[過去ログ] 【仮面】オペラ座の怪人エロパロ第9幕【仮面】 (243レス)
1-

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
46: 7/9 2010/11/27(土)22:47 ID:EbricxZj(7/10) AAS
ラウルはタイを緩めようと首元に手を伸ばし、そこで初めて気づく。
手がガクガクと震えている。手だけではない。体中が震えている。
左手でどうにか震える右手を掴まえて、体に巻きつけた。
自分でも何が起こっているのかよくわからなかった。
嘘だろ。この僕がたかが水を怖がっているって?
しかし体は紛れもなく震えている。自分の体がまるで自分のもので無くなったように思えた。
あのとき――拷問部屋での出来事を体はまだ覚えているのだ。だから水が怖くて震えている。
それだけでない。昨夜の夢。暗い水底に落ちた夢。
「はあ、はあ……落ちつけ、ここは水の中じゃない!」
呼吸が乱れて頭が朦朧とする。ゆっくり呼吸をしなくては、深呼吸をして。
水が怖いなんて、夢が怖いなんて子供みたいなこと言うなよ。
ここは水の中じゃない。夢の中じゃない。呪文のように何度も繰り返す。
宙を見上げる。薄暗い天井。月など見えない。これは夢の中じゃない!

震える体を何とか押し進めて、どうにか室内に戻り、途方に暮れた。
大変情けないことだがどう頑張っても水への恐怖を克服出来そうにない。
「帰れるかな」
水路を使わずに地上に戻れる方法があればいいけど。
室内を見渡し、扉を一つ一つ丁寧に調べて回る。一つだけ知らない扉。この部屋の中身は知らない。
彼は絶対に入ってはいけない、覗いてはいけないと言っていた。
彼はよくこの部屋に長時間籠っていたので、きっと何かの作業部屋だと思っていたけど、
もしもここから外に出られるのだとしたら?
恐る恐るドアノブに触れた。力を入れるとそれは簡単に回った。
鍵がかかっているものと思っていたが杞憂だったようだ。

忍び足で滑り込むとどこからか歌声が聞こえてくる。
誘われるように部屋の中央へ向かった。けれどそこには誰もいないし、何もない。
歌声と共に届く冷たい風はどうやら天井から流れ込んでいるようだ。
見上げると天井に亀裂が走っており、その微かな隙間の遠く先から光が射し込んでいる気がした。
彼はどんな思いで遥か高みの舞台上の歌声を聴いていたのかと考える。
一時間経ったような気もするし、一分程度だったかもしれない。時を忘れて聞き入った。
背後に何らかの視線を感じて、はたと我に返り、身を強張らせた。
誰かいる?――まさか。彼は舞台を見に行っているはずだ。
何気ないふうを装って振り返ると、二つの燃え盛る金色の目がこちらを睨みつけていた。
全身がそそけ立ち、石にされてしまったかのように動けないラウルに残されたの行動は
助けを求めるために叫ぶことだけだった。
1-
あと 197 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.031s