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配当金・株主優待スレッド 526 [無断転載禁止]©2ch.net (186レス)
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67
: 2016/05/18(水) 19:20:16.66
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67: [sage] 2016/05/18(水) 19:20:16.66 ID:4uTcWgUe 「だって余あんまりだわ。この御天気にそんな厚いものを着て出るなんて」 「何、日が暮れたら寒いだろうと思って」と小六は云訳いいわけを半分しながら、嫂あによめの後あとに 跟ついて、茶の間へ通ったが、縫い掛けてある着物へ眼を着けて、 「相変らず精が出ますね」と云ったなり、長火鉢ながひばちの前へ胡坐あぐらをかいた。嫂は裁縫を隅す みの方へ押しやっておいて、小六の向むこうへ来て、ちょっと鉄瓶てつびんをおろして炭を継つぎ始めた 。 「御茶ならたくさんです」と小六が云った。 「厭いや?」と女学生流に念を押した御米は、 「じゃ御菓子は」と云って笑いかけた。 「あるんですか」と小六が聞いた。 「いいえ、無いの」と正直に答えたが、思い出したように、「待ってちょうだい、あるかも知れないわ」 と云いながら立ち上がる拍子ひょうしに、横にあった炭取を取り退のけて、袋戸棚ふくろとだなを開けた 。小六は御米の後姿うしろすがたの、羽織はおりが帯で高くなった辺あたりを眺ながめていた。何を探さ がすのだかなかなか手間てまが取れそうなので、 「じゃ御菓子も廃よしにしましょう。それよりか、今日は兄さんはどうしました」と聞いた。 「兄さんは今ちょいと」と後向のまま答えて、御米はやはり戸棚の中を探している。やがてぱたりと戸を 締めて、 「駄目よ。いつの間まにか兄さんがみんな食べてしまった」と云いながら、また火鉢の向むこうへ帰って 来た。 「じゃ晩に何か御馳走ごちそうなさい」 「ええしてよ」と柱時計を見ると、もう四時近くである。御米は「四時、五時、六時」と時間を勘定かん じょうした。小六は黙って嫂の顔を見ていた。彼は実際嫂の御馳走には余り興味を持ち得なかったのであ る。 「姉さん、兄さんは佐伯さえきへ行ってくれたんですかね」と聞いた。 「この間から行く行くって云ってる事は云ってるのよ。だけど、兄さんも朝出て夕方に帰るんでしょう。 帰ると草臥くたびれちまって、御湯に行くのも大儀そうなんですもの。だから、そう責めるのも実際御気 の毒よ」 「そりゃ兄さんも忙がしいには違なかろうけれども、僕もあれがきまらないと気がかりで落ちついて勉強 もできないんだから」と云いながら、小六は真鍮しんちゅうの火箸ひばしを取って火鉢ひばちの灰の中へ 何かしきりに書き出した。御米はその動く火箸の先を見ていた。 「だから先刻さっき手紙を出しておいたのよ」と慰めるように云った。 「何て」 「そりゃ私わたしもつい見なかったの。けれども、きっとあの相談よ。今に兄さんが帰って来たら聞いて 御覧なさい。きっとそうよ」 「もし手紙を出したのなら、その用には違ないでしょう」 「ええ、本当に出したのよ。今兄さんがその手紙を持って、出しに行ったところなの」 小六はこれ以上弁解のような慰藉いしゃのような嫂あによめの言葉に耳を借したくなかった。散歩に出 る閑ひまがあるなら、手紙の代りに自分で足を運んでくれたらよさそうなものだと思うと余り好い心持で もなかった。座敷へ来て、書棚の中から赤い表紙の洋書を出して、方々頁ページを剥はぐって見ていた。 二 そこに気のつかなかった宗助そうすけは、町の角かどまで来て、切手と「敷島しきしま」を同じ店で買 って、郵便だけはすぐ出したが、その足でまた同じ道を戻るのが何だか不足だったので、啣くわえ煙草た ばこの煙けむを秋の日に揺ゆらつかせながら、ぶらぶら歩いているうちに、どこか遠くへ行って、東京と 云う所はこんな所だと云う印象をはっきり頭の中へ刻みつけて、そうしてそれを今日の日曜の土産みやげ に家うちへ帰って寝ねようと云う気になった。彼は年来東京の空気を吸って生きている男であるのみなら http://potato.5ch.net/test/read.cgi/stock/1456225981/67
