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智「さあ、おとぎ話をはじめよう」 Re:3 (1002レス)
智「さあ、おとぎ話をはじめよう」 Re:3 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/
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142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 21:21:20.60 ID:mSotq/X9o 大きく時間取れたので行きますです。 今回で終わらせるつもりですけれど、出来なかったら申し訳。 それではいきます。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/142
143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 21:34:07.04 ID:mSotq/X9o 本日未明。 僕はこっそりとベッドを抜け出す。 運良く、いつもなら僕を縛っている手足はなく、無事に抜け出すことが出来た。 ううん、とそれは寝返りをうつ。 僕を追いかけて空に手を伸ばすが、それは届かない。 小さく僕の名前を呼ぶ声に後ろ髪を引かれてしまう。 智「……ううん、だめだめ。 このまままたベッドに入ったら、また寝ちゃうし」 二度寝。 甘美な響き。 けれどその結果は言わずもがな、僕より先に今はベッドに篭っているのが起きてしまう。 そうなったらどうなるだろう。 決まってる。 朝食が作られてしまっているのだ。 智「……いやね、別にいいんだけどさ。 でも、ぶっちゃけ僕の作ったほうがおいしいし……」 寝返りをうった。 ビクッ、と反射的に震えてしまう。 しかしそこにあったのは安らかな表情。 惰眠を貪る我が姉の姿。 智「……心臓に、悪い」 思っていても、言っていいことと悪いことがある。 姉さんには料理と体型がそれに当てはまる。 弟である僕と同じ、或いは劣っているというのはそんなに嫌なことなのだろうか。 智「まぁ、比べられはするけどさ」 僕らは互いが互いに比べられる。 それは姉弟だから、双子だから。 なまじ二人とも出来てしまうものだから、尚更。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/143
144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 21:45:25.62 ID:mSotq/X9o 手探りで台所にたどり着き、そこだけ電気をつける。 今日は和食のつもりだったらしい、台所には昨日まで冷凍してあった鮭が置かれ、自然解凍されている。 炊飯ジャーは景気よく湯気を噴出しており、もう十分もすれば出来上がるだろう。 智「さて、じゃあ僕も作っちゃおうかな」 例え途中で姉さんが起きても、既に作り始めている僕を押しのけてまで作ろうとは思うまい。 ……多分、だけど。 智「いやいや、流石にそこまでは……」 多少、我侭をいう姉だけど。 結構、無茶をいう姉だけど。 度々、暴論をいう姉だけど…… 智「……起きるより先に、作ろう。 うん」 嗚呼。 姉とは何ぞ、理不尽成るや。 世間一般での姉弟関係は、大多数が弟が理不尽な思いをすることが多いらしい。(僕調べ) 僕もその例に漏れていないと言えるだろう。 その最たることが学園生活だ。 僕は、学校に女装して通っている。 それこそ、姉さんによる理不尽な言動によって。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/144
145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 22:00:38.85 ID:mSotq/X9o ――あなたは、スカートです。 そう言ったのは死んだ母さん……ではなくて、実の姉だった。 それも、今の南総学園に入学する直前の日に。 何故か。 真耶『そっちの方が、智が可愛いもの』 真耶『あと、面白そうじゃない?』 面白くない、全く。 けれどそういった僕の言葉はやはりというか、受け入れられなくて。 結果、不条理な現実に直面してしまったのだった。 智「そろそろ焼けたかなー」 野菜を炒める手を一瞬止めて、キッチンに備え付けのグリルを覗き見る。 うん、良い感じ。 香ばしい香りもして、食欲を唆る。 続いて炊飯ジャーが白米が炊けたと自己主張する。 野菜炒めの火を若干弱め、杓文字を少しばかり水で濡らしてから白米をかき混ぜる。 そのついでに、二弾重ねの弁当箱の一段目に一杯よそる。 それを二つ。 それをそのまま弁当にする……のではなく、先にラップをかけて冷蔵庫へ。 生ぬるいままだと菌が繁殖しやすいから、冷やし飯にするのが吉。 智「これでよし、と」 昨日の夕食の余りと今朝の野菜炒めを弁当の二段目に詰めて。 それで更に余ったものを今朝の食事に。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/145
