世界一の昆虫 リチャード・ジョーンズ (475レス)
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(2): :||‐ 〜 さん 2013/01/19(土)20:44 ID:EYBvTtrY(1/4)調 AAS
いちばん古い昆虫

リニオグナータ・ヒルスティ ( Rhyniognatha hirsti )
発見場所 英国スコットランド・アバディーン州
376: :||‐ 〜 さん 2014/03/10(月)04:22 ID:5hNnKwtF(3/3)調 AAS
 
それから2世紀、このチョウ ( Cynthia hampstediensis から Hipparchia hamstediensis と属名が変更された ) は、

ほかのイギリスのチョウと共に、学術文献に堂々と登場していた。

しかしどの本にも「ペディヴァーの時代以降、発見されていない」との注意書きがあった。

そう、「アルビンのハムステッドの目」は、アルビンが採集した以外には1匹も姿を見せない「幻のチョウ」になっていた。

19世紀末、ついに謎がとけた。

このチョウの標本の現物がロンドン自然博物館で見つかったのだ。

多くの学者が疑っていたように、その正体は外国産のチョウ、サイパンタテハモドキだった。

本来の生息地を考えれば、アルビンがロンドンのハムステッドヒースで、このチョウを生きたまま採集できるはずがない。

アルビンは何かの手違いで別のラベルをつけてしまったのだろうが、それにより昆虫学は2世紀ものあいだ、無駄な努力を重ねてしまった。
377: :||‐ 〜 さん 2014/03/15(土)00:55 ID:4m6pmgg7(1/3)調 AAS
 
世界最古の標本

レオナード・ブルークネットの標本コレクション
場所 ロンドン自然史博物館
特徴 300年ものあいだ、博物館の手荒な扱いやカビや虫の被害に耐えた
378: :||‐ 〜 さん 2014/03/15(土)00:57 ID:4m6pmgg7(2/3)調 AAS
 
自然界の幸運な偶然により、昆虫が化石となってたまたま保存されることはあるが、通常は死んだ虫はすぐに分解されてしまう。

小動物に食べられ、細菌などの働きで朽ち果てる。

しかし幸いにして昆虫の大きさは、博物館に保存するのにむいている。

ただ乾かすだけで、何年も保存できる。

それでは標本はいったい何年くらい保存できるものなのだろうか。

博物館は最近まで、標本の質にしか興味がなかった。

その昆虫の特徴がよくわかり、より状態がいい標本が手に入れば、古い標本は捨てられる。

現在のような機密性に優れた倉庫ができる前は、標本はカビに侵され、

英名で「ミュージアム・ビートル」と呼ばれるヒメマルカツオブシムシ Anthrenus verbasci の幼虫に食い荒らされていた。

その結果、多くのコレクションが責任者の独断で捨てられてしまっていたのだ。

その歴史的価値を認識されるようになってから、まだ50年ほどしか経っていない。
379: :||‐ 〜 さん 2014/03/15(土)01:04 ID:4m6pmgg7(3/3)調 AAS
 
ロンドン自然史博物館は、大英博物館の一部として1759年に開設された、その後さまざまな変遷があったものの、

創設者であり、医師、博物学者、収集家であったハンス・スローン卿が収集した標本がいくつか残されている。

それらのなかには、現存する昆虫の標本 (ほとんどはチョウ) として最古に近いものが含まれている。

薬剤師であり博物学者であったペティヴァーがチョウを二枚の薄いマイカ紙に挟み、縁を粘着紙で糊づけし、木の箱に入れて保存したコレクションもある。

なかでも1702年頃のものがいちばん古い。

博物学者のアダム・バドル ( 1660〜1715 ) が著した革装の植物標本集12巻にはイネ・スゲ・イグサなどと共に、たくさんのチョウも貼られている。

1699〜1715年にロンドン近郊で採集されたこれらの標本は保存状態が悪く、多くが劣化して汚れているが、31種についてはまだ識別できる。

しかしこれらは最も古い昆虫標本ではない。

最古の昆虫標本は、医師であり博物学者であったレオナード・ブルークネット ( 1642〜1706 ) が死の床でスローン卿に譲りわたした、革装の学術書に貼られた1700種の標本だ。

目録には、ブルークネットが1696〜1697年にロンドン近郊とウェストミンスターで採集した昆虫の詳細が書かれている。

ちなみに、ピンでとめるスタイルの最古の昆虫標本は、オックスフォード大自然史博物館にあるチョウセンシロチョウ Pontia daplidice で、1702年に採集されたものだ。
380: :||‐ 〜 さん 2014/04/13(日)17:22 ID:EDJEmolY(1)調 AAS
新作楽しみにしてます
381: :||‐ 〜 さん 2014/04/25(金)22:50 ID:FEUYwyf6(1/4)調 AAS
保守どもー
382: :||‐ 〜 さん 2014/04/25(金)22:52 ID:FEUYwyf6(2/4)調 AAS
 
魔法をかけられた昆虫

カリステジ・ミ ( Callistege mi )
生息地 ヨーロッパ、アジア北部
特徴 16世紀の予言者で魔女といわれた人物にちなんだ英名がつけられた
 
383: :||‐ 〜 さん 2014/04/25(金)22:54 ID:FEUYwyf6(3/4)調 AAS
 
この昆虫の英名は「マザー・シップトンモス」という風変わりなものだ。

一般に英名は、その姿かたちの特徴を表す名前が多い。

例えばモンキチョウの英名「曇った黄色」や「硫黄のチョウ」などは、色にちなんだ名前だ。

ガやチョウのなかまの英名は、模様や斑点の特徴に由来するものが多い。

ヨーロッパメンガタスズメは「死の頭」、オレンジ色の縞模様のあるガは「トラのガ」、ほかにも「銀色のY」、「角の影(アールデコ調の模様)」

などと芸術的センスを感じさせる名前もある。

「エメラルドグリーン」や「黄色い後翅」といった単純な名前もある。

またナナフシは「棒の虫」、カスミカメムシは「葉の虫」という英名を与えられている。

ほかに生息地にちなんだ英名の例として「水の虫」や「山の巻き毛」がある。

「キャベツの白」というモンシロチョウの英名は、このチョウがおよぼす害に由来している。

これらのなかで最も変わっているのは16世紀の魔女マザー・シップトンにちなんでつけられた、このガの名前だろう。
384: :||‐ 〜 さん 2014/04/25(金)23:00 ID:FEUYwyf6(4/4)調 AAS
 
予言者だったマザー・シップトンは、1488年前後に生まれたとされている。

生まれたときの名はウルスラ・サウテイル。

彼女が何を誰のために予言したかは、今となっては伝説や民話の領域だが、彼女について最初の記録が出版されたのは1641年のことで、

彼女が1561年に没してから実に80年も経っていた。

その後に続々と出版された書物は、伝記作家たちが彼女の一生をさまざまな挿話で演出を加えたものだ。

彼女の予言とされているもので有名なのは、馬のない馬車、水中を歩く人間、水に浮く鉄など、19世紀になってから実現した発明品だ。

唯一確かだとされているのは、彼女が1512年に大工のトビー・シップトンと結婚したことだ。

17世紀の終わりには、伝記の内容が事実か否かという問題は、取るに足らないことになっていた。

現在では、物語のなかに皺くちゃの恐ろしげな魔女として登場することが多い。

そんな魔女らしい魔女ともいえるマザー・シップトンから英名をいただいた昆虫は、昼間に活動する小さなヤガであるカリステジ・ミだ。

一見、優美な模様をもっているが、よく見ると前翅にはグロテスクにねじ曲がった人間の頭が描かれている。

曲がった大きな鼻と尖った顎、小さな暗い目。歯のない口でにやっと笑う顔は、まさしくマザー・シップトンの顔なのだ。
385: :||‐ 〜 さん 2014/04/28(月)12:51 ID:Gk4OH7MA(1/3)調 AAS
大惨事を引き起こしかけた昆虫

ラセンウジバエ ( Cochliomyia hominivorax )
生息地 リビア
特徴 もう少しで人間や動物に深刻な災難をもたらすところだった
386: :||‐ 〜 さん 2014/04/28(月)12:52 ID:Gk4OH7MA(2/3)調 AAS
1988年のリビアで、家畜が体を掻くために、塀や有刺鉄線や棘のある植物に皮膚をこすりつけると、その傷口にウジがわくという例が報告された。

