[過去ログ] きかんしゃトーマスで801 2車目 (765レス)
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122: 116 2010/05/12(水)10:40 ID:z64KOc36P(1/7) AAS
いろいろ面倒な事言ってしまいすいません
読み返してもやっぱり腐臭は漂うものの恋愛要素は薄いんで
こちらに投下させていただきますね
全6レスお借りします
ほんと、面倒おかけした割に大した事無いネタなんですが…
123: オリバー&トード「二日前の誓い」1/6 2010/05/12(水)10:42 ID:z64KOc36P(2/7) AAS
白く燃え輝く太陽が、もうじき彼方へと沈む。
何も始まらない、何も生まれない、「終わり」のこの地で向かえる夕暮れは、もう何度目なのだろう。
気まぐれに吹きすさぶ風が運んでくるのは、静まり返った金属の臭い。諦めにも似た、錆の臭い。
そしてボディに刻まれた記憶さえも、砕き尽くし無に還す、埃交じりの威圧的な熱。
オリバーはいよいよ錆びの広がってきた我が身とその後ろに繋がれた長年の盟友、トードを案じつつ、涼しさが漂い始めた薄い色の空を眺める。

「……今日もまた、生きる事ができたのか」
そして、背後のトードにさえ聞こえる事の無い程の小さな呟き声を、本日最後の粉砕作業を終えた機械の停止音に混じらせた。
生きる。その言葉ほどこの地で意味を為さない言葉は無い。
前を向けば、終わりの見えない敷地のあちらこちらに、一ミクロンの希望さえも失った同種の者達が身を錆びつかせて固まり倒れている。
背後では後ろ向きであり続けるブレーキ車のトードが、似たような絶望的な光景を目の当たりにしている事だろう。
省11
124: オリバー&トード「二日前の誓い」2/6 2010/05/12(水)10:43 ID:z64KOc36P(3/7) AAS
かつてはこの身に誇らしげに輝いていたGWDの金色のエンブレムは、今はもう、この地で吹き晒され出来上がった錆の層に埋もれて姿を消してしまった。
悪しき思いを断とうという気持ちさえも大西部鉄道の機関車であったという誇りと共に、この身の錆の中に霞んで風化してしまうのだろうか。
それを思うとあまりにも悲し過ぎる。とは思うものの、それでも涙さえも出てきそうもないという現実を、ただ受け止める以外に何も出来なかった。

「なぁ、トード…」
何のビジョンも抱かずに声をかけたオリバーの視界の果ての果てから、紺色が滲み出し始めていた。
もうじきまた、熱を失った罐(かま)の底から凍てつくように冷え込む、長い夜が訪れる。
「今、君には……何が見えているんだ?」
かつては大西部鉄道の線路に誇らしげに車輪を滑らせていたはずのこの身が、宵闇に冷え染まる。
その現実にだけは今も尚、オリバーは慣れる事が出来ずにいた。
そんな思いが行き場を探した末、背後のトードに縋るようにして言葉をかけたのだった。
省8
125: オリバー&トード「二日前の誓い」3/6 2010/05/12(水)10:43 ID:z64KOc36P(4/7) AAS
「オリバーさんがかっこよく車輪を軋ませてカーブを曲がる。そしてそこで僕が、ブレーキをかけて……」
まるでつい数分前の出来事であるかのようなトードのその弾むような声を耳にしながらオリバーは、心に奥底から締め付けられるような苦しさを抱いていた。
「そして終点の駅で僕らはいつものように、喜び合うんです。『今日もまた、事故無く仕事を終わらせた』って言いながら」
オリバーは何も言い出せなかった。
トードの目前に広がっているという情景を思い起こすなどという行為は、かえって自身を苦しめるという事くらいとうに解っていたからだ。

