ――誰も彼も、幸せに満ちた顔をしている。
きっと彼らにとっては極道の抗争なんてドラマの世界でしか起こり得ない出来事だと思っているのだろう。
912 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:03:36.00 ID:WBne/CcE0(34/65)
零した。
余談だが、早稀は校内にいる様々なカップルたちを日々観察しているが、健太と上野原咲良(女子二番)のカップルは早稀内ベストカップル賞に輝いている。
一般庶民と超お嬢様、身分の違いを超えた2人の仲睦まじい姿は見ていて心が温まるし、口が悪いところもある健太が咲良の前ではとても優しくなるのは、それ程までに健太が咲良を想っているということがわかり好感が持てる。

とりあえず、葉瑠の言う“イケメン”の基準は、どうやらギャップのある意外に可愛らしい男子であるかどうかが重要視されているらしい。
だが、この基準が満たされるかどうかを知るには、相手をよく知らなければならない。
葉瑠は人を深く知ろうとする意欲がある。
相手のことを表だけではなく全て見ようとする姿勢は誰にでもあるようなものではないので、それを当然のようにできる葉瑠は素敵な才能を持っているのかもしれない。
個性的で恋人もいないという葉瑠だが、いつか葉瑠をわかってくれる人はできるだろうし、その人は葉瑠のこういう面を大切にしてくれるのだろう。

まあ、その候補といえば――

「ところで葉瑠。
 その“イケメン”に優人は入らないの?」

「優人ぉ?
 ないない、アイツは絶対ないってー!」

葉瑠はけらけらと笑った。


「そんな全否定しないでよ葉瑠ーっ!!」


葉瑠の背後に現れた影に、早稀と葉瑠はぎょっとした。
早稀が見上げ、葉瑠が振り返った先には、早稀が先程名前を挙げた相葉優人(男子一番)が今にも泣き出しそうな表情を浮かべて立っていたのだ。
バスケットボール部に所属している優人は、プレイ中の真剣な表情は非常にかっこいいと評判なのだが、部活中以外では常に身に付けている青縁の伊達眼鏡が彼の日頃のお茶らけた性格を助長しているように見える。
この優人は女子に対しては非常に照れ屋なのだが、何故か葉瑠に対しては積極的で、いつも「葉瑠大好きー!!」と叫んでスキンシップを求めているのだ。
全て葉瑠にかわされてしまっているが。

「げっ、優人、何でこんな所にいるのさ!」

「そりゃあ俺の葉瑠レーダーがビビッと反応したっつーか!
 ねーねー、これも運命だって、一緒に帰ろーっ!!」

「どうせ偶然見つけたんでしょうが、運命じゃないっての!
 じゃあ校門まで一緒に帰ってバイバイしよ、どうせ逆方向じゃん。
 じゃ、これうるさいから連れて行くわ、また明日ね、早稀」

「ああっ、葉瑠酷い…でもそこがまた良いよねっ!!」

「うーるーさーいっ、くっつくな鬱陶しい!!」

早稀が口を挟む隙間もない程に言葉の応酬を繰り広げながら、葉瑠と優人は校門の方に向かって行った。
2人がいなくなった後は、まるで嵐が過ぎ去ったあとのようだ。

「何か一気に静かになったな」

早稀はぴくっと肩を震わし顔を上げ、満面の笑みを浮かべた。
優人があまりに騒がしくて全く発言をしなかったが、優人には連れがいたのだ。
早稀は立ち上がると眼前にいる日比野迅(男子十五番)にぎゅうっと抱きついた
913 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:04:30.04 ID:WBne/CcE0(35/65)
それぞれ手に地域限定のお菓子を持った上野原咲良(女子二番)と真壁瑠衣斗(男子十六番)が、バス酔い対策を話し合ってくれていた。
咲良は類い稀なる愛らしい容姿と誰にでも優しい性格で異性人気が非常に高い帝東学院のマドンナ的存在だ。
ここに入る前にちらっと姿が見えた時には、同じサービスエリアに居合わせた他の学校の修学旅行生に声を掛けられていたが、咲良の隣にいた強面で大柄の池ノ坊奨(男子四番)にじろっと一瞥されて彼らはそそくさと逃げて行ってしまっていた。
まるで奨は咲良のボディーガードのようだった(実際は幼馴染らしいのだが)。
本当なら恋人の健太が護ってやるべきだと思うのだが、小さな健太が睨みをきかせてもあまり効果はなかったようだ、お気の毒に。
瑠衣斗は学年一の天才児で、あらゆる試験で常に学年トップの座をキープしている。
表情を表に出さないことが多いのだが、何故か卓也を見る目つきは他の者を見る時とは違い嫌悪感が滲み出ている。
その理由は卓也には見当もつかないので、対処のしようがない。

「あれ、咲良ちゃん…お宅のキングは?」

卓也の問いに、隣にいた英隆がぷっと噴き出した。
咲良も一瞬きょとんとしたが、すぐに可笑しそうにしかし上品に微笑むと、店の奥の方の他校の女子の集団を指差した。

「相変わらずの人気だね、会長は」

「お前が言うな、ヒデ、お前も似たようなモンだろ。
 てか麗サマ女子に埋もれてんじゃん」

女子の集団の中から覗いている茶髪は明らかに城ヶ崎麗(男子十番)のものなのだが、麗は常に満ち溢れる自信とエベレスト級のプライドの持ち主ながら身長は決して高くないので、その顔は卓也たちからは確認できない。
帝東学院中等部の生徒会長でもあり卓也や健太が所属するテニス部の部長でもある麗は、生まれつきの茶髪と白皙の肌と赤みがかった目が特徴的で、口許のほくろが非常に端正な顔立ちに更に色気をプラスさせていることもあり、女子人気は非常に高く今もその容姿に魅かれた他校生に捕まっているのだ。

麗には、カリスマ性が備わっていると卓也は思っている。
卓也は部活での付き合いがあるのだが、彼以上に部長らしい部長はいないと思うし、いつでもつい姿を追ってしまう。
咲良と奨は幼い頃から常に麗の傍から離れないし、紗羅は『麗に憧れて入学した』と豪語しているし、もみじは異様なまでに麗に心酔しているし、健太は麗をライバル視しながらも常に行動を共にしているし、深い人付き合いをしなさそうな瑠衣斗ですら常に麗に付き従っている。
それぞれが、麗に対し何かを感じているのだろう。

「城ヶ崎さん、何をされているんです?
 そんな庶民たちの相手をされるなんて、やはりお優しいですね」

麗に群がる女子たちの間に割って入り麗の腕を引っ張ってその中から救い出したのは、麗を取り巻くグループの最後の1人、高須撫子(女子十番)だ。
麗に群がっていた女子たちが非難の声を上げるが、撫子に勝ち誇った笑顔を向けられると萎縮し、そのままどこかに行ってしまった。
撫子は華道の家元を祖母に持つお嬢様で、艶やかな長い黒髪に上品な言葉遣いと物腰、狐のように吊り上がった目元にキツさを感じるが“大和撫子”と呼ぶに相応しい咲良とは違うタイプの容姿に恵まれた女の子なのだが、恐らくこのクラスで最も家柄に対する偏見が酷い。
914 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:05:40.68 ID:WBne/CcE0(36/65)
麗は季莉から情報を受けるとすぐに上野原咲良(女子二番)を呼んだ。
咲良は麗とは幼馴染であり、家柄の話をすると昔は主君と家臣の関係だったという話を聞いたことがある。
麗の左隣の席であることもあり、咲良を起こしに掛かったのだろう。
間もなく寝ぼけたほわほわとした声で「麗くん…?」と呼ぶ咲良の声が聞こえた。

「咲良、ここは教室で席の並びは普段と同じらしい、周りの奴を起こせ。
 電気のスイッチはどこだろうな…紗羅、芳野!!」

麗は今度は廊下側の最前列の席である朝比奈紗羅(女子一番)と芳野利央(男子十九番)を呼んだ。
紗羅も麗の取り巻きの1人であり、季莉とは波長が合うので仲が良い。
利央は学級委員長で、寡黙ではあるが文武両道である点を麗は認めているらしく、自身のライバルだと公言している。

「ん…麗…?
 あれ、あれあれ、あっれ、何これ、どういう状況!?」

目が覚めららしい紗羅が騒ぎ出した。

「紗羅、ここは俺らの知らない場所だけど多分教室だ。
 前の方に電気のスイッチがないか確認してくれないか?
 足元に気を付けろよ?」

「オッケー!
 瑠衣斗、ねえ瑠衣斗アンタ起きてる!?
 電気のスイッチ探すから手伝ってよ!!」

紗羅は自分の後ろの席にいる真壁瑠衣斗(男子十六番)に声を掛けた。
瑠衣斗は紗羅と同じく中等部から帝東学院に入ってきたのだが、入学以来学年首席の座を一度たりとも手離していない優等生だ。
固い表情を崩すことがほとんどないので、季莉はあまり好きではない。
瑠衣斗も麗の取り巻きの1人であり、紗羅とは数ヶ月付き合った後別れたそうだが今では無二の親友のようで、瑠衣斗は紗羅を相手にしている時だけは表情が緩み笑顔を見せることもある。

どたんっと何かが倒れる音がし、「え、瑠衣斗アンタ転んだ!?大丈夫!?」という紗羅の声が聞こえた後、天井の蛍光灯に灯りがともった。
頭はいいが運動能力は破滅的にない瑠衣斗が床に倒れており、紗羅はその腕を掴んで起こそうとしていた。
スイッチに触れたのは、声は一切聞こえなかったが起きていたらしい利央だった。

ようやく全体を確認することができるようになり、季莉は辺りを見回した。
麗が大声を上げたり紗羅が騒いだりしたこともあり、また周りが明るくなったこともあり、半数以上が目を覚まして身体を起こし、それぞれが不安げな表情で辺りを見回しては近くの席の人と話をしていた。

「季莉…これ、何、どういうこと…?」

ようやく目覚めた早稀が、困惑した表情で季莉を見つめた。
いつも明るい笑顔を浮かべているイメージが強い早稀だが、さすがにこのわけのわからない状況は不安なようだ、当たり前だし季莉も同感だが。
その早稀の首元に、ふと視線が止まった。
赤みの強い茶色に染められたショートヘアなのですっきりと見えている早稀の首元に、見慣れない銀色の物体が巻き着いているのに気付いたのだ。
915 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:07:37.96 ID:WBne/CcE0(37/65)
男子10番須王 拓磨 (すおう たくま)
支給武器チェーンソー
被害者奥村秀夫(男子3番)/霧鮫美澪(女子4番)/剛田昭夫(男子8番)/野村信平(男子18番)/坂東小枝(女子17番)/辻本創太(男子12番)/新城忍(女子9番)
加害者名城雅史(男子16番)
行動経緯山中を息を切らしながら歩いてきた奥村秀夫(男子3番)を見つけ、すぐに襲撃を開始。チェーンソーで首を切り落とし殺害。
次に優勝候補の一人でもある、同じく不良の霧鮫美澪(女子4番)と戦闘。勝利はするものの、顔右半分に、希硫酸による火傷を負うこととなる。
さらに剛田昭夫(男子8番)と野村信平(男子18番)の剣道部コンビを発見。さっそく襲撃を開始する。
戦闘力に定評のある昭夫となかなかの良い勝負を展開するが、汚い手段で勝利をもぎ取る。
怯える信平を楽しみながら殺害。
しばらく後に、坪倉武(男子13番)を追跡している新城忍(女子9番)の姿を発見し、すぐさま追跡する。すると偶然にも忍が武を殺害する現場を目撃。
体力を使い切った忍を追い詰めるも、まんまと逃げられてしまう。
山中をさまよっている内に、坂東小枝(女子17番)を捕まえることに成功するが、そこに現れた柊靖治(男子19番)に銃口を向けられ、小枝を離すように命じられる。しかし上手く靖治を騙し、小枝を殺害。銃を持つ靖治からの逃走にも成功。
かなりの時間が経過した頃、C?5地点のスーパーマーケット内で辻本創太(男子12番)と戦闘。意外にてこずらされ、負傷するものの、なんとか殺害することに成功。
その直後、怒る新城忍と再会し、前回決着がつかなかった戦いに幕を下ろすべく衝突。あわや敗北かという苦戦を強いられることとなるが、悪運に助けられ、なんとか勝利をもぎ取った。
さらに山中へと入っていった彼は、剣崎大樹(男子7番)と名城雅史(男子16番)と石川直美(女子1番)を発見。
奇襲を仕掛けた彼は、先ず直美を崖下へと突き落とし、大樹と激しい格闘を展開するも、一度敗れてしまう。しかし、須王がまだ生きていると知らずに隙を見せた大樹に襲い掛かり、まんまと人質にする事を成功させるが、最後は雅史に大樹ごと撃たれて死亡した。
その他生まれつき右の目は失明していたらしい。
素行が悪く、ありとあらゆる悪行に手を染めており、プログラム開始以前にも5人の命を奪っている。
両親は政府のお偉いさん。
身体のありとあらゆる臓器の場所が、常人とは左右対称となっている。
916 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:09:27.07 ID:WBne/CcE0(38/65)
周りのクラスメイトたちが息を呑むのが空気で伝わってくる中、城ヶ崎麗(男子十番)は小さく溜息を吐いた。
修学旅行に行く途中に睡眠ガスで眠らされ、謎の首輪を付けられて見知らぬ教室に閉じ込められた現状――麗は1つの大きな可能性としてプログラムを予見していた。
その考えをクラス全員の前で披露するわけにはいかなかったので(プログラムかも、だなんて死刑宣告のようなものだ、言えるはずがないだろう?)、真壁瑠衣斗(男子十六番)や芳野利央(男子十九番)に話したところ2人は大きく動揺していたが(瑠衣斗の驚いた顔や、利央の慌てた声――あまりにレアなものを目にしたので、こんな状況じゃなければ笑っていただろう)、2人共心のどこかに「もしかしたらそうではないか」という考えを持っていたらしかった。

戦闘実験、通称“プログラム”。
小学4年生の社会の教科書に登場するし、国語辞典の“プログラム”という項目にも載っているし、ローカルニュースでも年に数回その話題が出るので、大東亜共和国に住む者なら知らない人などいない。
全国の中学校から任意に選出した3年生の学級内で生徒同士を戦わせ、生き残った1人のみが、家に帰ることができる、わが大東亜共和国専守防衛陸軍が防衛上の必要から行っている戦闘シミュレーション。
それが、戦闘実験第六十八番プログラムだ。

しかし、教壇に立つ男は、“戦闘実験第七十二番”と告げた。
麗が知っているプログラムとは違うものなのだろうか。
例えば戦闘実験だからさすがに戦闘はするだろうが命懸けではないとか――いや、あの男は『殺し合いをしてもらう』と言っていたのでそれはないか。

「あ、そういえば自己紹介してなかったっけなぁ。
 俺、今日からみんなの担任の先生になったんよ。
 気軽に、“ライド先生”って呼んでくれてええからな?」

男はライドと名乗り、妖艶という言葉が似合いそうな笑みを浮かべた。
中性的でどこか大東亜人離れした目鼻立ちとそれに似合う肩よりも下まで伸ばされた髪は、こんな状況でなければ女子は見惚れてしまうのではないだろうか。
ややのんびりとした関西弁は、中等部に入るまでは関西の小学校にいたというクラスで唯一関西弁を話す荻野千世(女子三番)にどこか似ていた。

「それから、右からシンちゃん、エッちゃん、アッキー。
 みんな俺の仲間やねん、まあ立場的には俺の助手みたいな?」

「ライド、紹介の時はあだ名で呼ばんといて、空気台無しやん。
 俺はエツヤ、あっちがシンでこっちがアキヒロ」

“エッちゃん”と呼ばれたライドの隣にいたエツヤが改めて紹介した。
こちらも整った顔立ちをしているが、髪には羽根を模したようなアクセサリーを付けていたり厚底の靴を履いていたり、何より他の3人が黒を基調とした服装だというのに1人だけ赤を基調とした派手な服を着ているので最も目立っている。
ライドにツッコミを入れたあたり、根は真面目なのかもしれない。

その隣にいるシンと紹介された男は4人の中では最も背が高い(とは言っても、目算で瑠衣斗と同じくらいなのではないだろうか。身長170cmの瑠衣斗はこのクラス内では平均的な身長なので、シンも周りが低いから高く見えるだけのようだ)。
917 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:10:03.21 ID:WBne/CcE0(39/65)
薄く髭を生やしているので他の面々と同年代だろうということは見て取れる。
咥え煙草をしているのだが、今は火を点けていない。

麗から見て真ん前に立つアキヒロと呼ばれた男はライド程ではないが小柄で線も細く、一見掴み掛かれば勝てるのではないかと思わせる。
しかし、眉ひとつ動かさずに吊り上がり気味の目で教室を見回すその様子から、他の3人同様に只者ではないというオーラを感じる。

「すみません、“担任”というのはどういう意味ですか?
 私たちの担任は塚村先生のはずですが」

麗の2つ右隣の席の如月梨杏(女子四番)が手を挙げつつ質問をした。
銀縁の眼鏡と赤いカチューシャで飾っただけの漆黒のストレートヘアにきっちりと着こなされた制服からその几帳面さが見て取れる梨杏は、非常に成績優秀であるがそれ故に周りの人間を見下した態度を取っており、梨杏に一歩届かない麗もその対象であるために梨杏のことはあまり好きではない。
もっとも、このような状況で普段の授業中に教師に質問するのと変わらない様子で発言をする度胸は、感服せざるを得ない。

「あー、塚村先生?
 先生は話したら快諾してくれて、みんなを見送って家に帰ったと思うけど?
 『生徒たちをよろしくお願いします』ってお願いされたなぁ。
 いやー、生徒思いの良い先生やね」

塚村景子教諭を思い浮かべ、麗は再び溜息を吐いた。
生徒同士が殺し合わなければならないというプログラムに自分の担当する生徒が選ばれて、そんな薄情なことが言えるものなのか。
もちろん、彼女には彼女の家族がいて生活があるのだから国に逆らってでも反対しろとは言えないが(この大東亜共和国という国は、逆らう者は一般市民であろうが射[ピーーー]ることも珍しくないのだ。所詮赤の他人である生徒のために命を落とせ、などとは流石に言えない)、もう少し何か言ってくれてもいいのではないだろうか。

「あ…あの…っ!!」

梨杏の隣、今度はクラス内で2番目に小柄な山本真子(女子十九番)が声を上げた。
左側のサイドポニーが小刻みに揺れているのが麗からも確認できる程に真子はガタガタと身体を震わせており、いつもの明るさは見る影もない。

「お…お父さん…あたしのお父さんは良いって言ったんですか…?
 お、お父さんは、国会議員で…それで…」

「それで、何?」

ライドに切り返され、真子はびくっと一層身体を震わせた。

「そんなん言うたら、このクラスの親御さんはスター揃いやん。
 でも、プログラムは抽選で選ばれるんやから、親がどうとか関係ないねん。
 身分もなんも関係あらへん。
 …まあ、一応親御さんの話が出たから言っとくと、ちゃんとご家族には連絡して、
 ちゃんと了承得てるから安心してくれてええよ。
 大丈夫、反対して向かってきた人もおったけど、全治一週間くらいの怪我や。
 まあ流石に処刑とかできる身分ちゃう人もおるからなぁ。
 いやー…結構プレッシャーやったよな、シンちゃん」

「せやな、ドッキドキもんやったわ。
 めっちゃでかい家も多かったもんなぁ…監視カメラとかついてる家もあるし。
 家の門から玄関までの距離が恐ろしく長い家もあったしなぁ。
 俺もあんな家住んでみたいわぁ」

ライドとシンのやり取りに、真子はもう何も言えず俯いており、その頬を伝った涙がぽとりぽとりと机に水溜りを作っているのが確認できた。
918 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:10:34.42 ID:WBne/CcE0(40/65)
前にいる朝比奈紗羅(女子一番)は眼前にいるシンを睨み付けており、強気な紗羅らしいと思ったが、その胸の内は不安で一杯なのだろう。
真子の後ろの席に座る木戸健太(男子六番)も紗羅と同じようにシンを睨み、紗羅以上に怒りの感情を露わにしていた。
その後ろにいる鳴神もみじ(女子十二番)は幼い頃からの付き合いである紗羅や健太とは違い怯えの表情を浮かべていたが、麗と目が合うと無理矢理作った笑顔を浮かべて「大丈夫だよ」と口パクで伝えてきた。
視線を左側に移す。
池ノ坊奨(男子四番)は麗より前にいてその表情が確認できないが、心優しい奨のことだ、胸を痛めているだろう。
左後方にいる高須撫子(女子十番)の方を見ると、撫子はライドをじっと見ていたので必然的に麗と目が合い、端正な顔を悲しげに歪めた後麗から視線を逸らした。
そして、左隣の上野原咲良(女子二番)は俯いており、長い髪でその横顔の大半は隠され表情は確認できなかった。
プログラムということは、いつも一緒にいた仲間たちとも戦わなければならないのだろうか――いや、そんなことが、できるはずがない。
大体“戦う”とはどのような手段で戦うというのか。
まさか、殴り合い?――そんな野蛮な。

「じゃ、ルール説明するからよく聞いてな。
 なんせ七十二番は初の試みやから、俺もごっつ緊張してんねん。
 わからんことは後で質問の時間作るから、そこでまとめて訊いてな?」

ライドはパンツの後ろポケットから紙を取り出し、それを広げて教卓に置いた。
恐らくそこにはルールが書かれているのだろう。

「えー、まず、今回のプログラムはチーム戦。
 4人1組のチームで戦ってもらうことになんねん。
 で、最後の1チームになるまで戦ってもらう…って感じやな。
 みんなの知ってるプログラムは“最後の1人になるまで戦う”ってモンやろうから、
 そこが今回大きく違う点になるな。
 あ、ちなみにそのチームってのはこっちで決めさせてもらってるからな。
 男女比が丁度やから、バランス良く男子2人女子2人のグループになってるから」

“チーム戦”という言葉に、麗を含めた多くのクラスメイトたちが反応を見せ、教室内の空気がざわついたように感じた。
学校で習った、もしくは常識として知っているプログラムでは、周りは全て敵になっていただろうが、今回のルールでは仲間がいるという。
これは大きい。
仲の良い人とチームになれたら――しかし麗は歯を食いしばった。
麗はいつも8人で行動を共にしている、それはつまり少なくとも4人は仲間にはなれないということになり、チーム構成によってはやはり全員が敵になってしまうのだ。
919 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:11:27.82 ID:WBne/CcE0(41/65)
同じことを思ったのか、右に座る財前永佳(女子六番)が舌打ちしたのが聞こえた。

そして、このチーム戦とやらのルール。
リーダーは他のメンバーの命も背負っているということになる、これはリーダーの精神的負荷はかなりのものになるだろう。
逆に、これはあまり考えたくないことなのだが、他のチームを倒さなければならない状況に陥った場合はリーダーを狙うのが最も効率的(酷い言葉だ)ということになる。

「ただし、リーダーが死んでもメンバーの首輪が爆発しない例外があんねん。
 リーダーが同じチームのメンバーに殺された時は、首輪は爆発しない。
 その場合、リーダーを殺害したメンバーが新しいリーダーになる。
 名付けて、“下剋上ルール”や、かっこいいネーミングやろ?
 これはチームの中で1回限りとちゃうから、何度でも起こるかもしれんからな」

ぞっとした。
これでは、チームメイトは必ずしも心強い味方だとは言えない。
例えばチームメイトからの信頼を勝ち得なかったリーダーは、寝首を掻かれる可能性があるのだ。
それが何度でも繰り返すことが可能なら、酷いチームであれば、リーダーを殺害して新たなリーダーになった人間が更に別のメンバーに殺害され、次のリーダーもまた、という恐ろしい悪循環になるかもしれない。

「それを踏まえてもらったら、基本的には何をしてもらっても構わへんよ。
 ここは後で説明するけど都内の離島なんやけど、人の家に勝手に入っても良い、
 物取っても、何か壊してもても、誰も何も文句言わん。
 人を騙しても、罠に掛けても、信じても裏切っても、何でもアリや。
 チーム同士同盟組むのも別に構わへんし、チーム内で別行動するのもアリ。
 あ、ただし、当然やけどこの島から出るのは禁止な。
 さっきちょっと触れたけど、みんなに付けてもらってるその首輪。
 それはかなり高性能で、みんなの位置をこっちに教えてくれる機能もあるんや。
 不穏な動きを見せるようなら、こっちから電波を送って爆破することもできるから」

成程、こちらの動きは監視されているというわけか――戦闘実験という名前なのだから、当然といえば当然だろうが。
同盟を組むのがありということは、必ずしも他のチームと敵対する必要はないということになるのか――麗は少しだけほっとした。
もちろん、最終的には敵に回さなければならないのだけれど、遭遇即戦闘しなければならないというわけではないのはありがたい(まあ、そもそもプログラム事態が全くありがたくない代物なのだけれども)。

「プログラムの終了条件は、全部で3つ。
 1つは、最後の1チームだけになった場合。
 もう1つは、生き残りがリーダーだけになった場合。
 あ、この“リーダー”は、下剋上でのし上がったリーダーも含めるからな。
 そして最後は、最後の死亡者が出てから24時間誰も死ななかった場合。
 この最後の場合は、残っている全員の首輪に電波を送って爆破するからな。
 つまり、優勝者は無しってことな」

920 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:12:06.23 ID:WBne/CcE0(42/65)
不成立だ、ということなのだろう。
クラスメイト同士の殺し合いなんておかしい、と考えるのは麗だけではないだろうが(むしろほぼ全員がきっとそう思っているはずだ)、この制約がある以上全員が集まって話し合う、という考えは通用しないということになる。

優勝条件は、シンプルなようでいてその実かなり複雑だ。
チームで協力すればいいというだけではない。
何らかの形でリーダーたちが結託すれば、メンバーにとっては他のチームだけでなく自分のチームのリーダーすら敵になりえてしまうのだ。
大きな精神的負荷を負うリーダーに対する配慮としてのルールなのかもしれない。
しかし、“下剋上ルール”とやらによりリーダーもチームメイトに命を狙われる可能性があるのだから、お互い様だとも言える。
チーム戦だが、結局は全員が敵になりかねない、ということだ。

「もちろんみんなにその辺に転がってるモンで戦え、とは言わん。
 みんなには、出発する時に必要な物を入れたデイパックを配る。
 エッちゃん、シンちゃん、持ってきて」

ライドに指示されたエツヤとシンが廊下に一旦出ると、黒いデイパックが大量に載った大きなカゴ車を2人がかりで教室に入れた。

「中には、水と食料、地図、コンパス、腕時計、懐中電灯、そして武器が入ってる。
 武器は、同じ物は入ってなくて、ほんま様々や。
 例えば銃とかナイフみたいなモンから、武器とは言えないモンまで…
 これは適当に配るから、何が当たるかは運次第ってことやな。
 あ、あとさっき言ってたルール説明書も入ってるから、各自確認しといてな」

確かに、積まれたデイパックの中には大きく出っ張った物もいくつかある。
それにしても、銃やナイフが配られるということは、本当にそれらを使って殺し合いをしなければならないということであり、プログラムに選ばれたことを今までよりも実感せざるを得なかった。

「お……おかしい…よ……こんなの……ッ」

不意に声が上がり、麗はカゴ車から声のした方へと視線を移した。
麗の2つ前に座る田中顕昌(男子十一番)がふらふらと立ち上がっていた。
地味で大人しく、普段の授業中には積極的に発言をしない顕昌が声を上げるだなんて非常に珍しいことで、それは顕昌の斜め後ろに座る親友の雨宮悠希(男子三番)ですら驚愕の表情で顕昌を見上げていることが物語っていた。

「えー…田中君?
 質問タイムはまだやねんけど――」

「し、質問というか…お、おかしいですよ、こんなの…!!」

顕昌は震える声で叫ぶと、ぐるりと回れ右をし、教室を見渡した。
その顔は蒼白で、元々垂れ下がった目は一層目尻が下がっているようにも見え、その目からはぼろぼろと涙を流していた。

「ねえ、みんな、何で…黙って聞いてるの…!?
 この人た、ち、俺たちに、殺し合えって…そんなこと言ってんだよ!?
 へ、変だよ…こんなの!!
 お、俺…俺はやらないよ、絶対にやらない、できるわけない!!
 みんなも、やらない、よね!?」

ああ、なんて勇気のあるヤツなんだろう。

麗は今まで田中顕昌という人間を見くびっていたのかもしれない。
ただの大人しい地味で目立たないヤツだと思っていたのだが、こんな所ではっきりと自分の意見が言える度胸があり、そして心優しいヤツなのだ、顕昌は。
そうだ、顕昌の言う通りだ。
何を大人しく聞いていたのだろう。
そもそも大前提として、殺し合いなんておかしいことなのだ。
素直に従ってやる義理などない。

よく言った、田中!

