ひびき高等学園(元戸畑中央高校) (573レス)
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108: 2017/02/21(火)05:22 ID:BY7DAcLx0(1/12)調 AAS
日時: 2009/05/15 23:58名前: うなぎ ID:Uo8XrsI6
良いのだろうか?
世界に、生きていても。
*
蝉が鳴いていた。酷く低い声でずうっと鳴いていた。真夏だった。その日。立ち昇るような雲が青い空を覆う、昼下がり。小さな村は静寂に包まれていた。村のはずれには小さな丘がある。丘の上には家がたっていた。煉瓦造りの小さな家である。
横には、木漏れ日を広げる一本の樹木。そして刺さった一本の剣とがらくたの山。背景には空と少しばかりの海。丘のてっぺんへ芝生に埋もれてしまいそうな一つのがたがた道がある。低い土の階段は埃っぽい。
その道を一人、男が歩いていた。影を蜻蛉が追う。それらは静かだった。木漏れ日も、木々を鳴らす風も、そして男自身も。いいや、男は違う。
男は何かを見て、一瞬立ち止まる。家の横の木にささるつるぎに、だった。それは錆びたつるぎだった。振り返った。髪と同じ、銀の瞳は悲しげだった。心に、悲しみを含んでいた。
彼は家の扉を開けた。長いツタ植物の絡まる緑の家だった。ドアが錆びていたのか、ぎい、と掠れるかのような音がする。彼の家ではない。家は無いのだろう。
その麦色のジャケットが放浪者であることを物語っていた。蝉が鳴いていた。酷く高い声で、ずうっと鳴いていた。
蝉が鳴いていた。鳴く。鳴く?
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