[過去ログ] 連続ドラマ小説「ニホンちゃん」25クール目 (697レス)
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296: あさぎり ◆WOaKOSQONw 05/02/23 04:00:42 ID:0mOkeiZ7(1/8)調 AAS
『その日、龍は駆け巡る』
「おっかしいなあ…皆どうしたんだろ?」
学校帰りのニホンちゃん、隣近所の子供たちがごっそり早退したのを不思議に思いつつ、帰る
道すがらひとり首をひねっています。
いつも賑やかなタイワンちゃんやネシアちゃんがいないと、何かこう気抜けした感じです。
「ん?なんか騒々しいなあ…」
アジア町にさしかかり、普段から良くも悪くも賑やかな町なのは確かですが、今日はなんだか
いつも以上に騒々しい感じです。いや、浮かれていると言ったほうがいいかもしれません。
その雰囲気を訝しく思いつつ、シンガ君の小さくも立派な家の前に差し掛かったとき、中から
けたたましい音が漏れてきました。
「え?え?なななな」
スパぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ
「ひゃああああ!」
物凄い音と共に突然シンガ君の家のドアが開いて中から龍が飛び出してきました。どうやら家の
中で爆竹を使っていた模様。周囲に硝煙の香りが充満し始めます。
龍はもちろん本物でなく、何人かのおじさんたちが動かしています。いたずら心の多いおじさん
たちなのか、根っから性根悪いのか、呆然としていたニホンちゃんめがけて龍が迫ってきした。
ニホンちゃんピンチ!
「わ、わ、わ、わわわ…」
我に帰ったニホンちゃん、慌てて逃げ出します。
297: あさぎり ◆WOaKOSQONw 05/02/23 04:01:18 ID:0mOkeiZ7(2/8)調 AAS
と、そのとき…
♪さらばラバウルよ 又来るまでは しばし別れの 涙がにじむ…♪
携帯電話の着メロが状況と無関係に響き渡ります。つか、ニホンちゃんなんでそんな渋い歌
着メロにしてるん?
「はぁっはぁっ…もしもしー」
「あ、さくらー、おしょうゆ切れちゃったから帰りに買ってきてねー。」
「メイデイメイデイ!それどころじゃないよママン!!」
「あら、どうしたの?なんか走ってるみたいだけど。」
「はぁっはぁっぜえっ…龍に追っかけられてるであります!」
「…バカなこと言ってないでちゃんと買ってきてよ、もう…寄り道もほどほどにね…」
「ホントに追っかけられ…」
がちゃ…つーっつーっつーっ
うんそうね、その説明で本気にするお母さんのほうがアレですよ。
「うわぁぁーーーん!こっちこないでー!」
298: あさぎり ◆WOaKOSQONw 05/02/23 04:02:58 ID:0mOkeiZ7(3/8)調 AAS
それから暫く懸命に走っていましたが、振り返るとそこにはもう龍のおじさん達の影はなく、
ほっとして息を整えました。
気がつけばそこはベトナちゃんの家の前。シンガ君の家の前とは打って変わり、こんどは
家の庭から穏やかな笑い声や囃し立てる声が聞こえてきます。
「べトナー、つぎ右手きいろー。」
「ホーは左足青でお願いします。」
ベトナちゃんちは一家で盛装して庭でベトナちゃんとホーチミン君がツイスターゲームなんか
やって盛り上がっています。ルーレットはパパとママンが交互に回しているようですね。
『学校早退してツイスターゲームですかそうですか…』
優等生の血が騒ぎ、少しこめかみに青筋が出ますが、どうも笑いあっているベトナ家の皆さん
はいつもと違ってどこか真剣。何か握っているなと思ってみたらお金を握り締めて絡み合う二人を
からかったり励ましたりしています。ははあ、どうやら賭けをしている様子。
見ればベトナちゃんのパパもママンも表情は笑っていますが、目は真剣です。
なんとなくスルーした方がいい気がしてニホンちゃんそっとその場を離れ…
ぴょこん
路地の横からかわいく飛び出してきたのはさっきの龍の頭。
「わ、わ、また来たーーーー!!」
