[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ2 (594レス)
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127: マタタビの欲求!! ◆kILBiSHoqM 2007/09/25(火) 13:58:36 ID:VixlqIYP(3/4)調 AAS
マタタビはこのバトルロワイアルに参加する気は欠片もなかった。
もともとかなりのものぐさであり生涯のライバル兼悪友であるクロ曰く「世界一快楽に溺れやすい猫」と言わしめたほどであったため『やりたいヤツがやってればいい』と思っており
殺し合いはキッド以外とはする気もなかった
余程のことがない限り、通りすがりの猫で済まそうと考えていた
そんなことをメカブリに乗りながら考えていると暗闇の中に建物が見えた。
H−6の温泉施設だった。
この猫とりあえず一っ風呂浴びようとしている。なんて猫だ。
しかしそんな考えは温泉施設の全貌がわかってくるとどっかへ消えていた。
地図に温泉と記されているこの施設はパッと見廃墟と言ったほうが適切であるほど荒れ果てていた。
二階建ての木造建築であるがガラスは割れてるし廊下に穴は空いて埃は溜まりっぱなしだった。
唯一正常に稼動していると言っていいのは奥にある温泉ぐらいだった。
こんなボロボロの建物だがここを一通り見て回ったマタタビはぼそっとつぶやいた。
「あぁ…この温泉直したい」
そう、さっきからものぐさだの面倒臭がりだの言ってきたが、この猫大工仕事だけは非常に熱心であり、こわれた建物を見ると思わず直したくなってしまうほどだった。
「えぇと…ここをこうしてと…」
あぁ!もう設計図まで引いてる!完璧に直す気満々である。
「ようし!いっちょやるかぁ!」
こうして一匹の猫が己の欲求に従って行動を始めた…バトルロワイアルなど完全に無視して…
128(1): マタタビの欲求!! ◆kILBiSHoqM 2007/09/25(火) 14:02:34 ID:VixlqIYP(4/4)調 AAS
【H-6 温泉 1日目 深夜】
【マタタビ@サイボーグクロちゃん】
[状態]:良好
[装備]:大工道具一式@サイボーグクロちゃん、マタタビのマント@サイボーグクロちゃん
[道具]:デイバッグと支給品一式、メカブリ@金色のガッシュベル!!(バッテリー残り95%)
[思考]:
1、この建物を直す。
2、誰かが来たら作業を手伝わせる。
3、出来ればキッド(クロ)とミーとの合流。
4、戦いは面倒だからパス。
5、暇があれば武装を作る。
[備考]
大工道具は初期支給品の一つです。
中身はノコギリ、カンナ、金槌、ノミ、釘
建物の修理はおよそ24時間で完了します。
妨害行為などで時間が延びることがあります。
修理に手を貸す人がいれば修理完了までの時間は短くなります。
H-6の周囲に建物を修理する音が響いています。
【メカブリ@金色のガッシュベル!!】
ガッシュベル本編でガッシュを誘い出すために作られた。
劇中の描写ではガッシュが全力疾走しても追いつけないぐらい早く飛行高度は際限がなかった。
バトルロワイアルでは飛行可能高度に制限があるため高度は10〜15メートルが限度、スピードは時速5〜10キロ程度とする
129: 2007/09/25(火) 14:32:09 ID:PNeurLyW(1)調 AAS
乙
130: 2007/09/25(火) 14:48:58 ID:4NWZqz8Q(1)調 AAS
>>105
レナ…
131: 2007/09/25(火) 18:42:12 ID:V891c6QL(1)調 AAS
ここまで感想
>>46 まで
>明智健吾の耽美なるバトルロワイアル――開幕
大変面白く読ませていただきましたが
ちょっと・・・が多いような気がします。
>>53 まで
>少女の幸運と少女の不幸
アルルゥの「おとーさん・・・」 に萌え
>>77 まで
「友達だ」
カルラが一瞬でやられてしまいました・・・ちょっと残念です
>>85 まで
◆Yf4GQL3Gk6
>[装備]:背中にガッシュ、頭にポルヴォーラ、右手にブリ、左手にランタン
可愛すぎますww
>>106 まで
>Lie!Lie!Lie!
状況表は残して置いてください
>>120
>「ゼロのルイズ」(前編)
翠星石ww
後編が楽しみです
>>128 まで
マタタビの欲求!!
短く簡潔で面白いです。どうなるか期待してます
132: 2007/09/25(火) 18:48:38 ID:IZfrm5bC(1)調 AAS
>>52 >>77 >>106 >>120
…?
133: 2007/09/25(火) 19:04:13 ID:5WQVgOh3(1)調 AAS
134: 2007/09/25(火) 20:00:23 ID:FP6gfCs0(1)調 AAS
一応忠告。
ここはスレタイどおり【アニメキャラ・バトルロワイアル2nd】の作品投下スレです。
ただしロワ企画を目の敵にしている荒らしによって【アニメキャラ・バトルロワイアル(1st)】の作品がコピペされています。
1st企画に興味をお持ちの方は
外部リンク:www23.atwiki.jp
2nd企画に興味をお持ちの方は>>1からのテンプレをご覧ください。
なお荒らしは反応すると増長しますので、
私はこれ以降はこのスレに書き込みません。
質問等は>>1からのテンプレを読んでしかるべきところでお願いします。
135: 2007/09/25(火) 20:18:05 ID:d39ScRvS(1/2)調 AAS
違うだろ?
136: 2007/09/25(火) 20:32:14 ID:ApyKYApd(1)調 AAS
>>21からずっとだが
137: 2007/09/25(火) 20:36:32 ID:d39ScRvS(2/2)調 AA×
138: 2007/09/25(火) 22:16:49 ID:t3Fu9oe1(1)調 AAS
一応忠告。
ここはスレタイどおり【アニメキャラ・バトルロワイアル】の作品投下スレです。
ただし一般人を目の敵にしている荒らしによって【ロリショタバトルロワイアル】の作品がコピペされています。
ロリショタに興味をお持ちの方は
したらば板:otaku_8274
ノーマルに興味をお持ちの方は板のテンプレからご覧ください。
なおロリショタは反応すると増長しますので、
私はこれ以降はこのスレに書き込みません。
質問等は>>1からのテンプレを読んでしかるべきこのスレでお願いします。
139: 2007/09/25(火) 22:53:52 ID:4WSR3MWc(1)調 AAS
ここはカオスなスレですね
140: 私がみんなを知っている ◆5VEHREaaO2 2007/09/25(火) 23:25:30 ID:J01UDqyO(1/7)調 AAS
「あのタコハゲ! ぶっ飛ばしてやる!」
E-1にある水族館、大きく開いた入り口のある正面玄関を裏に周り、小さな裏口を潜ったところにある事務所内。
菫川ねねねは、そこで螺旋王ロージェノムと名乗る男に対して怒りを顕にしていた。
ねねねは異能を何も持たず、紙を操る力もなければ、銃を扱った経験もなく、みせしめとして殺害されたテッカマンランスに対応する
力すら持たない一般人である。だが、かつては作家界の『剛田武』と呼ばれていた女はこの程度のことでは怯まない。
自分はポール・シェルダンではないのだ、好きなようにやらせてもらう。
もっとも、菫川ねねねという作家は13歳の頃にデビューしてから24になる今日まで
おしかけファンや変態ストーカーにアンチファンなど多数の人物に襲われ、読仙社などの大規模な組織に連れ攫われるなど、
命の危機や誘拐という単なる一般人が遭遇する危機に陥る確立が非常に高いため、このような事態に慣れてしまい、平常心を保てているのかもしれないが。
ともかく、ねねねはロージェノムの所業に怒りを感じ反旗を翻そうと決めた。
(でも、これからどうする?)
ロージェノムとやらに反旗を翻すのはいいとして、ねねねの頭には何も具体策など浮かばない。
精々爆弾を誰かに外してもらって、ロージェノムを誰かに倒してもらうという他人任せな案しか、ただの作家でしかないねねねには思いつかなかった。
とはいえ、このまま黙って事態が解決するのを持つつもりもなければ、誰かが助けてくれることを待つつもりもない。
下手をすれば、ロージェノムの言うとおりに最後まで殺しあうはめになるのかもしれないのだから。
(そういえば、このデイバッグの中には何が入ってる?)
ねねねは自分に渡されたデイバッグに意識を移す。
たしか、殺し合いをするための道具が入っているとハゲが言っていたはずだ。
異能など使えないねねねにとっては、あるもので現状を乗り切るしかない。
とはいえ、密かにどのような道具が入っているかと、作家としての好奇心が刺激されてもいたが。
ねねねは順にデイバッグの中から取り出したものを、側にあるテーブルの上に並べる。
鞄の中に入っていたものは「地図」「コンパス」「筆記用具」「水」「食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ぬいぐるみ」「冊子」「アクセサリー」であった。
ずらっとならんだ物から、役立ちそうなものを探そうとねねねは物色し始める。
そんなときだった彼女の耳に、英語で話しかけてくる女の声が聞えたのは。
『すいません』
ねねねは物色をやめる。いったい誰だ?
自分に声を掛けてきた人物に探すために辺りを見回す。だがいくら部屋の中や入り口などに目を向けても、誰も見当たらない。
空耳だろうか?
141: 私がみんなを知っている ◆5VEHREaaO2 2007/09/25(火) 23:27:17 ID:J01UDqyO(2/7)調 AAS
『前です、目の前です』
どうやら空耳ではないらしい。体の前方へと視線を向ける。
くりくりとしたつぶらな瞳と目が合った。
目の前にいるのは、オレンジ色の毛皮に緑色の帽子、赤い蝶ネクタイといった衣装。
犬なんだか何なんだか、よくわからない頭。ずんぐりとしたオバQ風の二頭身。
いちおう、愛くるしい感じなテディベアと思われる人形。
名はボン太君。はたして、これが喋ったのだろうか?
『違います、その人形ではありません。私はあなたの手元にいます』
そう言われたねねねは視線を下にずらす。そこには緑色の宝石がついているアクセサリーが転がっていた。
ねねねは頭上を仰ぎ見る。
拝啓。父さん、養母さん、今時のアクセサリーって喋るものなのでしょうか、教えてください。
特にコンピュータ開発をしている父さん、AIとかってこのサイズで実現可能なのですか?
ねねねは少々予想外の展開に微妙に現実逃避をした。だがそんな場合でもないと思い直し、意識を現実へと戻す。
この程度、紙使い四人と壁すり抜け能力者二人に出会うことに比べれば、喋るアクセサリーに出会うことなど珍しいわけがない。
右手でアクセサリーを掴み上げ、話しかけてみる。
「……で、あんた何?」
『始めまして、私はマッハキャリバーと申します。あなたは?』
どうやら、話が通じない相手ではないらしい。会話を続けることにする。
「私は菫川ねねね、あんたもくだらないゲームに巻き込まれた被害者?」
『……それは、どういうことですか?』
マッハキャリバーは不思議そうに疑問を投げかけてくる。どうやらなにも知らないらしい。
ねねねは自分がここに連れてこられた経緯。そして、螺旋王ロージェノムのことをマッハキャリバーに伝えることにした。
ねねねが現状を伝え終わるとマッハキャリバーは、
『ねねねさん、申し訳ありませんが名簿とやらを開いてくれませんか?』
そう言った。疑問に思いながらもねねねは聞き返す。
「どうして?」
『集められた八十二人の中に、私の相棒も含まれているかもしれません』
たしかに、マッハキャリバーの言うとおりである。むしろ知り合いが巻き込まれているかもしれないと最初に心配するべきだった。
ねねねは名簿を開き、マッハキャリバーと共に覗き込む。どこに目があるかは分からなかったが。
142: 私がみんなを知っている ◆5VEHREaaO2 2007/09/25(火) 23:29:47 ID:J01UDqyO(3/7)調 AAS
『私の相棒だけではなく、他の仲間達もいるようです』
「そう、私の方も二人ほど巻き込まれちゃってるみたいね」
ねねねは見た。二人もいないであろう珍しすぎる名を持つ女と、自分の家に住む居候の少女の名前を。
『そうですか、ならば一刻も早く探さないと』
もちろん、ねねねもそのつもりだ。ミニブックに絡まないようにマッハキャリバーを首にかけ、
デイバッグの中に入っていたものを急いで中に入れ戻す。
そして、最後に分厚い冊子を片付けようとした。
(ん?)
そして、気付く。その分厚い冊子の表紙に書かれた文字に。
『詳細名簿+』
その簡単な一文だけが冊子に書かれていた。完全詳細名簿とはいったいなんなのか?
名簿とは違うのか? これも個人に支給されるアイテムなのか? プラスがあるならマイナスもあるのか?
読んでいる時間もおしい急がなければいけない、とねねねは思うものの、
「マッハキャリバー、ちょっと待って。これ読んでから」
興味を多大に刺激され読んでみることにした。
ページを開くと陽気そうな典型的なアメリカ人の顔写真とその人物のプロフィールと思われる文章が載っていた。
ねねねはアイザック・ディアンという人物のプロフィールを読み進める。
そしてかの人物が泥棒であり、不死の酒を飲んだ不死者であることを知った。
ねねねは書かれていたことに驚きつつも、好奇心から次のページを開く。
詳細名簿には読子やアニタ達に比べても、遜色劣らぬ異能や経歴を持つ多数の人物や自分と同じような一般人たちのプロフィールが載っていた。
思わず、これらの人物を主人公にした話を複数頭の中に練り上げてしまうが我慢する。
自分のプロフィールやマッハキャリバーの知る六課メンバーの詳細が合っていたことから、ここに載ってある情報は事実であると検討できる。
詳細名簿からはマッハキャリバーは名前を知らなかったため始め気付けなかったが、クアットロというサイボーグが危険な人物だと写真から確認できたこと、
そして技術者と思しき面子がいたのがラッキーだった。爆弾首輪を外すということにも期待できそうだ。
そういえば、元エージェントであるあいつはどうだろうか?
彼女ならば爆弾を解体できそうなものなのだが。
※ ※ ※
「爆弾を〜解体しましょ♪ 爆弾を〜解体しましょ♪ とっとと〜解体しましょ♪
でも、マニュアル読んでから解体し〜ましょ〜♪」
ぺら ぺら ぺら
カチッコチッカチッコチッカチッコチッカチッコチッカチッコチッカチッコチッカチッコチッ
どっごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!
