高校生ワイが作った小説を批評してくれ (11レス)
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1: 2024/09/02(月) 01:08:44.29 ID:kEe7RODO(1/11)調 AAS
純文系、約5000字。本音で頼む
2: 2024/09/02(月) 01:09:40.77 ID:kEe7RODO(2/11)調 AAS
2023年 1月23日
これから書くことは、大体比喩として読んで欲しい。

彼は高校二年生だった。ビーチボーイズの曲に「summer means new love」というのがあって、彼はそれが好きだった。歌詞がなく、アルバムの中では変わり種の箸休めといった立ち位置だったが、どうしてかその曲が気に入ったのだ。
ゆったりたゆたうようなメロディーと、果断なく吹き抜ける暖かい喪失が、二分の曲を織物のように纏めている。しかし彼にとってそうした言語に基づいた説明は、何処か空疎で表面的だった。なんというか、柔らかで壊れてしまいそうな丸っこい何かが確かにあるのだけれど、ぼんやりとしていて形にはならない。感覚的にそう言うしかなかった。
その曲を聞く為に、彼は幾つか手順を踏んだ。第一に、夜遅くであること。第二に、ほんのり眠気を含んでいること。その条件が整ったら、電気を消してベッドに仰向けで沈む。そして「summer means new love」をかける。彼が自室でそうするのは、最低な一日や、最低な行為の後、或いは怠惰に過ぎていった毎日の後だった。確かに失われてしまったものが下腹部を震わして酷く苦しくなり、涙は出ないまでも生きているのが辛くなる。そう言う気分の夜だった。
彼は曲が終わるまでの二分間、ぼんやりとベッドに浮かぶその時間を好んだ。それは逃避であり、行き場のない渇望と慟哭を一纏めに処理する儀式だった。彼には、それが何の解決にもならない行為だと分かっていた。途中でイヤホンを抜いてしまう事もあった。しかし兎に角、これは彼に取って重要な習慣だった。

それとは別に、彼にとってもう一つ。習慣というか、不定期に訪れるイベントがあった。彼はある夢を、一ヶ月、もしくは一週間程の周期で見ていた。殆ど同じ夢であり、一瞬に溶けて消えていく本来の夢の性質に反して、しっかりと記憶に刻まれていた。それこそは川の夢、大河の夢だった。余りに象徴的なその夢は、避けがたい光で持って彼を捉えて、一つの憂鬱に纏めていた。その夢を見ると死んでしまいたくなった。自分の人生がとんと無価値に感じられて、視界が排気ガスで覆われたように明瞭さを失った。だが教室で友人と喋る頃には夢の残滓は遠くへ行って、再び日常に還った。しかし彼に取って一番悲しいのは、最悪な目覚めではなく、現実が夢の残り香を悉く奪い去ってしまう事だった。大量に覆い被さる凡庸の集積が、彼にとって唯一とも言える奇怪な出来事を連れ去ってしまい、再び逃れ得ぬ箱の中へと彼を閉じ込める。そう、一切はこの小さな箱の中で行われる。
3: 2024/09/02(月) 01:11:31.82 ID:kEe7RODO(3/11)調 AAS
2023年 1月23日
これから書くことは、大体比喩として読んで欲しい。

彼は高校二年生だった。ビーチボーイズの曲に「summer means new love」というのがあって、彼はそれが好きだった。歌詞がなく、アルバムの中では変わり種の箸休めといった立ち位置だったが、どうしてかその曲が気に入ったのだ。
ゆったりたゆたうようなメロディーと、果断なく吹き抜ける暖かい喪失が、二分の曲を織物のように纏めている。しかし彼にとってそうした言語に基づいた説明は、何処か空疎で表面的だった。なんというか、柔らかで壊れてしまいそうな丸っこい何かが確かにあるのだけれど、ぼんやりとしていて形にはならない。感覚的にそう言うしかなかった。
その曲を聞く為に、彼は幾つか手順を踏んだ。第一に、夜遅くであること。第二に、ほんのり眠気を含んでいること。その条件が整ったら、電気を消してベッドに仰向けで沈む。そして「summer means new love」をかける。彼が自室でそうするのは、最低な一日や、最低な行為の後、或いは怠惰に過ぎていった毎日の後だった。確かに失われてしまったものが下腹部を震わして酷く苦しくなり、涙は出ないまでも生きているのが辛くなる。そう言う気分の夜だった。
彼は曲が終わるまでの二分間、ぼんやりとベッドに浮かぶその時間を好んだ。それは逃避であり、行き場のない渇望と慟哭を一纏めに処理する儀式だった。彼には、それが何の解決にもならない行為だと分かっていた。途中でイヤホンを抜いてしまう事もあった。しかし兎に角、これは彼に取って重要な習慣だった。

