【シャニマス×ダンガンロンパ】シャイニーダンガンロンパv3 空を知らぬヒナたちよ【安価進行】Part.1 (996レス)
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277: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:01:43.27 ID:xRQ0DVdX0(1/53)調 AAS
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【School Life Day6】
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノタロウ『キサマラおはよう! 絶望的な朝だね!』

モノファニー『キサマラおはよう! 今日の夜時間までがコロシアイのタイムリミットよ!』

モノスケ『キサマラおはようさんやで! モノキッドはもう手遅れになってもうた! キサマラのせいや!』

モノキッド『げへへ……みんな、みんなわかっちゃったもんね……』

モノキッド『このコロ■■イは二■■で前の■■残■が■加■■るんだ……げへへ』

モノタロウ『わー! ダメだよモノキッド!』

モノダム『……』

プツン

……この日が来てしまった。
コロシアイの最終期限の日。
今日の夜時間までにコロシアイが起きなければ、全員がモノクマによって殺されてしまう。
それを防ぐために、私がルカさんを殺す。

「……!」

ダダダッ

混みあげる嘔吐感にトイレに駆け込んだ。
でも、何も出てこない。
罪悪感も寂寥も、まだそれは実態を伴っていない不安でしかない。
吐き出したくても、吐き出せるものはまだ生まれてもいないのだから。

「はぁ……はぁ……」

私は、今日人を殺す。
その決心が自律神経を狂わせているのは明確だった。

「とりあえずは……行かなきゃ、だよね」

でも、崩れるわけには行かない。
ルカさんの覚悟と思い、信頼を私が踏み躙るわけには行かないんだから。
叫び出したくなる衝動を必死に無表情で塗り固めるようにして、私は食堂へと向かった。
278: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:02:45.24 ID:xRQ0DVdX0(2/53)調 AAS
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【食堂】

愛依「あっ、にちかちゃん! どう……眠れた?」

にちか「あー……いや、まずまずですかね……はは」

灯織「こんな状況で寝れるわけないですよ……」

甜花「甜花は夜通しゲームしてた……やり残しがないように、積みゲーをこの世に残さぬために……」

愛依「まあうちも流石に寝られなくてさ、なんか寝不足……眠たくもないんだけどさ」

他のみんなも目に見えた精神に支障をきたしていた。
目の下にはクマができ、どこかふらふらとした足取り。
自分の命にまとわりつく不安に飲み込まれて、震えている。

【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】

モノタロウ「あれ! みんななんだか元気がないよ!」

モノキッド「モノダムみたいにしけた顔してやがる! そんなに死が恐ろしいのか!?」

(……!)
279: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:03:49.63 ID:xRQ0DVdX0(3/53)調 AAS
樹里「恐ろしいに決まってるだろ! アタシたちにも生きてきた人生がある……それが今日終わるかもしれないって……!」

モノスケ「うーん、ザコどもはやっぱりどこまで行ってもザコども根性が染み付いとるようやな」

モノキッド「ジャスト・ビー・ハングリー! 生は自分の手で掴み取るモノなんだぜッ!」

甘奈「……それって他の誰かを殺せってことなんだよね? そんなの……出来っこないよ……」

にちか「……」

モノファニー「でもそうしてくれなきゃグロい死体を見ることになるのはアタシたちの方なのよ。こっちの身にもなって欲しいわ!」

モノタロウ「それに、キサマラがやってくれなきゃお父ちゃんに怒られちゃうんだよ!」

モノダム「……」

モノスケ「とにかく、タイムリミットは今日の夜時間までや。改めて言っておくから、肝に銘じておくんやで」

【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】

霧子「念押し……なのかな……」

恋鐘「うちらになんとしてもコロシアイをさせたいって感じやね……そんな脅しには屈しんばい!」

恋鐘「だってうちらはエグイサルにも負けん! 【戦って打ち負かしちゃる】って決めたけんね!」

(……え?)
280: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:05:06.39 ID:xRQ0DVdX0(4/53)調 AAS
ルカ「そういや昨日言ってたな……本当にオマエラ、あのモノクマーズと戦う気なのかよ」

夏葉「ええ、そのつもりよ。私たちはチームを組んだ、複数人で立ち向かえば勝機はあるはず」

めぐる「それに、武器もちゃんと用意してるんだよ!」

凛世「武器、にございますか……?」

樹里「倉庫にあったスポーツ用具だよ。金属バットや砲丸、剣道の防具なんかもある。あれを使えば、抵抗ぐらいはできるはずだ」

(……)

(……そんなの、無茶だ!)

ルカ「そんなのでどうにかなる相手だと思ってんのかよ!」

円香「……同感です。あのエグイサルに人の力で抗えるとは、到底」

夏葉「だとしてもよ」

にちか「……!」
281: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:06:35.01 ID:xRQ0DVdX0(5/53)調 AAS
夏葉「どのみちエグイサルに虐殺されてしまうのなら、少しでも争って死にたい。争おうと立ち向かって、仲間と協力してその末に死にたい」

夏葉「たとえそれが犬死にでも……私たちは誇りあるうちに死にたいの」

恋鐘「ばってん、そうそう負けてやるつもりはなか! なんとかなるってうちは心から信じとるばい!」

ルカ「……チッ」

戦うと覚悟を決めたのは八宮さん、月岡さん、有栖川さん、西城さん、愛依さんの5人みたいだ。
私たちとは違う、覚悟を決めた表情で彼女たちは戦闘を高らかに宣言した。

樹里「それじゃあ、私たちは作戦の準備があるからよ」

夏葉「参加者は一人でも多い方がいいわ。もし私たちと共に戦う覚悟を決めてくれたら、いつでも声をかけてちょうだいね」

私たちはその背中を見送ると、ため息をつきながらお互いの顔を見合った。
残っているのは、生きるのも死ぬのもどっちつかずの人間か、死を受け入れて争うこともしない人間のいずれか。
空気が急に変わるのを肌で感じる。
282: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:07:54.02 ID:xRQ0DVdX0(6/53)調 AAS
甘奈「……甘奈は甜花ちゃんと一緒に、同じ部屋にいることにするよ」