赤いスカートを翻し、ニホンちゃんまたまた疾走です。頑張れニホンちゃん、ランナーズハイ
はすぐそこに。
「そんなのみたくナーーーイ!」
そうですか、でもアレはけっこういいものなんですがねえ…
「ふぇぇぇーーーーん!」
299: あさぎり ◆WOaKOSQONw 05/02/23 04:03:54 ID:0mOkeiZ7(4/8)調 AAS
「あーーっニホンさんだー!何してるアルかー?」
それから暫く無心で走ってアドレナリンが大量分泌されていたニホンちゃん、神の世界を垣間
見たりしましたが、派手で真っ赤なチャイナ姿の香ちゃんに声をかけられ我に帰ります。
「ぜえっぜえっぜえっぜえっぜえっぜえっ…」
「ど、どうしたアルかニホンさん…」
「いや……、ぜえっぜえっ、なんでもあるけどなんでもない…ぜえっ…」
「ヘンなニホンさんアル…」
「うん、まあ色々あってね…」
「そうアルか、まあお約束アルからお見舞いするアル!」
「へ?」
香ちゃんの取り出したりますはアジア町名物すっごい爆竹。慣れた手つきで箱ごと着火。その結果は…
スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ
「またーーーーーーっ!せやからどないけつかんぞなもしっぺーー!!」
ちょっぴりワケワカメな事を口走りながら、ニホンちゃんたまらずその場を退散。しかし香ちゃんも
爆竹をぽいぽい投げながら走ってついてきます。
「hdふえりぇうjそうえを!」
「sどぁううぇdmんksdぁ;うれ!!」
音で何言ってるかさっぱりわかりません。
さっきの龍もいつの間にやら追っかけてきているようで…。中の人も付き合いがいいですねえ。
300: あさぎり ◆WOaKOSQONw 05/02/23 04:04:52 ID:0mOkeiZ7(5/8)調 AAS
それから暫く夢中で走って辿り着いたは中華マンション。家とは別方向に走ってしまったようです。
「おお、ニホンどうしたアルか、やっと朕に年のはじめくらいは挨拶する心がけになったアルか、
感心感心アル。乎々々」
多分一年中で一番おおらかにチュウゴ君が迎えてくれました。竹馬に乗って。
「いや、そうじゃなくって…ぜはっぜはっぜはっ……ちょっと込み入ってて…ぜはっぜはっ…」
「ニホンも何かと色々あるみたいアルな。まあ今日くらいはゆっくりしていくといいアル。」
いつになく優しい言葉をかけるチュウゴ君。マンションの中は飲めや歌えの大騒ぎの真っ最中。
チュウゴ君もマンションの住人と和やかに歓談しながらくつろいでいる様子です。竹馬に乗って。
「ねえチュウゴ君、なんで竹馬に乗ってるの?」
せいろからシューマイをチョイスして、アツアツをほおばりながらニホンちゃん素朴に聞いて
みます。
「なぜにと聞くアルか?それなら答えは一つアル。伝 統 だ か ら アル。」
「そっか、とにかく深くつっこまない事にするね。」
「それが賢い選択アルな。ところで龍がさっきからニホンとじわじわ距離を詰めているアルが、何か
新手のプレイアルか?」
「へ…いや、プレイと言うか…オッカケラレテルミタイナンデス。」
「そうアルか。そんなら早く逃げるアル。朕はこの通り見守る事しか出来ないアル。」
「何となくかっこいいけどさ、香ちゃんもチュウゴ君も私助けるって気はないのおおぉぉぉーーーー…」
「ム、それはないアル。朕の知っているニホンは一人で頑張れる強い子のはずアル。それじゃあ頑張って
逃げるヨロシ。手向けにこんなのお見舞いしてやるアルゾ!」
しぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ
「ふぇぇぇぇ…爆発するのはペットボトルロケットだけにしてよォォォォ!」
ニホンちゃん再び疾走開始。青春とは青い春と書いて『しっそう』と読む…
「わけないでしょうがーーー!!」
301: あさぎり ◆WOaKOSQONw 05/02/23 04:05:45 ID:0mOkeiZ7(6/8)調 AAS
それから暫く全力で走ったニホンちゃん、うちでとびきりのいい服を着て門前で笑っているキッチョム君を