それとは別に、彼にとってもう一つ。習慣というか、不定期に訪れるイベントがあった。彼はある夢を、一ヶ月、もしくは一週間程の周期で見ていた。殆ど同じ夢であり、一瞬に溶けて消えていく本来の夢の性質に反して、しっかりと記憶に刻まれていた。それこそは川の夢、大河の夢だった。余りに象徴的なその夢は、避けがたい光で持って彼を捉えて、一つの憂鬱に纏めていた。その夢を見ると死んでしまいたくなった。自分の人生がとんと無価値に感じられて、視界が排気ガスで覆われたように明瞭さを失った。だが教室で友人と喋る頃には夢の残滓は遠くへ行って、再び日常に還った。しかし彼に取って一番悲しいのは、最悪な目覚めではなく、現実が夢の残り香を悉く奪い去ってしまう事だった。大量に覆い被さる凡庸の集積が、彼にとって唯一とも言える奇怪な出来事を連れ去ってしまい、再び逃れ得ぬ箱の中へと彼を閉じ込める。そう、一切はこの小さな箱の中で行われる。
4: 2024/09/02(月) 01:11:55.99 ID:kEe7RODO(4/11)調 AAS
「summer means new love」と大河の夢は繋がっていた。その夢を見るのは、大抵「summer means new love」を聞いた後だった。

彼が見る夢は、大体こんな風だった。

その大河の中心に、彼は一人浮かんでいる。四方に果てが無く、地平線全てが川のまま見切れている。川は深緑に濁り、底がどれ程深いか知れず、彼はただらっこのように浮かんでいた。着衣のままで沈まず、水温は温水プールくらいだった。甘ったるい日差しの中、止まっているように見えて、海のような大河を彼は下流へ引かれていった。彼は始終退屈していて、孤独だった。空は雲ひとつなく、青いタイルをはめ込んだようで、太陽は電球のように埋まっている。太陽は決して動かない。一点に留まり彼を見つめ続けている。その光は生暖かい大河へ溶け込み、彼を捉えて離さない。彼の頭は明瞭さを失い、極限まで退屈に引き摺り込まれていく。大河の底の底へと引き摺り込まれていく。ひどい眠気が襲う。

