SSスレ (980レス)
上下前次1-新
448: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/21(火) 01:10 ID:imAIk9NE(99/144)調 AAS
赤羽はこの手紙を出した人間こそ、この世界における最も厄介な物になり得ると考えていた。
たった一度の戦いで今まで召還された島々への偏見を無くし、こちらの力を見極める。
更には国家としてではなく国家から独立してこちらと友好関係を結ぼうと強いているのにもかかわらず、
候と名乗り、自らを王家の臣下としている。
そして特筆すべきはこの手紙には一言もアジェント国家全体と日本との友好などは書かれていない。
つまりこの手紙の主はおそらく日本と王家を戦わせようとしているのだ。
恐らくは自らの野望のために。
「危険だな・・・。」
赤羽は手紙を見ながら満面の笑みを浮かべている袴を見て呟いた。
449: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/21(火) 01:10 ID:imAIk9NE(100/144)調 AAS
「アルクアイーっ!」
ラーヴィナ、ウェルズ邸中庭。
アルクアイが自らのワイバーンに乗ろうとしている時、彼に少女の声が掛けられた。
13、4と言ったころの少女であった。それを見るとアルクアイはすぐさま臣下の礼をとった。
「これは・・・ファンナ様。」
「もうっ、ファンナって呼んでって何度も言ってるじゃない。」
ファンナ=ラーヴァス。ウェルン=ラーヴァスの娘であった。
またそれはウェルズの孫娘、と言うことでもある。
そして3、4歳の時に彼女の父ウェルンが淫欲に溺れたがために(アルクアイのせいなのだが)、
アルクアイにその養育が任されていたのであった。しかしこの二人の関係はどちらかと言うと兄妹に近かった。
「それで、航海から帰ったのなら言ってくれれば良かったのに。」
ファンナが頬をプッと膨らます。その態度にアルクアイは軽く笑って答えた。
「すみません、帰還後の処理に追われていたもので・・・。」
「けど、またしばらく一緒なんでしょ?」
ファンナがアルクアイの腕を抱き、上目使いで彼を見る。
13、14と言うのはこの世界でしかも女子ならば結婚してもなんらおかしくない年齢であった。
そしてこの少女はその結婚相手を自分の父代わりで兄代わりでもあるアルクアイと心に決めていた。
そしてまたアルクアイも自分のせいで親に愛してもらえなくなった彼女へのわずかな罪の意識もあり、
彼女を粗末に扱うようなことは決してなかった。
450: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/21(火) 01:11 ID:imAIk9NE(101/144)調 AAS
しかしこのときばかりはアルクアイは心底申し訳なさそうに答えた。
「すみません、これからすぐに王侯会議に出るためにまた行かねばならないのです。」
王と各大臣そして全ての諸侯が集まるこの会議、これこそアルクアイの計画の要であった。
「えっ、なんで?前回まではおじい様が行ってたじゃない。」
「ええ、ですがウェルズ様は今はご病気です。だから私が代理として行くのです。」
そしてアルクアイは少し声色を変え、ファンナの頭に手をポンと置き、言った。
「すまないな。」
「・・・。」
ファンナが俯いて何も言わないのを確認するとアルクアイはワイバーンの背に跨った。
ワイバーンは軽くキュルルンと鳴き、それを歓迎した。
そしてその時アルクアイは自分の服の袖を掴まれていることに気が付いた。そして後ろを振り返る。
「ファンナ様・・・。」
「わたしも一緒に行く。」
そう宣言してファンナもまたアルクアイの後ろに跨った。ワイバーンは特に嫌がるそぶりも見せず、キュウと鳴いた。
「ファンナ、しっかり掴まっていろよ?」
「うんっ!」
自分達の周りにマナの壁を作りそしてワイバーンを飛び立たせる。向かう先は王都。
こんなにも自分を慕う少女を背中に感じ、アルクアイはまた、この少女を不幸にしたのは自分であることを思い、僅かな後ろめたさを感じていた。
451: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/21(火) 01:11 ID:imAIk9NE(102/144)調 AAS
佐世保基地、寝所。
青島はベッドに横たわったまま加藤の落とした物と思われる名刺入れを眺めていた。
赤羽海将の写真が入った物だったが、いったい何故だろうか。
「ま、考えていても仕様が無いか・・・。」
「なにがしょうがないんすか隊長。」
ボソッと言った呟きを聞き取り佐藤がいきなり青島に声をかけた。
「わっ、佐藤・・・どうしたいきなり。」
「あ、いや、天野さんがほぼ前回の見通しが立ったらしいんで。伝えようかと。」
「そうか、有難う。」
話によると内臓や骨、筋肉などに当たらずに貫いたのが良かったらしい。
もしあれが銃などだったら回転で内蔵をズタズタにされていただろう。
「それにしても隊長随分可愛い名刺入れ持ってますね〜。女物じゃないですかそれ?」
「あ、いや。」
慌てて青島はポケットにしまいこんだが、もう遅かった。
「どうしたんすかそれ〜。」
佐藤は面白がって更に突っ込んでくる。
「いや、俺の物じゃないんだよこれは、・・・加藤陸三尉が落とした物だ。」
その答えに佐藤は目を丸くした。
「え?あの名物三尉?」
予想外の答えに青島も目を丸くした。
「有名なのか?」
「有名も何も知らないんっすか?」
それから佐藤が話した物は話半分の噂の集まりだった。
しかしとにかくそれらに共通している物は男勝りの性格と、高い能力。
そして赤羽海将となんらかの関係がある、ということであった。
452: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/21(火) 01:12 ID:imAIk9NE(103/144)調 AAS
「隠し子説とか愛人説とか色々あるっすよ。それにどっちにしろ可愛いから有名にはなるっすよね。」
佐藤は散々しゃべり倒してその言葉で話を切った。
「あ〜、よく分からんがすごい人なんだな?」
「まあ、そういうことです・・・しかも派手な赤いバッジをいつも付けてて・・・って、え!?」
佐藤はそう言いながら青島を見て妙な顔をした。目線ははっきりと青島のつけている赤いバッジに向いている。
「どうしたんすかソレ!?」
「ん・・・、説明すると長くなるからやめとく。」
「ならいいっす。」
佐藤はしげしげと赤いバッジを見ていたが、あっさりと身を引いた。
「直接返したほうが早いよな・・・。」
再び出した名刺入れを見ながら青島はぼうっと呟いた。
453: 2004/09/21(火) 01:17 ID:imAIk9NE(104/144)調 AAS
投下終了です。
全然話が進んでない・・・。orz小休止と思ってください。
ではご意見、ご感想、お待ちしております。
454: 2004/09/21(火) 02:02 ID:HiGBWxPw(1/2)調 AAS
乙です
仮に踊らされてもそれで日本の国益になるならいいような
とっかかり無い状況だったので友好的な外交はうれしいだろな
455: 名無し三等兵@F世界 2004/09/21(火) 08:13 ID:Q/M7PaiY(1)調 AAS
ますますセフェティナの運命が気になる
456: 名無し三等兵@F世界 2004/09/21(火) 17:19 ID:/JxOKHjA(1/2)調 AAS
投下された話、読みました。
アルクアイの意外な一面、ほんとに意外です。
457: 名無し三等兵@F世界 2004/09/21(火) 21:54 ID:oq8PESgU(1)調 AAS
もし出兵が決定し一個師団を送る事になったらどれぐらいの艦艇が必要になるのだ?