※ ※ ※
143: 戦う運命 ◆CDDi1fgMw2 2007/09/25(火) 23:31:04 ID:G43dZ+an(1/5)調 AAS
『周囲に人影なし』
「そうか……寂しいもんだな」
カバンを担ぐ少年が、一人呟いていた。
浅黒く鞣革のような皮に巌のような鍛え抜かれた肉体を持っているが、その顔は幼く、年の頃は十七といったところだった。
第三者がこの光景を見ていれば、不審に思っただろう。
少年、衛宮士郎は一人しかいなかった。なのに、「会話」をしている。
彼はカバンを担ぎ直し、川沿いに土手を駆ける。
街灯は点いているものの、人影は一切なく、精神の弱いものなら異常をきたすような、不気味な光景だった。
もっとも彼、衛宮士郎にとって、この程度の不気味さなど意にも介しなかった。
彼は十三という若さで、一人で山へ篭り夜叉猿という化け物と戦いへ向かったのだ。
不気味と思う感情など、そのときにどこかへと置いてきた。
「本当に殺し合いなんて行われているのか? タイガーは戦いを見るのは好きだけど、殺し合いを楽しむような人とは……」
『だが、あの女は少女を殺した!』
「……そうだよな。あの娘、死んじゃったんだよな。タイガーさんのせいで」
士郎は光成に対して、少なからず感謝していた。
自分は死闘を何度も経験する必要があると感じ、死闘の機会が多いタイガーコロシアムへの参加をタイガーへ願い、叶えてもらった。
今の自分があるのは、タイガーのおかげだといって良い。
そのタイガーが、殺し合いを始めた。それが自分や範馬独歩や拳王と名乗った男だけの戦いなら分かる。
「世界で一番強い」という男なら一度は憧れ、捨てる夢を今だ求め続ける馬鹿だからだ。
そういった男は、死闘の果てに命を落としも恨み言はない。
光成もそういう男たちの戦いが見たくて、地下闘技場トーナメントを開催したはずである。
なのに……
「殺しちまったんだな。タイガー」
ひたすら冷たく、腹の底から響く声で確かめるように、もう一度告げる。
女が死ぬのは、母親が殺されたときから、士郎の望むことではない。
『応。我々がすることは、民間人の保護! そのためには覚悟と再会する必要がある!』
「分かっている、零。何度も聞かされたって」
カバンから声が上がり、それが自然であるかのように士郎は返事をする。
彼は一時間ほど前に、零と名乗るカバンと出会った事を思い出していた。
144: 私がみんなを知っている ◆5VEHREaaO2 2007/09/25(火) 23:32:18 ID:J01UDqyO(4/7)調 AAS
駄目だ、普通に当てにできない。
まあ、普通に技術者をあたっていった方がいいだろう。どこにいるのかも、どうしているのかも分からないが。
他にも詳細名簿のメリットはある。
探さなくてはいけない人物達の容姿の写真が貼ってあることだ。これで幾ばくかは探しやすくなったはずだ。
だが同時にデメリットがある。行動に対する思いが書かれていないことだ。
それは一番重要なことだとねねねは思う。
例えば『君が僕を知っている』でデビューした13歳の菫川ねねねがなぜ本を書き始めたのかで、
金儲けをしたいから書いたと解釈するのと、読ませたい誰かのために本を書いたと解釈するのでは、大きく違うのだ。
故に、真に危険人物と断定できる人間と、実は危険人物ではない人間との差が分かりづらい。
もっとも、目下のところは危険と思われる面子に近づかなければいいだけなのだが。
ねねねがこの詳細名簿の欠点に気付けたのは、作家という心理描写や読み手を騙すトリックを熟知する職業についているからであり、
実は自分の知り合いの善良な人間が、とてつもないことを犯していたということを知っていたからでもある。
ねねねは名簿をマッハキャリバーに見えない位置にずらし、読子・リードマンの欄を開ける。
そこにはいかに彼女が本好きか、いかに彼女が紙を操れるのか、アニタや自分といかなる関係かが書かれてあった。
そんな読子・リードマンのプロフィールの中にこんな一文が書かれてある。
『読子・リードマンは先代である十五代ザ・ペーパーことドニー・ナカジマを殺害、一年後に十六代ザ・ペーパーに就任。
なお、ドニー・ナカジマと読子・リードマンは非公認ながら恋愛関係にあった』
ねねねはその一文を読んでも驚きを表情にだすことはなかった。なぜなら、書かれているであろうことを予想していたからだ。
ねねねは思い出す、あの時の夜を。読子・リードマンをザ・ペーパーという紙使いだと知った事件のことを。
自分に語ってくれた真実を。泣きながらも、自分を助け出してくれた女の言葉を。
だから信じられる、彼女のことを。
だが、他の参加者は読子のことなど知らないのだ。もし、そんな状態でこの詳細名簿のことを見せればどうなるのか?
そして、読子・リードマンのプロフィールを知られてしまったら? あまりいい結果になるとはとても思えない。
(……たく、しょうがない)
ねねねは思考の海から這い出し、読子・リードマンとアニタ・キングのページを破り取る。二人の秘密やアキレス腱は誰にも見せたくない。
145(1): 戦う運命 ◆CDDi1fgMw2 2007/09/25(火) 23:32:34 ID:G43dZ+an(2/5)調 AAS
惨劇の後、士郎は気がつくと、川原で佇んでいた。
静かな音を立てて流れる川に向けていた視線を、星の瞬く夜空へ向ける。
星が、自愛に満ちた母親をかたどっているように錯覚した。
少し視線を下げると、繁華街が見える。だが人の気配はなく、寂れた感じを受けた。
ため息をつき、光成が言った殺し合いをしてもらうという言葉に呆れながらデイバックをあさった。
武器には興味は無い。適当な魔術用トレーニング機器が無いか探しているのだ。
もっとも、無くても構わなかった。上は繁華街、重りになるものなど、いくらでもあるだろう。
この殺し合いという異常な場でも、士郎は強くなる事を第一に考えていたのだ。
しかし、中から見つけたのは、食料や地図など以外には紙があっただけだ。
光成から自分に対するメッセージがあるのかと思い、強化外骨格「零」と書かれた紙を開いてみる。
ドズンと、重い音が静かな川原に響いた。
紙を開くと同時に現れたカバンに驚き、紙を上下を反対にしたり、上を見たり、下から覗いたりする。
それは不気味に思っての行動ではなく、単純に好奇心から紙を隅々見ているように見えた。
その彼に、カバンから声がかけられた。
『少年、現在の状況の報告をお願いする!』
一瞬、士郎はポカンとするが、気を取り直す。
「 そうか、あんたが強化外骨格「零」というのか。俺は士郎、よろしく」
『了解。士郎は我々の名を知っているのか。覚悟の行方を知らぬか? 最初の場所で悪鬼に宣戦布告を行った男だ』
「ああ、あの人か。強そうだったな。ごめん、今は知らない」
『そうか……』
気落ちしている零に苦笑を浮かべる。随分と人間臭いカバンだと士郎は思ったのだ。
「そう落ち込むなって。俺も、覚悟って奴に会いたいから、探すの協力するよ」
『まことか!!』
「ああ。その代わり、覚悟って奴との手合わせをお願いしてもらえないか?」
『何故だ? 回答を求む』
「親父を超える為さ……」
『父親?』
零に対して頷く。彼の胸中にあるのは、なぜかかの世界最強の男に挑む、自分の母親。
146(1): 戦う運命 ◆CDDi1fgMw2 2007/09/25(火) 23:34:15 ID:G43dZ+an(3/5)調 AAS
彼女の、最初で最期の母親としての言葉が、士郎の胸を焦がす。
復讐の念と、最強の渇望を混ぜて胸に無理矢理秘めさせる。
タイガーコロシアムを通じて、最強となるべく戦っているのか、タイガーに対して復讐する為強くなっているのか、多少分からなくなっていた。
それでも、母親の死は今の自分の原点といえる。ゆえに、彼は強くなり続ける事をやめない。
例え、それが途方も無い道のりだとしても。
「ああ、地上最強になる、それが今までの俺だし、これからの俺だ。 そのために戦い続ける必要がある」
『士郎。父親を超えるのは男子の本懐! なんら恥じることなど無い!!』
「ありがとう。そろそろ行こうか。覚悟に会うんだろ?」
言いながら、無造作にカバンを掴む。その士郎の様子に、零は慌てる。
『待て! 我々の重さは……』
「よっと」
士郎は難なく、カバンを担ぎ上げた。
その様子に、ほう……っと零は吐息をつく。
「これくらい重いほうが、ウェイトトレーニングとしては丁度良いさ。いや、軽いくらいかな?」
『ふむ。随分鍛えているようだ。これなら、覚悟ともいい勝負になるかもしれない』
「もちろん、そのつもりさ。そして、勝つのも俺だ」
『言うではないか。覚悟との再会、楽しみが増えた』
士郎は笑みを浮かべて、川原を駆けた。
一人と三千の英霊が宿ったカバンは、宵闇に包まれた道を何の恐れも無く進み続ける。
147: 2007/09/25(火) 23:34:33 ID:qadczk3i(1)調 AAS
148: 2007/09/25(火) 23:34:37 ID:/622+3yn(4/4)調 AAS
149(1): 私がみんなを知っている ◆5VEHREaaO2 2007/09/25(火) 23:34:38 ID:J01UDqyO(5/7)調 AAS
『いったい何を?』
「人間誰しも知られたくないことがあるってだけ。女には特にね」
ライターをポケットから取り出し、二枚の紙を火で炙る。
火はたちまち紙に燃え移り、ねねねは側にあった灰皿に燃える紙を捨てる。
詳細名簿が複数存在しないのならば、これで読子とアニタの情報は自分しか知らないことになる。
もっとも、テレパシーを使える能力者等もいるこの状況では、どれだけ秘密が漏れないかは不明であるが。
(さてと、随分時間が立っちゃったわね)
ねねねが時計を見ると、二時を回っていた。名簿を読むのに時間が取られたらしい。
遅れた分は急がなければ。とりあえずの目的地は本が一番あるところ、つまり図書館。
本ある所に、紙使いあり。
「わるい、時間が掛かった」
『いえ、仕方ありません』
ねねねの謝罪に名簿はそう返し、
『ですが、相棒達は本当に見つけられるのでしょうか?』
続けてそう言った。
この舞台には、多数の実力者達がおりその大半は道具を用いず、もしくは代用しやすい者達がほとんどなのである。
スバルも戦闘機人モードになれば単独で戦えるが、はたして他の六課メンバーはデバイスなしでこの状況を乗り切れるのだろうか?
ゆえに非難とも取れる言葉がでる。
ねねねにはデバイスの考えなど分からないし、表情をうかがい知ることもできない。
それでも、非難されているかもしれないと思っていても言葉を紡ぐ。マッハキャリバーを安堵させるために、自身を鼓舞するために。
右手の親指で自分の胸を指し、息を吸い込み、口を開く。
「安心すれ、俺がついてるんだ。ハッピーエンド間違いなし!」
150(1): 戦う運命 ◆CDDi1fgMw2 2007/09/25(火) 23:35:51 ID:G43dZ+an(4/5)調 AAS
現在、その一人と三千の英霊は、コンクリートで舗装された道を下っていた。
零の探知能力を頼みに、覚悟を探しているのである。
しかし、零は探知能力が下がっているらしく、数百メートル単位でしか人を察知できないらしい。
『この謎、いずれ解き明かす必要がある。強化外骨格のときにも影響が出なければ良いが……』
「そうか。それにしても人が見つからないな」
士郎は、ランニングには丁度良いと言いながら、街を全速力で駆けていく。
無防備だが、その姿は例え襲われても返り討ちにするという考えゆえであった。
やがて、病院を前にし、零と士郎が会話するため止まる。
九十キロはあるカバンを担いで全力疾走したというのに、士郎は涼しげな顔をしていた。
『随分鍛えられているな。その肉体、どういった経路で手に入れた?』
「十三まで親父とお袋に鍛えられたのさ。その後は自己流」
『……覚悟も、十三までは兄と一緒に父親に鍛えられていた』
「へぇ……兄貴がいるところまで一緒か」
『だがその兄に、覚悟は父親を殺された。散は悪鬼となったのだ』
「嫌なところまで似ているな。」
苦笑をしながら、零の語る覚悟は本当に自分に似ていると思った。
それは、運命を感じるほどに。
一瞬、自らの体が異常な熱を発し、周囲の空間を歪ませた錯覚に陥った。
戦いの予感に、士郎は比喩でなく身体を熱くする。
(もう、戦いたくなった)
そう、士郎は覚悟に、戦う運命を感じたのだ。
退屈を紛らわせる存在として鍛えられた士郎。無力な人を守るために鍛えられた覚悟。
鍛えられた目的は違うが、鋼の肉体を持つ二人。神が仕組んだのか、出会わないはずの二人に接点ができた。
二人の戦士が出会うとき、もたらすのは死闘か、共闘か。
それは、天に煌く星しか知らなかった。
151: 私がみんなを知っている ◆5VEHREaaO2 2007/09/25(火) 23:36:05 ID:J01UDqyO(6/7)調 AAS
【E-1 /水族館事務所内/1日目/黎明】
【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康。
[装備]:マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
[道具]:支給品一式、詳細名簿+@アニロワオリジナル、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた
[思考]
第一行動方針:誰か人を探す。
第二行動方針:図書館に行く、誰も見つけられなければ本がある場所へ。
第三行動方針:アニタ、読子、スバル、ティアナ、キャロ、エリオ、はやて、シャマルを探す。
第四行動方針:とりあえず、クアットロや詳細名簿に載っていた危険人物と思しき面子には気をつける。
最終行動方針:打倒タコハゲ、そしてハッピーエンド。
[備考]:詳細名簿+はアニタと読子のページだけ破り取られています。
※詳細名簿+について
『詳細名簿+は、男女別男先あいうえお順に各参加者のプロフィールと顔写真が乗っています。
プロフィールの詳細はもう一つの詳細名簿と違い、各参加者との関係、これまで実行してきた行動、
技能や異能等を中心に事実関係を重視した情報が載っています。
ですが、なぜそういう関係となったのか。なぜその行動をしたのかなどの心理は書かれていません』
152(2): 戦う運命 ◆CDDi1fgMw2 2007/09/25(火) 23:37:40 ID:G43dZ+an(5/5)調 AAS
【F-4、病院前/1日目・深夜】
【衛宮士郎@Fate/staynight】
[状態]:グラップラー
[装備]:強化外骨格「零」(カバン状態)@覚悟のススメ。
[道具]:支給品一式。未確認支給品0〜2。
[思考]
1:特に何も考えていない。
2:誰かみつけ、勝負を挑む。
153: ◆5VEHREaaO2 2007/09/25(火) 23:37:59 ID:J01UDqyO(7/7)調 AAS
投下終了。
>>145>>146>>150は自分の作品ではないので飛ばしてください。
154: 2007/09/25(火) 23:39:38 ID:cU4v9spy(1)調 AAS
了解です
155: 2007/09/25(火) 23:42:13 ID:/AHZQkou(1)調 AAS
>>152
突っ込みどころ大杉wwwwwwwww
156: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 1/6 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 01:06:22 ID:6Qcp1qm4(1/11)調 AAS
振るう暴力を裁きの雷と言い放ち、自身を神と名乗る傲岸不遜な男――ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ。
狂王の実験場に落とされて間もなく一つの命を奪い、月の出る夜空に哄笑を響き渡らせる。
そのけたたましい笑い声にか、それとも彼の足下に転がる死体から広がる異臭のせいか、
そこに一人の男が近づいて来ていた。
簡素な着物に赤いスカーフを纏った長身の東洋人。
片方の手にバックを提げ、もう片方の手には水筒を吊ってゆっくりと道を歩いてくる。
様は静かであったが、その細い瞳に映るは剣呑な揺らめき。
その男の名は戴宗。国際警察機構、最強の九大天王が一人――神行太保・戴宗。
自分に酔っていたムスカも、影の中から月明かりの元へと踏み出されればその男に気付く。
「……なんだ東洋人か。私の世界には必要ないな。ここから帰り次第国ごと滅ぼしてやろう」
無礼で挑発的な発言。だが、戴宗はそんな相手の不遜な態度を無視して静かに問うた。
「こいつをやったのはお前さんかい?」
戴宗が指す「こいつ」とは、勿論彼の眼前に横たわる黒焦げた遺体のこと。
細い目が見つめる先には、まだ若かったであろうと思われる小柄な亡骸が薄煙を上げている。
「神に逆らった愚か者の末路だよ」
にへらと笑いながら答えるムスカの眼には、狂気と自信が満ち溢れ爛と輝いている。
一方、そんな彼へと向けられる戴宗の眼は至って静。
――何時何時此の身が如何なろうと、何処で死のうと誰も悲しまない。だから、如何な任務にも耐えられる。
戴宗が仲間に繰り返し聞かせた言葉であり、また彼自身にとっての矜持でもあり覚悟。
彼は今までこの言葉の通りに生きて来たし、これからもそうであることは変わりはない。
命はすでに国際警察機構に預けた身。例え、死を賭せと命じられても迷いなく殉じる覚悟が彼にはある。
が、しかし! 眼前に横たわる少年はそうではなかったはずだ。いや、ここにいる誰もが!
