後期クイーン的問題とかってくだらない。 (513レス)
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157: 2011/04/21(木) 01:04:07.86 ID:O92m/KTn(1/4)調 AAS
いくつか紹介

* 法月綸太郎「初期クイーン論」

一応、後期クイーン問題を提起したとされる文章。
しかし現在「後期クイーン問題」で連想される偽の手がかりの問題は、
この「初期クイーン論」でも、続編に相当する「一九三二年の傑作群をめぐって」でも
中心の問題ではない。
また、クイーンの作家的変遷を数学基礎論の歴史に重ねられていくけど、
実際の数学基礎論の歴史評価とはほとんど関係なくて見立てや暗合に近い。

実際の主題は、レベルの階梯化やレベルの混同によって生じる
探偵小説の不均衡かつ動的な構造の分析をクイーンの実作から読み取ること。

偽の手がかりによる探偵の操りは、
犯人=死体トリックや(作者名=探偵名によって行われる)読者への挑戦
などと並んで、探偵小説構造の不均衡さの事例として扱われるだけで、
偽の手がかりの処理の仕方といった問題を扱うわけではない。
158: 2011/04/21(木) 01:07:54.45 ID:O92m/KTn(2/4)調 AAS
* 巽昌章「法月綸太郎論 「二」の悲劇」
法月の小説作品だけでなく評論も含めて論じた法月論。
法月の後期クイーン論については、偽の手がかり問題としてではなく、
探偵小説に見られる構図や図式の問題としてとらえている。

さらに、法月の評論「浜村龍造を殺そうとかまうものか」に対して
>> ここで法月は、すかさず見る--見られるという無限の循環を示唆する。
>> これは、いわゆる後期クイーン的問題と類似した思考である。
と書くように、法月の他の評論とも連続した問題系として扱っている。
159: 2011/04/21(木) 01:27:34.74 ID:O92m/KTn(3/4)調 AAS
* 法月綸太郎「複雑な殺人芸術」
扱っているのはロス・マクドナルド作品(主に「ウィチャリー家の女」と「さむけ」)
で、いわゆる「後期クイーン問題」(偽の手がかり問題)とはほとんど関係ない文章。
しかし語り手=探偵による主観的一人称と神の視点の緊張関係、
名前や立場の入れ替わり・混同など、
法月のクイーン論自体とは密接に関連した内容になっている。
160: 2011/04/21(木) 01:45:12.29 ID:O92m/KTn(4/4)調 AAS
* 北村薫「ニッポン硬貨の謎」
作中で述べられているクイーン論の原型は北村の学生時代に書かれたものなので、
法月のクイーン論とは直接的には関係しない。
しかも、一見すると「シャム双子の謎」への評価が法月と逆のように見える。
法月が「シャム双子」を本格推理小説のゲーム空間の瓦解を示す作品と述べるのに対し、
北村はもっともクイーンらしさの出た作品として肯定的に評価する。
しかし、二人の論は根底の所で繋がっている。

犯人の指摘がどこで止まるか解らない作品であるがゆえに読者への挑戦が入らず
同じ理由で最後の犯人決定も論理以外によってなされるのだという北村の指摘は、
階梯化による不均衡さや最終的な推理の恣意性といった法月の指摘に共鳴する。

また「もっともクイーンらしさの出た作品」において、
初期クイーンのトレードマークともいえる読者への挑戦を入れられなくなる
(しかも、メタレベルでの偽の手がかりが理由で)という「シャム双子」の構造は、
ゲーム空間の遊技性の追求がスタティックなゲーム空間自体を瓦解させる
という法月の論の実例とみなせる。
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