458: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/22(水) 11:18 ID:imAIk9NE(105/144)調 AAS
まだ題名を決めていなかったことに今更気付く。
まあいいかとも思いつつ投下します。
459: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/22(水) 11:19 ID:imAIk9NE(106/144)調 AAS
次の日からはセフェティナからの情報収集はだいぶ少なくなっていた。
おそらく異世界からの使者が来たせいだろう。
情報収集はそちらで十分行えるということだった。
しかしその分使者達の真意を探るためにセフェティナにも
政治的にエグイ質問をしなくてはならなくなり青島は気を使わなければならなかったが。
そしてその日の情報収集を終え、青島は相変わらず監視役をやっている結衣に話しかけた。
「何か用?」
相も変わらずつっけんどんな応答に少し苦笑して青島は名刺入れを差し出した。
それを見た瞬間に結衣の表情が一変した。
「あっ、・・・それっ!」
「落ちていたんだ。たぶん結衣三尉のだろう?」
「・・・。」
結衣はそれをひったくるように青島の手から奪った、その顔は真っ赤となっている。
おそらく可愛らしいデザインの名刺入れを見られたことが恥ずかしいのだろう。
「・・・見たの、写真?」
しかし予想に反して真っ赤になりながら搾り出すような声で結衣は言った。
460: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/22(水) 11:19 ID:imAIk9NE(107/144)調 AAS
「え、・・・何のこと?」
とりあえず中身を見た事をごまかそうと青島はとぼけた。しかしそれを結衣は冷たく返した。
「とぼける必要は無いわ。見たのね・・・。」
「・・・ごめん。」
素直に謝ったのが意外だったのか結衣は目を丸くした。
「えっ?いや、別にいいんだけど・・・。」
「けれど何で彼の写真なんか持っているんだ?」
その様子を見て今がチャンスとばかりに青島は聞いた。
これも不意打ちだったらしく結衣は顔を赤くした。
「それは・・・別にいいでしょそんなこと。そっ、それよりも良いの?彼女をほっといて。」
「えっ?」
結衣の目で指す場所を見ようと振り返る。そこには心配そうな顔をしたセフェティナが立っていた。
「あっ、ご、ごめんセフェティナ・・・。じゃあそろそろ行こうか。」
「あっ、はい。」
結衣に会釈をして部屋を出て行こうとする青島にすれ違いざまに結衣は小声で言った。
「赤羽海将の写真の理由・・・気が向いたら教えてあげる。」
どういう心変わりかと青島は結衣の方を見たが、その顔は後ろを見ているために見る事は叶わなかった。
461: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/22(水) 11:20 ID:imAIk9NE(108/144)調 AAS
アジェント北、国境付近。といっても国境など確かに定まってもいないが。
目の前に居る一万はいようかと言う遊牧民の騎馬軍団を前にたった一人で立つ男が居た。
名はアルヴァール。
魔術大臣であり、現国王の孫娘アシェリーナ姫の養育係でもある男だった。
今行うべき任務は略奪行為を行う遊牧民の撃退。
勢力も弱いアジェント北のサフラーヌ侯が撃退しきれずに王家に助けを求めて来た為であった。
しかしアルヴァールは焦っていた。
理由はたった一つ、今王都で開かれようとしている王侯会議であった。
この会議、内容は二つであった。一つは毎年定例のように行われる新しく召還した島への侵攻の相談。
そしてもう一つは今病にふせっているアルジェン13世の後継者問題であった。
そもそも長子相続のこの国にこのような問題が起きているのは、
アジェントではアルジェン13世の長男であり、
アシェリーナの父にあたるアジェルが死んでいるためであった。
462: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/22(水) 11:21 ID:imAIk9NE(109/144)調 AAS
この問題、そもそも本来ならば正統継承者であるアシェリーナが継いで終わりなのだろう。
しかしアジェントが興った当時からの名門イルマヤ候、レコスナ候など力の強い諸侯が
アジェルの弟達を推したためにこの問題はこじれていた。
アルヴァールは当然長い間養育してきたアシェリーナを推して来たのだが、
会議直前になってこの任務である。
恐らく自分を邪魔に思ったイルマヤ候辺りの差し金だろうと彼は感じていた。
しかし何があってもこの会議には出席しなくてはならない。
そしてその為にはこの騎馬軍団を一、二日で片付け無くてはならない。
しかし本軍が来るのはこれから三日後となるだろう。それでは間に合わない。
アルヴァールは載ってきていたワイバーンから降り、マントを外した。
そして騎馬軍団達の見えるところまで歩いて行く。
それを見た騎馬軍団の一人が弓矢を彼に向かい放つ。
これを合図として一対一万という戦いが始まった。
463: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/22(水) 11:22 ID:imAIk9NE(110/144)調 AAS
戦争においては数が大きなウエイトを握る。
例えどんなに強い剣豪が居ようとも一人では千の雑兵には勝てない。
例えどんなに強い戦闘機があろうとも一機では百の敵機に墜とされるだろう。
そしてソレはこの世界でも同様。いくら魔法があろうとも一人は千人には勝てなかった。
しかしアルヴァールは気が狂ったわけではない。
上に書いたことにはこの世界では一人だけ例外が居た。
それがこの男だったのである。
「ウオオオオオオーーーーッ!」
地鳴りのするような騎馬軍団の雄たけびと同時に空を埋め尽くすような矢が放たれる。
しかしそれらはアルヴァールの寸前で圧縮された間なの壁に当たり、落ちた。
そしてアルヴァールが呪文を唱え始める。
その間に第二射として騎馬軍団が魔法を唱えようとする。
しかし、魔術師達は一様にマナを集めることすらできずに青ざめた。
そして気付く。この辺りのマナは全て目の前の男に集められていることに。
そして気付いた。目の前に立っている男が二百年以上も前から自分の民族に伝わる
絶対に手を出してはいけない男であるということに。
しかしソレは遅かった。男の放った魔法は騎馬軍団の中心部に巨大なクレーターを作り、
千以上の兵をその骨すらほとんど残さずに焼き尽くした。
そしてそれに使われた魔法はジファンが自衛隊のヘリに向かい使ったものと同じ物であった。
464: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/22(水) 11:26 ID:imAIk9NE(111/144)調 AAS
退却する遊牧民達を見届けるとアルヴァールは即座にワイバーンに飛び乗った。
「王都まで大至急で頼む。」
いつも自分を乗せて飛ぶこの相棒に向かって声をかける。
この調子なら会議には間に合うだろう。
自分達の行動が徒労であることも知らずに戦場に向かおうとする本軍を見下ろし、
アルヴァールは満足であった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
投下終了です。
>>2のガイドライン4に引っかかりそうですがちゃんと決着はつける予定っす。
次回投下ではだいぶ話が動くかな・・・?
465(1): 2004/09/22(水) 13:00 ID:qIHVbGb2(1)調 AAS
骨すらほとんど残さずに焼き尽くされた兵の外側にはほどよく焼けた死体に重症軽傷の動けない負傷者が大量にいるだろう。
熱風は眼球を焼いて視覚は奪われ、爆風は鼓膜を破り内耳を破壊して平衡感覚は失われ、歩くことすらままならない。
クレーターの内部にあった土石が戦友の死体とともにばらまかれて兵達を打ち、大勢を殺し傷つけるだろう。
爆音や閃光に驚いた馬は散り散りになり、遊牧民も撤退どころではないと思うが。
ちょいと想像力が足りなくないか?
つうか、200年前から生きているらしいドラゴンボール級のこいつが、大臣ごときで終わるタマとも思えない。
魔王、魔法王級の人材でねえ?
466: 2004/09/22(水) 17:17 ID:8I76YJ1E(1)調 AAS
命名・・・ミスターMOAB
467: 2004/09/22(水) 17:38 ID:cwRYDP5.(1/2)調 AAS
まとめて完全に吹き飛ばしたとしても、
本人にもガレキその他が飛んできそうな予感。
まあ、こいつは平気かもしれないが…って、全滅させたわけじゃないのね。
それなら焼肉がイパーイだろう。
468: 名無し三等兵@F世界 2004/09/22(水) 18:21 ID:/lKl2BXs(1/2)調 AAS
この男を倒すにはどれくらいのレベルの兵器が必要なのだろう?
469: 名無し三等兵@F世界 2004/09/22(水) 18:35 ID:/lKl2BXs(2/2)調 AAS
もう毎度の事かと思いますが『御疲れ様』の言葉を送ります。
200年ですか・・・どうすればそこまで生きれるのでしょうか?
まあファンタジーですからなにか秘密があるのでしょうね。
今度の投下はいつになりますか?
色々と考えながらお待ちしてますので。
470: 名無し三等兵@F世界 2004/09/22(水) 19:44 ID:6U3hjIZc(1)調 AAS
王国側はどんな決断を取るのか?
アルクアイが正直な報告をするとは考えられない。
わざと日本に攻め込ませて無駄な血を流させる可能性は高い。
471(1): 名無し三等兵@F世界 2004/09/23(木) 06:33 ID:PhEUovs.(1)調 AAS
前作が投下された次の日にすぐ続編投下ですか、どれくらいのスピードで書いてるんですかと疑問が・・・
それとは別にご苦労様です
疑問としてセフェティナが佐世保に上陸した時、彼女は街や基地、港といった建造物に驚く事はなかったのでしょうか?
472(1): 名無し三等兵@F世界 2004/09/24(金) 08:11 ID:SbfA5Jyo(1)調 AAS
今更ながら乙カレー(辛ーい!!>_<)
おふざけはこれぐらいにして質問を
騎馬軍団・・・FFやラグナロクみたいに鳥型、あるいは小型の恐竜みたいな乗用獣もいるのかな?
473: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/24(金) 19:25 ID:imAIk9NE(112/144)調 AA×
>>465>>471>>472
![](/aas/shitaraba_movie_4152_1079384805_473_EFEFEF_000000_240.gif)
474(1): 名無し三等兵@F世界 2004/09/24(金) 21:20 ID:uhishPg.(1/2)調 AAS
乗用恐竜はいないんですか・・・がっくし
やっぱり王国では魔法使いの方が出世しやすく純粋な戦士系は出世しにくいのでしょうか?
475: 名無し三等兵@F世界 2004/09/24(金) 21:51 ID:uhishPg.(2/2)調 AAS
お返事キターvってことはそろそろ続編投下っすか?
