エレクトロニカと付き合い始めた (172レス)
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: 2009/08/10(月) 00:24:37
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124: [sage] 2009/08/10(月) 00:24:37 ID:jkWmsJaN 8月に入ってから、街で人を見かける機会が少なくなった。 お昼時は、お弁当を買いに行くサラリーマンや食事へ行く主婦達で、自転車が立ち往生してしまうくらい道路は賑わっていた。書店やコンビニに入れば、商品を眺める学生やオジサンが店内に必ず一人はいた。 しかし最近。街中のみならず、隣人や周りの人まで、申し合わせたように一斉にどこかへ消えてしまった。 お盆休みを前に、きっとみんな故郷へ帰ってしまったんだ。 息を一つ吸い込むと、煙草と湿気を含んだ気怠い夏の香りがした。 時折生温かい風が吹いて、3日前から留守らしい隣人の家の庭先に置いてある、風鈴の音が寂しげに響いた。煌々と光る月の前を、右から左へ熱帯低気圧の雲が横切る。 庭で煙草を吸いながら、僕はニカを待っていた。 水を張ったアルミ製の小さな洗面器を両手に抱えて、ニカが奥からやってきた。スカートの右のポッケには、束になった花火が何本か刺さっている。 水がこぼれないようにソッと洗面器を縁側へ置くと、その隣にニカはちょこんと座った。ポッケから花火の束を取り出して、どれから始めようか迷っている。 何度も花火を見比べて、真剣に最初の1本を悩むニカの姿に、僕は遠い昔に忘れてしまった、大事な何かを思い出した。 それが何だったのかは、思い出せない。思い出せないけれど、それはとても大切で、手放しちゃいけない大事な「何か」だったのは覚えている。 そして、それは今の僕にはもう無いもので、二度と取り戻す事も出来ないという事も判っている。 僕は煙草を携帯灰皿へ押し込んで、胸ポケットからライターを取り出した。 どれにしようか悩んでいるニカの手元から、僕は花火を一本引き抜いて、カチッとライターで花火に火を点けた。 夏の明るい日差しが広がったように、花火は赤や白や黄色の光で庭先を明るく照らした。果実が弾けるように、火花は夏の夜へ吸い込まれていった。 ニカは眩しそうに目を細めたあと、髪を揺らしながら小さな声で笑った。 ニカの手に花火を握らせて、僕は3本目の煙草を吸った。 時折。 生暖かい風が吹いて、どこかの風鈴が夏の到来を知らせた。 月は、静かに夜の底へ横たわる街を何も言わずに照らした。 そんな街の一角から、僕は庭先で月を見上げ、嬉しそうに夏と花火に戯れるニカを眺めている。 僕とニカの夏は、まだ終わらない。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/nika/1172060616/124
8月に入ってから街で人を見かける機会が少なくなった お昼時はお弁当を買いに行くサラリーマンや食事へ行く主婦達で自転車が立ち往生してしまうくらい道路は賑わっていた書店やコンビニに入れば商品を眺める学生やオジサンが店内に必ず一人はいた しかし最近街中のみならず隣人や周りの人まで申し合わせたように一斉にどこかへ消えてしまった お盆休みを前にきっとみんな故郷へ帰ってしまったんだ 息を一つ吸い込むと煙草と湿気を含んだ気怠い夏の香りがした 時折生温かい風が吹いて3日前から留守らしい隣人の家の庭先に置いてある風鈴の音が寂しげに響いたと光る月の前を右から左へ熱帯低気圧の雲が横切る 庭で煙草を吸いながら僕はニカを待っていた 水を張ったアルミ製の小さな洗面器を両手に抱えてニカが奥からやってきたスカートの右のポッケには束になった花火が何本か刺さっている 水がこぼれないようにソッと洗面器を縁側へ置くとその隣にニカはちょこんと座ったポッケから花火の束を取り出してどれから始めようか迷っている 何度も花火を見比べて真剣に最初の1本を悩むニカの姿に僕は遠い昔に忘れてしまった大事な何かを思い出した それが何だったのかは思い出せない思い出せないけれどそれはとても大切で手放しちゃいけない大事な何かだったのは覚えている そしてそれは今の僕にはもう無いもので二度と取り戻す事も出来ないという事も判っている 僕は煙草を携帯灰皿へ押し込んで胸ポケットからライターを取り出した どれにしようか悩んでいるニカの手元から僕は花火を一本引き抜いてカチッとライターで花火に火を点けた 夏の明るい日差しが広がったように花火は赤や白や黄色の光で庭先を明るく照らした果実が弾けるように火花は夏の夜へ吸い込まれていった ニカはしそうに目を細めたあと髪を揺らしながら小さな声で笑った ニカの手に花火を握らせて僕は3本目の煙草を吸った 時折 生暖かい風が吹いてどこかの風鈴が夏の到来を知らせた 月は静かに夜の底へ横たわる街を何も言わずに照らした そんな街の一角から僕は庭先で月を見上げ嬉しそうに夏と花火に戯れるニカを眺めている 僕とニカの夏はまだ終わらない
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