通常ならたいしたニュースではなかったのかもしれないが、これが中央アメリカにしかいないはずのラセンウジバエであり、

本来の生息地以外の土地で初めて発見された点で非常に重大だった。

ラセンウジバエの幼虫は皮膚の深くに体をねじ込みながら、血液や膿汁、体液を吸う。

メキシコ南部では野生の動物や家畜の害虫として古くから知られていた。

「人間を食べる」という意味の学名 hominivorax が示すとおり、人間が標的になることもある。

ラセンウジバエは確かに有害ではあるが、寄生することがあれば捕食されることもある生態系の一部であり、

もとから同じ地域に生息する動物はラセンウジバエに対する抵抗力をつけている。
387: :||‐ 〜 さん 2014/04/28(月)12:53 ID:Gk4OH7MA(3/3)調 AAS
しかし他の大陸に進出した場合はどうだろう。

1匹で3000個もの卵を産むラセンウジバエが相手なだけに、生態系に大打撃を与えることが容易に予想された。

1988年末までにはラセンウジバエの繁殖域は2万6000平方kmにまで広がり、そこには270万頭のヒツジ、ヤギ、ウシが放牧されていた。

国連は、無数の家畜や人間がラセンウジバエに寄生されるという大惨事を回避するため、国際的なプロジェクトに着手した。

メキシコとアメリカが管理する環境下で何百万匹というラセンウジバエを安全かつ注意深く飼育し、成虫にかえった直後、放射線セシウム137の放射線を当てた。

見た目は無傷のまま、オスを無精子にするにはそれで十分だ。

1990年12月〜1991年10月にかけて、およそ13億匹の無精子のラセンウジバエが入った段ボール箱が、

低空飛行の飛行機からリビアの郊外に落とされた。

ほとんどのメスは一度しか交尾をしないため、無精子症のオスと交尾すれば卵がかえることはない。

このプロジェクトは成功し、以来ラセンウジバエはアフリカ全土から姿を消した。
388: :||‐ 〜 さん 2014/04/29(火)07:10 ID:WGKv03gy(1/3)調 AAS
宗教画に登場する昆虫

ヨーロッパミヤマクワガタ ( Lucanus cervus )
生息地 ヨーロッパ
特徴 恐ろしげな風貌にもかかわらず、中世ヨーロッパの美術において偶像化された
389: :||‐ 〜 さん 2014/04/29(火)07:11 ID:WGKv03gy(2/3)調 AAS
 
クワガタムシは怪獣のような外見をしている。

真っ黒の体は大きくて力強く、敵を威嚇するかのようだ。

オスの巨大な大顎は恐ろしく、民話のなかでは雷を呼んだり、暖炉から燃える石炭を運び出して家に火をつけるなどの災難をもたらすこともあった。

しかし中世ヨーロッパのキリスト教教会において、芸術家たちが礼拝の場所を飾る特異な象徴として選んだものは、このクワガタムシだった。

光栄な地位を得ることができたのは、大顎が雄ジカの角に似ていたためだろう。

初期のキリスト教の宗教画では、シカ、特に角の生えたオスはキリストの象徴であり、ヘビと戦うとされていたシカは、悪に対する勝利を表していた。

クワガタムシが宗教的な象徴として扱われたことを示す最古の書物は、1370年、ミラノ大公ジャン・ガレアッツォに任命されたジョヴァンニーノ・デ・グラッシによる彩色写本だ。

これには図案化されたクワガタムシが神に向かって飛んでいく様子が描かれ、当時の宗教観を反映してその周辺には隠遁者がおり、

もう1匹のクワガタムシが丘の斜面で休んでいるという構図である。
390: :||‐ 〜 さん 2014/04/29(火)07:13 ID:WGKv03gy(3/3)調 AAS
 
ドイツでもクワガタムシが重要な役を演じている。

ケルン大聖堂の聖母マリアの祭壇上には「東方三博士の礼拝堂」がある。

シュテファン・ロホナーが1440〜1445年のあいだに描いたものだ。

ほかにも1479年にザクセン州ツヴィッカウの聖マリア教会の祭壇に、ミヒャエル・ヴォルゲムートによって描かれた「イエスのオリーブ山の祈り(ゲッセマネの祈り)」がある。

これら小さなスケッチ風ではあるが、いずれもはっきりとクワガタムシが描かれている。

クワガタムシにとって最も輝かしい経歴は、ドイツの偉大なる画家アルブレヒト・デューラーの作品に何度も登場したことだ。

有名な「多くの動物のいる聖母子」(1503年)や「東方三博士の礼拝」(1504年)には、クワガタムシが前景をちょこちょこ走っている様子が解剖学的な緻密さをもって描かれている。

デューラーはクワガタムシが気に入ったようで、1505年に描いたポートレート(挿絵)にも見られる。

この絵はヨーロッパ美術において図案化された描写と、自然主義的な描写という2つの流れの分岐点となった。

この絵は多くの画家により模写されてきたが、ヨーロッパでしばしば出版される『昆虫同定の手引書』には採用されていない。
391: :||‐ 〜 さん 2014/05/01(木)15:16 ID:Zt3bg3Cb(1/3)調 AAS
世界的ミュージシャン

コオロギのなかまとキリギリスのなかま ( Gryllidae と Tettigoniidae )
生息地 世界各地にさまざまな種が生息しているが、中国と日本に多い
特徴 かごの中で美しい泣き声を響かせ、人の心慰める
392: :||‐ 〜 さん 2014/05/01(木)15:18 ID:Zt3bg3Cb(2/3)調 AAS
少なくとも2500年前から人間は、ぴょんぴょんと跳ねる小さな虫を籠に入れ、その泣き声を楽しんできた。

コオロギやキリギリスで鳴き声を出すのは主にオスであり、聞かせたい相手は同種のオス、あるいはメスに限られる。

オスは自分のテリトリーに入ってこようとするほかのオスを威嚇するために、そしてメスを誘うために鳴くのだ。

彼らは前翅をあげてこすり合わせることによって音を出している。

コオロギの右前翅の裏側には、1列に並んだ小さな突起物におおわれた、かたい翅脈が1本あり、櫛に似た形状のやすりになっている。

そして左前翅の上面には別のかたい翅脈が立っており、掻器 ( 「そうき」弦楽器の撥、バイオリンでいえば弓にあたる ) の役目をする。

キリギリスはこれが逆で、やすりは左前翅、撥は右前翅にある。

翅をこすり合わせると ( コオロギは左前翅に右前翅を重ね、キリギリスは右前翅に左前翅を重ねて )、撥が一列の突起物を掻き鳴らし、翅を震わせる。

音の周波数は突起物の数や大きさ、そして翅が動く速さにより決まる。

まるでスキッフル ( 20世紀初めに生まれた音楽ジャンル ) のミュージシャンが洗濯板を鳴らしているようだ。

前翅には、形が似ていることから「ハープ」と呼ばれる部分が2つと、鏡のようななめらかさから「ミラー」と呼ばれる部分があり、

これらが増幅器の役割を果たし、小さな音を何百メートル先でも聴こえる大きさにまで増幅させる。
393: :||‐ 〜 さん 2014/05/01(木)15:19 ID:Zt3bg3Cb(3/3)調 AAS
 
種によってそれぞれ違った音色をかなで、人はそれを「リンリンと鳴く」、「声を震わせる」、「リューリューと鳴く」、

「カチカチと音をたてる」、「さえずる」、「ガチャガチャと鳴く」などの言葉で表現している。

周波数は通常、毎秒1500〜10000Hzであり、人間の聴力の範囲 ( 20〜16000Hz ) 内だ。

そのため我々の耳には音楽的な旋律として聞こえるのだ。

紀元前500年くらいから、中国、日本、韓国の人々はコオロギを小さな網籠や竹を編んだ籠、ヒョウタンを利用した籠などに入れ、家のなかでその鳴き声を楽しんできた。

音の好みは人それぞれであるため、どの種がいちばん音楽的であるかを評価することは難しい。

候補には30種類以上があげられるが、そのなかには音楽的な英名がついているものも多い。

クサヒバリ Svistella bifasciata の英名は「黄金の金」、

タイワンクツワムシ Mecopoda elongata は「機織りする女性」、

Campsocieis gratiosa は「うたう兄弟」とそのものずばりの名を与えられた。
↑調べても出てきませんでした
394: :||‐ 〜 さん 2014/05/02(金)12:19 ID:OBF77jKP(1/2)調 AAS
  
有能な掃除屋

マダラメイガ ( Cactpblastis cactorum )
生息地 オーストラリア東部
特徴 侵入性の有害植物をオーストラリアから一掃した
395: :||‐ 〜 さん 2014/05/02(金)12:21 ID:OBF77jKP(2/2)調 AAS
 