146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 22:07:02.94 ID:mSotq/X9o 皿に盛った朝食を居間に持って行き、姉さんを起こして朝ごはん……のはずなのだけれど。 僕がそれらを持って居間に行ったら、姉さんは既に起床してカーテンを開き、窓の外を眺めていた。 真耶「おはよう、智」 智「おはよう、姉さん。 朝ごはんできてるよ」 真耶「ええ、勿論頂くわ」 今日のお咎めは無し。 それにほっと胸を撫で下ろしつつ、僕は茶碗にご飯をよそってお箸と一緒にテーブルに並べる。 洗面所でパッと顔だけ洗ってきた姉さんも戻ってきて、二人して正面で向かい合う。 真耶「頂きます」 智「頂きます」 鏡合わせのように手を合わせて小さくお辞儀。 ここまでして、ようやく、僕らの一日は始まりを告げるのだ。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/146
147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 22:24:36.89 ID:mSotq/X9o 朝食後は決まって、僕が身支度を整えている間に姉さんが着替える。 先に着替えているときはその限りではないけれど、二人とも寝間着のままの場合はそうなる。 女性の身支度は長い……とはいわないけれど、少なくとも僕より姉さんの方が長いのは事実で。 ならば効率の良い方がいい。 智「姉さん、終わったよー」 真耶「ええ、今行くわ」 姉さんの髪は僕の二倍程ある。 それも時間のかかる一因だろう。 鏡をみて、制服のリボンを整える。 入学当初はよく曲がってしまっていて、姉さんが他の生徒の前で『タイが曲がっていてよ』的なことをよくやらかしてくれた。 今ではそんなことはほとんどなくて、曲がっていても姉さんより先に宮和が気付く。 あのほんの些細なことに気付く注意力に姉さんが若干張り合おうとしているのは多分気のせいじゃないだろう。 くるり、と鏡の前で一回転。 街中でやったならきっと、視線が僕の太ももの辺りをくすぐるに違いない。 智「……スカート、未だに慣れないな」 いや、慣れたら男として終わりなのだろうけれど。 一年以上経った今でも慣れないのは相当ではないだろうか。 人間とは順応する生き物だ、とは誰の言葉だっただろう。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/147
148: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 22:42:30.06 ID:mSotq/X9o 真耶「智? どうしたの、そんなに肩を落として」 鏡を見て落ち込んでいると、姉さんが後ろから声をかけてきた。 一つに結われた長い髪が揺れる。 智「速いね、もう終わったんだ」 真耶「今日は跳ねも少なかったから。 それより鏡でも見て、どうかした?」 智「ううん、なんでもない」 自己嫌悪、なんて言おうものなら寸劇が始まるに違いない。 或いはあからさまに不機嫌になってみせて、『ふぅん、智は姉さんのやることに不満でもあるのかしら』とでもいうに決まってる。 それに対する僕の答えはいつも決まって、『……そんなことないよ』、だ。 答えるのに少しばかり躊躇いがあるのがポイント。 姉さんはそれに絶対に気づいていて、そして笑顔で『そう、それならよかった』と言うのだ。 本当、世界って理不尽。 真耶「それじゃあ、行きましょうか。 あんまり遅れると、隣の人にあってしまうしね」 智「それは嫌だね。 それなら早く行かないと」 お隣さんと遭遇するのは本当に心臓に悪い。 僕にその気はなくとも、気付かれてしまったら一巻の終わりなのだ。 彼の所為で、どこか遠くに出かけるときも女装でなくてはいけなくなったのはあまりにも有名な話。 真耶「授業道具はもった? ハンカチとちり紙は? スカートも忘れてない?」 智「大丈夫だよ、そんなに心配しなくても」 真耶「どうかしら。 智は昔から、肝心なところで忘れること多いじゃない」 それにしてもスカートは履いているのだから、見ればわかる。 そのことを告げると、姉さんはクスクスと笑う。 真耶「そこは、冗談よ。 う、ふ、ふ、ふ、ふ」 カチャリ。 扉をあけて、僕らは外の世界へと飛び出した。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/148
149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 22:58:59.28 ID:mSotq/X9o 通学途中、若干の視線をその身に受ける。 二年生の和久津家の美人姉妹(この状況においては僕は『妹』でなければならない)は南総学園において知らない者は居ない、らしい。 お姉様肌の姉、孤高な優等生の妹。 それぞれのファンは五十人もくだらなく、姉妹共通を含めると倍以上もいるらしい。 らしいらしい、というのはそれが噂でしか聞いたことのない話だからだ。 その噂の張本人はというと。 真耶「今日は、アレはいないのね」 智「アレって……」 真耶「姉さんにとっては、智に近寄る不届き者、といったところなのだけれど?」 冬篠宮和。 その噂を教えてくれた張本人。 曰く姉さんより僕の方のファンで、僕らに一番近い立ち位置な天災さんだ。 そんな宮和を姉さんはあまり快く思っていないのは言葉の節々ににじみ出ている。 智「姉さん、宮は事情を話さなくてもちゃんとフォローしてくれるいい子なんだから」 真耶「どうだか。 本当は智の身体狙いで、ふと二人きりになった拍子に剥かれてしまうかもしれないのよ? そうなったら智、きっと退学ね。 社会的に抹殺されてしまうわ」 智「そんな子じゃないのは姉さんもよく知ってるでしょ」 わかっていてこんなことを嘯く。 弟がとられると思ったら気が気でないのだ、きっと。 皆は僕がシスコンだと良く言うけれど。 実は姉さんの方がブラコンなのだ。 実際にそんなことを口にしたら、逆に口にすることもできない何かが待ち受けているだろうけれど。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/149
