[過去ログ] 【仮面】オペラ座の怪人エロパロ第9幕【仮面】 (243レス)
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47: 8/9 2010/11/27(土)22:48 ID:EbricxZj(8/10) AAS




どうしたことだろう。先ほどまでは素晴らしい演技を見せていたのに。
カルロッタのおかげで劇はいつも通り進んでいたが、
エリックにはどうにもクリスティーヌの様子がおかしく見えて仕方がなかった。
観客は勿論のこと、共演者達も気づいていないかもしれないが、クリスティーヌの歌声がいつもと違う。
鈴を転がしたような軽やかで清らかな歌声が今はとても重苦しい。
まるで何かを恐れているようだ。と、考え及んでエリックは膝を打った。
なるほど、劇中のクリスティーヌの不安を表現しているのだな。
さすがクリスティーヌ、私が見込んだだけのことはある。
教え込まずともここまでの迫真の演技が出来るとは……やはり私が教えることはもう無いな。
しかし台本にないコケを、わざわざ演技を中断させてまで入れる必要はあるまい。
まさか素で転んでいるとは思えない。そこまで抜けてるとは思いたくない。

やはり演技ではないのだと決定的にしたのは続く屋上での場面だった。
クリスティーヌが地下での出来事を告白するという重要な場面で、彼女はまたも盛大にずっこけた。
見事に顔面から滑り込んでいったため、心配になって思わず腰を浮かしかけてほどだ。
クリスティーヌは転んだまま動き出さなかった。さらに相方も悪かった。
場数を踏んだカルロッタとは違い、ラウル役の男性は固まってしまったのである。
彼の動揺が手に取るようにわかる。助けを求めるために彷徨わせた瞳は
何も捉えることが出来ずにうずくまったままのクリスティーヌの背に落とされた。
長い沈黙という異常事態に観客達が今度こそおかしいのではないかとさざめき合う。
「若い子をヒロインに大抜擢するのは些か無謀だったのではないか」
「カルロッタがヒロインだったらこんなことにはならなかった」
と言った風にだ。
恐らく後者はカルロッタの愉快なお友達が聞えよがしに発言したのだと思われる。

静まり返った舞台上で、ラウル役の男性が氷が溶けたように漸く動き出した。
コケたクリスティーヌの傍に跪き、抱き起こして強引に演技を再開させる。
『俯かないで、僕が傍にいるよ――』
ここで観客の殆どが「俯いたんでなくずっこけたんだよ」とツッコミを入れた。
クリスティーヌの死人のように青ざめた顔は、彼の言葉を聞くうちに次第に生気を取り戻していく。
そして彼が全ての台詞を読み上げる前にクリスティーヌは満面の笑顔になって彼に抱きついた。
『ラウル!』
『クリスt』
勢いが良すぎたため、彼らはもつれるようにして舞台に倒れこんだ。
客席から黄色い声があがる。
「押し倒したwww」「これはいったい」「最近の若者は早急過ぎるという演出では?」
「でもここ屋上じゃなかったっけ?」「馬鹿だな、屋上でもどこでもやれるだろ」
やれないし、よくない。

何がここまでクリスティーヌの心を乱しているのだろう?
エリックは自分が原因だとは微塵も思っていなかった。
未だに席に現れないラウルが原因なのではと当たらずとも遠からずなことを考えていた。
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