訳も解らぬままに見知らぬ場所に落とし込み、素性も知らぬ同士を殺し合わせるあの男――螺旋王。
奴も勿論許す事ない大悪。いずれは落とし前ををつけさせなければならぬ!
して、目の前の男。神と嘯き、自分勝手な都合で年少の者をいとも容易く殺めたこいつ。
混乱する機に乗じ、跳梁跋扈して己が勝手な願いを達成せんと無辜の者を襲うこいつ。
こんな奴を何と言う?
簡単明瞭! たった一言――外道と言う。
157: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 2/6 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 01:07:29 ID:6Qcp1qm4(2/11)調 AAS
◆ ◆ ◆
戴宗は片手に提げたバックを落とす。
続いてもう片手に持った虎柄の水筒から一口取って喉を鳴らすと、それも地面に落とす。
そして、空いた両手を握り締め、ゴキリを音を鳴らすと一歩前へと足を踏み出した。
「このラピュタ神に素手で挑もうというのかね?」
対するムスカは、眼前に迫る相手の心の内に秘めたものが読めぬのか余裕綽々。
相対する者の返事を待たずして手を突き出し、稲妻を走らせた。
ドンッ、と響く音とともに身動ぎ一つ取らなかった戴宗の身体に薄煙が上がる――が、それだけだ。
神を名乗る男はこの時初めて目を見開き、意も介せぬように歩みを止めぬ相手にたじろいだ。
戴宗が一歩前に出れば、一歩下がる。もう一歩前に出れば、もう一歩下がる。
神の雷が通じない。何故か――と、ムスカは困惑する。だが真実はそうではない。
雷だからこそ通じないのだ。
国際警察九大天王。その末席に身を置く神行太保・戴宗。またの名を――『人間発電機』
ピタリと足を止め次いで突き出された戴宗の拳が、ブンという羽虫の様な音と共に薄い光を纏う。
その原理はムスカが背負うエレキテル――電磁誘導装置、それと同じ。
異なる点を上げるならば、
エレキテルの方はあくまで誘導装置であって蓄電はできても、それ自体では発電することができぬと言うこと。
そして逆に、戴宗の有する特異な能力はその名の通り自らの身体で以って電気を起こす事ができる。
その発電量。例えば目の前の総合病院。それが使用に必要とする量を賄うことも容易い。
戴宗の全身を駆け巡る電流は身体の中で螺旋を描き、強力な電磁力を発生させる。
そして、エレキテル同様に大気を操り戴宗は拳の先に電磁場によって作り上げた気の拳を纏う。
これが人間発電機と呼ばれる戴宗の力。名づけて――噴射拳。
彼は内に巡る膨大な電力を雷として発するのではなく、己が身体を武器とするために操る。
九大天王の中でも単純戦闘に特化した能力で、末席と言えど、こと単一同士の格闘戦となれば一、二位を争う。
仇敵であるBF団の十傑集においても、彼と格闘戦を演じられるのは衝撃のアルベルトのみと言われるぐらいだ。
その有形無形の圧力に、戴宗と対峙するムスカの頬に冷や汗が垂れる。
しかし、彼もまた伊達に神を名乗る男ではない。
一度効かぬなら二度目を。二度目も効かぬなら三度目をと、再び稲妻を空中に奔らせた――が!
彼の目の前で、戴宗が姿を消した。
放たれた稲妻は虚しく宙に霧散し残光だけを残す。
サングラスをかけているので、閃光に視力を奪われたなどということはない。しかし、見失った。
戴宗は何処に? 霞と消えたか。いや、彼はムスカの背後に立っていた――。
158: 2007/09/26(水) 01:07:39 ID:Nm6iz/Oh(1/7)調 AAS
159: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 3/6 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 01:08:36 ID:6Qcp1qm4(3/11)調 AAS
戴宗は常に人間発電機と呼ばれはしない。彼を呼ぶものは皆こう呼ぶ――神行太保、と。
神行法。それが今の一瞬の種明かし。
強力な電磁の力を脚へと転じればその脚力は常軌を逸し、駆ける速さは音の速さにも達する。
先に拳へと発した様に、気を足元に置けばその歩み神をも目を見張る。故に神行法。
この能力こそ、文字通り彼の右に立つ者は居ない。故に彼は呼ばれる――神行太保・戴宗、と。
彼がそれに気付くよりも疾く戴宗は拳を突き出し、ムスカに衝撃の一撃を見舞った。
神の鉄槌ならぬ、義憤の鉄拳。喰らったムスカはアスファルトの路上を何度も転がる。
次いで倒れた者を鞭打つように降り注ぐのは、爆散したエレキテルの残骸だ。
車に跳ねられた様な衝撃に、指一本動かせなかったムスカではあったが
この期に及んでなお彼の傲慢な姿勢は変わらず、あくまで不敵。その態度は崩さなかった。
「……き、貴様。神に向かって拳を振るうとはこの身の程しらず、め。報いを、受けるぞ」
対する戴宗は一つ嘆息すると、その手をムスカの額へと伸ばす。
「お前さんには、ちぃと眠ってて貰うぜ」
瞬間、電流が戴宗よりムスカへと流れ出し、その衝撃が不敵なムスカの意識を奪った。
「……やーれやれ、だ」
そう一人ごちると、戴宗は気絶したムスカと小さな遺体を抱え上げ目の前の病院へと入り込んだ。
◆ ◆ ◆
冷たいコンクリートの床の上。狭くて暗い物置の中にムスカの身体を横たえると
戴宗は彼が持っていた荷物の検分を始めた。
すでに死んでいた少年――エドの遺体はここではなく霊安室へと預けてきている。
そして、外道であるムスカの命を奪わないのは、何も情けからという訳ではない。
いるかどうかは知れぬが、あの少年の身内や仲間がここにいるやも知れない。
ならば、仇は譲るべきだと……そう考えた結果であった。そして、いなければその時こそ自分が討てばよい、とも。
「なんだこりゃあ……」
まず鞄に手を差し込んで最初に出てきたのが、大量のチョコレートだった。
確かにチョコレートはエネルギー豊富で、この様な状況ならばありがたいものかも知れなかった。
だが、大酒呑みの戴宗はどちらかと言えば辛党で、甘いものは好みではない。
「酒でも出てくりゃあ、ありがたいんだがなぁ……」
とは言いながらも、一つ包みを剥がしては口に放り込む。
世界最強候補の一人である戴宗ではあったが、ここに来てより何やら調子が悪い。
腹が減っているわけでもないというのなら、やはり酒抜きのせいかと戴宗は考える。
よもや何らかの術のせいかも知れぬが、そうなると戴宗には手が出ない。戴宗は根っからの武闘派だ。
160: 2007/09/26(水) 01:09:30 ID:Nm6iz/Oh(2/7)調 AAS
161: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 4/6 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 01:09:47 ID:6Qcp1qm4(4/11)調 AA×
162: 2007/09/26(水) 01:10:02 ID:ZmWUlOMl(1/9)調 AAS
163: 2007/09/26(水) 01:10:14 ID:N2wmH79e(1)調 AAS
164: 2007/09/26(水) 01:10:36 ID:/x0tqocH(1)調 AAS
165: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 5/6 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 01:10:55 ID:6Qcp1qm4(5/11)調 AAS
◆ ◆ ◆
パタン……と、薄い扉が閉まる音がしてからすぐのこと。
立ち上がらないはずの男が事も無げにすっくと立ち上がった。
とても戴宗の鉄拳や電撃を受けていたようには見えない様子だ。
「……くっくっくっ。馬鹿な男め。ラピュタは滅びぬよ。いつまでもな」
サングラスの位置を直すと、男――ムスカは静かに身体を震わして笑い始めた。
その笑いと共に失われていた自信と妄執がまたむくむくと湧き上がって来る。
「不死の酒か、なるほど。これで私も名実ともに神人の仲間入りと言う訳だな」
――不死の酒。ただの人に不死をもたらすと言う、錬金術が生み出した究極の万能薬。
しかもムスカが飲んだものは、知恵の浅い錬金術師が模造した不完全品ではなく完全なる不死の酒。
ムスカは己の右手を見ながらほくそ笑む。
「まさかとは思っていたが、不死は真実だった」
完全な不死者とそうでない者。その差は極めて大きい。
完全な不死者は、不完全な不死者を一方的に『喰う』ことができるのだ。
しかもそれは、相手の命を奪うだけでなく記憶や技術、ありとあらゆるものを奪う事ができるのだ。
ムスカは考える。一人だけではないだろうと、他にもこの実験場には不死者は存在するだろうと。
でなければ意味はない。そして、螺旋王と名乗ったあの男もきっとそうであるに違いない。
ならば、それらを全て喰うことができれば……!
「私はラピュタ王国を復興する神だけに留まらず、――万能の神となるのだ!」
ムスカは想像する。螺旋王の目的を。
神の候補者を集めては、それらに喰らい合わさせて知識を濃縮し、最後の一人を彼が喰らう。
そうやって超常的な知識と力を手に入れてきたのだろうと。ならば――、
「螺旋王ロージェノムよ! 私は宣言しよう!
今回こそは私が貴様を喰らい、その玉座から貴様を引きずり落として見せるとな!」
ムスカは笑う。誰に憚ることなく高らかに声を上げ哄笑する。
まるで現世に生れ落ちてきたばかりの赤子の様に。
「私こそが! ラピュタの王こそが、新世界の神に相応しい!」
166: 2007/09/26(水) 01:11:23 ID:ZmWUlOMl(2/9)調 AAS
167: 2007/09/26(水) 01:11:32 ID:NFDdUXYE(1/12)調 AAS
168: 2007/09/26(水) 01:11:38 ID:I9g48E6/(1)調 AAS
169: 2007/09/26(水) 01:11:59 ID:yDKbF8Cs(1/4)調 AAS
170(2): 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 6/6 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 01:12:03 ID:6Qcp1qm4(6/11)調 AAS
【D-6/総合病院・物置部屋の中/1日目/黎明】
【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ(ムスカ大佐)@天空の城ラピュタ】
[状態]:完全な不死者(※)、気分高揚
[装備]:
[道具]:デイバック、支給品一式(食料-[大量のチョコレート][紅茶])、不死の酒の空き瓶
[思考]:
基本:螺旋王を喰って新世界の神となる
1.他の不死者を探して喰う(酒を探して、誰かに飲ませて喰う)
2.東洋人(戴宗)に復讐する
3.パズーらに復讐する
※耐久力においては、制限がかかっているため完全な不死ではありません
※エドワード・エルリック(@鋼の錬金術師)の遺体は病院の霊安室に移動されました
171: 2007/09/26(水) 01:15:50 ID:IRys0CaF(1)調 AAS
>>149
>>152
>>170
GJ!!