「終わり」というものがひとつの世界なのだとすれば、この地はその世界への玄関口なのだ。
ここには石畳を歩む人々もいなければ、大地に芽吹く草木も生えてはいない。
猛々しいまでに罐を燃やし懸命に煙を吐き出す、同じ蒸気機関車さえもここにはいない。
日に一度か二度、忘れたころに訪れる機関車はみな、油を燃やしてエンジン音と共に動くディーゼル達だ。
だが、彼等はこの地に運ばれてくる者に──あるいは蒸気機関車の全てに侮蔑の念を抱いており、同じ線路を走る同士として扱ってはくれない。
省8
126: オリバー&トード「二日前の誓い」4/6 2010/05/12(水)10:44 ID:z64KOc36P(5/7) AAS
オリバーの頭上にも東からの藍色が迫ってきた頃、トードが再び呟くように言葉を放った。
「オリバーさん。僕は今、とても幸せです」
── 幸せ。
この地とは真逆の位置付けにあるのだろうその言葉をトードの声で聴いた瞬間、オリバーは夢から覚めたかのようにはっと目を見開いた。
「何故って、スクラップになる瞬間にだって、僕は貴方の後ろにいる事が出来るから。僕は壊されてバラバラになっても尚、貴方と繋がり続ける事が出来るから」
この言葉は、ただの「終わり」への恐怖に対する強がりなどではない、トードの心の底からの思いなのだ。
それは記憶さえ霞む程昔からの相棒であり、生涯の盟友であると互いに情を分かち合ったからこそ感じ取れる真の思いだった。

「終わり」の地での終わりの見えない日々を共に過ごす、オリバーとトードとを繋ぐ連結器は何重にも太いワイヤーが巻き付けられ、固く結びつけられている。
それは初めて大西部鉄道の線路に車輪を下ろした日からこの「終わり」の地へ向かうその日まで、休む事無く整備を続けてくれた技師の手によって施された。
立派なボディに刻まれた誇り高き大西部鉄道のエンブレムの上に、小汚い汚れ交じりの白いペンキで"SCRAP"と記したのもまた、その技師だった。
省9
127: オリバー&トード「二日前の誓い」5/6 2010/05/12(水)10:55 ID:z64KOc36P(6/7) AAS
「オリバーさん、」
背後からの唐突なトードの呼び声に、オリバーは思わずドキリとした。
弱った自分の思いを見透かされたのではないかという何とも絶妙なタイミングを突かれたかと思ったからだ。
オリバーは胸の高鳴りを抑えきれぬまま、トードの言葉に耳を傾ける。
もう、トードの次の言葉が自分の心をどうするかなどと考える余裕さえ、今のオリバーには無かったのだ。

「こんな時に不謹慎かもしれませんが、僕の話を聞いて下さい。僕はもう、いつでもスクラップになったっていい。覚悟は出来ています。
だけど──僕は決して諦めたわけじゃありませんよ。何かおかしな話ですけどね。僕はスクラップになる一秒前までは、絶対諦めない」
トードは一度言葉を止める。そして、溜めこんでいたのだろう思いを呼吸と共に勢い良く吐き出した。
「絶対にもう一度、オリバーさんと一緒に線路を走るんです。オリバーさんのかっこいい汽笛を背に受けて、貴方の為にブレーキをかけるんです!
──ごめんなさい、なんかすごく熱くなっちゃいました。でも、僕の今の気持ちをどうしてもオリバーさんに伝えたくて」
省7
128: オリバー&トード「二日前の誓い」6/6 2010/05/12(水)10:57 ID:z64KOc36P(7/7) AAS
既に周囲数メートルの世界さえも闇に霞む、うら寂しい夜がこの世界を包み込んでいた。
オリバーの目の前にも、そしてトードの目の前にも、映る景色はただ、錆びた金属塊の落とす深い影と夜空の黒。
ただでさえ緩やかな時の流れをさらに堰き止めるかのような、終わりの見えないこの夜。
だがオリバーはそこにひとつの光を見出した。
今にも途絶えそうな程に小さなその光ではあるが、トードが後ろ向きに願いを馳せ続けている光と同じものなのだ。
それを胸の中で思うそれだけで、夜明けまでの時間がほんの少しばかり早まるような気さえ起きてくる。

「──トード、」
オリバーはこの想いが溢れそうになるのを感じ、その名を呼んだ。
始まりから終わり。そして終わりを再び始まりとするその瞬間を、共に見届けたいと切に願う唯一の盟友の名を。
「……何としてでも絶対に、ここから脱出しよう。そしてもう一度、一緒に ……走ろう」
省7
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