甜花「うん……最後はやっぱり、なーちゃんと一緒がいい。なーちゃんを一人で死なせない……!」

透「樋口は?」

円香「別に……」

真乃「ど、どうしようかな……」

灯織「……」

霧子「どう終わるのか、私も考えなきゃだね……」

凛世「凛世も、少し整理が必要です……これまでの生き方と、その幕の下ろし方と……」

ルカ「……いくぞ」

にちか「あ、ルカさん……」

ルカさんが顎で食堂の外を指した。
昨日言っていた通り、殺害計画の大詰めをしたいんだろう。
私にそれを拒むことはできない。
ルカさんの背中を追って、私も食堂を出た。
283: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:10:46.90 ID:xRQ0DVdX0(7/53)調 AAS
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【女子トイレ奥 隠し部屋】

ルカ「なあ、にちか……嫌なら、断ってくれていいんだぞ」

にちか「……今更、断りませんよ」

ルカ「オマエを救いたいっていうのも、私の勝手な言い分だ。別に、オマエが嫌なら私は……」

にちか「……もう、うっさいですって! 私も決めたんです、ルカさんを殺すって!」

ルカ「……そっか」



ルカ「それじゃあ、殺害計画を共有するぞ。昨日も言った通り、私を殺害した後の逃走経路にはここの隠し通路を使う」

ルカ「したがって、私を実際に殺すのは【図書室】だ。自動扉が開いている間のインターバルに包丁を私の腹に突き刺して、そのまま逃げ去れ」

ルカ「私が図書室にいた理由は……呼び出しがあったことにする。適当に手紙を偽造しておいた」

『コロシアイを終わらせる手がかりを掴んだ
誰にも伝えずに図書室に来い』

ルカ「まあ怪しいっちゃ怪しいけど……なんとかなんだろ」
284: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:12:42.95 ID:xRQ0DVdX0(8/53)調 AAS
ルカ「で、アリバイの確保だけど……私が聞いた限りだと、夜時間のタイムリミットを迎えるときには【モノクマと戦うグループ】と、【食堂で最後の晩餐をするグループ】と、【個室でそれぞれの時間を過ごすグループ】に分かれるみたいだ」

にちか「まあ……そんな感じでしたよね」

ルカ「にちかは【食堂組】に身を隠せ。食事の途中にトイレで抜けて、私を殺して戻ってくるんだよ」

にちか「な、なるほど……」

ルカ「隠し通路の存在は他に誰も気付いちゃいない。露見しなければアリバイが崩れることもないだろうぜ」

ルカ「凶器はこいつを使いな。昨日の夜時間の前に厨房から抜き取っておいた」

にちか「包丁……」

ルカ「まあ実行まではここに置いといていいよ。その方が安心だしな」

ルカさんは布に包んだ包丁を隠し部屋のテーブルの上に置いた。
数時間後にはあれを握って、私が突き立てる。
現実味がまるで感じられないや。

ルカ「まあ計画と言ってもこんなもんだ。学級裁判も形式上行われるがペナルティもないし、最悪バレちまってもいい」

ルカ「でも、騙し通せればオマエは晴れてこの学園から脱出できる。にちかにはそのチャンスを掴んでほしい」

そう言って、ルカさんは私の手を両手でガッチリと握った。
285: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:13:50.29 ID:xRQ0DVdX0(9/53)調 AAS
ルカ「……オマエ」

その瞬間、知られてしまった。
私は今この瞬間も震えている。まだ迷っている。
ルカさんの信頼の紐帯の上から、落ちないように必死にバランスを保っていることを。

にちか「ご、ごめんなさい……!」

咄嗟に謝罪の言葉が飛び出した。
ルカさんも自身を殺そうとしている相手が不安に駆られていたら不快だろう。
それに報いるためのお詫び。

ルカ「……」

私のその言葉を、ルカさんは少しじっとして噛み砕くと、頬を綻んでみせた。
286: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:16:36.44 ID:xRQ0DVdX0(10/53)調 AAS
ルカ「まあ……怖いよな。今までやったことがないことに飛び込むことになって、しかもそれはオマエ一人っきりでよ」

ルカ「だけど運命を切り開くのはいつもそういう無謀な挑戦だったりすんだ」

ルカ「自分の身の丈なんか気にしないでよ、遮二無二に、自分のことも顧みずにやってみるもんだ」

ルカ「それが報われることばかりじゃないかもしれないけど……少なくとも、前いた場所とは状況は変わってるはずだ」

ルカ「なんて……今から死ぬやつが言うことじゃないかもしれないけどな」

ルカさんはきっとそういう挑戦を何度も経て今ここにいるんだろう。
アイドルの研究生として夢を追い続けたこと。それを自嘲気味に話してくれたけど、私はそうじゃないと思う。
夢を追うこともせず、ただ憧れるだけで燻っていても、流れる時間には何もない。
空虚な時間の積み重なりの中で、降ってくるのは後悔ばかり。
たとえ平地から泥濘に足を踏み入れることになろうとも、私はその一歩に意味があると思いたい。
『意味がある』と言える人間になりたい。
287: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:17:22.41 ID:xRQ0DVdX0(11/53)調 AAS
ルカ「にちか……オマエならやれる」

にちか「……はい!」

私も、覚悟を決めなくちゃ。
288: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:18:18.42 ID:xRQ0DVdX0(12/53)調 AAS
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それから、夜時間のタイムリミットまではそれぞれに時間を過ごした。
やることは決まっている。
せいぜい他の人間の動向に目を配って図書室に近づけないことくらいだ。

とはいえ、元から人の出入りのほとんどない教室。
要らぬ心配だったようで、何も大きなことは起きることもなく、そのまま時間だけが過ぎていき、
あっという間に【その時】は来た。
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289: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:19:24.52 ID:xRQ0DVdX0(13/53)調 AAS
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【食堂】