172: 2007/09/26(水) 05:34:28 ID:+5/GIrG0(1)調 AAS
糞スレ乱立させるな
殺人狂
173: ◆UTAZOboXAs 2007/09/26(水) 19:05:47 ID:XEqFzbBX(1/8)調 AAS
(隔離された場所での殺し合い? いーね、いーねぇ、実にいい。最高じゃねぇか)
新しい玩具を与えられた少年のようにウキウキと街を闊歩する男、彼の名をラッド・ルッソという。
表の顔はルッソ・ファミリーきっての殺し屋、裏の顔は欲望の赴くままに生きる狂った享楽殺人者、それがラッド。
そんな彼にとって、バトルロワイヤルの舞台は素敵なテーマパークでしかなかった。
ラッドの瞼の裏に浮かぶのは自信満々のモロトフの笑み、無惨に散った彼は最期まで自分の優位を疑っていなかった。
この場所にはそんな奴らがごろごろしている、それを自由に殺してまわれる――まさにラッドにとっての天国だ。
そして、同時にモロトフは相当な実力者だった。
螺旋王に迫った時の瞬発力、飛び切りの威力の光線、ラッドが相対したところで一瞬で葬られてしまうだろう。
つまりこの場所では、ラッド自身もいつも以上に死に近い場所にいる。いつゴミのように殺されるか分からないということだ。
だがそれさえもラッドが喜ぶ要因にしかならない。殺すか殺されるかの緊張感、それはラッドが大好きなものなのだから。
結果、ラッドはゲームがはじまった直後から獲物を求めて夜の街を徘徊している。
デイパックをまさぐって一本のナイフを取り出すなり走り出したその姿は、まるで早く遊びたくてうずうずしている子供のようだった。
ラッドの目的は一つ、螺旋王を殺す、それだけだ。参加者を殺して殺して殺しまくる事はラッドにとって過程にすぎない。
他人を殺し合わせて自分は高みの見物、モロトフなど歯牙にもかけないという態度、螺旋王はラッドが蛇蝎のごとく忌み嫌う類の人間だ。
螺旋王を観測者の立場から引き摺り下ろし、殺す。それがラッドの頭の中では規定事項なのだ。
KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! KILL! 抑えきれない殺意を身に纏いラッドは獲物を探す。
174: ◆UTAZOboXAs 2007/09/26(水) 19:07:10 ID:XEqFzbBX(2/8)調 AAS
そしてゲーム開始から十数分後、ついにラッドに見初められてしまった哀れな犠牲者が現れる。
街灯に照らされる道路の脇を、銃を構え慎重に歩いている少年、犠牲者の名前は高嶺清麿。
何の自信が有るのか周囲の確認もせずに堂々と夜道を歩く。ここが殺し合いの舞台でなく、アメリカの一都市だったとしても実に危険極まりない行動だ。
暢気に生きてきた少年が不相応な武器を手に入れたことで自分が特別な者になったと思い込んでいる、清麿の後ろ姿からラッドはそう判断した。
背中から滲み出ている緩い雰囲気、死という冷たい現実を理解していなそうな子供、無意識に舌なめずりをするラッド。
そして清麿の注意が背後から逸れた瞬間を見計らって、ラッドは行動を起こした。
「よ――――――ぅ坊や、夜道は危ないぜぇ……何せ、俺みたいな危ない奴がごろごろしてるからなぁ」
後ろから忍び寄り、清麿が振り向くよりもはやく無防備な首筋にナイフを突きつける。
刃物を突きつけられた清麿の身体が僅かに震える、その感触に喜悦の笑みを浮かべながらラッドは言葉を続ける。
「子猫ちゃんみたいにビクビク震えちゃってさぉ、可愛いったらありゃしないぜ。
さっきまで勇ましく武器を構えてたのによぉ、これじゃあ折角の武器が可哀想だろ。なぁ、そう思わないのか? どうなんだよお―?
というわけでこの素敵な銃は俺が貰いま―す、ありがとよ。ああ、心配はしなくていいぜ。今後は俺が存分に有効活用してやるからな。
ん、有効活用ってどれくらい使えば『有効』になるんだ? 百人? 五百人? まさか千人以上殺さなきゃいけね―のか?
やっべ、そんなに殺したら銃の方がいかれちまうよ! 悪いな、今の無し、有効活用は無理! 仕方ないからこの銃は精々有効利用させてもらうぜ! さて――」
相手が返事をする暇を与えずに、矢継ぎ早に語るラッド。
獲物を前にハイになっているその姿は紛れもない快楽殺人者である。
そしてそんな狂人と相対する事になってしまった不幸な少年、高嶺清麿。
彼はラッドのスピーチを微動だにせずに静かに聴いていた。怯えも怒りもせず、ただ静かに聴いていた。
黙考する清麿、彼は果たしてその心中で何を考えているのか? だがそんな清麿の反応を全く気にせずにラッドは語り続ける。
175: 2007/09/26(水) 19:08:55 ID:NFDdUXYE(2/12)調 AAS
176: ◆UTAZOboXAs 2007/09/26(水) 19:09:00 ID:XEqFzbBX(3/8)調 AAS
「お前はこう思ってただろ『こんなに凄ぇ武器を持っていれば誰にも負けるはずがない、俺は強い、俺は死なない、つまり俺は安全だ』ってなあ!
それでなっ、俺にとっては超ハッピー、お前にとってはアンハッピーなことにそういう奴を殺すのが俺は大好きなんだ。
という事で俺は今からお前を殺しま――ス! でよぉ、その間お前はどうするんだ? 逃げる? 抵抗する? 諦めて死ぬ? 俺と殺し合う?
自殺してみる? 命乞いする? 謝る? 泣き叫ぶ? 怖い? 悔しい? 切ない? それとも怒ってる? なあ、どうなんだよ――?」
そうして存分に語り尽くしたラッドは気分も上々に話を終えた。
では、獲物との触れ合いに満足したら次はどうするのか――最後の仕事に、実際に清麿を殺すという作業に取り掛かるに決まっているではないか。
だが殺すのに必要な動作は腕に少し力を入れるだけだ、パーティの最初の殺しとしてはあまりに味気ない。
だからラッドはあえて清麿の正面に身を移した、清麿の最期の表情を脳裏に強く焼き付けるためにだ。
しかしラッドの清麿殺害ショーはここで一時停止する事になる。
なぜなら覗き込んだラッドが目の当たりにしたのは、恐怖に震える少年の顔ではなく、死を覚悟しつつもそれに必死で抗おうとする戦士の顔であったのだからだ。
清麿をただの少年だと思い込んでいたラッドからすれば正に青天の霹靂だ。軽い朝食をとろうと豚を料理していたら、それが突然理性を持った人間に化けてしまったのだから。
流石にこれにはラッドも動揺し、表情が僅かに崩れる。それを機とみたのか、おもむろに清麿は口を開いた。
「俺は……死にたくない。俺が死んでも、たぶんみんなは俺を覚えていてくれる、俺の死を悲しんでくれる。
それはガッシュに会う前の俺からすれば本当に夢のような事だから、嬉しい、凄く嬉しいんだ…………でも、それじゃ駄目なんだ。
みんなと過ごす喜びを思い出したから、みんながいい奴だって知ってるから、みんなには笑っていてほしいから悲しませたくないから――俺は死にたくない」
ハイテンションに言葉を次々と吐きだしていたラッドの喋り方とは裏腹に、清麿は一語一語がはっきりと相手に聞こえるに抑揚をつけてゆっくりと喋る。
ラッドの自分の考えがしっかりと伝わるように細心の注意を払って清麿は言葉を紡ぐ。
177: ◆UTAZOboXAs 2007/09/26(水) 19:10:17 ID:XEqFzbBX(4/8)調 AAS
「それにガッシュと約束してるんだ。あいつが優しい王様になるのを俺は手伝う。だからまずは螺旋王って奴を倒して日本に帰らなくちゃいけない。
そして実のところ俺自身があのおっさんを看過できない。無理矢理人を集めて殺し合いを強制し、それを実験だゲームだと称する。
螺旋王は俺が今までに出会った相手の中で……一番の悪だ。そんな悪を俺とガッシュは絶対に許さない。仲間を集めて、必ず打倒する!
そして、俺はまずあんたに仲間になってほしい。その力を人殺しに使うのではなく、俺たちのために貸してくれないか?」
行われたのは説得もとい勧誘だ。相手は殺人鬼、当然失敗した場合に清麿の命はない。
だがそれは清麿にとって些事でしかない、ガッシュと共に魔界の王を目指す事を決めた時点で死ぬ覚悟はできている。
だからリスク覚悟で想いを伝えた。真の悪人でさえなければ話は通じる。
例え相手が殺し合いにのっている人間だとしても、誠意をもって接すれば心は通い合うはず――それが清麿の導き出した答え。
(あれあれあれあれぇ? なんなのコイツ? なに一端の戦士みたいな顔しちゃってんの?
おっかしいなぁ? どう見てもゆるゆるだよなぁ? 群れるだけ群れて安心してる羊の臭いがプンプンしてるよなぁ?
口を開いても出てくるのは夢想論だしよ、いつもの箱入りのお坊ちゃんと何も変わんねーはずだよなぁ?
なのになんでそんな煮るなり焼くなり好きにしろって目をしてんだよっ! つまんね―じゃん! しらけてきたっつ―の!)
だが清麿の願い空しくラッドに話は通じていなかった。
たしかにラッドは情もあれば愛もある人間、真の悪人と呼べるほど悪に染まってはいない。
しかし……ラッドは狂人だった。考え方からして常人とは一線を画する。
ラッドにとって重要なのは清麿が殺すに値する人間かどうかのみ、そしてそれを判断するのはラッドの直観。
清麿の命を賭けた身の上話も、ラッドにとっては無意味な単語の羅列でしかなかった。
よってラッドの返事は、当然清麿には好ましくないものになる。
「ハぁ? なんで? それってなんか俺に得あんの? お前が何かしてくれんの?
いや口は開くな、答えなくていい。お前に何も期待してないから、だからお前は何もしなくていい。
ただ俺に殺されてくれればいいだけだから喋る必要なんてない、理解したか?」
交渉は決裂した。清麿の首に今も突きつけられているナイフ、その握りに力がかかる。
178: 2007/09/26(水) 19:10:33 ID:NFDdUXYE(3/12)調 AAS
179: 2007/09/26(水) 19:10:57 ID:66+euwjl(1)調 AAS
180: 2007/09/26(水) 19:11:00 ID:4szXmP3d(1/10)調 AAS
181: 2007/09/26(水) 19:11:13 ID:OUlZ6arW(1/2)調 AAS
182: ◆UTAZOboXAs 2007/09/26(水) 19:11:25 ID:XEqFzbBX(5/8)調 AAS
――だがそれ以上の動きはない。
最悪の答えを突きつけられても清麿は動かない、ラッドを真正面から見据えるのみ。
そして対するラッドも動かない、いまだに清麿という人間をはかりかねている。
死を覚悟している者を殺すのは彼の趣味ではない、殺したくない。
死を身近に感じずにぬくぬくと生きている奴は絶好の獲物だ見逃せない、絶対に殺す。
しかしいくら考えたところで答えはでない……だからラッドは無理矢理答えを出すことに決めた。
「ハハ……ハハハ……ヒハハハ、畜生っ! 苛立つぜぇ! イライラするのは身体に悪いってのによォ!
…………ったく、解った、良く解った。俺はお前を殺したい、でもお前は死にたくない。平行線だ、お前も困るだろ?
だから取引だ。お前の覚悟を見せろ、このナイフで片手の指を全部掻っ切れ。それで俺が満足したら仲間にでもなんでもなってやるよ」
そう言い放ち、ナイフを道路に放り投げる。
表向きは有りがちな話だ。要求をするのならそれなりの誠意を見せろ、というやつだ。
しかし、勿論ラッドの目的は違う。これはラッドが気分良く清麿を殺すための儀式なのだ。
――自らの手で五本の指を切断する。
一見、最初の指を切り落とす勇気さえあれば、後は同じ事を繰り返すだけなので何とか可能な事のように思える。
だが、事実は違う。一本目は踏ん切りさえつけば誰にでも切り落とせる――二本目以降が真の地獄なのだ。
一本目を切断した時の痛みが絶えずフラッシュバックし、恐怖と身体の拒否反応が精神を蝕む。
その状態で指の切断を続ける――不可能だ。あまりの恐怖と激痛に耐え切れずに恐慌状態に陥る、それが末路。
そんな恐慌状態に陥って、一点の迷いもない眼差しと覚悟を感じさせる表情を失い、ただの緩い人間になった清麿をラッドは殺す。
ラッド自身は手を下していないのに化けの皮が剥がれた、所詮はその程度であり清麿は最初から温い人間だった、という訳だ。
では、もし清麿が見事やり遂げた場合にラッドはどうするのか? 清麿の覚悟が本物だとするとあながちありえない話ではない。
しかし、ラッドはその場合の事は殆ど考えていない。自分にとって面白くない場合の事をわざわざ考えるなんて馬鹿馬鹿しいからだ。
だがおそらくは、緊張がきれて気絶し手から血を流しながら倒れている清麿、彼を放置していくことになるだろう。
殺意の対象でなくなった以上は興味がないし、仲間でも友達でも婚約者でもない奴を手当てしてやる理由もない――
だがこの要求に対して清麿がとった行動は、ラッドの予想の斜め上をいくものだった。
183: 2007/09/26(水) 19:13:09 ID:OUlZ6arW(2/2)調 AAS
184: 2007/09/26(水) 19:13:18 ID:XiLOJJY9(1/3)調 AAS
185: ◆UTAZOboXAs 2007/09/26(水) 19:14:12 ID:XEqFzbBX(6/8)調 AAS
ラッドが地面にナイフ投げやるやいなや、清麿はそれを拾い上げ――自らの右耳にその刃を当てたのだ。
そして一息もつかず、即座に耳に刃を入れる。新品のナイフの鋭利な刃は骨の無い柔らかな肉を易々と切り裂き、清麿の右耳は頭部から切断された。
予め決まっていた事を清麿はただなぞっただけ、そんな事を考えてしまう程に清麿の一連の挙動には全く迷いがなかった。
予想外の出来事に動きを止めるラッド、そんな彼に対して清麿は再び口を開く。
傷口からポタポタと垂れる鮮血を拭おうともせず、今まで通りにラッドを真正面から見据えながらだ。
「指は駄目なんだ。この指は、この手は……魔本を持つために……ガッシュと共に戦うために……絶対に失えない。
でも……! それ以外の場所ならこの耳のように、目でも足でも何だってくれてやるっ! 俺はここで終わりたくない!
ガッシュと共に螺旋王を倒し元の世界に戻る……そのためなら俺自身がどれほど傷つこうと構わない! それが俺の覚悟だっっ! 」
清麿の激しい啖呵、それが終わったときに訪れたのは静寂だ。
聞こえるものも動くものも周囲には何もない。僅かな風のみを感じながら、一メートルも離れていない至近距離で二人は睨みあう。
曇りのない真剣な眼差しに激情をこめて睨む清麿。痛みに僅かに顔を顰めてはいるが、たった今身体の一部を喪失したようにはとても見えない。
そんな真摯な眼差しをラッドは黙って受け止めている。清麿の耳から垂れる血だけが時間の経過を示すこの睨みあいは永遠に続くかのように思えた。
……しかしそれから数分後、夜の街にはラッドの高らかな哄笑が響いていた。
「ハハッハハハハハハハハハハハハハハハ……うぉぉっぉうぉぉっぉ、オマエ馬鹿? それとも天才? つ―かなんで耳切ってんの?