19世紀のオーストラリアは、イギリス人にとって可能性の大地だった。

サトウキビの栽培や、羊毛をとるためのヒツジの畜養などさまざまな産業が興こされ、その一つにコチニール色素の生産があった。

そのためにコチニールカイガラムシが食料とするウチワサボテンが移入された。その後、科学染料の発明でカイガラムシの飼育は衰退したが、サボテンはそのまま残された。

1900年までに数種類のウチワサボテンが、中央アメリカおよび南アメリカから移入された。

これらは、亜熱帯気候のクイーンズランド州では大繁殖したため、すぐに収拾がつかなくなった。

オーストラリア東部の24万平方kmの土地にウチワサボテンが繁殖し、その半分は農地として使いものにならなくなってしまった。

そこで生物学的な抑制方法を模索するため、ウチワサボテンを食べる昆虫およそ50種が輸入され、成果が試された。

最終的に12種の昆虫が放された。

最もいい動き見せたのは、灰色と茶色のまだら模様の小さなガ、マダラメイガだった。

1926年に初めて放してから1932年までその試みは続けられ、そのあいだに問題のサボテンはほぼ食べ尽くされた。

1932〜1935年に調査したところによると、再生しようとするサボテンもすべて、この幼虫に食い止められていたという。

こうしてウチワサボテンはオーストラリアにとって、いまや頭痛のたねではなくなった。
396: :||‐ 〜 さん 2014/05/13(火)08:34 ID:dEt/9QMF(1/3)調 AAS
 
史上最悪の異常発生

ブッシュフライ ( Musca vetustissima )
生息地 オーストラリア
特徴 人間に一因のある生態学的災害。最近になってやっと制御できた
397: :||‐ 〜 さん 2014/05/13(火)08:35 ID:dEt/9QMF(2/3)調 AAS
 
旧約聖書の『出エジプト記』(7〜12章)によると、

エジプトのユダヤ人を隷属状態から解放することをファラオが拒んだことによりエジプトに起きた10の災いのうち、

3つは昆虫の異常発生だった。

その昆虫とはブユ、アブ、そしてイナゴだ。

これらの不快で有害な昆虫は、今日も人類を苦しめ続けている。

この災いをもたらした3種に勝るとも劣らぬ迷惑な昆虫がいる。ハエだ。

しかもハエは人間の行為が原因で、ますます数を増やしている。

19世紀末から20世紀半ばにかけてのオーストラリアで、最も顕著な例を見ることができた。

18世紀末、オーストラリアが植民地化されると、在来種とは異なる植物や動物がヨーロッパから次々と移入された。

入植者たちが北半球にある祖国の地に似せようとしたからだ。
398: :||‐ 〜 さん 2014/05/13(火)08:40 ID:dEt/9QMF(3/3)調 AAS
 
なかでも最も大きく環境を変えたのは、耕作と畜産の導入だった。

移入されたウシたちは、年間に1万平方mの草地を11頭ほどで食べ尽くす。

問題は、ウシが排泄する大量の水っぽい糞がもともと生息するフンコロガシの好みではなかったことだ。

ここのフンコロガシは有袋類のかたいペレット状の糞に慣れていたため、ウシた食べ尽くした草地跡は、フンコロガシが見向きもしない糞におおわれたままとなった。

するとハエのなかまであるブッシュフライが幼虫の食物としてこれを採用した。

ただの不快な草地だった場所が、聖書に災いとして書かれているような虫の大発生の舞台となった。

19世紀後半、旅行者が「空中に群がるハエでできた雲を見た」と報告している。

ハエを飲み込まずに呼吸することができないほどの量だ。

のどが詰まるようなハエの雲の発生と牧草地が失われていく現実を見て、ついにオーストラリア政府が行動を起こした。

1965年以来、50種以上のフンコロガシをアフリカ、アジア、ヨーロッパなどから移入したのだ。

そのうち少なくとも20種がまだオーストラリアで繁殖を続け、分布を拡大している。

その結果ブッシュフライは許容範囲のレベルにまで減少した。

しかしそれでもまだまだうっとうしい。
399: :||‐ 〜 さん 2014/05/14(水)09:40 ID:Y9DPeq5V(1/3)調 AAS
 
最も意外な生息域拡大方法

ヒトスジシマカ ( Aedes albopictus )
生息地 世界各地に拡大
特徴 中古タイヤのなかにすんでいたため世界中に輸出された
400: :||‐ 〜 さん 2014/05/14(水)09:42 ID:Y9DPeq5V(2/3)調 AAS
カはよどんだ水などに産卵し、その幼虫であるボウフラは水中の微生物や有機物のかけらを食べて成長する。

カは比較的寒冷な土地ではそれほど大きな問題にはならないが、熱帯地方では、吸血によってマラリア、フィラリア、脳炎、黄熱病などの恐ろしい病気を媒介する。

最も攻撃的なカといえばヒトスジシマカだろう。

体に白い縞模様があり、足に白い斑点があることから、英名では「アジアのトラのカ」と呼ばれている。

ヒトスジシマカは東南アジア原産で、インド南部からマレーシア、インドネシア、フィリピン、中国に分布し、デング熱の主要な媒介者になっている。

デング熱は消耗性のウィルス疾患であり、風邪の症状に似た高熱や体の痛みをもたらすばかりでなく、ときには死に至らしめることもある。

マラリアのような主に農村に発生する疫病と違って、デング熱は都市部にも発生する。

東南アジアの主要都市も例外ではない。
401: :||‐ 〜 さん 2014/05/14(水)09:42 ID:Y9DPeq5V(3/3)調 AAS
 
1985年に本来はいないはずのアメリカ・テキサス州でヒトスジシマカが発見されたとき、人々は驚いた。

そしてテキサス州にとどまらず、東はメイン州、北はネブラスカ州やミネソタ州へと広がっていった。

しかしヒトスジシマカが自力で北アメリカ大陸まで飛んでいったわけではない。

再利用、再生するために世界各地に輸出される中古タイヤと一緒に、ヒトスジシマカも運ばれていったのだ。

タイヤを製造するにはコストがかかるが、輸送するのは簡単でそれほど費用がかからない。

しかも倉庫や波止場に何週間と放っておいても、腐ったり劣化したりしない、ただ雨水が溜まりやすく、

そのよどんだ水はヒトスジシマカの繁殖にはうってつけの環境だった。

こうして知らないうちに、中古タイヤと雨水とヒトスジシマカのボウフラが世界各地に運ばれていった。

1990年にはヒトスジシマカはイタリアに現れ、その後、南アメリカにもアフリカ南部にも現れた。

今後も生息地は拡大しつづけるだろう。
402: :||‐ 〜 さん 2014/05/18(日)03:15 ID:cMFcHUaF(1/3)調 AAS
 
最も恥ずべき昆虫

ケジラミ ( Pthirus pubis )
生息地 世界各地
特徴 上流社会では話題にのぼらない
403: :||‐ 〜 さん 2014/05/18(日)03:16 ID:cMFcHUaF(2/3)調 AAS
 
吸血する寄生昆虫であるシラミやハジラミは、寄主にしがみついたままで一生を過ごす。

シラミの寄主はほ乳類、ハジラミの寄主は鳥とほ乳類だ。

(大陸移動のおかげで有袋類はシラミはハジラミの祖先と出会わず、結果として寄生を免れた)

彼らは這って寄主の上を移動する。

その葦には力強い爪があり、シラミの場合は毛を、ハジラミの場合は羽毛をしっかりとつかんで離さない。

そして器用に毛髪や毛皮、羽毛のなかを動きまわり、寄主の毛づくろいを回避する。

シラミはハジラミは一般に信じられているように、衣服やシーツや家具、タオル、トイレの便座などにつくことはない。

寄主の温かくて湿気のある皮膚を離れると、彼らは死んでしまうのだ。
404: :||‐ 〜 さん 2014/05/18(日)03:16 ID:cMFcHUaF(3/3)調 AAS
 
ケジラミの体長は2〜3mmで、アタマジラミと同じ大きさだ。

アタマジラミは人間の頭髪にくっつきやすいように細長い。

一方ケジラミは横に広いずんぐりとした形状で、恥骨、脇の下、胸、顎などの粗い毛にもつかまりやすいよう、巨大な爪をもっている。

ケジラミはいつでも血液を吸える環境にあるため、栄養には困らない。

ただし食料が液体のため、水分の排出には一工夫必要だ。

排泄物が多すぎると、毛のあいだを動きづらくなり、髪の毛一本一本の根元に卵を産みつけるという繊細な作業に支障が生じるためだ。

そのためケジラミは自分の皮膚を通して余分な水分を蒸発させ、糞便を乾いた粒にする。

しかし彼らは乾燥に弱いため、ほどよい湿度が保たれている皮膚から長時間離れることはできない。

すみなれた寄主から別の寄主に乗り換える唯一の方法は、身体的に密着しているときだ。

つまり恋人同士の親密な時間を利用するのだ。
405: :||‐ 〜 さん 2014/05/20(火)23:32 ID:nPhcKCaP(1/4)調 AAS
 
いちばん危険な昆虫

ハマダラカのなかま ( Anopheles sp. )
生息地 アフリカ、アジア、中央アメリカ、南アメリカの熱帯地方
特徴 マラリアを媒介して無数の人間の命を奪ってきた
406: :||‐ 〜 さん 2014/05/20(火)23:33 ID:nPhcKCaP(2/4)調 AAS
 
