[過去ログ] ギャルゲー板SSスレッド Chapter-3 (988レス)
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(1): 不幸とは(1) 02/06/20 22:59 ID:??? AAS
 寿美幸は昇降口で呆然と立ち尽くしていた。
 部活が終わるまでは、降る気配すら感じなかった雨。

 朝の天気予報では、降水確率はかなり低かったはずだ。
 梅雨時ということもあり、傘を持っていくかどうか迷った。
 結局、美幸の選択は失敗したことになる。

 大きなため息をつき、がっくりと肩を落とす。
「はにゃ〜、やっぱり〜美幸って――」
「寿さん」
 不意に後ろから声をかけられ、美幸は振り返る。
「あ〜、陽ノ下さん」
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(1): 不幸とは(2) 02/06/20 23:01 ID:??? AAS
 陽ノ下光は右手に傘、左手に鞄を持っていた。
「ひょっとして……傘、持ってないの?」
 光は確認するように尋ねた。
「う、うん。美幸〜持ってこなかったんだよね〜」
「そうなんだ」
「もう、ダメダメだよ〜」
「じゃあ、貸してあげるよ」
 光はにっこりと微笑み、美幸の前に傘を差し出す。
「ええっ!? で、でも〜、それじゃあ陽ノ下さんが〜」
 美幸は困惑しながら雲行きを確認する。
 どう見ても雨は止みそうもない。
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(1): 不幸とは(3) 02/06/20 23:03 ID:??? AAS
「大丈夫だよ。ほらっ」
 光は鞄を開け、細長そうなものをチラッと見せる。
「あっ!!」
 折り畳み傘まで持っているとは!
 美幸は光の用意の良さに、ただ感心するばかりだった。

「陽ノ下さん、ありがと〜」
 美幸は傘を受け取り、何度も礼を言った。
 光はただ『えへへ』と笑うだけだった。
「じゃあね〜、バイバ〜イ」
 美幸は傘を差すと昇降口を出た。
 一度振り返り、光に向かって手を振る。
 光も手を振り返す。
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(1): 不幸とは(4) 02/06/20 23:05 ID:??? AAS
 美幸は校門を抜け、坂の途中で立ち止まる。
「あ〜、美幸〜忘れ物しちゃったよ〜」
 こんな時に限って下らないことを思い出す。
 どうしようか迷ったが、取りに戻ることにした。

 美幸は校門に入った辺りでまた立ち止まる。
 昇降口に光の姿を見つけたからだ。
 誰かを待っているのだろうか?
 それにしては空を気にしているように見える。
 折り畳み傘を持っているなら、帰ってもよさそうなのに。
900
(1): 不幸とは(5) 02/06/20 23:07 ID:??? AAS
「あっ! ひょっとして」
 まさか、折り畳み傘なんて持っていなかったのでは?
 光が見せたものは何か別なものかもしれない。
 でも何故!? ともかく傘を返さなきゃ。
 美幸はそう思って、昇降口へ向かおうとした。

 だが、思わず近くの木陰に身を潜めてしまう。
 光に声をかける人影を見つけたからだ。
「……り、ひかりじゃ……」
「……くん……」
 雨音で良く聞こえないが、間違いない、あの人だ。
901
(1): 不幸とは(6) 02/06/20 23:09 ID:??? AAS
 光の幼馴染みであり、美幸が密かに思いを寄せている人。
 彼は光と会話をしながら、持っていた傘を差す。
 そして光に入るよう促す。
 光は頬を赤らめ、遠慮がちに小さく頷く。
 二人は寄り添うようにして、ゆっくりと歩き始める。

 美幸はただ、その光景を黙って見つめていた。
 二人の姿が目の前を通り過ぎた辺りで、視界が滲み始める。
「やっぱり〜美幸って……」
 小さな呟きは、雨音に掻き消されていく。
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