150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 23:15:42.65 ID:mSotq/X9o 真耶「それじゃあ智。 今日は昼食の約束があるから、放課後に。 いつもの場所、でいいのよね?」 智「うん、多分。 別の場所になったらすぐに連絡するよ」 姉さんは友達が多い。 そりゃ、性別を偽らなくていいのだから自由に振る舞えるのだろうけれど。 なんとなく、羨ましい。 ……いや、別に女の子に囲まれているのが、じゃなくて。 単純に、友達が多いのが、だ。 僕の友達、というか気兼ねなく話せるのはクラス内には一人だけしかいないから。 宮和「おはようございます、和久津さま」 智「わっ!?」 何の気なしに開いた教室のドアの影から、宮和が生えてきた。 まるで待ちぶせしていたかのような素早さ、心臓に悪い。 バクバクいう心臓を抑えながら、宮和に返事を返す。 智「お……おはよ、宮」 宮和「はい。 今朝も和久津さまは見目麗しく、宮はドキがムネムネしてしまいます」 智「……それ、誰から習ったの?」 宮和「ネットの知人がこういう場合に使えばよろしいと」 宮のネットの知人さん。 お願いですからこれ以上変人にしないで下さい。 切なに。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/150
151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 23:27:43.60 ID:mSotq/X9o 緋本「和久津さん、おはようございます」 智「おはようございます」 緋本さんこと〈赤色〉さん。 姉さんをライバル視している、グループ大好き派閥大好き人間さん。 度々僕を誘ってくるところをみるに、対姉さんへの切り札としてでも利用したいに違いない。 魂胆が見え見えな上に僕にその気はないから、袖であしらうのが常だけれど。 緋本「ちょっと小耳に挟んだのだけれど、いいかな」 智「うん、時間あるし構わないけど」 緋本「ええとね、和久津さんが下級生に転校してきた不良っぽい子と仲良くしてるって話を聞いたんだけど、本当?」 下級生に転校してきた、不良っぽい子。 思い当たるのはたった一人。 智「央輝のことなら、一応、他の人よりは仲がいい……つもりだよ」 緋本「へぇ、そうなんだ。 じゃあ、お姉さんは?」 なるほど、そうきたか。 というより最初からそれを聞きたかったのだろう。 嘘をついても仕方がないし、僕は二人の顔を合わせた時の様子を思い出しつつ。 智「僕経由で顔は知ってるけど、そんなに仲がいいわけではないかな。 火と油、みたいな」 央輝は結構短気だから、姉さんのような飄々とした人間には合わない。 姉さんもそれがわかっていて、油を注ぐだけ注ぐ。 さっきの言葉だと、微妙に誤解がまざるかな?正しくは、 火に油を注ぐ関係、だ。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/151
152: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] 2013/03/29(金) 23:44:35.80 ID:mSotq/X9o 緋本「ふぅん、そっかそっか。 ありがとう、和久津さん。 今日も一日頑張りましょうね」 智「うん、お互いにね」 僕の返事に僅か思案顔を浮かべ、満足したようにお礼をいう。 僕もそれに表面の笑顔で返して、席に向かう。 宮和「悪、でございますね」 智「何が?」 宮和「央輝さんと真耶さまの関係は、私にはそれほど悪いようには見えません。 それを、和久津さまは息をするように嘘をおっしゃられたので」 智「嘘も方便、だよ」 そもそも火と油の関係は嘘ではないし、とりたてて仲がいいわけでもない。 可もなく不可もなく、な返事なわけだ。 それで勘違いしても、僕には知ったこっちゃない。 いや、大きな問題になったら困ってしまうけどその時はその時だ。 丁度よくチャイムが鳴る。 宮和を席につきなよと促し、鞄から筆記用具を取り出す。 今坂先生がやってきて、日直が号令をかける。 あやめ「おはようございます」 緋本「おはようございます」 宮和「おはようございます」 混じり、僕も礼を深々と下げた。 今日も一日、かんばりましょう。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363440428/152
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