[過去ログ] 【スカトロ】排泄系妄想廃棄所11【汚物】 (395レス)
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9: H 2012/07/10(火) 20:50:11.09 ID:VzwW0HGi(1/28)調 AAS
 大量少女、続きです。
 やっとこの話も一段落。
10: H 2012/07/10(火) 20:51:46.69 ID:VzwW0HGi(2/28)調 AAS
 ヒュージな彼女 [ 

 後編(最終)

「えーと……417号室。でいいんだよね。……時間、大丈夫かな」

 太陽も西に大きく傾いた、とある金曜日の夕暮れ時。
 時刻は午後六時の少し前である。
 一人の少女が皮製の小さなバッグを肩に、黄昏の、オレンジ色に輝く日差しを浴びて佇んでいた。
 ある六階建てのマンションのアプローチ、その大きな自動ドアの前である。
 薄手のノースリーブと、夏らしい軽やかなデザインのミニスカート。
 夏の装いから覗く四肢の、手入れの行き届いた白い肌が美しい、活発的な印象の少女だ。
 そして腰まで伸ばした、彼女のふわふわの長い髪はとても特徴的……と言うよりも、とても暑そうだった。

(もういい加減切ろうかなー。でもなんかもったいないし……)
 西日に照らされる街の熱気の中、その額にはじっとりと汗が滲んでいる。
 少々鬱陶しそうな様子で、彼女はうしろ髪を触った。
(まぁ、いいや。とりあえず中に入ろっか。ここで立ってても仕方ないし)
 白いハンカチで丁寧に額の汗を拭う。
 六月に入って最初の週末を迎えたこの日はいきなり梅雨の中休みに当たり、とても蒸し暑かった。
 そして腕時計で時刻を確認すると、彼女――風間薫は、大学の寮の建物へと入っていった。
11: H 2012/07/10(火) 20:52:33.78 ID:VzwW0HGi(3/28)調 AAS
 あれから……留学生の蘇との邂逅から、一日と半分の時間が過ぎていた。
 一日の講義は既に終了、サークル活動も今日は無い。
 義務から解放された、放課後の自由な時間。
 そして、彼女との約束の時刻でもある。
 昨日の夜、蘇から「お礼がしたいから家に来てほしい」という内容のメールを受け取った薫は、それに応えて
キャンパスの敷地に隣接する、大学運営の寮へとやって来ていたのだった。

「こんにちは〜」
「あ、えと、こんにちは」
 普通のマンションよりも、エントランスは少し窮屈だった。
 玄関の風除室を抜けて中に入ると、幾人もの住人(同じ大学の学生だ)が彼女のすぐ横をすれ違って行く。
 フレンドリーな笑顔を向ける、青い瞳の……彼らも留学生だ。
 この大学の寮は経済的に余裕のない者、特に外国人留学生を優先的に入居させているのだ。
 今から訪ねる、ここに住んでいる“彼女”もまた同じである。
(なんか外国に来たみたい。でも、お礼がしたいって……なんだろな。中国式のお返し)
 エレベータを待つ他の住人の姿を横目に、彼女はとなりの階段室に入る。
 コツコツと足音を立ててゆっくりと上りながら、薫はあれこれと想像の翼を広げていた。
 あの告白のあと、同い年だったということもあり、蘇はすっかり物腰が柔らかくなった。
 頼れる者の少ない異国の地で同じ仲間に出会ったのが、よほど嬉しかったのだろう。
 もちろん薫の方も、気持ちは同じだった。
 その彼女の部屋に招待される。
 外国人留学生ということで、少しばかり不安もあったが……しかし、こんなにわくわくする気分は、
本当に久し振りの気がする。
 新しい友達の家に、初めて遊びに行く。
 それも生まれて初めて出会った、お互いに秘密を分かち合える存在である。
 まるで小学校の子供に戻ったような、どこか懐かしい感覚だった。
「んと……ついた、かな」
 いい意味でのドキドキを味わいながら、西日の眩しい開放式の廊下を端まで歩いて、ようやく彼女の部屋の前に着く。
 見つけたその表札は、切った厚紙にマジックで「蘇」と書かれていた。
 腕時計と、薄もやに霞む夕暮れの街並みを横目に見ながら、約束の午後六時ちょうどを待つ。
 そして期待を込めて、彼女はベルを鳴らした。
12: H 2012/07/10(火) 20:56:11.38 ID:VzwW0HGi(4/28)調 AAS
「――いらっしゃいませ! 待ってましたよ、風間さん」
「うん。こんばんは」

 そのまま待つこと、二十秒ほど。
 玄関の扉が開かれると、その向こうから輝くような笑顔の少女が姿を見せた。
 屈託の無い、ほがらかなその表情に、つられて薫も明るい挨拶を返す。
 こういう時“ませ”はいらないんだけど、という突っ込みは取り合えず飲み込んだ。
 薫の、つい二日前に出来た新しい友人。
 中国系の留学生で、彼女は名を蘇仙嘩と言う。
 浙江省は温州の生まれで、来日したのはこの春。
 小柄でスレンダーな体に、しっとりとした黒の短い髪が、薫とは好対照だ。
 なにか武術かスポーツでもやっていそうな、背は小さいながらエネルギーに溢れた明るい少女である。

 ……そして同時に彼女は、薫と同じ、常識外れの大量排便の特異体質を持つ女性でもあった。
 ほとんど奇跡的な、同じ秘密を抱える二人の出会い。
 正に、類は友を呼ぶという言葉を証明する出来事である。

「本当に、良く来てくれました。さあ、上がってください」
 薫の分のスリッパを下駄箱から出して床にそろえ、そして背中で部屋の奥へと誘う。
 本当に嬉しそうな様子だった。
(最初の時と別人みたい。そういえばあの、ぶかぶかの運動着……やけに似合ってたなー。なんでかよくわかんないけど)
 出会った時の、無愛想な彼女を薫は思い出していた。
 もちろん今日はジャージ姿ではない。
 下は深い黒色のパンツルック……薫のミニスカートと、これも対照的である。
 それとカジュアルな白のシャツに、半袖の薄手の上着。
 シンプルな組み合わせが好みらしい。
 ついでに、家だからなのか、今日は眼鏡をかけていなかった。
13: H 2012/07/10(火) 20:56:49.04 ID:VzwW0HGi(5/28)調 AAS
「それじゃ、おじゃましまーす……。 あれ? 何これ、いい匂い」