賛同の意を表しようとした、その時だった。
顕昌の向こう側、アキヒロが動くのが見えた。

「ふーん、やらないの、君。
 じゃあ、ここで[ピーーー]ば?」

淡々とした冷たい声。
アキヒロの手に握られた黒い何か――それは、今まで映画やテレビといった画面の向こう側でしか目にしたことのなかった、拳銃。

「田中、危ないッ!!」

麗は立ち上がり声を荒げた。
しかし、麗は、重要なことに気付いた。
麗は顕昌の2つ後方の席――そう、アキヒロの銃口の先に、麗自身もいたのだ。
921 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:13:01.69 ID:WBne/CcE0(43/65)
咲良の声が聞こえたと同時に、麗は咲良に突き飛ばされて永佳の席に突っ込んでいた(それを永佳は受けきることができず、2人はもんどり打って床に倒れ、まるで麗が永佳を押し倒したようになってしまった。――ああ、確かコイツは望月卓也(男子十七番)と付き合っていたな、悪いことをしてしまった)。
起き上がる間もなく数度響いた銃声、上がる悲鳴、足音と机や椅子が動く音。

「アッキー、そんな撃つことないやんかー」

シンの場違いな程に穏やかでまったりとしたテノールボイスによりアキヒロの攻撃が止んだことにようやく気付き、麗は顔を上げた。
押し倒した際に頭突きをしてしまっていた永佳に小さく謝罪をしてから振り返り――目を見開いた。
アキヒロの銃口から麗を逃がした咲良が、左腕を押さえて座り込んでいた。
白い右手を汚しているのは、真っ赤な液体――血だった。

「咲良…ッ!!」

急いで咲良に駆け寄ると、咲良は苦痛に歪めていた顔に無理に笑顔を浮かべ――無理をして浮かべている笑顔なのにそれでも愛らしく見えてしまうのが咲良の凄いところだ――ほっと息を吐いた。

「麗くん、怪我はない…よね…良かったぁ…」

「馬鹿、お前が怪我してんだろうが!!」

「あたしはいい、いいの…麗くんが怪我してないなら、それで、あたしは…」

いいはずがあるものか。

確かに、幼い頃に親や祖父母から聞かされていた城ヶ崎家の歴史によれば、城ヶ崎家はかつては大東亜の土地に数多くあったとされる国々のうちの1つの国主の家柄で、その頃から、いやそれ以前から城ヶ崎家に仕えてきた家が2つあったという。
その2つの家は、現在までずっと城ヶ崎家と共にあり、有事の際には城ヶ崎家を最優先に護ることが現在も家訓であるとされているという。
その末裔が、池ノ坊家の奨と、上野原家の咲良。
つまり、奨と咲良は、常に麗と共にあり、万が一の時にはその身を投げ打ってでも麗を護ることを幼い頃から両親祖父母らに口酸っぱく言われてきたのだろう。

しかし、麗はそんなことを望まない。
麗にとって、奨と咲良は幼い頃からずっと共にいた親友であり仲間なのだ。
麗を護るためだと言って奨や咲良が傷付くことを、良しとできるわけがない。

特に咲良は、俺にとって、ただの親友じゃねえ…
俺はずっとずっと、ガキの頃から、咲良を――

いやともかく、あのアキヒロという男は、咲良を傷付けた。
赦せるはずがない。

「テメェ、咲良に何しやが――」

麗はアキヒロを睨みつけるために教室の前方に顔を向け――目を見開いた。
がたがたに動かされた机や椅子の脚の間から見えているものに目を奪われ、それが何かということを一瞬判断ができず(いや、もしかしたらわかっていたのかもしれないけれど、脳が認めることを拒否したのだと思う)、ようやくその正体を理解した時、咄嗟に咲良の頭を抱えるように手を伸ばし顔を麗の胸に埋めさせた。
922 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:17:49.14 ID:5Z+c/Bmio(1)
WBne/CcE0 荒らしは帰れよ。
923 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:18:01.22 ID:WBne/CcE0(44/65)
田中顕昌(男子十一番)の突然すぎる死に、教室内にはいくつもの悲鳴が重なり合って響き、黒板の前に並ぶ政府の人間たちから少しでも離れようと自分の席を放棄して教室の後ろ側にクラスメイトの大半は逃げて恐怖に顔を引き攣らせている。
木戸健太(男子六番)も自分の後ろの席に座る幼馴染の鳴神もみじ(女子十二番)の手を引きながら後方に下がり、同じように朝比奈紗羅(女子一番)を連れてきた真壁瑠衣斗(男子十六番)と共にもみじと紗羅を隠すように立ち、ライド(担当教官)たちを睨みつけた。

中には、動かないまたは動けない者たちもいた。
友人が射殺される瞬間を間近で見てしまった平野南海(女子十四番)や雨宮悠希(男子三番)は腰を抜かしてしまい、その場にへたり込んでしまっていた。
アキヒロ(軍人)が放った銃弾のうちの1つが自らの机に着弾した鷹城雪美(女子九番)は座ったままじっと穴の開いた机を見つめており、隣の席の榊原賢吾(男子七番)の声にも無反応だった。

そして、健太たちをいつも引っ張っているリーダーの城ヶ崎麗(男子十番)。
麗の幼馴染であり、健太の彼女である上野原咲良(女子二番)を護るように抱き締めながら、ライドたちの動きをじっと見て警戒心を露わにしている。
近くの席の池ノ坊奨(男子四番)と高須撫子(女子十番)も2人の傍に寄り添い、やはりライドたちの動きを警戒しているようだった。

「さ…咲良…怪我してるよね…大丈夫かな…」

紗羅が後ろで不安げに呟いた。

そう、咲良は怪我をした。
アキヒロが銃を構えた瞬間、咲良は躊躇なく麗を護るために動いたのだ。
一歩間違えれば、今頃顕昌と同じ運命を辿っていたかもしれないというのに。

『上野原家の代々の家訓でね、“城ヶ崎家を守る”っていうのがあって。
 奨くんの家のも同じような家訓があるの。
 まあ、平和な今の時代に言われても、あまりピンとは来ないんだけど』

いつだったか、咲良はそう言って笑っていた。
しかし、咲良は動いた。
それは家訓が身に染みついていたのか、代々城ヶ崎家に仕えてきた上野原家の血がそうさせたのか――いや、咲良のことだから、そんな建前など関係なく、友人を護るために気が付いたら身体が動いていたのだろう。
それが、健太が心惹かれる上野原咲良という人間だ。

そんな咲良を護るのは自分であるべきなのに、今咲良を抱き締めているのは、麗。
健太よりもずっと長い間咲良を傍に置いていて。
健太が生まれるずっと昔から血で結ばれた関係があって。
2人の関係には、健太も立ち入ることはできなくて。
しかも誰がどう見ても、咲良と麗はお似合いで。
麗は健太より頭が良くて、運動ができて、テニスも上手くて、容姿も良くて、家柄も良くて――何一つ敵うことがない大きな壁だ。

924 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:20:04.02 ID:WBne/CcE0(45/65)
千尋「というわけで始まりました、@とStar☆Dustの座談会だよん♪ inマクド!」

栄「前も言ってたじゃん『というわけで』! 何回目よ?」

千尋「多分3回…? 意外と少ないよ?♪」

翔「千尋は『というわけで』がお気に入りだもんなー」

千尋「はやるよ!」

大和「いや、はやらんから」

純「なんで関西弁やねん!」

渉「お前も関西弁だぞ」

里佳「なんかおかしい…」

草子「いや、喋る前におかしいとか言うな、まとめるなっ!!」

礼「俺、マトモだぞ!」

杏奈「そんな事ないと思うよー」

栄「ま、この中で1番まともなのはやっぱりあたしだけどね♪」

千尋「あ、またよくわからない事を。 てか俺のチャームポイントの“♪”を取らないでくれませんかぁ?」

翔「怖っ!!」

純「不破は死してなお健在だな…」

千尋「だって俺はいつでもフレッシュだし♪」

大和「てかこっち側って俺以外全滅してるじゃねーかっ!」

渉「一応俺は改稿の方では生きてるけどな」

純「不破なに言ってんの? 俺の方こそフレッシュだから!! “純”って名前こそフレッシュ☆みたいな?」

礼「俺もフレッシャだぞ!!」

里佳「フレッシュャって何?」

栄「新しい飲料水じゃん?」

礼「お、おう! 俺の味がするぞ!!」

草子「誰が飲むかっ!!」

渉「…美味いのか?」

翔「おうれの味っておまえの汗の味?」

大和「キモッ!!飲みたくねぇ!!」

千尋「早くも3回の字間違いが出てる変な礼クン、里佳チャン、翔クンも交えて座談会をお送りします☆」里佳「字間違いっていうか、あんたの名前があたしには“干尋”に見える」杏奈「干してんの!?」千尋「…それは管理人が悪いんだよ。 俺は千の尋と書いて千尋なんだよ。 ほら、頭良いっぽいでしょ? 実際めちゃくちゃ良いけどね☆」

大和(何か似たようなヤツが俺のダチにいるような…双子か?) 注)常陸音哉です。

 

千尋「じゃあ、まずは自己紹介と、今何をしているか、順番に言っていこうか☆ 俺はStar☆Dust・FC3人気NO.1の頭脳明晰以下略の不破千尋だよん♪ 終磐盤でもう殺し合いしないでいいって言ってんのにどっかのアホアホ勝クンに殺されちゃった☆」

翔「アホアホ言うな!! 俺のパパだってこと忘れたのか!!」(前回のプチオフ会in神戸座談会より)

栄「ちなみにあたしがママだって忘れたのか!!」

千尋「あー…はいはい。 次、里佳チャンね☆」

里佳「あたしは1人殺った」

純「すげぇ!! やるな!!」

草子「そこ褒めるところじゃないから! あたしはStar☆DustのFC2の女子ジェノ、今村草子だよ。 4人…だったか? 今は死んでるけど」(後に調べました。2人でした。一緒にいた江原清二がほとんど殺していたので/汗)

里佳「あたしは初始まってすぐに殺ったからね!!」

栄「キャラ違うんじゃない…? @の山名大美人主役山名栄ちゃんは大親友の園田冴さんと行動中☆」(もう少し取り消し線があるんですが、ネタバレに関することなので省略します)
925 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 07:24:46.57 ID:WBne/CcE0(46/65)
1位・不破千尋(FATED CHILDREN ?)
49票(15×3+4)



本人コメント
2年連続首位かぁ、ま、当然だよん♪ でも、とにかく俺を1番好きって言ってくれた人、俺も好きよ…あ、1番じゃなくてもみんな大好きよ☆ 本編は終わっちゃったけど、また会えるといいねぇ♪

・メガネですwwどこまでもカッコよかった
・89話の勝との掛け合い大好きです。
・全てが好きです。あの決め台詞を近くで言ってもらいたいくらい好きです。
・めがねマニアですから
・あの口調や行動全部好きです!
・最期までちーちゃんらしく、自分を貫き通す姿がステキでした

麻「うわ、なんだこのコメント」

喬子「うーん…さすが不破くんって感じだよね、この言い回しが」

嵩「ちょっと生意気じゃね? ヤキ入れるか?」

凛「返り討ちに遭うだろうからやめときなよ」

 

2位・相模晶(ENDLESS NIGHTMARE ?)
44票(14×3+2)



本人コメント
去年から1位を不破くんに取られたとはいえ…多くの方に票を入れていただいて、恐縮ね。 改稿版ではより一層活躍できるかはわからないけれど頑張りますのでよろしく。 これをお礼の言葉に替えさせて頂くわ。

・かっこいい
・憧れる
・改稿版の方が人間味があって好き

麻「せめてこれくらいの謙虚さを、おれは不破に求めたいねっ」

嵩「み…3日目までは俺は相模に勝ってたんだぞ!!」

凛「でも最終的に2位と23位じゃん、足元に及んでないよ?」

喬子「あ、あぁ…森くん、気を確かに!!」

 

3位・井上稔(FATED CHILDREN ?)
44票(13×3+5)



本人コメント
うぃー。 ども。 つーかさ、俺が不破みたいにメガネで天才なら1位になれたのか? 別にいいけど。 俺を1番に選んだ13人、サンキューな。 その他でも入れてくれた5人もサンキュー。

・プログラムを壊す為に何をすればいいのか試行錯誤する姿や、口が悪く攻撃的な反面友達思いという性格が現実の人間らしく思えたから
・かっこいい
・友だちに欲しい
・不良なのに人を救うギャップがいい

喬子「…うーん、それは最早井上くんではないと思うんだけど…」

麻「そうだよな、馬鹿でガキだからこそ、井上さんは井上さんなんだから」

凛「おぉっと麻、それは初恋の君への言葉ですか??」麻「……うるさいっ(///)」嵩「え、お前みたいな男女でも恋なんてするのか――いてぇっ!! 殴るなっ!!」4位・和久瑛介(ENDLESS NIGHTMARE ?)43票(14×3+1)本人コメント……あと少しで礼に負けるところだったのか、おしかったな、礼。 2年連続の4位、どうも。 ちなみにどうでもいいが、顎に手を当てるのは癖なんだ。 そこんとこよろしく。・メガネ男子好きなので・・・
・イカス!!!!・クールでかっこよかった凛「へぇ、癖なんだ」喬子「えっと、なんでも、和久くんの元になった人の癖をいただいたらしいよ」嵩「それにしても感謝の言葉が少ないんじゃね?」凛「でも、ベラベラ喋る和久も変だと思うよ」5位・良元礼(ENDLESS NIGHTMARE ?)41票(13×3+2)本人コメント
うーわ、ここ何年かの傾向だと今年は瑛介に勝てたはずなのに…しかもあと一歩かよ! ま、いっか。 ランクアップには違いないわけだし。 みんな、応援サンキューな!!・生にしがみつく人間性がよかった・最後の一言「俺だって死にたくないだけなのに・・・」に胸を打たれた
・死神を受け入れた所も、時折見せる情の厚いところも彼らしくて好き
・実は良い人&一番頑張ったから・私の抱く委員長像を見事にぶっ壊してくれたカッコ良い子・ジェノの中で1番好き
・死神が当たっても、悪魔になりきれないほど本当は優しくてナイーブだったから喬子「ちなみに、良元くんの左胸元にあるごちゃごちゃってしたのは委員長バッヂだよ!」嵩「“委員長”って字、見事に潰れたな」凛「順位が1番上がったのは良元なんだよね、オメデトさん!」麻「どうでもいいけど、今回の10人の中で管理人が1番気に入ってる絵はコイツだよ」6位・坂出慎(FATED CHILDREN ?)
33票(10×3+3)本人コメント
うわ、俺落ちたの? マジかよー。 ま、しゃーないわな、全然出番も何もないわけだし……良元とかもないけどなっ。 俺が好きっつってくれたみんな、サンキュー!! あと稔とセットで好きっつったみんなもあんがと!!・あのラストシーンは感動!!・彼のように生きたい・真っ直ぐで不器用だから・o(`へ`)○☆パンチ!・自分が囮になって稔を逃がす最期のシーンが好き・中野さんが亡くなるところの坂出君がすごい格好よかったから麻「それにしても、自分の出席番号ロゴの入った服って…」喬子「あはは、偶然でしょ、というよりも管理人のイマジネーション不足」嵩「あ、俺と同じでスモーカーかよ!! パクリだ、ヤキ入れに…」凛「だから、返り討ちに遭うからやめなってば」7位・江原清二(FATED CHILDREN ?)31票(9×3+4)本人コメント
ハッハー!! ランクアップだってよ! みんな、ようやく俺様のかっこよさに気付いたか? 俺の名前を選んでくれたヤツら、ありがとな!! すっげー嬉しいぜ!!・やっぱりあの政府戦はかなりキてましたwwジェノが仲間になったってパターンはすごい好き・やる気じゃなくなってからの格好良さは有無を言わせなかった・最後の死に様がかっこよかった!!さすが最強の男!!麻「“ヤツら”言うな、アンタなんかを選んでくれた人たちだろうが」凛「やったねー、清二!! おめでとう!!」喬子「ここで裏情報…茶髪だったり黒髪だったりの江原くん、設定資料では金髪でした!」嵩「人様に送ってもらったっつーのに、とんだ粗相だな、しかも今気付いたのかよ!」
926 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 09:16:33.75 ID:KXt2AITgo(1)
なんか気持ち悪いのに居着かれちゃって災難だねえ
927 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 10:35:32.71 ID:wwkxdeS/0(1/2)
だから自分のスレでやれよ
お前のなんかNG行きなんだから
928 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:19:17.65 ID:WBne/CcE0(47/65)
 浜田智史(男子十八番)に引き連れられながら、清太郎は傾斜のある細い山道を歩く。目的地まで距離はもうさほど無いと聞いたせいか、その足取りはとても軽快なものになっていた。
 時折、雨風によって道が崩されている箇所があったりしたが、いずれも大股開きで進めば乗り越えられる程度の難所である。先を進む大柄の智史が軽いジャンプで飛び越えても、山道は崩れたりしなかったので安心できた。
 清太郎も彼に習って、山肌の岩や、柵がわりのロープに手をかけたりしながら、難なく歩を進めていく。
「なあ浜田」
 清太郎が話しかけると、智史は前を向いたまま「なんだ」と返してきた。
「さっき言っていた、メールで呼ばれた、って話について詳しく聞きたいんだが」
 すると智史が歩きながら振り返る。
「そうだった。俺らが集まるってことを、お前は偶然耳にしてやってきたんだったな」
「ああ。さっきも言ったが、増田と西村の会話を聞いてな」
「分かった。これが俺に送られてきたメールだ」
 智史がズボンのポケットから取り出した携帯電話を開き、差し出してくる。
 星矢中学校では通常授業の日のみならず、行事の際も携帯電話を持ってくることを禁止とされているが、律儀にそれを守っている者は半数程に過ぎない。今回の林間学校でも智史のように、携帯電話を持参している生徒がかなりいるようだった。
 清太郎は智史の携帯電話を受け取り、明るく光る画面を覗き込む。

 日時:2013年6月--日 13:16
 発信者:吉野梓
 本文:G-5の洞窟?に集まろう(by角下

 短くまとめられた本文を見て、清太郎は首をひねった。
「これを見て、浜田たちはこのエリアに来る事を決めたってわけか?」
「そうだ。が、何か納得していない様子だな」
「色々と考えさせられる所が多いメールだと思ってさ」
「あー、まあそうだな。俺もこれを見た当初は気になったことが多々あったわ。本文に書かれてる名前と発信者が違うこととかさ」
 末尾に書かれている名前から、このメールの文面を考えたのは角下優也(男子六番)だと推測できる。だが発信者は吉野梓(女子23番)となっている。なぜか別人である。
 清太郎はこの矛盾について、数秒間考えた。
「携帯電話を持っていなかった角下が、吉野のを借りてメールした、ってところか?」
「その通りだ。真面目に学級委員をやっている角下は、今回も校則を破ってまで携帯を持ってきたりはしていない」
 智史の話し方から、少なくとも角下優也か吉野梓のどちらかとは既に洞窟で合流していて、当人からこれらの話を聞いたのだろうと察することができる。
 もじゃもじゃ頭を掻きながら、眉を寄せる清太郎。
「それより気になったのは、このメールが送られてきた時間だ。この13時過ぎってタイミングは、プログラムについて江口やエアートラックスから説明を受けていた頃じゃないか?」
「そうだな。正確には、説明が大方終わって、プログラムへの意気込みを無理やり発表させられていた頃だ」
「おかしくないか? 俺らは船に乗り込んで、かなり沖の方にまで出ていたんだぜ。携帯電話の使用圏外だったはずじゃないか」
 すなわち、メールの送信も発信も、当時サンセット号の中では行えなかったはずである。
「確かに海の上でメールは通じない。だがほんの一瞬、携帯電話の電波が通じる瞬間があったんだ」
「どういうことだ? もっと詳しく説明してくれ」
「俺たちを乗せた船が、ある有人島のすぐ傍を偶然通りかかったんだ。その瞬間、島の電波圏内に入って携帯電話が通じるようになった。角下はそのチャンスを見逃さず、クラスメートに一斉送信した」
929 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:19:43.99 ID:WBne/CcE0(48/65)
「なるほど。もしや電波が通じる瞬間があるかもしれないと賭け、あらかじめ本文を打ち込んでいた。そしてそれが功を奏した、というわけか」
 クラスメートたちを特定のエリアに集めるために取られた手段の全貌が見えてきたところで、次にこのメールの送信先を確認してみた。すると、実に十数名ぶんものクラスメートのアドレスが表示され、それだけの人数に宛てて同じメールが送られていたことが判明した。
「このメール、携帯電話を持っているクラスメート全員に送った……ってわけではないよな」
「吉野の携帯にアドレスが登録されている人間の中で、ある程度信用できる人間に絞って送信した、と角下は言っていたな」
言われてみれば確かに、メールの送信先のほとんどが女子であり、しかも吉野梓に近しい人間が中心のようだった。角下優也もさすがに他の生徒のアドレスまで記憶しているはずがなく、これ以上送信先を広げることができなかったのだろう。
「つっても集合場所に向かうまでの道中で、メールを受け取らなかった奴も合流したりして、なんだかんだ男子も結構な人数が集まってきてるけどな」
 送信先のリストに智史の名前はあったが、佐久間祐貴の名は見当たらなかった。つまり祐貴は誰かに導かれてやって来た側の人間、というわけだ。
「ちなみに、集合場所をG-5の洞窟にしたのは、皆がどこからでも向かいやすい会場のほぼ中心で、かつ目印として分かり易いと思われたからだと言っていた」
「たしかに、船のモニターに映し出されていた地図に、洞窟らしきイラストが描かれていたな」
 モニターに映った地図を見るやいなや、クラスメート達とどこに集まるかすぐに画策し、兵士達の目を盗みつつ急いでメールを打ち込んで送信する。それだけのことを、あの状況下で冷静に、短時間で実行したとなると、角下優也の行動力とはたいしたものである。
「そんなこんな話しているうちに、見えてきたぞ」
 道を塞ぐかのように脇から伸びてきている太い枝の下をくぐりながら、智文が前方を指差した。
 草葉の隙間の向こうに、岩の山肌にぽっかりと空いた穴が見える。元々人が立ち入らないよう閉鎖されていたのを無理に開放したのか、錆び付いた鉄柵が穴のそばに立て掛けられていた。
 洞窟は奥に長く続いているのか暗く、突き当たりが視認できない。
 薄汚れた岩によって頑丈に形成されている洞窟には、得体の知れない生物でも飛び出してきそうな不気味さがあった。
 清太郎は少し不安な気分に襲われた。集合場所の洞窟は見えたが、その周囲に肝心の人の姿が無いのである。
「なあ浜田。先に到着してる奴らはどこにいるんだ? 洞窟の中か?」
「いいや。いずれは中に身を潜めたいんだが、どうやらまだ駄目らしい。今は皆、そこいらの茂みの中か岩陰にでも潜んでいるはずだ」
「なんで中に入れないんだ」
「説明が難しいんだが、首輪の電波がな……。いいや、俺よか角下か尾崎に説明してもらったほうがいい」
 ここで初めて智文の口から尾崎良太(男子五番)の名前が出てきた。吉野梓のメールの送信先に良太は含まれていなかったはずなので、ここにいるのならば、彼も誰かに導かれて来たということだ。
「おーい、角下。俺だ。高槻を連れてきたぞ」
 細い山道を抜けて洞窟前の広場に出たところで、智史が周囲に呼びかけた。すると茂みの一部がガサガサと揺れて、数人のクラスメートがゆっくりと姿を現した。その先頭に、皆が集まるよう画策した張本人である角下優也が立っていた。
「お疲れ様、浜田。そして高槻、よく来てくれた」
 そう言いながら優也は、膝まで隠れてしまう雑草の海原を歩き、近づいてきた。武器は持っておらず、まっすぐこちらに右手を差し出してきた。
「よろしく」
 清太郎もならって手を伸ばし、優也とがっちりと握手を交わす。
「こちらこそ。連絡をとる手段がなくて諦めかかっていたけど、高槻には是非来てもらいたかったんだ。歓迎するよ」
 雄也の中性的な甘いマスクが微笑んだ。
930 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:20:43.50 ID:WBne/CcE0(49/65)
2014/04/02 16:33:13 ジョニーズ裏事務所 ジョニー様 (最新作:1984年度市立桜丘中学高3年A組プログラム)
2014/03/30 23:58:57 Star☆Dust 水金翔様 (最新作ENDLESS NIGHTMARE ? 2001年度群馬県桐生市立巴ヶ丘中学校3年2組)
2014/03/23 15:12:48 A LITTLE SELF-RESPECT チキン様 (最新作:?Hope in Despair? 2009年度鳥取県水木町立水木中学校3年B組)
2014/03/23 10:26:42 グリーンアップル スミレ様 (最新作:Tommorow is Another Day? 1997年度山梨県居八小中学校全生徒)
2014/03/12 01:53:30 若紫文庫 松風美奈子様 (最新作:BATTLE ROYALE?The Gatekeeper? 1999年度兵庫県神戸市立月港中学校3年A組)
2014/02/07 01:00:01 毒人間の館 若丸進二様 (最新作:楽園島の門番姫 千葉県私立星矢中学校三年三組)
2014/01/29 03:59:20 愛鳥週間 りん様 (最新作:Blue Heaven 2003年度東京都私立大東亜女学園3年D組)
2014/01/01 13:47:51 das verlorene Paradies 司城誠治様、鈴鹿征治様 (最新作:この国に生まれてよかった 2005年度熊本幼年学校3年)
2013/11/23 10:41:18 Victory KML様 (最新作:鎮魂歌 1997年度香川県城岩中学校3年B組)
2013/10/28 17:04:18 NIGHT BLOOD 紫堂カムジ様 (最新作:P×P/Live now. 1999年東京都江戸川区立淺木西中学校3年A組)
2013/08/18 02:09:56 あいまいみい 源彩璃様 (最新作:あの子の空箱 2002年度東京都私立尾鳥女子中学校 三年紫組)
2013/08/13 22:25:53 N.enu. ユウキナオ様 (最新作:ソラアワセ 2005年度 愛知県立第二竜神中学校 3年C組)
2013/07/15 20:01:47 A castle IN the air カヤコ様 (最新作:FREE WORLD -僕等の自由世界- 2000年度静岡県芙蓉市立次郎丸中学校3年0組)
2013/01/20 10:50:54 徘徊行路 ひいな様 (最新作:バトルロワイアルペティー 2005年度S県立第三高等学校英文科2年A組)
2012/10/09 19:27:27 オセロ堂 ひま様 (最新作:2000年度広島県広島市立三津屋中学校3年3組プログラム)
2012/06/08 17:04:44 枯渇 サチ様 (最新作:希い 2006年度沖縄県那覇市立井筒西中学校3年2組)
2012/05/03 22:51:38 selfish HEROs 藤沢克己様 (最新作:battle royale -dead end- 1999年度高知県森下町立陽生中学校3年C組)
2012/04/27 13:54:20 Doomsday 夜空様 (最新作:Underworld Dream 1995年度新潟県静海市立静海中学校3年1組)
2012/04/07 20:04:54 そんな気分で雑草魂 四季々たかゆき様 (最新作:プレゼント 2002年度神奈川県横浜市はばたき中学校三年五組)
2012/02/28 21:29:11 ファンタジスタ! 佐倉恭祐様 (最新作:善悪の彼岸 2007年度 静岡県私立菊花学園高等部2年虹組第二期)
2011/12/06 10:22:13 Last Message みかど様 (最新作:Graduation 東京都港区立皇中学校三年五組)
2011/11/15 10:06:41 あの日の空の色 霧風ライキ様 (最新作:何所か空のふもと 2001年度石川県前沢市立星辰中学校3年4組)
2011/10/09 23:37:24 Life goes on 浅俊カイ様(最新作:Innervisions 1998年度 神奈川県逗子市私立昭栄学園中学校3年A組)
2011/08/05 03:11:11 かみさまはこども のの様 (最新作:still 山形県遊佐町立花笠中学校三年A組)
2011/07/13 06:09:04 Red Unbrella 崩様 (最新作:A reason of existence 沖縄県立城中学校3年4組)
2011/05/25 02:47:54 ガルナの塔 がるな様 (最新作:らせん階段 2006年度岐阜県板鳥市板鳥第六中学校3年E組)
2011/05/24 16:27:43 Heaven’s Gate ミバル様 (最新作:2002年度私立星絢学園中等部3年D組プログラム)
931 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:22:02.94 ID:WBne/CcE0(50/65)
目が覚める。末広恭子(担当教官)登場。無理なことを言って暴れた桜木絢香(女子9番)が、末広に撃たれて死亡。スマイル0円。
女子9番 桜木絢香 死亡
[残り44人]

