[過去ログ] 強化スーツ破壊 (598レス)
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147: ( ^∀^) ◆YtEYPux7gg 2013/01/13(日) 00:03:27.31 ID:nxD5XnVZ(1/5)調 AAS
「あ、由衣ちゃん…あんなに急いでどこに行くんだろう?」
下校途中だった栞は、バイクを道端に止め、橋のたもとに向かって全速力で走っていく由衣の姿を目撃していた。

「はっ、あれは…この前の!」
真由美から怪人出現の通報を受けて駆けつけた由衣の視界には、サソリ怪人の姿があった。
怪人とはいえ、もとは写真を撮ってくれた青年、島崎だ。戦って倒すしかないのか。
由衣は一瞬迷ったが、すぐ傍には母子がいる。人間の命には代えられない。
迷いを断ち切るかのように由衣はサソリ怪人の元に向かっていった。

「島崎さん!島崎さんなのね!」
由衣は彼の名を叫びながら、サソリ怪人の前に立ちふさがる。

「お前もコイツの邪魔をするのか!」
「島崎さん、元に戻って!私よ!鷹野よ!」
「それがどうした!」
サソリ怪人は由衣に覆いかぶさって押し倒し、上から組み伏せる形にした。

「早く…逃げて…!」
由衣の叫びを聞き、へたり込んでいた母子がこの場からようやく逃げ出す。
目の前に、サソリ怪人の尻尾のドリルが迫ってくる。
生身の状態で説得を試みていては殺されかねない。由衣はやむなく戦士に変わる決意をする。

「着装!」
由衣の叫びとともに、白い防御フィールドが発生し、由衣を組みふせていたサソリ怪人の体が弾き飛ばされる。
防御フィールドの中で、由衣の衣服が光の粒子となって消え、入れ替わるようにして赤と白のインナースーツが装着される。
目が眩んだサソリ怪人の目前で、由衣の全身が真紅の装甲に覆われていく。
ヘルメットが装着され、外見からは由衣である事が分からなくなると、防御フィールドが弾け、レッドトルネードの姿が現れた。

由衣が変身する様子を木陰で見ていた栞は、目の前で繰り広げられた光景がまだ信じられない様子だった。
「やっぱり…由衣ちゃんがそうだったんだ…」
栞は、レッドトルネードの正体が由衣である事を確信した。
148: ( ^∀^) ◆YtEYPux7gg 2013/01/13(日) 00:04:33.46 ID:nxD5XnVZ(2/5)調 AAS
「島崎さん…こんな格好、見せたくはなかったけど」
「そうか、お前がレッドトルネードだったのか、今まで僕を欺いていたのか!」
サソリ怪人が両手の爪から毒液を発射してきた。レッドトルネードが避けた後の地面に落ちた毒液は白煙を立て、地面のアスファルトを溶かす。

「僕は誰も殺したくなんかない、だがレッドトルネード、お前だけは駄目だ、僕たちを滅ぼす存在だからだ!」
「島崎さん、あなたは自分の価値を認めてくれる人と出会ってないだけよ!だからもう止めて!元に戻って!」
レッドトルネードの呼びかけにも関わらず、サソリ怪人は尻尾のドリルを突き出してくる。
ドリルの先端が一瞬回避が遅れたトルネードの左腕をかすめ、堅牢なはずの真紅の装甲の表面が抉られ、内部のチューブが露出する。
さらに、サソリ怪人は尻尾を下から上に振り上げ、アッパーのような形でトルネードの顎を叩きつける。

「あうっ!」
頭部に強い衝撃を受けたトルネードは、内部モニターが一瞬ショートしたような気がした。態勢を立て直す前に、サソリ怪人の尻尾がトルネードの胴体に巻きつけられる。
長い尻尾を自在に振り回し、サソリ怪人はトルネードを一度、二度と地面に叩きつける。サソリ怪人の尻尾はムチのようにしなやかな動きをする。
勢いよく地面に叩きつけられるたびに、トルネードの身体全体に衝撃が走る。
そして、サソリ怪人はトルネードを高く放り投げる。宙に浮いたトルネードの身体は橋の下にある川に水飛沫を上げながら落ちた。

「ここで私と戦って死のうって言うの…?あなたがやるべき事はそんなんじゃない…!」
よろよろと立ち上がるトルネードの装甲から水滴がポタポタと落ちる。半透明のバイザーは地面に叩きつけられた衝撃で粉々に砕け散っていた。
149: ( ^∀^) ◆YtEYPux7gg 2013/01/13(日) 00:05:35.70 ID:nxD5XnVZ(3/5)調 AAS
「トルネード、情けをかけないで、怪人を倒す事に集中して!」
「分かってるわよ!」
迷いを断ち切れとの真由美からの通信が入る。思いを新たに、レッドトルネードは再びサソリ怪人を見つめる。