 靴を脱ぐとすぐに、ふわっと漂ってくる匂いに気がついた。
 他人の家に上がるときは、いい意味でも悪い意味でも、その空間特有の匂いが気になるものだ。
 しかしこのとき薫が嗅いだ匂いは、そう言う類のものではなかった。
 脳よりも先に、胃が反応する香りである。
「国ではこういうときは、親しい人を集めて宴を開いて、新しい友人を歓迎します」
 1DKの小さな玄関から短い廊下へ。
 鼻を動かす薫に、蘇は振り向きながら言った。
 そしてキッチンスペースとバスの横を抜け、明るい奥の部屋に。
 匂いの正体は、そこで明らかになる。
 食の本能をくすぐる、香ばしい油と濃厚な中華ソ−スの匂い……。
 彼女の前に現れたのは、丸いテーブルを覆いつくすように並べられた、正に華やかな中国料理の皿の数々であった。
「……すごい。これ全部、あなたが?」
「はい。本当は他の留学してきた仲間と一緒がよかったですけど。でも私たちの場合は、他の人が一緒は、あんまり話が
出来ないと思いました」
 鞄を肩に掛けたまま、薫は素直に驚き、そして関心していた。
 玄関の扉をくぐった時「中華のお店に来たみたい」と思ったのは間違いではなかった。
 白い器に盛り付けられた、心尽くしの料理の数々。
 肉と野菜の炒め物、海老や貝をふんだんに使ったあんかけ物、白身魚と筍の煮物……湯気の立ち昇る
色とりどりの素材で、見ているだけで楽しい気分になる。
 しかも、どれもこれも、料理の名前が分からない。
 いわゆる“日本化”されていない、本当の中華料理で彼女は客人をもてなそうとしているのだ。
「お店に行って食べたりするのは、お金がありません……。だから自分で安いマーケットで買って作りました。
さあ、宴を開きましょう。これが私に出来る精一杯の御礼です」
 にこにこと、朗らかな笑顔でスーは答える。
 そして二つあるイスの片方を引いて、目で薫を招いた。
14: H 2012/07/10(火) 20:57:21.54 ID:VzwW0HGi(6/28)調 AAS
「そっか……ありがとう。うれしい」
 これが、蘇仙嘩流のお礼。
 お客として薫を部屋に呼ぶために、余計な物も全部片付けたのだろう。
 メインの生活空間のはずの、七畳ほどの洋室。
 よく見ると中央のきれいな丸テーブルとイスの他は、隅のソファーベッドと液晶テレビ、それから小さなタンス程度の
収納しかない。
 フローリングもピカピカだ。
 昨日の夜の“お誘い”のメールの後、彼女から
「どんな料理が好きですか? 脂っこいのは大丈夫ですか?」
とか、
「今ダイエット中ではないですか?」
などと電話で聞かれていたのと、約束が午後六時ということで、ある意味これは予想の範囲内であったのだが……。
 しかし、いくらお客の立場でも、友人からこんな風に全力でもてなされたことなど今まであっただろうか?
 わくわくから、驚き、そして感動。
 薫の心象風景はめまぐるしく動いていた。

「それじゃあ、早速……あ、風間さん老酒は飲んだことありますか」
「……え。それって確かお酒……」
「そうですよ。宴会でお酒がなかったら、話になりません」
 キャビネットから取り出した、小さなグラス二つを手に、もう一度にっこりと彼女は笑った。
 二人だけの宴会の始まりだった。
15: H 2012/07/10(火) 20:58:01.63 ID:VzwW0HGi(7/28)調 AAS
「ああ、もうどうしよう。次どれ食べたらいいか迷う……」
「何でもお好きなように。二人です。作法とか、そういうものは関係ないです」
 お互いに席について、まず乾杯。
 それから五分も経つ頃にはもう、薫の顔は緩みきっていた。
 初めて味わう本場の――彼女の地元、温州料理の数々。
 その美しい見た目を裏切らないおいしさに、ついため息が漏れてしまう。
 しかも彼女が故郷からわざわざ持ってきたというこの老酒がまた、料理の味付けを引き立てて、どんどんと箸が進む。
「料理が上手ってホント尊敬するわ……。日本語もすごく上手いし。どこで習ったの?」
 箸休めにと、薫は訪ねた。
 ある意味定番の質問である。
「料理は母から。日本語は、十四のときから、いつか日本に行ってみようと思って、自分で勉強してました。高校では
日本語クラブで勉強しました。だから、文章を書くのはまだ下手だけど、喋るのは今のクラスの中では一番得意です」
“外人さん”には、少々耳タコかもしれないが、蘇はまじめに質問に答えた。
「努力家なんだね……あ、そういえば同い年だったんだっけ」
「そうですよ。最初のとき、一回生だって言ったじゃないですか?」
「ごめん忘れてた……。なんか見た感じ、年下みたいだなって思ったから」
「それはよく言われます。十八にはあんまり見えないって」
 彼女も自分のペースで料理を食べながら、端々で会話に応え、そして薫のグラスが空くとすぐ酒を注いでいる。
 二対の長い箸が料理をつまみながらテーブルの上を行き交う。
 ほころぶ薫の顔を見る蘇の表情もまた、幸せそうだった。

「ところで……今日はおなかの方は大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫ですよ。朝に一回爆発させてますから。たぶん、しばらくは」
「え。それ本当に大丈夫だったの」
「自分の下宿なら、大丈夫です。寝るときもそうなんですけど、おむつ付けますから。ケブラー繊維製の物を」
16: H 2012/07/10(火) 20:58:43.22 ID:VzwW0HGi(8/28)調 AAS
「おむつ? ケブラー……って、何?」
 聞き覚えの無い単語だった。
 しばし考えてから、薫は聞き返す。
 すると蘇は箸を置いて、同じく一寸考える表情をしてから、改めて口を開いた。
「えーとですね、防弾チョッキ、とかに使われてる布だそうですよ。どんな爆発でも、絶対ちぎれない。国に居る時、
お父さんが作ってくれたんです。いつも付けているのは、ちょっと無理なんですけどね……」
「そんなのあるんだ……すごい人だね、お父さん。でもそれってどんなの? 想像できない」
「後で見てみますか? 他の人は絶対ダメですけど、風間さんなら。……あ、料理なくなっちゃいましたね。
ちょっと待っていて下さい」

 空いた皿をいくつも手に取り、蘇はキッチンの方に行く。
 気が付くといつの間にやら、山と料理が盛られていた皿は、殆どがまっ平らになっていた。
 薫はいつも通りだが、蘇の方も負けず劣らずよく食べる。
 テーブルを彩っていた料理の数々は、普通に考えて四〜五人分の晩餐に十分な量であったはずなのだが……。
 やはりここも、似たもの同士なのだろうか。
「んー……?」
 そして薫は、イスに座ったまま、ジト目で自分のおなかを見つめていた。
 初体験の珍味の数々。
 アルコールも、本格的に飲むのはまだ二度目だ。
 少し調子に乗りすぎているかもしれない。
(……別にいいや。楽しいし)
 キッチンの衝立の向こうから、中華鍋の奏でる軽やかな音が聞こえてくる。
 リズミカルな金属音が、なんだか面白い。
 まるで本当に、本格的な中華料理店にいるようだった。
(それに今はおなか空っぽだし。出されたのを残すのも、失礼だし)
 緩んだ顔で、グラスに注がれた老酒をもう一口。
 高温の油が弾ける、香ばしい臭いと音とを楽しみながら、彼女はおなかを叩いて笑った。

