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人や社会が超音波で襲われています
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>>5 > ● 個別分野の専門知識VS純粋な論理的思考力 > > 1997年に、世界最大にしてもっとも有名な経営コンサルタント会社、マッキンゼーの上級役員3人が > 『ウォー・フォー・タレント??人材育成競争』という報告書を発表した。 > そこにはマッキンゼーの哲学のおもな信条が要約されていた。 > > それは、実業界で最終的に成功と失敗を決定づけるのは才能であること、 > そして個別分野の専門知識よりも純粋な論理的思考能力のほうがはるかに重要だということだ。 > > 「天性のアスリート、もっとも強力な天与の才をそなえた者に賭けること」と、ある役員は著者たちに語っている。 > 「とくにその個別分野に関連した経験がなくても、 > そのスターたちを一見すると能力以上の地位に昇進させるのをためらってはならない」。 > 実業界での成功には「才能の気がまえ」が必要だと彼らは主張している。 > 「あらゆる水準においてすぐれた才能を持っているという深く根ざした信条が、競争相手をしのぐのだ」。 > > マッキンゼーのアプローチはアメリカの実業界で議論を引き起こしたが、 > この哲学を受け入れ、さらに押し進めてどこよりも精力的に追求した会社があった。 > > マルコム・グラッドウェルは『ニューヨーカー』誌に掲載された独創的な小論でこう述べている。 > 「(エンロンは)マッキンゼーが20のプロジェクトを実施した会社で、 > マッキンゼーの請求総額は年間1000万ドルをこえていた。 > マッキンゼーの重役はいつも取締役会に出席していたし、CEOもかつてはマッキンゼーのパートナーだった。 > エンロンは究極の『才能』企業だったのだ」。 > > ● 能力の高いエース社員を部署異動させた結果 > > スキリングが才能に傾倒していたことをもっとも端的にあらわしているのが、 > 彼がハーバード大学ビジネススクールに出願したときのエピソードだ。 > 面接に当たった教授がこうたずねた。「きみはかしこいかね」。スキリングは誇らしげに応えた。「発狂するくらいね」。 > > エンロンは最高のビジネススクールのみから積極的に学生を採用しただけでなく、 > そのリーダー格をスーパースターあつかいして昇進させた。 > 業績優秀者の上位15パーセントには巨額のボーナスを与え、 > 業績不振者15パーセントはしばしば「順位づけして引っこ抜く」と呼ばれるプロセスの中で解雇された。 > > 才能があると見なされた人びとは、社内のどこであろうと好きなところへ異動するよううながされた。 > まるで彼らが、論理的思考の優秀性のみで利益をひねり出せるとでもいうように。 > > 「わが社には滑らかな動きが必要不可欠です。我々が雇うタイプの人間は、それを強化してくれる」と、 > スキリングはマッキンゼー報告書の著者に語っている。 > 「このシステムは個々のマネージャーに刺激を与えるだけでなく、 > エンロンの事業をマネージャーたちがもっともおもしろいと思う方向にかたちづくってくれるのです」。 > これでは昇進による社員異動率が一年当たりおよそ20パーセントにのぼるのも当然だし、 > スター社員がピンボールのように社内を跳ねまわったのも、他の部署からの引き抜きが実際に奨励されていたのも、当然の話だ。 > > エンロンの戦略には、2つの異なる理由から不備があった。 > 1つはマッキンゼーが積極的に奨励したまちがった前提をもとにしていたこと。 > つまり、才能が知識よりも重要だという発想だ。 > > これはでたらめだ。複雑性を特徴とするあらゆる状況――スポーツだろうとビジネスだろうとなんだろうと――では、 > うまい意思決定を推進してくれるのは、生得的な能力ではなく、豊富な経験でしか構築できない知識なのだ。 > > だがエンロンの戦略は、さらにたちの悪い欠陥を持っていた。 > エンロンの中心にある哲学は生産性をそこなっただけでなかった。 > とても特殊な文化をつくりあげることになったのだ。 > 個人の発達より才能をたたえる文化。学習は能力をつくり変えられるとする考え方をあざける文化だ。 > 固定した気がまえを奨励し、育て、最終的には定着させた文化である。 > > スタンフォード大学教授にして、現代でもっとも影響力のある心理学者であるキャロル・ドゥエックはこう述べている。 > エンロンはすぐれた才能のある人間を採用した。ほとんどはりっぱな学位を持った人びとで、 > それ自体は悪いことではない。彼らに大金をはらったが、それもあまりひどいことではない。
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