ほんの小さな虫が、強い不快感を与えることがある。

アリは顎でかみ、鉢はハリで刺し、シラミはかゆい。

だが、こうした虫たちは、病気を媒介する虫に比べたら、危険とはいえないだろう。

最近までイエバエ Musca domestica は地球上で最も危険な生物だといわれていたが、それには十分な根拠があった。

不潔なところに繁殖するこのハエからは、100種類以上の病原体が発見されている。

そのうち細菌、回虫などの体内寄生虫、原虫、ウィルスを含む65種が、イエバエを介して私たちの食物へ運ばれることがわかっている。

赤痢、ポリオ、腸チフス、コレラ、ジフテリア、結核の感染もイエバエによるものだと考えられてきた。

ところが19世紀に衛生状態の改善と冷蔵庫の普及が進み、今日では先進国の家庭でイエバエを見ることはあまりなくなった。

しかし昆虫がもたらす恐怖はまだ続いている。
407: :||‐ 〜 さん 2014/05/20(火)23:35 ID:nPhcKCaP(3/4)調 AAS
 
地球上の5つの致死的な病のうち、4つ(マラリア、リーシュマニア症、睡眠病、リンパ管フィラリア症)は昆虫が媒介する。

なかでもマラリア原虫 Plasmodium と呼ばれる微生物が原因のマラリアが人類にとっては最大の脅威だが、この病気はカが媒介して流行する。

マラリア原虫の一生は、原虫をもったメスのカが、感染していない人間の血液を吸うところから始まる。

人間の血液は凝固する性質をもっているが、カはその細い管状がつまらないように、抗凝血剤となる唾液を注入する。

この唾液に、マラリア原虫の休眠状態のスポロゾイト (種虫)が含まれている。

スポロゾイトは唾液と共に寄主の血液に入り、肝臓にとどまる。

そこで変態し、細胞が増殖して有機体メロゾイト ( 分裂小体 )となり、血流内に放出される。

これらが再び肝臓に感染するか赤血球を食い荒らして、さらに多くのメロゾイトを生成する。

マラリア熱はこれらの異質な物体が血液に放出されることに対し、人体が起こす免疫反応だ。
408: :||‐ 〜 さん 2014/05/20(火)23:37 ID:nPhcKCaP(4/4)調 AAS
 
数週間のうちにまたほかのカが、感染した人間の血液を吸うこともある。

カの腸内でマラリア原虫のオスとメスが接合して新しいスポロゾイトが生まれ、カの唾液腺に集まる。

これが次の感染源となる。

世界中でマラリア発症例は年間5億件もあり、200万から300万人も亡くなっている。

そのほとんどがサハラ砂漠以南のアフリカの子どもたちだ。
409: :||‐ 〜 さん 2014/05/22(木)14:12 ID:DQZPh69f(1/3)調 AAS
 
最高の奉仕家

セイヨウミツバチ ( Apis mellifera )
生息地 世界各地
特徴 産業規模で受粉活動に従事している
410: :||‐ 〜 さん 2014/05/22(木)14:13 ID:DQZPh69f(2/3)調 AAS
 
ミツバチを飼育する目的は、蜜や蜜蝋を採取するためだと考えられがちだ。

しかし世界中の農業で行われているミツバチが使った受粉は、それとは比べものにならないほど規模が大きい。

昔から、果樹園では木が花をつけると、ミツバチの巣箱を置いておく、ミツバチは、最高の農作物を実らせる。

最高の花粉媒介者なのだ。

ミツバチの巣箱を使用する農業としては、アメリカ・カリフォルニア州のアーモンド生産が世界最大規模を誇る。

25万ヘクタールのアーモンド単一栽培の果樹園のために、毎年2月、アメリカ全土から15万箱のハチの巣箱が運び込まれる。

そしてリンゴやイチゴ、アルファルファにも受粉させるわたり労働のため、次の場所へと巣が運ばれていく。

推定では、人間が食べる農作物のうち10〜15%と、動物が食べるものの10〜15%がミツバチによって受粉されている。

花粉は植物の雄性配偶体で、動物の精子に相当する。

花が咲く植物の場合、雄性器官 ( おしべや雄花 ) から雌性器官 ( めしべや雌花 ) まで、花粉媒介者によって花粉が運ばれる。

コウモリや鳥のなかにも媒介役を果たすものがいるが、ほとんどは昆虫だ。
411: :||‐ 〜 さん 2014/05/22(木)14:17 ID:DQZPh69f(3/3)調 AAS
 
ミツバチ ( ときにはマルハナバチも ) は、花に対して忠誠を守る優秀な花粉媒介者だ。

ミツバチは蜜や花粉をなるべく楽に集めようとする。

蜜の出ている花があれば、出ている限りはみんな一緒にその花を訪れる。

その結果、花粉はほかの種にばらまかれることなく、雄花 ( おしべ ) から雌花 ( めしべ ) に確実に届けてもらえる。

ミツバチは信用できる媒介者なのだ。

一方ミツバチにとっての花粉は、生命維持に必要なタンパク質を豊富に含む食物だ。

ミツバチは後脚にある花粉ブラシで体についた花粉をかき集める。

そしてかたいペースト状の「花粉団子」にして、後脚の剛毛でできた花粉カゴにつけて運ぶ。

集めきれなかったたくさんの花粉は、柔らかい体毛にくっつけたまま次の花まで運んでいく。
412: :||‐ 〜 さん 2014/05/24(土)01:01 ID:jWxsDL2a(1/3)調 AAS
 
世界一昆虫が多様な地域

場所 中央アメリカ
特徴 地球上で最も多様な昆虫が見られる場所
413: :||‐ 〜 さん 2014/05/24(土)01:02 ID:jWxsDL2a(2/3)調 AAS
 
生物を進化させる最大の要因は、山、川、砂漠、海などによる地理的な隔離だ。

ある種の特定グループが、競争相手も捕食者も寄生者も病気もないところに孤立していると、その種は繁殖し、生息地を広げていくだろう。

そして新しいテリトリーに適合するために形状や生態を進化させる。

地球上の大陸は、最初から現在のように分かれていたわけではない。

約2億5000万年前には超大陸「パンゲア」が1つだけあった。

その後、地球の表面をおおうプレートが移動し、約1億8000万年前にはこの超大陸が、

ローラシア大陸 ( 北アメリカ、ヨーロッパ、アジア ) とゴンドワナ大陸に分裂した。

後者はさらに1億5000万〜1億4000万年前にアフリカ、南アメリカ、インド、南極大陸、オーストラリアに分裂した。

そして最近になって ( といっても何百万年も前だが ) 今度は大陸同士が衝突したのだ。
414: :||‐ 〜 さん 2014/05/24(土)01:03 ID:jWxsDL2a(3/3)調 AAS
 
アフリカの熱帯地方はヨーロッパから地中海と砂漠を隔て離れており、アジアからは中東の乾燥地帯を挟んで離れていた。

インドとアジアは地つづきになったが、その衝突で盛り上がったヒマラヤ山脈が障壁となった。

アジアとオーストラレーシア ( オーストラリア、ニュージーランド、パプア・ニューギニアと周辺諸島 ) の動植物のあいだにある障壁は、

ミンダナオ島とスラウェシ島との海峡から始まって東西に伸び、ボルネオ島とスラウェシ島のあいだを通り、

さらにジャワ島とロンボック島とのあいだを抜ける狭い海域だ。

中央アメリカの狭い地峡は、2つの大陸を熱帯雨林で結びつけている。

最も豊かな生態系を内包しているこの熱帯雨林は、日光と水がふんだんにあり、大きな気温変化もないため、生物にとっては栄養豊富で快適な環境だ。

当然昆虫やそのほかの生物も繁殖する。

300万年前、南アメリカ大陸と北アメリカ大陸がくっついたとき、南へ向かう生物と北へ向かう生物がここですれ違った。

地球上にいる推定100万種の昆虫のうち、15〜20%がこのエリアの熱帯雨林に生息しているといわれており、

地図で見ると非常に狭い地域が、地球上で最も昆虫の繁栄する場所となっている。
415: :||‐ 〜 さん 2014/05/25(日)08:02 ID:cjbOqbHr(1/3)調 AAS
 
腹立たしい昆虫

ブユとヌカカ ( Simuliidae と Ceratopogonidae )
生息地 世界各地、特に北アメリカ、ヨーロッパ
特徴 観光に打撃を与える迷惑な昆虫
416: :||‐ 〜 さん 2014/05/25(日)08:03 ID:cjbOqbHr(2/3)調 AAS
 