 ついさっきのことだが、彼女は一旦自分の部屋に帰ったとき、万一を考えてイチヂク浣腸を三個使って、
予防的に奥の方の中身まで搾り出していた。
 便秘でないときに浣腸を使ったせいで、危うく、またがったバケツから溢れそうになってしまったが……。 
 おしりが擦り剥けるんじゃないかと思うくらい勢い良く出たので、当分は大丈夫だろうと彼女は判断していた。
 ……しかし、今更だが、食事を楽しみながらこの手の話題を口にするのはどうなのだろう。
17: H 2012/07/10(火) 21:00:04.83 ID:VzwW0HGi(9/28)調 AAS
(ばくはつ。爆発ねぇ……。もしあのこが浣腸使ったら、どうなるのかな)
 ふと疑問が浮かんだ。
 緩んだ……と言うより、アルコールに浸かったぼんやりとした瞳で、薫はキッチンの衝立に視線を向ける。
 自分の場合、便秘で無いときに浣腸を使うと「少し未来の分まで一気にどばどば出てくる」のだが、
爆発力を持った彼女の場合は一体……。
「や、止めとこう。うん」
 考えると少し恐ろしくなった。
 ぶんぶんと頭を振って、まだ皿に残っていた蒸し海老をひとつ、口に放り込む。

 ――と、その衝立の向こうから、蘇がひょいと顔を出して薫に声をかけてきた。
「あ、あのぅ……風間さん」
「なに?」
「ちょっと耳を、ふさいでいて欲しいです」
「耳? なんで耳………… あ、ああ。うん。わかった」
 黙って薫は、反対の窓のほうを向く。
 耳を塞ぐ直前、ばたばたと、慌てた様子でトイレの中に入って扉を閉める音が聞こえた。
 そして、

 しゅ……ぽっ!!  どぶぼっ!!!

(……聞こえない。私は何も聞いてないよ……)
 心の中で、薫は念仏を唱えるように繰り返す。
 耳あてをするように掌で、ぐっと両耳を押さえたが……正直、大して意味が無かった。
 ふさいだ手を貫通して、鼓膜を揺るがす破裂音。
 壁の向うからでもびりびりと身体の芯を震わせる、例えるなら巨大な和太鼓を力いっぱい叩いたような……?
 体中から滾ってくるガスが腸内で大量に溜まり、そしておしりから抜けた音。
 常識外れの、おならの音……。
 あの爆発力の源でもある。
 脱糞が無くとも、時々、圧縮されたおならだけが外に出ようとする。
 我慢しておなかに閉じ込めたままにしておくことも出来なくは無いが、その苦しさはうまく日本語にできない……そう彼女は言っていた。
18: H 2012/07/10(火) 21:01:32.37 ID:VzwW0HGi(10/28)調 AAS
(でもこれが彼女の日常……なんだ。学校のプールとか、どうしてたんだろう)
 話は一昨日に少し聞いていたが、初めて見……いや、聞いた。
 似た者同士ではあっても、やはり違う人間ということを薫は再認識する。
 そして隣近所の住人から苦情は来ないのだろうかと、他人の家ながら彼女は心配になった。
 本当に、あの小さい身体のどこにそんな力が眠っているのだろう?
 人のことを言える立場では、ないけれど……。
 
「ごめんなさい。食べてるときに……。どうしても我慢できなくて……臭いますよね」
 しばらくして戻ってきた蘇は、両手に新しい料理の皿を抱えていた。
 どうにも申し訳なさそうな様子で、頬を赤らめて……。
 いくら同性、そして同じ秘密を持つ仲間でも、恥ずかしいのは全く変わらないらしい。
「別に、大丈夫だよ。お互い様だし、私も慣れてるから。……ほら、あなたも飲もうよ。まだあんまり飲んでないよね?」
「……はい」
 そんな蘇を、薫は笑顔で迎える。
 そして今度は自分が、彼女のグラスに褐色の液体を注ぐのだった。
 蘇の気にしていた匂いのことも、酒と料理のソース、それから焦がしたニンニクの香りなどが覆い隠して分からない。
 ホストと客の立場も、もう関係なかった。
「……あ、食べるの終わったら、散歩に行かない? 腹ごなしと、酔い覚ましも兼ねて」
「そうですね。じゃあ……大学の中を歩いてみませんか。夜ってどんな感じなのか、見てみたくないですか?」
 彼女の提案に、薫は乗った。

 結局そのあと、更にもう一回当たり前のように全品おかわりを重ね――蘇の用意した材料が底を尽くまで、酒宴は続いたのだった。
19: H 2012/07/10(火) 21:03:45.90 ID:VzwW0HGi(11/28)調 AAS
「……あ、まだ電気ついてる。頑張るねぇ、理系の人」

 寮の横の、通用門の隙間をすり抜けて、夜の帳の下りたキャンパスの中へ。
 敷地の端のここは、正門からはかなり遠い、夕方以降はほとんど無人になる場所である。
 だが遠く薬学部の建物を見ると、遅い時間にも関わらずいくつかの窓は明りが点いていた。
 まだ完全には、このキャンパスは眠ってはいないのだ。
「んー、夜の空気が気持ちいい……月もきれいだし」
「うん。とてもきれい。国で見るよりも」
 時刻は午後九時すぎ。
 宴会が強制終了となったあと、しばらく休んでから二人は寮の部屋を出た。
 特に行き先は考えず、適当にぐるっと敷地を回ったら、またここに戻ってくるつもりだった。
「でも夜の散歩ってちょっと危ないかな……。女の子二人だけだし。今更だけど」
「あはは、敵が来たら私が吹き飛ばすから大丈夫よ。この体質、悪い事ばかりじゃないの。これのおかげで、
友達助けたこともあったし」
 そしてグラウンド脇の並木道、連れだって水銀灯の下を歩く二人は、もう見事に酔っ払いの顔であった。
 夜の闇のせいで今は大して目立たないが、これでくたびれたスーツでも着ていれば、ほぼ完全に
終電前のガード下のサラリーマンである。
 そしてその酔っ払い具合は、蘇の方がより顕著だった。
 今にも酔拳を使い出しそうな感じである。
「え……それって、どうやって!?」
「んーと、家にドロボー入ったときね。包丁持った男が来て、遊びに来てた友達を刺そうとしたんだけど、
私が、何でもするから止めて! って言ってね。それでズボンと下着脱いで、机の上に仰向けになって、
おしりを敵に向けて……それで十分にこっちに引き付けてね」
「……それで?」
「哈! ってやったのよ。敵、そのまま向こうの壁まで飛んで気絶したですよ」
 彼女は高らかに笑った。
 ……そしていわゆる“カメハメ波”のポーズを取って見せる。
 まさかその男も、下を全部脱いで仰向けで股を広げたその格好が、必殺技の発動体勢だったなどとは
夢にも思わなかっただろう。
 冗談か事実か知らないが、流石に薫も、これには苦笑いを浮かべるだけだった。
20: H 2012/07/10(火) 21:04:36.12 ID:VzwW0HGi(12/28)調 AAS
「役に立つんだ、それ。……私は全然、何の役にも立たないなぁ」
「ううん。こんな話が出来るの、風間さんがいてくれたからだよ。だから、役に立つとかじゃなくて……あ、そういえば、
まだ風間さん名前を聞いてなかった」
「えー、そうだっけ? 薫だよ。かざま、かおる」
「……薫? あなたの名前、カオルって言うの!? すごい!」
「す、凄い? ……何が?」
 言ってから数秒の間があった。
 そして突然、立ち止まって顔の色を変えたように食いついてきた蘇に、薫は一歩後ずさりする。
 特に何かある訳でもない、普通の名前だと思うが……中国語的には、なにか深い意味を持っているのだろうか。
 目を輝かせる蘇の前で、彼女は首をひねる。
 だが返ってきたその答えは、至って大したことが無かった。
「だって、国で見てたアニメのキャラと同じ! 本当にいるんだ、アニメの名前の人」
「あ〜……。そういうことね」