彼が目を閉じかけたその時、今迄止まっていた太陽が動き、地平線へと沈んでいった。たゆたう少年に向かって、赤光はひたすら降り注いだ。今迄の蜜のような太陽と違って、夕陽はある種残酷な光を放った。それは赤かった。あまりに完璧な赤色をしていた。特大の真円は線香花火のようで、音は立てないまでも決して途切れることなく、光の粒を放逸している。無限の粒子は大河に沁み込んで、彼はよく煮込まれたおでんの具みたいになった。そして神経の一つ一つにまで赤光の欠片が纏わりついた時、彼は酷く悲しくなった。水面を殴りつける。手応えはない。夕日は沈もうとしている。あの壮麗な光は、自分と全く関係のないままに沈もうとしている。世界はただ浮かんでいるだけの自分と、全く関係のないままに始まり、そして終わる。太陽は遠く、そして巨大だ。後何度太陽は昇って、こうして沈んでいくのだろうか。もう遅いかもしれず、今なら間に合うかもしれず、手遅れであるにしても、それは無駄ではなかった。
「泳いでいかなきゃいけない。」
彼は独りでに言った。そう呟くと胸に希望が溢れて、進むべき道が鮮やかに映った。時を同じくして、夕陽は完全に地平線を越えた。円環の最後枠線が、磨いた硬貨のように光って消えて、世界に夜が訪れた。月は見えない。真っ暗な闇の中彼は目を瞑った。瞼の裏には篝火のように揺れ動く太陽が二つ、しっかりと刻まれている。
「やめたら終わりだ。」
彼は言い聞かせるように、快く暗闇を伝っていった。
5: 2024/09/02(月) 01:13:49.22 ID:kEe7RODO(5/11)調 AAS
暫くして、地平線から巨大な物体が昇ってきた。物体は一定を保たず、絶えず変形し光っている。唯一の光であるのに、それは何処かどす黒く、陰鬱な空気を孕んでいた。ミミズの大群が交わり、その体液で光っているようだった。少年はそれを見ると、今迄の希望が一切萎びてゆくのを感じた。彼は泳ぎ進める前に、正確には泳ぎ進める為に、あるいは泳ぎ進めながら、それを処理しなければならなかった。あまりに巨大だった。あの夕日よりも巨大だ。発光しつつこの大河の行く末を包み込んでいる。いや、それは前からずっとこの大河に存在していたのかもしれない。見ないようにしていただけかもしれない。ミミズの大群のような物体が分泌する液体は大河の一粒子にまで入り込み、いつしか皮膚を通して全身を捉えてしまっている。
 彼は向かっていこうとした。しかし体は虚しく、纏わる水に任せて動かない。水面は赤から陰鬱な黒に変わって、彼の細胞からはもう、夕陽の残滓は悉く消えている。あの輝きは全く嘘で、彼は夕陽を理由にして、夕陽を無理やり壮麗な何かに変えて、区切りを付けたいだけだった。あれは幻だった。わかっている。あれは幻だ。幻に希望を託して進もうとしたんだ。あのミミズの大群のような物体は幻じゃない。寧ろ現実そのものだ。
 彼は何度も目を瞑った。瞼の裏には暗闇が広がるばかりで、代わりに姿は見えないまでも、あの物体が近づいていることが分かる。
そう、分かっている。戦わなきゃいけないってことは分かっている。それでも体は動かなかった。正確には意思の本当に根深い部分が、体を動かすことを拒んでいる。もう何もかも投げ出したくなった。彼は泳ぐこともせず、ミミズの大群のような物体から目を逸らして眠りこけた。彼は再び、らっこのように浮遊した。
6: 2024/09/02(月) 01:16:41.20 ID:kEe7RODO(6/11)調 AAS
流れはいつの間にか、ずっと速度を上げている。早鐘のような動悸がなって、その度に流れは速くなった。目を閉じる。じんわりと痛みが広がるほど強く閉じる。しかしあのミミズのような大群はどこまでも追いかけてくる。気づくと物体は近くまで迫って、吐瀉物の匂いと、咀嚼音のような不快があった。少年には、それが自らの醜さの反映に思えた。泳げ、泳げ。彼の声は虚しく響いて、結局体は丸まったままだった。
既に腐臭は傍まで迫って、それが物体の匂いであるか自身のものであるか、彼には判別できなかった。何もかも世界から失われ、光るのは陰鬱な物体だけであり、その触手はうねりつつ空を隠して、今少年を包み込んだ。ずっとこの物体に包まれたまま、じたばた暴れているだけだったのかもしれない。今やもう暴れることすらやめて、全てを投げ出してしまっている。やっと目を開けると、一面に目玉が敷き詰められ、全て彼に向いていた。数千、数億の目玉全てに、浮かんだ少年が映っている。その目は彼自身のものだった。一等醜い少年が、一面視界を覆っている。数億個の目には丸まったままの彼が写っている。ここで何もかも壊されて、またやり直したい。粉々に全身を砕かれてしまいたい。自分という存在が全くもってなくなって、一から作り直したい。それは声にならない叫びとなって、喉がひゅうひゅうと震えるのが分かった。全身の筋肉を絞り出して一つの言葉に変えようとする。しかし言葉は出ない。喉から掠れた切ったゲップのような音が出た。
7: 2024/09/02(月) 01:17:49.16 ID:kEe7RODO(7/11)調 AAS
その声が反響すると、目玉は一斉に裏返って白目を向き、それぞれ情けなく分離していった。白一色の花びらの集まりは、ただひたすら醜く、次の瞬間なだれ落ちた。砂の城が崩れるように、それは本当に一瞬だった。余りにあっけない一瞬だった。物体の欠片は塵すらなく、広がるのは何もない大河だった。

何もそこにはなかった。希望も絶望も恐怖も歓喜も、一切の感情が失われていた。玩具を全て取り上げられた子供のような茫然とした表情をして大河を見渡してみる。本当に何もなかった。彼はゆっくりと目を閉じて、またぼんやりと川の流れに身を任せた。どこからか「summer means new love」が聞こえてきた。
彼は何処へも泳げず、何とも戦わず、破滅すら許されないのだった。再びらっこのように浮かぶ彼には、そのいずれも抜けていた。

やがて朝日が昇ったが、その光は赤光とも、夜の陰鬱な照りつきとも違った。それは絶対の凡庸であり、絶対の退屈だった。積み重ねた感情は全て消えて、少年は再び、大河をゆらゆらと流れていた。日光はまだ、少年を大河に縛っている。夢はそこで覚めた。