訳わかんなくね? どう考えたらそうなるの? ヒハッ……ハハハハ……やっべ、やっべぇ、緩い馬鹿かと思えばすげぇべ。
ハッ! サイコ―、マジ最高、超面白れぇぇぇ―――――テンション上がってきたぜ―! ハハ……ヒャハハハハハハハハハハ――――」
笑って笑って笑って笑って、狂ったようにラッドは笑い続けている。清麿に向けられていた殺意など影も形もない。
その心底楽しそうな笑い声はラッドの心境を如実に伝え、聞く者にもそう悪い気分は与えないのだが……激しく場違いだった。
「おい、そろそろ笑うのをやめて答えを聞かせてくれないか」
いい加減業を煮やした清麿が呼びかけ、やっとラッドの笑い声は止んだ。
そして清麿は殺意を収めたラッドを相手に詳しい情報交換や今後の方針について話をしようとする。
しかし次のラッドの言葉は、清麿の意気込みを消沈させた。
「……おぅ、無視してゴメンな! おかげでテンションが大分溜まった、ありがとう、本ッ当にありがとう!
これで気分よォく思う存分に人を殺して回れるぜ。ってことでじゃあな! ……傷は早めに手当てしておけよぉ――――」
あろうことか爽やかな笑顔で上の台詞を放つなり、スキップをしながら去っていこうとしたのだ。
最早どこから突っ込めばいいのか解らない。我慢に我慢を重ねてきた清麿でさえも慌てて呼び止めた事を後悔したほどである。
だが仲間になるという約束をした事を持ち出すと、びっくりするほどあっさりとラッドは清麿の仲間になることを了承した。
そして清麿が自己紹介と情報交換を行う旨を伝え、移動中にそれを行うことを決める。
移動の目的地は落ち着ける場所、意外にもラッドの方から清麿の傷を早めに手当した方がいいという提案が出たのだ。
少し釈然としない思いを抱えるものの清麿に異論があるはずもない。
そして二人は歩き出した、ひとまずは傷の手当てをする場所を探すために、やがては螺旋王を打倒するために――
186: 2007/09/26(水) 19:14:21 ID:NFDdUXYE(4/12)調 AAS
187: ◆UTAZOboXAs 2007/09/26(水) 19:15:20 ID:XEqFzbBX(7/8)調 AAS
「そういえばお前武器もってないな。武器は大事だぜ。人間は武器と共に進化してきた、武器あっての人間だ。
マシンガンが一丁あれば、そこら辺の悪ガキにだってジャック・ディンプシーをぶち殺せるんだぜ。ちょっと待ってろ、余ってる俺の武器をやるよ。」
「俺の支給品はあんたに奪われたんだけどな。……っと、有難う。ん、これってマシンガンじゃないか。なんで使わないんだ?」
「気がのらねえ。さっきはナイフで切り裂いてやりたい気分だったし、今は相手を殴り殺したい気分だ。
シュッッ……シュッッ……シュシュシュッっ……折角の舞台なんだ、色々やって目いっぱい楽しまないと損だと思わないか?」
「やっぱり俺にはあんたが理解できない……ともかく殺しだけは絶対にやめてくれよ……」
【高嶺清麿@金色のガッシュ】
【状態:螺旋王に対する激怒、右耳欠損、軽い貧血】
【装備:イングラムM10(9mmパラベラム弾32/32)】
【所持品:イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、支給品一式(ランダム支給品0〜2を含む)】
【所持品:清麿の右耳、支給品一式】
【思考・行動】
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
1:ラッドと情報交換をしたい
2:ひとまずは傷の手当をできる場所を探す
3:ガッシュ、フォレゴレとの合流
4:螺旋王に挑むための仲間を集める、その過程で出る犠牲者は極力減らしたい
【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
【状態:健康】
【装備:無し】
【所持品:超電導ライフル@天元突破グレンラガン、ファイティングナイフ、支給品一式(ランダム支給品0〜1を含む)】
【思考・行動】
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
1:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す
2:ひとまずは仲間である清麿に同行
188: 2007/09/26(水) 19:18:06 ID:T9DNiP6A(1)調 AAS
189: ◆UTAZOboXAs 2007/09/26(水) 19:31:00 ID:XEqFzbBX(8/8)調 AAS
状態表訂正
【8-A 路上 一日目 深夜】
【高嶺清麿@金色のガッシュ】
【状態:螺旋王に対する激怒、右耳欠損、軽い貧血】
【装備:イングラムM10(9mmパラベラム弾32/32)】
【所持品:イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、支給品一式(ランダム支給品0〜2を含む)】
【所持品:清麿の右耳、支給品一式】
【思考・行動】
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
1:ラッドと情報交換をしたい
2:ひとまずは傷の手当をできる場所を探す
3:ガッシュ、フォレゴレとの合流
4:螺旋王に挑むための仲間を集める、その過程で出る犠牲者は極力減らしたい
※石版編終了後のどこかから呼ばれています
【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
【状態:健康】
【装備:無し】
【所持品:超電導ライフル@天元突破グレンラガン、ファイティングナイフ、支給品一式(ランダム支給品0〜1を含む)】
【思考・行動】
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
1:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す
2:ひとまずは仲間である清麿に同行
※フライング・プッシーフットに乗り込む少し前から呼ばれています
190: 2007/09/26(水) 20:19:59 ID:xg84aBz9(1)調 AAS
いいからしたらばに帰れ、な
191: 2007/09/26(水) 20:22:36 ID:XiLOJJY9(2/3)調 AAS
192: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 1/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 20:23:43 ID:6Qcp1qm4(7/11)調 AAS
振るう暴力を裁きの雷と言い放ち、自身を神と名乗る傲岸不遜な男――ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ。
狂王の実験場に落とされて間もなく一つの命を奪い、月の出る夜空に哄笑を響き渡らせる。
そのけたたましい笑い声にか、それとも彼の足下に転がる死体から広がる異臭のせいか、
そこに一人の男が近づいて来ていた。
簡素な着物に赤いスカーフを纏った長身の東洋人。
片方の手にバックを提げ、もう片方の手には水筒を吊ってゆっくりと道を歩いてくる。
様は静かであったが、その細い瞳に映るは剣呑な揺らめき。
その男の名は戴宗。国際警察機構、最強の九大天王が一人――神行太保・戴宗。
自分に酔っていたムスカも、影の中から月明かりの元へと踏み出されればその男に気付く。
「……なんだ東洋人か。私の世界には必要ないな。ここから帰り次第国ごと滅ぼしてやろう」
無礼で挑発的な発言。だが、戴宗はそんな相手の不遜な態度を無視して静かに問うた。
「こいつをやったのはお前さんかい?」
戴宗が指す「こいつ」とは、勿論彼の眼前に横たわる黒焦げた遺体のこと。
細い目が見つめる先には、まだ若かったであろうと思われる小柄な亡骸が薄煙を上げている。
「神に逆らった愚か者の末路だよ」
にへらと笑いながら答えるムスカの眼には、狂気と自信が満ち溢れ爛と輝いている。
一方、そんな彼へと向けられる戴宗の眼は至って静。
――何時何時此の身が如何なろうと、何処で死のうと誰も悲しまない。だから、如何な任務にも耐えられる。
戴宗が仲間に繰り返し聞かせた言葉であり、また彼自身にとっての矜持でもあり覚悟。
彼は今までこの言葉の通りに生きて来たし、これからもそうであることは変わりはない。
命はすでに国際警察機構に預けた身。例え、死を賭せと命じられても迷いなく殉じる覚悟が彼にはある。
が、しかし! 眼前に横たわる少年はそうではなかったはずだ。いや、ここにいる誰もが!
訳も解らぬままに見知らぬ場所に落とし込み、素性も知らぬ同士を殺し合わせるあの男――螺旋王。
奴も勿論許す事ない大悪。いずれは落とし前ををつけさせなければならぬ!
して、目の前の男。神と嘯き、自分勝手な都合で年少の者をいとも容易く殺めたこいつ。
混乱する機に乗じ、跳梁跋扈して己が勝手な願いを達成せんと無辜の者を襲うこいつ。
こんな奴を何と言う?
簡単明瞭! たった一言――外道と言う。
193: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 2/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 20:24:50 ID:6Qcp1qm4(8/11)調 AAS
◆ ◆ ◆
戴宗は片手に提げたバックを落とす。
続いてもう片手に持った虎柄の水筒から一口取って喉を鳴らすと、それも地面に落とす。
そして、空いた両手を握り締め、ゴキリを音を鳴らすと一歩前へと足を踏み出した。
「このラピュタ神に素手で挑もうというのかね?」
対するムスカは、眼前に迫る相手の心の内に秘めたものが読めぬのか余裕綽々。
相対する者の返事を待たずして手を突き出し、稲妻を走らせた。
ドンッ、と響く音とともに身動ぎ一つ取らなかった戴宗の身体に薄煙が上がる――が、それだけだ。
神を名乗る男はこの時初めて目を見開き、意も介せぬように歩みを止めぬ相手にたじろいだ。
戴宗が一歩前に出れば、一歩下がる。もう一歩前に出れば、もう一歩下がる。
神の雷が通じない。何故か――と、ムスカは困惑する。だが真実はそうではない。
雷だからこそ通じないのだ。
国際警察九大天王。その末席に身を置く神行太保・戴宗。またの名を――『人間発電機』
ピタリと足を止め次いで突き出された戴宗の拳が、ブンという羽虫の様な音と共に薄い光を纏う。
その原理はムスカが背負うエレキテル――電磁誘導装置、それと同じ。
異なる点を上げるならば、
エレキテルの方はあくまで誘導装置であって蓄電はできても、それ自体では発電することができぬと言うこと。
そして逆に、戴宗の有する特異な能力はその名の通り自らの身体で以って電気を起こす事ができる。
その発電量。例えば目の前の総合病院。それが使用に必要とする量を賄うことも容易い。
戴宗の全身を駆け巡る電流は身体の中で螺旋を描き、強力な電磁力を発生させる。
そして、エレキテル同様に大気を操り戴宗は拳の先に電磁場によって作り上げた気の拳を纏う。
これが人間発電機と呼ばれる戴宗の力。名づけて――噴射拳。
彼は内に巡る膨大な電力を雷として発するのではなく、己が身体を武器とするために操る。
九大天王の中でも単純戦闘に特化した能力で、末席と言えど、こと単一同士の格闘戦となれば一、二位を争う。
仇敵であるBF団の十傑集においても、彼と格闘戦を演じられるのは衝撃のアルベルトのみと言われるぐらいだ。
その有形無形の圧力に、戴宗と対峙するムスカの頬に冷や汗が垂れる。
しかし、彼もまた伊達に神を名乗る男ではない。
一度効かぬなら二度目を。二度目も効かぬなら三度目をと、再び稲妻を空中に奔らせた――が!
彼の目の前で、戴宗が姿を消した。
放たれた稲妻は虚しく宙に霧散し残光だけを残す。
サングラスをかけているので、閃光に視力を奪われたなどということはない。しかし、見失った。
戴宗は何処に? 霞と消えたか。いや、彼はムスカの背後に立っていた――。
194: 2007/09/26(水) 20:25:29 ID:8vz/NDqK(1/3)調 AAS
195: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 3/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 20:26:38 ID:6Qcp1qm4(9/11)調 AAS
戴宗は常に人間発電機と呼ばれはしない。彼を呼ぶものは皆こう呼ぶ――神行太保、と。
神行法。それが今の一瞬の種明かし。
強力な電磁の力を脚へと転じればその脚力は常軌を逸し、駆ける速さは音の速さにも達する。
先に拳へと発した様に、気を足元に置けばその歩み神をも目を見張る。故に神行法。
この能力こそ、文字通り彼の右に立つ者は居ない。故に彼は呼ばれる――神行太保・戴宗、と。
彼がそれに気付くよりも疾く戴宗は拳を突き出し、ムスカに衝撃の一撃を見舞った。
神の鉄槌ならぬ、義憤の鉄拳。喰らったムスカはアスファルトの路上を何度も転がる。
次いで倒れた者を鞭打つように降り注ぐのは、爆散したエレキテルの残骸だ。
車に跳ねられた様な衝撃に、指一本動かせなかったムスカではあったが
この期に及んでなお彼の傲慢な姿勢は変わらず、あくまで不敵。その態度は崩さなかった。
「……き、貴様。神に向かって拳を振るうとはこの身の程しらず、め。報いを、受けるぞ」
対する戴宗は一つ嘆息すると、その手をムスカの額へと伸ばす。
「お前さんには、ちぃと眠ってて貰うぜ」
瞬間、電流が戴宗よりムスカへと流れ出し、その衝撃が不敵なムスカの意識を奪った。
「……やーれやれ、だ」
そう一人ごちると、戴宗は気絶したムスカと小さな遺体を抱え上げ目の前の病院へと入り込んだ。
◆ ◆ ◆
冷たいコンクリートの床の上。狭くて暗い物置の中にムスカの身体を横たえると
戴宗は彼が持っていた荷物の検分を始めた。
すでに死んでいた少年――エドの遺体はここではなく霊安室へと預けてきている。
そして、外道であるムスカの命を奪わないのは、何も情けからという訳ではない。
いるかどうかは知れぬが、あの少年の身内や仲間がここにいるやも知れない。
ならば、仇は譲るべきだと……そう考えた結果であった。そして、いなければその時こそ自分が討てばよい、とも。
「なんだこりゃあ……」
まず鞄に手を差し込んで最初に出てきたのが、大量のチョコレートだった。
確かにチョコレートはエネルギー豊富で、この様な状況ならばありがたいものかも知れなかった。
だが、大酒呑みの戴宗はどちらかと言えば辛党で、甘いものは好みではない。
「酒でも出てくりゃあ、ありがたいんだがなぁ……」
とは言いながらも、一つ包みを剥がしては口に放り込む。
世界最強候補の一人である戴宗ではあったが、ここに来てより何やら調子が悪い。
腹が減っているわけでもないというのなら、やはり酒抜きのせいかと戴宗は考える。
よもや何らかの術のせいかも知れぬが、そうなると戴宗には手が出ない。戴宗は根っからの武闘派だ。
196: 2007/09/26(水) 20:26:46 ID:4szXmP3d(2/10)調 AAS
197: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 4/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 20:27:45 ID:6Qcp1qm4(10/11)調 AA×
198: 嗚呼。それにしても酒が欲しい…… 5/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/09/26(水) 20:28:52 ID:6Qcp1qm4(11/11)調 AAS
◆ ◆ ◆
パタン……と、薄い扉が閉まる音がしてからしばらくのこと。
戴宗に痛めつけられ、ピクリとも動けなかったはずの男が弱々しいながらも身体を起こした。
「よ、よくも……あいつめ。私は神なんだ、ぞ」
サングラスの位置を直すと、男――ムスカは彼を痛めつけた東洋人が去った扉を睨み付ける。
「……しかし、幸運の女神はまだ私を見放してはいないようだ」
何故、ムスカが戴宗の鉄拳や電撃を受けたにも関わらず、こうも早く回復できたのか?