2:説明。そして出発。
5月28日 3:30 試合開始

3:林真理(女子15番)、平山円(女子16番)、松尾彩(女子18番)、合流。超人的な動きで、彩が他の2人を殺害。
女子15番 林真理
女子16番 平山円 死亡
[残り42人]

4:誉田光一(男子20番)、湯浅崇(男子23番)、渡辺麻衣子(女子22番)、合流。

5:飯山満(男子3番)、出発。と思いきや、突然瀕死の村上優介(男子22番)を発見。旭澪(女子1番)が自らの犯行を告白するが、逃走。満は優介を運ぶが、その途中で息絶えてしまう。
男子22番 村上優介 死亡
[残り41人]

6:泣いていた満のもとに、光一、崇、麻衣子が現れる。麻衣子が、香取晋吾(男子7番)と千葉有二(男子13番)からの伝言を満に伝える。

7:麻衣子の語り。菅野美香(女子11番)、ハブ決定。

8:鈴木琢磨(男子11番)が現れた! 光一が左腕を撃たれるが、麻衣子が頑張って返り討ちにする。最後まで3人でいよう、とまとめる。
男子11番 鈴木琢磨 死亡
[残り40人]

9:5月28日 6:00
第一回放送。飯山満(男子3番)、香取晋吾(男子7番)、千葉有二(男子13番)、合流。メンタル弱い有二が、村上優介(男子22番)の死に男泣き。蚊取り線香と花火ファミリーセットで夏を先取り。

10:菅谷由子(女子11番)、ご乱心で市川奈美(女子3番)と大久保みのり(女子4番)を殺害。
女子3番 市川奈美
女子4番 大久保みのり 死亡
[残り38人]

11:旭澪(女子1番)、村上優介(男子22番)を殺害してしまったことを後悔する。また、小学生の頃いじめられていた原因であった越川修平(男子9番)に対して謝りたいという気持ちが募る。修平とのことは分かりやすく書いていたらダイジェストではなくなってしまうので割愛。ふらりとやってきた矢切奈緒(女子20番)に全身を撃たれて死亡。
女子1番 旭澪 死亡
[残り37人]

12:不良グループメンバー紹介。

13:成田正則(男子18番)と布佐愛美(女子17番)。正則が愛美を殺し、その後正則自身も自[ピーーー]る、と話がついたところで、影からいきさつを見守っていた秋山要(男子1番)が登場。正則が本性を表し、要と戦闘になるが、ボウガンで首を撃たれて死亡。
男子18番 成田正則 死亡
[残り36人]

14:新木正太郎(男子2番)と小林太一(男子10番)。日頃の恨みを晴らすべく太一が正太郎を殺害するが、いつの間にやら近くにいた岩井誠(男子4番)に太一も殺される。
男子2番 新木正太郎
男子10番 小林太一 死亡
[残り34人]

15:初石滋(男子19番)がぐだぐだしていた個人病院に、飯山満(男子3番)、香取晋吾(男子7番)、千葉有二(男子13番)が乗り込んでくる。一緒に脱出しないか、と言われるが、滋はそれを拒否。そこを明け渡し、去る。

16:満、晋吾、有二で脱出大会議。どう考えてもあたまわるい。

+中盤戦・前半+
17:5月28日 10:45
中山佳代(女子13番)、小見川悠(男子6番)と出会う。一緒に中山翔(男子17番)を探すことに。
932 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:22:31.93 ID:WBne/CcE0(51/65)
第二回放送。越川修平(男子9番)、旭澪(女子1番)の死体を発見。近くにいた松尾彩(女子18番)に脚を撃たれるが、なんとか逃げ出す。

20:誉田光一(男子20番)、湯浅崇(男子23番)、渡辺麻衣子(女子22番)。ふらふらしてるところに修平がやってくる。怪我して倒れている彼を助けるべく、4人で近くの文房具屋に侵入。

21:4人で色々話しているところに、ホラーな感じの菅谷由子(女子11番)が登場。

22:由子が暴れる。麻衣子が殺されそうになるところを修平がかばう。その隙に崇が由子を殺害。
女子11番 菅谷由子 死亡
[残り33人]

23:修平、失血死。由子を殺害してしまった崇は軽く凹む。
男子9番 越川修平 死亡
[残り32人]

24:高柳航(男子12番)と豊四季早苗(女子12番)。うだうだしてるところに中山翔(男子17番)がやってくる。

25:3人で、小見川悠(男子6番)、中山佳代(女子13番)、矢切奈緒(女子20番)を探すことに決定。

26:飯山満(男子3番)、香取晋吾(男子7番)、千葉有二(男子13番)。へらへらしてるところに翔がやってくる。

27:晋吾が頑固なせいで翔がキレて攻撃。晋吾が脚に負傷するも、3人で逃げ出す。

28:5月28日 14:30
布佐愛美(女子17番)のラブ☆ダイアリー。一緒にいてくれた秋山要(男子1番)に胸中を伝え、自ら死を選ぶことに。要が去った後、禁止エリア発動。首輪爆発で愛美死亡。
女子17番 布佐愛美 死亡
[残り31人]

29:小見川悠(男子6番)と中山佳代(女子13番)、少し打ち解ける。

30:そこにやってきた要。一番の仲良しさんである愛美の死を聞いて、佳代は凹む。話すだけ話して要は去る。

31:初石滋(男子19番)。3年前、プログラムで亡くなった姉に想いを馳せる。矢切奈緒(女子20番)に撃たれるが、気合で逃げ切る。

32:でも背中撃たれて瀕死。小室華(女子7番)が寄ってくる。しかもこんな場面で告られる。ちょっと幸せになりながら息絶える。
男子19番 初石滋 死亡
[残り30人]

33:奈緒の過去、というか、矢切さん家の家庭の事情。滋と華のところまで追いつき、華のことも射殺。
女子7番 小室華 死亡
[残り29人]

34:飯山満(男子3番)、香取晋吾(男子7番)、千葉有二(男子13番)、色々くっちゃべる。

35:5月28日 18:00
第三回放送。中村匠(男子16番)、試合放棄中。やってきた岩井誠(男子4番)に、めんどいから殺しちゃってくれーと言って殺害される。
933 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:23:00.59 ID:WBne/CcE0(52/65)
男子16番 中村匠 死亡
[残り28人]

36:誠、匠のディパックの中から防弾チョッキ入手。

+中盤戦・後半+
37:5月28日 18:40
菅野美香(女子10番)。ハブられたことが結構ショック。誉田光一(男子20番)、湯浅崇(男子23番)、渡辺麻衣子(女子22番)とのことを色々回想。そうしたら錯乱してきた。そんなところにタイミング悪く塚田遼(男子14番)が現れた上に告っちゃったりしたのだが、耳に届かず。メダパニ状態で、遼のことを殺害。
男子14番 塚田遼 死亡
[残り27人]

38:政府サイド。二作目・Voiceに繋がる部分。

39:渡辺麻衣子(女子22番)の過去とか。菅野美香(女子10番)を待ってあげられなかったことを後悔。誉田光一(男子20番)と湯浅崇(男子23番)でちょっと気まずくなったり。

40:千葉有二(男子13番)、単独行動開始。疲れて立ち止まっていたら、木の上から旧友・三咲愛(女子19番)が飛び降りてきて、同行開始。

41:加瀬明奈(女子5番)と吉田有花(女子21番)。墓地にいたが暗くて怖くなってきたので移動開始。するとすぐに岩井誠(男子4番)からの襲撃が。明奈が有花を逃がすが、明奈はそこで殺されてしまう。
女子5番 加瀬明奈 死亡
[残り26人]

42:松尾彩(女子18番)、菅野美香(女子10番)を発見。尾行開始。

43:千葉有二(男子13番)、三咲愛(女子19番)に訳の分からないことを言う。禁止エリアから出るために走りまくる。

44:その後。なんとか禁止エリアを出てどっと疲れているところに、岩井誠(男子4番)が強襲。愛が殺害される。有二は負傷しつつも逃げ出す。
女子19番 三咲愛 死亡
[残り25人]

45:菅野美香(女子10番)が転んだのを機に、尾行していた松尾彩(女子18番)が姿を現す。さらに誉田光一(男子20番)、湯浅崇(男子23番)、渡辺麻衣子(女子22番)も来る。彩が美香を撃ち、怒った麻衣子も彩に向けて発砲。彩、逃走。3人に見守られる中、美香死亡。その直前に崇に想いを告げる。
降雨開始。
女子10番 菅野美香 死亡
[残り24人]

46:灯台内で、空気鉄砲とトランプで遊んでいる木下達也(男子8番)と三橋朋和(男子21番)。サッカー部トークをしていたら、激しいノック音と、外川俊(男子15番)の助けを求める声が。

47:実ははったりでした。俊を信じた朋和も、疑っていた達也も殺されてしまう。トランプと空気鉄砲じゃ銃に敵いようがない。
男子8番 木下達也
男子21番 三橋朋和 死亡
[残り22人]

48:5月28日 23:50
第四回放送。高柳航(男子12番)、中山翔(男子17番)、豊四季早苗(女子12番)。航がえげつない。

49:5月29日 0:05
政府サイド。二作目・Voiceに繋がる部分その2。

50:小見川悠(男子6番)と中山佳代(女子13番)。悠の身の上語り。そんなことしてたら前方から矢切奈緒(女子20番)が。

51:少しだけ会話をするが、やはり奈緒はだめでした。悠と奈緒で少しだけ撃ち合いをし、お互いに負傷。傘を投げてその隙に逃げる。

52:誉田光一(男子20番)、湯浅崇(男子23番)、渡辺麻衣子(女子22番)。菅野美香(女子10番)の死に凹む。崇が自分たち4人の気持ちのループに気付く。

53:同じグループだがお互い嫌い合っていた、倉橋彩乃(女子6番)と永田麻由(女子14番)。麻由が寝ている隙に殺害しようとした彩乃に、麻由が気付く。結局相打ち。
女子6番 倉橋彩乃
女子14番 永田麻由 死亡
[残り20人]

54:吉田有花(女子21番)、加瀬明奈(女子5番)の死に凹む。泣いていたら松尾彩(女子18番)に話しかけられる。話していたら、外川俊(男子15番)の襲撃。彩のことを庇って、有花、死亡。
女子21番 吉田有花 死亡
934 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:23:34.01 ID:WBne/CcE0(53/65)

[残り19人]

55:彩、俊のことを殺害。有花に庇われたことで、プログラムが始まってから初めて感情にブレが生じる。生き残って総統になり、国を変えることを改めて決意。
男子15番 外川俊 死亡
[残り18人]

+終盤戦+
56:5月29日 4:10
飯山満(男子3番)と香取晋吾(男子7番)。帰りが遅い千葉有二(男子13番)の身を案じる。そこに矢切奈緒(女子20番)が乗り込んできて大変大変。二手に別れて逃げる。

57:奈緒、筋肉痛。満と晋吾がいなくなったので、ゆっくり休んでいたら花火に襲われる。帰ってきた晋吾に仕業。花火やらトラップやらにやられながらも、翔に関する情報を聞いた上で晋吾を射殺。
男子7番 香取晋吾 死亡
[残り17人]

58:5月29日 5:50
第五回放送。雨やんだ。佐久間菜々(女子8番)、松尾彩(女子18番)を探すべく動き出す。

59:千葉有二(男子13番)、飯山満(男子3番)と再会。離れていた間のお互いの経緯を話していたら、石毛真琴(女子2番)に割り込まれてきた。

60:真琴がいたという家に、満と有二も入っていく。この銃いらない? と言われ、あたふた。

61:実は余命5年なんです、という告白。なんやかんやありつつ、3人で行動することに。

62:中山翔(男子17番)の寝起きは悪い。豊四季早苗(女子12番)は冷静。高柳航(男子12番)は相変わらずえげつない。

63:佐久間菜々(女子8番)、林真理(女子15番)と平山円(女子16番)の死体の側にいた秋山要(男子1番)を見て、要が2人を殺したのだと思い込む。その上切りつける。これは正当防衛だ、と言われた後、要にボウガンで胸をと腹を刺されて死亡。
女子8番 佐久間菜々 死亡
[残り16人]

64:大原有輝(男子5番)。軽く現実逃避しながらもマメに生還確率を計算。中山翔(男子17番)、高柳航(男子12番)、豊四季早苗(女子12番)が近づいてくるのを見て、陰から発砲。航に当たり、翔が反撃してくる。逃げた先にいた岩井誠(男子4番)に即射殺されるという空しさ。
男子5番 大原有輝 死亡
[残り15人]

65:そこに現れた松尾彩(女子18番)。組まない? という誘いに、誠がのる。ちょ…お前ら2人が組んだら最強だろ、という展開。

66:5月29日 10:15
小見川悠(男子6番)と中山佳代(女子13番)。睡眠をとるのとらないのと話していたら、探知機に3人組の反応が。佳代が一人でそちらへと向かう。

67:やっぱり中山翔(男子17番)、高柳航(男子12番)、豊四季早苗(女子12番)でした。翔は佳代に言いたかったこと、感謝の気持ちを全て伝える。なのに佳代のこと射殺しちゃってえええええ! しかもその現場を悠に見られる。
女子13番 中山佳代 死亡
[残り14人]

68:皆あたふた。お前の気持ちも分からんでもないが、やっぱり許せんわー、と悠が翔に銃を向ける。またギャラリーがえええええ!ってなっているところ、矢切奈緒(女子20番)がやってきて航を殺害。
男子12番 高柳航 死亡
[残り13人]

69:奈緒さんテンション上がりすぎ。佳代の体を撃とうとしたところ、その間に悠が割り込んでくる。そして失血死。悠と航に対する奈緒の態度にむかついた翔が奈緒を殺害。
男子6番 小見川悠
女子20番 矢切奈緒 死亡
[残り11人]

70:5月29日 11:45
第六回放送。渡辺麻衣子(女子22番)が大人気ない。誉田光一(男子20番)がよく分からない。湯浅崇(男子23番)は特に何もしていない。放送を聞いて残りのメンバーを考えた上で、秋山要(男子1番)に会いたい、ということになり動き出す。

71:麻衣子、自暴自棄になる。色々話しているのに光一が走って遠くへ。崇もついていくので、麻衣子も仕方なくそちらへ。その先にいたのは岩井誠(男子4番)と松尾彩(女子18番)。菅野美香(女子10番)を殺された恨みがあるので、光一は彩に敵意むき出し。頑張って彩のワルサーを麻衣子にパスはできたけれど、油断している隙に肩を撃たれる。その後も色々あったけれど、崇が無理矢理麻衣子を連れて逃げる。光一は失血死。
935 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:24:19.07 ID:WBne/CcE0(54/65)

1 旭 澪
所属: 水泳部
身長: 149cm
知力 ★★★★★
体力 ★★★
統率力 ★★★
敏捷性 ★★
攻撃性 ★★★
決断力 ★★★
2 新木 正太郎
所属: 卓球部
身長: 156cm
知力 ★
体力 ★
統率力 ★
敏捷性 ★
攻撃性 ★★★
決断力 ★★★
2 石毛 真琴
所属: バレー部
身長: 155cm
知力 ★★★★
体力 ★★★
統率力 ★★★
敏捷性 ★★★★
攻撃性 ★
決断力 ★★★★
3 飯山 満
所属: 陸上部
身長: 172cm
知力 ★★★
体力 ★★★★★
統率力 ★★★★
敏捷性 ★★★★
攻撃性 ★★
決断力 ★★★★★
936 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:24:52.68 ID:WBne/CcE0(55/65)

4 岩井 誠
所属: 水泳部
身長: 160cm
知力 ★★★★
体力 ★★★★
統率力 ★★
敏捷性 ★★★★
攻撃性 ★★★★★
決断力 ★★★
4 大久保 みのり
所属: 調理部
身長: 154cm
知力 ★★★
体力 ★
統率力 ★
敏捷性 ★
攻撃性 ★
決断力 ★★★
5 大原 有輝
所属: 水泳部
身長: 165cm
知力 ★★★★
体力 ★★★★
統率力 ★★
敏捷性 ★★★
攻撃性 ★★★
決断力 ★★★
5 加瀬 明奈
所属: バレー部
身長: 152cm
知力 ★★★★
体力 ★★★★
統率力 ★★★★★
敏捷性 ★★★★
攻撃性 ★★★
決断力 ★★★★★
6 小見川 悠
所属: 無所属
身長: 170cm
知力 ★★★★
体力 ★★★★
統率力 ★★
敏捷性 ★★★★
攻撃性 ★★★★
決断力 ★★★★★
6 倉橋 彩乃
所属: 陸上部
身長: 158cm
知力 ★★★
体力 ★★★
統率力 ★★
敏捷性 ★★★
攻撃性 ★★★
決断力 ★★★
7 香取 晋吾
所属: サッカー部
身長: 179cm
知力 ★★★
体力 ★★★★★
統率力 ★★★★
敏捷性 ★★★★
攻撃性 ★★★
決断力 ★★★★
7 小室 華
所属: バスケ部
身長: 150cm
知力 ★★★
体力 ★★★★
統率力 ★★
敏捷性 ★★★★
攻撃性 ★★
決断力 ★★★★

937 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:26:10.78 ID:WBne/CcE0(56/65)
阿久津啓太(男子1番)が柳浩美(女子18番)と行動を共にして、3時間近くが経つ。

分かっていたことだが、浩美には緊張感が足りない。
啓太の隣を歩きながらも、鼻歌を歌っていたりする。
なぜ。なぜこの状況――プログラムで、そんなお気楽に歌っていられるのか、啓太には理解できなかった。
若干苛つくが、それは彼女を嫌う理由にも、遠ざける理由にもならない。
柳浩美という人間がそのような人物であることを、啓太は小学生の頃から知っていた。
それに1年数ヶ月前――彼女が部活内でいじめに遭っていた時はこんな様子は見られなかったし、今こうやっていられるだけでもありがたいことなのだ。
浩美が本来の自分を取り戻し、普通に生活できている。それは素晴らしいことなのだ。

――と、自分に言い聞かす。


「浩美」
「なぁーにぃー?」
ほんの2,3歩前、支給武器であるカッターナイフを右手でカチカチ動かしながらふんふん歌っていた浩美が立ち止まり、振り返る。
その顔は相変わらず笑みを湛えており、啓太のことを本当に信頼しているのだということが見て取れる。
額に手をあて、はあー、とあからさまに大きくため息をつくと、啓太は「お前さぁ」と話し始める。
「もう少し緊張感持とうか。放送の前だけどさ、銃声聞こえただろ? やる気になってる奴はいるんだよ。なのに浩美はカッター振り回してふんふんふんふん! ちょっと落ち着けよ」
「ええー…」
少し叱っただけなのに、笑顔は泣きそうな顔に一転する。
本当に、表情豊かな奴だ。

「だってさ、ただでさえ辛気臭くなるじゃん、プログラムなんて。だからせめて浩美くらいは、いつも通り明るくいようかと!」
「いやー…石川とか川添とか、それこそ芝田さんも変わらないんじゃないかぁ?」
「あっ、そうだ! 川添!」
カッターを握ったまま、浩美は顔の前でぽん、と両手を合わせる。
ああもう、刃が出てるだろ危ないな。
「川添もね、ほら、小学校一緒で、浩美昔から仲良かったでしょ? それを知った美穂ちゃんが川添にも声かけてくれてさ。美穂ちゃんの次に、川添のお陰かなー今の浩美があるのは! あ、あくっちゃんはその次くらいね!」
またにこっと笑う。ここまで表情がころころと変わる人もなかなかいないだろう。
「俺は川添より下か」
「だってあくっちゃん見た目が怖いしー。あと川添のお母さんとうちのお母さんが仲いいから、それもあったって美穂ちゃん言ってた!
とにかくね!」
カッターを持った手を下ろし、浩美は啓太を真っ直ぐ見上げる。

「川添にもお礼言いたいから、付き合って!」

もちろん、啓太の中で"Yes"の回答の用意はできている。
頼られていることも嬉しくないわけではない。
しかしなぜこいつはこうも緊張感がないのか。

もう一度ため息をつきそうになったところで、思い出した。
そうだ、我々には許された通信手段があるではないか。

「電話…」
「え?」
呟くような声だったので聞こえなかったのだろう、浩美は大げさに首を傾げる。
「電話、できるんだよな、1人3回。川添や芝田さんに電話してみろよ」
啓太の言葉を聞き、浩美はカッターの刃をしまうとそれで何度か頬をつついた。特に意味のない、何かを考えている行動だろう。
「でもさ、もし今、美穂ちゃんが誰かから逃げてたら? 誰かから隠れてたら? そんな時にケータイ鳴らされたって、困るだけじゃないかなあ。下手したら命に関わるよね。
938 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:27:03.00 ID:WBne/CcE0(57/65)
つまり浩美は、自分のことよりも、電話を受ける相手――今で言うならば、川添聡(男子4番)や芝田美穂(女子6番)の身の安全を気にしている、ということだ。

「浩美さあ」
「なにー?」
「お前そうやって人のことばっか気にしてっからいじめられたんじゃねぇの?」
その瞬間、浩美の表情が固まった。
つい先刻まで様々な彩りを持っていた彼女の顔が、色彩を失う。
「…ごめっ、ごめんっ……」
知らなかった。 こっちから過去のことに触れるのは、タブーだったのか。
浩美が自分から話題に出してくるから気付かなかったが、確かに彼女が出す話題にいじめられた原因などなかった。
誰の手によって、どのように立ち直ったのかが、殆どだったではないか。

フリーズした浩美の右目から、涙が一筋こぼれ落ちた。
「あっ…あれぇー? なんで浩美泣いてんだろー…」
おい、自覚ないのかよ。
そう思いつつも、目を擦る浩美の頭を撫でる。
やはりあの数ヶ月は、彼女の中で大きな傷となっているのだろう。

今後は、こちらからは触れないようにしよう。


「うっす! あくっちゃんと浩美?」
浩美の頭の上に置いた右手の向こう、顔を上げるとこちらへ向かってくる男子生徒が見えた。
薄暗くなりつつあるがまだ分かる。あれは先程少し話題にも出た、石川佳之(男子2番)だ。
出発時間があまり離れていなかった故、そんなに行動範囲が離れていなかったのだろうか。
「石川…」
「え、あくっちゃん浩美泣かしてんすか。何してんすか。うわーやだわー!」
いつもと同じ調子で、佳之は啓太をからかう。
「ちがっ…これはだな、俺が泣かしたんじゃな…いや、俺が泣かしたんだけど……」
「うあーあくっちゃんいいから! 石川うざい!」
「えー俺がうざいってー? 傷つくわー」
浩美は啓太をかばい、そして佳之に向かって刃を出していないカッターを振り回す。

「はっはっ。まあ浩美が泣きやめばそれでいいさ」
「え、何そのキャラ。石川ってそんなんだったっけ? きもっ」
「浩美、お前石川には厳しいな…」
次から次へと浩美から罵詈雑言を受けるが、佳之はびくともせずににんまりと笑っている。そしてゆっくりと、口を開いた。

「な、お前らはさ、何色だった? あのくじ引き」
「ああ、あれか。俺が青で――」
「浩美は赤だよ!」
まとめて言おうとしたことを、途中から浩美に引き継がれた。
「そっ…か」
すると佳之は、こちらから目元が見えなくなるくらいまで俯く。
そして数秒後顔を上げると、少しだけ、笑った。
939 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:27:42.18 ID:WBne/CcE0(58/65)
その表情から、決して純粋に“可愛い”キャラクターではないのだが、箕田保葉(女子16番)にとっては違った。
とあるショッピングモールの中にあるファンシーショップの店頭で一目見た瞬間に胸を射ぬかれ、その時同行していた母親に買ってもらったのが、今持っているぬいぐるみだ。
頭の部分にチェーンがついているので、帰って即行通学鞄につけた。
それからもう1年近くが経つので、大分黒ずんできたのだが――それでも、最初に手に入れたものだからか愛着がわき、そのポジションから外すことはなかった。

それが保葉にとっての初代シナティちゃんだ。
しかしこのキャラクターを好きな人間はどうやら少なくないらしく、今この大東亜共和国では色々なグッズが販売されている。
少ないお小遣いを貯めて、保葉は様々なグッズを手に入れてきた。
今この場に所持しているだけでも、財布、ペンケース、シャープペンシル、ボールペン、ストラップ、ハンドタオル、そしてぬいぐるみだ。
家には全長50センチもあるぬいぐるみがあり、それはいつもベッドの片隅に座っている。
友人たちには、「保葉は本当にシナティちゃん大好きだよね」とよく言われた。家に来たことがある人には、その大きなぬいぐるみに驚かれたりもする(「シナティちゃん大っきい! 可愛い! 持って帰りたい!」と言っていたのは、柳浩美(女子18番)だっただろうか)。

そんな、“可愛い”シナティちゃんに囲まれて生活するのが幸せだった。
調理部の活動では、シナティちゃん型のクッキーを作って友人たちに振舞ったこともある(ちなみにそれはとても出来が良かったので、その写真を携帯電話の待ち受け画面に設定してある)。


今保葉は、A=04、島の端にいる。
そこは崖になっていて、眼下には真っ黒な海が広がっている。
時間のせいかすごく静かで、波が打ち寄せる音だけが、何度も何度も、飽きもせず聞こえてくる。
膝を抱え、シナティちゃんを握り締める。

怖い。
怖くてたまらない。
出発の時は大分混乱していて、どうしたら良いのか分からず、とにかく一人でここまで来てしまった。
こんな島の端の、ましてや崖になんて誰も来ないだろうと思い、ここに落ち着いて数時間経つ。
せめて浩美のことくらい待てば良かったかな、と今になって思う。
でももう、どうしようもない。
出発してもう何時間も経つ。放送だって2回も流れた。それにもうこんな時間だ。
同じグループの芝田美穂(女子6番)、中村結有(女子10番)、そして浩美の名前がまだ呼ばれていないだけ、気分が少し楽だ。
940 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:28:39.17 ID:WBne/CcE0(59/65)
保葉の視線の先、暗くて見えないが、鈴木典子(女子8番)が品の良い微笑みを浮かべた気がした。