476: 2004/09/24(金) 22:53 ID:rkSqG11w(1)調 AAS
>>474
日本でもパソコン使えないような純肉体労働者は出世しないしね。
魔法に対抗するためにも魔法技術は必須でしょう。
ネイル(なぜか英語に翻訳されている)とか、鎧の強度では対抗しようがないし。
477: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/25(土) 23:11 ID:imAIk9NE(113/144)調 AAS
12時までに投下開始します。
今回は難産だ・・・。
478: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/25(土) 23:26 ID:imAIk9NE(114/144)調 AAS
アジェント王都、その栄えた町並みの中をアルクアイとファンナは歩いていた。
ワイバーンで直接王城に行くこともできたのだがそれをしなかったのは
自分がやっていた行動の成果を確かめるためであり、そして結果は上々であった。
日本との接触後、アルクアイは王国全土に「日本脅威」という噂を多数の工作員を使って流し続けていた。
それが実を結んだのだろう。民衆の噂話はこの新たに召還された島のことで持ちきりであった。
試しに仕事の休憩中なのだろう、道端に座り込んでいる男に声をかける。
「おい、知っているか?」
「ん、何をだ?」
男はアルクアイのほうには目も向けずに返事をする。
だがそれは丁度良かった、アルクアイの服装を見ればこの男はすぐに平伏し、会話もできなかっただろう。
「新しく召還された島のことだ。」
「ああ、聞いてるぜ、なんでも人の生き血をすする化け物どもの島だったらしいな。
よく分からない機械なんてアシェナの神に背くもん使って、一つの船の船員皆殺しにしてその血黙りの中で高笑いしてたらしいじゃねえか。
ああ、怖い怖い。王国もとんでもないもん呼び出してくれたもんだぜ。」
「そうか。ありがとう。」
「あん、礼されるほどのことじゃねえよ。」
結果は、上々のようだった。
479: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/25(土) 23:27 ID:imAIk9NE(115/144)調 AAS
王城、広間。
まだ会議の三日前だが、ここにはすでに多くの諸侯達が集まり、
お互いの普段の労をねぎらいながら、会食を開いていた。
場の中心となっているのはイルマヤ候であった。
イルマヤ候、彼の支配する土地は貧しいものの王国当初からの名門で、更に名産のワイバーンを使ったワイバーン軍団は王下部隊に匹敵すると言われる程の精強さを誇っていた。
そしてこの会議においてはアジェルの弟ジョナスを推すことによって、
王家の元で権力を得ようとする保守派の男であった。
しかし、この会議においては、唯一の敵に思えたアルヴァールの追い出し工作をしただけで、
後は自らの権勢に甘えて、何の多数派工作もしていなかった。
いや、それは工作をする必要も無いほどの権力を持っていたともいえるのだが。
そして会食の賑やかさがピークにさしかかろうとした時、扉が開き、
参加者達が一斉にそちらのほうを見た。
「ラーヴィナ候の代理、ファンナ様、アルクアイ様がいらっしゃいました。」
メイドが淡々と言い、広間の中はシンとし、すぐにヒソヒソ声が聞こえてきた。
「どうも、ウェルズ様の代理として参りました、アルクアイでございます。」
「ファ、ファンナですっ。」
アルクアイが慇懃に礼をするのを見て、ファンナもそれに続く。
他の諸侯達の目は、好奇に満ちていた。
480: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/25(土) 23:28 ID:imAIk9NE(116/144)調 AAS
「アルクアイ・・・、聞いたことありまして?」
「いいや、ないなぁ。どこの家の出なのだろうか。」
「いやいや、所詮歴史の浅いラーヴィナの貴族でしょう、たいしたことありませんよ。」
「それにしても可愛らしいお孫さんだ。しかしこんな少女が出てくるとは。候本人の病気は大変な物になっているらしいな。」
名門諸侯、貴族は口々に勝手な憶測を口にする。
それに対し、中小諸侯達は皆、親しみ深い目を二人に向けていた。
それを見てアルクアイは自分のもう一つの策略がうまくいったことを確認した。
彼はイルマヤ候とは対照的に、領地の富裕さを背景に中小諸侯に対する金のバラ撒きを行っていた。
この会議で王位継承者を自らの推した者に決めた者が、これからの国政の主導権を握る。
アルクアイはそう睨んでいた。
そしてアルクアイの推す予定の人物はアシェリーナ姫、本来の王位の正統継承者である。
そこには正統継承者を推す事で、自らの正当性も示そうという彼の魂胆があった。
だからこそ、これから必要となる金を大量に使ってまでも多数派工作を行ったのである。
そしてその多数派工作と、アルヴァール魔術大臣の押しがあればイルマヤ候が反対しても、
アシェリーナ姫を王位継承者に容易く推したてることができると彼は考えていた。
しかしここに来て見たらどうか!?アルヴァールの姿が見えないではないか。
この状況でアルクアイがこの会議の主導権を握るには彼は一芝居打つしかなかった。
481: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/25(土) 23:29 ID:imAIk9NE(117/144)調 AAS
私は弱小諸侯サフラーヌ候の部下のしがない貴族である。
そんな私にとってこの王侯会議に来れたのは最高の幸運であった。
この体験は恐らく一生の宝となるだろう。
緊張する我が身を押さえ、主の命令どおりイルマヤ候へと挨拶に行く。
遊牧民族に襲われた我が領に、アルヴァール様が来て下さったのはイルマヤ候のとりなしがあったからなのだ。
その意味で彼は我等の恩人といえるお方であった。
そしてもう一人、イルマヤ候へと挨拶に行く男性が居た。
彼は確かラーヴィナ候の代理のアルクアイ殿。
容姿端麗で男の私も惚れ惚れするような人物であった。連れている少女も可愛らしい。
そしてラーヴィナ候もまた、我等中小諸侯に援助をしてくださった恩人であった。
彼ら二人の会話が終わったらその事をお礼申し上げようと決めた時であった。
その事件が起こったのは。
482: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/25(土) 23:30 ID:imAIk9NE(118/144)調 AAS
「どうも、ラーヴィナ候代理、アルクアイでございます。」
幸い近くにいた私には彼らの言葉は全てクリアーに聞き取れた。
「おお、ウェルズ殿の・・・。そうだ、一杯どうかね。」
「はい。ありがたく頂きます。」
イルマヤ候はアルクアイ殿のグラスに酒を注ぎながらその顔にグッと近づいた。
「おや、君はどこかで見たことが・・・なかったかね?」
「(ああ、修道院の寝所でな。)いえ・・・覚えがありません。」
「ああ、そうかそれなら良いんだ。それよりも君は王位の継承者は誰が良いと思うかね?」
意地の悪いことを聞くものだ。
これは自分の味方かどうか聞いているのと同じである。
イルマヤ候はああやって他の諸侯に圧力をかけているのであった。
軍事力だけなら王家にも匹敵するといわれる彼を敵に回そうとするような馬鹿は居ない。
皆必然的にイルマヤ候の推すジョナス様と答えるしかない。
我々のような中小諸侯は特にである。これにはさすがに反感を持つ者も多かった、私のように。
しかしそれに対する、アルクアイ殿の答えは意外な物であった。
やわらかい笑顔を浮べ、こう答えたのだ。
「(こちらがしようと思った質問をしてくれるとは・・・、都合が良い)私はアシェリーナ姫様が良いと思います、アルジェン様亡き今、彼女が本来の王位継承者ですから。」
その言葉を聞きイルマヤ候のこめかみにさっと青筋が浮んだ。
483: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/25(土) 23:30 ID:imAIk9NE(119/144)調 AAS
広間は奇妙に静まり、全ての人の視線が二人に注がれていた。
なんてことを言うのだ。それが私の率直な感想であった。
あんなことを言えばイルマヤ候を敵に回すことになるのだ。
ファンナ様はイルマヤ候の迫力にすっかり怯え、アルクアイ殿の服の裾を掴んでいた。
しかし自分が権力を握るために王位継承を捻じ曲げる彼に陰ながら批判があったのは確かであった。
実際、我々中小諸侯にはアルクアイ殿が魔王に立ち向かう英雄のように見えた。
「・・・それは、ウェルズ殿の御意見かな?」
「ウェルズ様のご意見は私の意見で、ウェルズ様のお考えは私の考えです。」
「フン、名も知られぬ下級貴族が生意気に。」
「っ!」
ファンナ様が息を呑む。
「(あれは言い過ぎじゃありませんこと?)」
「(全くだ、名門だからと偉そうに・・・!)」
冷たい空気が広間に流れた。
明らかに悪いのはイルマヤ候だ。しかし二人の力関係も身分の関係も歴然としている。
そしてこの国では身分が全て、高い身分の者が行ったことが正しいのだ。
アルクアイ殿も唇をかんで、黙っている。
484: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/25(土) 23:31 ID:imAIk9NE(120/144)調 AAS
イルマヤ候のネチネチとした攻撃はなおも続いた。
「そもそもラーヴィナ候自体数十年程度前から商人が成り上がったものだ。まともな回答を期待することが馬鹿であったか。」
ファンナ様が今にも泣きそうな顔になった。
と同時に広間の全員が息を飲んだ。ラーヴィナは幾ら歴史が浅いといっても、
アジェントの中でも一、二を争うほど富裕な諸侯なのだ。
そして、その言葉を聞いた瞬間、アルクアイ殿は何故か一瞬笑ったような表情を見せた。
「私への侮辱は許そう。だが、ウェルズ侯への侮辱は一言たりとも許しはしない。」
銀の光が閃いた。
アルクアイ殿がイルマヤ候に剣を突きつけたのである。
その瞳には激しい憤怒が宿っていた。先程の笑みは私の見間違いだろう。
私はあれ程の憤怒の顔を見たことが無かった。
これには全ての参加者が驚愕し、広間は緊張に静まり返った。
しかし、イルマヤ候も歴戦の武人であり、アジェント全土に名を轟かす剣豪である。
その切っ先を手が切れないように掴み、凄まじい気迫で睨みつけた。
「これは・・・決闘の申し込みと受け取ってよろしいか?」
「そう取ってもらって構わない。」
先に剣を抜いたのはアルクアイ殿である、しかし私を含めこの広間に居る人間のほとんどが、
心の底では主君への忠誠の為には何をすることも厭わない彼を応援していた。
485: F猿 (BfxcIQ32) 2004/09/25(土) 23:32 ID:imAIk9NE(121/144)調 AAS
投下終了〜。
日本が一個も出てこなかった・・・。
ま、息抜き編ではずっと青島が出張るから・・・良いかな?
ではご意見、ご感想お待ちしております。
486: 2004/09/25(土) 23:38 ID:0U77BVi2(1/17)調 AAS
おつかれさまでーす。
毎回楽しく読ませてもらってます。
日本と王国の行方がどうなっていくのか楽しみでなりません。
もちろん、セフィティナも。
次回も楽しみにしてます。
487: 名無し三等兵@F世界 2004/09/25(土) 23:39 ID:zL1.DJJ6(1/2)調 AAS
キターーーー・・・と王国側ですが正にアルクアイの独壇場。
しかも情報工作まで、後は傀儡政権を使い裏から操る目論見なのは予測可能。
でも世の中そう簡単に・・・上手くいっちゃうのかな?
488: 名無し三等兵@F世界 2004/09/26(日) 00:11 ID:zL1.DJJ6(2/2)調 AAS
この男、ホントに自分自身を演じるのがうまいな…。
役者になったらよかったと思ってみる。
489(1): 名無し三等兵@F世界 2004/09/26(日) 11:51 ID:8GmW1ulI(1)調 AAS
ご苦労様、もしこの会議で日本侵攻が決まったら王国軍はどこから侵攻するのかな?
