【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目 (507レス)
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抽出解除 必死チェッカー(本家) (べ) レス栞 あぼーん

169: 2013/03/13(水)01:45 ID:wZ4tktXS0(1/11) AAS
今日は日付変わるまで仕事して、明日は6時出;;

ともあれ、今日はかずさvs千晶の続き
170
(1): 2013/03/13(水)01:46 ID:wZ4tktXS0(2/11) AAS
 その鼓動のリズムはゆっくりと、規則的だった。あの時の、春希と同じ…
「………っ!」
 だからこそかずさは気づいてしまう。感情を押し殺し、何かを隠そうとしている鼓動だと

 どんっ!
「きゃっ!?」

 かずさから両手で突き放され、慌てて声をあげ、距離をとる千晶。
「だからぁ………悪かったって……」

 だが、かずさは暗く震えた口調で千晶を問い詰める。
「『知らなかったから』悪かった…って、本当に思っているというのか?」
「え?」
省15
171
(1): 2013/03/13(水)01:48 ID:wZ4tktXS0(3/11) AAS
 千晶は思った。
 慰めさせてももらえないか。
 じゃあ、あんたに本当に必要なモノをくれてやるよ。
 春希も、あんたの母親もしてくれないことをね。あんたのファンだからね。
 ここまでする義理なんてないけど。蛇足だけど。
 副作用の強い『劇』薬だけど。くらいやがれ。
 そして、一週間で立ち直れよ。

「ああ、そうだよ。振られたのはあんたの方だって、ハナから気づいてたよ。あんたに勝ち目はないって」
「…っ!」
「あんたの話を引き出して、自分の脚本の『答え合わせ』したかっただけだよ。ペラペラしゃべってくれてありがとさん」
省19
172
(1): 2013/03/13(水)01:50 ID:wZ4tktXS0(4/11) AAS
「ひどい…ひどいです。瀬ノ内さん。人を何だと思っているんですか!」
 板倉が動かないかずさを抱きしめつつ、泣きそうな声で千晶を責めるが、千晶は口調を変えずに答えた。
「そだね〜。『これも役作りのため。わたしにとっては芸がすべて』かな。
 あんたが聞きたがっていた『瀬ノ内晶さんの役作りの秘訣は何ですか?』の答えがこれ。記事にしていいよ」
「…っ!」
 板倉はくちびるを噛んだ。記事にしてこの怪物を懲らしてやりたいのはやまやま。
 しかし、それが冬馬かずさを再び傷つけるのは明白。記事にできようはずがない。千晶もそれがわかって言っている。

 魂まで打ち砕かれたかのようなかずさが、床に手をついたままで口を開く。
「…最後の…質問だ…」
 千晶は人を喰った態度を続ける。
省10
173: 2013/03/13(水)01:51 ID:wZ4tktXS0(5/11) AAS
こよいはここまでにしとうごじゃります。

…かずさいじめすぎて胃が痛い
176: 2013/03/13(水)23:44 ID:wZ4tktXS0(6/11) AAS
ういっす。本日分投下開始。
177
(1): 2013/03/13(水)23:45 ID:wZ4tktXS0(7/11) AAS
**********5/16(日)冬馬宅にて

「かずささん! 開けてください! …せめて何か食べてください…」
 これで丸3日、自室に籠もりきりのかずさの身を心配して美代子が扉を叩く。
 最早かずさが冬馬曜子オフィスの唯一の稼ぎ手なわけだが、来週末に公演を控えた彼女がこの状態。美代子の心中穏やかならざることいかばかりか、である。
 そこへ曜子が帰宅してきた。
「ふう…毎度の事ながらわが娘にも困ったものね…でも、今日は助っ人を連れてきたわよ…」

「こ、こんばんは…ははは…」
「…お邪魔します…」
「ばんわ〜っ」
「失礼します。お邪魔させていただきます」
省17
178
(1): 2013/03/13(水)23:47 ID:wZ4tktXS0(8/11) AAS
 今回の説得の口火を切ったのは依緒であった。
「冬馬さん…食事くらい食べたら?」
「…いい。…食欲ない…」
 その後もかずさの身体を気遣う依緒だが、かずさには聞き入れられなかった。

 続いて武也が話しかける。
「…冬馬…春希が聞いたら心配するぞ…」
「っ!…おねがいだよぉ…やめてくれよぉ…こんな…こんな情けないわたしを春希に見せないでくれよぉ…」
 かずさの声が泣きそうなほど弱るのを聞き、これは逆効果と悟る武也。

 曜子は次の説得相手を見繕ったが…美代子も板倉記者も効果は望めない…
…と、なればこの千晶という、今回の件の主犯格と言える怪しい新人女優しかいない。
省15
179
(1): 2013/03/13(水)23:50 ID:wZ4tktXS0(9/11) AAS
「…ん」
 促されてドアの前に立つ千晶。しばし考え込むも、やがて何か諦めたように首を振り、たどだしく口を開いた。
「…あのさ、冬馬さん。あれからずっと考えてはみたんだけど…」
 ドアの向こうからは返事はない。しかし、千晶は構わず続ける。まるで自分自身にきかせるように。
「…結局、榛名が和希と結ばれて幸せになるエンディングは思い浮かばなかった…」

 『結ばれるエンディングも構想していたが、ボツしただけ』という嘘が至極簡単なのは百も承知であったが、千晶の脚本書きとしてのプライドがそれを許さなかった。
 ドアの向こうから僅かにため息が漏れたのが感じられた。
「榛名は…自分が傷つくことにも他人を傷つけることにも、ピアノを捨てることにも、
 三人の中で一番臆病で一番不器用で…人と交わることも一番苦手なキャラだから…わたしがそういうキャラに作ったから…
 …和希と幸せに結ばれるように動いてくれないんだ」
省11
180
(1): 2013/03/13(水)23:53 ID:wZ4tktXS0(10/11) AAS
 もはや、説得しているんだか自分がいじけているんだか千晶本人も解っていない。
「お前の来週のコンサートなんてなぁ、お前ひとりにS席5500円だぞ?
 わたしはビンボーだからC席2500円しか買えなかったんだぞ!
 ウチの劇団のチケットなんて、役者から裏方さんまで束になってかかってやっと一枚5000円なんだぞ!
 しかも、チケットタダであげたのに来てくれない奴もいるんだぞ!」
 もはや、ただの駄々っ子だ。

 ここまでで、ようやく千晶の愚痴が終わった。当然ながらというか、ドアは開かない。少し息を荒くしつつ、千晶は考えた。
『やっぱりこの手しかないか…』
 千晶は落ち着いて、心を研ぎ澄ました。
 イメージするのは春希。説得の成功率が一番高そうな人物だ。もちろん、リスクもある。
省14
181: 2013/03/13(水)23:55 ID:wZ4tktXS0(11/11) AAS
<Ding Dong>

 本日の投下は終了しました。
 明日は…たぶん投下できますが、今週末は投下できそうにないです。
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