「こんな時間にこんなところで一人? 何をしているの?」
落ち着いたまま、典子は言葉を続ける。
「別に、何も…。何をしてるわけでもないんだ。ただ、どうしていいのか分からなくて…」
ざあん、と波が打ち付ける音。それに自分の声がかき消されそうになる。
「そうね…。何をしたらいいのか、って…ここではすごく難しい問題よね」
「典子ちゃんは? 典子ちゃんはどうしてるの?」
典子のグループを思い浮かべる。南早和子(女子17番)は早々に退場してしまったが、水谷怜子(女子15番)は生きている。
「そうね…怜子や早和子に会えればよかったんだけど、番号が離れてるせいか無理だったわ。だから私も、保葉ちゃんと同じ。ずっと一人よ。それで、もうこんな時間」

なんてことないことだが、少しほっとする。
今まで誰にも会っていなかったからなのだが、他のクラスメイトがどうしているのかはずっと気になっていた。
典子はウェーブのかかった茶色いロングヘアー(地毛であることを学校に届け出ているらしい)に、他の国の血が混ざっているのではないかと思うような濃い顔立ちをしている。
さらに、高校生の彼氏がいると噂で聞いたことがある。
その上この言葉遣いに、それに伴った雰囲気だ。
そんな、自分とはまるで違う世界に生きているような典子が、『保葉ちゃんと同じ』なんて言ってくれることが、少し嬉しい。
この状況で自分の行動指針が見えないのは、誰だって同じなのだと――気休めなのだろうが、安心できる。

「ね、保葉ちゃんは何色だった? あの、最初に引かされたくじ」
「ああ…あれ?」
右手をブレザーのポケットに入れ、保葉はくじの一片を差し出した。
「見える? 青」

全然、警戒などしていなかったのだ。
典子も同じ、自分と同じ人間なのだと、安心していたから。

「あら…そうなの。青なの。大変だわ。
――私は、違うのよ。赤なの。だから保葉ちゃんのこと、殺さなきゃいけないわ」

「……え?」
目が点になる。
典子が何を言っているのか、聞こえてはいた。
でもその内容、それがどういう意味を示しているのか――それを理解するのに多大な時間を要した。
今、典子ちゃんは何て言った?
私のことを、『殺さなきゃ』って?
なんで…なんでそんないきなり……。

「保葉ちゃんの後ろは、崖よね。そこから海まで、どのくらいの距離があるかしら」
今度も少し、時間がかかった。
「や…いやっ……。典子ちゃん、私をっ……」
声が震える。胸の鼓動が大きくなる。

典子は少しずつ、こちらに寄ってくる。
私のことを、ここから突き落とすつもりなんだ…!
脳内を恐怖が占めていく中、保葉はできるだけ冷静になるように努める。
でもやはり怖い気持ちはなくならない。まさに今、文字通り“背水の陣”なのだ。
典子が一歩進むと、保葉は半歩ほど後ずさる。
それを何度か繰り返すと、二人の距離はほんの数十センチになった。

「やめて…典子ちゃん、やめて……」
首を横に振り、懇願する。
「いやよ。だって私、生きて帰りたいもの」
典子はあっさりと言い放つ。

はた、と気付き、保葉はスカートのポケットに手を伸ばす。そこには、支給武器であるスタンガンが入っている。
典子の発した言葉から推測する通り、保葉のことを『殺さなきゃいけない』のであれば――スタンガンで、少し動きを止めるくらいはできるだろう。
そして、その隙に逃げられれば――

スタンガンを握る右手に、ぐっと力を入れる。
941 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:29:22.00 ID:WBne/CcE0(60/65)
目の前の小久保梨瑛(女子5番)がこの部屋を出て行ってからというもの、滞りなく、2分毎にクラスメイトが減っていった。
小林唯磨(男子6番)、芝田美穂(女子6番)、志摩雄士(男子7番)――
高橋錬志郎(男子8番)も早い内に出て行ってしまったので、今、名張志保美(女子11番)の前の机は、3つとももう誰もいない。

末広恭子(担当教官)が生徒の名前を呼ぶ以外はとても静かで、誰かの時計が1秒毎に時を刻む音がいくつかずれて聞こえてくるだけだった。
前に誰もいないからだろうか。志保美は机に額がついてしまいそうなくらい俯き、膝の上で汗ばむ両手を握っていた。
耳の後ろでツインテールにした髪の先が机の天板をかすめ、素直に3回書いた、“私たちは、殺し合いをする。殺らなきゃ殺られる。”の文字列をところどころ隠している。

志保美はもう、自分の行動を決めていた。
“彼”がどう思うかは分からない。でも、自分自身としては決めた。
見えたから。“彼”が引いたくじの色が。そしてそれが、自分と同じ色だったから。
向こうからこちらは見えないので、今“彼”はやきもきしているのだろう。
でも、大丈夫。大丈夫だよ。

「女子10番 中村結有さん」
「…はい」
後ろから暗い声色の返事が聞こえ、中村結有(女子10番)が鞄を持って前へと出る。
「はい、では中村さんも、皆の方を見て、あれを言って下さいね」
恭子に促されると、結有は教室内をざっと見渡し、「私たちは、殺し合いをする。殺らなきゃ殺られる」と、授業中の教科書の朗読のように言った。
その後、弥富(兵士)からディパックを受け取り、姿を消した。

播磨。私は播磨と同じ、白だよ。
顔を上げ、丸い目で左斜め前の恋人――播磨文男(男子13番)の背中を見つめる。
後ろ姿しか見えないが、彼は机の上で両手を軽く組み、少し俯いた姿勢をとっている。
自分のことを考えてくれているのだと思う。自分たち二人の色が同じかそうでないかで、多分出発後の行動が大きく変わるだろうから。

だけど大丈夫だよ、播磨。私たちは同じ白組なんだから。
この事実を早く伝えたい。それを知っているかいないかで、彼の気分が全然違うであろうので。

「男子11番 富田政志くん」
「はーい」
今度も後ろ。でも結有とは反対の右側から、妙に気の抜ける富田政志(男子11番)の返事。
志保美の右側の通路を、滑らかに進んでいく。
男子にしては長い政志の襟足を見ながら、優しいこの子の姿を見るのも、これで最後なのかもな、などと思う。
政志は茶髪だししかも長いし更に前髪にメッシュを入れているので教師受けは良くなかったが、志保美はよく優しくしてもらった。
周りに対する気配りや思いやりが絶えない子で、そんな彼の気持ちに何度も助けられたことがある。
授業中、何かの実験等で出席番号で組む時も率先的に動き、周りの負担を減らしてくれる。そういう子だ。

富田くんとも同じ色だったらいいな。
ふと、思う。
同じ色だったら、一緒に生きて帰れるかもしれないのだから。

「私たちは、殺し合いをする。殺らなきゃ殺られる。じゃ、行ってきまーす」
恭子に何を言われずとも、政志は例の“儀式”をやってのけた。
そして笑顔で――いつもの優しい彼の笑顔で、大きく手を振って、ここから出ていった。
彼が何を思ってそういった行動に出たのかは分からないが――少なくとも志保美の心は、少し、ほんの少し、和んだ。
942 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:30:00.48 ID:WBne/CcE0(61/65)
山川陽介(男子17番)が、こちらをちらりと見上げる。
それに気付かぬふりをして、一歩、また一歩と足を踏み出す。
古川景子(女子13番)は組んだ腕を机の上に置き、黒板をぼうっと見つめているようだ。

そして、その前の文男の席。
机の上に、志保美はぽん、と左手を置いた。
その瞬間、文男はほんの数ミリ、顔を上げた。
しかし志保美は立ち止まらず、すぐにその手はどけた。
だけど、これで良いのだ。これで彼に、自分の意思が伝わっていると信じたい。――否、信じている。

外で待っている、と。

「はい、では名張さんも」
恭子に言われ、志保美は今来た道を振り返る。
文男と目が合う。彼はしっかりとこっちを見ている。
きっと伝わった。私の気持ち。

「私たちは、殺し合いをする。殺らなきゃ…殺られる」
『殺られる』の前で少し間ができてしまった。殺されるなんて、嫌だ。
大丈夫、播磨と一緒なら、私。

「では出発して下さい」
左を向き、出口へと向かう。寺本(兵士)からディパックを受け取り、それを両手で抱え、廊下へ出た。
右側は兵士がいて通れなくなっており、左に進むしかない。
そちら側にも通路の両脇に銃を装備した兵士が数メートルおきにおり、恐怖に思わず足がすくみそうになる。
しかし負けない。数分待てば――6分待てば、また文男に会えるのだ。

兵士たちに沿うようにして進むと、恭子が言っていた通り、右側に階段があった。
駆け下りるようにして、志保美はそこを下っていった。
2階分の階段を降りると、昇降口までの道筋をまた兵士が両脇に立って作りあげていた。
バスの中で拉致されたため、既に白いスニーカーをはいている。
そのまま外に出ると、まっすぐ行くとすぐ門――これは裏門だろう、それがあり、左側は図書館らしき建物と、通路を挟んで手前に武道館がある。

辺りに人の気配はない。皆、すぐにここを離れたのだろうか。
恐る恐る、今降りてきた校舎と武道館の間にある狭い通路を覗き込む。誰もいない。その向こうには渡り廊下、そしてその奥はグラウンドが広がっているのだが、そこにも誰かいる様子はない。

とにかく、どこか目立たないところに早く行かねば。
こんなところでもたついていたら次の中西翼(男子12番)が出てきてしまう。
志保美はその通路でグラウンド方面へ行き、武道館を背にし、渡り廊下に座り込んだ。
ちらりとのぞくと、ちょうど翼が大きな体を現した。彼もどこに行こうか迷ったのだろう、少々まごついた後、裏門方面へと向かっていった。

時間が経つのが遅い。
志保美は腕時計をしていないので(ディパックの中には入っているそうだが)、実際の時間がどうも分からない。
播磨。早く。早く出てきて。
膝をぎゅっと抱え、志保美は祈った。

また首だけ少し出してのぞきこむ。
さっきからほぼ2分後だったようで、服部伊予(女子12番)が翼と同じ方向に走っていくのが見えた。
それを見て、ほっと息をつく。
次に出てくるのが文男なのもあるが、伊予はいわゆるギャルで、ちょっと怖いと思っていたので近寄りたくなかったのだ。

次は文男の番だ。
志保美は立ち上がると、昇降口へと向かった。


「播磨」
兵士が列を成す中、現れた文男に向けて声を発する。
「名張っ…!」
文男はその整った顔を、まるで泣きそうに歪める。
「播磨、こっち。誰もいないから」
志保美は喋りながら、文男の手を握って今までいた武道館の陰に引っ張っていく。

「名張、ありがとう。待っててくれて」
右手には荷物を持っているので、左腕だけで文男は志保美を抱きしめる。
「何言ってんの。当たり前じゃない」
志保美は文男の胸に顔を埋め、微笑んだ。

「ね、播磨さ、あの色、白だよね?」
さり気なく、志保美は体を離す。
「…見えてたんだ?」
「うん、見えた。でね、私も白なの」
すると志保美は、ブレザーのポケットから白いくじを取り出し、文男に見せた。
943 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:30:50.32 ID:WBne/CcE0(62/65)
口をすぼめ、石川佳之(男子2番)は頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でた。


みぞおちに拳を入れ、意識を失わせてきた、水谷怜子(女子15番)。
同じ青の人間なのに、彼女はこちらに銃――シグ・ザウエル P225を向けてきた。
だから、殴った。
殺しはしない。[ピーーー]必要などないし、できれば殺したくなどないからだ。

怜子が言っていた、『生き残らせたい』人。なんとなく、想像はつく。確信は持てていないけれど。
でも彼女に、賛同はできない。
やっぱり俺は、俺が生き残って帰りたいから。

でも怜子にはできれば生きていてほしい。
なぜなら彼女も佳之と同じ、“やる気”な人間だからだ。
同じ色に属するもの同士、他の2色の人間を殺していけば――いや、違うのか。彼女は色など関係なしに殺していくのだろう。
なんにせよ、プログラムの進行を促してくれる存在に変わりはない。
あの時は自分の身を守るために気を失わせたが、そろそろ目は覚めただろうか。また、クラスメイトを殺しているだろうか。
あんたが俺の死を望もうが、俺はあんたの生を望むよ。
だから頑張ってくれよな。


今のところ、怪我らしい怪我は鳥羽和信(男子10番)に白ワインの割れた瓶で刺された左脚くらいだ。
足首に近いところを鋭利なもので刺されたので大分痛みはあったが――真弓雪之進(男子16番)を小学校で殺害した直後、すぐ側にあった保健室で治療をした。
治療と言っても、暗い中懐中電灯で傷口を照らしてガラスの破片を取り除き、消毒をして包帯を巻いたくらいだ。本当に簡単な、素人にしかできないこと。
念のため、消毒液と包帯はもらってきた。
今は慣れてきたためか、その傷のことはあまり気にせずに歩くことができる。他人から見たら少し不自然に見える歩き方はしているかもしれないが、とにかく。

今歩いているのはH=06。北上しているので、右手側に山が見える。
怜子を気絶させてから山を少しうろついたが、銃声は何度か聞こえはしたものの、その発信源となる人物とは遭遇しなかった。
どうであれ、プログラムが進行しているというのはいいことだ。もちろん、青の人間が優位であれば、の話だが。
辺りは特に何もなく、山に沿うようにアスファルトで舗装された道路ができている。
ずっと土の上を歩いていたせいか、この固い感覚がなんだか懐かしい。

ふと、緩やかなカーブをえがいている道の先に、人影が見えた。
ふたつ、ということは分かるのだが、佳之は授業中や勉強中だけ眼鏡をかけているので、今は視力が決して良くはない状態だ(戦闘において眼鏡をかけるほど細かいことを気にしなくてはいけないことがあるとは思えないので、それはディパックの奥底にしまってある)。それ故、誰なのか全く分からない。ズボンをはいているのは分かるので、両方とも男、ということくらいしか。
誰だ…? まあ誰だろうと、最初は疑うんだけど。
もう随分手に馴染んできたベレッタM92を、ズボンのポケットから引き抜く。
そしてそのまま、銃口を下に向けたまま歩き、人影に近付いていく。

やがてふたつの人影は立ち止まり、片方が「石川くん」と声をあげた。
944 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:31:33.30 ID:WBne/CcE0(63/65)
だ。
「あと、一緒にいるのは…ごめん、よく見えなくて。もう結構暗くなってきたし」
「俺、田丸」
「田丸か…」
田丸大輔(男子9番)。
なぜ、この二人が一緒にいるのか…?
普段の生活から考えて、マンツーマンでいるところがあまり想像できない組み合わせだ。
きっと色が同じなのだろう、という仮定を立てた上で、佳之はベレッタを持つ右手に力を入れた。

「お前らさ、同じ色だよね?」
佳之がそう言うと、大輔と朋彦の緊張が高まるのが空気を通して伝わってきた。
「それは…俺たちが一緒にいるからそう思うわけ?」
「まあそうだよね。だってさ、色が違ったら一緒にいるメリットないでしょ、このルールで。
だから俺はそう思ったんだけど…どうなの?」
数メートルの距離の間に漂う緊張感。
数秒置いて、朋彦が口を開いた。
「…そうだよ、田丸と俺は、同じ色」
「やっぱりね。で、何色?」
佳之自身は青だが、先程長島めぐみ(女子9番)のポケットから白いくじをくすねてきた。
だから二人の回答により、こっちの出す手を替えることができる。

「石川くんは、何色なの?」
まあ、そう返されるよな。
そこで佳之は、ずっと地面に向けていたベレッタの銃口を朋彦と大輔に向けた。
「先にきいたのは俺。だから正直に言って」
やはり暫くは反応がない。
ひゅう、と風が吹き、ああ、冷えてきたな、なんて思ったその時、朋彦が口を開いた。
「俺たちは、青だ」
「証拠見せて」
そう言うと二人はほぼ同時に、ポケットから青いくじを取り出してこちらに見せてきた。
赤でも白でもないことは、この明るさの中でも分かった。
「そっ…か。俺も、青なんだ」
佳之はベレッタをズボンのポケットにしまい直すと、ブレザーの右ポケットから同じく青いくじを出した(白は左のポケットに入れてある。感触が同じなので、一緒にしておくと厄介なのだ)。
安心した。
クラスメイトを[ピーーー]のには肉体的にも精神的にも疲れる。

俺は、この二人のことは殺さなくていいんだ。

そう思うと、自然と体中の筋肉が弛緩していった。

「あっははっ、良かった。じゃあ俺たちは、殺し合わなくていいんだな。仲良くできる」
「お…おうっ。そうだよ、良かった良かった」
佳之が笑うと、ずっと黙っていた大輔がそれに応えた。
自然と足が動き、佳之は二人との間を詰める。


「ねえ、石川くんはさ、その…やる気なの?」
一度は佳之につられて笑んだ朋彦が、一転して不安げにたずねる。
「ん…まー色違う人だけ[ピーーー]つもりでいる。
だって考えてみろって。普通のプログラムと比べて、敵が3分の2なんだぜこれ? やる気になったっていいじゃんか」
945 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:32:05.18 ID:WBne/CcE0(64/65)
高橋錬志郎(男子8番)は例外だが、和信や雪之進は他の色だったのだ。感謝されてもいいくらいだ。
「青の人は[ピーーー]つもり、ないってことだよね?」
「そう。そこは信じて。田丸にも、王子にも、手は出さない」
念を押されて、佳之は両手を開いて上げてみせた。
「そっか…。でも、俺たち、石川くんとは一緒にいられないわ…」
「なんで」
別に誰かと共に行動するつもりなど最初からないのだが、そう言われると原因を追求したくなってしまうのが人間というものだ。

「これ、俺の武器なんだけどさ」
そう言うと朋彦は、ずっと右手に持っていたゲーム機のような機械の画面を見せた。
そこの中心には3つ、星印が存在している。
「探知機なんだ。この首輪が発信する電波を拾って、誰か近くにいれば分かるようになってる。今も、誰かが近付いてくるのが分かって、そっちに向かってみたら石川くんがいたってわけ」
「へえ…」
探知機。良い武器ではないか。
「これを使って俺たちは人を探してる。俺たちが探してるのが違う色かもしれないし…確率からいって、その方がありうるし。その時に石川くんがいるとちょっと心配だなあ、と」
「うん…そうだよな……」
彼らが誰を探しているのかは知らないが、確かにその人物たちが青でなければ自分は銃を向けるだろう。

「じゃ、俺たちはお互い別々に頑張る、っつーことで」
「うん、そういうことでよろしく頼むよ」
顔を見合わせてにやっと笑う。佳之と朋彦のやり取りを見守っていた大輔とも。

「ああ、そうだ。ひとつだけ忠告しとく」
「…何?」
「俺、水谷さんに会ったんだ。あの子も青なんだけど、なんだか生き残ってほしい人が赤だからって躍起になってる。だからもし会ったら気をつけて」
「ああそれ小林くんのことだ…」
大輔がぼそっと呟く。
「あ、やっぱりね。そんな気はしてたんだけど」
想像が確信になった。怜子は見たところ、小林唯磨(男子6番)に相当好意を持っているようだったので。
946 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 11:33:01.28 ID:WBne/CcE0(65/65)
水谷怜子(女子15番)は唇を一文字に結び、力強く歩いていた。

こんなに早く清水緑(女子7番)を見つけられたということは、すぐに殺せということだと思ったのに。


怜子が緑を嫌っているのには理由がある。
想いを寄せる小林唯磨(男子6番)と、緑の仲が良いからだ。

唯磨のことが好きだ。世界中の誰よりも。
だから、彼と仲が良い女子――このクラスならば、小久保梨瑛(女子5番)や緑が目障りでたまらない。
プログラムに選ばれたと分かった時、もちろん絶望はあった。自分の命が、ここで恐らく絶たれてしまうのだから。
でも、考え方を変えてみた。
“人を[ピーーー]こと”を許されているのだから、梨瑛や緑を殺せばよいではないか、と。
そうすれば、当座の邪魔者はいなくなる。

彼の姿が好きだ。性格が好きだ。はにかむような笑顔が好きだ。話す時のちょっとした仕草が好きだ。
とにかく――小林唯磨という少年の、全てが好きだ。
このクラスには、播磨文男(男子13番)と名張志保美(女子11番)、それにもういないが、東崇宏(男子14番)と南早和子(女子17番)というカップルがいる。でも彼らが互いに想い合う気持ちよりも、自分が唯磨を想う気持ちの方が大きいであろう自信がある。
それどころか、この世で唯磨のことを一番想っているのは自分であろうと思っている。
――否、“思っている”ではない。事実だ。事実でないはずがない。
だから彼の隣にいるのがふさわしいのは、梨瑛や緑ではない。
この、私だ。
いつもヘラヘラとしている梨瑛や、妙に気取っている緑などではない。
自分が、唯磨と共にあるべきなのだ。

彼が自分のことをどう思っているのかは分からない。でも、決して悪くは思っていないはずだ。
話しかければにこやかに応えてくれるし、会話を楽しく続けてくれる。
とにかく、梨瑛や緑、さらには唯磨の気持ちになど関係なく、怜子は彼に対して多大なる愛情を抱いているのだ。
この感情は、きっと今後何があっても変わらないだろう。


鈍そうな彼のことだから、恐らくこの気持ちには気付いてはいない。
だから怜子は、まず唯磨のことを探した。探して、見つけて、そしてこの想いを受け入れてもらうために。
947 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2014/04/05(土) 12:37:05.51 ID:XXjsuMiE0(1/2)
荒らしのやる気が凄まじいな

埋まったら新しいスレ建てて大丈夫ですよね?
948 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 13:16:47.59 ID:wwkxdeS/0(2/2)
お願いします。
949 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ] 2014/04/05(土) 14:48:25.53 ID:JeuGGgJLo(1)
待ってるよ
酉つけたら?
950 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2014/04/05(土) 16:38:00.91 ID:XXjsuMiE0(2/2)
すみません

名前欄になんと入れたら酉が出てきますか?
951 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/05(土) 17:02:02.29 ID:bG1kmdnAO携(1)
半角のシャープ+単語
#←これね
#の後ろに好きな単語なり数字なり入れれば酉になるよ
952 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2014/04/05(土) 17:30:59.97 ID:ytJ/zAII0(1)
ありがとうございます!


次からは酉入れて書きます
953 ◆O8ZJ72Luss [saga] 2014/04/10(木) 02:24:18.94 ID:SVH2ZmYc0(1/2)
明日からまた書きます


やっと最後までのシナリオができたので時間はかかりますがスムーズにいけると思います
954 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 11:46:50.10 ID:frzHJCHLo(1)
んー、その酉結構使われてるみたいだから変えた方がいいかもしれん
NIPでSS書いてた人の中にも使ってる人いたみたいだし
955 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/10(木) 14:07:53.49 ID:SVH2ZmYc0(2/2)
そうなんですか…

これは大丈夫ですかね

今日は夜に書くつもりです

956 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/13(日) 02:36:42.22 ID:IP64PDs80(1/2)
罪木「あれは…トラック、ですか?」

七海「もしかして……荷台に載ってるのが爆弾?」

罪木「ど、どうすればいいんですかぁ!?」

日向「大丈夫、あれは爆弾なんかじゃない」

七海「……どういうこと?」

狛枝『やぁ、みんなご苦労さま…』

七海「狛枝くんからのビデオメッセージ…みたいだね」

日向「茶番だけどな…」

罪木「ど、どういうことなんですか?」

日向「これは爆弾なんかじゃなくてただの花火だ」

七海「…どうして日向くんはそれが爆弾じゃないことを知ってるのかな?」

日向「俺はドッキリハウスでなんか死んでなかったからだよ」

七海「なんでそんな嘘をついたの?」

日向「狛枝と決着をつけるためだ。だから二人はここで…」

罪木「創さん!」ガシッ

罪木「創さんは……また一人で……」

日向「ごめん…狛枝のことは俺が解決しなきゃならないことだからさ」

罪木「だったら私も行きます!」

日向「……ダメだ。蜜柑はここにいてくれ」

罪木「……ここから出たらデートしてください……」

日向「蜜柑?」

罪木「いっぱい……いっぱいお話も聞いてください!それに…あの……」

日向「…終わったら蜜柑のやりたいこと、全部一緒にやろう。俺は必ず帰ってくるからここで待っててくれ」

罪木「……はい」

七海「日向くん…無茶はしないでね」

日向「あぁ」ガチャッ



957 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/13(日) 02:58:12.48 ID:IP64PDs80(2/2)
〔工場〕

日向「モノクマパネルのせいで開けにくいはずだけど」ガチャッ

日向「普通に開いた?」

狛枝「日向クンじゃないか。こんなに早くくるなんて驚いたよ。早すぎてまだなんの準備も終わってないんだけどね」

日向「次にお前がなにをしようとしてるのかも全部わかってる」

狛枝「へぇ、じゃあドッキリハウスでの話は嘘だったんだ」

日向「お前を止めるためにな。だからもう、やめにしないか?」

狛枝「やめる?あはははは!今更遅いよ」

狛枝「もう止まれないんだから」

日向「そんなことは……ッ!」

狛枝「日向クン、キミは本当に邪魔だよ」

日向「狛枝!」

狛枝「保険の意味を込めて実はここにも爆弾を仕掛けてたんだ」

日向「!」

狛枝「だからさ、ここで消えてよ」カチッ

日向「こま…ッ!」

ピカッ

日向「あっ……」

ドンッ


958 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/13(日) 17:00:01.81 ID:ut3CnXTf0(1/5)
その間、相模晶(女子6番)はほとんど動かず、天道千夏(女子10番)に銃口を向けていた。
千夏はわけがわからず、涙で潤む目で晶を見続けていた。

「あなたは…」

初めて晶が口を開いた。
教室では泣き叫んでいた晶だったが、今は普段と変わらない(とは言っても、ほとんど話すのを聞いた事はないが)落ち着いた口調だった。

「…人を、[ピーーー]の?」

千夏は目を見開き、激しく首を横に振った。
そんな事をするはずがない。
したくもない。

晶は自動拳銃(ワルサーPPK)を下ろした。
千夏はほっと溜息を吐き、ワルサーに目を遣った。

「あ、あの…もしかして…さっき助けてくれたのは…」

晶は何も言わずにワルサーを地面に置いた。
自前の鞄からハンカチを取り出し、デイパックからペットボトルを出して、千夏の足の怪我に水をかけ、ハンカチで縛った。

「ありがと…ございます…」

その手際の良さに、千夏は感嘆の息を洩らした後、礼を言った。

「別に」

晶は荷物を片付けていたが、その手を止めた。
持っていたペットボトルをきつく握り締めていた。

「こんな茶番に乗る人が許せないだけよ」

それはやはり晶が助けてくれたと言う事だろうか。
さらに手当てまでしてくれた。
良い人だ、千夏はぼんやりと考えた。

晶はペットボトルをデイパックに投げ入れると、今度は箱を取り出した。
蓋を取ると、中には銃弾らしき物が一杯に詰まっていた。
ワルサーを手に取り、紙(銃の取り扱い説明書のようだ)を見ながらマガジンを抜き、空になっていたそれに銃弾を詰め込み始めた。

「8発…」

晶が不服そうに呟いた。
ワルサーの装弾数の事だろう。
不満そうに滝川渉(男子8番)が去った方を睨んだ。
959 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/13(日) 17:00:39.52 ID:ut3CnXTf0(2/5)
その間、相模晶(女子6番)はほとんど動かず、天道千夏(女子10番)に銃口を向けていた。
千夏はわけがわからず、涙で潤む目で晶を見続けていた。

「あなたは…」

初めて晶が口を開いた。
教室では泣き叫んでいた晶だったが、今は普段と変わらない(とは言っても、ほとんど話すのを聞いた事はないが)落ち着いた口調だった。

「…人を、[ピーーー]の?」

千夏は目を見開き、激しく首を横に振った。
そんな事をするはずがない。
したくもない。

晶は自動拳銃(ワルサーPPK)を下ろした。
千夏はほっと溜息を吐き、ワルサーに目を遣った。

「あ、あの…もしかして…さっき助けてくれたのは…」

晶は何も言わずにワルサーを地面に置いた。
自前の鞄からハンカチを取り出し、デイパックからペットボトルを出して、千夏の足の怪我に水をかけ、ハンカチで縛った。

「ありがと…ございます…」

その手際の良さに、千夏は感嘆の息を洩らした後、礼を言った。

「別に」

晶は荷物を片付けていたが、その手を止めた。
持っていたペットボトルをきつく握り締めていた。

「こんな茶番に乗る人が許せないだけよ」

それはやはり晶が助けてくれたと言う事だろうか。
さらに手当てまでしてくれた。
良い人だ、千夏はぼんやりと考えた。

晶はペットボトルをデイパックに投げ入れると、今度は箱を取り出した。
蓋を取ると、中には銃弾らしき物が一杯に詰まっていた。
ワルサーを手に取り、紙(銃の取り扱い説明書のようだ)を見ながらマガジンを抜き、空になっていたそれに銃弾を詰め込み始めた。

「8発…」

晶が不服そうに呟いた。ワルサーの装弾数の事だろう。
不満そうに滝川渉(男子8番)が去った方を睨んだ。
960 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/13(日) 17:02:17.88 ID:ut3CnXTf0(3/5)
「良いわよ、死んだって」

相変わらず落ち着いた口調。
中学校を見つめる晶の表情は妙に落ち着いていた。
千夏は一瞬かけるべき言葉を失った。

覚悟…決めてるんだ、相模さんは…
けど…だけど…っ!!