490: 2004/09/26(日) 17:48 ID:cwRYDP5.(2/2)調 AAS
(・∀・)ジサクジエンが得意だこと。
伊達にゲイのお相手してたわけじゃないね。
>>489
離島。
491: 名無し三等兵@F世界 2004/09/26(日) 19:40 ID:GfxXPZ0o(1)調 AAS
もしそうなったら護衛艦でアジェント艦隊を壊滅可能かと思ってみる
492: 2004/09/26(日) 21:39 ID:cS4/ghOA(1)調 AAS
護衛艦なんて勿体無くて出せない様な希ガス
出せてもあさぎりとか・・・
493: 2004/09/26(日) 22:16 ID:0U77BVi2(2/17)調 AAS
俺が思うに、王国の船が日本海域に侵入→哨戒機や海上保安庁の警備艇が警告k
→王国船側は魔法で打ち落とそうとする→哨戒機などは撤退、自衛隊の護衛艦から魚雷+ミサイル攻撃→
王国船は見えない敵に打ち落とされ全滅
494: 2004/09/26(日) 22:16 ID:0U77BVi2(3/17)調 AAS
俺が思うに、王国の船が日本海域に侵入→哨戒機や海上保安庁の警備艇が警告k
→王国船側は魔法で打ち落とそうとする→哨戒機などは撤退、自衛隊の護衛艦から魚雷+ミサイル攻撃→
王国船は見えない敵に打ち落とされ全滅
495: 2004/09/26(日) 22:16 ID:0U77BVi2(4/17)調 AAS
俺が思うに、王国の船が日本海域に侵入→哨戒機や海上保安庁の警備艇が警告k
→王国船側は魔法で打ち落とそうとする→哨戒機などは撤退、自衛隊の護衛艦から魚雷+ミサイル攻撃→
王国船は見えない敵に打ち落とされ全滅
496: 2004/09/26(日) 22:16 ID:0U77BVi2(5/17)調 AAS
俺が思うに、王国の船が日本海域に侵入→哨戒機や海上保安庁の警備艇が警告k
→王国船側は魔法で打ち落とそうとする→哨戒機などは撤退、自衛隊の護衛艦から魚雷+ミサイル攻撃→
王国船は見えない敵に打ち落とされ全滅
497: 2004/09/27(月) 00:03 ID:WfFphLFg(1)調 AAS
砲撃で十分
498: 名無し三等兵@F世界 2004/09/27(月) 00:06 ID:Qom7DVvM(1)調 AAS
魔法って移動目標に簡単に当てられるのかね。
マナのなんとか線を使ってレーザー誘導爆弾みたいな命中精度を出してるっぽい描写はあったけど。
素手の人間がまんま誘導兵器キャリアだとしたら自衛隊マジやばい。まず勝てん。
499: 2004/09/27(月) 00:45 ID:HiGBWxPw(2/2)調 AAS
誘導できる距離や魔術師が認知できる範囲が重要だ
対艦戦闘なら魔術師の目視外からのミサイルなり、砲撃なり、
木造船なら一撃で粉砕だろ
スピードをいかした戦術でガンガレ自衛隊
500(1): 名無し三等兵@F世界 2004/09/27(月) 00:50 ID:tllKSiuw(1)調 AAS
500ゲット〜
話題を変えてアルクアイは相手を挑発して邪魔者を決闘で排除する事になったが
頭の中では確実な勝利へのシナリオが渦巻いてるんだろうねえ
勝算のない戦いは絶対にしなさそうだし
501: 2004/09/27(月) 02:10 ID:NJ2htG1Q(5/5)調 AAS
>>500
貴族の決闘だと代理闘士(チャンピオン)立てる場合があるから排除にはならないと思われ。
この場合だとアルクアイのほうが代理立てることは許されないパターンだから、
実際に切り結ぶ以外の方法で勝算立てていないとリアリティの面でいまいち。
502: 名無し三等兵@F世界 2004/09/28(火) 20:58 ID:f2m6AJ4M(1/2)調 AAS
そろそろ続編の投下かな?
それとジェットの活躍はあるかな?
空中給油機か空母せめて軽空母でもないとかなり望みは薄そう・・・ハア・・・。
503: 名無し三等兵@F世界 2004/09/28(火) 23:55 ID:f2m6AJ4M(2/2)調 AAS
本土防空戦では出番があるかも そのほかはちょっと・・・・。
504: 名無し三等兵@F世界 2004/10/01(金) 20:06 ID:Lyo7g26Q(1)調 AAS
あれから全然連絡がありませんが
F猿さん大丈夫ですか?
何か起こったのではないかと心配で
505: 2004/10/01(金) 23:59 ID:0U77BVi2(6/17)調 AAS
続編まだでしょうか?期待してます。
506: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/02(土) 12:50 ID:imAIk9NE(122/144)調 AAS
ご心配かけました。
色々あってネットにわずかしか繋げない環境だった物で・・・。
それでは続編投下開始します。
507: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/02(土) 12:54 ID:imAIk9NE(123/144)調 AAS
アジェント、いやこの世界には狂犬と呼ばれる存在がいる。
魔法というものは多少の金がある、もしくは才能があれば簡単に学べる物である。
それは簡単に個人がこちらの世界における銃や手榴弾程の暴力を手に出来るということでもある。
そして力を持てば人間はその力に酔う、試したくなる。
教育が十分には成されないこの世界では余計であった。
そして魔術で強盗や大量殺人に走る、そういった人物が狂犬と呼ばれていた。
しかし今となっては一時期横行した狂犬も厳しい取締りによりその多くが捕まっていた。
しかし狂犬の数は全く減ってはいなかった。何故か。
それは新たな種類の狂犬が現れた為であった。
新たな種類の狂犬、それは文字通りの貴族、金持ちの犬であった。
ただの無差別殺人に見せかけて、邪魔な人物を暗殺する。
そして捕まってもただの無差別殺人として処刑され、
たとえ自分の名を言ったとしても狂言として済まされる狂犬は貴族達には非常に都合の良い存在であった。
508: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/02(土) 12:57 ID:imAIk9NE(124/144)調 AAS
この決闘、アルクアイは数号打ち合ったら他の貴族達の制止に応じてすぐに止める気であった。
そもそも音に聞こえた剣豪であるイルマヤ候に魔術に没頭してきた彼が勝てるわけが無い。
しかし、彼がこの後の会議を有利に進めるためには他の貴族達に
この決闘は「主君を侮辱され怒りに燃える忠実な好青年」
と「権威を傘に着た傲慢な貴族」の戦いである。
というイメージを植えつける必要があった。
そのために彼は危険を冒してでも積極的に攻める必要があった。
口火を切ったのはアルクアイ殿の一撃だった。
横一文字の鋭い一撃をイルマヤ候は容易く受け止める。
「筋はいいようだが、甘いな小僧。」
そしてその剣を弾くとイルマヤ候は思い切り立て一文字に切りかかる。
一撃必殺を狙った剛剣である。
アルクアイはそれを剣の腹で辛うじて受け止め、その代償に剣に小さなヒビが入る
彼は剣の勢いに数歩後ろに下がると慌ててイルマヤ候と距離をとった。
「(予想以上だったか・・・?)」
アルクアイの頬に一筋の冷や汗が流れた。
509: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/02(土) 12:57 ID:imAIk9NE(125/144)調 AAS
距離をとったアルクアイに勝算があるやり方とすれば一つであった。
それは魔法戦に持ち込むこと、しかしこれはできることではない。
この戦いは良いイメージを勝ち取るための勝負。
卑怯などというイメージを持たれるのは言語道断であった。
ならば守りの剣でしばらく耐え忍ぶしかない。
アルクアイはイルマヤ候を見た。何をしているのか、左手から小石のような物を上に投げている。
しかし、これはチャンスである。アルクアイは再びイルマヤ候に向かい走った。
そして観客達も息を呑む。
そしてその一人が何者かに突き飛ばされた。
「な、なんだ・・・?」
座り込んだ彼が見たのは観客の間をすり抜け、決闘する二人に向かう一つの影であった。
そして一瞬の間、彼は事が起こった瞬間を見ることが出来なかった。
「があああっ!」
「狂犬だっ!」「狂犬だ!」
そしてそれから間も無くその耳に届いたのは叫び声と観客の叫び声。
飛び起きた彼が見たのは肩を撃ち抜かれ、膝をつくアルクアイであった。
510: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/02(土) 12:59 ID:imAIk9NE(126/144)調 AAS
同時刻、バルト、オズイン国境。
ここでもまた鮮血が舞っていた。
三国に名高いオズイン重装歩兵が長槍を突き、
手にリボルバーのような形をした魔道兵器を持つバルト騎鉄団が駆ける。
そしてその騎鉄団の先頭に立って長い黒髪を揺らし駆ける一人の少女がいた。
手に持つ特別なフォルムの銃を持ち、華やかな鎧に身を包んだ彼女は
その銃口から放たれる黒い閃光が次々と兵を打ち倒していった。
彼女の名はエグベルト8世
神帝を親に持つバルト帝国の皇帝であった。
そして魔道兵器の不足によって下がった士気を引き上げるため、
女神とまで呼ばれ兵達の人気も非常に高い彼女が最前線へと出てきているのであった。
511: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/02(土) 12:59 ID:imAIk9NE(127/144)調 AAS
士気の上昇に、兵器の相性もあり、戦局は圧倒的にバルトの有利であった。
「帝、あまり前に出過ぎないで下さい。」
しかし、その中で余りに前進しすぎるエグベルトを見かねた将の一人が声をかける。
「ええ、有難う。だけど父と違って私にはこれくらいしかできないから・・・。あっ、そこっ!」
他の兵器と違い、機械が魔法をサポートするタイプの彼女の銃が将の後ろに立つ兵を撃ち抜いた。
「あ、ありがとうございます。けれど私が今言ったことを覚えておいてください。」
「ええ、もちろん。有難う。」
「くれぐれもご無理をなさらぬように・・・。」
駆けていく彼女の後姿を見て、将は言い知れぬ不安を覚え、呟いた。
512: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/02(土) 13:01 ID:imAIk9NE(128/144)調 AAS
「キヒヒ・・・。」
狂犬は比較的綺麗な身なりをしていた、その狂気を映した顔をのぞけば貴族と言っても通用するだろう。
そしてその服装こそがこの狂犬を何者かがこの城に招きいれたことを示していた。
「狂犬とは運が悪い・・・、番兵はどうしたのですかな?」
狂犬とお互い剣も魔法も届く場所に立っているにも関わらず、
ユラユラと揺れながら立っている狂犬を見ながらイルマヤ候はしらじらしく呟いた。
「狂犬・・・だと?ふざけるな・・・!」
アルクアイは肩を押さえイルマヤ候を睨んだ。
その言葉に他の貴族達もようやく狂犬とイルマヤ候の関係に気がつく。
そしてまたこの目の前の男は、自分と反対意見を出す者を始末するつもりであったことに気が付き、戦慄した。
「イルマヤ候、どういうことです!?」
貴族の一人が叫ぶ、するとイルマヤ候は穏やかな笑みを浮かべながら言った。
「どういうこと、とはどういうことです?まさかこの狂犬を私が雇ったとでも言うのですか?」
「っ!?」
貴族は慌てて狂犬のほうを見た、しかしもはやその姿はない。
狂犬を捕まえれば証拠も出る可能性がある。だが、もはや証拠の出る可能性は無い。
「決闘、続行ですかな。」
イルマヤ候はアルクアイの鼻先に剣を突きつけた。
513: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/02(土) 13:02 ID:imAIk9NE(129/144)調 AAS
投下終了です。
勘が鈍ったか、少し難産でした・・・。
ご意見、ご感想、お待ちしております。
514: 名無し三等兵@F世界 2004/10/02(土) 19:43 ID:aMHq3U2M(1)調 AAS
返事が来なかったので心配しました。
エグベルト8世がいよいよ登場しましたね。
同時にアルクアイピンチ、意外な展開に・・・。
これからの健闘を祈ります。
515: 名無し三等兵@F世界 2004/10/02(土) 20:55 ID:mF0ALRws(1)調 AAS
乙カレーとふっカツ丼はおめで鯛
どうすかこのシャレ?