「ねえ、友達になるんだったら、アナタのこと“薫殿”って呼んでいい?」

「……ご、ごめん。それは駄目……ちょっとムリ」
「えー、ダメなの」
 苦笑いで薫は返答する。
 意外すぎる展開に、返事をするのに数秒ほどかかってしまった。 
(な、なんでよりにもよって“殿”なのよ……? 君付けの方なら知ってるけど)
 それはひょっとしてアニメでなく、時代劇か何かだったのでは……?
 薫は当惑する。
 その目の前で、蘇は言葉通りの落胆した顔で、小さな肩を落としていた。
「じゃあ、カオル、でいい? 呼ぶの」
「ああ、うん。それならいいよ。友達はみんな苗字か名前呼び捨てか、どっちかだし。
それじゃ私は……スーちゃん、でいいかな」
「……それ私の名前、蘇張、になってしまうよ? その呼び方あるのは、知っているけど」
「ああそっか、チャンは居るもんね、中国……。じゃあどうしよう」
「そのまま、すー、でいいよ。日本人にはそれが一番言いやすいでしょう」
21: H 2012/07/10(火) 21:05:15.48 ID:VzwW0HGi(13/28)調 AAS
 屈託無く、二人は笑いあった。
 敷地端の通用門から入って、大きなグラウンドをぐるっと回り、いつも講義で通っている、高い棟が建ち並ぶ辺りへ進む。
 所々の自販機の明りが、灯台のようだった。
 そのうち歩きつかれた彼女らは、構内の一角にあるベンチに座って夜風に当たることにした。
 学生広場などの大きな通りからは外れたところにある、“憩いの森”の一角だ。
 水銀灯の白い光が、周りの大きな木々の新緑を、真っ黒なキャンバスの上に浮かび上がらせている。
 二人とももまだ、酔いは醒めない。

「スーにとって、日本ってどんな国?」
「すごい国……だと思う。私は。けど日本に来て、失望したこともある。日本なら、あるんじゃないかって
思ってたんだけど、がっかりした」
「がっかりしたって……何に?」
「トイレ超大国の日本なら、私の爆発を受け止めてくれるトイレもあるんじゃないかって、期待してた。
けど、なかった。だから残念。そのためだけに日本に留学しに来た訳では無いけれど」
「ええと……うん、ごめん。でもそこまで日本の科学は進歩してないから……って、あれ? スー?」
 なんと言ったらいいのか分からず、とりあえず薫は謝る。
 が、ふと彼女が横を向くと、スーはベンチに横たわり、いつの間にか寝息を立てていた。
 桃のように染まった頬のまま。
 彼女も、そんなに酒に強い訳ではなかったようだ。

「あらら……まぁ、いっか。しばらく、このまま」
 両手をだらんと投げ出し、まるで子供の寝顔のようだった。
 くすっと笑うと、薫は身体を背もたれに預け、大きく伸びを一回。
 そして夜空を見上げる。
 ゆるい風が、僅かに木々の枝を揺らし、その間に白い星が見えていた。
 夜になると流石にまだ寒いが、今は火照った身体にその冷たい風がちょうど良い。
 たまにはこういうことがあってもいい。
22: H 2012/07/10(火) 21:06:12.16 ID:VzwW0HGi(14/28)調 AAS
(……大丈夫、だよね)
 とは言え、いつまでもこのままは良くない。
 やや酔いも醒め、今更ながら、薫は周囲を警戒する。
 いくら大学の構内でも、うら若い女子大生が夜中に二人。
 しかも酒に酔って、片方はベンチで眠りこけているなど、流石に無用心すぎると言わざるを得ない。
 薬学部の他、いくつかの棟ではまだ一部電気がついていたし、夜中でも、レポートやらで学内に残っている男は
おそらく多い。
 ここはまだ中心部から外れた、目立たない場所だからよかったものの……。いや、余計悪いかもしれない。
 もう少ししたら彼女を起こして、帰らなければ。
(探検は終わり、と)
 薫はぶんぶんと、まだ酔いの残る頭を振ってスーの方を見た。
 しかし、それにしても気持ちよさそうに眠って――

 ぽぽっ…… ぐぎゅうぅっ 
 

「あっ? ……あれ、なんともない」
 唐突に、耳に馴染んだあの音が薫の耳に入ってきた。
 だが、ドキッとして下腹部を触ったものの、特になんの反応もない。
 腸の動きは眠ったように静かなものだった。
 便意の“べ”の字もない。
「……気のせいか」
 そう言えば夕方、浣腸で念入りに搾り出していたではないかと、彼女は思い出した。
 やはりまだ酒が効いているようだ。
 ほっとして、カバンの中の携帯を取り出そうとして――
23: H 2012/07/10(火) 21:07:08.95 ID:VzwW0HGi(15/28)調 AAS
 ぐぎゅるるるるるるるっ……! ぼぼっ… ぷぼっ!!