霧子「にちかちゃんは何が食べたい……?」

にちか「そ、そうですね……オムライス、とかでしょうか……」

透「こっち、モノクマの用意してるメニューもあるね。『悪天候で孫が来れなかったこどもの日風ちらし寿司』だってさ」

円香「悪趣味……なんでこんな日に気が沈んだ料理を口にしなきゃいけないの」

凛世「凛世で宜しければ、お作りいたします……」

円香「……いい、自分でやる」

霧子「あっ……でも、包丁がないみたい……」

透「そういや、戦う人たちが持ってったんだっけ」

円香「……はぁ」

最後の晩餐という割に和やかな雰囲気ではない。
関係性の構築もそれほど進んではいないんだ。
どこか殺伐とした雰囲気の中でそれぞれが人生最後のご飯を口に運ぶ。
290: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:20:12.12 ID:xRQ0DVdX0(14/53)調 AAS
透「んー、何してんだろ。ここにいない人たち」

円香「さあ? 戦ったり隠れたりするんじゃない? 意味ないと思うけど」

霧子「にちかちゃんは……ルカさんと一緒じゃないんだね……」

にちか「あ、はい……なんかルカさんは一人でやりたいことがあるって……」

凛世「このコロシアイを止める方法があると仰っておりましたが……」

円香「ハッタリじゃない? あの人、引っ込みがつかないところあるし」

透「……てか、もうちょいで死ぬんか」

にちか「実感ないですよねー……」
291: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:21:02.44 ID:xRQ0DVdX0(15/53)調 AAS
【コロシアイタイムリミットまであと1時間!】
292: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:22:15.30 ID:xRQ0DVdX0(16/53)調 AAS
食堂で話していると、突然に耳を劈くほどの音量で鳴り響くアナウンス。
聞いているだけで気分が悪くなりそうな、不穏な調子の音量が爆音で流れ出し、モニターには私たちにコロシアイを促すようなメッセージが流れ始めた。

円香「いよいよ、ですね」

霧子「終わっちゃうんだね……何もかも……」

凛世「……お姉さま」

(……)

そして、残り1時間となったこのタイミング……
私にとっては決行の狼煙が上がったも同義。
別行動をしているルカさんはすでに図書室に待っているはずだ。

……行くしかない。

凛世「……にちかさん?」

にちか「すみません、ちょっとお手洗い……なんだか緊張しちゃって」

霧子「うん……大丈夫? 手を貸した方がいいかな……?」

にちか「いや、大丈夫です。ちょっとそこまでなので!」

食堂からトイレまで。
早歩きをしたけどその靴音は学園中に鳴り響く音楽でかき消された。
293: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:23:21.81 ID:xRQ0DVdX0(17/53)調 AAS
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【女子トイレ奥 隠し部屋】

廊下には人気もなく、警戒もほとんど必要なくすんなりと入ることができた。
そのまま真っ直ぐ用具入れに進み、壁を押す。
べこっという音と共に壁は凹み、隠し通路が姿を現す。
大きく息をひとつ吐き出してから、その一歩を踏み出した。

「うぅ……」

中の薄暗さはなんとなく嫌な感じがするが、足を止めるわけにはいかない。
アリバイを確保し続けるためには、ことにそう長く時間をかけるわけにもいかないからだ。

やることをやったら即撤退。それが鉄則。
頭ではわかっているのに、足がすくむ思いだった。
294: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:25:19.12 ID:xRQ0DVdX0(18/53)調 AAS
今から私は人を殺す。
自分の手で、命を奪う。

そのことが何度も脳を行ったり来たりして、その度に吐いてしまいたくなる。
今すぐ壁に手をついて泣き崩れてしまいたい。
全部全部、自分の手で台無しにしてしまいたい。

でも、そんなこと許さない。
ルカさんが唯一希望を託してくれたのは私なのだから、私が諦めてしまうことはルカさんの希望を閉ざすことにも繋がる。
この一歩は、ルカさんのための一歩。
この命はルカさんのための命。

だから私は、無理やりに体を引きずりながら、机の上の包丁を手に取った。

その向こうで低く唸る音がした後、扉はゆっくりと開いた。
295: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:26:34.19 ID:xRQ0DVdX0(19/53)調 AAS
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【B1F 図書室】

「よお」

待ち構えていたルカさんは、退屈凌ぎに持っていた本を適当にその場に放ると、スタスタとこちらに歩いてくる。

「ほら」

両手を開いて、私を抱き込むような形をとった。
無防備に向けられた腹には、すでに包丁の先端が触れている。

「早く」

喉が揺れて、ぬるい息が漏れる。
脳の後ろが熱く、目が張った。
視界の先にある包丁の先端には神経が結集していくようで、柔肌に触れるそれから目が離せなくなる。

「にちか!」
296: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:27:17.61 ID:xRQ0DVdX0(20/53)調 AAS
______つぷ。
297: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:28:09.41 ID:xRQ0DVdX0(21/53)調 AAS
肌を引き裂く感触はそんな感じ。
パンパンに水を入れたポリ袋には鉛筆を刺してもそう簡単には弾けない。
多分それと同じなんだろう。包丁が破った腹から割って出ようとする血流を刃自身が受け止めて、音にならない水音がした。

「いいぞ……そのまま、もっと奥」

私は思考を隅にやった。
目の前で起きていることを認識して処理すればきっと止まってしまうだろうから。
心地の良いその指示に身を委ね、体重を預けた。
ずずと肉を裂き進む刃には左右からそれを押しつぶそうという力が加わった。
真っ直ぐに進もうとすると、その力で何度か詰まりかける。

「まだだ……まだ……!」

ずぶぶぶぶ……

肉を割く感触は大量の水をかき分けるような感触がする。
繊維と血液に押し戻されるのに抗いながら、奥へ奥へと突き進む。
298: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:29:16.50 ID:xRQ0DVdX0(22/53)調 AAS
親指が痛いと思ったら、自分の人差し指が食い込んでいた。
包丁の柄までを押し込んでしまおうと込める力が分散して、私自身の体にもその爪痕を残す。