千夏は晶の腕をさらにきつく掴み、叫んだ。

「そんなの…そんなの絶対ダメ!!
 行かせない、絶対行かせないんだからっ!!」

「あなたには関係無い、離して」

「関係無くなんかない、絶対離さない!!」

晶はワルサーの銃口を再び千夏に向けた。

「離して、じゃないと[ピーーー]っ!!」

感情を顕わにした晶とは正反対に、千夏は徐々に落ち着きを取り戻した。
銃口に怯むことなく、晶を掴む手も離さない。

「[ピーーー]って言ってるじゃない!!」

「…[ピーーー]んだ、あたしを…
 じゃあ“こんな茶番”に乗るのね、相模さんは」

晶のワルサーを握る手が、ピクッと反応した。
千夏は続ける。

「だってそうでしょ?
 普通の環境なら、人殺しなんて絶対に許されないじゃない。
 瀬戸口くんが怒って…殺されてまで嫌がったプログラムに、乗るの?
961 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/13(日) 17:02:47.74 ID:ut3CnXTf0(4/5)
予備マガジンをポケットに入れ、晶は立ち上がった。

「その荷物、いらないからあげる」

千夏は眉間にしわを寄せた。

「相模さん…一体何を…」

「こんな茶番に乗る人は許せない。
 それ以上にこれに巻き込んだ人が許せない。
 北斗をあんな目に遭わせた人が許せない。
 それだけよ」

千夏は目を見開いた。
直感した。
晶は、瀬戸口北斗(男子6番)の仇を討つ為に、あの中学校に乗り込み、坂ノ下愛鈴(担当教官)を[ピーーー]気だ。
『絶対許さない、殺してやる、あたしが…っ!!!』
『死んでしまえ…っ』
あの時吐いた言葉を、自らの手で実行する気だ。

「ちょ…ちょっと待ってっ!!」

千夏は晶の腕を引っ張った。
勢いが良かったので、晶はその場に尻餅をついた。
晶が睨んできたが、構わない。

「中学校に戻る気…?
 そんな事したら、殺されちゃうよ…?」
962 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/13(日) 17:04:53.92 ID:ut3CnXTf0(5/5)
予備マガジンをポケットに入れ、晶は立ち上がった。

「その荷物、いらないからあげる」

千夏は眉間にしわを寄せた。

「相模さん…一体何を…」

「こんな茶番に乗る人は許せない。
 それ以上にこれに巻き込んだ人が許せない。
 北斗をあんな目に遭わせた人が許せない。
 それだけよ」

千夏は目を見開いた。
直感した。
晶は、瀬戸口北斗(男子6番)の仇を討つ為に、あの中学校に乗り込み、坂ノ下愛鈴(担当教官)を[ピーーー]気だ。
『絶対許さない、殺してやる、あたしが…っ!!!』
『死んでしまえ…っ』
あの時吐いた言葉を、自らの手で実行する気だ。

「ちょ…ちょっと待ってっ!!」

千夏は晶の腕を引っ張った。
勢いが良かったので、晶はその場に尻餅をついた。
晶が睨んできたが、構わない。

「中学校に戻る気…? そんな事したら、殺されちゃうよ…?」
963 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/13(日) 19:39:57.52 ID:kfChjSKyo(1)
消えろ
964 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 01:50:41.90 ID:Bg6+QV3L0(1)
新参じゃないんだからノータッチでNGしましょう。
965 ◆HbpyZQvaMk [saga] 2014/04/14(月) 11:40:45.56 ID:lq39DoZ/0(1)
すみません、荒らしのせいで見づらいとは思いますがこのまま書き続けていきます


966 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 12:18:28.06 ID:LsqML3yIo(1)
オーイエス
967 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ] 2014/04/14(月) 12:39:15.82 ID:65r5V6uKo(1)
次スレは早めに立てた方がいいぜ
968 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:07:47.79 ID:e6Uk7Fse0(1/31)
あーあ、プログラム、だってさ。
そんなに俺普段悪い行いしてたか?
こんなんナシだろ、おーい、神様、聞いてるー?

なんて。
神様なんていないよな、だっていたらクラスメイトと殺し合うなんていうありえない法律、許すはずないもんなぁ。
何だよ、“殺し合う”って。
映画かゲームならともかくさ。

マジ、ないわこんなの。

横山圭(男子十八番)は何度目になるかわからない溜息を吐いた。
既に半数近くのクラスメイトがこの教室を後にした。
銃声らしきものも二度聞こえている。
外では、既に殺し合いは始まっているのだ。

『俺は政府の連中の言うことなんか絶対聞いてやらねぇ』

最初に出発した城ヶ崎麗(男子十番)はそう言い殺し合いなどしないということを宣言していたが(あの自信に満ちた感じがあまりにもいつも通りなので、こんな状況だというのに圭は思わず笑ってしまった。ほんっと麗サマ面白過ぎ)、恐らく2番目に出て行ったチームと戦闘を行った。
2チーム目の構成は、ほぼ大人しいイメージのある人間ばかりだったので、銃声が聞こえた時には非常に驚いた。
麗のあの宣言は嘘だったのだろうか。
そう思いもしたが、麗は周りを陥れる嘘を吐くような小さな人間ではないはずだ――深い付き合いがあるわけではないが、圭は麗をそう評価しているので、麗の言葉に嘘はないと確信していた。
しかし、それでも戦闘に巻き込まれたとすれば2番目に出発したチームが要注意ということになるのだが、それもメンバーを考えるととても信じられない。

…あーやだやだ、ダチを疑うとか、ほんっとやだ。

圭は溜息を吐き、1つ前の空席をぼんやりと眺めた。
この席の主は、2つ前に名前を呼ばれて出て行った阪本遼子(女子八番)。
初等部1年生で初めて同じクラスになって以来中等部3年生になるまで、ずっと同じクラスに配属されてきた腐れ縁の女の子。
強気で生意気で愛想があまり良くないけれど、9年間一緒にいたので何でも話すことのできる友人。
何でも言い合えるからこそぶつかることも多かったが、それだけ本音でぶつかれる相手はそうはいないし、自然体になれる相手もなかなかいない。

このプログラムがチーム戦だということを告げられた時、遼子と同じチームになれればいいのに、と思ったのだが、遼子は先に名前を呼ばれてしまった。
遼子は名前を呼ばれてから教室を出て行くまで、一度も圭のことを見なかった。
ライド(担当教官)に突っかかり、芳野利央(男子十九番)や蓮井未久(女子十三番)に抑えられている姿に、ああ、自分のことで精一杯で周りに全く目が行っていないな、猪かよ、と心の中でつっこんだ。
969 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:08:29.00 ID:e6Uk7Fse0(2/31)
よく周りからは「付き合ってるのか?」と訊かれたけれど、恋愛感情を抱いたことはこれまで一度もない(俺の好みは遼子みたいなキツい女じゃなくて、優しい子だ。上野原咲良(女子二番)なんかストライクど真ん中だったけれど、お近づきになる前に木戸健太(男子六番)に持って行かれてしまった。ちくしょう、健太のヤロウ。中等部入学のくせに上野原をひょいっと掻っ攫って行きやがって。まあ今は2人があまりにも仲睦まじいし、健太が良いヤツなのもわかるから、諦めたけど)。
遼子は、真正面からぶつかることのできる、性別を超えた友人だ。
何となく、これから先も何だかんだで付き合いが続くのだろうと思っていた。
その矢先に、これだ。
腐れ縁はここまでとなった。

…敵になっちまっても、阪本には会っておきたいな。
『腐れ縁もここまでで清々する』って、冗談めかして言ってやりたいな。
阪本が何て言うか想像つくな、『は?そんなのこっちの台詞だし』…だろうな。
いつもみたいにちょっと言い合いして、でも最後にはちゃんと、『今まで色々ありがとう、楽しかった』って言っておきたいな。

「10分経ったなぁ、じゃあ次は9班やな!
 男子十三番・原裕一郎君!
 男子十八番・横山圭君!
 女子十四番・平野南海さん!
 女子十八番・室町古都美さん!
 新しい世界を探してきてな!」

圭は自分の名前を呼ばれ、顔を上げた。
圭から見て右斜め後方にいる裕一郎の方をばっと見遣ると、裕一郎も目を大きく見開いて圭のことを見ていた。

まさか、裕一郎と同じ班になるとは。
裕一郎も、遼子同様真正面からぶつかることのできる数少ない人物だ。

圭と裕一郎は互いに帝東学院初等部出身なのだが、互いのことを認識したのは中等部1年生で初めて同じクラスになった時だった。
その後部活動見学でも顔を合わせ、互いにサッカー部に入部を希望していたということもあり意気投合し、互いにレギュラーになり全国大会に出ることを誓った。
サッカーの花形と言えば、最前線にいるフォワード――圭も裕一郎も同じポジションを希望していた。
他にも同じポジションを狙っている者は多くいたのだが、誰よりも真面目に真剣にストイックに練習に打ち込む裕一郎の姿に、圭は刺激を受けた。
この先裕一郎とエースストライカーの座を争うことになる――そう直感し、自然と裕一郎のことをライバル視するようになった。
裕一郎も圭をライバル視するようになるのに時間はかからず、2人は足の速さからリフティングの回数から果ては朝練に来る時間の早さと居残り練習の時間の長さまで張り合うようになり、その延長上で部活の時間以外でも様々なことで張り合うようになり、それが喧嘩に発展することも多くなり、周りからは「一緒にいる割に2人はとても仲が悪い」と言われるようになった。
確かにいつも元気でお茶らけていて騒がしい圭と、真面目で無愛想で自分にも他人にも厳しい裕一郎とは性格も全く違うので合わないことが多く、それもぶつかる大きな理由なのだが、互いに心底嫌っているということはない、と圭は思っている。
裕一郎の真面目なところや厳しいところは彼の長所だと思っているし、自分にはないところに魅かれている。
遼子と同じく、しっかりと関わっているからこそぶつかり合うことができるのだ。

とにかく、そんな裕一郎と同じ班になったことは、喜ぶべきことなのかもしれない。
裕一郎から前方に視線を戻す途中、廊下側の窓際の席に座るもう1人の親しい友人、宍貝雄大(男子八番)と目が合った。
970 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:09:19.98 ID:e6Uk7Fse0(3/31)
した、非常に縁起の良い鞄だ。そのゲン担ぎも、プログラムという法律には敵わなかったのだが)を肩に掛けて、重い足を動かして前に出た。
ちらりと左を見ると、田中顕昌(男子十一番)の亡骸が横たわっているのが見えた。
立ち止り、数秒目を閉じて黙祷を捧げた。
顕昌、あの時のお前、すっげーかっこよかったよ。

目を開き、視線を手前にやると、南海はまだ自分の席に座っていた。
元女子ソフトボール大東亜代表選手を母に持ち自身もソフトボール部に所属する南海は運動能力はクラスの女子の中で誰よりも高く、いつでも快活で騒がしいのだが、今は外ハネのショートヘアの毛先が揺れる程に震えていた。
当然だ、すぐ隣で顕昌が殺害されたのだから。
しかも、南海と顕昌は同じ小学校の出身でありこのクラス内で最も顕昌と付き合いが長かったので、そのショックは相当なもののはずだ。

しかし、このままではいけない。
もたもたしているとアキヒロ(軍人)がまた銃を取り、顕昌の二の舞になりかねない。

「平野、立てるか?
 とにかく行こう、俺に掴まって…鞄は俺が持つからさ」

圭はそう言いながら南海の鞄を引っ張り、左肩に掛けた。
ずっと俯いていた南海の顔が上がり、真っ赤に充血した目で圭を捉えた。

「け…圭……」

こんなに震え、弱々しい南海を今まで見たことがない。
南海とは家が近い縁もあり(同じ区画に家があるので、超ご近所だ)、遼子も含めて3人で一緒に寄り道することも多かったので南海とは親しいのだが、これまで元気一杯の様子しか見たことがなかった。
圭の服を掴む手は震え、何とか立ち上がったものの足元が覚束ない状態で、圭が支えていないと倒れてしまいそうだった。

とりあえず、平野は俺が支えて動くしかないか…

エツヤ(軍人)がデイパックを渡してきたのだが、南海と2人分の荷物で手一杯だ。
何とか片手を空けようとするが、南海がしがみついているので上手くいかない。
圭がもたもたしていると、横からすっと手が伸びてきた。
見かねた裕一郎が、圭と南海のデイパックを代わりに受け取ったのだ。

「裕一郎…悪い、結構それ重そうなのに…」

「別に、気にするな。
 横山、テメェは平野を支えてろ」

ぶっきらぼうだし無愛想だけれどさり気ない気遣いができる、それが裕一郎だ。
変わらぬ頼れる友人に胸を撫で下ろし、教室内に残るクラスメイトたちを見回した後、圭は南海を連れて教室を出た。
その後ろを、裕一郎と古都美が追った。

南海のことで精一杯だったのでこの時まで気付いていなかったのだが、古都美も南海に負けないくらいに震えており、顔面蒼白となっていた。
大人しく気の弱い古都美にとっても、当然プログラムとは恐ろしいものなのだ。
特に、星崎かれん(女子十六番)と湯浅季莉(女子二十番)というA組ど派手女子ペアにからかわれることのある古都美には、
971 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:11:58.12 ID:gq9oEctCo(1)
これは早めに自スレ立てた方が良さげ
972 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:17:29.32 ID:e6Uk7Fse0(4/31)
した、非常に縁起の良い鞄だ。そのゲン担ぎも、プログラムという法律には敵わなかったのだが)を肩に掛けて、重い足を動かして前に出た。
ちらりと左を見ると、田中顕昌(男子十一番)の亡骸が横たわっているのが見えた。
立ち止り、数秒目を閉じて黙祷を捧げた。
顕昌、あの時のお前、すっげーかっこよかったよ。

目を開き、視線を手前にやると、南海はまだ自分の席に座っていた。
元女子ソフトボール大東亜代表選手を母に持ち自身もソフトボール部に所属する南海は運動能力はクラスの女子の中で誰よりも高く、いつでも快活で騒がしいのだが、今は外ハネのショートヘアの毛先が揺れる程に震えていた。
当然だ、すぐ隣で顕昌が殺害されたのだから。
しかも、南海と顕昌は同じ小学校の出身でありこのクラス内で最も顕昌と付き合いが長かったので、そのショックは相当なもののはずだ。

しかし、このままではいけない。
もたもたしているとアキヒロ(軍人)がまた銃を取り、顕昌の二の舞になりかねない。

「平野、立てるか?
 とにかく行こう、俺に掴まって…鞄は俺が持つからさ」

圭はそう言いながら南海の鞄を引っ張り、左肩に掛けた。
ずっと俯いていた南海の顔が上がり、真っ赤に充血した目で圭を捉えた。

「け…圭……」

こんなに震え、弱々しい南海を今まで見たことがない。
南海とは家が近い縁もあり(同じ区画に家があるので、超ご近所だ)、遼子も含めて3人で一緒に寄り道することも多かったので南海とは親しいのだが、これまで元気一杯の様子しか見たことがなかった。
圭の服を掴む手は震え、何とか立ち上がったものの足元が覚束ない状態で、圭が支えていないと倒れてしまいそうだった。

とりあえず、平野は俺が支えて動くしかないか…

エツヤ(軍人)がデイパックを渡してきたのだが、南海と2人分の荷物で手一杯だ。
何とか片手を空けようとするが、南海がしがみついているので上手くいかない。
圭がもたもたしていると、横からすっと手が伸びてきた。
見かねた裕一郎が、圭と南海のデイパックを代わりに受け取ったのだ。

「裕一郎…悪い、結構それ重そうなのに…」

「別に、気にするな。
 横山、テメェは平野を支えてろ」

ぶっきらぼうだし無愛想だけれどさり気ない気遣いができる、それが裕一郎だ。
変わらぬ頼れる友人に胸を撫で下ろし、教室内に残るクラスメイトたちを見回した後、圭は南海を連れて教室を出た。
その後ろを、裕一郎と古都美が追った。

南海のことで精一杯だったのでこの時まで気付いていなかったのだが、古都美も南海に負けないくらいに震えており、顔面蒼白となっていた。
大人しく気の弱い古都美にとっても、当然プログラムとは恐ろしいものなのだ。
特に、星崎かれん(女子十六番)と湯浅季莉(女子二十番)というA組ど派手女子ペアにからかわれることのある古都美には、
973 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:18:08.64 ID:e6Uk7Fse0(5/31)
大きく頷いた。
サッカーの試合中によく行っていたアイコンタクトでの意思疎通が、まさかこんな場面で役に立つとは思わなかった。

裕一郎と古都美は圭たちの後ろを並んで歩いているのだが、2人の間には会話らしい会話はない。
古都美は同じグループの荻野千世(女子三番)・佐伯華那(女子七番)・鷹城雪美(女子九番)以外と会話を交わすところをほとんど見たことがない位に内気だし、裕一郎は意外にも女子とは目も合わせられないくらいに恥ずかしがり屋なので、それは仕方がないことだが。

ま、それに裕一郎は室町を…
…もしかして政府のヤツら、そこまでわかっててこのチームにしたのか?
…まさかな。
このことを知ってるのは、俺と雄大だけのはずだし。

校舎を出て校門をくぐると、鬱蒼とした森が広がっていた。
既に4チームが外に出ている。
この場所は最後のチームが出発してから20分後に禁止エリアというものに指定され、その時間を超えて滞在していると首輪が爆発するらしいので、この辺りでいつまでももたもたしている班はそうはいないはずだが、既に銃声が響いていることを考えると、無防備に姿を晒したままというのは非常に恐ろしい。
クラスメイトを疑いたくなくとも、警戒心は自然と芽生えるものだ。

「横山。
 とりあえず落ち着ける場所を探して隠れるぞ」

裕一郎の声に、圭は振り返った。
裕一郎は既に地図を手にしており、懐中電灯で紙面を照らしていた。

「近くに建物あったよな、そこか?」

「いや…すぐ近くは誰かがいるかもしれないから避けるべきだろ。
 ここからなら…北の集落が近いか…
 沢山家がある中の1軒なら、他のヤツらと会う確率も減るだろ、きっと。
 そこで落ち着いてこれからのことを考えよう」

成程、建物なら何でもいいというわけではないのか。
サッカーに関しては実力伯仲している圭と裕一郎だが、頭脳の面については圭は裕一郎に遠く及ばない(身長なら俺が勝ってるんだけどな。まあ俺もそんな高くないけど、裕一郎は男子の中では健太に次いで身長が低い)。
裕一郎が何を言っても張り合ってきたのだが、今回は張り合うような意見がない、というよりも裕一郎の意見に全面的に賛成だった。

「多分初めて裕一郎の意見に大賛成。
 頭良いヤツは考えることが深いねぇ」

「テメェが言うと嫌味ったらしく聞こえる」

「はァ? 珍しく感心したらこの仕打ち…裕一郎クン、酷いワ…ッ!!」

「気色悪い! オネエ言葉で喋るな!」

会話を続ければ喧嘩腰になってしまうのはいつものことだ。
プログラムという異常な状況に置かれても自然と出てしまう。
しかし、このようなやり取りができるだけの余裕がまだ自分にはあるのだ、と圭はほっとしていた。
これも、裕一郎と同じチームになることができたお陰だろう。
ここに雄大や遼子もいればもっと良かったのだけれど。

「…とにかく、移動しようぜ、裕一郎。
 道案内、頼んでいいか?」
「言われるまでもねぇよ。
974 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:18:41.61 ID:e6Uk7Fse0(6/31)
3番目に名前を呼ばれた如月梨杏(女子四番)も同意見だ。
どうして自分がこんな連中と行動を共にしなければならないのか、理解に苦しむ。

そもそも梨杏は3年A組に対して思い入れもなければ親しくする者もいない。
いや、親しくする価値のある人間なんて、このクラスにはほとんどいないのだ。
誰も彼も馬鹿ばかり。
せいぜい認めてやっても良いのは、成績で梨杏の上を行く学年首席の真壁瑠衣斗(男子十六番)・委員長の芳野利央(男子十九番)・副委員長の奈良橋智子(女子十一番)くらいのものだ。
それ以外の人間とは、同じ空間にいるだけでも嫌になる。
梨杏は、馬鹿で愚かな人間が嫌いなのだ。

梨杏は黒いストレートヘアーを指先で弄びながら溜息を吐いた。

「…あのさ如月さん。
 ムカつくからさ、溜息とかやめてくれない?」

「私が何をしようが勝手でしょ。
 …じゃあ言わせてもらうけど、ムカつくので喋らないでくれる?」

「…マジムカつく、一回死んで」

梨杏に文句を言ってきた星崎かれん(女子十六番)は大袈裟な舌打ちをし、不機嫌な表情を浮かべて梨杏から視線を逸らした。

そう、まずこの女。
大東亜人には似合わない金髪と、中学生らしからぬケバいメイクとチャラチャラとしたアクセサリー類、男を誘っているとしか思えない短すぎるスカート――どんなに頑張って見ようとしても馬鹿以外の何者にも見えない(事実勉強もできない馬鹿だ、この女は)、梨杏が最も忌み嫌う下品なギャルだ。
伝統ある帝東学院において頭の湧いたような、街中で自分は頭が軽い馬鹿だという看板を掲げながら闊歩しているギャルはそれ程数が多くないのだけれど(ギャルがニュース番組などのインタビューを受けているのをたまに見るが、発言も喋り方も態度も全てが馬鹿みたいだ、あんなのと同じ生き物だと思うだけで吐き気がする)、このクラスにはそれが4人も存在している。
派手さはかれんを凌ぐ、金髪を巻いたツインテールに赤いピアス、赤いブーツに紫のセーターと、色合いからして馬鹿みたいで、耳に入ってくる声は腹立たしい程騒がしく甲高い湯浅季莉(女子二十番)。
髪色はかれんや季莉よりは落ち着いているがそれでも明るい赤みがかった茶色に染め、鼓膜を破りかねないような大声で季莉と騒いでいる、昔は喧嘩ばかりしていたという荒っぽい女、水田早稀(女子十七番)。
そして騒がしくないだけまだマシだが、両耳には頭がイカれているのかと思えるほどに多くのピアスをしており、昔は万引きの常習犯だったという噂もある財前永佳(女子六番)。
かれんは彼女らと行動を共にしているだけでなく、クラス内にいる彼氏と仲良くやっている3人とは異なり、援助交際という淫行に手を染めていると聞いたことがある。
そんな女が仲間だなんて、ありえない。

その隣で膝を抱えているのは内藤恒祐(男子十二番)。
A組男子の中で最も派手で馬鹿丸出しの出で立ちをしている恒祐も、梨杏の嫌う愚かな人間の1人だ。
いつも教室の真ん中でくだらない話をして大騒ぎしており、どこにいても恒祐の声は聞こえてくるのではないかと思えるほど煩い。
非常に軽い男であり気に入った女子に次々と声をかけていることは有名で、梨杏はその全てを知っているわけではないが、朝比奈紗羅(女子一番)や平野南海(女子十四番)といった、頭の軽そうな女子に軽く告白をしては振られているのは、彼女らが話をしていたのを小耳に挟んでいたので知っている。
975 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:19:23.25 ID:e6Uk7Fse0(7/31)
ライド(担当教官)にプログラムに対する異議を申し立てて射殺された田中顕昌(男子十一番)――余計なことを言えばああなる可能性はこの国でなら十分あり得る話だというのに、その考えに至らなかった憐れで愚かな男。
あまり目立たない地味な印象の顕昌が、派手な恒祐と親しいのは意外だった。

「…ああなることなんて目に見えてたのに。
 それがわからずに行動した人を悼んで泣かれても迷惑なのよ」

「テメェ…ッ!!」

恒祐がばっと顔を上げ、泣き腫らした目で梨杏を睨んだかと思うと、腰を浮かせて手を伸ばし梨杏の胸倉を掴んで後ろの幹に叩きつけた。
梨杏は背中を打ち、「うっ」と呻いた。

「あんなこと言えばああなることくらい、アッキーは絶対わかってたんだよ!!
 それでも言っちまうくらいに、アッキーは優しいんだよッ!!
 それを…テメェは馬鹿にしたな…アッキーを馬鹿にしたな…如月…ッ!!」

「煩いわね、誰かに見つかったらどうするのよ」

梨杏は右横に置いていた自身に支給されたデイパックの中に入っていた銀色に光る銃身と黒いグリップが特徴のリボルバー式拳銃、S&W M686を掴むと、その銃口を恒祐の額に向けた。
恒祐の元々ぎょろっとしている瞳が一層見開かれる。

「こ…の…ッ!!!」

恒祐も梨杏のM686と同じ位の大きさだが形が大きく違う黒光りする自動拳銃、ジェリコ941Lをベルトから抜き、梨杏に向けてきた。
梨杏自身人に銃口を突き付けているというのに、恒祐の行動に息を呑んだ。

「貴方…馬鹿じゃないの…?」

「ああ、馬鹿だよ、テメェに比べりゃ馬鹿だよそれがどうしたよッ!!
 ダチ1人できない冷徹女に比べたら、大馬鹿の方がマシだねッ!!」

“ダチ1人できない冷徹女”――確かに梨杏には友人と呼べる人はいない。
くだらない馬鹿な人間たちとつるむくらいなら読書をしている方が何倍も有益なので、休み時間はいつも自分の席で読書に勤しんでいた。
976 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:19:49.28 ID:e6Uk7Fse0(8/31)
恒祐は起き上がりながら、自分を引っ張ったもう1人のチームメンバーである林崎洋海(男子二十番)を見上げた。
細身だがクラスで最も背の高い洋海は、手にしていた金属バットを振り下ろした。
恒祐が身を起こすために地面に付けていた右手のすぐ横にそれは振り下ろされ、小石に当たったらしくカァンという高音が響いた。
恒祐はぎこちなく首を動かして金属バットが振り下ろされた先を見、口許をわなわなと震わせていた。

洋海は梨杏とは同じ文芸部に所属する部活仲間だ。
とは言うものの、洋海は挨拶以外では言葉を発しないのではないかと思う程に無口で(このクラスには池ノ坊奨(男子四番)や榊原賢吾(男子七番)や瑠衣斗や利央といった口数の少ない者が多いが、その彼らですら饒舌だと思えてしまう程に洋海の無口さは群を抜いていた)、梨杏も挨拶以外には言葉を交わさない。
梨杏に言わせれば、何を考えているのかさっぱり理解できない、勉強も運動も人並以下のことしかできないウドの大木だ。
辺りを見回しているところをみると、騒いで誰かに見つかるのを防ぐために、梨杏と恒祐を引き剥がし、騒がしい恒祐を威圧して黙らせたのだろうか。
洋海自身がこの間一言も発していないので、真相は定かではないが。