鉄拳の一撃は元よりそれ程の威力は込められてなかった。戴宗の目的はあくまで武器を奪う事をだったからだ。
しかし、次の電撃はそうではない。殺しはしないまでもそう簡単には回復できないだけの量を戴宗は込めた。
ムスカは自信の両の手の平を見つめる。エレキテルの力ではあるが、何度かここから雷を放ったのだ。
その雷――何故、ダメージになるのか? 答えは簡単。電気抵抗がそこに熱を生み出すからだ。
電流が全身を駆け巡ることによって発生する熱。それによって、一人の少年は命を失った。
そしてその雷を放ったムスカは、エレキテルのもたらす二次作用として電流に対する抵抗が少ない体質へと
変質していたのだった。
それは、エレキテルを装備し全身に電気を纏う者に対する、エレキテル装置そのものの電磁ガード。
その不可視のフェイルセイフが、あの時エレキテルが破壊された直後も身体に少し残っていたのだ。
結果、ムスカの身体を駆け巡った電流は地に拡散し、戴宗の意図したものよりもはるかに少ないものとなった。
何度か手を握り身体が動く事を確認すると、ムスカはズボンの裾に手を伸ばして、
隠し持っていた1本の投げナイフを取り出した。
僅かながらに焦げが浮いてはいるが、使用に当たっては問題ない。
「待っていろよ。神への反逆は、神罰を持って迎えられる事を貴様に思い知らせてやる」
そう言うと、ムスカは自分の鞄を背負いなおし、ナイフを片手に扉へと立ち向かった。
【D-6/総合病院・物置部屋の中/1日目/黎明】
【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ(ムスカ大佐)@天空の城ラピュタ】
[状態]:激しく疲労、背中に打撲
[装備]:アサシンナイフ@さよなら絶望先生
[道具]:デイバック、支給品一式(食料-[大量のチョコレート][紅茶])、葡萄酒の空き瓶
[思考]:
基本:すべての生きとし生ける者に、ラピュタ神の力を見せつける
1.まずは、この部屋より脱出する
2.東洋人(戴宗)に復讐する
3.パズーらに復讐する
最終:最後まで生き残り、ロージェノムに神の怒りを与える
※エドワード・エルリック(@鋼の錬金術師)の遺体は病院の霊安室に移動されました
※エドワード・エルリック(@鋼の錬金術師)の荷物は病院の前の道路上に放置されています
199: 2007/09/26(水) 20:32:17 ID:wEaZLpKJ(1/13)調 AAS
200: 2007/09/26(水) 20:39:36 ID:Wv8WnCwS(1)調 AAS
あー、
したらばに投稿できるようになったんで
そっちに移動してくれ
201: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:16:49 ID:jvOw9Ix5(1/11)調 AAS
才能とは、必ずしも本人が望むものが与えられるわけではない。
偏食家なのに料理が上手かったり、荒事が嫌いなのに腕っ節が強かったり、欠片の興味もないのに美的感覚に優れていたり。
本が嫌いなのに、『紙』が使えたり。
別に、紙が使えること自体を疎ましく思ってきたわけではない。ただ、違和感を感じる程度のことだ。
姉二人は、世間一般で言うところの所謂『ビブリオマニア(蔵書狂)』、それも真性。
好きこそ得意なれ、とは言うが、どんな本が好きだとしても、本の原質たる『紙』を自由自在に操れるわけがない。
好意的に解釈して、超能力。それでいて、異質。偏見の意を込めるなら、化け物。
誰に非難されたわけでもない。違和感は覚えど、不快感を得るような能力でもない。便利な力、そして仕事道具だ。
話はちょっと変わるが、昔の日本には、二宮金次郎という人物がいたらしい。小学校などによく置かれている、あの銅像の少年だ。
よくは知らないが貧しい家に育った農民らしく、勉強をする暇もなく労働に勤しむ毎日だったそうだ。
そこで金次郎は、薪を運ぶ移動時間に、本を読んで勉強することを考えたそうだ。なんという発想。
金次郎の像を初めて見たときは、そうまでして本が読みたいか、と別の意味で感心したものだ。
昔の人の考えることは分からない。異国であろうがなかろうが。
「……ねぇー、毎日そんなに本読んで、楽しい?」
満天の星空を険しい形相で睨みながら、気だるそうに声を漏らす。
問いかけの形式ではあったが、その対象は学校の校庭に佇む二宮金次郎の像――つまり、これは単なる独り言だ。
銅像である金次郎に、応答の手段はない。理解する頭もない。そもそも聞く耳もない。
「あたしの周りってさ、やたら本好きな人が多いんだよね。お姉ちゃんに、同居人に、友達に」
指を一つ一つ折りながら、その人数を数えてみると、ほとんどの顔見知りが本を好いていることが発覚する。
「……はぁー」
今さら、本当に今さらだが、みんなどうしてそんなに本が好きなのかな、と頭を捻った。
つい先日の話になるが、通っている中学校で授業参観があった。その日の授業のテーマが、読書感想文だったのだ。
最初は乗り気ではなかったが、友人に背中を押され、珍しく率先して本を読もうとした。
そして、拙いながらも感想文を書いた。大勢の目の前で披露もした。でも、やはり、
アニタ・キングは、本が嫌いだった。
「漫画ばっか読んでると馬鹿になるってのは聞いたことあるけどさ、本ばっか読んでるとウチのお姉ちゃんたちみたいにグータラになっちゃうよ」
――螺旋王ロージェノムによって開幕された、殺し合いという名のストーリー。そのオープニング後。
アニタは、どことも知らぬ学校の校庭に飛ばされていた。
見た目はアニタの通う西浜中学校に似てなくもなかったが、日本の学校など皆似偏った造りをしている。
アニタの隣でいつもと変わりなく本を読んでいる二宮金次郎とて、作り手が同一人物かは知らぬが、いくつの学校でこうしていることか。
分かるのは、ここが日本のどこか、もしくは日本の地形を真似て作り上げた舞台であるということのみ。
根拠はこの銅像だ。いくら金次郎が有名とはいえ、日本以外の国ににまで浸透しているはずがない。
じゃあ、あの螺旋王とかいうおじさんは日本人なのだろうか。いや、国籍などどうでもいい。
殺し合いとか、馬鹿じゃないの? アニタが抱いた感想は、それのみだった。
人が変身して、ビームを放って、それだけでも御伽話なのに、螺旋王は複数の無関係者を集めて殺し合いをやれという。
きっと、本の読みすぎなのだろう。孤島殺人事件とか、くだらないサスペンスものに影響されたに違いない。
紙上の創作物に感化されて、現実にまでそれを持ち込む。悪い意味で感受性豊かな人間はたまにいるが、これはその極みだ。
「さっさと帰りたいけど……ねねねぇ置いていったらミーねぇもマーねぇも怒るだろうしなぁ。っていうか、ねねねぇが一番怒る」
202: 2007/09/26(水) 22:17:03 ID:4szXmP3d(3/10)調 AAS
203: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:18:11 ID:jvOw9Ix5(2/11)調 AAS
この地に飛ばされてからも冷静に――ただ状況を冷めて見ていただけだが――振る舞ったアニタは、現在位置、参加者、支給品、各基本情報を確認し、この先の指針を決めた。
結論として、殺し合いには乗らない。あの変身男のようなヤツとやり合う気など毛頭ないし、力のない弱者を殺めるのも気持ちのいいものではない。
だからといって絶望的になることもなく、とりあえず唯一の知り合いであり、警護対象であるねねねを捜そう、という結論に至った。
菫川ねねね。現役――現在は活動休止中だが――の小説家であり、アニタが住まう家の主。
アニタは香港でねねねと知り合い、半ば成り行きで、日本を訪れてまで彼女のボディガードを続けている。
三姉妹探偵社の末っ子として、お世話になっている世帯主を放ってはおけなかった。
……というのは建前。
「って言っても……ねねねぇどこにいんのかなー。あの性格からしてどこかに留まるはずはないと思うけど……」
気丈に振舞ってはいたが、アニタも本心では不安――いや、寂しがっていた。
桃色のショートカットにお団子頭。衣装は、白を基調として両肩と短パンにあずき色をアクセントとした、半袖の功夫服。
動きやすい仕事着が纏うのは、12歳という実年齢よりも若干幼く見える容姿。ミルクを溺愛し、ねねねにちびっ子と称されることもしばしば。
そんなアニタの肩は、どことなく縮こまっていた。
アニタは『紙使い』としての能力を活かし、これまでもスパイ映画に出てくるエージェントのような仕事を生業としていた。
人間の死に不慣れというわけでもない。危機的状況にも免疫がある。
だがさすがに、未知の人物に拉致され殺し合いを強要されたともなれば、動揺せずにはいられない。
ここはどこなのか、これからどうなってしまうのか、ねねねはどこにいるのだろうか、一人でいるのは寂しい、
首筋がひんやりして冷たい、他にはどんな人がいるのか、本当に生きて帰れるのか――
物事を客観的に見つめ、落ち着いた態度で常識人ぶるのは、アニタの精一杯の虚勢だった。
彼女の精神は、真の心は、酷く脆いビスケットのようなものだ。熱い抱擁がなければ、ふやけるか崩れるかしてしまう。
彼女を包むのは、ほとんどの場合において姉であり、最近は友人や同居人が加わり始めてきた。
要するに、アニタは強がりであり、同時に寂しがり家でもあるのだ。
ねねねと合流するという目的も、使命感に促されるよりは、安心感を得たいという意のほうが強い。
返事が返ってこぬことを承知で金次郎に話しかけたのも、また同様。
歳相応な本質に、歳不相応な取り繕いをして、ようやくアニタは自分を保つことができる。
「適当に歩いて捜すしかないか。できればねねねぇ以外、誰とも会いたくないけど……ゲッ」
やる気のない歩調で進み始めたアニタの願いは、一秒もしない内に打ち崩されることとなる。
◇ ◇ ◇
204: 2007/09/26(水) 22:18:16 ID:Nm6iz/Oh(3/7)調 AAS
205: 2007/09/26(水) 22:18:33 ID:XiLOJJY9(3/3)調 AAS
206: 2007/09/26(水) 22:18:37 ID:NFDdUXYE(5/12)調 AAS
207: 2007/09/26(水) 22:18:46 ID:wEaZLpKJ(2/13)調 AAS
208: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:19:29 ID:jvOw9Ix5(3/11)調 AAS
螺旋王の姿が闇に消え、目を瞑り――そして開き――次に視覚が捉えたのは、どこかの住宅街だった。
空の情景は闇夜、時計が示す時間は深夜零時。静けさに包まれた町々からは、人気が感じられない――だが。
(いるんだね……タカヤ兄さん。この会場の、どこかに)
相羽シンヤ――それは、過去に捨てた名。
今の彼は、ラダムのテッカマンエビル。悪魔の力を身につけた、邪悪なる復讐鬼。
もっとも、エビルの力を解放するキーであるテッククリスタルを取り上げられた今、彼はテッカマンであってテッカマンではない。
「螺旋王の言っていたことはどうやら本当のようだ。さて……ブレードの力を失った兄さんが、どこまで生き延びられるか……いや」
打ち消し、シンヤは支給された参加者名簿を目で追っていく。
そして、その名はあった。相羽タカヤ……という本名ではなく、『Dボゥイ』という呼び名で記載された、テッカマンブレードの名前。
兄にしてライバル。家族にして宿敵。シンヤが越えるべき壁。それがDボゥイだった。
「別れ際に放った言葉……まさか忘れちゃいないよね。兄さん、あなたは、僕が、殺す」
陰湿な呟きを続けながら、シンヤは幽鬼のように町を徘徊する。
この会場内のどこかに、相羽タカヤはいる。共振はできなくとも、兄弟間で流れる不思議なシンパシーのようなものを感じるのだ。
どこへ逃げようとも、どこへ隠れようとも、ブレードとエビルは必ずこの舞台で鉢合わせることとなる。予感ではない、確信を感じた。
シンヤの目的は実兄との決着であり、殺害だ。それ以外の他者に興味はない。
障害になるようなら排除。面倒そうなら無関与。Dボゥイを捜す足として使うのも良し。
だがその前に、まずは確認しなくてはならないことがあった。
螺旋王によって制約をつけられた自身の力、そして障害と成り得る他参加者の実力……ブレードとの戦いを円滑に進めるべく、シンヤはまずこの二つをリサーチをしようと思い立った。
「まずは、犠牲になってもらうとしよう。この地に集められた人間共と、この僕、その差を測る測定器としてね……」
◇ ◇ ◇
209: 2007/09/26(水) 22:19:42 ID:4szXmP3d(4/10)調 AAS
210: 2007/09/26(水) 22:19:58 ID:Nm6iz/Oh(4/7)調 AAS
211: 2007/09/26(水) 22:20:24 ID:wEaZLpKJ(3/13)調 AAS
212: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:20:50 ID:jvOw9Ix5(4/11)調 AAS
「まさか、いきなり子供に出くわすとはね。だが、僕の殺気に警戒できるほどには場慣れしているようだ……」
広く開けた校庭のど真ん中で、一人の男が悠然と構え、小柄な少女がそれと対峙していた。
ベーシックなジャンパーにジーンズというラフなスタイルの、長身の男性。
それと向き合っているのは、先ほど金次郎に別れを告げたばかりのアニタ・キング。
学校を出てねねねを捜しに行こうと決断し、いざこれからというときに出くわした、競争相手。
もちろん初対面の人物だ。初対面ではあるが、これだけは言える。
彼は、この殺し合いに乗っている。その証拠として、アニタを映す瞳に殺気を滾らせ、右手には凶器に成り得る剣が握られていた。
「誰、あんた」
「これから君を殺す男さ。それだけ知れれば、十分だろう?」
アニタの無愛想な質問を二言で切り、シンヤは駆け出した。
右手に構えた剣を平に向け、疾走の状態からいつでもアニタに斬りかかれる体制で迫る。
会話の余地なし、見境のない殺戮者だ、応戦しろ――アニタは即座に対応を切り替え、臨戦モードに入る。
むき出しの太腿――そこに備え付けられたホルダーから、数枚の紙を手に取る。
する次の瞬間、紙はアニタの手の中で脈動を始め、一秒もかけずに一本の棒へと姿を変えた。
既にシンヤはアニタの間合い付近まで踏み込み、ブレーキをかけている。同時に、剣の切っ先はアニタの顎下を狙い打った。
が、アニタが作り出した紙の棒が、寸でのところでそれを弾く。弾いた後も執拗にアニタへと刃を向けるが、それもまた弾く。
「こ……のっ!」
アニタは紙の棒でシンヤの剣を大きく払い、後方に跳躍して距離を取った。
シンヤは矢継ぎ早に連撃を繰り出そうとはせず、やや驚いた表情で、体勢を立て直すアニタを見やる。
「……へぇ、驚いたな。硬質化する紙、か。それが君の武器かい?」
「教えてやらないよーだ、べー」
舌を出し、アニタは嫌悪の意を込めてシンヤを挑発する。
シンヤその挑発に気を荒立てるよりもまず、虫ケラ同然と認識していた人間の子供が、思わぬ戦闘技術を持っていたことに感嘆した。
今の攻防、剣で斬りかかったシンヤに対し、アニタは数枚の紙を結合、棒状に変形させ、刃を交わした。
シンヤの繰り出す剣に反応したという点もそうだが、紙を武器とした点が、なにより興味深い。
そういう性質の武器なのか、それともそういう力を持った人間なのか、真実は定かではない。
『紙』を変形・硬質化し、自由自在にコントロールする――これこそが、『紙使い』と呼ばれる異能者の持つ術。
アニタと、ここにはいないアニタの姉二人も、ねねねの警護を担当していた三姉妹は、皆紙使いの能力者だった。
紙使いにとって、紙とは武器であり、防具であり、傀儡であり、愛すべき書物の源だ。
もっとも本嫌いのアニタはその枠から外れるが、優れた紙使いであるという点では変わりない。
しかも、三姉妹の中でもアニタは接近戦を得意とする切り込み役だ。刃物で武装した男を相手にする程度、恐れるはずがない。
とはいえ、
(……なんか違和感あるなぁ。いつもと違うっていうか……紙が思い通りになってくれない感じ)
普段使っている包丁の切れ味が急に悪くなったような……紙を操る際、アニタはそんな些細な違和感を感じ取っていた。
この違和感が、螺旋王が施した能力制限によるものであるということを、アニタが知るよしはない。
もっとも、アニタにとっての制限は本当に些細なもので、違和感を覚える、その程度でしかない。
マギーのように傀儡を操れるわけでもなく、紙の硬質化とそれによる近接戦闘を主とする彼女にとっては、この制限による支障はほとんどない。
だが、そもそもな話。
213: 2007/09/26(水) 22:21:00 ID:NFDdUXYE(6/12)調 AAS
214: 2007/09/26(水) 22:21:23 ID:3KGPQkMM(1/2)調 AAS
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217: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:22:25 ID:jvOw9Ix5(5/11)調 AAS
(……紙、足りん)
シンヤの剣に対応するため、リーチの長い棒を作り出したが、それだけでアニタの持つ紙残数は二割を切ってしまった。
紙、というありふれたものを武器にできる反面、何かしらの武器を形成する際には、それなりの枚数を必要とするのが紙使いの制約。
アニタが所持していたのは、参加者なら誰にでも支給されているであろうメモ帳の紙だけだ。
僅か百枚程度のそれに、一戦を凌ぎきるほどの活躍は期待できなかった。
(どうせなら、ケチらず家にある本全部支給してくれたらよかったのに)
姉たちが買い込んだ、無駄に多い書物の数々を頭に思い浮かべる。
数千冊の本の山に埋もれたときは、本当に死ぬかと思った。文庫からハードカバーまで、あの一冊一冊の本を紙に換算したとしたら、いったい何枚になることか。
考えただけで怖気がする。しかし、今はそれくらいの枚数の紙が欲しい気分だった。
「紙で戦う人間か……若干イレギュラーだけど、兄さんと戦う前の肩慣らしには……ちょうどいい!」
一瞬、笑みを零すシンヤ。余裕を見せる柔和な笑み――だがそれはすぐに変貌し、狂気を纏ってアニタに襲いかかった。
(――ッ!? は、はやっ!)