「……ぷ」

異音がして顔を上げる。
私を抱き込むような体制をとっていたルカさんの顔は見違えたように血色が悪くなり、
その口元には赤黒い液体が溢れ出しそうになっている。

そこでやっと自我が帰ってきた。

「わ、わあああ……!!」

思わず包丁を手放して、後ずさった。
ゴンという音とともに本棚に後頭部を打ち付ける。
隠し通路から出てきてからまだ十数秒の出来事。
本棚は元の位置には戻っていない。
その鈍い痛みが、俄かに冷静さを引き戻してくれた。
299: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:30:17.77 ID:xRQ0DVdX0(23/53)調 AAS
「あ、あぐ……」

喘ぎ、身を捩りながら崩れ落ちていくルカさん。
その姿はこれまでの学園生活で見たどの姿よりも哀れで弱々しく、踏み潰せてしまいそうなほどだった。

「行け……! 早く……!」

雑巾みたいになったルカさんは、震える手で私の後ろを指差した。
脳がチカチカする。義務の前に自分の手で引き起こした事象が立ち塞がってショート寸前。
ここまで来てなお、足が動こうとはしなかった。

ああ、やばい。
終わる……ぜんぶ、ぜんぶ終わる……

私という人間のぜんぶ。
ルカさんに委ねられた希望のぜんぶ。
今までと、これからのぜんぶ。
300: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:31:59.84 ID:xRQ0DVdX0(24/53)調 AAS
「にちか!」

血反吐を吐きながらの絶叫は、金切り声に近かった。

「頼む!」

キィンと脳に響いた絶叫が、シナプスの中を乱反射して、やっと私を動かした。

遅すぎる覚悟を決めた私は踵を返して、扉をくぐる。
少し時間をかけた。早く戻ってアリバイを確保しなきゃ。
上がる呼吸が、自分の靴音を掻き消していた。
301: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:33:26.87 ID:xRQ0DVdX0(25/53)調 AAS
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【女子トイレ】

手に付着した血液を流し落とす最中、ふと鏡を見た。

ひどい顔をしている。
まるでマラソンを走り終えた時のような、もう出し切ったという表情。
気力というものがてんで抜けてしまっている。
手のひらに水を汲んで、ピシャリとそれを顔面に叩きつける。

冷ややかな水に、あの時の感触が混ざる。
気つけとしてはこれ以上ない。戒めとしては最悪。
あの時視界の隅に入れていた血溜まりを頭から被ったような気持ちになって、胸が苦しくなった。
罪と焦りをハンカチで拭いながら、女子トイレを後にした。
302: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:35:11.14 ID:xRQ0DVdX0(26/53)調 AAS
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【食堂】

円香「……おかえり、大丈夫?」

食堂に戻ると、心配そうな表情で樋口さんが迎えてくれた。
少し時間をかけ過ぎてしまったようだ。

にちか「やっぱり、ちょっと怖くて……緊張、なんですかね?」

適当な言い訳で誤魔化して、そのまま席についた。
大丈夫だ。何も失敗はしてない。
現場には私に通じる証拠は何も落としちゃいないし、ルカさんの血に塗れた手は綺麗に水で洗った。
誰も今の私を見て殺人犯だとは思わない……はず。

凛世「……」

霧子「……」

透「……」
303: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:36:09.53 ID:xRQ0DVdX0(27/53)調 AAS
そんなことは分かっているのに、心はお構いなしに騒ぎ出す。

もしかして、見落とした血が付着しているのではないか。
もしかして、変なことを口走ってしまったのではないか。
もしかして、ルカさんが本当は裏切ってはいないか。

考えても仕方がないことで脳が埋め尽くされ、胸も詰まる。
食事なんて全く喉を通らなかった。

円香「……あと30分、切ったみたいだけど」

時計を見ると、午後9時30分を過ぎていた。
まだ例のうるさい音楽は鳴り響き続けている。
どうやら、ただ殺すだけでは条件を満たしていないらしい。
死体が発見されるところまで含めた制限時間……なのだろうか。

(図書室に行くように促す……? いや、でもな……)

余計な発言をすれば裁判の時に疑われてしまうかもしれない。
中々行動に移せず、焦燥ばかりが募っていたその頃。
304: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:36:58.19 ID:xRQ0DVdX0(28/53)調 AAS
【ピンポンパンポーン……】
305: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:38:10.77 ID:xRQ0DVdX0(29/53)調 AAS
にちか「な、何?!」

霧子「あっ……モニター……何か出てきたよ……!」

幽谷さんが指差した先。
先程までコロシアイを促す悪趣味な映像が流れていたモニターには、モノクマだけが映っていた。

『来た! ついに来た! 死体が発見されましたよ〜!』

『いや〜、まさか本当にコロシアイが起きないんじゃないかとヤキモキしたけどオマエラを信じて正解だったよ〜!』

『死体発見現場の地下図書室までオマエラお集まりください! モノクマからお話がございます!』

……来た。
ついにルカさんの死体が見つかったんだ。
306: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:39:17.60 ID:xRQ0DVdX0(30/53)調 AAS
凛世「い、今のアナウンスは……」

透「起きちゃったんだ……コロシアイ」

円香「……こういう時、どういう反応をすればいいのやら」

霧子「円香ちゃん……?」

円香「誰かが死んだ……それによって私たちは生き永らえた……」

円香「……複雑ですね」

(……)

にちか「と、とりあえず……図書室に行ってみますか? モノクマの指示に従わないと何をされるかわからないですし……」

透「ん……そうしよっか」

私たちはそのまま食堂に居合わせたメンバーで図書室へと向かうことにした。
私以外のみんなは何が起きているのかわからないと言った様子だ。
怪しまれないように、心臓の鼓動を必死に右手で押さえつけた。
307: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:40:13.94 ID:xRQ0DVdX0(31/53)調 AAS
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【1F階段前廊下】

あさひ「あ、みんなも今のアナウンス聞いたっすか?」

にちか「せ、芹沢さん……」

地下へと降りる階段の手前で、教室からひょっこり芹沢さんが姿を表した。
死ぬまで後1時間だというのに、こんなところで一人でいたなんて、やっぱり変わった子だ。

円香「一緒に来る? 行くところはどうせ一緒でしょ」

あさひ「はいっす。事件が起きちゃったみたいっすからね」

凛世「……一体、どなたが亡くなられたのでしょう」

霧子「心配だね……」
308: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:42:01.67 ID:xRQ0DVdX0(32/53)調 AAS
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【地下】