「ちょっ!?」
 その瞬間の薫の精神は、正にホラー映画の主人公的な状況の下にあった。
 暗闇の中から、音もなくゆっくりと忍び寄る、殺意を持った敵の存在。
 それに、遅れてようやく気づいたシーンのような……。
 今度は、はっきりと。
 ベンチに横たわる彼女のおなかの奥から、“例の音”が聞こえてきたのである。
「ちょっと? ねぇ。起きてよ、スー! ねぇってば!!」
 呼びかけながらぺちぺちと頬を叩いてみたが、反応無し。
 彼女は頬を染めたまま、何の夢を見ているのか、うっすら笑みさえ浮かべて眠りこけている。
(これって確か……スーが言ってたやつじゃないの……?)
 ぞくっと背筋に悪寒が走った。
 それが薫に、あることを思い出させる。
 
 
 ――以下、回想。
 
「ふーん。やっぱり私と似てるね」
「スーも、そうなの?」
「私の場合はね、まわりに聞こえるくらいの音が二回続けて出たら、それ警報ね。もし薫が近くにいたら
逃げたほうがいい。まぁ、私も走って人のいないとこに行くけど」
「……どうなるの?」
「あと一分でダイナマイトくらいのやつが来るから、気をつけなよっていう、体の警告。けっこう正確。自信あるよ」

 以上、回想終わり。
24: H 2012/07/10(火) 21:08:08.22 ID:VzwW0HGi(16/28)調 AAS
「……ちょっと、起きてよっ! お願い! 目を開けて!」
 顔面蒼白になりながら、薫は横たわる彼女の身体を揺さぶった。 
 頬をつねった。 
 無理やり指で瞼を開けてみた。
 全て無駄だった。
 そうこうしている内に、約二十秒が過ぎる。
(あと何秒? こうなったら、もう……)
 爆発のリミットが迫る。
 もしそうなったら遠慮なく逃げろと、スーは言った。
 その通りに見捨てて逃げるか、それとも……。
 心拍が急激に上昇する中、薫は苦悩する。
(……ダメ。こんなところで爆発されたら、また大騒ぎになる……それに、やっとできた本当の友達を
見捨てて逃げるなんて、私はイヤ!)
 方針変更、三秒で決意を固めた。
 この緊急事態に、彼女の脳細胞は正に自分自身の危機であるかのように活性化し、事態打開の術を模索する。

 普通のトイレは駄目だ。
 この前も使った、部室棟の、ユニットタイプのシャワーの個室に放り込んで、外から全力で扉を押えて……。
 ――絶対に間に合わない!

 背負って下宿に戻る。
 それで、例の超強化おむつを付けさせる。
 ――これも遠すぎる! ムリ!

(ああもう! どうしよう!? さっきあのまま、アレ穿いててもらったらよかった……!)
 すやすやと、気持ちよさそうに寝息を立てるスーの傍で薫は狼狽する。
 食事のあと約束通り実物を見せてもらい、装着状態まで実演してもらった。
 おむつというよりドロワーズに近い、ぶかぶかの……穿いたあと更にウエストとふともも廻りを専用の
ベルトで絞って爆風を封じ込める、カーキ色の正に防護衣といった装具だった。
 あれなら確かに爆発を押さえ込めただろうが、完全にあとの祭りである。
 頭を抱えて右往左往する様子はまるで、スーでなく薫の方が、トイレに行きたくてそわそわしているかのようだった。
 何か、何かないか?
 手近にあって、何か爆発力を弱められるもの……。
25: H 2012/07/10(火) 21:08:51.89 ID:VzwW0HGi(17/28)調 AAS
(……あった。水! これも言ってた……本当に危なかったとき、川に飛び込んだって……!) 
 スー自身に聞いた話をもう一つ思い出す。
 そして瞬間的に薫の脳裏に閃いたのは、前に何かの雑誌で見た――とある缶詰についての記事だった。
 俗に世界一臭い缶詰と呼ばれる、シュールストレミングを使った料理の紹介。
 そして、その缶の「開け方」についての注意である。

「間に合えーっ!」
 悲壮としか言えない、追い詰められた顔で叫ぶと、彼女を背中に載せて一直線に。
 向かう先はベンチから少し離れたところの、中央に女神像を戴く丸い噴水である。
 夜を迎えて真っ暗になった今でも、流れる水が外灯の光で煌いているのがベンチから見えた。
 もうこれしかない。
 心を決め、火事場の馬鹿力で彼女を抱え上げると、50m9秒フラットのハイスピードで森の中を駆け抜け、そして
「よいしょっ!!」
 そのまま勢いに乗せて、薫は彼女の身体を、噴水の水の中にざぷっと下ろした。
 大きな水音と、そして波紋が池に広がる。
「と、とりあえず助かった……かな……?」
 コンクリート製の池の縁に、小柄なその背中を預けさせて、風呂に入っているような体勢を取らせる。
 そこまで終わってから、薫はその場にへたり込んだ。
 これでとりあえず、爆発しても噴水の中だけの被害にできる。
 いくら緊急事態とはいえ、友人を池の水の中に放り込むなど普通は躊躇するものだが、この辺の思い切りの良さは
正に“地獄”を知る彼女だからこその判断である。
 このままいけば、どっちにしろ彼女の服はまた全損だ。
 だったら周りの被害が小さいほうがいい。
「はああ……」
 激しく脈打つ胸を押え、薫は地面に両手を付いて、大きく肩を上下させていた。
 言葉通り、肩の荷が下りた気分だった。
 久しぶりの、本当の本気の全力疾走。それも数十キロの大荷物を抱えてである。
 今日はヒールを履いていなくて助かった。
26: H 2012/07/10(火) 21:09:28.74 ID:VzwW0HGi(18/28)調 AAS
「あした筋肉痛かな……。それにしても、これだけやってまだ寝てるなんて、どういう神経してるのよ」
 顔を上げると、薫は中腰で両膝に手をあて、水しぶきの伝うスーの横顔を見つめた。
 全くおおらかというか、なんと言うか……。
 いくら酒が入ってるにしても、ここまでして目を覚まさないとはあまりに無防備すぎる。
 流石は大陸出身の人間と言いたい所だが、いくらなんでも限度と言うものがあるだろうに。
「ふぅ……」
 相変わらずの荒い息のまま、薫は一旦背筋を伸ばす。
 そして波に揺られる、ずぶぬれになった彼女の肩をそっと触った。
 そのときだった。

 ぽっ… ぽここっ ぼぼぼっ……!
  

 ざぷざぷと、まだ細かく揺れる水面に、大きな気泡が連続して浮き上がってくるのが見えた。
 彼女の、股間の辺りから……。
「――!!」
 無言でぱっと手を離し、回れ右。
 そして文字通り脱兎の如く、渾身の力でレンガ敷きの地面を蹴って――薫は、今度は全力で噴水から逃げ出した。
 ちょっとでも、ほんの僅かでも、より遠くへ向かって。
(お、思い出した……!)
 ほっとした表情からまた一転、顔を真っ青にして、薫は必死に噴水から遠ざかる。
 頭が理解して動き始めるよりも、実際は鍛え上げられた防衛本能が身体を引っ張るほうが早かった。
 ……噴水くらいの、狭い浅いところに漬けてもダメなのだ。
 かのシュールストレミングは、水を張った洗面器に漬けて開封しても、時にその水を押しのけて、
中身の液体を数メートル先にまで吹き飛ばすことがあるという……
27: H 2012/07/10(火) 21:10:10.70 ID:VzwW0HGi(19/28)調 AAS
 どっ……ぶばっ!!  ばっしゃあああああああ!!!