その速度は、初撃とは比べものにならない。
まるでさっきのは単なる小手調べ、と言わんばかりに、アニタの正面から剣を振るう。
反応するだけで精一杯だったアニタは、その薙ぎを弾くのではなく受け止めようとするが、
――紙の棒はものの一撃で壊され、無機質な紙に戻ってヒラヒラと宙に霧散した。
(ヤバッ!)
一瞬の交錯で、武器を失った。そして、剣撃はまだ来る。
アニタはたった一撃で窮地を感じ、顔を歪ませた。
次、斬り込まれたら、防げない――直感でそう感じてしまい、さらに反応が遅れる。
次、斬り込まれたら、死ぬ――悲観的なことに、そんな結論にまで行き着いてしまった。
死が訪れる瞬間は、たとえ一瞬のことであろうと感覚的にスローで感じると、以前テレビかなにかで見たことがある。
今が正にそんな状況だ。両者の間に数枚の紙が舞う中、確かに動き、アニタに接近する剣、その刃。
あれがアニタの皮膚を裂き、あるいは肉を貫き、やがては骨を断ち、命を奪う。
駄目だとは思いつつも、グロテスクなイメージ映像が連想され続け、そして果てには、
(ミーねぇ! マーねぇ!)
走馬灯の下準備でも見せるかのように、家で待つ姉たちの姿が脳裏に映し出された――
『……まぁ〜! まーまーまーまーまー! 見て見てマギーちゃん! この本屋さんの山! どこから見るか迷っちゃう〜』
『姉さん……あそこと、あそこも……あとあそこの向かいと、あそこの斜向かいと、あそこもそう』
『本当だわ〜! もうここには本屋さんしかないみたーい!』
『……そんなに慌てなくても……本屋さんは逃げないよ』
『逃げないけど、夜になったら閉まっちゃうじゃない!』
『大丈夫だよ……今日は二人だけだから、ゆっくり見て回れる』
『そうね、アニタちゃんもいないことだし……このお店に置いてある本、全部ください!』
あぁ、見える……神保町を駆けずり回り、全財産を使い果たして街中の本屋を廻る姉たちの姿が……
そうして姉たちが訪れた本屋は売り物をすべて買い占められ、営業不可能となって潰れる。それが一件、また一件……
やがて神保町は営業停止の本屋だらけの廃れた町となり、姉たちは一生本を読むだけで、それ以外に関しては怠惰な生活を続けるのだ……
――【R.O.D -THE TV- BAD END】
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225: 2007/09/26(水) 22:24:24 ID:yDKbF8Cs(2/4)調 AAS
226: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:24:30 ID:jvOw9Ix5(6/11)調 AAS
(って、ふざけんなッ!!)
恐ろしすぎる未来図によって意識を覚醒させられたアニタは、無意識の内に太腿に手をやっていた。
残り二十数枚の紙、それらをすべて解き放ち、目の前のシンヤへと放つ。
中途半端に硬質化した紙々は、吹雪のような勢いを伴って正面からシンヤを襲う。
アニタの起死回生の反抗に怯んだシンヤは、僅かに剣を振るうの速度を落とした。
その隙を縫い、アニタは身体を屈め前転。シンヤの股下を潜り、再び距離を取る。
「……やってくれる」
そんなこともできるのか、と感心半分、よくもやってくれたな、と怒気半分で、シンヤは纏わり付いた紙を払いつつ、アニタを睨む。その頬には、微かだが血線がついてさえいる。
ラダムに見定められたテッカマンであるシンヤを、このような人間の子供が……シンヤを包む怒気の割合は徐々に激しさを増し、殺気から遊び心を除去していく。
相手を怒らせた。アニタはそう確信し、次はもっと鮮烈な一撃が来るだろうとも予想した。
紙の残量は――もしものときの切り札として、服と短パンの間に忍ばせた『名簿』を除けば――ゼロ。
そろそろ引き際か、とは思うものの、一歩後ずさるごとに、シンヤから感じる殺意の念は拡張していっているような気がする。
このままいけば、飲み込まれるのも時間の問題か。アニタは足が竦む前に、どうにかこの場を切り抜けようと判断した。
アニタとシンヤ、両者が三度交戦するかと思われたそのとき――
「こんばんはぁ〜♪」
――アニタのものでも、シンヤのものでもない。まったくの外野から、ひょうきんな声が届いた。
その声質のあまりの場違いさに、アニタとシンヤは同時に左方へ振り向いた。
そこは、ちょうど校庭の出入り口となっている裏門。そこに、銃を構えた男性が立っていた。
細身すぎる体に、医者というよりは科学者を思わせる白衣。
知的な格好に相応しい眼鏡をかけ、表情は意図を掴ませぬ――悪く言えば不気味なほど――にこやかだった。
白い歯を露出して、健康的に笑っているのではない。口は閉じたまま、何かしら企んでいそうな不快な笑み。
そして、銃を持っている。銃口が狙うのは、もちろん校庭に対峙している二人の男女だ。
怪しすぎる闖入者にアニタとシンヤの二人は一旦互いに対する警戒を解き、改めて、白衣の男を警戒し直した。
「あれぇー、お邪魔だったかなぁ?」
「誰だ、おまえは?」
「おじさん、誰?」
双方から名を訊かれ、白衣の男は声調も表情も態度もまったく変えずに答える。
「あ、僕? 僕はロイド・アスプルンド。ブリタニア軍に所属するしがない技術者です。どうぞよろしくー。
ああ、あとそれからアニタ・キングくん。僕はまだ29歳だから。おじさんは遠慮してほしいなぁ。
それからそっちは、相羽シンヤくんだね? 年上の人には敬語を使ったほうがいいよ。見ず知らずの人にもね」
仮にも銃を構えている人間が、こうも恐ろしく感じないのはなぜだろうか。
ロイドと名乗ったその男は、以前飄々とした態度のまま、二人の名を添えて語りかける。
「ちょっと待った。今、あたしの名前……アニタって」
「おもしろいね。僕はあんたなんて知らないが……どこで僕の名を?」
アニタ・キングと相羽シンヤ。この二人は互いに名乗ってもいなければ、もちろんロイドと顔見知りというわけでもない。
ロイドが二人の名を言い当てることができたのは、いったいどんな手品なのか。二人の興味はその種に向いた。
特にシンヤは、ロイドがこの会場内で唯一自分の名を知る人物、Dボゥイと面識があるのではと期待したが、
227: 2007/09/26(水) 22:24:32 ID:EtP9bV1L(1/3)調 AAS
228: 2007/09/26(水) 22:25:20 ID:Nm6iz/Oh(6/7)調 AAS
229: 2007/09/26(水) 22:25:47 ID:ZmWUlOMl(4/9)調 AAS
230: 2007/09/26(水) 22:26:03 ID:NFDdUXYE(8/12)調 AAS
231: 2007/09/26(水) 22:26:09 ID:gkv/+3rc(1)調 AAS
232: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:26:27 ID:jvOw9Ix5(7/11)調 AAS
「ん〜? なんてことはないよ。僕の支給品の中に、君たちの顔写真が入っていただけさ。
君たちの反応を見るに、アレの信憑性は確かなようだね」
ロイドが明かした種の内容に、シンヤはつまらなそうに顔を顰めた。
「……で、用件はなんだい? まさか、考えもなしに僕たちの戦いに割って入ったわけじゃないだろう?」
「おじさんも、この変な殺し合いに乗っちゃったクチ? 銃持ってりゃあたしたちのことも楽に殺せるとか思ったわけ?」
二人にとって、ロイドは試合中のリングに乱入した傍迷惑な観客でしかない。
このまま飛び入りでバトルロイヤルへと移行するならそれも結構。三竦みの状態で、各々攻撃体勢に移るかと思われたが、
「殺し合い? 僕が? まっさかぁ。興味ないね。この銃は単なる自衛のためさ。撃つ気なんてないよ」
張り詰めた空気をぶち壊すかのごとく、ロイドは甲高い声で苦笑して見せた。
その独特のペースに、アニタもシンヤも調子を崩されっ放しだった。
よく言えば無害そうな、悪く言えば癪に障るロイドの態度。言葉の中に真意が含まれているかも分からず、掴みどころがない。
下手に相手をするのも面倒だ。そう考え至った両者は、
(……無視しよう)
(……始末するか)
まったく方向性の異なる対処法を定め、行動に移そうとする。
しかし、シンヤの殺意の矛先がロイドに変わる寸前で、彼は思いも寄らぬ言葉を口にした。
「殺し合いなんかに興味はないけどね、現状の奇妙な境遇には興味深々だよ。特にこの首輪」
そう言って、ロイドは銃の握り手とは逆の手で、自身の首に嵌っている機械を小突いた。
「触ってみた感想だが、どうにも単純な金属で作られているとは思いがたい。
まぁ繋ぎ目がしっかりあるから作りは案外単純なのかもしれないけれど、
本当に螺旋王が言うほどのシステムがこの首輪の中に凝縮されているんだとしたら、ぜひ覗いてみたい。
ちょーっと分解して調べてみようと思ったんだけど、自分の首に嵌ってるのじゃどうにも作業しにくくてね。
そこで、君たちに声をかけたわけさ。悪いようにはしないから、僕にちょこっとだけ……」
「首輪を弄らせろって?」
「そのとーり!」
「ふざけんなッ!」
「いやぁお恥ずかしぃー!」
首輪をちょっと分解してみる、と簡単には言うが、その機能は爆弾だ。
下手に弄れば誘爆は免れない。それを、自分のじゃやりにくいからという理由だけで、他者に提供してくれなど言語道断。首をよこせと言っているようなものだ。
洒落で言っているのか本気で言っているのかは知らないが、アニタは割と真面目にロイドを怒鳴っていた。
しかし、ロイドをこの場にそぐわぬ邪魔者として排除しようとしたシンヤは、
「へぇ……おもしろいね。まるで、この首輪を片手間で外せるかのように言ってくれる」
意外にも、ロイドの言葉に新たな興味を示した。
「ロイドと言ったね。本当にこの首輪が外せるのかい?」
「自信はあるけど、サンプルを入手して一度構造を確かめてからのほうが確実性が高いね」
「サンプルか……つまり、自由に弄くれる、人の首に嵌っていないモノが欲しいと。なら、僕が今すぐ用意してあげてもいいが……」
233: [sage] 2007/09/26(水) 22:26:36 ID:2fD0sdiw(1/3)調 AAS
234: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:27:32 ID:jvOw9Ix5(8/11)調 AAS
チラリと、シンヤは横目でアニタの首下を見やる。
襲い掛かってきたときのような、強烈な眼光ではない。だが、その不気味具合はこれまでとは比較にならない。
食い入るような視線は、アニタではなく、あくまでもアニタの首輪にいっている。それ以外は邪魔、とでも言いたげな風だ。
このままでは、『首から首輪』を外すのではなく、『首輪から首』を外しかねない。
本能でシンヤの目論見を悟り始めたアニタの肌は、次第に冷や汗を帯びてすらいた。
「あー、それは困るなぁ。僕はこう見えてフェミニストでね。女の子には紳士的なんだ。
殺し合いに興じるような野蛮な人間ならともかく、女の子の首から採取したサンプルなんかじゃ、いつ手元が狂うとも限らない」
注釈のように添えたロイドの言葉が、シンヤの視線をアニタの首下から逸らした。
そして……シンヤの表情は一瞬あ然とし、徐々に笑みを纏い出す。
「ふ……ふふっ、ははははは。そうか、なるほど。それなら仕方ないな。じゃあロイド、こうしよう。
僕はこれから、君の分解作業を手伝うために、首輪のサンプルを手に入れてくる。君はここでそれを待っていてくれればいい。
そのかわり、もし首輪の解除が可能になったら、真っ先に僕の首輪を外して欲しい。どうだい?」
「交換条件で協力してくれるということかい? なんだか僕的にオイシイ条件ばかりで悪いなぁ。それじゃあお願いするよ?」
シンヤは剣、ロイドは銃をそれぞれ納め、約束を交わした。
首輪を提供するかわりに首輪を解除するという……裏に潜む思惑が計り知れず、決して関わりたくはない協定だった。
ロイドとの約束を取り付けたシンヤは、去り際にアニタを一瞥し、小さな声で「運がよかったね」と零した。
アニタは返答することもなく、ただ遠ざかっていくシンヤの背中を見送った……。
◇ ◇ ◇
終わってみれば、特に負傷したわけでもなく、疲れ果てたわけでもなく。ただメモ帳の紙を失い、気づかれしたくらい。
これを安く見るか高く見るかは、相羽シンヤの正体を知らぬアニタには判断がつかない。
が、あれがシンヤのすべてだとは思い難かった。ロイドの横槍が入ったからいいものを、あのまま続ければ、紙のないアニタは確実に……
「あー! もうムカツクー!」
「酷いなぁ。仮にも命の恩人に対して、ムカツクはないんじゃないの?」
シンヤが去った後、アニタとロイドは校庭に残り――紙を拾っていた。
このゲームでは、武器とて有限ではない。再利用の効くものは、極力リサイクルする必要があった。
その紙の回収作業にロイドが付き合っていたのは、単にシンヤが戻ってくるまでの暇潰しに他ならない。
「別におじさんに言ったつもりじゃないけどさ……それより、本当にここに残るつもり?」
「だからなんども言うけど、僕はまだ29だから。おじさんは失礼だから。
彼が戻ってくるまではここにいるつもりだよ。勝手にここを離れたら、今度は僕が殺されそうだからねぇ」
「そうは言うけどさ、アイツがどっかで誰かを殺して、本当に首輪を持ってきたらどうする気?