階段を降りると、すでに図書室の扉が開け放たれているのが目に入った。
中から話し声も聞こえてくる。
すでに騒ぎは起きているようだ。

透「急ご……もう逃げられないんだし」

にちか「は、はい……」

あさひ「一体何が起きてるんっすかね……」

その答えを、私だけは知っている。
私自身が自分の手で引き起こしたのだから。
だから、その分かりきっている光景を演技を持って受け止めなければならない。

覚悟を決めろ。
ここから先は、進むも地獄、引くも地獄。
誰一人として味方はいないんだ。

にちか「行きましょう」

先陣を切って、図書室の中に踏み込んだ。
309: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:42:41.97 ID:xRQ0DVdX0(33/53)調 AAS
______ああ、やっぱり

【包丁が腹部に深々と突き刺さり、ルカさんは本棚にもたれかかるように息絶えていた】
310: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:43:33.23 ID:xRQ0DVdX0(34/53)調 AAS
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CHAPTER 01

ガールビフールフールガールズ

非日常編

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311: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:44:33.20 ID:xRQ0DVdX0(35/53)調 AAS
テレビで見る殺人事件の報道を、どこか別の世界の話としてみていた。
ドラマとか漫画とか、そういう作り物の世界と同じ次元に見て、犯人は何を考えてたのかなとか、どんな手口を使ったのかなとかむしろエンタメとしてみていた節すらある。

___それがまさか、自分が【犯人】として当事者になるなんて。

「……ルカさん」

口から溢れでる言葉を必死に篩にかける。

犯人として口にしていい言葉はなんだ。
事件に巻き込まれた、潔白な人間が口にすべき言葉とはなんだ。
疑われないための正しい答えはなんだ。

そんな考えたこともない無限の問いかけを、何度も何度も繰り返していた。
312: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:45:34.32 ID:xRQ0DVdX0(36/53)調 AAS
愛依「にちかちゃん……だいじょぶ?」

にちか「め、愛依さん……」

凛世「この中で一番ルカさんと行動を共にしていたのはにちかさんです……ご無理なさらないように……」

にちか「あ、ありがとうございます……」

まさか私が犯人ともつい知らず、他の人たちは私を労ってくれた。
彼女たちの言葉に甘える形で、離れたところに座り込む。

(……怖い)

体育座りで伏せる目。その先には赤に沈むルカさんの姿がある。
瞼は閉じているけれど、どんな瞳でこちらを見ているのだろうか。

【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】

モノタロウ「うわー! し、死んでるー!」

モノファニー「う、うう……でろでろでろでろでろでろ」

モノスケ「ついに始まりおったで……コロシアイが始まりおった……!」

モノキッド「血で血を洗う惨劇の幕が上がったなッ!」

モノダム「……」
313: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:46:44.40 ID:xRQ0DVdX0(37/53)調 AAS
モノクマ「うぷぷぷ……いや〜、ハラハラしたね! 制限時間ギリギリまで事件が起きないんだもん!」

モノクマ「オマエラ集団自殺志願者かよ! ヌートリアかってんだ!」

樹里「テメェ……」

モノスケ「それよりお父やん見てや! ちゃんとした死体が出たで! 血もドロドロ出とる!」

モノタロウ「お父ちゃん、こいつを見てくれ……こいつを、どう思う?」

モノクマ「すごく……グロいです……」

モノファニー「でろでろでろでろでろ」

めぐる「もう! 話が進まないよー!」

灯織「こうして殺人事件が起きたということは……あなた方の言っていた学級裁判が行われるということでいいんですね?」

モノクマ「うん、お弁当にパスタが欠かせないのと同じくらいコロシアイに学級裁判は不可欠だからね!」

甜花「ハンバーグの油を受け止めるぐらいの立ち位置なんだ……」
314: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:47:33.65 ID:xRQ0DVdX0(38/53)調 AAS
モノクマ「学級裁判ではオマエラの中に紛れた犯人、クロを探して議論をしてもらうわけだけど……」

モノクマ「正しいクロを指摘できればクロだけがおしおき、不正解ならばそれ以外のシロ全員がおしおきで、クロは卒業してこの学園を出ていくことができるんだ!」

モノスケ「でも、今回の事件についてだけは動機によっておしおきの免除が決まっとるからな」

モノタロウ「あれ? そうだったっけ?」

モノファニー「そうよ、グロいパートがカットになるのよ!」

モノクマ「つまり、今回はオマエラ全員ノーリスクで学級裁判に挑めるってことだからさ!」

モノクマ「全然気軽に挑戦してくれちゃって大丈夫だから! ボクの胸を借りるつもりでおいでよ!」

モノキッド「羨ましいッ! ミーたちもお父ちゃんの頼り甲斐ある胸に抱かれたいッ!」

(ノーリスクの挑戦……そう、だからこそルカさんは私にこのチャンスを託してくれた)

(ここで騙し切れば、私は他の誰かの命を奪うこともなく学園から脱出できる)

(絶対に、バレるわけにはいかないんだ……!)
315: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:49:20.49 ID:xRQ0DVdX0(39/53)調 AAS
真乃「で、でも……そんな、犯人を当てるなんて……今までに経験もないですし……」

甘奈「うん……どうやってやればいいのかサッパリだよ……」

モノクマ「うんうん、そういうだろうと思ってたよ。なんだってスマホを叩けば情報が得られるこの時代に、足で情報を稼ぐなんて経験もないでしょう!」

モノクマ「ならば! 指だけで情報を得られる機会をご用意いたしました!」

モノファニー「はい、モノクマファイルを用意したわ。一人一個あるから押さず慌てず受け取ってちょうだいね」

モノファニーは一人一人に一枚のタブレットを手渡していった。
指を画面に沿わせるとすぐに起動して、仰々しいフォントで情報が並んだ。

『被害者は【超研究生級のカリスマ】斑鳩ルカ。死亡推定時刻は午後9時半ごろ。死因となったのは腹部に深く突き刺さった包丁による臓物損傷および失血死。他に目立つ外傷はない』