ほ乳類の血液は非常に貴重な物質だ。

その所有者にとっては、酸素などのガスや栄養分を含んで体中に運ぶ媒体であり、

血液を吸う生物にとっては、簡単に摂取できる栄養が豊富な食物だ。

吸血生物のなかで最もやっかいなのはハエやアブだ。

ウシアブやアブは大きくて頑丈な口吻をもち、噛まれると痛い。

しかしこれらは近づいてくるときのブーンという羽音で察知しやすく、また大群でくることもほとんどない。

ハエの場合、マラリアを媒介するカに抱くような恐怖感はないが、小さな怒りや苛立ちをまねくことが多い。
417: :||‐ 〜 さん 2014/05/25(日)08:04 ID:cjbOqbHr(3/3)調 AAS
 
例えばレジャーを楽しんでいるときに、ハエの大群によって中断させられるようなことだ。

ブユやヌカカのような吸血性の小さなハエのなかまは、

外にいる動物が屋内に逃げ込むほどの大群になるため、被害を免れることは難しい。

目や耳、鼻、口にも入ってくる。袖やズボンの裾、襟口からも侵入してくる。

困ったことに、彼らは一日中活発に活動するうえ、私たちが屋外レジャーを楽しむような場所ならどこにでもいるのだ。

人間にとって厄介なこの小さな吸血昆虫たちは、産卵のために必要な血液を得ようと

「大きくて黒っぽい色の二酸化炭素を出すもの」に寄っていく。

外で働いていたり、休暇中に自然の中で過ごしたりしている人間は、メスが求める条件にぴったりなのだ。

カナダやアメリカの一部ではこの吸血昆虫たちの活動期間を避けるために、

観光シーズンを最も気候がよい6月ではなく、7月半ばからとしているほどだ。
418: :||‐ 〜 さん 2014/05/30(金)23:45 ID:wfhIoiFB(1/3)調 AAS
 
糸が紡ぐ逸品

カイコガ ( Bombyx mori )
生息地 中国原産、世界各地に広がっている
特徴 幼虫が紡ぐ絹糸は、世界で最も贅沢な繊維を生み出す
419: :||‐ 〜 さん 2014/05/30(金)23:49 ID:wfhIoiFB(2/3)調 AAS
 
富と贅沢の代名詞である絹は、決して高貴には見えないカイコガの幼虫であるイモムシが生み出すものだ。

現代ではカイコガは完全に飼育下にあり、野生では全く見られない。

中国と日本を含む東アジアでは、産業規模で大量に飼育されているが、「絹糸」になるまでに投資される時間と労力と費用は並大抵のものではない。

メスの成虫はそれぞれ350〜500個の卵を産む。

そこからかえった小さな幼虫は蚕棚の上に並べられて、収穫したての新鮮なクワの葉を食べる。

およそ3週間ほど経つと、人間の中指くらいにまで大きくなり、自分たちがさなぎになるために入る繭を紡ぐ。

絹は複雑な物質であり、幼虫が吐き出すときには液体だが、空気に触れるとすぐに硬化する。

1本の絹糸の直径はおよそ30um ( 30/1000mm ) で、幼虫はこの絹糸を2〜3日かけておよそ2000mも紡ぎ、すっぽりと自分を包む。

絹糸の本体がある弾力性のあるタンパク質「フィブロイン」が、べたべたしたゼラチン質のタンパク質「セリシン」におおわれているため、

糸同士は接着されて繭となる。
420
(1): :||‐ 〜 さん 2014/05/30(金)23:50 ID:wfhIoiFB(3/3)調 AAS
 
いくつかの繭は次の世代のために残しておくか、あとは絹糸の生産のために使われる。

沸騰した湯に繭を2〜3分浸すとセリシンが溶け、繭がほどけてくる。

ほぐれた糸の先を機械に結びつけ、伸ばしながらより合わせることで絹糸となり、染色や紡職に使われる。

養蚕の起源ははっきりしないが、記録に残っている最古のものは、紀元前2600年頃の中国のものだ。

伝説によると、黄帝の妃、西陵氏が偶然にカイコガの繭を熱い茶に落としたところ、繭が広がり、光沢のある繊維が現れたという。

カイコガの食料であるマグワは中国原産の植物だ。

中国人は用心深く命がけでこの秘密を守り、2500年ものあいだ絹の生産を独占してきた。

しかし紀元前150年頃、インドにカイコガの卵がこっそり密輸され、そこからペルシャ、トルコへと伝わっていった。

現在では絹糸は世界中で生産されているが、中国、インド、ブラジルの上位3国が圧倒的な生産量を誇っている。
421: :||‐ 〜 さん 2014/05/31(土)09:02 ID:NJYoFLJN(1)調 AAS
>>420
いつも不思議に思うんだけど
ほぐれた糸の先ってどうやって探すんだろう?
422: :||‐ 〜 さん 2014/06/01(日)06:31 ID:+sFVR11J(1)調 AAS
見たことないな
423: :||‐ 〜 さん 2014/06/02(月)22:15 ID:FVJ7UO6j(1/4)調 AAS
https://www.youtube.com/watch?v=fE4pBO-NFBg
https://www.youtube.com/watch?v=ybmH7i8Bm_Q

糸紡ぎって神事だったりもするわけだけど、
綿菓子なんかも儀式の擬似伝承的な側面もあるのかもしれない。(めっちゃあやふや)
424: :||‐ 〜 さん 2014/06/02(月)22:17 ID:FVJ7UO6j(2/4)調 AAS
 
傷口を治療する昆虫

ヒロズキンバエ ( Lucilia sericata )
生息地 世界各地
特徴 幼虫(ウジムシ)は、化膿し壊疽状態の傷口をきれいにする
425: :||‐ 〜 さん 2014/06/02(月)22:19 ID:FVJ7UO6j(3/4)調 AAS
 
ウジムシと呼ばれる生物が、好感をもたれることは少ない。

食物にたかり、穀物を食い荒らし、基本的に汚物、糞、腐敗物、廃棄物と共に存在するからだ。

「ウジムシ」という呼び方は、柔らかくて脚のない幼虫全般をさし、いろいろな昆虫に使われるが、最も多くこう呼ばれるのはハエの幼虫だろう。

人間の肉体にたかるウジムシの逸話はたくさん残っている。

例えば戦場で傷を負った兵士が何日も放っておかれた場合、傷口が病原菌に感染し壊疽を起こすと、軽傷でも命取りになることがある。

しかしフランスの外科医、アンブロワーズ・パレは1557年、スペインとのサンカンタンの戦いで、ウジムシがたかった傷の快復が非常に速いことに気がついた。

ナポレオンのエジプト遠征、クリミア戦争、南北戦争のときにも同じような記録が残っている。

ウジムシは壊死したり感染したりした細胞組織を食べるようで、結果的に皮膚や筋肉を傷つけることなく治療させるのだ。
426: :||‐ 〜 さん 2014/06/02(月)22:22 ID:FVJ7UO6j(4/4)調 AAS
 
残念なことにウジムシに対する嫌悪は強く根深かった。

微生物が発見され、病気や感染と細菌とのかかわりが明らかになると、ウジムシのような汚いものを傷につけるなどという行為は、医学的な考えに反するとされたのだ。

感染した傷口をウジムシできれいにするという考えは1920年代まで受け入れられず、ようやく認められたあとも、長続きはしなかった。

1940年代に抗生物質が開発され、ウジムシの出番はなくなってしまったからだ。

しかし今日、抗生物質に対する耐性をもつ細菌 ( 例えばMRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 ) の登場で、

人類は治らない感染症や壊疽などの新たな危険にさらされている。そこでウジムシの再登場を請うこととなった。

壊死した傷口を治療するため、現在、不妊処理をしたヒロズキンバエの幼虫は、製薬会社をつうじて容易に手に入るようになった。
427: :||‐ 〜 さん 2014/06/16(月)09:40 ID:UMTDvSgm(1/3)調 AAS
 
皮膚の治療を手伝う

カラフトキリギリス ( Decticus verrucivorus )
生息地 ヨーロッパ、アジア
特徴 イボを噛み切るために使われる
428: :||‐ 〜 さん 2014/06/16(月)09:41 ID:UMTDvSgm(2/3)調 AAS
 
比較的大きな動物の多くは、人間による利用方法にちなんで名前をつけられている。

人間はその肉を食べたり、皮革や毛皮を商品に仕立てたり、ペットとして飼ったり、狩りの対象になったりするため、

「どのように有効か」がわかる名前をつけている。

それと対照的に昆虫の場合は「どのように迷惑か」という点が名前の由来であることが多い。

ウシアブはウシのウマバエはウマの血液を吸い苦しめる、キクイムシは木を食い荒らす、イガ ( 衣蛾 ) は衣類をだめにするなどだ。

またモンシロチョウの英名「キャベツの白」はアブラナ科の植物を荒らすことに由来する。

しかし人間にとって役に立ち、重宝がられている昆虫もわずかながらいる。
429: :||‐ 〜 さん 2014/06/16(月)09:42 ID:UMTDvSgm(3/3)調 AAS
 