それからあたし12。おじさん29。倍以上。十分おじさんじゃん」
235: 2007/09/26(水) 22:27:35 ID:NFDdUXYE(9/12)調 AAS
236: 2007/09/26(水) 22:27:44 ID:4szXmP3d(7/10)調 AAS
237: 2007/09/26(水) 22:27:59 ID:wEaZLpKJ(6/13)調 AAS
238: 2007/09/26(水) 22:28:02 ID:ZmWUlOMl(5/9)調 AAS
239: 2007/09/26(水) 22:28:17 ID:yDKbF8Cs(3/4)調 AAS
240: 2007/09/26(水) 22:28:34 ID:Nm6iz/Oh(7/7)調 AAS
241: [sage] 2007/09/26(水) 22:29:29 ID:2fD0sdiw(2/3)調 AAS
242: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:29:31 ID:jvOw9Ix5(9/11)調 AAS
校庭に散らばった紙を回収し終え、ロイドはそれをアニタへ渡す。
くしゃくしゃになったり砂塗れになってしまったものばかりだが、使う分には問題ない。
紙を渡し終えると、ロイドは含みのない穏やかな笑顔でアニタへと言葉を続けた。
「そのときは、ありがたく分解させてもらうよ。中身が分かれば解体する自信はあるしね」
「……それ、マジで言ってるの? アイツが持ってくるのは、そこら辺に落ちてる首輪じゃない。
誰かを殺して、誰かの首を切って、そっから持ってきた首輪だよ!?
おじさんがあんなこと言ったせいで、誰かがアイツに殺されるかもしれないんだよ!?」
「それはそうだけど、あの場を切り抜けるにはあれしかなかったと思うけどなぁ。
彼に目をつけられた人には悪いけど、それは仕方がないことだよ。止められなかった僕らが悪い。
それに、一応これは殺し合いだよ? まさか、正義とは何かなんて恥ずかしい議論をふっかける気じゃあるまいね」
痩せ細った身体に平和ボケしたような笑顔を常備しているロイドだが、彼はこれでも軍人だ。
平和が綺麗事で片付かないことは重々承知しているし、生き死にがどれだけ不条理なものかも知っている。
おじさんという呼称を甘んじて受けるわけではないが、アニタにとって、ロイドのスタイルは悪い意味で大人すぎていたのだ。
「君に彼を止めることはできないよ。不思議な力を持っているらしいが、たぶん彼はそれ以上だ」
「それでも……」
「僕は一応、爵位持ちの貴族でね。フェミニストを語る気はないが、女の子をみすみす死にに行かせるつもりはない。
それに、殺し合いに乗らないにしても、君は君でやるべきことがあるんじゃないの?」
アニタには嫌味に聞こえたが、ロイドの表情には曇りがない。それだけ正論だということだ。
もちろん、アニタにだって優先すべき事柄はある。ねねねを捜し出して一緒に帰るという目的が。
赤の他人にピンチが訪れるかもしれない、などという程度のことに、首を突っ込んでいられない。
その間にねねねが誰かに殺されそうにでもなっていたら、後悔するのは、きっと自分だ。
「……割り切れとは言わないさ。君はまだ子供だ。子供は子供なりに、頼りがいのある大人でも見つければいいさ。
ああ、僕を頼るのはやめておくれよ? 僕はただ、面白おかしく未知の文明に触れられればいいから……ってあらぁー!?」
ロイドの言葉を最後まで聞かず、アニタは学校を出ようと歩き出してしまった。
その顔はどこか俯いて――いるかに見えたが、すぐに前を向きなおし、普段の溌剌な表情を取り戻していた。
まずは、ねねねを捜す。後悔したくないから。話はそれからだ。
「ちょっと待った! 行くならこれを持っていくといい!」
「ん? …………ゲッ! 本じゃん」
去り際、ロイドはデイパックから一つの書物を取り出し、それをアニタに放った。
掴み取ったそれは、やや大型なハードカバーの本。スカイブルー一色の表紙に、見慣れぬ文字のタイトルがついている。
中を開いてみるが、やはり難解な字面が広がっているだけ。なんの本なのか、アニタには理解不能だった。
243: 2007/09/26(水) 22:30:26 ID:ZmWUlOMl(6/9)調 AAS
244: [sage] 2007/09/26(水) 22:30:35 ID:2fD0sdiw(3/3)調 AAS
245: 2007/09/26(水) 22:30:58 ID:NFDdUXYE(10/12)調 AAS
246: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:31:01 ID:jvOw9Ix5(10/11)調 AAS
「君にとって紙は重要なものだろう? ならそれあげるよ。僕が持っていても意味のないものだしね」
「……ありがと。でもこれ、なんの本?」
「あいにく、僕もその本に書かれている字はお目にかかったことがなくてねぇ。どんな本か興味があるのかい?」
「……まさかっ」
アニタは適当な礼だけを残すと、その本をデイパックにしまいつつ、校庭を後にした。
それを最後まで見送って、ロイドは校舎へと向かう。アニタの行く先を案じるような、優しい眼差しを残して。
◇ ◇ ◇
「……やはり、なんらかの手で力を抑制しているか。この分じゃ、テックセットしたとしてもどの程度までやれるか……」
校舎を背に、シンヤは住宅街を東に行く。
先ほどの紙使い、アニタとの交戦。シンヤの胸中には、相手の予想外の実力と変則的な戦闘方法よりもまず先に、自身の力の衰えを感じていた。
テッカマンになれずとも、シンヤは既に人間の枠を外れた存在だ。筋力、敏捷性、反射速度、どれも常人のそれを逸脱している。
だがそれも、なんらかの働きかけによって無意識の内にセーブされてしまっているようだ。
女子供の入り乱れるこの会場で、参加者たちが均等に殺し合えるよう、螺旋王が施した処置なのだろう。
ブレードとの手加減なし、全力での死闘を望むシンヤにとっては、厄介きわまりない。
「僕が望むもの……それは、兄さんを殺すことだ。それも、闇討ちや騙まし討ちじゃ意味がない。
力と力。ブレードとエビル、テッカマンとしての決着でなければ価値はない」
そのために成さねばならないことは三つ。
テックセットするために必要な、ブレードとエビル、二人分のクリスタルの入手。
Dボゥイこと、相羽タカヤの捜索。
そして、この忌まわしい『制限』の解除。
「兄さんが早々に死ぬとも思えないしね……まずは、面倒な方から片付けていくとしよう。
お楽しみはラストだ。そのときまで兄さん、せいぜい無茶をしないでくれよ」
一つの仮説として、シンヤは我が身にかけられた制限が、首輪の拘束によって齎されていると考えた。
根拠もない仮説中の仮説だが、首輪の存在はどちらにせよ疎ましい。
あのロイドという人間が利用できるなら、あえて使ってやろう。仕事を終えた後の処遇は……もちろん決まっているが。
夜、空はまだ暗い。
ゲームは始まったばかり。
これから朝が開け、日が頂点に昇るまでに、何人が死に、何人が涙を流すのか。
そして……相羽の兄弟が拳を合わせるときは、本当に訪れるのだろうか。
247: 2007/09/26(水) 22:31:55 ID:4szXmP3d(8/10)調 AAS
248: 2007/09/26(水) 22:32:03 ID:NFDdUXYE(11/12)調 AAS
249: 紙は舞い降りた ◆LXe12sNRSs 2007/09/26(水) 22:32:14 ID:jvOw9Ix5(11/11)調 AAS
【B-6・学校敷地内/一日目/深夜】
【ロイド・アスプルンド@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:ニードルガン(残弾10/10)@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:支給品一式、携帯電話
[思考]
1:シンヤが戻ってくるまで校舎内を探索。
2:シンヤが持ってくる首輪を分解してみる。
3:その他、おもしろそうなものを見つけたら調べてみる。
4:スザクとの合流。
【アニタ・キング@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康
[装備]:紙×100
[道具]:支給品一式(メモ帳なし)、ハイドの魔本@金色のガッシュベル!!、不明支給品1〜3個(本人は確認済み。紙に関するものは入っていない)
[思考]
1:ねねねを捜す。進路は南。
2:どこかで紙を入手する。多ければ多いほど良い。
[備考]:
※参戦時期は6〜11話、ねねねが読仙社に攫われる以前。読子との面識はありません。
【B-6・学校付近/一日目/深夜】
【相羽シンヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:右頬に掠り傷
[装備]:アースの剣@金色のガッシュベル!!
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2個(本人は確認済み)
[思考]
1:適当な参加者を殺し、首輪を手に入れる。進路は東。
2:制限の解除。入手した首輪をロイドに解析させ、とりあえず首輪を外してみる。
3:テッククリスタルの入手。
4:Dボゥイの捜索、及び殺害。
【ニードルガン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
ゼロ愛用の銃。
セラミックと竹を使用しているため金属探知器では探知できない。
しかしその威力はかなりのもので、通常の銃と同様にうまく当たれば死ぬ。
【携帯電話】
全参加者の画像データが入っている模様。それ以外の機能に関しては詳細不明。
【ハイドの魔本@金色のガッシュベル!!】
アニメオリジナルキャラクター、ハイドの魔本。色はスカイブルー。
記載されている呪文を読めば、持ち主であるハイドは呪文が使えるが、このロワにはハイドは出ていないので無意味。
ガッシュやビクトリームのものとは違い、普通に燃える。燃えたらハイドは魔界に送還されるものと思われる。
ちなみにこのハイドというキャラ、アニメ14話を最後に一切本編に登場しておらず、魔界に送還されたか生き残ったかも描写されていない。
【アースの剣@金色のガッシュベル!!】
百体の魔物の一人、アースが持つ剣。
二等辺三角形の巨大な刀身に柄を付けた、西洋のものとも東洋のものとも言えないフォルムをしている。
斬らずとも、触れた魔物の力を吸い取る効果がある。それ以外は普通の剣。
250: 2007/09/26(水) 22:32:29 ID:ZmWUlOMl(7/9)調 AAS
251: 2007/09/26(水) 22:33:01 ID:XU2liFZA(3/3)調 AAS
252: 2007/09/26(水) 22:47:24 ID:HXu9QbDB(1)調 AAS
51レスってwwwwwwwww
限度あるだろwwwwwwwwwwwwwwwww
253: 探し人同盟 ◆h8mvk8rUsY 2007/09/26(水) 22:49:07 ID:pNoTToq5(1/6)調 AAS
モノレールの駅のベンチに人影が一つ。その美しい銀髪が風によってなびいていた。
「どういう事なのよ、もう…」
白い雪のような少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは考えを巡らせていた。
あのラセンオウとかいう奴は私達に殺し合いをさせると言っていた。
しかも勝ち残れば願いを叶えるとも。人数や環境こそ違うが、かつて私が参加した聖杯戦争と同じような状況だ。
だが私はこんな殺し合いに乗るつもりはない。アインツベルンの悲願はあくまでも聖杯を手に入れる事であって願いを叶える事ではないからだ。よって乗る必要もない。
それでも、この戦いに乗る人間は他にいるだろう。生き残る為には戦わなければならないかもしれない。例え寿命が短かろうと私が殺されればシロウは怒り、そして悲しむと思うから。
「でも私1人じゃちょっときついかな…」
今の私は聖杯戦争当時のような有利な状態じゃない。
確かに私自身優れた魔術師ではある。しかしあのラセンオウに向かっていき、命を落とした男のような驚異的な戦闘力を持っている訳ではない。そして何より聖杯戦争を共に戦い、全幅の信頼を置いていた、あの鉛色の巨人はもはやいないのだから。
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