モノタロウ「死体に触らなくてもいいように、オイラたちで検証した情報がまとめてあるんだよ!」

透「まあ、でも……見たまんま?」

甜花「あんまり、新しい情報はないかも……」

モノダム「……」

モノクマ「まあそれは始まりの証拠だからさ。冒険におけるひのきの棒、就活におけるリクルートシート!」

モノクマ「それを最初のステップにして捜査を進めてちょうだいね!」

(……捜査、か)

(本来なら犯人特定につながる証拠を探すのが目的なんだろうけど、私の場合は逆だな)

(私へと繋がりそうな証拠はいち早く私自身で見つけて、隠滅しないと……)

モノクマ「それじゃあ暫くしたらまたアナウンスをするので、それまで捜査頑張ってね〜!」

【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】
316: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:51:19.82 ID:xRQ0DVdX0(40/53)調 AAS
モノクマたちが姿を消すと、私たちは互いに顔を見合わせた。
この中に犯人がいるという事実を受け止めるための時間もなく、学級裁判という未知に挑まねばならない。
これで不安にならないほうが無理な話だ。

愛依「これ、やんなきゃいけないん……だよね?」

円香「今回に限りは犯人の特定をせずとも、私たちが命を落とすことはなさそうですが」

夏葉「いえ……犯人はしっかりと見つけ出しましょう」

夏葉「私たちを欺き、裏切ろうとした人間の悪意に屈するわけにはいかないわ」

(……酷い言われようだな)

灯織「……実際、モノクマの言う通りだと思います」

灯織「今回のコロシアイはチュートリアル。クロにもシロにもリスクのない学級裁判……このシステムに慣れる上ではうってつけです」

灯織「今後のことを考えても、この学級裁判はしっかりと成功させておくべきだと思います」

恋鐘「ばってん、どがんすればよかやろ……?」

霧子「とにかく、捜査をしなくちゃいけないよね……このモノクマファイルだけじゃ、犯人はわからないから……」

樹里「だな……だとすると……二人組で行動するか?」

凛世「二人組、にございますか……?」

樹里「ああ、この中に犯人がいることは確かなんだ。だとしたら、その犯人は現場を荒らそうとするかもしれない」

(……)

透「それを防ぐための監視役ってわけか」

夏葉「ええ、そうしましょう」
317: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:52:21.02 ID:xRQ0DVdX0(41/53)調 AAS
(困ったな……不審な行動をすると怪しまれちゃうかも)

(いや、大丈夫……証拠らしい証拠なんて残ってないはずなんだから)

灯織「……七草さん、わたしと一緒に捜査してもらってもいいですか?」

にちか「……! か、風野さん?」

灯織「特に……組む相手がいないので」

(ああ……私にもルカさんがいないから声をかけたのか)

(……まあ、いいか)

にちか「分かりました、よろしくお願いします」

(風野さんには悪いけど……あなたを騙すことができれば、勝利に一歩繋がる)

(……協力はできないからね)

【捜査開始】
318: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:54:39.51 ID:xRQ0DVdX0(42/53)調 AAS
灯織「まずは改めてモノクマファイルの情報を確認しましょうか」

にちか「そうですね……」

『被害者は【超研究生級のカリスマ】斑鳩ルカ。死亡推定時刻は午後9時半ごろ。死因となったのは腹部に深く突き刺さった包丁による臓物損傷および失血死。他に目立つ外傷はない』

にちか「本当についさっきの出来事だったんですね」

灯織「はい。コロシアイの期限まで1時間を切ったタイミングであの奇妙な音楽が鳴り始めて……そこから30分程度あとの出来事だったみたいです」

にちか「そして死因はお腹に刺さった包丁……」

灯織「だいぶ深くまで刺さってますね……出血量も多そうですし……」

灯織「でも、死因的に即死ではなかったはずですね。刺されてからもしばらく動く余地はあったかもしれません」

にちか「……」

灯織「……七草さん?」

にちか「あ、いえ……なんでも」

(ルカさん……私が刺した後もしばらく意識はあったんだよね……)

(何、思ってたんだろ……)

コトダマゲット!【モノクマファイル1】
〔『被害者は【超研究生級のカリスマ】斑鳩ルカ。死亡推定時刻は午後9時半ごろ。死因となったのは腹部に深く突き刺さった包丁による臓物損傷および失血死。他に目立つ外傷はない』〕
319: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 21:56:46.29 ID:xRQ0DVdX0(43/53)調 AAS
にちか「どうします? 捜査……何をすべきですかねー?」

灯織「そうですね……手前味噌ですが、まずはアリバイの確認から行うべきかと。犯行時刻にはいくつかのグループに分かれて行動していたと記憶しています」

灯織「現場の図書館の捜査はやっぱり最低限必要ですね。斑鳩さんの死体付近だけでなく、満遍なく行いたいです」

灯織「あとは……凶器の出どころの確認でしょうか? あの包丁……おそらく厨房にあったモノだとは思いますが」

(下手に目の前で隠蔽工作なんてするわけにはいかない……)

(私以外がどんな情報をつかんだのかをしっかりと把握して、対抗策を考えるんだ……!)