「あーあ、馬鹿馬鹿しい」

かれんはわざとらしく溜息を吐き、人工的な睫毛に覆われた瞳で3人を見遣った。

「一応チームメイトなわけだしさ、仲間割れとかやめない?
 こんなところ誰かに狙われたら、あっという間に全滅じゃないの」

「星崎…でも俺やだぜ。
 星崎と林崎はともかく、如月とつるむとか絶対できねーよ。
 しかも、他のヤツらと戦うことになったとしたら、コイツ護らなきゃいけないとか…
 やだよ、こんな最悪なヤツのために命張るとか」

恒祐は失礼なことに梨杏を指差した。
そう、この共通点もなければ普段の接点もなければチームワークが生まれる兆しもないチームのリーダーは、他でもない梨杏だ。
馬鹿たちの命を、梨杏は背負っているのだ。
自分の左腕に王冠のマークを見つけた時、心底ほっとした。
当たり前だ、こんな馬鹿たちの中の誰かに自分の命を握られていたかもしれないだなんて、考えただけでぞっとする。

「フン、せいぜい頑張って“最悪な”私を護りなさいよね。
 貴方の命も掛かってるんだから」

「はァ? 調子乗るなよ如月…ッ!!」

再び梨杏に掴み掛ろうとする恒祐の服をかれんが引っ張り止めた。

「だからやめなって、体力の無駄よ?
 でも、内藤の言う通り…如月さん、調子に乗らないでくれる?
 アンタがピンチになろうが、別にどうでもいいのよ。
 アンタが殺される前に、あたしらの誰かがアンタを殺せばいいんだから。
 “下剋上ルール”があって本当に良かったと思ってるわ」

梨杏は銀縁の眼鏡の奥の目を見開き、かれんを凝視した。
かれんが口にした“下剋上ルール”――失念していた。
このルールが存在することで、かれんたちは何が何でもリーダーである梨杏を護る必要はなく、例えば梨杏が負傷でもして足を引っ張ろうものなら容赦なく殺害されかねないのだ。

馬鹿のくせに、そういう頭は回るのね…不愉快だわ…っ
977 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:20:23.50 ID:e6Uk7Fse0(9/31)
歯噛みする梨杏を見、かれんはふんっと鼻で笑った。
自分が優位に立っていることを確信している目が、非常に不快だ。

「せいぜい、あたしたちに殺されないように気を付けるのね、如月さん。
 ま、別に今すぐどうこうしようってことはないから安心してよ。
 だって、あたしたち、“チームメイト”でしょ?」

“チームメイト”という言葉を嘲るような口調。
梨杏どころか、洋海や、普段から会話を交わしていたはずの恒祐でさえ、チームメイトだとは欠片も思っていないことは見て取れた。
人のことは言えないが、酷く冷たい女だ、星崎かれんは。

「内藤も林崎も、こんな所で死にたくないでしょ?」

「当たり前だろっ!!
 あんな…アッキーみたいな……アッキーだって死にたくなかったはずなのに…」

恒祐は最初の勢いはどこへやら、徐々に声は萎み、最後は項垂れていた。
今更顕昌の死をどうこう言ってもどうにもならないというのに。
かれんも同じ考えなのか、呆れたように溜息を吐いたが、特にそのことを口に出すことはなく、恒祐の背中をぽんぽんと叩いていた。
やはり馬鹿同士それなりに親交があったらしいので恒祐の気持ちを思っての行動だ――と普通なら思うだろうが、かれんが恒祐を見る目は酷く冷たく、嘲るような笑みを浮かべていることから、そうではないことはすぐにわかった。

洋海は何も言葉を発しないが、しっかりと頷いた。
何を考えているかはわからないけれど、命に対する執着心はあるようだ。
もしくは、目つきの悪さや目の下の隈の影響で威圧的な顔立ちをしている洋海だが、もしかしたら内心酷く怖がっているのかもしれない。
まあ、どうでもいいけれど。

「死にたくない者同士、生きるために手を組む…それでいいじゃない。
 全員敵にするよりは、協力できる相手がいる方が、挟み打ちとかできるしね。
 武器は結構使える物ばかりだし。
 ねえ、“リーダー”?」

かれんは自身に支給されたスタンガンを顔の横まで上げて軽く振りながら薄い笑みを浮かべ、梨杏に視線を向けた。
わざとらしくリーダーという単語を強調して言ってきたが、かれんには梨杏をリーダーと思う気持ちはこれっぽっちもないことは先程までの発言で充分にわかっている。
馬鹿のくせに自分を嘲るかれんには腹が立つが、かれんの言うことには賛成だ。

「生きるために手を組む…それでいいわ。
 私は貴方たちと馴れ合う気は少しもないし。
 馬鹿だからって馬鹿な行動をして私の足を引っ張らないでちょうだいね」

「うっせー黙れ冷徹眼鏡デコ女。
 テメェと馴れ合うのだけは死んでもお断りだっての!
 邪魔になったらブッ殺してやるからな、忘れんなよ!」

梨杏は反射的に赤いカチューシャで前髪を上げて丸見えの額を押さえた。
その動作を見たかれんが鼻で笑う。
洋海は3人のやり取りよりも先程地面に叩きつけた金属バットに出来た凹みに興味があるようで、金属バットをしげしげと眺めていた。

チームワークなんてない。
それどころか、恐らくこのチームの誰が死のうが誰も悲しみはしない。
978 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:20:51.22 ID:e6Uk7Fse0(10/31)
2番目に出発する班として教室を追い出されて廊下を歩いている時に、鷹城雪美(女子九番)はプログラムに参加させられ今から戦場へと出なければならないという状況とは思えない程に落ち着いた声で、そう言った。

もちろんそれはその後ろを歩いていた松栄錬(男子九番)も同意見だった。
容姿は地味だし場を明るくできるような性格でもないし、運動はからっきし駄目だし、だからといって勉強ができるかと言われるとどんなに頑張っても中の上程度にしかできないし――たまに生きていて申し訳ない気分にさえなってしまう錬だが、だからといって死にたいと思ったことは一度もないし、今ももちろん死にたくない。
地道に努力を続ければ行く行くは祖父が現在会長を務めている鉄鋼会社に就職して、将来的にはそれなりに上の地位に就くだろう。
こんな地味な自分だが、湯浅季莉(女子二十番)という少々性格はキツいが可愛らしい彼女もいる(季莉の祖父が大東亜を代表する自動車会社の社長を務めており、祖父たちが会社の将来を見越して錬と季莉を許嫁としたのだが、今は決められた関係だからという理由ではなく、少なくとも錬は心から季莉のことが好きで付き合っているし、季莉もそうであると信じている)。
人生の成功は、ほぼ約束されているのだ。
それを、こんなわけのわからない戦闘実験とやらに巻き込まれておじゃんにされるだなんて、到底受け入れられるはずがない。
季莉と同じ班になることができたのは良かった、一緒に生きることができるので。

季莉や、友人の榊原賢吾(男子七番)ももちろん死にたいと願っているはずがなく、全員が雪美の意見に同調した。
すると、雪美は柔らかい笑顔を浮かべ、言った。

「賢吾、季莉ちゃん、松栄くん…みんな、生きたいのよね。
 それなら、生きる覚悟を、あたしに見せてちょうだい?」

「生きる…覚悟?」

季莉が首を傾げながら訊き返し、錬と顔を見合わせた。
生きる覚悟を見せるというのはどういうことなのか、わからなかった。
錬は賢吾に目で問うてみたが、賢吾もそれはどう見せるべきものなのだろうかと言いたげな目で錬を見返した。

校舎を出て、とりあえず最後の班が出発した後に禁止エリアになるというエリアを抜け出すために歩いていたところ、突然雪美が立ち止った。
「雪ちゃん?」と声を掛けた季莉の口を手で塞ぎ、雪美は茂みの少し離れた所を指差した。

「…あそこ、城ヶ崎くんたちがいるわね」

錬たちは息を呑み、雪美の指先を目で追った。
姿を確認することはできないが、僅かに声が聞こえる。
現時点で教室を出発しているのは錬たちと城ヶ崎麗(男子十番)・木戸健太(男子六番)・朝比奈紗羅(女子一番)・鳴神もみじ(女子十二番)以外にはいないので、声からそれが誰か判断できなくとも、そこにいる人物を特定することはできた。

「城ヶ崎たち、戦うとかそういうの…やらないよね。
 やらないって、そう言ってたもんね。
 紗羅とかもみじとも、話しておきたいなぁ…」

季莉は安堵した表情を浮かべ、そう呟いた。
季莉はその派手な身なりや荒れていた時期があったことからか、ギャルグループとしてクラスの中では少し浮いた存在だった。
しかし、季莉は打ち解けることができれば相手に非常に懐くために交友関係は広く、特に紗羅とは相性が良いようで、仲良く話をしている姿はよく目にしていた。
紗羅の幼馴染であるというもみじとは性格自体はあまり合わないようだったが(気の短い季莉には、マイペースなもみじののんびりさは合わないのだろう)、嫌っているわけではないので話をしたいと思うのは当然だろう。

「賢吾は、城ヶ崎君のこと、あまり好きじゃなかったよね」

錬が賢吾を見上げると、賢吾は茂みからは目を離さないまま、ふんと鼻を鳴らした。

「確かに、城ヶ崎のあの派手さは気に喰わない。
 自重とか謙虚とか、そういう言葉があいつの辞書にはないんだろうな。
 だが、あいつの、自分の発言に責任を持ち人を裏切らないところは嫌いではない。
 政府の言いなりにならないと言った以上、戦うことはないだろう。
 木戸も真っ直ぐなやつだからな、大丈夫だろう」

へぇ、と錬は声を洩らした。
普段から賢吾は麗が脚光を浴びたり騒いだりする度に嫌な顔をしていたので心底嫌いなのかと思っていたが、そうではないようだ。
賢吾は非常に真っ直ぐな人間なので、麗の芯がぶれない部分はしっかりと評価しているのだろうし、健太も典型的な熱血体育会系の人間なのできっとじっくり話せば気が合うのだと思う。

錬はいつも派手で目立っている麗に苦手意識を持っているけれど、それは近くによると眩しいからだとか自分が霞んでしまいそうだからだとか、そういう卑屈になってしまう理由から来るものであって、麗自体は頼りになる人だと思っている。
健太も熱すぎるところが苦手だが、体育で足を引っ張っても「ドンマイ、錬、次頑張ろうぜ!」と肩を叩いてくれて、例えばそれがサッカーであれば良いアシストをして何とか錬が点を取れるようにパスを回してくれるような、そんな気遣いをしてくれるとても良い人だということを知っている。
979 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:21:41.96 ID:e6Uk7Fse0(11/31)
雪美と賢吾の間にどのような関係があるのかはわからない――親同士が古くからの付き合いだという関係で、お互い話をする関係だ、ということしか聞いていない――が、雪美と賢吾の力関係ははっきりとわかる。
賢吾は、雪美には意見できないのだ。

「死にたくないなら、他の班の全員に死んでもらわないといけないでしょう?
 ねえ季莉ちゃん…あたし、何か、間違ってるかしら?」

話を振られた季莉が、びくっと身体を震わせた。
わなわなとグロスが艶めく唇を震わせていたが、引き攣った笑みを浮かべた。

「だ…だって…雪ちゃん…城ヶ崎たちは、戦う気はないよ…?
 城ヶ崎も、木戸も、紗羅も、もみじも…みんな良い子じゃん…?
 こ、[ピーーー]…とか……そんな…ねぇ…?」

季莉はちらりと錬を見、目で助けを求めてきた。
錬も何度も頷き、雪美を見つめた。

「季莉ちゃんは、城ヶ崎くんたちのことが好きなのね。
 …あたしより、城ヶ崎くんたちの味方になるの?」

「ち、違うよ…雪ちゃん、違う…あたし、雪ちゃん大好きだもん!!
 雪ちゃんは、あたしと錬の恩人、雪ちゃんがいたから、今のあたしと錬があるの!
 ね、錬、そうだよね!?」

「うん、鷹城さんがいなかったら、下手したら僕は死んでたかもしれない…
 季莉だってどうなってたかわからない…僕ら、鷹城さんに恩があるよ…」

そう、錬と季莉は雪美に大きな恩がある。
2年前の“とある出来事”の際に、錬と季莉は雪美に助けられ、その出来事をきっかけにして錬と季莉は付き合うことになった。
それ以来季莉は雪美に非常に懐いているし、錬も恩を感じている。
大恩人の雪美を裏切るなんて、できるはずがない。

雪美はにっこりと笑みを浮かべた。
ああ、雪美はわかってくれた、そう思った――次の瞬間。
錬の側頭部に、何かが当たった。
「錬ッ!!」、季莉と賢吾がが同時に声を上げた。
錬は恐る恐る左側へと視線を向け、目を見開いた。
雪美が、支給されていたS
980 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:22:32.97 ID:e6Uk7Fse0(12/31)
雪美が指差した先にいるのは、悠希の亡骸を抱えて泣きじゃくっている、クラスで2番目に小柄な女の子、山本真子(女子十九番)。
他の3人が死してなお生きているということは、真子がこの班のリーダーらしい。
真子を見、手に握られた金槌に視線を移し――錬は呻き声を上げた。
つまり、雪美はこう言ったのだ、「山本さんを、金槌で殴り殺してちょうだい」と。

「季莉ちゃん!
 山本さんを、押さえてちょうだい?」

雪美の言葉に、真子と季莉が同時に顔を上げた。
2人は泣き腫らした目で互いの顔をじっと見合い――真子が悠希の亡骸を置いて立ち上がろうとしたところを、季莉はラグビーのタックルよろしく掴み掛り、2人はもんどりうって倒れた。

「嫌、嫌っ…お願い、離して季莉、季莉ッ!!!」

「大人しくしてよ真子、お願いだから、暴れないでッ!!」

真子がじたばたと四肢を動かして何とか季莉の束縛から離れようとするが、季莉は頑なに真子にしがみ付いて離れない。
捕まっている真子も、捕まえている季莉も、ぼろぼろと涙を流していた。

『ねえ、錬、この前借りた小説、もう一度借りていい?』
『良いけど…季莉、そんなに気に入った?』
『うん、あたしが気に入ったのもあるんだけどさ。
 真子が読みたいって言ってたの、貸しても良い?』
『山本さんが? 良いけど…』
『ありがと、あたしと真子って小説の趣味が同じなのっ』

そんな会話をしたことを思い出す。
季莉は派手な容姿からは想像しがたいかもしれないけれど意外と読書家で、特にファンタジー系の小説を好んで読んでいた。
季莉と真子は普段一緒にいることはなかったけれど、出席番号が近い関係で話をすることは多かったらしく、季莉は自分の読んだ本を真子に薦め、錬はよく季莉を通して真子に小説を貸していた。
読んだ小説の話を真子とするのが楽しいと、季莉はいつも言っていた。

そんな2人が、どうしてこんなことをしなければならないのか。
季莉が今どんな思いで真子を捕まえているのか、考えただけで錬は酷く息苦しくなり、鼻の奥がツンと痛んだ。

「さ、松栄くん…季莉ちゃんが押さえているうちに、ね?」

雪美が錬の腕を掴み、錬を立ち上がらせた。
いくら錬が運動音痴の非力な男と言えど、雪美だって文化系の女の子なのだから、振り払えないことはないはずだ。
だけど、できない。
恩義を感じているからか、それとも、恐怖からか――もう自分ではわからない。
雪美に引きずられるように、季莉と真子の元へと歩んだ。
錬の手に握られた金槌を目にした真子は、大きく目を見開いた。

「やだ、やだぁ…ッ!!
 助けて、嫌、死にたくないッ!!
 松栄くん、やめて、許してぇッ!!」

錬の、金槌を持つ手が酷く汗ばみ、震えが一層大きくなった。
金槌を持ち続けることが困難になり、ごとん、と金槌が地面に落ちた。
こんなに泣き叫んでいる子を殴打するだなんて、できっこない。

「で…でき…ない……ッ!!
 鷹城さん……できないよ……僕には、とても……ッ!!」

「できるわ…あたし、松栄くんを、信じているもの」

雪美は真っ直ぐ錬を見据え、言った。
しかしその右手は、チーフスペシャルを握っているその手は、季莉へ向けられた。
季莉の、血に汚れた金髪に、銃口が押し付けられた。

「ゆ…雪…ちゃん…?」

「季莉…ッ!! 鷹城さん、何を…!!」

銃口を向けられた季莉の身体が硬直した隙を見た真子が、季莉の束縛から抜け出し、悲鳴を上げながら逃げ出した。
足を縺れさせ、何度も躓き、それでも真子は何度も起き上がり逃げた。
しかし、錬は真子には目もくれず、雪美と季莉を凝視し続けた。

「ねえ、松栄くん…貴方の覚悟を、あたしに見せて。
 季莉ちゃんと山本さん…貴方は、どっちが大切なのかしら?」

麗たちを襲う時と真逆の状況――雪美は今度は季莉を人質に取り、錬に殺人を強要している。
季莉の、付けまつ毛に覆われた涙で潤んだ双眸が、錬を見つめる。

季莉…僕は、僕は――

錬は落とした金槌を掴むと、季莉と雪美に背を向け、地を蹴った。

「錬ッ!!」

季莉の叫びが、背中に、胸に突き刺さる。
それでも錬は振り返らず、真子の背中を追った。錬が雪美に銃を突き付けられた時、季莉は迷わず麗たちを襲い、その時は逃がしてしまったけれど、今回ついに殺人を犯した。被害者となった麗たちや悠希たちには申し訳ないけれど、季莉がそこまで錬の命に重きを置いてくれたことは、正直嬉しかった。だけど、同じように、いやきっとそれ以上に、錬にとって季莉の命は重い。こんな冴えない自分と一緒にいてくれて、笑いかけてくれて、大切に思ってくれる――そんな彼女の命がなくなるなんて、想像したくもない。
981 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:24:19.13 ID:e6Uk7Fse0(13/31)
もちろん殺人なんてしたくない、けれど、拒否すれば雪美はきっと引き金を絞る――それはほんの一滴の情けもなく、あっさりと。
そんなこと、絶対に、させてたまるか。

僕にとって、季莉の命は、何よりも重いんだ…!!

「逃がすかぁぁぁッ!!」

錬の足は速くない上に持久力もない。
普通の状況で追いかけっこをすれば、バドミントン部で鍛えている真子に瞬発力も持久力も決して敵わないだろう。
しかし、真子の震えた足は自身の逃亡を困難にし、錬との距離は詰まっていった。

「いやっ、いやぁ…きゃあッ!!!」

真子が地面から出っ張っていた石に躓き、スライディングをするように倒れた。
それでも少しでも錬との距離を取ろうともがき、何とか立ち上がろうとしていたが、ついに錬は真子に追い付き、真子の小さな背中に馬乗りになった。

「やだ、やだぁ…松栄くん、お願い、助けて、許してッ!!」

真子のサイドポニーがぶんぶんと揺れる。
季莉とは違う、まるで小学生のような童顔を返り血と涙と鼻水で汚し、真子は泣き叫んで錬に命を請う――錬の心臓が、吐きそうになる程に酷く痛む。
それでも、やめるわけにはいかない。
季莉を失わないためには、やるしかない。

「ご…ごめん……山本さん…ッ!!」

錬は、金槌を振り下ろした。
真子の悲鳴が上がる。
ごっという鈍い音が腕を通して伝わる。

「ごめん…ごめんなさい…ごめんなさい…ッ!!」

二度、三度と、錬は金槌を振り下ろした。
真子の悲鳴が、耳に刺さる。
めきっという音が耳に入る――真子の頭蓋骨が砕けた音だと認識する。
それでも、錬はやめない。

「山本さん、ごめんなさい、ごめんなさい…ッ!!」

真子の顔を、赤い液体が伝う。
いつの間にか、耳からも出血している。
真子の頭部はこんなに歪な形だっただろうか。
金槌は、こんな色だっただろうか。
それでも、錬はやめない。

もう、何度目になったのか、わからない。
振り上げた手を、何者かが掴んだ。
錬がゆっくりと顔を上げると、そこには、眉間に皺を寄せた賢吾がいた。

「錬、もういい…もう、やめてやれ」

賢吾の唸るような声に、錬は我に返り、自分の下に視線を向け――呻いた。
真子の顔面は真っ赤に染まり、地面にまでその血は広がっていた。
頭部は生前の形など見る影もない程にぼこぼこにへしゃげていた。
いつから真子が声を上げなくなったのか、記憶にない。
いつから真子の抵抗する力がなくなったのかも、記憶にない。真子がいつ息絶えたのか、わからない。ただ、確実に、真子が息絶えてもなお、錬は真子を殴り続けていた。

「あ……あぁ……ああああああぁぁぁあッ!!」

錬は血塗れになった金槌を手離し、頭を抱えて叫んだ。ついに、人を殺した。泣きながら何度も命乞いをしてきた、小さな女の子を。それも、他の2人よりも、残虐に、執拗に。

「錬ッ!!」

錬の耳に、愛しい女の子の声が飛び込んできた。錬が顔を上げると同時に、季莉が飛び付いてきて、錬の華奢な身体ではその力を受け止めきれず、2人は地面に倒れた。季莉は錬に縋り付き、その薄い胸板に顔を押し付け、泣いていた。何を思い涙を流しているのかはわからないし、今は、考えたくなかった。季莉がここにいて、生きている――それが一番だった。涙で潤む視界に、雪美の顔が入り込んだ。やはり、変わりない笑顔を浮かべて。

「やっぱり、あたしの信じたことは間違ってなかったわ。 季莉ちゃんと松栄くんのお互いを思い遣る気持ちは、本物ね。 ふふっ、あたしが季莉ちゃんや松栄くんを[ピーーー]はずがないじゃない、冗談よ? 怖がらせたらなら、ごめんなさいね…もうやらないわ。 どうかこれからもお互いを思い合って、一緒に、生き抜きましょう? 賢吾、ここを離れて、どこかで少し休みましょう…どこがいいかしら」

雪美は錬と季莉に背を向け、地図を広げた賢吾と打ち合わせをしていた。

「錬…あたし…やる……生き残ってやる…っ」

季莉は顔を上げ、錬をじっと見つめた。
その目にはまだ涙が浮かんでいたけれど、目力の強さはいつもの季莉そのものだ。

「もう、後には退けない… あたし、やっぱり、死にたくないよ… それに…錬がいなくなるかもって思ったら…怖かった…っ」
982 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:24:50.55 ID:e6Uk7Fse0(14/31)
突如前方に現れた、S
983 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:25:17.23 ID:e6Uk7Fse0(15/31)
大人しい目立たない女の子だと思っていた雪美が垣間見せた裏の顔にも、それに最初から気付き(雪美の話しぶりから察するに、恐らく華那以外は気付いていなかったのだろう)いつも警戒していた華那にも驚かされた。
勉強だけでなく、華那は本当に頭が良く周りを見ているのだと実感させられた。

そんな華那を、ここで失うわけにはいかない。
プログラムだなんてとんでもないし、やりたくもないが、死にたくもない。
この状況をなんとか打開したとして、龍輝たちが生きるためには、華那の頭脳と洞察力と物事を落ち着いて捉える能力は必要不可欠だ。
何が何でも護りきらなくては――ということを頭で考えるまでもなく、付き合いの長い友達を護るのは、龍輝にとっては当然のことなのだけれど。

「雨宮くんと山本さんは?」

華那の指摘に、龍輝は振り返って2人の姿を確認した。
親友の1人である雨宮悠希(男子三番)は、丸く縮こまってしゃがむチームリーダーである山本真子(女子十九番)を覆うようにして真子を護っていた。
2人の様子を見る限り、どうやら銃弾は誰にも当たらなかったらしい。

龍輝は発砲した張本人である錬に目を遣った。
発砲した衝撃が大きかったのか、そう大きくなくともひ弱な錬にはとても耐えられる力ではなかったのかは定かではないが、とにかく錬は地面に尻餅をついていた。
右手にチーフスペシャルはまだ握られているが、その手はガタガタと震えており、とても再び発砲できるようには見えない。
本人には悪いが、錬が非力であることに感謝した。

「悠希、真子ッ!!」

龍輝に呼ばれた悠希は身体を起こし、錬が発砲できない状態であることを確認すると、ガタガタと震える真子の身体を抱えるように起こした。
逃がすまいと掴みかかる季莉の手を払い除け、季莉がバランスを崩したところで足を払った(さすがサッカーの推薦で合格して入学しただけのことはあり、その足払いは芸術的だった)。
季莉は悲鳴を上げ手をばたつかせながらその場に倒れた。

「山本さん、頑張って走って、大丈夫だから、俺が護るからっ!!」

悠希は真子を抱くように肩に手を回しながら真子を走らせた。
怪我をしてもなお真子を護るその姿は、まるで姫を護る騎士のようだった。
悠希は誰にでも持ち前の優しさを振り撒くことのできるヤツだが、特に女の子に対しては非常に紳士的で優しい。
顔が良くて頭も良くて運動もできて性格も良い――彼女の1人や2人いないのが不思議なくらいだが、どうも意中の女の子には振り向いてもらえないらしい。
なんて残念なんだ。
いやとにかく、悠希が残念だろうが何だろうが、こんなにも良いヤツがこんな所で命を落としていいはずがない。

悠希に護られる真子は、泣きじゃくりながら震える足を必死に動かしていた。
足が縺れて2,3歩おきに倒れそうになっているが、その度に悠希に支えられて何とか踏み止まり、また足を動かし始めていた。
可哀想に、小さな女の子がこんなにも震えて。
いつも元気で、グループの中で楽しそうに笑っている真子。
身体を恐怖に震わせる姿も、恐怖や悲しみで涙を流す姿も、真子には似合わない。
龍輝や悠希には、というよりはどうやら男子には苦手意識が少しあるように見えるが、それはそれで可愛らしいではないか。
悠希が護ろうとする気持ちはとてもよくわかる、真子は思わず護ってあげたくなるようなタイプだと思う(いや、別に華那がそうでないというわけではないが)。

華那も、悠希も、真子も、こんな所で死なせるわけにはいかない。
全員で揃ってここから逃げて、もっともっと生きたい。
生憎戦うための武器は龍輝たちにはない(榊原たちは刀だの鎌だの銃だの持ってて、こちとら唯一使えそうなのが中華包丁だぜ?不公平にも程があるだろ。いっそあのガンニョムエキュシアの1/144のプラモデルが等身大に変化して搭乗でもれきればいいのに。喜んで乗るっての。『川原龍輝、ガンニョムエキュシア、目標を駆逐する…!!』とか言ってさ。憧れだろ、ガンニョムファンのさ)ので、逃げる以外に生きる方法はない。
984 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:25:44.24 ID:e6Uk7Fse0(16/31)
賢吾と季莉さえ撒くことができれば、運動能力の低い雪美と錬は問題ではない。
やればできるはずだ。

「逃がすか…ッ!!」

賢吾の低い唸り声が聞こえ、龍輝は振り返りざまに華那の手を引っ張って自分の後ろへ隠し、振り下ろされた刀の刃をデイパックで受け止めた。
剣道部で活躍する賢吾に刀を持たれるというのは恐怖でしかないが、反射神経なら龍輝は誰にも負けない自信があるし、真剣白刃取りはできなくとも大きな物でその刃を遮ることくらいなら難しいことではない。
賢吾の舌打ちが聞こえ(おーおー、真面目な榊原もそんなモンするんだな、初めて知った)、何度も刀を振り下ろすが、龍輝はそれを悉く受け止めてみせた。
それを離れた場所で見る雪美が「ふふっ、川原くんすごいすごい」とぱちぱちと拍手をしているのが非常に腹立たしいが、今は賢吾の相手をすることで手一杯だ。