その夢は、彼に取って人生そのものだった。毎日の繰り返しを煮詰めて、形を整えたような夢だった。繰り返し決意して、繰り返し挫折して、繰り返し堕落するだけの毎日だった。
8: 2024/09/02(月) 01:18:24.79 ID:kEe7RODO(8/11)調 AAS
長い話ですまない。彼は小さな箱の中でじたばた苦しんでいるっていうか、もうどうしようも無いくらいに縛り付けられているって思っている。彼がどうすればいいのかって色々と考えるんだけど、どうすればいいんだろう。大人になれば自然と忘れていく考えなのかもしれない。なんだか典型的青年的な思考な気がするし。「絶対的な何か」があればって思うんだ。それこそ夕日のような何か。それは嘘だっていい。とにかく何か自分の人生にベクトルを与えてくれるような何か。もしくは自分を壊してくれるような何か。でもそんなものは多分運がいい一握りの人に訪れるラッキーな気もする。結局この現実に立ち向かうには一歩一歩踏みしめるように戦うしか無いんだろう。でも、そんな強さをどっから手に入れてくれば良いんだろう。それならいっそ無理にでも何か自分を変えうるような体験を作り上げてみるのは?それもできるだけ努力なしに、突発的に。

 長くなって本当に済まない。これは宣誓にあたるものだと思っていい。ある賭けの宣言書。結果がどちらになろうが、はっきり言って構わない。とにかくやってみようと思う。

君のことが好きだ。唐突で、自分でも何を言っているのか分からない。とりあえずこれは本当だ。会えたら会おう。できれば会おう。ビーチボーイズの曲はどれも良いから、一曲でも聞いてくれたら嬉しい。(Long promised roadなんてどうだろう。)かなり分裂してしまって、支離滅裂な文章になっていてすまない。君の中に楔のように刻まれていることを望む。
                                  

山下航平より
9: 2024/09/02(月) 01:19:06.81 ID:kEe7RODO(9/11)調 AAS
荻野岬の朝はポストに新聞を取りに行くところから始まる。今日は休日だが、岬は変わらず7時に起きた。ポストには岬宛の手紙が入っていた。この時代に手紙という時点で不審だったが、山下航平の名前を見て、今度は何の悪ふざけだろうと思った。手紙は長く、不快で、意味がわからなかった。初め困惑し、次に不快になり、最後には気持ち悪く恐ろしくなった。こんなにイタい手紙は見たことがない。考えるのを辞めてリビングで母の淹れたコーヒーを飲んでユーチューブを見ていると、高橋明からLINEがあった。

「航平が病院に運ばれたらしい。結構重体らしい。今から見舞い行く」

理由は聞けなかった。手紙をもう一度読み直した。「賭け」という言葉が強く引っかかった。

「病院どこ?私も行く」

動悸の治らないままに岬は家を出た。病院まではバスで25分くらいだ。バスに揺られながら、岬は航平のことを考えた。そんなに多くのことを知っているわけではない。クラスが一緒で、部活はサッカー部で、明といつも話している。あんなに前髪が長いのに、よく広いコートを見渡せるものだなと思っていた。よく冗談を言ってからかってきた。特に何を生み出す事もない、1時間後には記憶の処理場へと回されてしまうような会話。でもそれなりに楽しかった。LINEは偶にノートやプリントをせがまれるくらい。航平の成績はまあまあ良かった。岬よりずっと上で、明よりも少し上。それから、それから…
10: 2024/09/02(月) 01:20:01.34 ID:kEe7RODO(10/11)調 AAS
岬と航平の間にある繋がりは確かに普通のそれと比べて強固だったけれど、それは特別なものでは決してなかった。仲の良いクラスメート以上のものではない。だからあの告白は酷く唐突に思えた。それにあの異常な文章。だるまさんが転んだの鬼をしていて、振り返ったら真後ろに人が居たような恐怖。そして彼は今病院で重体。まだ出来事が遠くにあって、いまいちその質量が定かでない。とにかくそれは遠くにあって、故に頭が乾いている。乾いた困惑と驚きに揺られていた。景色は岬の行先と反対に流れていく。ゆっくりと住宅が通り抜けていく。何も問題はないように思えた。ただ確実に、この先に、尋常ではない事態が待ち受けている。バスは病院の最寄りに着いた。バス停では明が待っていた。明は不安そうに下を向いて、おはようといった。岬もおはようと返した。飛び降りたらしいんだ、飛び降りたらしい。それだけ明は言った。吐く息がタバコの煙のように立ち上がって消えた。
11: 2024/09/02(月) 01:20:24.83 ID:kEe7RODO(11/11)調 AAS
手紙みたいなのきた?と岬は聞いた。素直な困惑が明の顔に現れて、「いや何でもない」と訂正する。岬は輝の手を握った。明の手は柔らかくて大きく、よく日に焼けている。明の手はやや汗ばんでいた。二人は手を繋いだまま病院の方へ歩いて行った。二人の関係は、航平が知らないことの一つだった。
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