「ひいぃいいいっ!!」
 スタートを切った直後、大きな爆発音が二度続けて背後から耳に飛び込んできた。
 恐怖に駆られて、薫は必死に腕を振りながら叫び声を上げる。
 だが、もちろん振り向かない。
 振り向いたら死ぬ。(お気に入りの服が)
 そして後ろで何が起こっているのか、わざわざ見る必要もなかった。
 一度目の爆発で、水瓶を抱えた噴水中央の女神像をはるかに超える水柱が立ち上り、続けて起こった
二度目の爆発により、それが360度全ての方向に向かって飛び散っていく。
 もちろん、彼女が噴出させた排泄物を大量に巻き込んだ、茶色い水しぶきが……。
 あたり一面を、時ならぬ土砂降りの雨が覆っていく。

「た……たすかった……?」
 逃げた先の、広場の隅っこの方で彼女は佇んでいた。
 雨が上がったあとの噴水広場を、半ば呆然とした表情で見つめる。
 茶色っぽい水が降り注ぎ、地面の色が変わってしまったその光景を眼前に、大きなため息をついた。
 正に鬼気迫る表情で陸上部顔負けの加速を見せ、薫はなんとかスコールの直接被害半径から逃げおおせることに
成功したのだった。
「でもなんで私がこんな苦労を……」
 ぜいぜいと肩で息をしながら、薫はただその場に立ち尽くす。
 正直、あと二秒スタートが遅れていたら完全にアウトだった。
 必死で逃げた何秒間か、彼女と出会ってからのこの三日間が、走馬灯のように脳裏を駆け抜けた。
 そのまま少し様子を見てから、慎重に――
 所々に転がる固形物を避けながら、彼女はスーの所に向かったのだった。
28: H 2012/07/10(火) 21:10:59.38 ID:VzwW0HGi(20/28)調 AAS
「……大丈夫?」
「私……またやっちゃった?」
「やっちゃったね……。どうしよう、これ」

 流石に彼女は起きていた。
 池の底に座ったまま、腕を足の両脇に付いて――照れ笑いのようなそうでないような、微妙な表情だ。
 きょろきょろと、廻りの状況を確かめている。
 当然ながら全身、今は頭までずぶぬれ。
 水を吸ってとんがった髪の先から、水滴がぽたぽたと落ちていた。
 それも、大量の汚物混じりの……激しい異臭を放つ茶色い水である。
 二人が平然としていられるのは、彼女たちが風間薫と蘇仙華だからという理由でしかない。
(ホントにもう、なんだろ。悪い冗談みたいな……)
 そのスーと一緒になって、薫もあたりをもう一度見回した。
 改めて、本当にすごい力だと思った。
 自分のアレも、大概のものだと思っていたが……正に常識外れという他はない。
 今の爆発で、噴水の水は、池の深さの半分くらいまでが吹き飛んで無くなっていた。
 肩までつかっていたはずのスーの身体は、今は腰のあたりまで、水から上に出ている。
「あいやー……。それにしても私、こんなに酒癖悪かったのか……。ぜんぜん知らなかったよ」
「え?」
「まさか寝たまま噴水に飛び込むなんて。風呂と勘違いしたのかな? 薫にはかからなかった? 大丈夫?」
「あ、えーと……。うん、大丈夫。私は」

 ……そういうことに、しておこうか。
 水に浸かったまま申し訳なさそうな笑顔を向けるスーに、薫もまた色んな感情の混じった笑みを返した。
 必死の努力の結果が、この有様だ。
 あのままベンチで爆発させるよりは、いくらかマシだったといえるだろうが……それでも噴水の中に
浮いているのはともかく、広場に飛び散ったものはどうしようもない。
 優しげな微笑を浮かべる噴水の女神像まで、汚物まみれになってしまった。
 全く酷い状況である。
 もちろん、臭いの方も。
 目をつぶると広大な有機農法の農園の風景が浮かんできそうな……
いや、バキュームカーが近くに停まっているような感じ、というのがもっと直接的かもしれない。
 やはり明日はまた大騒ぎになるだろう。
29: H 2012/07/10(火) 21:12:36.02 ID:VzwW0HGi(21/28)調 AAS
 薫は覚悟を決めた。
 そしてとりあえず、丸い池の縁をぐるっと回り、排水口のところまで行く。
「……抜くよー」
 チェーンを掴むと、力任せに栓を引っこ抜いた。
 スーのぶちまけた汚物混じりの、薄茶色に染まった水が低い音を立ててぐんぐんと穴に吸い込まれていく。
 噴水の水は出続けているし、あとは勝手に汚物を洗い流してくれるだろう。
 ……そのスー本人の方はと言うと、立ち上がって女神像の前に行き、その抱えた水瓶からの流れをシャワー代わりに、
服ごと身体と頭を洗っていた。
 水銀灯の青白い光が照らす中、跳ねる透明の水しぶきがきらきらと輝く。
 なんと言うか、その辺のたくましさは流石だと薫は思った。
 だが爆発でズボンと下着が弾け飛び、白いおしりだけが丸見えになったうしろ姿は、はっきり言って間抜けである。
 ほとんど古典の、ドリフのコントにでも出てきそうな格好だった。
「あーあ、また服をダメにしちゃった。また買わないといけないなー。大変だ」
 ばしゃばしゃと髪を洗いながら、ぼそっと彼女は口にした。
 酒のせいか、それとも同じ境遇の仲間が出来たことによる心境の変化だろうか。
 たった数日の内に全身うんこまみれ二回という惨事を経験したにもかかわらず、前回の時に比べると、彼女は
軽い感じで受け流しているようである。
「服か……。あ、じゃあ私と一緒に、買い物に行こうよ。一緒に服、探そう。ね!」
 そう彼女に提案した、そのときだった。

 ぐ、ぐるるるるるっ!

「んっ…!? ん、おうぅ……!」
 へなへなと、そのまま薫は池のほとりで、苦しげに身をかがめる。
 思わず、情けない声が漏れてしまった。
 離れたスーの耳にも届くほどの大きな音が、今度は自分のおなかから響いてきたのだ。
 もちろん同時に、雪崩のような便意も一緒に……。
 刺すような痛みと、そして一瞬の内に体重が1.5倍くらいになったかのような、ずっしりと重い感覚が
彼女の細い下半身にのしかかってきていた。
 先日の、スーを運び込んだトイレでの急降下に匹敵するくらいの大きな波である。
30: H 2012/07/10(火) 21:14:24.57 ID:VzwW0HGi(22/28)調 AAS
「薫も、したくなった?」
「……うん。おいてけぼりにするみたいで悪いけど、ちょっとあっちのトイレに……」
「ここでしちゃえばいいと思うよ?」
 池から上がったスーは、水滴のしたたる手を、ある場所に向ける。
 さっきまで彼女が入っていた池の、排水口。
 大きな渦を巻いている、いま正にスー自身の汚物を吸い込んでいる穴……そこを笑顔で、彼女は指差したのだ。
「えっ? ちょっ……ムリ! こんな、外で……」

 ぐっ! ぎゅるるる……!