「…龍くん、榊原くんを相手してて」

後ろで、華那が囁いた。

「雪ちゃんがリーダーなのは本当…なら、雪ちゃんを捕まえよう。
 …雪ちゃんを人質にして、交換条件で逃がしてもらうことができるかもしれない。
 かなが、雪ちゃんを押さえるよ」

「おい…華那…ッ!?」

落ち着いた口調で何を大胆なことを言っているんだ、華那は。
止める間もなく、華那は龍輝の陰から飛び出し、雪美の方へ向かった。
確かに、班員の命を握るリーダーを押さえれば、賢吾も季莉も手出しはできなくなるはずだし、華那の言うことは理に適っている、適っているのだけれど。

賢吾が華那の動きを見逃すはずがない。
龍輝は華那に言われた通りに賢吾の動きを止めようとしたのだが、賢吾は同じように刀を振り下ろすと見せかけてデイパックに当たる直前に刃を止め、龍輝の動きがびくりと止まった隙を見逃さず、刀を横に薙いだ。
龍輝は咄嗟に身体を後ろに逸らしたので刃は鼻先を掠めただけで済んだのだが、避けた勢いそのままに仰向けに倒れそうになった。
龍輝は持ち前の運動能力で何とか倒れずに踏み留まった――が、賢吾の次の動きへの反応が、少し遅れた。
龍輝が賢吾を押さえようとするよりも、間に合わないと判断して声を上げるよりも早く、賢吾の刀が、華那を背中から突いた。
華那の華奢な背中に刃がずぶずぶと入っていくのが見えた。
刃が抜かれると、華那は肩越しに自らを貫いた犯人の姿と刃をてらてらと濡らしていた紅い液体を限界まで見開いた小さな目に映し、そのまま地面に倒れ込んだ。

「華那…華那ああぁぁぁッ!!」

龍輝は華那に駆け寄ろうとしたが、賢吾がその行く手を阻んだ。
華那の血で汚れた刀の切っ先を龍輝に向け、龍輝を突き刺さんと突っ込んできた。
龍輝はデイパックをぶんっと振り回し、狙いを逸らさせた。
しかし賢吾は身体のバランスを僅かに崩したものの踏み止まり、再び龍輝を狙う。
振るわれた刀を、今度はデイパックで受け止め、押し合いが始まった。

「どけ、邪魔なんだよ榊原ッ!!
 華那、華那ぁッ!!!」

華那の返事はない。
そんな、まさか。
さっきまで後ろにいて、いつもと変わらないのんびりした口調で喋っていたのに。
小学生の頃からの縁もあって一緒に登下校することもしばしばあって、まあ時には周りから『付き合ってるの?』とか言われる位には仲が良くて(まあ、華那はそこそこ可愛いし頭も良いし、鈍くさいところだって可愛いと思うけど、思えばそういう空気になったことは一度もなかった)――そんな華那が、死ぬだなんて、まさか。



一方、真子と悠希は季莉から必死に逃げていた。
悠希1人なら季莉から逃げるのもそう難しいことではないだろうし、真子が普段の運動能力を発揮できればその可能性は決して低くはなかったはずだが(それでも季莉はクラス内では足が速い方で、真子は出席番号の関係で何度か季莉と並んで走ってタイムを計ったことがあるのだが、勝てたことは一度もなかった)、真子の足はガタガタと震えて言うことを聞かず、悠希の枷のような状況になっていた。

「…真子っ、雨宮ぁっ!!
 絶対、逃がすもんか、今度こそ…ッ!!」

“今度こそ”というのは、季莉たちが城ヶ崎麗(男子十番)らの班を逃がしたことを指しているのだと思うが、麗たちを逃がした腹いせに殺されるだなんて絶対にごめんだ。
985 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:26:18.96 ID:e6Uk7Fse0(17/31)
季莉の鎌が振り下ろされる刹那、悠希は真子を手離して振り返り、季莉の攻撃を受け止めようと手を伸ばしたがそれは叶わず、鎌の刃が悠希の首に突き刺さった。
鮮血を撒き散らし、悠希は倒れた。
親友の死を目の当たりにしたのは、田中顕昌(男子十一番)に続いて2人目だ。

「悠希…ッ!!」

今まで悠希が「俺ってイケメンだよね」というような趣旨の発言をする度にからかったり茶化したりしてきたが、今は土下座して謝りたい。
『護るからね』と言った女の子(しかも彼女でも、普段親しかったわけでもない、ただのクラスメイトだ)を本当に護って命を落とすだなんて、並のヤツには絶対できっこない――正真正銘イケメンだよ、悠希。

「くそ…くそっ、くそぉッ!!
 何なんだよお前ら、意味わかんねぇよ、この、人殺しッ!!!
 華那と悠希がテメェらに何したよッ!!?」

龍輝は精一杯の力で賢吾の刃をデイパックで払うと、右手の拳をぐっと握り締め、賢吾の左頬を殴りつけた。
普段殴り合いの喧嘩などしたことがなかったが、龍輝の拳は良い角度で賢吾の頬に入り、賢吾は横向きに吹っ飛び倒れた。
これまでに感じたことのないどす黒い憎悪が身体の中を渦巻いているのがわかったが、今はその感情に流されまいと必死に耐え、真子に駆け寄った。

「真子、立て、逃げるぞッ!!」

せめて真子だけでも、ここで死なせるわけにはいかない。
リーダーである真子の死は自らの死に直結するのはもちろんだが、仲間をこれ以上失いたくなかったのだ。

華那がいない、悠希がいない。
鼻の奥がツンと痛み、視界が潤む。
口許に込めた力を僅かでも抜けば、嗚咽が漏れてしまいそうだった。
しかし、今は泣いている場合ではないと、手の甲で強引に涙を拭った。

クリアになった視界に入った真子は、泣き腫らしたくりくりとしている大きな目を見開き、龍輝を――いや、その後ろを指差し、慟哭したせいで若干枯れた声で「川原くんッ!!」と叫んだ。
龍輝は真子の指先を視線で追い、肩越しに振り返り――目を見開いた。
倒したはずの賢吾が既に立ち上がっており、刀を振り被っていた。

次の瞬間、龍輝の背中に鋭い痛みが走った。
右肩から左脇腹に掛け、背中を大きく切り裂かれ、龍輝はその場に倒れ込んだ。
起き上がろうとするが、動こうとする度に背中の傷が悲鳴を上げ、腕に力が入らない――これは、非常にまずい。

「や…めて…ぇ…ッ!!
 さ…榊原くん……川原くんを…助けて…ッ!!」

真子の震える声。
龍輝は首を動かし、真子を視界に入れた。
悠希の亡骸を抱えたままの真子は、ぼろぼろと涙を零しながら身体をガタガタと震わせて、誰が見ても一目でわかるような怯えた瞳で賢吾を見上げていた。
もしも龍輝が賢吾だったとしたら、こんな真子の様子を目の当たりにしたら、とてもこれ以上誰も傷付けようだなんて思えない(端から思ってないけどさ)。
もしかしたら、賢吾も――そんな淡い期待を抱かずにはいられない。

「…悪い……けど、それは、聞けない」

賢吾の低い声が降ってきた。
この、人でなしが。

「真子!!!
 俺はいい、いいから、お前だけでも逃げ――」

龍輝の言葉は、最後まで紡がれることはなかった。
ざくっ、という野菜を包丁で切るような小気味よい音が、耳から或いは骨を伝わって聞こえたような気がして、一瞬首の後ろ側がかあっと熱くなるような感覚に襲われた。
それが、龍輝の最後の知覚となった。



ぼんやりとした視界。
うっすらと漂う、生臭い鉄のような臭い。
遠くに聞こえる、誰かの泣き声。
そして、ぼんやりとしたそれらの感覚とは違ってはっきりと感じる、腹部の痛み。

…そ…っか…かな…刺されたんだ……

鉛のように重い腕を動かし、精一杯の力を込めて、上半身を起こした。
それは数センチに留まったのだが、先程より僅かにクリアになった視界に飛び込んできた光景に、華那は目を見開いた。

華那の倒れている位置から数メートル先、倒れた誰かの首に、刀が生えていた。
それがすっと抜かれると、紅い液体が噴水のように舞い上がった。
降り注ぐ紅い液体に汚されていくカッターシャツ、半袖のシャツの袖から僅かにはみ出ていた黄色いTシャツ、大きな身体、短めに刈られた黒髪――それは、帝東学院にいる他の誰よりも付き合いが長かった、川原龍輝に間違いなかった。

「りゅ……くん……」

血の気を失い青ざめた華那の頬を、つうっと涙が伝った。
あんなに明るくて元気だったのに、ついさっきまでプログラムという状況にもかかわらずガンプラを作成して楽しそうにしていたのに、持ち前の運動能力でもって華那のことを護ってくれていたのに。
986 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:27:19.27 ID:e6Uk7Fse0(18/31)
文句の1つでも言ってやろうと思ったが、口を開いて出たのは血液と呼気だけだった。
その様子を見た雪美が、華那の頭を撫でた。

「可哀想に…痛いのに苦しいのに[ピーーー]ないなんて…
 賢吾…華那ちゃんを、助けてあげてくれる?」

“助ける”、その言葉が意味するところは、思考能力が大幅に低下している華那の頭脳でも簡単に理解できた。
その答え合わせをするように、濡れた冷たい何かが後頭部に当てられるのがわかった――賢吾が、先程龍輝の首を貫いた刀の刃先を、華那に突き付けたのだ。

「雪ちゃん……」

身体に残っている力を振り絞り、華那は声帯を震わせた。
雪美に対して感じていたことは本人に大方伝えたけれど、あと、これだけは。
偽りの友人への、送る言葉を。

「かな、みんなのために、祈るよ。
 一刻でも早く、雪ちゃんが、地獄に落ちますように――」

ちーちゃんやことちゃんが、雪ちゃんに騙されませんように、どうか、どうか。

華那の後頭部に、痛みが走った。
その痛覚は数秒ももたずに消え失せた。



「残念ね、華那ちゃん。
 あたし、そんなに早くに地獄なんかには行くつもりはないわ。
 だって、あたしはこんな所では死なないもの」

雪美はくつくつと笑いながら、息絶えた“友人”を見下ろしていた。
   
   男子三番・雨宮悠希
   男子五番・川原龍輝
   女子七番・佐伯華那   死亡

   【残り三十人】
987 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:28:09.80 ID:e6Uk7Fse0(19/31)
鷹城雪美(女子九番)は、少し大人しめで目立たないごくごく普通の女の子――と周りから見られるように生活してきた。

雪美の実家は少々という修飾語がとても似合わない程に特殊だ。
何を隠そう、雪美の家は、関東一円でその筋の者からは恐れられている極道“鷹城組”。
祖父が組長を務めており、雪美も家を出入りする祖父の部下たちからは“お嬢”と呼ばれ祭り上げられている。
怪我をしている人間を見るのは日常茶飯事で、時には銃撃戦なども起こり、父は抗争に巻き込まれて既にこの世にはいない。
雪美は、そんな特殊な家庭が、嫌いだった。
誰にも知られたくなかった。

帝東学院は名門校で良家の子息息女が多く通うからか、親の職業などを気にする子どもは少なくない。
特に初等部では、それがとても顕著だった。
出る杭は打たれるという諺があるが、確かに少し周りより突出すれば、それに僻んだ者たちはその者の家柄を知りたがり、例えばそれがごく普通の庶民であれば『家が大したことないくせに、良い気になるな』と嫌がらせを受けるのだ。
しかし、雪美の場合は家のことを知られると恐れられ、悪い意味で目立ってしまう。
奇異の目で見られるのも後ろ指を指されるのも御免なので、雪美は極力目立たないように生活を送ってきた。

化粧などをして目立つことはしない、髪も大きくいじらずに黒いウェーブのかかった髪を後ろで束ねるだけにする、制服も着崩さずスカート丈も無難な長さにする――雪美の顔立ちは誰もが振り返るような恵まれたものでもなければ後ろ指を指され笑われるような落ち目でもないものだし、背丈や横幅も平均的なので、これで良い意味でも悪い意味でも目立つことはなかった。
そして所謂主流派グループと呼ばれるような、クラスの中心になってイベントなどで盛り上がり目立つ集団には決して属さなかった。
だからといって、孤立してはいけない。
孤立しても目立ってしまい、あることないこと噂を立てられてしまう。
目立たない友人を作り、目立たない位置にいるのがベストなのだ。
友人を作ってべたべたとすることなど面倒なことこの上ないのだが(特に女子はどうしていつもどこでも集団行動をしようとするのか。移動教室ならまだしも、トイレにぞろぞろと集団で向かうなど、鬱陶しいことこの上ない)、家庭の事情がバレる方が余程面倒なので仕方がない。
お陰様で、校内で雪美の素性を知る者はほんの一握りしかいない。

クラス替えの度に良さそうな友人を作ってきた雪美が現在のクラスで最初に目を付けたのが、出席番号が近く且つ大人しそうに見えた佐伯華那(女子七番)だった。
物事を深く考えていなさそうだし、中等部から入学してきたという華那であれば人の家柄を気にすることもないだろう――そう考え、声を掛けた。

「あの…佐伯さん…よかったら、お友達になってくれない?
 あたし…あんまり人に声掛けるの得意じゃないんだけど…
 佐伯さん可愛いなって、お友達になりたいなって、そう思って…」

しどろもどろ言葉を紡ぎ出し、大人しく人見知りをするけれども華那には良い印象を持ったから勇気を出して声を掛けてみた、そんな自分をアピールする。
笑顔を浮かべて好意を見せれば相手は受け入れてくれる、これまでの経験で雪美はしっかりと学んでいた――友達を作るなんて、ちょろいものだ。

「あーえっと…鷹城さん…だっけ?
 うん、ありがとー、よろしくね」

ほら、すんなりと友達になることができた。
少し警戒しているような表情を浮かべていたけれど、初めてクラスメイトになった子に話し掛けられれば大抵はそういう反応を示すものなので、気に留めなかった。
同じような手法で、のんびり屋故か友人作りに乗り遅れていた荻野千世(女子三番)と、見るからに自分に自信がなさげで大人しくて1年生の時からクラスメイトだったという星崎かれん(女子十六番)から嫌がらせを受けていた室町古都美(女子十八番)にも声を掛け、1つのグループを作った(奈良橋智子(女子十一番)にも声を掛けても良かったのかもしれないが、彼女の頭の良さは知っていたのでやめておいた。頭の良い人間は厄介だ)。

3人共リーダーシップをとるような性格ではなかったこともあり、いつの間にか何となく雪美がグループのリーダーのような存在になっていたが、それでも目立つことはせずにクラスで浮くようなこともしないように、イベント事には消極的ながらも参加して他のグループと確執ができないように皆をさり気なくリードした。
千世はいつも頼ってくるし、古都美はいつも雪美の傍にいるようになった。
正直、隠れ蓑のために作った友人なので、頼られ過ぎると面倒に感じるし、いつも付いてくるのは鬱陶しいことこの上ないのだけれど、そんな気持ちはおくびにも出さずに優しく頼れる雪美像を崩さないようにしてきた。
988 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:28:46.18 ID:e6Uk7Fse0(20/31)
しかし、華那だけは違った。
華那は初めて声を掛けたあの日以来、一度たりとも雪美に対して心を開いていない。
いつも一緒にいるように周りからは見えるだろうけれども、雪美と華那が2人きりになることは殆どなかったし(例えば2人組を作りなさい、と言われると、さり気なく華那は雪美を避けるのだ。もっとも、避けなくとも古都美が雪美にべったりなので、自然と雪美と古都美が組み、華那と千世が組むのが自然の流れになっていたのだけれど)、会話も交わしているのだけれど、華那の声には警戒心が見て取れた。
和を乱すことを良しとしない華那は抱く警戒心を華那なりに隠そうとしていたのだろうけれども、雪美は人の接し方には敏感なのでそれを感じることができたし、華那は華那で雪美が心の中に隠している黒く渦巻く感情を感じていたと思う。

だからこそ、雪美は華那に一目置いていた。
ぼーっとしているようで頭が良く(言動に殆ど活かされていないがそれは勉強の範囲に留まらず頭の回転が速いという意味でだ)、和を乱さないように自分の言動を制御する能力がある。
正直、のろまな千世や雪美がいなければ何もできない古都美などいつ縁が切れようがどうでもいいのだが、華那とは友人関係を続けても良いと思っていた(まあ、華那は嫌がるだろうけれど。表立って拒否はしなくとも)。

プログラムに選ばれたと知り、チーム対抗戦という特殊ルールで行われるということが分かった時、華那とならば同じチームでも良いと思った。
運動能力を考えれば華那が足を引っ張ることは間違いないのだが(まあ、雪美自身も人のことは言えないのだけれど)、彼女の頭の良さは役に立つ。
結局、チームは別れてしまったけれど。

まあ、敵となるのならそれでいい。
それでも、できるなら一度会っておきたかった。

それがこんなにも、早く叶うなんて。



「誰かと思えば華那ちゃんじゃない…会いたかったわ」

「…かなは、会いたくなかったよ…雪ちゃん」

雪美の言葉に、華那は拒絶の言葉を返した。
華那が面と向かって雪美を拒絶したのは初めてだったので、雪美は目を丸くした。
千世や古都美が傍にいないし、命を懸けた戦場にいるのだから、もう和のために自分の気持ちを押し隠す必要がなくなったからだろう。
のんびりしているようで、ぼーっとしているようで、何も考えていないようで、華那はやはり現実を見ている。
華那のそういうところに、雪美は関心を持っている。

…まあ、もう少し楽しませてよね、華那ちゃん。

雪美は目に涙を浮かべた(嘘泣きなんて朝飯前だ)。

「酷いわ…華那ちゃん…どうしてそういうこと言うの…?
 あたし、ずっと、華那ちゃんを探してたのに…!!」

今しがた雪美のチームメイトである榊原賢吾(男子七番)と湯浅季莉(女子二十番)に襲われたばかりだというのに、雪美の涙声での訴えに、雨宮悠希(男子三番)と川原龍輝(男子五番)の顔には動揺が見て取れた。
ホント、男って女の泣き落しに弱いんだから。
しかし、華那は眉をハの字に下げたものの、その瞳から警戒の色は薄れなかった。
989 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:29:11.94 ID:e6Uk7Fse0(21/31)
「…探してくれてありがとうね。
 でも、雪ちゃん、かなたちのこと襲ったよね…?
 かなたちの…かなのこと、殺そうと思って探してたの…?」

思っていた以上に警戒されているようだ――雪美は一瞬ぴくりと眉間に皺を寄せたがすぐにそれを解き、ふるふると首を横に振った。

「ち…違う…そんなわけないじゃない…!
 賢吾と季莉ちゃんも、悪気があったわけじゃなくて…
 あ、あたし、リーダーだから…護ってくれようとしただけで…ほら…!」

雪美はセーターとブラウスの袖を捲り上げ、リーダーの証である黒い王冠の模様を華那に見せた。
リーダーが誰かということを他の班の人間に見せるのは百害あって一利なしなのだが、まあ問題ないだろう。

「ねえ、鷹城さん…訊いてもいいかな…?」

あたしと華那ちゃんの会話を邪魔しないでほしいわね、まったく――という本心はもちろん口にも顔にも出さず、雪美は問いかけてきた悠希に視線を移した。
山本真子(女子十九番)を庇って季莉に刺された肩は相当痛むようで、端正な顔は苦痛に歪んでいる。お気の毒に。

「俺たち、鷹城さんたちの班と麗たちの班しかまだ出発してなかった時に、銃声を
 聞いたんだけど…
 あれは…鷹城さんたちなの?
 麗は『やらない』って言ってたのに、それでも護るとか言って、攻撃したの…?」

雪美は再び僅かにぴくりと眉を上げた。
成程、いつも主流派グループの中で馬鹿みたいに騒いでいる馬鹿な集団の一員だという認識しかなかったが、悠希は痛みに苦しみながらも頭はしっかりと働いているらしい――少々侮っていたようだ。

悠希の指摘通り、雪美たちは教室を出発してそう時間が経たないうちに、本部から左程離れていない場所で、一足早く教室を出発していた城ヶ崎麗(男子十番)・木戸健太(男子六番)・朝比奈紗羅(女子一番)・鳴神もみじ(女子十二番)を発見した。
このメンツを見た時に、リーダーに指名されていそうな人物はどう考えても麗しかいないという予想をし、雪美は賢吾に指示をして麗を襲わせた。
しかし賢吾が襲いかかる直前に健太と紗羅に勘付かれてしまい、季莉に紗羅を攻撃するように依頼したのだがこれも麗に阻まれ、結局逃走を許してしまった。

「ハズレ、逆にあたしたちが撃たれた側なんだけど。
 あれ、木戸よ?
 ま、誰にも当たらなかったから良かったけど」

口を挟んできた季莉を睥睨した。
どのように話を運ぼうか考えることを楽しみながら言葉を紡いでいるというのに、季莉に邪魔されては興醒めするではないか――と思ったのだが、独りでべらべらと喋るのも怪しまれるかもしれないので、視線が合った季莉には笑顔を見せ、視線を華那たちに戻した。

「あたしたち…逃げたの…
 城ヶ崎くん、『乗らない』って言ってたから、声を掛けようとしたのに…」

流石にこの情報には衝撃を受けたようで、とろんとしていた華那の目が小さいながらもいっぱいに開かれていた。

「まさか…」

いつも勝気で元気一杯に馬鹿なことをしている龍輝が、驚愕と悲愴を混ぜたような打ちのめされた表情を浮かべ、唇を震わせていた。

「まさか…ケンがそんなことするはずない…ッ!!
 会長はやらないって言った、会長が自分の意見を曲げるはずがないッ!!
 紗羅ももみじも、会長の意見に従わないわけがないッ!!」

自分の心の中に浮かんだ疑心を打ち消すように龍輝は必死に叫んでいた。
あらあら、さすがは生徒会長様とその取り巻き、信頼は厚いのね――反吐が出る。
大体あのグループは気に入らない者だらけだ、特に――
まあ、今はこの場にいない人間に憎悪を滾らせている時ではないのでよしとしよう。

「雪ちゃん」

華那が静かに雪美を呼んだ。

「…いいよ雪ちゃん…嘘吐いて誤魔化したりしなくても。
 かなのこと、簡単に騙せると思った…?」

「はァッ!?
 華那、アンタ、雪ちゃんの友達のくせに、さっきから酷くない!?」

警戒心を露わにし続ける華那の態度が癇に障ったらしく、季莉が怒鳴って鎌を持つ手を振り上げかけたが、雪美は目でそれを制した。
季莉は納得いかない様子だったが口を閉じたので、雪美は視線を季莉から華那へと移し、言葉の続きを待った。

「雪ちゃん…痛いトコを突かれると、眉間がぴくってなるよね…知ってた?
 あと、都合の悪いことを誤魔化す時、喋る前に口の端がヒクッてなるの…
 多分ちーちゃんもことちゃんも知らないだろうけど、かなは知ってるよ。
 …木戸くんが撃ったのは本当かも知れない…けど、正当防衛じゃないの?
 雪ちゃんたちが、先に仕掛けたんじゃないの…?」

「ちょっと華那、言い掛かりもいい加減に――……ッ!!」

季莉は再び声を荒げたが、口を噤み、目を丸くして雪美を見つめた。
賢吾も同じように、いや賢吾だけでなく、龍輝や悠希や真子までもが雪美を怪訝な表情を浮かべて見つめていた。
990 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:30:11.38 ID:e6Uk7Fse0(22/31)
「ふふ…あっはは…っ」

雪美は口から洩れてしまう笑いを抑えることができない。
拍手を止めると、口許に手を添え、華那ににこりと笑みを向けた。

「さすが華那ちゃん…やっぱり、あたしの目に狂いはなかったわ…貴女、最高よ?
 千世ちゃんや古都美ちゃんとは違う…貴女となら、あたし、友達になれたわ。
 ふふっ、まあ、貴女は心底嫌がるでしょうけど」

「うん、かな、雪ちゃんとは…友達になりたくないな」

華那は雪美の心を読めるのではないだろうか、そう感じさせるほどに、華那は普段からしっかりと雪美のことを見ていた。
もしかしたら、この世の誰よりも雪美のことを理解しているのかもしれない。
雪美が華那たちのことを心から友達だと思っていないことを知っているからこそ、雪美の言葉に顔色一つ変えず答えることができている。
周りの面々は、わけがわからないという様子で見ているというのに。

「か…華那…何言ってんだお前…鷹城も…
 お前ら、ダチじゃないのかよ…いつも一緒にいただろ…?」

問う龍輝の声は震えていたが、答える華那は落ち着いていた。

「違うよ龍くん。
 雪ちゃんは、誰のことも友達だと思ってないんだよ。
 だから、かなも、雪ちゃんを友達だと思って見たことなんて一瞬もない。
 表情も嘘だらけ、言葉も嘘だらけ…そんな子と、友達になれるはずがないもん」

「そうね、華那ちゃんはいつもあたしを警戒してたものね。
 華那ちゃんは本当に頭が良くて物事をしっかり見てるのね。
 華那ちゃんの予想、全部正解、特大の花丸あげたいくらいよ?
 あたし、自分がリーダーだっていうこと以外は本当のことを1つも言ってないわ。
 城ヶ崎くんたちには逃げられちゃったのよ…運動能力の高さは侮れないわね」

くつくつと笑う雪美に対し、華那の後ろで龍輝たちが腰を浮かせるのが見えた。
まあ、ここまでバラしても逃げようとも戦おうともしないのなら、それは非戦論者などではなくただの馬鹿で愚か者だ。

「ありがとう華那ちゃん。
 初めて、華那ちゃんと腹を割って話ができた気がするわ」

「…雪ちゃん、あんまり割ってないじゃん」

「ふふっ…そう、そうね、華那ちゃんはお見通しよね?
 ああ、もっともっと、華那ちゃんとこういうお喋りしたかったわ…
 プログラムなんかに巻き込まれて…本当に残念。
 とてもとても楽しかったわ、本当に、会えてよかった。

 …賢吾、季莉ちゃん」

雪美は視線を賢吾と季莉に移し、笑みを向けた。
その視線と笑顔の意味を、賢吾も季莉も理解していた。
そしてそれは、華那や、龍輝たちですら感じ取ることができていた。

「逃げるぞッ!!」

賢吾と季莉が地面を蹴ったと同時に、龍輝が声を上げながら華那の腕を掴み、悠希は真子の手を引いて雪美たちに背を向けた。
この中で最も運動能力の劣る華那はこけそうになっていたが龍輝にひきずられるように走っていたし、悠希は一度真子を庇って傷を負ったというのに懲りることなくまだ真子を護り続けている。
ああ、なんて、うすら寒い光景。
雪美は「かーなーちゃんっ!」と叫んだ。
龍輝に引きずられていた華那がはっと振り返ったので、雪美は華那が厭っているであろう感情を伴わない笑顔を浮かべてみせた。
991 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:30:55.93 ID:e6Uk7Fse0(23/31)
プログラム本部となっている小中学校から見て真東にあたるE=06エリアのほぼ中心には、御神島唯一の神社が存在し、そこに4人の男女がいた。

島の名前に“神”が入っているが、特別な神様を祭っているものなのかどうかは不明である(この島に昔から住んでいる人に聞けばわかるかもしれないが、生憎プログラムのために島民は全て追い出されてしまっているので聞きようがない)。
まあ、何を祭っていようが関係ない。
たとえ神がいようが何だろうが、現在ここは戦場なのだから。

1時間半前にあった定時放送では7人の名前が呼ばれた。
その中で実際に亡骸を確認したのは、教室で全員の眼前で射殺された田中顕昌(男子十一番)と、小中学校から僅かしか離れていない場所で倒れていた横山圭(男子十八番)のみで、後はこの島のどこかで斃れているらしいが実感が湧かない。
本当に自分たちが殺し合いなんてしなければならないのだろうか、これは全部悪い冗談で、放送で名前を呼ばれた人たちもドッキリに加担していて後でひょっこり顔を出すのではないだろうか――人の亡骸を見ても尚そう思えてしまう。
そう思えてしまう大きな要因は――

