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「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9
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>>965 > ……結局、こういう結果になっちゃった。 > 結界に閉じ込められた後、郭が張った結界を破壊して弟に再び会えた時、あの時は奇跡的に蠱毒を抑えこむことができた。 > あの時、今度こそ、最愛の弟と一緒に暮らすことができるようになるのだと期待した。 > しかし、期待は裏切られた。久信は修実が解放してしまった瘴気に中てられてしまって、一時は生命が危うかった。 > 彼が命をとりとめたのは本当によかったと、そう思う。あの場で助けてくれた昌夫には、また一つ借りができてしまった。 > ……もし何かの形で恩を返すことができれば、そうしたいのだけど。 > 今生において自分が恩を返すことはできないだろうことが、修実にとっては弟のこと以外での数少ない心残りだ。 > ……あの封印から出られた時、この姿になることは二度とないって思ったんだけどな……。 > あのクラブ跡に展開された結界の中、久信が殺されるかもしれないと思った時、修実はどうしても……そう、 > 周りにどれほどの被害が出ることになろうとも、久信が居なくなってしまうのは嫌だと、そう思い、力を解放してしまった。 > ……私は―― > 人外になっても変わることなく修実を好きだと言ってくれる弟のことを、1人の男性として愛している。 > それこそ、久信が自分の気持ちに気付く遥か以前から、修実は久信の事が好きだった。 > きっかけは単純なもので、生まれつき大きすぎる力を持つ修実を周りが腫物を触るように揺する中にあって、 > 久信だけは、何も知らない子供ならではの恐れの無さで接してきてくれたという、ただそれだけのことだった。 > 彼は、成長した後も、修実に対して腫物を触るように接することもなく、やがては好意を寄せてもくれるようになった。 > その好意は修実の中の好意を素直に表出させる呼び水となって、心も体も久信にだけは許すようになった。 > インセスト・タブーを犯すことは初めから気にならなかった。 > そもそも、憑き物筋の家は血に憑いた都市伝説との共生関係で生きてきた歴史からか、憑き物が発現しやすいように、血の濃さを保つ近親婚が推奨されている。 > 修実たちの両親も異母兄妹の関係だ。その意味では姉弟が離れて暮らすのは肉親意識を遠ざけるのに役立ったのかもしれない。 > こうして修実の中で欠かすことができない程大きな存在となった、彼女の人生において無二の愛する人は、まっすぐな彼は、 > いつも修実のことを守れるくらいに強くなろうと考えていて、無茶をしてきた。 > 今回のクラブ跡への侵入も、もっと彼が普段通り冷静に行動を起こしていれば、あそこで命を危険にさらすことはなかったのではないだろうかと、今更ながらに思う。 > 彼の行う無茶や、今回の一連の騒ぎについても、瘴気が久信を冒した時のように直接的ではないが、 > これもやはり、修実の持つ強すぎる力が原因となって周囲をおかしくしているということだろう。 > ……だから、私は久くんとこれ以上関わりを持ってはいけない。 > 郭正吾を捕える時、姦姦蛇螺と名乗るにふさわしい異形と化した彼女が自身の力を暴走させたあの時。 > 修実は蠱毒に自分の全てを乗っ取られかけた。自分の中で暴れる害意のままに、危うく生け捕りにする必要があった郭を殺してしまうところだった。 > それだけではない。修実の中の害意は、制御も利かないままに、何にも優先して護るべき対象であった久信をも殺してしまうところだった。 > 修実自身では制御の利かない毒。その力は最愛の弟を殺してしまう。それが、修実には何よりも恐ろしい。だから、修実は最愛の人から離れなくてはならなかった。 > ……ここまでこの身の力に翻弄されていると、もうこれが私の業だと思ってあきらめるしかないわね。 > かつての修実は、久信を愛しているからこそ、実家に戻ることをよしとせず、完璧に自分を制御できるようになるまで家から離れた。 > 今も似たようなものだ。 > 以前は自分ならば時間をかければ力の制御ができるようになるだろうという目算をもって家を離れていたが、今度は修実が自分自身に見切りをつけている。 > 違う点といえばそれくらいだろう。 > 自分自身に見切りをつけた彼女が選ぶ道は一つきり。 > ……私の存在が久信や、まっとうに生きている人たちの脅威になるくらいなら、私は独りでひっそりと死のう。 > 異形のこの身が人に害をなす前に消えるという道だった。 > それを人生最後の望みとして、修実は急いでこの町からも、そして最愛の弟の前からも永遠に姿を消そうとしていた。 > 郭を捕えたことで、修実たち姉弟にかかっていた濡れ衣も剥がれるだろう。後のことは昌夫に頼んである。彼ならば良いように取り計らってくれる。 > これで、後は修実が消えさえすれば、久信は平穏な生活を取り戻すことができる。 > 近い未来に、久信に平穏な生活が戻ることに、修実は安堵の息をもらす。 > ……久くんの人生は、私が抱える問題に常に巻き込まれるようなものだったから、謝っても謝りきれないけど……。 > 自分のことは忘れて、彼は彼の人生を生きてくれればいい。 > ……また、独りだな。 > いつの間にか、周囲には人口の建造物がなくなっていた。 > 山が近い。あとは入山して、力尽きるまで人の気配のない奥地まで侵入して、体が衰弱していよいよ自分が乗っ取られそうになったら、その時は体を奪われる前に自決する。 > ……それで、全部終わる。 > その工程を何度も何度も繰り返し反芻することで、頭の中に浮かんでくる人の顔を胸の奥底に封印する。 > いつの間にか、雨が降ってきていた。 > 頬を伝う滴を隠すように。 > > >
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