「ん、んうぅぅ! くう……!」
 つぶらな瞳に、涙が滲む。
 こんな場所で排便など出来っこないと首を振った瞬間、まるで
“ここでいい! 今すぐうんちしたい!!”
と言わんばかりに、また大きな音が下腹部から響いた。
 だが夜とは言え、何も周りに遮るもののない空の下、それも自分が通うキャンパスの中である。
 それに入学の時、ここだけは絶対に穢すまいと誓ったばかりだ。
 腸の中が煮えたぎるような痛みを感じながら、彼女は前かがみでおなかを押さえて、必死に耐えていた。
(こ……腰が砕けちゃう…… んんん……! でもなんで……!?)
 額に脂汗を浮かべ、ダウンだけはするまいと必死に耐えるボクサーのごとく、ゆらゆらと……。
 その痛みはぐいぐいと、おなかの奥から彼女の肛門と脳を圧迫する。
 夕方に浣腸で空っぽにしておいたはずの腸内は、いつの間にかまた、大量の大便でいっぱいになっていた。
 いくらさっき、満腹まで食べたからと言っても早すぎる。
 まさか張り合っているわけではないだろうが……まるで、今のスーの大量脱糞に呼応するかのようだった。
「薫、苦しそう……大丈夫?」
「あんまり……大丈夫じゃないかな……」
「そんなに、ここでうんちするのイヤ? 夜だし、私のほかは誰もいないよ? 見られたくないなら、私が見張りしててあげるし……
飛び散ってもほら、私のと混じってわかんないですよ?」
 ダメ押しで、スーの一言。
 喋りながら彼女は上着を脱いで腰に巻き、自分のおしりを隠す。
 本人にそのつもりは全く無かっただろうが、こんな所で漏らすまいと必死でおしりを締め付ける薫には、
正に悪魔の誘惑だった。
31: H 2012/07/10(火) 21:15:57.17 ID:VzwW0HGi(23/28)調 AAS
「……ええい! もういいや!」
 抗えない大量便の圧力と、彼女の言葉に流されるがまま。
 投げやりに叫んで、薫は白の下着を脱いで両脚から抜き、池の縁のコンクリートに登る。
 そして覚悟を決めた顔でミニスカートを捲り上げ、艶かしい下半身を全て夜風に晒した。
 長い後ろ髪も前のほうに寄せる。
 最後に、渦を作る排水口の直上に狙いを定めて――彼女はおしりを突き出した。
 この吸い込まれていく水がどこに行くのか知らないが、もうそんなことどうでもいい。
 目の前に、今すぐ使える超巨大水洗便所がある。
 これも緊急避難だ。
 こんな弾けた気分になったのは生まれて初めてだった。
「んう……あぁっ… ん、んあああっ……!!」

 にゅ……ぶちゅっ! もりゅっ……ぶ… ぶ、ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅっ!! 

 瞬間、前かがみだった背筋がのけぞった。
 そしてやはり声を我慢できない。
 便意に負けて肛門の力を緩めた瞬間、正に堰を切ったように、大口径の柔らかい便塊が音を立てて
穴の奥から飛び出していった。
 ぶるぶると、便意の苦痛に震えていた下半身が、今度は脱糞の快楽で脱力しそうになってしまう。
 これ以上流されないよう、快楽に負けて倒れてしまわないように……彼女は膝につめを立てて、
脳を責めたてる大量脱糞の刺激に耐えていた。
(ああもう……私の憧れの大学生活……。こんなはずじゃなかったのに……!)
 高まった便意の圧力が一気に肛門から抜ける、言葉では表現できない爽快感が、逆に彼女の羞恥心を煽る。
 酒のせいか、感情の起伏が激しい。
 どうでもいいという気持ちの上に、恥ずかしさと情けなさが覆いかぶさり、アルコール以上に彼女の顔を赤く染めていく。
 ……受験の頃からずっと心に思い描いていた、理想のキャンパスライフ。
 それが彼女の胸の中で、がらがらと音を立てて崩れていく。
 この特異体質を克服して、普通の女の子として……。
 そして、大学だけは汚すまいと、固く心に誓っていたはずなのに。
 これでは中学や高校の頃と何も変わらない。
 いや、変わらないどころか、大きな気苦労のタネが一つ増えたのでは……?
32: H 2012/07/10(火) 21:16:34.87 ID:VzwW0HGi(24/28)調 AAS
 
 どぼっ… ごぼごぼっ……

 だがもちろん、そんな彼女の感傷など、体の方は全くお構いなしである。
 鈍い音を立てながら次々に直腸から排泄される大便の長い棒は、肛門の開放から二分が経過しても、やはりいつも通りに
途切れる気配すらなかった。
 そして彼女の肛門から生まれて数秒も経たない内に、その便の塊はまた暗闇の底へと追いやられていく。
 すさまじい短期間で一気に消化・吸収されたにもかかわらず、便の量も質も、普段と変わりがない。
 もしこの水と渦がなかったら、そろそろ標高50cm級の山がおしりの下に出来ている頃だろう。
 普段は24時間体勢で強固に門を守る括約筋も、今は休暇中とばかり、だらしなく脱力しきっていた。
「やっぱり凄いなー、こんなの見たことないよ。国でも」
「国でも…って、他の人の、見たことがあるの?」
「あるよー。普通だよ。だって日本みたいに便器の周りの壁がないもん。公衆トイレは、みんな丸見え。
友達のは見たこと無いけどね」
「じゃあ、あの話って本当だったんだ……ん、んぅっ…… て言うか、スー! 見張りしてよちゃんと!」
 ……思わず最初、普通に受け答えしてしまった。
 離れて見張りをしていたはずのスーが、いつの間にか薫のすぐ横に来ていた。
 しかも池の縁にしゃがみこんで、その、壊れたソフトクリーム製造機のようにうねうねと大便を産み続ける
おしりに熱い視線を送りながら。
 そして慌てて抗議する薫に、彼女は顔を上げると、
「……ごめん。あのね、実は私もまたうんちしたくなっちゃって」
「え、ええ!?」
 思わず薫は叫んだ。
 衝撃のあまり、数秒間排便が止まるほどだった。
「ちょ、ちょっと!」
 そして、その薫の隣、コンクリートの池の縁にひょいっと彼女も上がる。
 逃げられない。
 うんちが引っ込んだのはほんの僅かの間だけで、すぐさま極太の便がまた間断なく肛門から溢れてくる。
 自分の意思では脱糞を止められない。
 今逃げたら、走りながら地面の上に排泄し続けることになる……。
33: H 2012/07/10(火) 21:21:45.77 ID:VzwW0HGi(25/28)調 AAS
「心配しないで。大爆発を起こした時はね、しばらく弱くなるから。近くにいても平気」
「そ、そうなの……?」
 青い顔の薫に、スーはにこっと笑った。
 それからぴったりと薫の身体に寄り添うようにして、同じように池の渦の上に和式の排便体勢を取る。
 おしりが完全に破れているので、ジーンズも下着も穿いたままだ。
 そして、見守る薫のすぐ横で、ぐっと歯を食いしばるような顔を見せると――

 ふしゅー……   ぶぽっ! どぼぼぼっ! どっ……ばしゃしゃしゃしゃっ!! 
 