つまらなかったらスルーして
アルクアイ、世の中はそお自分の思い通りうまくは行かないもんだよ
皇帝の予想外れた・・・・○l ̄l_
絶対銀髪っ子かそうじゃなけりゃハーフだと思ったのに・・・・
516: 名無し三等兵@F世界 2004/10/02(土) 23:34 ID:h3ppq.Tc(1)調 AAS
魔道兵器は単発式じゃないんですね。
以外や以外。
さて新キャラ登場、この女帝が日本とどう関わっていくかが見物です。
それはそれとて約一週間ぶりの投下に感謝を
517: S・F (7jLusqrY) 2004/10/03(日) 11:40 ID:MSZ8PKC.(15/23)調 AAS
狂犬キター!山の老人のノリですねえ。狂気の原因は何か分からないけれど、
やはり薬漬けか快楽漬けが基本なんでしょうか?コントローラーは白い粉!
アルクアイも酷いことに。剣の腕+魔法無し+ケガとは、どうにも悲惨な
ハンディですな。まあ生き残れば少しは目があるでしょうが・・・
黒髪女帝ー。リボルバー型で連射可能=魔力が分割注入可能ということでしょうか。
そのうち魔法爆弾とかでそうな予感。
518(1): 名無し三等兵@F世界 2004/10/03(日) 15:28 ID:YXHS46nY(1/2)調 AAS
個人的にはその世界にしかない軽量合金を使ったツェッペリン飛行船みたいな兵器
の登場を希望。
それと山の老人って某ゲームに出てきたハサン・サッバーハっすか?
519: 名無し三等兵@F世界 2004/10/03(日) 18:57 ID:YXHS46nY(2/2)調 AAS
この話はほんとに先の展開が気になる書き方です。
次はいつになるんでしょうね?
もう待ちどうしくてたまりませんよ!
飛行船は設定の工夫次第で何とかなるかもしれませんが現時点では一寸無理があるかと。
520: S・F (7jLusqrY) 2004/10/03(日) 21:47 ID:MSZ8PKC.(16/23)調 AAS
山の老人=8世紀くらいのイスラーム世界にあった(らしい?)暗殺組織の
ことです。基本的に麻薬や快楽で若者を捜査し、「クスリが欲しければ・・・」
てな感じで殺人を行わせるそうな。
で、クスリやなんかで脳はアレになってて、しかも誘拐して快楽漬けにした
奴だから証拠のたぐりようも無いという訳です。
ハサンは名前がアラビア系っぽいから、違っていても知っていて使った
可能性はあるかと。
>軽量合金飛行船 魔法とコンボでこれが出ると、宇宙英雄物(ry
521: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/03(日) 21:58 ID:imAIk9NE(130/144)調 AAS
飛行船・・・( ゚Д゚)
出すかもしれませんぜ、旦那。
といっても技術レベル的には出せませんが・・・。
さて、勘慣らしのためにも頻繁更新を心がけよう。
522: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/03(日) 22:01 ID:imAIk9NE(131/144)調 AAS
甘かった。
計算も、先読みも、全てにおいて。
アルヴァールをあてにしていれば、奴は計略により不在。
流れを持ってこようと芝居をしようとすればそれの一枚上を行く罠、
そして悪評を逆手に取った問答無用の脅し。
あれを受けてはもはやこの会議で奴に歯向かう物はいまい。
よしんばここで俺が生き残ったとしてももう、意味が無い。
肩の痛みは常に俺の意識を脅かしている。
そして今、俺の前に突きつけられている鋭い剣。
油を垂らしそうな程光沢のあるその刃は間も無く俺の身体を裂くだろう。
イルマヤ候が俺にしか聞こえないような小声で呟いた。
「頭は回るようだが、場数が足りん・・・。覚えておけ、人は恐怖で動くものだ。」
「その言葉は嘘だな、私は今お前に何を命令されても拒否させてもらう。」
俺がそう言うと奴はニヤリと笑い剣を振り上げた。
523: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/03(日) 22:01 ID:imAIk9NE(132/144)調 AAS
剣には魔力が宿り俺の命を奪おうと赤く不気味に光っていた。
これを受ければ俺の身体は原形をとどめまい。
もはや制止しようとする貴族の声も無い。
「アルクアイーっ!」
ファンナの泣き叫ぶ様な声もやたらと遠く感じる。
彼女には罪滅ぼしをしてやる事も出来なかった。
いや、そんなこと俺には元々する気などなかったのだろう。
そして・・・気付いた。
今まで積み上げてきた全てを崩すことになる最終手段に。
気付けば何故今まで気が付かなかったのかと可笑しくもある。
俺は自らの懐に手をやった。一本の金属の筒の存在を確かめる。
バルトから仕入れた魔道兵器。これならば一瞬で目の前の男を殺せる。
しかしこれを使えば俺は間違いなく破門になるだろう、そしてそれは全てを失うことを意味する。
だが、死ぬよりはましだった。
全てを失ってもまた今までのようにすれば良いだけなのだから。
十分にマナの補充はしてある、弾も装填している。俺は撃鉄をあげた。
524: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/03(日) 22:02 ID:imAIk9NE(133/144)調 AAS
「つまり・・・アジェント国王家は我々とよしみを通じる気はない、そういうことですか。」
「はい、そう言うこととなります。」
九州、佐世保基地。
ここではすでにアルクアイの使い、アルマンと日本の外交官の間での情報交換が行われていた。
といっても積極的には情報交換はしていない、相手の要求と弱点を探る、いわゆる腹の探りあいであった。
特にアルマンはアルクアイに日本の弱点を探れ、との強い命令を受けているため、その傾向は強かった。
「しかし、王家と違い我が候は貴国と友好関係を気付きたいと申しています。
そしてそのためにも何か我々にできることは無いでしょうか。」
日本側も馬鹿ではない。
自分達が欲しい物、つまりは弱点を相手にさらすこと程危険なことは無い、と言うことを十分認識していた。
しかし、絶対しなければならないことは食料と資源の調達。
この命題は日本にだらだらと外交をさせている暇は与えなかった。
「我々は貴殿らと通商関係を結びたいと考えています。」
慎重かつ大胆にという無茶をしなければならない彼らの責務は重かった。
525: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/03(日) 22:02 ID:imAIk9NE(134/144)調 AAS
服の下からイルマヤ候を狙う。
暴発が非常に多い代物だが、まさか始めての使用でなるものでもあるまい。
このままほんの少しの魔力を手に宿らせながら引き金を引けば
魔力誘導物質であるアルジェクトで作られたハンマーノーズが俺の魔力を誘導しながら
紋章の刻まれた銀のプライマーを叩き俺の魔力を通じさせる。
そして紋章は俺の魔力を受けてその力を発揮し、小規模な爆発をシリンダー内で起こす。
その衝撃は先のとがった鉛の弾丸を押し出し、敵の命を奪う死神を生み出す。
そしてその死神は目の前の男の命を奪う。
つくづく感心する物だ、これならばどんな魔法下手でも十分に使いこなせる。
そしてそれはバルトの力を証明する物でもあるのだが、しかし今はそんなことを考える暇は無かった。
俺は引き金を引いた。
526: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/03(日) 22:03 ID:imAIk9NE(135/144)調 AAS
カキン・・・。
弾は先程の手順を踏んで、目の前の男を貫くはずだった。
しかし、手の中の死神は冷たい金属音を発しただけであった。
慌ててイルマヤ候を見る、すると彼もまた赤い光を失った剣を見て、呆然としているようだった。
マナが・・・無い。
こんな状況マナが存在しない場合しかありえない。
そしてその状況を作り出せる人物を、俺は一人しか知らなかった。
そして、静まり返った部屋に扉の開かれる音が響いた。
皆の注目を一身に浴び、立っている男。
アルヴァール魔術大臣その人であった。
527: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/03(日) 22:08 ID:imAIk9NE(136/144)調 AAS
投下終了です。
座談会
セフェ「あ・・・アルクアイ・・・何故ここに。」
アルク「どうもこうもない、時間がもったいない。話すことは無いのか。」
青島 「あ・・・じゃあ、その魔道兵器ってどういう仕組みになっているんですか?」
アルク「そうだな、どうも銃の火薬を魔法で代用しているようだな。
火薬が必要ない分仕組みは単純なようだがな。」
青島 「そうなんですか・・・ってなんで銃のこと知ってるんですか。」
アルク「なんとなくだ。」
セフェ(本編と性格違わない・・・?)
ご意見、ご感想、お待ちしております。
528(1): 名無し三等兵@F世界 2004/10/04(月) 01:07 ID:7SUYI4yQ(1/3)調 AAS
>>518の軽量合金飛行船・・・あなたヘルシングの影響受けてるでしょ?
