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配当金・株主優待スレッド 526 [無断転載禁止]©2ch.net (186レス)
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138
: 2016/05/18(水) 22:02:29.71
ID:4uTcWgUe(82/130)
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138: [sage] 2016/05/18(水) 22:02:29.71 ID:4uTcWgUe おれが玉子をたたきつけているうち、山嵐と赤シャツはまだ談判最中である。 「芸者をつれて僕が宿屋へ泊ったと云う証拠しょうこがありますか」 「宵に貴様のなじみの芸者が角屋へはいったのを見て云う事だ。胡魔化せるものか」 「胡魔化す必要はない。僕は吉川君と二人で泊ったのである。芸者が宵にはいろうが、はいるまいが、僕 の知った事ではない」 「だまれ」と山嵐は拳骨げんこつを食わした。赤シャツはよろよろしたが「これは乱暴だ、狼藉ろうぜき である。理非を弁じないで腕力に訴えるのは無法だ」 「無法でたくさんだ」とまたぽかりと撲なぐる。「貴様のような奸物はなぐらなくっちゃ、答えないんだ 」とぽかぽかなぐる。おれも同時に野だを散々に擲き据えた。しまいには二人とも杉の根方にうずくまっ て動けないのか、眼がちらちらするのか逃げようともしない。 「もうたくさんか、たくさんでなけりゃ、まだ撲なぐってやる」とぽかんぽかんと両人ふたりでなぐった ら「もうたくさんだ」と云った。野だに「貴様もたくさんか」と聞いたら「無論たくさんだ」と答えた。 「貴様等は奸物だから、こうやって天誅を加えるんだ。これに懲こりて以来つつしむがいい。いくら言葉 巧たくみに弁解が立っても正義は許さんぞ」と山嵐が云ったら両人共ふたりともだまっていた。ことによ ると口をきくのが退儀たいぎなのかも知れない。 「おれは逃げも隠かくれもせん。今夜五時までは浜の港屋に居る。用があるなら巡査じゅんさなりなんな り、よこせ」と山嵐が云うから、おれも「おれも逃げも隠れもしないぞ。堀田と同じ所に待ってるから警 察へ訴うったえたければ、勝手に訴えろ」と云って、二人してすたすたあるき出した。 おれが下宿へ帰ったのは七時少し前である。部屋へはいるとすぐ荷作りを始めたら、婆さんが驚いて、 どうおしるのぞなもしと聞いた。お婆さん、東京へ行って奥さんを連れてくるんだと答えて勘定を済まし て、すぐ汽車へ乗って浜へ来て港屋へ着くと、山嵐は二階で寝ていた。おれは早速辞表を書こうと思った が、何と書いていいか分らないから、私儀わたくしぎ都合有之これあり辞職の上東京へ帰り申候もうしそ ろにつき左様御承知被下度候さようごしょうちくだされたくそろ以上とかいて校長宛あてにして郵便で出 した。 汽船は夜六時の出帆しゅっぱんである。山嵐もおれも疲れて、ぐうぐう寝込んで眼が覚めたら、午後二 時であった。下女に巡査は来ないかと聞いたら参りませんと答えた。「赤シャツも野だも訴えなかったな あ」と二人は大きに笑った。 その夜おれと山嵐はこの不浄ふじょうな地を離はなれた。船が岸を去れば去るほどいい心持ちがした。 神戸から東京までは直行で新橋へ着いた時は、ようやく娑婆しゃばへ出たような気がした。山嵐とはすぐ 分れたぎり今日まで逢う機会がない。 清きよの事を話すのを忘れていた。――おれが東京へ着いて下宿へも行かず、革鞄かばんを提げたまま 、清や帰ったよと飛び込んだら、あら坊っちゃん、よくまあ、早く帰って来て下さったと涙なみだをぽた ぽたと落した。おれもあまり嬉うれしかったから、もう田舎いなかへは行かない、東京で清とうちを持つ んだと云った。 その後ある人の周旋しゅうせんで街鉄がいてつの技手になった。月給は二十五円で、家賃は六円だ。清 は玄関げんかん付きの家でなくっても至極満足の様子であったが気の毒な事に今年の二月肺炎はいえんに 罹かかって死んでしまった。死ぬ前日おれを呼んで坊っちゃん後生だから清が死んだら、坊っちゃんのお 寺へ埋うめて下さい。お墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待っておりますと云った。だから清の 墓は小日向こびなたの養源寺にある。 (明治三十九年四月) 宗助そうすけは先刻さっきから縁側えんがわへ坐蒲団ざぶとんを持ち出して、日当りの好さそうな所へ 気楽に胡坐あぐらをかいて見たが、やがて手に持っている雑誌を放り出すと共に、ごろりと横になった。 秋日和あきびよりと名のつくほどの上天気なので、往来を行く人の下駄げたの響が、静かな町だけに、朗 らかに聞えて来る。肱枕ひじまくらをして軒から上を見上げると、奇麗きれいな空が一面に蒼あおく澄ん でいる。その空が自分の寝ている縁側の、窮屈な寸法に較くらべて見ると、非常に広大である。たまの日 曜にこうして緩ゆっくり空を見るだけでもだいぶ違うなと思いながら、眉まゆを寄せて、ぎらぎらする日 をしばらく見つめていたが、眩まぼ[#ルビの「まぼ」はママ]しくなったので、今度はぐるりと寝返り をして障子しょうじの方を向いた。障子の中では細君が裁縫しごとをしている。 http://potato.5ch.net/test/read.cgi/stock/1456225981/138