なかでも頭部が緑色で、翅に褐色の斑点がまじるカラフトキリギリスは、役立ち方がとても変わっている。

ふつうバッタのなかまは草食性で、短いが力強い大顎で植物を咀嚼する。

一方キリギリスのなかまは雑食性で、バッタを含めた小さな無脊椎動物も食べる。

カラフトキリギリスは大きさこそヨーロッパ最大のキリギリスではないが、しかしその力強い大顎は人間の皮膚を破ることができる。

この能力を利用して、真皮のかたい部分にあるイボやタコなど、できものを除去する治療に使われている。

カラフトキリギリスは、イギリス、ドイツ、デンマーク、オランダ、スウェーデンなどヨーロッパの各地域でそれぞれの国の言葉で「イボをかむ者」という意味の名前がつけられている。

また1758年に博物学者リンネがつけた学名の種小名である verruciorus は「イボを食べる」という意味だ。

初期の昆虫学者によるカラフトキリギリスの観察記録には「ドイツ人とスウェーデン人の農夫が、この昆虫の大顎を皮膚への施術に使用した」とある。

喜色満面の農夫が大きな昆虫をもって、指から血を流しながら「これはいいぞ!」と、叫ぶ場面が想像できる。
430: :||‐ 〜 さん 2014/06/21(土)14:48 ID:/MOsdumm(1/3)調 AAS
 
絶滅寸前からの劇的回復

ロードハウナナフシ ( Dryococelus australis )
生息地 オーストラリアのニューサウスウェールズ州、ボールズ・ピラミッド島とメルボルン動物園
特徴 絶滅したと考えられたのち再び発見された。人工繁殖が成功し、再移入されるかもしれない。
431: :||‐ 〜 さん 2014/06/21(土)14:49 ID:/MOsdumm(2/3)調 AAS
 
1788年、イギリス海軍の補給船が、ヘンリー・リッジバード・ボール大尉の指揮によりオーストラリアから太平洋のノーフォーク島へ向かっていた。

目的は島を流刑地として開拓するためだ。

その途中、オーストラリアから600km沖で小さな三日月型の無人島を発見した。

この島はのち「ロード・ハウ島」と名づけられる。

オーストラリアとニュージーランドの中間に位置する、この隔離された楽園には多くの不思議な生物が生息していた。

なかでも珍しいのは体長15cm、翅のないロードハウナナフシで、甲殻類のような風貌から「陸のロブスター」とも呼ばれていた。

その後まもなく、ブタやヤギが家畜としてロード・ハウ島に放牧され、近くを通りかかる船に食料として供されるようになった。

そして1834年、この島に人間が定住したことは、島本来の自然に深刻な悪影響をおよぼした。

例えば1918年には商船マカンボ号からネズミが逃げ出し、生態系に最悪の災難をもたらした。

そうして生態系が崩壊した結果、1930年までには何種類もの固有種の鳥と共に、ロードハウナナフシも絶滅したと考えられた。
432: :||‐ 〜 さん 2014/06/21(土)14:50 ID:/MOsdumm(3/3)調 AAS
 
2001年、生態学者のチームがロード・ハウ島の南西20kmの海上にあるボールズ・ピラミッド島に上陸した。

切り立った岩が急な崖となってそびえ立つ尖塔のような島だ。

チームの目的は、木の生えていない火山岩の斜面を調査することだったが、メラレウカという植物の茂みに驚くべき生物の姿を発見することになる。

長く絶滅したと考えられていたロードハウナナフシが、24匹隠れていたのだ。

生態学者はそのなかからオスとメスをそれぞれ2匹ずつ採集し、雌雄をペアにした1組は個人ブリーダーに託し、もう1組はメルボルン動物園にもち帰った。

飼育による繁殖計画は非常に順調、2008年には4世代目が生まれ、何組もの成虫のペアと何百個もの卵が孵化するときを待っている。

ロード・ハウ島のネズミ根絶計画もうまくいっており、「陸のロブスター」が故郷に再上陸する日も近い。
433: :||‐ 〜 さん 2014/06/21(土)16:10 ID:MNgu0CDc(1)調 AAS
今、自分はカラフトキリギリスを累代してるけどけっこう参考になる。
ヨーロッパ圏やドイツ南部に広く生息してるけど、日本ではまだ小清水原生花園付近でしか見つかってないんだよね。
しかも小清水原生花園では原則的に昆虫採集が禁止されてるから、採集する際は研究目的として環境省から許可を貰らう必要がある。
しかも産卵された卵は3年後〜4年後に孵化するから管理が非常に難しくて、国内で累代してる人は数人くらいのはず。
434: :||‐ 〜 さん 2014/06/21(土)17:48 ID:Onm3NnTg(1)調 AAS
単為生殖は結局出来ないのか?
435: :||‐ 〜 さん 2014/06/22(日)14:50 ID:6VHuC/xV(1/3)調 AAS
 
死亡時刻を教えてくれる

ホホアカクロバエ ( Calliphora vicina )
生息地 北アメリカ、ヨーロッパ、アジア北部
特徴 死亡時刻がかなり正確にわかる
436: :||‐ 〜 さん 2014/06/22(日)14:51 ID:6VHuC/xV(2/3)調 AAS
 
殺人や不審な死に直面したとき、警察が最初に知りたいのは「誰が」でも「なぜ」でもなく、「いつ」という点だ。

この極めて重要な情報は、その後の捜査のすべての局面にかかわってくる。

死後数時間内であれば、硬直の程度や体温によって死亡時刻がわかるかもしれない。

しかし死体発見が数日後または数週間後だった場合、腐乱しつつある死体の死亡時刻を推測するには、ほかの指標に頼るしかない。

それを示唆してくれるのは、ある昆虫だ。

死体は貴重なタンパク源のため、非常に多くの昆虫が卵を産みつける。

死んだ直後にやってくるクロバエを筆頭に、腐敗が進むにつれて、さまざまな虫が集まってくる。

その幼虫を狙って甲虫もやってくる。
437: :||‐ 〜 さん 2014/06/22(日)14:52 ID:6VHuC/xV(3/3)調 AAS
 
やがて数日のうちに死体は最近による腐敗から膨張が始まり、腐敗物を食べて育つ小さなハエたちがやってくる。

2〜3週間が経つと乾きつつある遺骸にシデムシが寄ってくる。

そして2〜3ヶ月が過ぎた頃には、遺骸は毛髪や骨だけになり、そこには何匹かのカツオブシムシしか残っていない。

死亡時刻を推定する手段として、一般的に用いられ、しばしば重要な指標となるのは、その遺骸で育ちつつあるホホアカクロバエだ。

その虫は死後2〜3時間以内の死体にやってきて、口、鼻、耳、目、皮膚の深い皺、そして傷口があればそこへも300個くらいの卵を産む。

産卵から24時間以内に卵はかえり、うまれた幼虫は食事のために体内へもぐり込む。

食べ進む速度は気温によって変わるが、通常は14〜25日くらいで成虫となる。

ホホアカクロバエの成長過程について、すでに詳しく分かっている。

たっぷりと食べた幼虫は十分に成長すると脱皮する。

この脱皮を3回繰り返してさなぎになり、やがて最終段階の成虫となる。

つまり死体にいる虫がどの成長過程にあるのか調べれば、卵が産みつけられたときを逆算できる。

死後どのくらい経過した死体なのか正確に推測できるというわけだ。
438: :||‐ 〜 さん 2014/06/23(月)18:24 ID:OPXJR0/B(1/3)調 AAS
 
人間に寄生して大繁殖する

アタマジラミ ( Pediculus capitis )
生息地 世界各地
特徴 人間に寄生した昆虫で最も繁殖したとされる
439: :||‐ 〜 さん 2014/06/23(月)18:24 ID:OPXJR0/B(2/3)調 AAS
 
人間の歴史においてアタマジラミは災難ともいえるものだった。

古代の遺跡には、アタマジラミそのものだけでなく、卵の抜け殻とそれを取り除くための櫛が残っていた。

しかしアタマジラミは多少不愉快ではあるが、健康を損なうものではないことを、我々は感謝しなくてはならない。

ほかのおおくの血液を吸う寄生虫のように、アタマジラミは病気を運んだりしないからだ。

アタマジラミは不衛生や社会的地位の低さ、不信心などによってうつるわけではないにもかかわらず、恥ずかしいものと考えるむきは多い。

実際のところアタマジラミは誰にでも寄生するのだ。事実、アタマジラミは不潔な頭よりも清潔な頭を好む。

洗っていない細い髪は、自然の油分が絡まって活動しにくいからだ。
440: :||‐ 〜 さん 2014/06/23(月)18:26 ID:OPXJR0/B(3/3)調 AAS
 