この漫画に登場するナチスの残党『ミレニアム』がツェッペリン型飛行船(オリジナルよりも巨大な)を使用してました。
ここで知らない人に、2004年10月号のアワーズのヘルシングで飛行船の外装が軽量合金でできていると書かれてありました。
529(1): 名無し三等兵@F世界 2004/10/04(月) 01:24 ID:7SUYI4yQ(2/3)調 AAS
今度は早い更新で何よりです。
飛行船…出すかもしれないんですね。
もし飛行船が実戦に投入されるのなら運用方法としてはドラゴンの運用プラット
ホームが適切かと考えました。
ようするに空中空母の発想です。
(これには元ネタがあるんです。
パンツァードラグーンオルタのオープニングで帝國の空中空母の下腹部からドラ
ゴンメアが飛び立っていくのが該当します)
530: 名無し三等兵@F世界 2004/10/04(月) 02:52 ID:7SUYI4yQ(3/3)調 AAS
キタよ・・・・・・こんなに早く・・・・・・
大感激・・・・・・何度読んでも面白いです・・・・・・ハイ
531: 名無し三等兵@F世界 2004/10/04(月) 19:14 ID:46uE5CJc(1)調 AAS
こちらの世界には存在しないヘリウムや水素よりも
軽くて燃えにくい気体がF世界にあるならば
巨大飛行船も実現するかもしれない。
532: 2004/10/04(月) 19:23 ID:MSZ8PKC.(17/23)調 AAS
>>528-529セガの「スカイターゲット」でも同じネタがありましたねえ。ドイツ
空中艦隊の発想で、無音航行する飛行船に目を付けた兵器産業が、ジャングルで
空中空母として巨大飛行船を使ってましたわ。
ちなみに劇中設定では、軽量高硬度の合金を開発した企業が、その特性を生かして
防御がネックになる飛行船や巨大兵器を大量生産しはじめた、となっておりました。
533(1): 2004/10/04(月) 21:18 ID:04jpwOFM(1)調 AAS
そこで「ふわふわ」ですよ
534: 名無し三等兵@F世界 2004/10/04(月) 23:19 ID:pMCyk2H.(1/2)調 AAS
その飛行船の正式名称は『フランベルジュ』
私もプレイした事があるがデカイの一言
535: _ 2004/10/05(火) 00:06 ID:FXrRds82(1)調 AAS
>533
何の実績も無いベンチャー企業の発明品など
採用するはずも無いと思われ
536: 名無し三等兵@F世界 2004/10/05(火) 01:35 ID:pMCyk2H.(2/2)調 AAS
個人的に、飛行船は日本と接触する時に登場する確立が一番高いと考えてみたがどうだろうか?
537: 名無し三等兵@F世界 2004/10/05(火) 17:55 ID:2aCdNJ8k(4/6)調 AAS
有翼人がいるなら飛行船から降下奇襲できそう・・・。
538: 名無し三等兵@F世界 2004/10/05(火) 21:13 ID:C/tiiDCE(1/2)調 AAS
本家の16章、122〜133に帝国の空中艦隊と空自の大決戦の話が投下されてる、
何かの参考になることを
539: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/05(火) 21:38 ID:imAIk9NE(137/144)調 AAS
Call50さんすげえ・・・。
あの連続更新に圧倒されつつ投下します。
どちらにせよ飛行船はかなり後になりそう・・・。
540: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/05(火) 21:41 ID:imAIk9NE(138/144)調 AAS
「ま、まさか・・・。」
この男の登場に一番のショックを受けたのはイルマヤ候だっただろう。
様々な策略の上、大金をかけた策が全く無意味だったのだから。
「・・・僅かにマナの干渉波がすると思ったら・・・一体、どうしたのだ?
できれば、マナを引き付ける状態を維持するのは疲れるので早く止めて貰いたいのだが。」
イルマヤ候はまだ震える声で叫んだ。
「これは、決闘だ!騎士の誇りにかけて邪魔しないでもらいたい!」
しかし、イルマヤ候が言う言葉を聞いていたのか、居ないのか、ファンナがアルクアイに駆け寄った。
「アルクアイーっ!良かった、良かったよー。ふえぇぇ・・・。」
そしてファンナはそのままアルクアイにしがみつき、泣き出した。
アルクアイは魔道兵器をそっと懐にしまい、ファンナを抱きしめた。
しかし、その目は非常に穏やかに 見えた。
「この様子を見る限り、双方が望んだ決闘には見えないが・・・。」
「なっ・・・無礼な!」
「何が無礼か!!」
イルマヤ候が言いかけた言葉をアルヴァールは広間を揺らすほどの声でかき消した。
「そもそもここは神聖なる王城!血で濡れることなどあってはならない!候は忘れたか!」
「ぐっ・・・っ!」
イルマヤ候は剣を降ろし、アルヴァールを睨んだ。
確かに戦争をやってきたのだろう、あちこちが砂や泥で汚れている、
しかし奇妙な点が一つあった、それは手袋についたまだ黒ずんでもいない真新しい血だった。
541: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/05(火) 21:42 ID:imAIk9NE(139/144)調 AAS
イルマヤ候は最後の悪あがきをした。
「魔術大臣、この王城を血で濡らしてはいけないと言うのならばその手は何なのか!明らかにここ僅かの間に人を殺めた証拠ではないのか!?」
ここでアルクアイを殺しておかねばこの会議では全てが終わる。彼はそうわかっていた。
しかしその悪あがきは更なる絶望を持って返された。
アルヴァールが何かボソボソと呟き何かの印を描くと、2つの黒い塊が扉から広間の真ん中へと飛び込んできたのである。
「な、なんだこれは!?」
「よく見てもらいたい。」
アルヴァールの言葉に従い、その場に居る全員がその塊を見た。そして、声が上がった。
「ひっ、死体だ!」
「いや、こいつは見覚えがある!」
「王城に殺気を漲らせた者が二名ほどいたのでね・・・処理をしておいた。」
二つの塊の内一つは身体が半分に千切れかかってはいるものの、紛れも無く狂犬の一人だった。
一瞬で風穴を空けられたのだろう、驚きに目を見開いたまま、死んでいた。
恐らくもう一人も狂犬には変わりは無いだろう。
しかし驚くべきは投げ出された二人の死体からは血が一滴も出ていないことであった。
「これ以上ここを血で汚そうというのなら、私がお相手させてもらうが。」
イルマヤ候の頬が引きつった。
542: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/05(火) 21:43 ID:imAIk9NE(140/144)調 AAS
それから二日後。
その後の後継者決めは淡々と進められた。
狂犬を使った脅しが破られた以上、もうイルマヤ候に味方しようと言う者は僅かしか居なかった。
そしてアルヴァールの推しによって正統継承者であるアシェリーナ姫が
次代の王と決定したのであった。
そしてアルヴァールに次ぎアシェリーナを推したアルクアイ(正確にはウェルズ)がその補佐に選ばれるだろう、
というのが大方の意見であった。
ここまでは完全に、アルクアイの思い通りであった。
そう、ここまでは。
543: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/05(火) 21:44 ID:imAIk9NE(141/144)調 AAS
「我々は貴殿らと通商関係を結びたいと考えています。」
日本側のこの一言は相手の興味を引き出すのに十分であった。
貿易で欲しい物資、それがそのままこのニホンの弱点なのだから。
「ほう・・・では、何がお望みですか?」
「食料です。」
米は足りている、ならばニホンが必要なのは主食以外の食料品であった。
主食ではないからと言って侮ってはならない、これを欠けば国民の不満は溜り、
国民の不満は国家を揺るがすに至るのだから。
「食料・・・そちらの国では飢餓が発生しているのですか?」
アルマンは悩んだ、飢餓が発生しているような国ならば、食料を求めて攻め入ってくる可能性が高い、
強い軍事力を持っているのならば尚更それは恐怖であった。
しかし日本側の次の一言は彼を安心させ、そして驚愕させた。
「いえ、それはありません。我々の主食・・・米というのですが、は十分に足りています。
国民が一日三食食べるだけの量は確保してありますよ。」
米はアジェントにもある、しかしこの手のかかる生産物をアジェントは主食と言い切れなかった。
たしかに貴族レベルになれば一日三回米を食べることができる。
だが、貧農では一日二回、麦で作ったパンなどがせいぜいなのだ。
しかし、このニホンとやらは国民一人ひとりが一日三回米を食べている。
つまり国民全てがこちらの貴族並の生活を送っているともいえるのだ。
そしてそれだけの輸出食料をラーヴィナ領だけでまかなえるかどうかは疑問だった。
ニホンの外交官は言葉を続けた。
544: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/05(火) 21:45 ID:imAIk9NE(142/144)調 AAS
「そして、次に我々が欲しいのは、鉄・・・及び銅などの資源です。」
燃料・・・石油のような即戦争に繋がることを聞くのは相手を刺激しかねない、
次に日本側が聞いたのは現在日照りにあっている工業を復活させるための資源確保であった。
そしてアルマンは遂にこの質問が来た、と思った。
アルクアイはアルマンに言っていた、
「相手が鉄のことを口に出したときが本当の外交の始まりだ。」と、
そしてアルマンはアルクアイの言葉通りの言葉を言った。
「鉄ならば、貴国の前に召還された島の一つに大規模な鉄山が存在します。しかし、これは王家領ですが。」
「つまり・・・輸入できない、ということですか?」
「はい、“輸入”はできません。ですがここの鉄を手に入れることは出来ます。」
日本側の外交官は眉をひそめた、何を言いたいのかが薄々分かってしまったのが恐ろしい。
「今こそ言います。我らの主、ラーヴィナ候は召還された島々の人々が奴隷として
虐待を受けるのに、常々、気の毒だと心を痛めていらっしゃいました。
だからこそ、貴国にはこれらの島々をアジェント王家の奴隷支配から開放して欲しいのです。」
545: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/05(火) 21:46 ID:imAIk9NE(143/144)調 AAS
会議では王位継承者が滞りなく決まり、後はその補佐役を決めるのみとなった。
そして、アルヴァールは大臣であるために、補佐役にラーヴィナ候ウェルズが任命される。
誰もがそう思っていた。
しかし、アルヴァールはここで誰もが耳を疑うような一言を発した。
「では、アシェリーナ様の補佐役は由緒正しい家柄であり、その権威も高いイルマヤ候にやって頂きたいのですが、よろしいですね。」
「なっ!」
アルクアイを含め誰もがそう言った、イルマヤ候本人ですらだった。
アシェリーナ姫が王位継承者となるのに一番反対していたのが彼だったのだから。
「それがアシェリーナ様の所存ですが、お受け頂けないか?」
「なっ、い、いや、願っても無い。微力を尽くす所存でございます。」
イルマヤ候は誰も座っていない王の椅子に向かい、平伏した。
だが、彼はアシェリーナの元ではアルヴァールが居る限りその権力はほとんど無に等しいことは、
誰の目にも明白であった。
そして自然に目が向くのはアルクアイであった。
見た目には微笑を保っているものの、その精神が動揺しているのはまた、誰の目にも明白だった。
そしてその彼に共振通信が繋がれた。
今、ここで彼に共振を繋げる人間は二人しか居ない。
すぐ隣に居るファンナと、全ての魔術師に共振を繋げるアルヴァールだけであった。
そして彼に今共振を繋いでいるのは、彼が今最も憎々しく思っている男であった。
―――アルクアイ・・・全てが自分の思い通りになると思うな―――
そして共振は切られた。
負けた。アルクアイは生涯で初めてそう思った。
546(1): F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/05(火) 21:48 ID:imAIk9NE(144/144)調 AAS
投下終了
青島「俺って・・・主人公だよね・・・。」
佐藤「いや、アルクアイが主人公なんじゃないですか?」
加藤「ええ、間違いなく今主人公はアルクアイよね。」
青島→orz
ご意見、ご感想、お待ちしております。
547: 名無し三等兵@F世界 2004/10/05(火) 22:07 ID:C/tiiDCE(2/2)調 AAS
いつもの投稿ペースに戻りましたね
二日に一回の割合ですから次の投下は木曜ですか?