おれが玉子をたたきつけているうち山嵐と赤シャツはまだ談判最中である 芸者をつれて僕が宿屋へ泊ったと云う証拠しょうこがありますか 宵に貴様のなじみの芸者が角屋へはいったのを見て云う事だ胡魔化せるものか 胡魔化す必要はない僕は吉川君と二人で泊ったのである芸者が宵にはいろうがはいるまいが僕 の知った事ではない だまれと山嵐は拳骨げんこつを食わした赤シャツはよろよろしたがこれは乱暴だ狼ろうぜき である理非を弁じないで腕力に訴えるのは無法だ 無法でたくさんだとまたぽかりと撲なぐる貴様のような物はなぐらなくっちゃ答えないんだ とぽかぽかなぐるおれも同時に野だを散にき据えたしまいには二人とも杉の根方にうずくまっ て動けないのか眼がちらちらするのか逃げようともしない もうたくさんかたくさんでなけりゃまだ撲なぐってやるとぽかんぽかんと両人ふたりでなぐった らもうたくさんだと云った野だに貴様もたくさんかと聞いたら無論たくさんだと答えた 貴様等は物だからこうやって天を加えるんだこれに懲こりて以来つつしむがいいいくら言葉 巧たくみに弁解が立っても正義は許さんぞと山嵐が云ったら両人共ふたりともだまっていたことによ ると口をきくのが退儀たいぎなのかも知れない おれは逃げも隠かくれもせん今夜五時までは浜の港屋に居る用があるなら巡査じゅんさなりなんな りよこせと山嵐が云うからおれもおれも逃げも隠れもしないぞ堀田と同じ所に待ってるから警 察へ訴うったえたければ勝手に訴えろと云って二人してすたすたあるき出した おれが下宿へ帰ったのは七時少し前である部屋へはいるとすぐ荷作りを始めたら婆さんが驚いて どうおしるのぞなもしと聞いたお婆さん東京へ行って奥さんを連れてくるんだと答えて勘定を済まし てすぐ汽車へ乗って浜へ来て港屋へ着くと山嵐は二階で寝ていたおれは早速辞表を書こうと思った が何と書いていいか分らないから私儀わたくしぎ都合有之これあり辞職の上東京へ帰り申候もうしそ ろにつき左様御承知被下度候さようごしょうちくだされたくそろ以上とかいて校長宛あてにして郵便で出 した 汽船は夜六時の出帆しゅっぱんである山嵐もおれも疲れてぐうぐう寝込んで眼が覚めたら午後二 時であった下女に巡査は来ないかと聞いたら参りませんと答えた赤シャツも野だも訴えなかったな あと二人は大きに笑った その夜おれと山嵐はこの不浄ふじょうな地を離はなれた船が岸を去れば去るほどいい心持ちがした 神戸から東京までは直行で新橋へ着いた時はようやく婆しゃばへ出たような気がした山嵐とはすぐ 分れたぎり今日まで逢う機会がない 清きよの事を話すのを忘れていたおれが東京へ着いて下宿へも行かず革鞄かばんを提げたまま 清や帰ったよと飛び込んだらあら坊っちゃんよくまあ早く帰って来て下さったと涙なみだをぽた ぽたと落したおれもあまり嬉うれしかったからもう田舎いなかへは行かない東京で清とうちを持つ んだと云った その後ある人の周旋しゅうせんで街鉄がいてつの技手になった月給は二十五円で家賃は六円だ清 は玄関げんかん付きの家でなくっても至極満足の様子であったが気の毒な事に今年の二月肺炎はいえんに かかって死んでしまった死ぬ前日おれを呼んで坊っちゃん後生だから清が死んだら坊っちゃんのお 寺へ埋うめて下さいお墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待っておりますと云っただから清の 墓は小日向こびなたの養源寺にある 明治三十九年四月 宗助そうすけは先刻さっきから縁側えんがわへ坐蒲団ざぶとんを持ち出して日当りの好さそうな所へ 気楽に胡坐あぐらをかいて見たがやがて手に持っている雑誌を放り出すと共にごろりと横になった 秋日和あきびよりと名のつくほどの上天気なので往来を行く人の下駄げたの響が静かな町だけに朗 らかに聞えて来る肱枕ひじまくらをして軒から上を見上げると奇麗きれいな空が一面に蒼あおく澄ん でいるその空が自分の寝ている縁側の窮屈な寸法に較くらべて見ると非常に広大であるたまの日 曜にこうして緩ゆっくり空を見るだけでもだいぶ違うなと思いながら眉まゆを寄せてぎらぎらする日 をしばらく見つめていたがまぼルビのまぼはママしくなったので今度はぐるりと寝返り をして障子しょうじの方を向いた障子の中では細君が裁縫しごとをしている
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