アタマジラミが大繁殖した場合、貧血や失血が起こるのではないかと懸念する専門家もいた。

そこで2005年、アタマジラミがどのくらい血液を吸うのかが正確に調べられた。

オーストラリアの小学生の頭から摂取されたアタマジラミを、暖かくて湿気の多い条件のもと、6〜8時間飢えさせる。

何匹かまとめて体重を量り、次の科学者の手の上で15分間血液を吸わせ、また体重を量った。

その結果、吸った血液は極めて少ないことがわかった。また、ちくりと刺すような刺激も感じられなかった。

吸血量の調査の結果、メスの成虫は0.0001579ml、オスの成虫はたったの0.0000657mlだった。

最も多くのアタマジラミが繁殖した記録に、子ども1人の頭に2657匹というものがあり、これで計算すると1日に吸われた血液は0.7mlということになる。

アタマジラミは1日に3〜5回に分けて血を吸うと考えられているが、この程度の量でなければ、子供はとっくに貧血になっていただろう。
441: :||‐ 〜 さん 2014/06/24(火)14:51 ID:JD9dP3+s(1/4)調 AAS
 
短期間の自然選択

オオシモフリエダシャク ( Biston betularia )
生息地 ヨーロッパ、北アメリカの産業都市
特徴 煤煙で黒くなった木の幹に溶け込めるよう進化した
442: :||‐ 〜 さん 2014/06/24(火)14:52 ID:JD9dP3+s(2/4)調 AAS
 
自然選択による進化は非常に単純な論理の上に成り立つ。

同じ種であってもそれぞれ個体は少しずつ違い、その違いが生存と繁殖にとって有利に働けば、違いは子孫へと受け継がれていく。

そして何世代にもわたるうちに小さな違いが大きく強調され、外見が祖先からかけ離れてしまうこともある。

通常、自然界の進化は何千年、何百万年という長い時間をかけて行われる。

しかし1848〜1895年にかけて、進化がどのように起こるのかを知る手がかりとなる自然選択が、オオシモフリエダシャクで観察された。

本来オオシモフリエダシャクの体色は薄いクリーム色 ( 通常型 ) をしており、黒い斑点がたくさんある。

この色のおかげで、薄い色のコケがまだらにおおった木に完璧にカムフラージュできる。
443: :||‐ 〜 さん 2014/06/24(火)14:53 ID:JD9dP3+s(3/4)調 AAS
 
ところが1848年、真っ黒な色相のオオシモフリエダシャクが、イギリスの新工業都市マンチェスターで発見された。

この色相は黒化型と名づけられた。

1895年までに、その地域のオオシモフリエダシャクのうち98%が黒色となり、正常型は姿を消してしまった。

同じような変化はほかの場所でも起こった。

1867年、オランダにも黒化型が現れ、1900年までにヨーロッパ北部の工業地帯に広がった。

また北アメリカに分布する北アメリカ亜種 Biston betularia cognataria の黒い色相 ( swettaria型 ) も、フィラデフィア郊外で1906年に発見され、

すぐにミシガン州やイリノイ州の工業都市に広がっていった。
444: :||‐ 〜 さん 2014/06/24(火)14:53 ID:JD9dP3+s(4/4)調 AAS
 
変化の原因は、黒い色相であれば都市のすすけた木に溶け込めるからではないかと考えられている。

すすで黒く汚れた木にいるには薄い色の型では目立ちすぎ、鳥などの捕食者にすぐに食べられてしまうだろう。

1950年代にはさまざまな実験と調査が行われ、イギリスの昆虫学者バーナード・ケトルウェルがこの論理の証明に着手した。

彼はしるしをつけたオオシモフリエダシャクの両方の型 ( 黒い色と薄い色 ) を、すすで汚れた木とそうでない木にそれぞれ放した。

黒化型は汚れた木で生き残り、薄い色の正常型はそうでない木で生き残った。

その後公害防止のための法律ができ、イギリスからすすで汚れた木が減っていった。

それに伴い黒化型も減っていき、正常型は再び増えていった。

驚くほどの短期間で、まるで再進化したかのように、以前の姿への自然選択が行われたのだ。
445: :||‐ 〜 さん 2014/06/25(水)17:07 ID:9Ul7wwcl(1/3)調 AAS
 
絶滅寸前

アメリカモンシデムシ ( Nicrophorus americanus )
生息地 アメリカ・アーカンソー州、マサチューセッツ州、ネブラスカ州、オクラホマ州、ロードアイランド、
      そしてもしかするとサウスダコタ州
特徴 かつては広く分布していたが、現在その数が激減している
446: :||‐ 〜 さん 2014/06/25(水)17:08 ID:9Ul7wwcl(2/3)調 AAS
 
人類は先史時代からさまざまな昆虫に悩まされてきたが、昆虫の多様さから考えると、迷惑な種類はじつはほんの少数だ。

ほとんどの昆虫は小さく、隠れているので見つけにくい。

調査のためにはそれを探し出さなくてはならないが、骨を折って詳しく調査した地域でも、我々の知らないことはまだまだ多い。

たった1種の昆虫を生活環を理解するためには、何年も何十年もかけて緻密な観察を行わなくてはならない。

自然を正確に理解するためには時間がかかり、そのあいだに人間による自然破壊が進んでしまう。

自然に関する新しい知識が得られたときには、その自然が破壊されてしまったあとである場合も多い。

アメリカモンシデムシも絶滅の危機に瀕している昆虫の一つだ。

小動物の死骸に卵を産むこの昆虫は、一時はアメリカ東部とカナダ東南部に広く分布していた。

しかしその数は1920年代に減少しはじめ、1960年まだにはそれまで生息していたアパラチア山脈 ( カナダからアメリカ東北部に位置する ) の東から、

ほぼ姿を消してしまった。
447: :||‐ 〜 さん 2014/06/25(水)17:45 ID:9Ul7wwcl(3/3)調 AAS
 
現在では以前の生息域の端の方に点在する個体群に限られているが、

1つの個体群につき数百匹しかおらず、長期的に見て生き残っていくのは難しいだろう。

アメリカモンシデムシが絶滅の危機に追い込まれた主因は、都市の発展と農業の大規模な機械化による環境破壊だ。

アメリカモンシデムシが卵を産む死骸には、動物の種類も生息地も特に条件はない。

環境破壊によって生息域が狭められたうえに、スカンクやオポッサム、アライグマなど腐肉を好む動物の侵入によって、

アメリカモンシデムシが動物の死体を発見し、埋めて産卵する前に横取りされるようになったのだ。

アメリカモンシデムシが絶滅の危機に瀕するなどという事態を、誰が予想しただろうか。

事態の深刻さが判明したのは、ずっとあとになってからだ。

アメリカモンシデムシは比較的大きく ( 30mm ) 、体色も美しいが、所詮はただの虫にすぎない。

同じく危機に瀕しているマダガスカルのキツネザルのようにかわいいわけでもなければ、シベリアトラのように威風堂々としているわけでもない。

隠れている小さな昆虫を手間をかけてわざわざ見つけ出し、調査するのは難しく、手遅れになってしまう可能性が高い。
448: :||‐ 〜 さん 2014/07/02(水)14:42 ID:THQ7eBwd(1/3)調 AAS
 
木造建築の最悪の敵

木材を食べる幼虫 ( シバンムシを含むさまざまな甲虫 )
生息地 世界各地
特徴 先史時代から木造建築物を破壊しつづけてきた
449: :||‐ 〜 さん 2014/07/02(水)14:43 ID:THQ7eBwd(2/3)調 AAS
 
今から300万年前の石器時代は、石でできた遺物が発見されたことから、その名がついている。

しかしこの時代の人々は石の家に住んだり、石の椅子に座ったり、石の道を歩いていたわけではない。

今日の人類と同様、彼らも木を使っていただろう。

しかし木でつくられたものは残っていない。

すべて破壊され、朽ち果ててしまったからだ。

熱帯地方で木造建築を破壊する昆虫といえばシロアリが最も有名だが、世界にはシロアリが生息していない場所もある。

一方、木材食いの幼虫がいない場所はなく、その破壊行為から逃げることはできない。

木材を食べるずんぐりとした幼虫は、どんな木にもすみつき、いくつかの科にまたがっていても種類は多い。

よく知られているものはシバンムシ ( Anobiidae ) 、 キクイムシ ( Scolytidae ) 、 カミキリムシ ( Cerambycidae ) 、 ナガシンクイムシ ( Bostrychidae ) などで、いずれも甲虫だ。
450: :||‐ 〜 さん 2014/07/02(水)14:44 ID:THQ7eBwd(3/3)調 AAS
 