脇目も振らずスルーして、たどり着いたはカンコ君ちの前。
なんだか賑やかな太鼓の音が鳴り響き、白装束のカンコ一家がくるくると踊っています。
「ほえぇぇぇ…」
息を何とか落ち着けてカンコ君とチョゴリちゃんの踊りに思わず見惚れるニホンちゃん、一度アメリー君
の誕生会でやらかしたあの踊り以外にも持ちネタあったんだと思わず感心します。
しかしそこは我らがカンコ、服は白くても心はキムチ色に燃え上がっています。主に金銭的に。
「オモニ!今年の完璧な舞はウリナラに超絶好景気をもたらすこと間違いないニダ!撒き餌が多けりゃ来る
福はハン万倍になること間違いないニダ、ホラパーっとお年玉よこすニダーー!」
踊り終わったカンコ君、止めるチョゴリちゃんを振り切ってアポジとオモニに必中吶喊かまします。
「コォォォォ…突き上げる恨!燃え尽きるほどヒィィト!ラヴリィアポジのオーヴァードライブゥゥーー!」
カンコパパの輝き叫ぶ右の拳が炸裂。いい角度でカンコ君上昇してゆきます。
ニホンちゃんの「あー…」とチョゴリちゃんの「オッパー」とカンコ君の「アイゴー…」が冬の青空に
吸い込まれてゆきます。
かぷ…
他人のこと気にしている場合じゃなかったとニホンちゃんが思い至った瞬間、何かがランドセルに噛み
付いた音がして、ふと振り返るとそこにはさっきから追っかけてくる龍の姿が。心なしか龍の中の人も肩で
息をしているようです。
「やぁぁぁぁぁん!なんでそんなに一生懸命なのよぉぉーー!!」
ニホンちゃんの金切り声で一瞬龍(と中の人)が油断した隙に一気にダッシュ。再び全力疾走です。
302: あさぎり ◆WOaKOSQONw 05/02/23 04:14:50 ID:0mOkeiZ7(7/8)調 AAS
それから暫く闇雲に走っていたニホンちゃん、長崎の間の鼻先をかすめ、種子島の間の秘密工作所も
目に入らない勢いで通り過ぎ、ご馳走抱えて声掛けて来たリュー君に目もくれず、辿り着いた場所は
タイワンちゃんのお家でした。
「はぁっはぁっはぁっはぁっ…もう走れませぇん……。」
さすがのニホンちゃんも体力の限界…その場にぺたりと座り込んでしまいました。と、そのとき、
「ニ…ニホンちゃん、どうしよ私顔がこんなになっちゃたよ!」
いきなり後ろから切羽詰ったタイワンちゃんの声を聞いて、何事かと振り返ったニホンちゃん、「ひっ…」
と小さく叫ぶとその場で気絶してしまいました。
そこにいたのは顔が五、六倍は膨れ上がったタイワンちゃんが!まあ、かぶりもんなのは見りゃ判るのですが、
ニホンちゃんには本当にそう見えた模様。片やタイワンちゃんは、ニホンちゃんの素直な反応が面白かったご様子。
「あははははは、ニホンちゃんリアクションオーバーすぎー、かぶりもんに決まってるでしょ……って、
ちょっとニホンちゃん?おーい日之本さくらー…」
そういいつつ頬をぺちぺちしてみますが、オチてしまったニホンちゃんは目を覚ます気配もありません。
「うわ、やっば…、どどどうしよ…ん?」
気がつけば件の龍がニホンちゃんを心配そうに覗き込んでいます。
「おじさんたちなにしてんのさ。え?ああ、赤い玉追っかけてた?やっぱお正月はこうじゃ無きゃって?…それは判るけど
その赤い玉どこ?いやこの子赤い玉なんか持ってないよ?……え?セーターに…って、あーあー、もしかしてずーっと
追いかけてきたの?…シンガ君ちから?ちょ…子供相手に何やってんのよもー、酔ってた?そんなの言い訳になんないよ!
…バッカじゃないの!」
やれやれと立ち上がり、タイワンちゃんはニホンちゃんをおんぶして家の中に向かいます。
追っかけまわしていた龍(と中の人)はちょっぴりしょぼくれ気味。口惜しそうに暫く佇んでいましたが、シンガ君の
お家までとぼとぼ帰っていきましたとさ。
「うふふふ、シアワセノ赤い玉げっちゅー…」
それを見送るタイワンちゃん。顔は怒ってますが心の中は何かがたぎっているようで…
いや、確かに幸多からん事を祈っておりますが、ダメですよアレな事は…
おしまひ
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