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>>2 > ※ ※ ※ > > > > その街が盗賊団に襲われたのは二日前のことだった。 > > 人口二千人ほどであったが、平和であったことから大都市への中継地点として人々が行きかい、街の規模以上の富が集まっていた。 > > 別に無防備だったわけではない。 > > 人々が集まるということは問題ごとも起きやすくなる。怪しい者を入れないための城壁は当然あった。街の治安を守る衛兵もいる。時には殺人が起きたが、平穏が乱されるのは一時的なことに過ぎなかった。 > > ただ大きな争いは、もう二十年以上経験していない。そして、周囲に危険な勢力も存在していなかった。 > > 備えはあったが、油断もある。 > > そこが盗賊団に目を付けられた理由だ。 > > その盗賊団は街から歩けば七日はかかるところに拠点があった。少しずつ気づかれないように、襲撃の足場を用意していく。 > > それに並行して、襲撃の半年前から街の内部に仲間を潜ませ、警備の隙と金目の物を調べさせた。 > > そして人々が寝静まり、警備の当番が最もつかえない奴の時を見計らい、内部に潜ませていた仲間と呼応して一気に襲い掛かった。 > > 警備の者は音一つ立てることすらできずに殺され、さらに盗賊たちは詰所に火を投げ込む。 > > 一連の事態に気づけていなかった衛兵たちは驚いて詰所を飛び出て、混乱が覚める間もなく下卑た笑い声を浴びせられながら次々と射殺された。 > > 騒ぎに気づいて人々が起き始めたが、そんなことは関係ない。 > > 出口は確保した。あとは応援が駆けつける前に目を付けていた金目の物がある場所を襲い、引き上げるだけなのだから。 > > 邪魔な奴は馬で蹴飛ばし、剣で切り伏せ、金銀財宝を次々と奪う。 > > 目を付けていた物を奪い終え、撤収する頃になってようやく衛兵の応援が駆けつける音が遠くからした。 > > まだ余裕があると、半年前から潜んでいた盗賊はある家に押し入る。 > > その家に住む姉妹が美しく、機会さえあればと企んでいたのだ。 > > 盗賊は包丁を持って戦おうとした姉妹の家族を目の前で殺し、悲鳴をあげる姉妹の髪を乱暴に掴んで連れ去る。 > > 衛兵の応援が駆けつけた頃には、平和であった街が血と火で紅く彩られ、悲しみと怒りの泣き声が夜明け前の空に遠く遠く響いていた。 > > > > > > ――その悲哀の声は何も無い男の耳にまで届き、真っ赤な蓮(はす)のような地獄をさらに咲き誇らせることになる。
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