だって余あんまりだわこの御天気にそんな厚いものを着て出るなんて 何日が暮れたら寒いだろうと思ってと小六は云訳いいわけを半分しながらあによめの後あとに ついて茶の間へ通ったが縫い掛けてある着物へ眼を着けて 相変らず精が出ますねと云ったなり長火鉢ながひばちの前へ胡坐あぐらをかいたは裁縫を隅す みの方へ押しやっておいて小六の向むこうへ来てちょっと鉄瓶てつびんをおろして炭を継つぎ始めた 御茶ならたくさんですと小六が云った 厭いや?と女学生流に念を押した御米は じゃ御菓子はと云って笑いかけた あるんですかと小六が聞いた いいえ無いのと正直に答えたが思い出したように待ってちょうだいあるかも知れないわ と云いながら立ち上がる拍子ひょうしに横にあった炭取を取り退のけて袋戸棚ふくろとだなを開けた 小六は御米の後姿うしろすがたの羽織はおりが帯で高くなった辺あたりを眺ながめていた何を探さ がすのだかなかなか手間てまが取れそうなので じゃ御菓子も廃よしにしましょうそれよりか今日は兄さんはどうしましたと聞いた 兄さんは今ちょいとと後向のまま答えて御米はやはり戸棚の中を探しているやがてぱたりと戸を 締めて 駄目よいつの間まにか兄さんがみんな食べてしまったと云いながらまた火鉢の向むこうへ帰って 来た じゃ晩に何か御馳走ごちそうなさい ええしてよと柱時計を見るともう四時近くである御米は四時五時六時と時間を勘定かん じょうした小六は黙っての顔を見ていた彼は実際の御馳走には余り興味を持ち得なかったのであ る 姉さん兄さんは佐伯さえきへ行ってくれたんですかねと聞いた この間から行く行くって云ってる事は云ってるのよだけど兄さんも朝出て夕方に帰るんでしょう 帰ると草臥くたびれちまって御湯に行くのも大儀そうなんですものだからそう責めるのも実際御気 の毒よ そりゃ兄さんも忙がしいには違なかろうけれども僕もあれがきまらないと気がかりで落ちついて勉強 もできないんだからと云いながら小六は真しんちゅうの火箸ひばしを取って火鉢ひばちの灰の中へ 何かしきりに書き出した御米はその動く火箸の先を見ていた だから先刻さっき手紙を出しておいたのよと慰めるように云った 何て そりゃ私わたしもつい見なかったのけれどもきっとあの相談よ今に兄さんが帰って来たら聞いて 御覧なさいきっとそうよ もし手紙を出したのならその用には違ないでしょう ええ本当に出したのよ今兄さんがその手紙を持って出しに行ったところなの 小六はこれ以上弁解のような慰いしゃのようなあによめの言葉に耳を借したくなかった散歩に出 る閑ひまがあるなら手紙の代りに自分で足を運んでくれたらよさそうなものだと思うと余り好い心持で もなかった座敷へ来て書棚の中から赤い表紙の洋書を出して方頁ページを剥はぐって見ていた 二 そこに気のつかなかった宗助そうすけは町の角かどまで来て切手と敷島しきしまを同じ店で買 って郵便だけはすぐ出したがその足でまた同じ道を戻るのが何だか不足だったのでくわえ煙草た ばこの煙けむを秋の日に揺ゆらつかせながらぶらぶら歩いているうちにどこか遠くへ行って東京と 云う所はこんな所だと云う印象をはっきり頭の中へ刻みつけてそうしてそれを今日の日曜の土産みやげ に家うちへ帰って寝ねようと云う気になった彼は年来東京の空気を吸って生きている男であるのみなら
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