飛行船についてですがこれは砲艦外交にも使えるんじゃないかと
ようするに自分にはこれだけの戦力があるんだぞと相手に誇示するのです
ちなみにこの手に似た外交を行ったのはセオドア=ローズヴェルト(1858〜1919、第26代、任1901〜1909)です
彼の行為は棍棒外交とも言われてます
548: 2004/10/05(火) 22:14 ID:mmGt1OeI(1)調 AAS
アルヴァールって誰かに似ているなと思ったらジャンプの封神演義に出てきた
ブンチュウだな。
アルヴァールはああやって国を裏で守っているんだな。
そしてアルクアイの狡猾さが見える外交シーン堪能させていただきました。
しかしそのアルクアイも狡猾さではアルヴァールに負ける模様。
何はともあれF猿さん乙
549: 名無し三等兵@F世界 2004/10/05(火) 23:25 ID:jakRMOSY(1/3)調 AAS
ご苦労様でした、さて感想にいかせてもらいます。
島に上陸する事となると海兵隊の揚陸艦の支援がほしいですね。
やっぱりワイバーンは侮れませんし、ヘリだけじゃ不安かと。
または>>377で紹介されてるサイトのような軽空母を登場させたり。
13500t型DDHを軽空母に密かに改造していたとか。
どうですかね?海自軽空母、一度考案してみても無駄じゃないかと思いますが。
アルヴァール、この男こそ王国を操るフィクサーであり日本をこの世界に呼び出した諸悪の元凶ですね。
この男の心に、今回の召喚における予想もしない出来事はどのように感じられたのかが気になります。
550(1): 名無し三等兵@F世界 2004/10/06(水) 00:25 ID:jakRMOSY(2/3)調 AAS
正規空母ならともかく軽空母なら1隻ぐらいなんとかなるんじゃない?
うまくごまかしや設定を工夫しても2隻が限界で。
それ以上はパワーバランスが崩れると独自に結論。
肝心の艦載機は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これが一番の問題。
どこかの米軍基地に先行量産機が配備されてたと無理矢理こじつければ大丈夫?
後はF猿さんの腕の見せ所かな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
551: 名無し三等兵@F世界 2004/10/06(水) 00:36 ID:jakRMOSY(3/3)調 AAS
先行量産機=F-35?
552: 名無し三等兵@F世界 2004/10/06(水) 15:40 ID:KnWQit6g(1)調 AAS
gj!
陸自はアパッチを現時点で60機ほど導入予定で年に数機ずつ配備しているとか。
これをアメリカの海兵隊使用のコブラみたいに改造して運用すればいいんじゃない?
553(3): 2004/10/06(水) 20:30 ID:Ksk.yJ.Y(1/8)調 AAS
>>546
日本の実情を知ったアルヴァールの内心とかは是非知りたいっす。
とりあえずキャラ分析
アルクアイ編
功利主義者で実利主義者
非情
陰謀家で演技派
でも詰めが甘い
お稚児さんが務まるくらい美形
普通のエルフをしのぐ魔法の才能
死を厭わない中世を誓った部下がいる
野心は山盛り
美形悪役として申し分のない嫌味な美点を備えた男ですが、
若さゆえの詰めの甘さがそれを台無しにしてます。
シャアとガルマを足して2で割った感じ?
特にファンナに対する態度は悪役にあるまじきもの。
すでに指摘されている通り青島をしのぐ主人公体質になっちゃったのはそのせい。
554: 2004/10/06(水) 20:32 ID:Ksk.yJ.Y(2/8)調 AAS
>>553続き
ラーヴィナ候の居城でのシーンや王宮でのある下級貴族の述懐シーンからして、
王国人の民族性はすっげぇ感激屋な気がする。
何でもノリでやっちゃいそう。
アルクアイ分析続き
危うく自爆するところだったゼナやラーヴィナ候毒殺未遂のときの医師など、
”絶対”の忠誠を誓う部下がいるようなのは強み。
手駒の数という点のみならすその忠誠にふさわしいカリスマがあるということだし。
(でも医師は後で始末するつもりかもしれないし、ゼナは単にアルクアイに懸想してるだけかも)
くどいようだがファンナへの態度で悪役度が大幅ダウンしている。
もしかしたら少しロリかもしれない……だとしたら、ゼナとの三角関係で刺されたりして。
アルヴァールとの対立が陰謀劇の中核となるかも。あと赤羽との絡みも期待。
色事師の才能を持つ悪役と幼い女王陛下という組み合わせもおもしろいが……
……おーい、青島、完全に食われてるぞ〜
余談だがファンナたんは本家のクラウスたんと並ぶ個人的萌えつぼである。
彼女には幸せになってほしいものだ。
555: 2004/10/06(水) 20:45 ID:0U77BVi2(7/17)調 AAS
555げっとー
アルクアイの行動はアルヴァールにバレテタンデスネ。
一まず、アルクアイの一人勝ちじゃなくてよかったぜ
556: 2004/10/06(水) 20:45 ID:0U77BVi2(8/17)調 AAS
wwお
557: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/06(水) 21:23 ID:kHqoVL5Q(1/111)調 AAS
>>553・554さん
なんか感激。続編期待してます。
・・・よし頑張ってみるか!
ってことで連続投下!
558: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/06(水) 21:24 ID:kHqoVL5Q(2/111)調 AAS
アルヴァール魔術大臣。
城下一番の老人が生まれた時からこの魔術大臣を勤め、
更にその祖父が生まれた時にも魔術大臣を勤めている男。
王家に絶対の忠誠を誓い、代々王位継承者の養育係を勤めてきた。
彼の長寿、魔力の秘密は王位継承のときに引き継がれる物の一つであり、
この人物に関する逸話は事欠かなかった。
「アジェント建国に関わった」「十万の軍隊を殲滅した」「実はアシェナの天使である」
そしてそれのどれもが真実味を帯びるような風格を彼は持っていた。
「全ては王家のため。」
彼の目的はただひとつ王権の維持。
そのためには気が進まぬ召還などという行為も行った。
そんな彼に傀儡政権を企もうとしていただろうイルマヤ候やアルクアイは許せる物ではなかった。
そして今彼の懸念は西のバルト、そして東に現れた謎の国であった。
召還された東の国。もはや国中でその噂が流れていた。
生き血をすする悪魔の国、見たことも無いような魔法(ありえないが)を使う国、
バルトの魔道兵器が玩具に見えるような機械を使い、町一つを容易く滅ぼす国。
どれも信憑性の無いものだが、火の無いところに煙は立たない。厄介であることは間違いなかった。
559: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/06(水) 21:25 ID:kHqoVL5Q(3/111)調 AAS
その夜。
アシェリーナ姫の元へアルヴァールは急いだ。
当然急使で知っているだろうが、娘同然のこの姫の喜ぶ顔を見たいという感情もあった。
「あ・・・アルっ!帰ってきたのね!」
そして扉を開けた途端、このもう二十歳になろうかという少女に彼は飛びつかれ、よろめいた。
とりあえず、一度引き離して礼をする。
「どうも、ただ今帰還致しました。」
「もお、そんな堅苦しいことを言わないで、アル。」
「一応規則だからなアシェル。」
そうアルヴァールが言うと二人は同時に吹きだし、部屋は笑いに満ちた。
そのまだ美しいと言うより可愛らしい笑顔を見てアルヴァールは思った。
何をしてもこの笑顔に傷はつけさせない、と。
そのためには彼はどんな姑息な手でも使うつもりであった。
560: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/06(水) 21:27 ID:kHqoVL5Q(4/111)調 AAS
次の日の会議は病を押したアルジェン13世、さらにアシェナ教皇までが参加した大会議となった。
論題は一つ。これからの対外政策であった。
西のバルト、そして東の謎の国、これら両方を相手にする力はアジェントには無かった。
さらには最近反発的な小国群が南には存在する。
アジェントが避けねばならないのは西と東を同時に相手取ることであった。
これだけは何とか避けねばならない。
ならばそれ避けるのためにはどうしなければならないか、外交である。
会議が熾烈を極めるのは明白であった。
「それでは私の方に、東の国との接触経験がございますので、報告いたします。」
その会議の口火を切ったのはアルクアイであった。
昨日の主役とも言える彼、昨日の出来事は誰もが知っている。自然と注目が集まった。
「我々はしばらく前、東の国・・・ニホン、というらしいですが、の船団と接触しました。
彼らは魔法が使えないことは皆さんご承知でしょう。
しかし、彼らは巨大な鉄の船に乗り、魔法でしか出来ないような攻撃を繰り出しました。
ちなみにこれにより元竜騎士団でその時の船団の司令であるジファンが死亡、
魔術仕官のセフェティナ殿が行方不明になっています。」
元々報告が行っている王家の官僚以外の貴族、特に教会関係者は息を呑んだ。
魔法でもないのに鉄が浮ぶ、魔法のような攻撃を繰り出す。
これは機械を使っているに他ならないからである。
アシェナ聖教に反する機械を。
561: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/06(水) 21:27 ID:kHqoVL5Q(5/111)調 AAS
「これは私の私見ですが。」
アルクアイは続けた。
「彼らはおそらくバルト以上の戦力を持っていると思われます。」
これには王家の面々も含め、誰もが絶句した。
バルトは急激にその勢力範囲を広げてきた帝国であり、誰もがその軍事力はしるところである。