佐伯華那(女子七番)は右手に持っている卓球ラケットをじっと見つめた。
家庭科部に所属し運動は苦手でのんびり屋の華那には卓球を趣味にした覚えはない――これがデイパックに入っていた支給武器らしきものだった。
スポーツの道具にしても、例えば野球のバットやホッケーのスティックであったなら武器と言われても頷くことはできるのだが、卓球のラケットで何ができるというのか。

「華那、ラケットがどうかした?
 へへっ…それがバドミントンのラケットだったら、バドミントンしたいんだけどなー」

華那の隣で膝を抱えて座っていた山本真子(女子十九番)がにこりと笑んだ。
真子はクラスの中では目立たないグループに属する華那とは違い女子主流派グループの中でいつも騒いでいる、広瀬邑子(女子十五番)に次いで小柄な女の子で、確かバドミントン部に所属していたと記憶している。
教室ではライド(担当教官)に、「自分の父親は国会議員なのに、どうしてプログラムに選ばれてしまったのか」という趣旨の質問をしたが責められるように言葉を返されて泣いてしまい、今も目が腫れてしまっている。
笑顔にも元気は感じられないし、活発さを表しているかのようなサイドポニーも今はセットが乱れてしまっている(そう言う華那自身も、天然パーマの短めのツインテールが大いに乱れているのだが、鏡を見ていないので気付いていない)。
そんな真子の傍には、これさえ捲れば大抵の言葉の意味を知ることができるであろう大東亜広辞苑が置かれているのだが、そんな知識の本こそが真子の武器だ。

「いいねーバドミントンかー…俺結構強いと思うんだけど!
 ふふふふーんふーん、ふふふふーんふーん、ふふふふーんふーん、ガンニョムー♪
 ああっ、ちょ…顔に嵌めるパーツ落ちた!!」

地面と砂を被ったコンクリートの地面と睨めっこをする川原龍輝(男子五番)の右手には、組み立てかけのプラモデルが握られている。
992 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:31:36.88 ID:e6Uk7Fse0(24/31)
それは、1970年代に初めてテレビ放映されてから幾度も様々なシリーズが放映され、大東亜人ならその名を知らない者はいないであろう世代を超えた人気アニメ『機動戦士ガンニョム』シリーズで、登場人物たちが登場して宇宙で戦う人型機動兵器を模したプラモデル、通称・ガンプラ――卓球ラケットや広辞苑も大概だと思うが、信じられないことにこれが龍輝に支給された武器だ(武器でも何でもないが。そして卓球ラケットや大東亜広辞苑にもそれは言えることだが)。
華那と龍輝は同じ小学校の出身という縁もあってそれなりに親しいのだが、ガンプラの箱がデイパックから出てきた時の第一声が「とりあえず…組み立てとく?」だったのは、お気楽な性格の龍輝らしいと思い、いつもと変わらない様子に安心した。
帝東学院にはバスケットボールの一芸入試で入学を果たした龍輝は、当然バスケットボール部に所属しているのだが、その運動能力は群を抜いているためにバスケットボールに限らずあらゆるスポーツでエース級の活躍ができ、スポーツテストでは龍輝の右に出る者はいない。
まあ、地面に落ちたガンプラのパーツを探すために地面に這いつくばる様子からは、とても想像できないのだけれど。

「あったあった…なんか汚れたなぁ…
 悠希、なんか拭くモン貸してくれよ」

「んー…俺今忙しいんだよねー…」

「……悠希さーん、今プログラムなのに何悠長に眉毛抜いてんだよ」

「ふはっ、悠長にプラモデル組み立ててる人の言う台詞じゃないねー」

龍輝との会話の間も手鏡とピンセットを用いて自分の眉毛を整えることに必死になっているのは雨宮悠希(男子三番)、龍輝の親友の1人だ。
纏う空気がとても爽やかで文武両道でサッカー部に所属し性格も容姿も良い悠希は、帝東学院中等部屈指のイケメンで人気を二分する城ヶ崎麗(男子十番)と春川英隆(男子十四番)と違って家柄が普通なので(麗も英隆も大企業の御曹司だ、とても普通とは言えない。比べて悠希の父親は公務員らしいので、その普通さに安心感を憶える)、とっつきやすいイケメンだと言われそれなりに人気がある。
難があるとすれば、悠希自身が自分の容姿の良さを自覚している上に、麗や英隆には人気が及ばないことに心から疑問を抱いているというナルシストなところだろう。

「悠希、眉毛抜いてるお前の顔、なかなかおもれーぞ、いいのかよー」

「えー、それは良くないなぁ…
 俺のかっこよさが台無しになっちゃうね」

「あ、そこ笑うところ?」

「何でだよもー俺すっごい真剣なのに」

悠希のナルシスト発言は普段からよく耳にはしているのだが、どうもそれが厭味ったらしく聞こえないのは、悠希の爽やかな雰囲気もあるだろうが、傍にいる龍輝がそれを茶化すことで冗談めかしてしまうからかもしれない。
冗談めかしても悠希は怒らないどころか笑って返すので、ただの親友同士の冗談のやりとりにしか聞こえなくなるのだ。

そんな悠希の傍には、サッカー少年には不似合いな中華包丁が置かれている。
4人の中では唯一武器になりえる支給武器だ。
卓球ラケット、広辞苑、ガンプラ、中華包丁――4人のデイパックから出てきた物たちがあまりに戦闘を連想させない物ばかりのため、いまいちプログラムという実感が湧かないのだ。
993 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:43:23.12 ID:e6Uk7Fse0(25/31)
それは、1970年代に初めてテレビ放映されてから幾度も様々なシリーズが放映され、大東亜人ならその名を知らない者はいないであろう世代を超えた人気アニメ『機動戦士ガンニョム』シリーズで、登場人物たちが登場して宇宙で戦う人型機動兵器を模したプラモデル、通称・ガンプラ――卓球ラケットや広辞苑も大概だと思うが、信じられないことにこれが龍輝に支給された武器だ(武器でも何でもないが。そして卓球ラケットや大東亜広辞苑にもそれは言えることだが)。
華那と龍輝は同じ小学校の出身という縁もあってそれなりに親しいのだが、ガンプラの箱がデイパックから出てきた時の第一声が「とりあえず…組み立てとく?」だったのは、お気楽な性格の龍輝らしいと思い、いつもと変わらない様子に安心した。
帝東学院にはバスケットボールの一芸入試で入学を果たした龍輝は、当然バスケットボール部に所属しているのだが、その運動能力は群を抜いているためにバスケットボールに限らずあらゆるスポーツでエース級の活躍ができ、スポーツテストでは龍輝の右に出る者はいない。
まあ、地面に落ちたガンプラのパーツを探すために地面に這いつくばる様子からは、とても想像できないのだけれど。

「あったあった…なんか汚れたなぁ…
 悠希、なんか拭くモン貸してくれよ」

「んー…俺今忙しいんだよねー…」

「……悠希さーん、今プログラムなのに何悠長に眉毛抜いてんだよ」

「ふはっ、悠長にプラモデル組み立ててる人の言う台詞じゃないねー」

龍輝との会話の間も手鏡とピンセットを用いて自分の眉毛を整えることに必死になっているのは雨宮悠希(男子三番)、龍輝の親友の1人だ。
纏う空気がとても爽やかで文武両道でサッカー部に所属し性格も容姿も良い悠希は、帝東学院中等部屈指のイケメンで人気を二分する城ヶ崎麗(男子十番)と春川英隆(男子十四番)と違って家柄が普通なので(麗も英隆も大企業の御曹司だ、とても普通とは言えない。比べて悠希の父親は公務員らしいので、その普通さに安心感を憶える)、とっつきやすいイケメンだと言われそれなりに人気がある。
難があるとすれば、悠希自身が自分の容姿の良さを自覚している上に、麗や英隆には人気が及ばないことに心から疑問を抱いているというナルシストなところだろう。

「悠希、眉毛抜いてるお前の顔、なかなかおもれーぞ、いいのかよー」

「えー、それは良くないなぁ…
 俺のかっこよさが台無しになっちゃうね」

「あ、そこ笑うところ?」

「何でだよもー俺すっごい真剣なのに」

悠希のナルシスト発言は普段からよく耳にはしているのだが、どうもそれが厭味ったらしく聞こえないのは、悠希の爽やかな雰囲気もあるだろうが、傍にいる龍輝がそれを茶化すことで冗談めかしてしまうからかもしれない。冗談めかしても悠希は怒らないどころか笑って返すので、ただの親友同士の冗談のやりとりにしか聞こえなくなるのだ。

そんな悠希の傍には、サッカー少年には不似合いな中華包丁が置かれている。
4人の中では唯一武器になりえる支給武器だ。

卓球ラケット、広辞苑、ガンプラ、中華包丁――4人のデイパックから出てきた物たちがあまりに戦闘を連想させない物ばかりのため、いまいちプログラムという実感が湧かないのだ。
994 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:43:54.22 ID:e6Uk7Fse0(26/31)
廊下側の1番後ろの席で、苦笑いを浮かべながら頭を掻いていたのは、手塚直樹(男子10番)。
外見も中身も15歳とは思えないほど老けている。
今もおそらく他の生徒よりは幾分落ち着いている。
というのも、今反論したり暴れたりするのは得策ではないからだ。

プログラムに選ばれる羽目になるとは思いもしなかった。
しかも、始まる前に既に犠牲者まで出てしまった。
瀬戸口北斗(男子6番)とはそこまで親しいわけではなかったが、球技大会などでそれなりに仲良くなった。
『ヅカさんオヤジくせーっ!!』
女子の方を見て惚れ惚れしていると、よく北斗にそう言われた。
外見は派手だが、無邪気でまだ幼さが残っているところが好きだった。
それなのに、あんな事になってしまうとは――

もう教室を出てしまった相模晶(女子6番)。
まさか泣き顔を拝めるとは思わなかった。
それは、幼馴染が目の前でわけがわからないまま殺されてしまったので、当然の事だとは思うが。
そういえば、あの2人は異様に仲が良かったが、付き合っていたのだろうか?

 

「男子7番、園田茂樹君v」

「ひ、ひゃいっ!!」

横の方から間抜けな返事が聞こえ、直樹はそちらに目を遣った。
園田茂樹(男子7番)はよろよろと立ち上がった。

「はい、相模さんと同じ宣言をしてねぇv」

「ひぃ…っ!!
 ぼ、ぼく、ぼくた…っ
 僕たち、こ、殺し、殺し合いを…す、す…
 や、らなきゃ…やら、れ、やられる…っ」

坂ノ下愛鈴(担当教官)に促されてつっかえながら宣言をし、荷物を受け取って走って出て行った。
先程晶が堂々と出て行っただけに、やや情けない。

園田か…アイツは…あの様子からして、怖がってどこかに隠れて怯えているか、もしくはこんな状況だ、狂っちまうかもしれないな…
前者の方がありがたいんだが…

 

「女子7番、白鳥里子ちゃんv」

先程空いた茂樹の前の席、白鳥里子(女子7番)が無言で立ち上がった。
やや大柄な体が、小刻みに震えているようだった。

「はい、宣言してちょうだいv」

「わ、私たちは…殺し合いをする…殺らなきゃ…殺られる…」

里子は泣きながらドタドタと教室を後にした。
4分後には親友の出発が待っている、外で待つのだろうか。

直樹はぐるっと教室を見渡した。
女子は大部分が泣いているようだった。
直樹の前に座る松田由梨(女子18番)も、嗚咽を洩らして泣いている。

 

「男子8番、滝川渉君v」

直樹は横目で滝川渉(男子8番)を見た。
恐らく直樹だけでなく、クラスメイトのほとんどが渉に注目しているだろう。
渉は地域では名の通った不良だ、クラスメイトを殺して優勝するなどたやすい事かもしれない、と。

「渉…」

渉の前、不良仲間の森嵩(男子18番)が渉を見上げた。
渉は気付いているだろうが、見向きもしなかった。

「宣言をどうぞv」

アイリンに促された渉は、振り返ってクラスメイトをぐるっと見回し、続いて隅に追いやられた北斗の亡骸に目を遣り、アイリンに向き直った。

995 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:44:32.67 ID:e6Uk7Fse0(27/31)
日が沈み、薄暗い緑の中。
農協では2つの影が東奔西走していた。
安藤悌吾(男子1番)と久保田篤史(男子5番)である。
幼馴染の瀬戸口北斗(男子6番)を殺した政府を許さない。
およそ30人ものクラスメイトを失うことになったプログラムを許さない。
まだ生きているとはいえ、幼馴染の因幡彰人(男子2番)・大塚豊(男子3番)・相模晶(女子6番)も傷つけたプログラムを許さない。
怒りに燃えて、2人はプログラム本部を強襲する作戦を練ってきた。
作戦内容は、火薬を乗せたトラックを本部に突っ込ませる、という単純だが決して簡単ではないもの。
それでも2人は自分たちの持つ全ての知識を用いて、少しでも被害が大きくなるようにと準備を進めてきた。

そして今、作戦を決行しようとしている。

これ以上待ってはいられない。
遅くなればなるほど、プログラムの犠牲者は増えていくのだから。
彰人たちが今この瞬間に命を危険に晒しているのかもしれないのだから。

用意した軽トラックの荷台に、次々と用意してきたものを乗せていく。
ダイナマイトの束、コンロと鍋と油――まだセットはしていない、本部に行くまでに火が点いてしまっては意味が無いので――、そしてガソリンやスプレー缶、それら全てを2人で手分けして運んだ。

「その缶で最後?」

「最後」

悌吾は手に持っていたスプレー缶を、軽トラックの荷台に置いた。
後はこれを本部に突っ込ませればいい。

覚悟は出来ている、つもりだ。
成功しようが失敗しようが関係なく、もうすぐ、自分たちは、死ぬ。
政府に楯突くのだから、当然のことだろう。
忌々しい首輪が爆発するかもしれないし、撃ち殺されるかもしれない。
とにかく、次の放送で、きっと名前が呼ばれる。

――怖い。

「…悌吾?」

篤史の心配そうな声が横から聞こえた。
手の震えが見えたのだろうか。
この恐怖が、空気で伝わったのだろうか。

「……なぁ、篤史。
 俺ら、きっと、もうすぐ…死ぬよな?」

「……多分」

篤史の声は、明るかった――いや、明るさを装っていた。
いくら楽観的思考の持ち主だとしても、現状はしっかりと理解している。
先に“死ぬかもしれない”ということを言ったのは、篤史なのだから。

2人はトラックの車内に乗り込んだ。
篤史が運転席、悌吾が助手席だ。
悌吾は律儀にシートベルトをしかけ、やめた。万が一誰かに襲われた時に、逃げ遅れる可能性があるので。
996 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:45:44.22 ID:e6Uk7Fse0(28/31)
2人はトラックの車内に乗り込んだ。
篤史が運転席、悌吾が助手席だ。
悌吾は律儀にシートベルトをしかけ、やめた。
万が一誰かに襲われた時に、逃げ遅れる可能性があるので。
シートベルトの先を掴んだまま、悌吾は呟いた。

「俺ら、まだ14歳なのにな…
 何で…こんなことしなきゃいけないんだろうな?」

篤史の右手が、キーを差し込んだところで止まった。

「…同感。
 俺、まだまだ遊びたかったし、サッカーもしたかった。
 高校行ったら国立競技場目指したかったし、プロになりたかった。
 でも…最悪の宝くじに当たったんだ」

ハンドルを掴む左手に、力が込められた。
声が、震えていた。

「北斗が、死んだ…いや、殺された。
 当たり前の反論をして、ゴミみたいにあっさりと…殺された。
 晶がめちゃくちゃ悲しんだ。
 俺らですら見たことないくらいに、泣いて、喚いて、怒って、傷ついた。
 豊が怪我した。
 俺らの中で1番誰にも恨まれそうに無いのに、誰かに傷つけられた。
 彰人が、人を殺した。
 やりたくなかっただろうに、やらざるを得ない状況に追い込まれた」

悌吾は鼻の奥がツンと痛み、鼻を啜った。
血まみれになって、ゴミのように扱われた北斗の最期。
幼馴染の理不尽な死に、怒り泣き叫んでいた晶の痛ましい姿。
右手に包帯を巻き、カッターシャツを変色させていた豊の笑顔。
クラスメイトを殺してしまった罪悪感に苛まれる彰人の泣きそうな顔。
幼馴染たちの悲痛な姿が、脳裏をよぎった。

篤史は一呼吸置いて、続けた。

「死んだヤツも、生きてるヤツも、みんな傷付いてる。
 だから、俺たちは花火を上げるんだ。
 少しでもみんなの気持ちが浮かばれるように、祭りをするんだ。
 俺たちは、死にに行くんじゃない。
 弔い合戦に行くんだ」

篤史はキーを捻った。
エンジン音が低く響き、座っている席を通して振動も伝えた。
篤史はようやく悌吾の方を見、笑顔を浮かべた。

「行こうぜ、仇討ちに…な?」

悌吾は頷いた。
そうだ、命を捨てに行くんじゃない。
ムカつく政府の連中に、一泡吹かせてやるんだ。

 

車はゆっくりと進んだ。
何しろ、篤史は車の免許なんて持っているはずが無い。
煌々とライトを点けるわけにはいかないので、薄暗い森の中を、昼間見つけた道を思い出して進んでいるので、仕方がない。悌吾は事故を起こさないか不安に思いつつ、今は運転に集中して周りを見ていない篤史の分も、周りに気を配っていた。
やる気になっているヤツに見つかるのも悪いし、やる気になっていないヤツを轢き殺してしまったらあわせる顔が無い。

それでも、悌吾は話し掛けずにはいられないと思った。生まれて間もない頃からの親友との会話を、楽しみたい。

「…なぁ、篤史」

「何? 運転に関する苦情はオコトワリよん♪」

「ハハッ、マジキモい!」

篤史の冗談に笑って答え、一息置いてから、訊いた。

「篤史はさぁ、好きな女子とかいた?」

車が揺れた。篤史が驚きを車の動きが表現した。危ないことこの上ない。

「…わーお、そんな話にいっちゃうワケ? そういう悌吾こそどうなんだよ、おモテになってたみたいですがぁ?」

篤史はキシシッと悪戯っぽく笑いながら訊き返してきた。悌吾はある程度予想していた切り替えしに、溜息混じりに答えた。
997 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:46:33.76 ID:e6Uk7Fse0(29/31)
何度も告白されたことはある。
それなりに人気があるんだ、ということも自負している。
でも、全ての告白を断ってきた。
まだまだ友達と遊びたいお年頃、色恋沙汰にはあまり興味がなかったし、相手に魅力を感じなかったこともある。

「俺らってさ、絶対損してるよな。
 なんせ、昔から、1番近くにいた女子が晶だぜ?
 目が肥えてるから、他の女子に、見た目で惚れるなんてありえねぇ話だろ?
 性格は、知るほど親しいわけじゃないからさ、彼女できなかったんだよ」

それでも、晶に恋心を抱いたことは無かった。
確かに綺麗だし、女としては魅力的な存在なんだろうが、悌吾は晶のとっつきにくい性格を若干苦手としていたので、付き合うなど無理な話だと思ってきた。
そんな晶を好きだと言った、北斗や彰人や豊は、晶の人となりをもっとちゃんと見てきたんだろうな、と思う。

「で、篤史は?」

「俺もいないよ、別に」

「…前もそう言ってたよな。
 でもさ、実際晶に惚れてたりしないわけ?
 “姫君”とか言っちゃってさ、お気に入りみたいじゃん」

「……俺は、空気を読んでるだけだよ」

篤史はそう言うと、笑みを浮かべた。
満面の笑みではなく、どことなく哀しげだった。

「ただでさえ、俺らの中の3人が惚れてるっしょ?
 そこに俺までって言ったら…泥沼じゃん。
 俺としては晶も、北斗たちも大事だからさ」

直接的な言葉は言っていなくても、はっきりとわかった。
グループ内で、自分以外の男は全員晶に惚れているということが。
少しだけ、疎外感を感じる。

「でも、どこが?
 いや、別に悪いっつってるわけじゃないけど」

「…やっぱり、護ってあげたくなると言いますか…。
 晶は、あんまり喋らない。
 辛い時に“辛い”ってことが言えない。
 助けてほしい時に“助けて”ってことが言えない。
 冷静で、頭が良くて、運動ができて…そして強がり。
 そういうちょっと不器用なトコ、良いと思うよ。
 あとは、ああ見えて、周りの人をよく見てるトコとかね」

…なるほどね。

やっぱり、篤史も、晶のことをしっかりと見ている。
1番周りの人間をしっかり見てこなかったのは、自分なんだと思い知らされる。

悌吾は溜息を吐き、頭をがしがしと掻いた。
その様子を、篤史が横目で見てきた。

「んー? 何でもないよ。
 ただ、自分の、周りの見方の甘さに、少し後悔しただけ」

その言葉に、篤史は笑った。

「いいんでないの? それが悌吾なんだから。
 俺らの中で1番短気、1番乱暴、1番周りを見てない――
 そんな悌吾が、俺は好きだし」

悌吾は笑いかけ――顔をしかめた。
全く褒められていないではないか。

「ちぇっ、俺だってお前が好きだよ。
 俺らの中で1番楽観的、1番調子乗り、1番馬鹿」

「あっはは、言ってくれるなぁ!」

「先に言ったのはそっちだっての!」

2人は笑った。
でも、悌吾の心のどこかには、これが最後なんだということが引っかかっていたし、きっと篤史もそうだろう。目星をつけていたポイントに着いた。20m程先には、学校の敷地との境である塀がそびえ立っている。その奥には古ぼけた校舎。あそこに車を突っ込ませることで、作戦は成功する。2人は車から降り、荷台に飛び乗った。着々と準備を進めていく。中華鍋に油を満たし、コンロにしっかり固定して、火を点けた。強火で20分もしないうちに発火するだろう。悌吾はふぅっと息を吐き、薄暗い森を見つめた。
998 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:47:03.85 ID:e6Uk7Fse0(30/31)
1人は、真ん中でわけられた前髪の間から覗く広い額、その下にはやや下がり気味だが大きめのぱっちりとした瞳、少し低い鼻に小さめの口と、全体的に“可愛らしい”という印象を与える顔立ちをしている。
平均的な身長で、艶やかな黒髪のポニーテール以外にはそれほど強い印象を与えるような容姿はしていないが、そのやや高めだが耳障りでない声と穏やかな表情は、周りの者を安心させる力がある。
少女の名は、天道千夏(女子10番)。

もう1人は、腰の上までありそうな程長い流れるような茶髪、きりっとした眉、細いわけではないが切れ長の瞳、すっと通った鼻筋、あまり開かれることのない薄い唇と、こちらは“美人”と称される顔立ちをしている。
クラスの女子で最も高い身長を持ち、耳には青いピアスという目立つ容姿をしているが、無口で、その表情に笑顔が見えることはほとんどない。
少女の名は、相模晶(女子6番)。

交友関係のなかった2人だが、プログラムという尋常でない状況の中で、様々な成り行きから、今は行動を共にしている。
会話によるコミュニケーションはあまり多くないが、それでも徐々に心の歩み寄りがなされており、険悪なムードは漂っていない。

外見も交友関係も全く違う2人だが、共通点はいくつかある。
1つは、2人の家庭環境。
千夏は国会議員の父とデザイナーの母を持ち、晶は外科医の父とナースの母を持つ――資金的な絶対値は違うだろうが、経済的に恵まれた家で育った、世間一般的に言う“お嬢様”である。
しかし、これはプログラムにおいては何の意味もなさない。
親の身分でどうにかなるのなら、国会議員の父を持つ千夏がプログラムに放り込まれるなどありえないだろう。
もう1つは、2人の根本的な対人的価値観。
晶の方がやや重症だが、2人共人見知りをする。
親しくない人と会話をしたり行動を共にしたりすることは苦手である。

その2人が行動を共にしているということは、傍から見ればおかしいかもしれない。
しかし、当人にとってはそれほど不思議なことでもない。
千夏は晶に命を救われ、晶は千夏に命を救われた。
よほどのことがない限り、何の見返りも求めずに命を救ってくれた相手に対して、いくら人見知りが激しいとはいえ、拒絶することはできないだろう。

現在も、頻繁に会話を交わすわけではない。
ただ、2人で木を背に向かい合って座っている。

千夏は前に座る晶を見つめた。
体格的には千夏よりも恵まれている晶も、疲れが溜まっている様子だ。
ぼんやりと暗闇を眺め、時々溜息を洩らす。
その疲れきった表情ですら、美しさがある。
見ているだけで緊張してきたので、千夏は一度視線を外した。

…やっぱ、物凄い美人さん…
絶対凄い人だよね、相模さん…

脳裏に過ぎるのは、晶の幼馴染の瀬戸口北斗(男子6番)。
人懐っこい笑顔が特徴的な、派手な容姿の男の子。
千夏の、想い人。

北斗は晶のことを好きだったと思う。
北斗のことをずっと見ていたから、わかる。
晶に対する目は、保護者のような感じも見受けられたが、それ以上に、1人の女の子に対するものもあった。
999 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 20:47:49.10 ID:e6Uk7Fse0(31/31)
晶はそれに気付いていたのだろうか。
いや、もしかしたら、晶も北斗のことを想っているのかもしれない。
教室で見せたあの怒りは、尋常ではなかった。
もしかしたら、2人は――

「相模さんは…瀬戸口くんと付き合ってたりとか、した?」

ふと疑問に思ったことが、そのまま口に出た。
聞いてどうなるものでもないのに。
北斗が自分のことを何とも思っていないであろうことには変わりないし、そもそも北斗はもうこの世にはいないのだから。

晶は「え?」と僅かに声を洩らした。
それは気付かれたということに対する声なのか、意外なことに対する声なのか、声色からは判断できなかった。

「あ…えっと…その…深い意味はなくて、何となく…っ」

晶のしばしの沈黙が怖くなり、千夏は必死に弁明した。
変に勘ぐられたりなどしていないだろうか。
変な印象を与えてしまってはいないだろうか。

「…ふーん……」

返ってきたのは、納得するような声。
それは、今までの会話の時と違い、少し楽しそうに聞こえた。

「天道さん…あなた、北斗のこと…」

「え、いや、えっと、あの…」

「大丈夫、あなたが思ってるような関係じゃない。
 幼馴染、それだけ…」

それは、気を使って嘘をついているようには聞こえなかった。
北斗には気の毒な気もするが、恐らく晶にとっては事実なのだろう。
何も変わることなどないのに、少し安心してしまった。

「…北斗の、どこが良か…った?」

晶が珍しく自ら質問してきた。
僅かに詰まったのは、北斗のことを過去形で言ってしまったことに戸惑ったのかもしれない。
加賀光留(女子3番)らと別れて以降も会話が多いわけではないが、、晶の言葉のほとんどが単語から短文へ、そして長文へと変わってきたように思う。
心を開いてくれたのだろうか。
それならば、嬉しい。

「えっと…1番は…優しいところ、かなぁ。
 やんちゃな感じだけど、親切なところもあるなぁって思って…
 別に、あたしが直接親切にされたってわけじゃないんだけど…
 あたし、男の子あまり得意じゃないから…」

「…そう」

千夏は晶を見た。
月光に照らされたその顔には、僅かに笑みが零れていた。
とても嬉しそうに見えた。
まるで、自分のことのように。

北斗の優しさは、主に晶に向けられていたように思う。
もちろん、接してくる人には誰にでも親切だったが、晶は別格だった。
その2人の姿は輝かしくもあり、羨ましくもあり、悔しくもあった。
もしかしたら、晶の優しさも、主に北斗に向けられていたのだろうか。
今の笑みは、千夏にそう思わせた。

「多分、あたし、相模さんと一緒にいる瀬戸口くんが1番好き。
 相模さんが羨ましかったもん」

1000 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/14(月) 20:48:03.72 ID:jQitr2wU0(1)
>>1000ならハッピーエンド
1001 1001 Over 1000 Thread
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