「レッドトルネード、お前を殺してから僕も死ぬ!」
「今ここで死んじゃったらあなたは不幸になる!」
「人の幸せや不幸を他人が勝手に決めるな!」
サソリ怪人は再び尻尾を振り回してくる。しなる尻尾は至近距離の敵までは攻撃できない。トルネードは意を決して懐に飛び込んだ。
パンチがサソリ怪人の身体に決まり、サソリ怪人がたじろぐ。その隙を見逃すトルネードではない。

「はあっ!」
ワンツーをサソリ怪人の顔に決め、すかさずバネの利いたハイキックを何発もサソリ怪人に連発して叩きこむ。
サソリ怪人の身体は十メートル以上吹き飛び、堅い装甲がバラバラと剥がれ落ちた。

「ようし!」
レッドトルネードはマルチマグナムを取り出し、サソリ怪人の装甲が剥がれた部分に破壊光線を放つ。
前回の戦いでは装甲に阻まれていた光線が、今度はサソリ怪人に大きなダメージを与えた。

「島崎さん…許して…!」
レッドトルネードー由衣はヘルメットの中で涙を滲ませながらも、サイコブレードを抜き放つ。
サイコブレードのグリップの反対側からもう一本光の刃が出る。トルネードは両刃のブレードを棒術のように振り回し、サソリ怪人に向き直る。

「ダブル・トルネード・スマッシュ!」
レッドトルネードの両刃のサイコブレードが縦に回転し、光の軌跡と共にサソリ怪人の身体を何度も切り裂く。トルネード・スマッシュの改良型だ。
サソリ怪人は体液を苦しげに撒き散らしたかと思うと、四方八方にその身体を爆裂させた。

サソリ怪人を倒したトルネードは、ふと何か大切な事を思い出した。
島崎の持っていたカメラはどうなったんだろう、まだあるだろうか。そう思い、軽やかに高く跳び、橋の上に着地する。
地面を見ると、確かにカメラがあった。間違いなく島崎のものだろう。メタルグローブに包まれたレッドトルネードの右手がそれを拾い上げた。壊れていないかどうかは分からないが、この中には島崎が撮った写真があるのだ。
いつもなら、真由美からの「お疲れ様、帰ってきなさい」という通信が入る頃なのだが、今日は何も無い。
つまりはそういう事なのだ、とレッドトルネードは自分に言い聞かせ、レッドジェッターに跨った。
150: ( ^∀^) ◆YtEYPux7gg 2013/01/13(日) 00:07:23.79 ID:nxD5XnVZ(4/5)調 AAS
「ただいま」
「お帰り、レッドトルネード」
レッドトルネードは鷹野家に帰還した。右手にはカメラが握られている。トルネードは必死に平静を装ってはいるが、その声は震えていた。

「着装、解除」
半分涙声でトルネードは変身を解除した。10秒と経たないうちに装甲が外れ、赤と白のインナースーツ姿になり、そして裸になる。
着用していた衣服が元通りに復元され、由衣の姿に戻った。顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

「おーい由衣、お風呂湧いてるぞ」
階の上から篤彦の声がする。篤彦も、帰って来た由衣に何があったかは真由美から聞かされていた。
由衣は一直線に風呂場に向かい、脱いだ服を全自動の洗濯機に叩きこむ。

「殺したくなんか無かったのに……」
由衣は風呂のシャワーの水量を最大にし、頭から一気に湯を被る。汗と一緒に涙も洗い流そうとした。
しかし、流れるお湯の下で、眼から涙が流れ続けるのを止める事は出来なかった。

シャワーを浴びた後、由衣はバスタオルのみを羽織った姿で自室に戻り、島崎のカメラをUSBケーブルでパソコンに繋いだ。
カメラは壊れてはいないらしく、内部の画像ファイルを通常通り見る事が出来た。

鶯が木の枝に止まっている写真。
蜂が花に止まり、蜜を吸っている写真。
自分が振り返って笑顔を見せている写真。
自分が木の幹から半身を乗り出して覗いているような写真。

このカメラの中には、島崎という人間の人生観、価値観が詰まっている。しかし、それに何かが新たに加わる事は、もはや、無い。

(でも所詮人間じゃないんだ、それに、男ぐらい何人でもいるんだ…)
由衣は自分の行為を必死に正当化しようとしたが、手の震えが止まらない。いつの間にか、再び涙も流れ出していた。
由衣は部屋のカーペットに手をついて嗚咽した。ポタポタ落ちる涙が、カーペットにいくつもの染みを付けていく。
装甲を纏い、真紅の戦士・レッドトルネードになるとは言え、由衣は戦いの訓練を受けたわけでもない、普通の女子大生なのだ。
怪人との激しい戦いの日々は、着実に由衣の心を蝕んでいくのだった。
151: ( ^∀^) ◆YtEYPux7gg 2013/01/13(日) 00:08:05.61 ID:nxD5XnVZ(5/5)調 AAS
今回は以上です。さぁ次回はいよいよ…
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