人類が登場する前から、彼らはほかの昆虫と共に、木の幹に強度を与えているリグニンなどのセルロース繊維をリサイクルするという、重要な役割を担ってきた。

そして人類が、強くて柔軟な素材である木材を住宅や道具、家具、武器などに利用するようになると、彼らも木材と一緒に屋内に入り込み、森にいるときと同様に内側から木材をかじり続けた。

木材は有用な建築資材だが、現在においても過去においても、代表的な名建築のほとんどが頑丈な石でできているのは、偶然ではない。

石の建物はあらゆる攻撃に耐え、木材を食べるちっぽけな昆虫の相手ではない。

これらの虫は単に木造建築を破壊させるだけではない。

彼らは木の繊維でつくられた紙類も大好物なのだ。

フルホンシバンムシや、甲虫ではないがシミも、印刷物や彩色された原稿、パピルス、樹皮の巻物を食べる。

そのせいで貴重な美術作品や記録された知識、英知までもが失われてしまうのだ。
451: :||‐ 〜 さん 2014/07/10(木)22:16 ID:bsfTrRDs(1/3)調 AAS
 
最も多様性に富むグループ

甲虫目 ( Coleoptera )
生息地 海岸沿いから山頂まで、北極と南極を除く世界各地
特徴 動物すべてを含めて最も多くの種が属する目
452: :||‐ 〜 さん 2014/07/10(木)22:16 ID:bsfTrRDs(2/3)調 AAS
 
イギリスの科学者 J・B・S・ホールデン ( 1892〜1964 ) は、

ある聖職者から「神が創造されたものを研究することにより、神の御心のなかには何があったかを推測できるか?」と尋ねられた。

それに対するホールデンの答えは「甲虫に対する過度な選り好み」だったとされている。

20世紀末までは、世界中の博物館や個人のコレクションを調べることで、昆虫の種の数を推測していた。

リンネの命名法が採用された1758年以降、昆虫学の論文には、種の記載に用いた標本について、保管先まで特定できる詳細な情報が記されるようになった。

論文を読み、保管してある標本を調べれば、種類数の推測ができる。

1980年代、すべての動物を合わせると地球上にはおよそ120万種がいると考えられるようになり、そのうち100万種は昆虫であり、

100万種のうち40万種はかたい前翅をもつ甲虫だとされた。

ここ30年間、昆虫学者が熱帯雨林を詳細に調査してきた結果、種の数は劇的に増加した。

調査の方法はきわめて単純で、殺虫剤をロープで木々の上に引っ張り上げて噴射すると、下に広げた採集シートの上に未知の昆虫が落ちてくる仕組みだ。
453: :||‐ 〜 さん 2014/07/10(木)22:22 ID:bsfTrRDs(3/3)調 AAS
 
その後の理論づけはもう少し複雑だ。

さまざまな植物を食べる虫はいるものの、ほとんどは一種類の葉、もしくは同じなかまの葉しか食べない。

そこで殺虫剤の噴射により発見できた新種の数に、植物や木の種についての知識を加えて、昆虫全体でどれだけの種がいるかを推測している。

これらのデータからある科学者は、「昆虫はおよそ3000万種がおり、うち1200万種が甲虫である」と推測している。

しかしほかの科学者はまた違う結果を算出し、「300万〜8500万種の昆虫がいて、100万〜3000万種を甲虫が占める」と推測地の範囲は広い。

正確な数値はわからないにせよ、重大な懸念は、このうちの多くの甲虫が発見される前に絶滅してしまうのではないかということだ。
454: :||‐ 〜 さん 2014/08/08(金)21:34 ID:0bCxYTxG(1)調 AAS
甲虫かよ
455: :||‐ 〜 さん 2014/08/13(水)19:46 ID:bWVD88et(1/4)調 AAS
 
世界でいちばん珍しい

オウサマゲンゴロウ ( Megadytes ducalis ) ほか多数
生息地 ブラジル
特徴 1体の標本があるのみで、それ以外に見つかっていない
456: :||‐ 〜 さん 2014/08/13(水)19:47 ID:bWVD88et(2/4)調 AAS
 

1882年、イギリスの著名な昆虫学者デイビッド・シャープ ( 1840 〜 1922 ) が、当時知られていた世界の水生昆虫について膨大な研究論文を発表した。

そのなかで詳述されていた数種類の新種の一つを彼は、オウサマゲンゴロウ Megadytes ducalis と名付けた。

体長50mm、横幅は30mmもあり、発見されたなかでは最大の水生昆虫だった。

この種について、ラテン語と英語の両方で書かれた200語ほどの簡潔な原記載には、原産地 ( ブラジル ) と採集者の名前 ( サンダース ) が明記してある。

さらに「この種に関しては1匹の個体しか見ていない」とある。

その1匹は今、ロンドンの自然史博物館に唯一の標本として保存されている。

このオウサマゲンゴロウを世界でいちばん珍しい虫としていいのだろうか?
457: :||‐ 〜 さん 2014/08/13(水)19:50 ID:bWVD88et(3/4)調 AAS
 
例えば昆虫が100万種類いるとして、そのうち大多数は生息地に行くのも探すのも難しい。

従ってそれらの昆虫について知るには、博物館や研究所に保存されている標本を通して研究するのが普通だ。

現在保存されている標本は、過去300年にわたって少しずつ集められたものであり、シャープのような専門家が時間があるときに研究史、同定し、分類する。

新種に関しても同じ過程を経て書物などで発表されるが、そこにはシャープが記したような「唯一の個体の標本である」というコメントが付くこともよくある。

なかでもオウサマゲンゴロウは最も珍しい昆虫として取り上げるのにふさわしいだろう。

この標本につけてあるラベルにはシャープが論文に書いたものと同様、わずかながら原産地についての情報が書いてある。

原産地ブラジルは850万平方kmという世界で5番目に広い国土をもつ。

そして淡水系で世界最大の河川面積を誇るアマゾン河が流れている。
 
世界で唯一の標本となったオウサマゲンゴロウは、その河に浮かぶ丸木舟の底で発見された。

どうすれば再びこの昆虫を発見することができるのだろうか?

我々にできるのは、再び現れてくれるのをただ待つことだけだ。

しばらく、あるいは永遠に待たなければならないだろう。なぜなら1994年、オウサマゲンゴロウは絶滅したと宣言されたからだ。
458: 2014/08/13(水)19:52 ID:bWVD88et(4/4)調 AAS
 
これで終了です。
私が書いた本ではないんですけど、読んでくれた人はどうも。
459: :||‐ 〜 さん 2014/08/15(金)17:04 ID:uDrSNScf(1)調 AAS
面白かった
460: :||‐ 〜 さん 2014/08/15(金)18:59 ID:X5FnUdWg(1)調 AAS
色々勉強になった
ありがとう!
461: :||‐ 〜 さん 2014/08/23(土)04:02 ID:24u2c7Ru(1)調 AAS
ぜんぶ読んだよ。
おもしろかった。
462: :||‐ 〜 さん 2015/04/02(木)05:15 ID:cjqIbzYm(1)調 AAS
読み返す
463: :||‐ 〜 さん 2015/08/16(日)19:19 ID:mIjEmeMe(1)調 AAS
上げ
464: :||‐ 〜 さん 2015/08/23(日)20:51 ID:I65wRTIa(1)調 AAS
キョジンカマキリ輸入してくれ
465: :||‐ 〜 さん 2017/04/13(木)01:38 ID:ooGGKS2w(1)調 AAS
age
466: :||‐ 〜 さん 2017/05/17(水)01:45 ID:J8fY+fuQ(1)調 AAS
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467: :||‐ 〜 さん 2017/11/25(土)09:21 ID:JevWwIZI(1)調 AAS
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468: :||‐ 〜 さん 2018/02/07(水)02:02 ID:Gfq92wrZ(1)調 AAS
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471: :||‐ 〜 さん 2019/11/03(日)05:34 ID:bezx7/bW(1)調 AAS
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472: :||‐ 〜 さん 2020/01/25(土)13:18 ID:uwicChup(1)調 AAS
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473: :||‐ 〜 さん 2023/06/06(火)15:52 ID:8tzErlJ4(1)調 AAS
グリグリ(=▼ェ▼)o-*~)=TдT=)ニャァアアアア!!
474: :||‐ 〜 さん 2023/10/09(月)09:10 ID:53G69SQo(1)調 AAS
俺くらいのマヨラーになると、マヨネーズなしでご飯が食える
475: :||‐ 〜 さん 2024/04/29(月)17:24 ID:wf/4f82S(1)調 AAS
世界一あげ
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