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1.死体周辺を調べる
2.夏葉に聞き込み
3.円香に聞き込み
4.甘奈に聞き込み
5.あさひに聞き込み
6.本棚を調べる

↓1
321: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:02:29.07 ID:xRQ0DVdX0(44/53)調 AAS
3 選択
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【円香に聞き込み】

にちか「あの、樋口さん……私たちのアリバイについて風野さんに説明してあげてほしいんですけど」

灯織「七草さんと樋口さんは一緒に行動していらっしゃったんですか?」

円香「というより同じ場所に居合わせてた感じ。残り時間も僅かでやることもないし……最後の晩餐気分で食堂にいたの」

透「私と凛世ちゃん、霧子ちゃん、あと真乃ちゃんもいたよ」

にちか「ですです! 事件の時もだいたいずっと一緒でしたよね!」

円香「そうだね、にちかが一回トイレに離れたけど……それぐらいだし。それもそこまで長い時間じゃなかった気がする」

にちか「やっぱりタイムリミットが近くて緊張しちゃって……」

灯織「……なるほど」

透「他に目立った動きもなかったよね? 多分」

円香「だと思う。死体発見アナウンスが流れてからは食堂のメンツ全員揃って現場に行ったし」

灯織「ありがとうございます。整理できました」
322: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:04:10.80 ID:xRQ0DVdX0(45/53)調 AAS
灯織「ちなみに、その最後の晩餐っていうのは何を召し上がっていたんですか?」

円香「忘れた」

灯織「え?」

にちか「なんか悪趣味な名前でしたよね……」

【おはっくま〜〜!!】

モノタロウ「『悪天候で孫が来れなかったこどもの日風ちらし寿司』だよ!」

灯織「えぇ……?」

モノスケ「椎茸の萎び具合がおばあの気落ち具合を巧みに表現しとるんやで! よう塩気の効いたちらしずしやったろ!」

モノタロウ「オイラたちが腕によりをかけて作ったんだ! ねえねえ、美味しかった? 美味しかった?」

円香「……とても、味わう余裕なんてない状況だった」

モノタロウ「しょんぼり……」

モノスケ「ぼりしょん……」

【ばーいくま〜〜!!】

にちか「……らしいです」

灯織「よくわかりました……」

コトダマゲット!【事件当時のアリバイ】
〔事件当時、コロシアイ参加者たちは三つのグループに分かれていた。

うち食堂で食事をしていたグループは真乃、霧子、凛世、透、円香、にちかの六人で9時前から全員が集まっていた。一度にちかがトイレに抜けた以外は事件まで全員同じ場所にとどまっていた。〕

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1.死体周辺を調べる
2.夏葉に聞き込み
3.甘奈に聞き込み
4.あさひに聞き込み
5.本棚を調べる

↓1
324: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:08:40.40 ID:xRQ0DVdX0(46/53)調 AAS
2 選択
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【夏葉に聞き込み】

にちか「あの、すみません……有栖川さん!」

夏葉「あら、どうしたの? 捜査は順調かしら」

灯織「いえ……まだおぼつかない事ばかりで」

にちか「事件当時のアリバイを聞きたいんですけど……モノクマに反抗を決めたグループって有栖川さんの他にはどなたがいたんですかね?」

夏葉「ええ、私、めぐる、恋鐘、樹里、愛依の五人ね。この五人で事件が起きた時も一緒に行動していたわ」

灯織「事件当時は……どこに?」

夏葉「この図書室の隣の【ゲームルーム】よ。あそこに武器を集めて決起集会をしていたの」

夏葉「確かあの音楽が鳴り始める少し前……8時半ぐらいから私は準備をし始めて」

夏葉「9時15分には他の四人も集まっていたはずよ」

灯織「事件が起きたより後に合流した方はいなかったんですね」

夏葉「ええ……そうなるわね」
325: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:09:26.30 ID:xRQ0DVdX0(47/53)調 AAS
夏葉「……いや、ちょっと待ってちょうだい。途中で【愛依はしばらく抜けていたタイミングがあった】はず」

にちか「……! 愛依さんが?」

夏葉「そう、確かあさひを一人にしておくのは忍びないから探してくると言って……でも、結局戻ってきた時も一人だったわね。どうやら見つけられなかったみたい」

灯織「それ、いつ頃の話だったかは分かりますか?」

夏葉「ええ……多分9時20分すぎぐらいから15分前後よ」

(事件の発生時刻と重なってる……)

(これは利用できるかもしれないな)

コトダマアップデート!【事件当時のアリバイ】
〔事件当時、コロシアイ参加者たちは三つのグループに分かれていた。

うちモノクマへの抵抗を試みようとしていた武装グループはめぐる、恋鐘、夏葉、樹里、愛依の五人で9時15分には全員が地下のゲームルームに集まっていた。20分過ぎから愛依があさひを探しに15分前後離脱している

うち食堂で食事をしていたグループは真乃、霧子、凛世、透、円香、にちかの六人で9時前から全員が集まっていた。一度にちかがトイレに抜けた以外は事件まで全員同じ場所にとどまっていた。〕

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1.死体周辺を調べる
2.甘奈に聞き込み
3.あさひに聞き込み
4.本棚を調べる

↓1
327: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:13:31.42 ID:xRQ0DVdX0(48/53)調 AAS
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【あさひに聞き込み】

他の人たちより一際目立って捜査に熱中している様子の少女が一人。
手には何やらインスタントカメラのようなものが握られて、現場を歩き回っては写真の撮影を繰り返している。
それについて回る愛依さんはあたふたしてばかり。

にちか「あ、あの……芹沢さん、ちょっといい?」

あさひ「……」

愛依「あさひちゃん、あさひちゃん! なんかお話あるみたいだけど?!」

あさひ「……? なんっすか?」

この子には個人的に聞きたいことがある。
この子も風野さんたちと同様に事件当時に単独行動をしていた人間ではあるが、私たちはその姿を死体発見の直前に目撃している。
死体発見アナウンスが鳴る直前、ひょっこり近くの教室から姿を現した彼女のことが、妙に気に掛かっていた。

にちか「今さ、みんなにアリバイを聞いて回ってるんだけど……事件が起きた時、芹沢さんは何してた?」

あさひ「何してた……っすか?」

あさひ「……」

あさひ「何してたんっすかね……?」

灯織「え……?」
328: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:15:55.36 ID:xRQ0DVdX0(49/53)調 AAS
あさひ「別に何かしようと思ってた訳じゃないんっすよ。ただ後1時間で時間切れだし、死んじゃうし……死んだ後ってどうなるのかなって考えてたんっすよ」