「んんんっ……! んくっ……!」
 彼女もまた、かがんだ膝をしっかりと掴み、肛門に感じる脱糞の刺激に耐える。
 下半身の力を抜いた直後、やはり最初に、腸内に溜まったガスの圧力が抜けた。
 まるでバルブを緩めたボンベか何かのようだ。
「ぅあ、あああぁ……!」
 華奢な身体が排便の衝撃に震え、胸を締め付けられるような声が漏れる。
 腸内のガスで加速された軟便が勢いよく飛び出して、彼女自身の汚物でにごった水面に叩きつけられていく。
 小さな、彼女のかわいいおしりに全く似合わない、活火山のように大きく口を開けた肛門から次々に……。
(なんだろ……。水道で、断水が終わった直後に栓をひねったみたいな……?)
 自分も排便し続けながら、薫はぐっと身体をひねって後ろの水面を見た。
 まるでバイクか何かのエンジンのように低いうなりを上げながら排便する、スーのおしり。
 そして自分と同じ、異常な排便の苦悶と快感が綯い交ぜになった刺激に耐える、その横顔を……。
 腸内のガスと柔らかい便とが交じり合って、“出てくる”というより“ほとばしる”と言ったほうが多分正しい。
 薫の思った通りの、空気が噛んで咳をする水道の蛇口のような排便だった。
「んっ……! ね? 大丈夫、でしょう?」
「う、うん。 すごいね……」
 あの爆発に比べたら確かにまだ可愛いレベルの……とりあえず、隣にいても巻き添えは受けないで済みそうである。
 何と言うか、スーの直腸内で“ミニ爆発”が連続して起こっているような感じだ。
 細切れになった大量の便の粒が一方向、円錐状に拡散して噴射されているその光景は、場所が違えば、
ショットガンの連射のようだと表する者もいるかもしれない。
34: H 2012/07/10(火) 21:22:37.52 ID:VzwW0HGi(26/28)調 AAS
「……で、なんでそんな私にくっつくの?」
「カオルと一緒にしたい。国では、うんちする時はいつも私一人だったから……。友達が、他の女の子と一緒に
トイレ行くの見てて、ずっと羨ましかった。日本では、そういうことしないの?」
「しない……んじゃないかなぁ? ていうか、中国の女の子って友達でそんなことするんだ……凄いね」
 ぴったり並んで排便を続けつつ、薫は首をかしげる。
 日本の女の子は普通しないと思うが、自分も普通でない以上、確信は持てなかった。
 男の子が並んで立ちションというのは、マンガなんかでよくあるが、同じような感覚なのだろうか?
 ちょっと理解できないが……彼女がそうしたいというなら、もう何も言うまい。
「これから、よろしくね。薫」
「……うん。こちらこそ。……でいいのかな」
 スーが手を伸ばしてきた。
 薫は、その小さな手をそっと握りかえす。

 ――まぁ、いっか。秘密を共有できる人が欲しいって思ってたのは、同じなんだから……。

 大量脱糞の快楽で悩ましげに漏れる熱い吐息も重ね合い、恍惚の表情で、二人はこの異常な興奮を分かち合う。
 動物のしっぽのように、長く太い大便が延々と切れることなく。
 まるでショットガンの弾のような、細切れになった軟便が勢いよく、断続的に。
 だが、出てくる形とその容姿は違えど――本当に人間のものかと疑いたくなるほど大きく拡がった肛門は正に瓜二つだ。
 その仲良く並んだ二つのおしりから、いつ果てるとも無く……。
 歓びも苦痛も全てを外に出し切るまで、白く輝く下弦の月が彼女らを見守っていた。
 
35: H 2012/07/10(火) 21:24:15.48 ID:VzwW0HGi(27/28)調 AAS
「……だいぶ、遅くなっちゃったね。帰りはどうする? うちに泊まっていく?」
「んー……そうねぇ…。そういえば明日は休みだっけ。なら、いいかな」

 濡れ鼠のスーの方の足跡だけが、ずっと後ろから消えずに続いていた。
 水銀灯も半分消えてしまった夜の闇の中、彼女らは元来た道を、寮に向かって歩く。
 もうすっかり二人とも、酔いは醒めていた。
「あ、でも、薫を泊めるなら準備しないといけない。朝ごはんの材料もないし……」
「……なんか、ごめん。調子に乗っちゃって。散歩に行こうなんて言い出したのも私だし」
 二人とも、後ろは振り返らない。
 足跡は、朝までには消えてくれるだろう。
 明日以降の不安は……とりあえずもう考えない。
 現場に証拠を残さないようにチェックした後は、天気予報の、明け方の降水確率に掛けるしかなかった。

「じゃあ、私がコンビニ行ってくるよ。スーは先にお風呂入ってて。朝のパンと、歯ブラシとか、それから…………あっ」
 道の真ん中、なにやら深刻な顔で薫は立ち止まる。
 かと思うと急に、彼女は顔を赤くした。
「どうしたの?」

「……バケツって売ってたっけ? コンビニ」

 彼女たちの、非日常的な日常は続いていく。
 薫とスー、出会った二人の大学生活には、それぞれ少しの変化が訪れた。
 だが例え仲間が増え、生活に潤いが生まれたとも……やはり毎日やることは、何も変わらないのだった。
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(1): H 2012/07/10(火) 21:25:10.09 ID:VzwW0HGi(28/28)調 AAS
 以上です。
 スーをメインに持って来ないといけないのに、完成したらやっぱり薫ちゃんの話になってました。
 期待に応えられたか不安です。
 ……噴水はまだ中華爆発リストになかったですよね? 

 [の話は全体で、最初思っていた量の3倍くらいに長くなってしまいました。
 文章を短く濃くまとめる能力が欲しいです。
 薫との対比で言うなら、新キャラは大量小便少女でも面白かったかも。

 それと蛇足ですが、実はGガンのノリで他に何ヶ国か話の候補を考えていて、今回はとりあえず
まとめやすそうな中国一本に絞って書きました。
 具体的に考えてた話は下の二つ。

候補1:色んな意味で圧倒的物量を誇る、アグレッシブ米英ブロンド娘コンビが襲来する「マス・プロダクツな彼女」

候補2:短い夏の時期にしかまともに排便できない、永久凍土の大地のごとき超便秘ロシア系「ツンドラな彼女」

 ……さて。
 出したのを毎日燃料の原料として売って家計を支える健気なインド少女、堅物が出すモノにも現れてしまったドイツ娘に
無駄に優雅なフランス少女とか、インターナショナル編を考えるのも楽しいんですけど、もしこれ全部絡めて
本当に書いたとしたら委員長の話以上に時間掛かりますね……。
 一日五回、ある決まった時刻に必ず催してしまう中東系大量少女……は流石にヤバすぎますか。

 ではそろそろ、こっちは一区切りついたので園芸店の方に戻ります。
 次の投下は大分先になると思います。
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