[過去ﾛｸﾞ] あくまで天野美汐とか 拾六乃巻 (1001ﾚｽ)
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819(2): 03/10/23 21:50 ID:glLB0XLu(1)調 AAS
「失礼ですね」
「物腰が上品だと言って下さい」
とげのある朝の挨拶が、澄みきった青空にこだまする。
落ち着きのある乙女が、今日も天使のような老獪な
笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、深い紅色の制服。スカートの裾は
乱さないように、白いケープは翻らせないように、ゆっくり歩くのが彼女のたしなみ。
もちろん、遅刻ギリギリで走り去るなどといった、人として不出来な先輩など存在していようはずもない。
天野美汐。
昭和××年生誕のこの少女は、もとは空からお菓子を降らせる夢を抱く、
品格ある狸系お嬢さまである。
雪降る街。古くからの言い伝えを未だに残している緑の多いこの地区で、妖狐に見守られ、
出会いから悲しい別れまでの災禍がうけられるものみの丘。
時代が移り変わり、元号が明治から三回も改まった平成の今日でさえ、
一度関わりを持てば温室育ちの純粋培養おばさんが箱入りで出荷される、
という仕組みが未だに残っている貴重な場所である。
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