[過去ログ] 連続ドラマ小説「ニホンちゃん」25クール目 (697レス)
前次1-
抽出解除 レス栞

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
518: 無銘仁 ◆uXEheIeILY 05/03/14 15:18:27 ID:+QMLxPsn(1/3)調 AAS
 「枢軸探偵社依頼壱〜上〜」

 来訪者を告げる呼び鈴の音が、狭苦しい事務所に響き渡った。
予定の時刻には五分早い。私は席を立ち、久しぶりの客を迎え入れた。
「枢軸探偵社の伊田利雄と申します。どうぞよろしく」
「どうも、初めまして。昨日お電話申し上げた朝日奈です」
茶褐色の背広に身を包んだ壮年の男が、遠慮がちに頭を下げた。
差し出した名刺には、「国立地球大学文学部教授 朝日奈佐吉」とあった。
朝日奈氏から電話をもらったのは、昨晩のことだった。
初恋の人を探してほしい――珍しくもない依頼だ。
仕事に飢えていたところだったので、二つ返事で請け合った。
この手の依頼なら、よほど難しくてもせいぜい半月で片付くだろう。
 散らかり放題になっている自分の机を避け、朝日奈氏を応接室に通した。
「お名前は仁保褄子さん、お年は先生とご一緒ですね。
三十年前に引っ越すと手紙が来てから、連絡が取れなくなったと」
「はい。今や手がかりは、この写真と手紙だけなのです」
「なぜ、三十年も経ってから逢いたくなったのですか」
「私ももう年ですから、死ぬ前に一目見ておきたいと思いまして」
心なしか朝日奈氏は焦燥感に駆られているようだった。
口調が安定しないし、顔も少し青ざめているように見える。
だいいち写真を持つ手が小刻みに震えている。私は嫌な予感がした。
稀に単なる人探しを装って、厄介な事件を持ち込む客がいるのだ。
「先生、失礼ですが、被調査者の情報はなるべく隠さずに教えてください。
どうしても言いにくいことは仕方ないですが、解決が遅れることもあります。
それに、私どもにも守秘義務というものがありますから」
朝日奈氏は隠してなどいないと強調したが、私の疑念は消えなかった。
前次1-
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ アボンOFF

ぬこの手 ぬこTOP 0.018s