しかしアルクアイが続けていったことはその既成概念を破壊しようとする言葉であった。
「逆にバルトの勢力は、神帝エグベルト七世の死などの理由により弱まっていると思われます。
東、東へと強硬に取っていた進路が急にオズイン手前で我が国の国境を通るような南への進路へと変わったことからもこのことが見て取れます。」
アルクアイが呪文を詠唱すると、その場の参加者全員の前に地図の幻影が映し出される。
マナで光の屈折を操る蜃気楼のような物だが、アルクアイの説明を理解させるには十分な物であった。
「しかし、」
貴族の一人が声を上げた。
「しかし、バルトが南に進路を変えたことは事実だ、だが何故そんなことを?」
「恐らく、オズイン、我が国と連戦することを避けたかったのでしょう。
彼らの狙いは恐らく、例の空白地だと思われます。」
562: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/06(水) 21:28 ID:kHqoVL5Q(6/111)調 AAS
「なんと!」
イルマヤ候領の南に位置し、イルマヤ候とも仲の良い、ハルバ候が声を上げた。
彼の領の南にはエルフの大森林を隔て空白地があった。
だからこそ空白地に一番執着を持っていたのも彼であった。
そして空白地に攻め入ってくるともなればまず戦わなければならないのは自分だろう。
そういう考えも入った、半ば恐怖の叫びだった。
「なんということをおっしゃる・・・。」
ハルバ候はイルマヤ候を見た。何とかならないのか、と言った目つきである。
元々ハルバ候、彼は臆病な男であり、イルマヤ候と仲が良いと言っても、
それは親分と舎弟のような関係であった。
しかし、頼れる親分のはずのイルマヤ候もさすがに無茶を言うなという目で見返した。
「逆に。」
アルクアイは続けた。
「東の国は今すぐにでも攻め入ってくる可能性があると思われます。
彼らの軍事力は船から見ても高く、噂程度ですが非常に好戦的である、という噂も流れています。」
アルクアイの言葉に貴族達は一斉に頷いた。
彼らの領土でも王都でもニホンの恐ろしい噂は鳴り響いている。
といってもその噂は目の前で演説している男の流した物なのだが、そんなことは知る由も無い。
563: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/06(水) 21:30 ID:kHqoVL5Q(7/111)調 AAS
「もし。」
先程まで王となにやらボソボソと話しをしていたアルヴァールが声を出した。
「なんでしょうか。」
アルクアイは答えた。
この二人の因縁は誰もが知るところなっている。その場に居る全員が固唾を呑んで二人を見た。
「もし、その通りだとするのなら、我々はどうすれば良いと思う?
残念だが我々にはその二国を同時に相手する力は無い。」
アルヴァールはアルクアイに問うた。
その目ははっきりと貴様の知恵を利用してやると言っている。
アルクアイは自分の腸が煮えくり返るのを感じた。
自分の野望を完膚なきまでに叩き潰したこの男は自分の言うことを大体見抜いた上で、
その危険な意見を強制的に言わせようとしているのだ。
しかし、これはアルクアイにとって意見を押し通す絶好のチャンスでもあった。
アルクアイは賭けに出た。
「はい、そのことについては私に一つ、考えがあります。」
「何かね。」
アルクアイは参加者全員を見回した。
貴族達はしんと静まりかえり自分を見つめている。しかしその中に見慣れた少女の顔は無い。
ファンナは王家への人質として部屋においてきてしまっていたのである。
半泣きになりながら一緒に行くとダダをこねた彼女の顔が思い出され、アルクアイは一瞬後悔した。
自分がこの場でこの意見を言ったら、彼女にまで危害が及ぶかもしれない。
しかし、ここでこの意見を通さねば自分は凡夫として一生を終えることになるだろう。
それだけは命を賭しても避けなければならないことであった。
そしてアルクアイは意を決し、言った。
「我が国は、バルト帝国と同盟を結ぶべきだと考えています。」
564: F猿 (BfxcIQ32) 2004/10/06(水) 21:32 ID:kHqoVL5Q(8/111)調 AAS
投下終了しました。
ゴゴゴゴゴゴゴ
アルヴァール「・・・・・・。」
アルクアイ「・・・・・・。」
アルヴァール「何か言ったらどうだ。」
アルクアイ「そちらこそ。」
ゴゴゴゴゴゴゴ
青島&セフェティナ(怖いよ〜。)
565(1): 2004/10/06(水) 21:41 ID:fUJSgrs.(1)調 AAS
乙なれど二十歳で少女は無理だと思います
566: 553 2004/10/06(水) 22:06 ID:Ksk.yJ.Y(3/8)調 AAS
乙かれ〜
すでにこれも指摘されていることですが、やはりアルヴァールは聞沖だったんですね。
アジェントとバルト、両国の頭首がおにゃのこですが、そうなるとオズインもやっぱり?
アルクアイのマッチポンプぶりが目立ちまくりですが、こうなってくると赤羽の重要度がさらに上がってきますね。
日本とオズイン、バルトとの接触時期が気になるです。
キャラクターのみならずストーリー、世界観に関して第三者視点での本格的分析もやってみたいですが
(他のキャラはアルクアイほど分析材料は出きってないし)
考察スレか感想スレでやったほうがいいのかなぁ?
ファンナたんってΖのミネバ様っぽいイメージが出てきました。
傀儡としてではなく、普通に育てられていたらファンナたんみたいになってたんだろうなぁ
567: 2004/10/06(水) 22:35 ID:NXgGnmrg(1/2)調 AAS
アジェントがバルトと手を組むとはね・・・
まるでニューディサイズ(ティターンズと連邦教導団の残党軍)が
アクシズと組んだみたいだ。でも今の状態が続いたらアジェントは最悪の場合は
ZZのアクシズみたく内乱で疲弊しそうだな。
568: 名無し三等兵@F世界 2004/10/06(水) 23:50 ID:39Ka5kjg(1/3)調 AAS
国を救うために行なった事が、逆に国を滅ぼしてしまったり。
そんな展開が・・・待ってる感じです。
王家のためならば、この程度の犠牲は許容範囲だと異世界の怒りを買おうとしてるね。
まさに本末転倒とはこの事。
569: 名無し三等兵@F世界 2004/10/07(木) 00:16 ID:39Ka5kjg(2/3)調 AAS
ご苦労様です、いきなりだけどバルトとの同盟は反対!
大体良く考えればエルフが黙っていないし、バルトも用心するはず。
それからバルトのほうも敵の敵は味方という事から独自に日本と接触を試みようとする筈。
アルクアイがどういう裏工作をするかが大きなポイントかと。
んにしてもこいつは王家のためといってどれだけ多くの人が苦しんでるのか本当に理解してるのか!?
後に王国王家の歴史に重度の汚点を残すのは目に見えてるはずだ。
今回ばかりはアルクアイがアルヴァールの手駒になったふりして目にもの見せてやる事を祈る!
570: 名無し三等兵@F世界 2004/10/07(木) 00:35 ID:39Ka5kjg(3/3)調 AAS
そこで日本に行くために飛行船の登場ですね!!
…ホントにバルト×アジェント同盟が成立するしたら日本の戦力もうちっと底上げ
したほうがいいですよ
やっぱ軽空母をひとつぐらい持つべきです
571: [[sage]] 2004/10/07(木) 01:03 ID:rffyU71E(1)調 AAS
F猿さん投下乙です。
アジェントとバルトとの連合で、ますます孤立無援のわが日本ですが、
在日米軍の存在がますます重要になると思います。
第七艦隊や原潜が佐世保や横須賀にいればかなり有望な戦力になると思う。
在日米軍も食料や生活物資を日本で賄っている以上、こんな事態になれば
文句を言っている訳にはいかないでしょう。
572: 名無し三等兵@F世界 2004/10/07(木) 01:31 ID:m83KYLXs(1/3)調 AAS
帝国と王国の同盟は条約締結直前に破綻するのをキボン
第七艦隊や原潜・・・ガイドラインが心配ヤパーリ軽空母がギリギリライン?
573: 2004/10/07(木) 01:52 ID:Ksk.yJ.Y(4/8)調 AAS
自動車輸送船改造のヘリ空母!
相手をアウトレンジすることを前提で有りもんの改造でガイドラインもクリア!
北海道のコブラを海上仕様に改修して搭載。
574(1): 名無し三等兵@F世界 2004/10/07(木) 02:41 ID:m83KYLXs(2/3)調 AAS
アジェントは同盟する考えだが相手がそれに応じるとはわからない
バルト帝国とは空白地帯を共有すれば日本と同盟できる可能性あり
軽空母は赤羽が16DDHをベースに軽空母の建造に着手した…という設定でいけば
>>377の世界の妄想艦船での海上自衛隊 軽空母(DDH147)が最適
外観図 外部リンク[html]:members.at.infoseek.co.jp
格納庫検討 外部リンク[html]:members.at.infoseek.co.jp
発艦検討 外部リンク[html]:members.at.infoseek.co.jp
着艦検討 外部リンク[html]:members.at.infoseek.co.jp
塩害対策検討 外部リンク[html]:members.at.infoseek.co.jp
ステルス効果の検討 外部リンク[html]:members.at.infoseek.co.jp
これ見てちょっと待てまだオスプレイもF-35も配備されてないし、
ましては16DDHはまだじゃねーかと言う人
そこは時代設定を今より少しだけ近未来にしてつじつまを合わせてしまえばOK・・・・かな
上下前次1-新書関写板覧索設栞歴
あと 406 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ
ぬこの手 ぬこTOP 0.155s*