あさひ「だから、何にもしてないっす」

にちか「は、はぁ……」

愛依「ムツカシーこと考えてたんだね、あさひちゃん! ところで、それ……いつからどこで考えてた系?」

あさひ「えっと……あのうるさい音楽が流れてくるよりも前っすね。地下に降りる階段近くの教室で考えてたっす」

あさひ「しばらく考えてたら【廊下を夏葉さんたちが通って地下に行くのが見えた】っす」

愛依「え、そーなん? うちらの姿見てたカンジ?」

あさひ「そうっす。夏葉さん、樹里ちゃん、恋鐘ちゃん、めぐるちゃん、愛依ちゃんの姿は見たっすよ」

(モノクマと戦うことを選んだ人たちか……)
329: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:17:03.99 ID:xRQ0DVdX0(50/53)調 AAS
あさひ「それも気になったから、そこからはずっと廊下を見てたっすよ」

にちか「え? ずっと? 死体発見まで?」

あさひ「はいっす。まあ途中よそ見したとかはあったかもしれないっすけど……基本はずっと見てたと思うっす」

あさひ「でも【そこから他に通った人はいなかった】っすね。地下に行く人も、地下から出てきた人もいないっす」

灯織「なるほど……そうなると地下に行けたのはその五人に限られるんだ」

これは相当強い目撃証言だな……
芹沢さんが教室にいたこと自体は食堂組が裏付けている事実でもあるし、妥当性が高い。
この情報がかなりネックになるのかも……!

コトダマアップデート!【事件当時のアリバイ】
〔事件当時、コロシアイ参加者たちは三つのグループに分かれていた。

うち食堂で食事をしていたグループは真乃、霧子、凛世、透、円香、にちかの六人で9時前から全員が集まっていた。一度にちかがトイレに抜けた以外は事件まで全員同じ場所にとどまっていた。

うちモノクマへの抵抗を試みようとしていた武装グループはめぐる、恋鐘、夏葉、樹里、愛依の五人で9時15分には全員が地下のゲームルームに集まっていた。20分過ぎから愛依があさひを探しに15分前後離脱している。

うち単独行動をしていたグループは灯織、甘奈、甜花、あさひの四人。あさひは地下に向かう階段近くの教室にそれぞれ事件当時も篭りっぱなしだった。〕

コトダマゲット!【あさひの証言】
〔あさひはコロシアイ促進BGMが流れ出す前から地下に向かう階段近くにおり、ずっと廊下の様子を見ていた。めぐる、恋鐘、夏葉、樹里、愛依が階段を降りていく他には廊下を行き来する人は目撃していないらしい〕

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1.死体周辺を調べる
2.甘奈に聞き込み
3.本棚を調べる

↓1
331: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:21:31.19 ID:xRQ0DVdX0(51/53)調 AAS
2 選択
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【甘奈に聞き込み】

灯織「えっと……大崎……さん、ちょっといいですか?」

甘奈「あっ……えっと、お姉ちゃんが甜花ちゃんで、甘奈が妹の甘奈だよ。下の名前で呼んでくれて大丈夫!」

灯織「あっ……ええ……」

甘奈「灯織ちゃん……?」

灯織「……あ、甘奈……さん、事件当時のアリバイをお聞きしても」

甘奈「もー、さん付なんていらないって! 甘奈で呼んでくれていいんだよ?」

(眩しい人だな……)

甜花「な、なーちゃん……」

甘奈「あっ、そうだ……アリバイだよね? うーん……でも事件の時って確か……」

甜花「甜花となーちゃんはずっと……【なーちゃんの部屋で一緒にいた】だけだから……」

にちか「寄宿舎の個室の中です?」

甜花「うん……朝から、殆ど出てない……」

にちか「うーん……二人でいた、ですか」

甘奈「甜花ちゃんはお部屋から全く出てないよ! 甘奈が証人になれるし……!」

甜花「な、なーちゃんも一歩も出てない……!」
332: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:22:36.81 ID:xRQ0DVdX0(52/53)調 AAS
灯織「相互の証言があるならひとまず信用していいんですかね……?」

にちか「ですかねー……でも、姉妹だしなー、庇うとかあるかも……」

甘奈「そ、そんなんじゃないよ!」

(まあ、アリバイがあってもなくても……行き着くところは私が一番よく知ってるんだけどね)

にちか「そういえば、風野さんも事件当時のアリバイ聞いてもいいです?」

にちか「大崎さんたちと同じで、単独行動してたんですよね?」

灯織「あっ……はい……私はモノクマたちから身を隠そうと裏庭のマンホールの中にこもってました」

(何やってんだこの人……)

灯織「少しでも生き残れる可能性を増やそうとしてたんですが……梯子に捕まってる間に死体発見アナウンスが鳴って、慌てて駆けつけたんです」

にちか「まあ……アリバイはなしって事ですね」

灯織「う、うぅ……」

コトダマアップデート!【事件当時のアリバイ】
〔事件当時、コロシアイ参加者たちは三つのグループに分かれていた。

うち食堂で食事をしていたグループは真乃、霧子、凛世、透、円香、にちかの六人で9時前から全員が集まっていた。一度にちかがトイレに抜けた以外は事件まで全員同じ場所にとどまっていた。

うちモノクマへの抵抗を試みようとしていた武装グループはめぐる、恋鐘、夏葉、樹里、愛依の五人で9時15分には全員が地下のゲームルームに集まっていた。20分過ぎから愛依があさひを探しに15分前後離脱している。

うち単独行動をしていたグループは灯織、甘奈、甜花、あさひの四人。甘奈と甜花は甘奈の個室、灯織は裏庭のマンホールにそれぞれ事件当時も篭りっぱなしだった。あさひは地下に向かう階段近くの教室にそれぞれ事件当時も篭りっぱなしだった。〕

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1.死体周辺を調べる
2.本棚を調べる

↓1
334: ◆vqFdMa6h2. [saga] 2023/06/10(土) 22:29:29.64 ID:xRQ0DVdX0(53/53)調 AAS
少しキリが悪いですが、死体周辺を調べ始めると少し長くなるので本日はここまでで。
いよいよ事件発生までお話を進めることができました。

また明日、捜査パートの続きから再開いたします。
それではありがとうございました。またよろしくお願いします。
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