[過去ログ] ガンダムヒロインズMARK ??I (152レス)
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3: フェニックステイル第31話(承前) 2020/12/01(火)01:35 ID:P3dXRXkh(3/6) AAS
「そしてプラント農業とその輸出態勢が軌道に乗った頃には工業プラント群も整備されて、宙域のデブリやジャンクを回収して再利用する基盤も整っていた。
 連邦軍の第一線を退役したボールを大量に取得して、今は予備役登録を条件に業者へ積極的に貸し出したりする振興策をやってるみたい。
 何せここの暗礁宙域は地球圏最大だったうえ、長年残党軍の拠点にされてたから、今でも高額で捌けるジャンクがデブリになって、手つかずのまま大量に漂流してる。
 誰が呼んだかジャンク漁業――そのジャンク漁業に従事する民間船団の護衛は、今でもここの連邦軍の任務のひとつらしい」
「ジャンク漁業の護衛っ……!」
 シエルの言葉に、にわかにアイネの瞳が輝きを増す。姿勢が前のめりになり、巨大な胸元がシエルの眼前へ迫る。呆れたような半笑いを浮かべながら、シエルは親友の顔を見上げた。
「何。アイネ、そんな仕事やりたいの?」
「うんっ!」
 揶揄するような調子の問いにも、アイネは満面の笑みで即座に頷いてのける。
 ジャンク回収船に張り付いていつ来るかも分からない敵をひたすら待ち受ける受け身の任務など、シエルは積極的にやりたいとは思わない。むしろいかに危険であろうと、果敢に敵陣へ斬り込む威力偵察のような攻めの任務の方が好ましいと思っている。
「白兵大好き突撃バカのアイネがそれ言う……? 死ぬほど退屈でしょうよ。そんな待ちの仕事、私なら絶対イヤだけどな」
「やっとMSのパイロットになれたんだもん。あの凶悪なジオンの残党どもから、復興のために働く人たちの安全を最前線で守るんだ。これこそ地球連邦宇宙軍の、最高の存在意義だよ!」
「――そう」
 屈託のない笑みからの、まっすぐに理想を目指して言い切ってのける言動。互いにあれほどの激戦を経験してきたというのに、訓練隊から巣立ったあの日から、アイネは何も変わっていない。彼女は理想を捨てていない。
 同室の親友が見せるこの横顔が、シエルは決して嫌いではなかった。
「クライネ伍長!」
「はいっ!」
 そんな二人へ向かって、整備中だったアイネの乗機、ジム?25のコクピットハッチから声が掛けられる。幼くあどけない女児じみた声色のようでありながら、同時に凛とした気迫を備えたその呼びかけに、アイネが思わず背筋を伸ばして向かい合う。
「25とミケリヤ少尉機の整備、間もなく完了! コクピットに入って最終点検。良ければ庫内のエアを抜いて、そのまま対空監視に出てもらうけど。準備はいい?」
「万全です!」
 女性として小柄なシエルと比べてもなお二回りは小さく見える、いっそ童女のような整備兵が、整備作業の汗を帯びたボブカットの金髪を揺らしながらアイネを呼んでいた。
「よしっ。じゃあシエル、行ってくる!」
「おう、行ってこい」
 ノーマルスーツの拳と拳をカツンと合わせると、アイネは格納庫の床を蹴り、自機の機付長が待つコクピット目掛けて跳んだ。
 途中でノーマルスーツのスラスターを噴かすこともなく、跳躍のみで狙い過たず届いたコクピットハッチの縁を掴んで制動しながら、アイネはコクピット内を覗き込んでいるマリエル・エイムズ軍曹の真横で身体を止めた。
 思ったより距離が近い。
「…………」
 無言のまま、妙に心拍数が上がってしまう。
 会議室での初顔合わせ以来、アイネはマリエルに対してなぜか緊張感を持つようになってしまっていた。
 マリエルが自他ともに厳格な人物なのは動作と態度の端々からも感じられるのだが、どうもアイネに対してはそれ以外の「何か」があるようにも感じられるのだ。
 なんとなく、これは女社会における負の側面の片鱗めいた気配なのではないか、とすら思ってしまう。
 まだろくに話してもいないというのにこれというのは、自分たちは何か、よほど絶望的に相性が悪いのだろうか……?
 自機の整備という命運を預ける存在から人間的に嫌われてしまうなど、MSパイロットにとっては完全な悪夢以外の何者でもない。
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