[過去ログ] パワポケでエロパロ17 (792レス)
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577(1): ◆Freege5emM 2011/01/05(水) 03:08:19 ID:5BKomTQR(1/23)調 AAS
年末にこの微妙な空き容量を埋めてしまおうと書いていたが、結局半分くらいの容量にしかならず今年を迎えてしまった。
あけましておめでとうです。
2本ほど投げ込みに来ました。どちらも4裏です。
>>578-589
エンディング後、ちょっとした都合でテンプル神殿で同居することになったアキミとハヅキ。
出先でハヅキがむらむらきてアキミを襲ってしまって大変なことになる話です。
都合の悪いことは全てバケモノ神父=ぶきみ君のせい。百合、陵辱注意。28kb弱。
>>590-600
直前の話の、ハヅキがむらむらきてしまった原因についての話です。
バケモノ神父が絶好調でハヅキ(とオマケ)をいじめてます。拷問・陵辱・失禁などリョナ成分ばかりです。
それらの描写が苦手な人は読まないことを推奨します。32kbぐらい。
18スレの由紀ちゃんのおはなしを読んでくださった方、感想を下さった方、ありがとうございます。
嬉しかったです。特に明日香へ頂いたコメントは正直リアルで快哉を叫びました。
578: 2011/01/05(水) 03:08:52 ID:5BKomTQR(2/23)調 AAS
『テンプル神殿異聞その1』
「神殿んんっ!? あたしがそんなところに行ってもいいのかな」
第51回キングダム対エンパイアの野球の試合は、無事終了した。
試合は、新戦力の野球人形『コナミ』の活躍もあってキングダムの辛勝。
近年に勝る白熱した戦いは、試合直前の騒動とあわせて、のちのちまで語り草となるものであった。
「そう。アキミさんは、テンプル神殿に身を置くつもりはないかしら?」
アキミは、『コナミ』誕生に貢献した人間として、特等席(こちらの世界で言うバックネット裏)での観戦を許されていた。
試合の興奮冷めやらぬその席で、同じく『コナミ』誕生に貢献したハヅキから、アキミは声をかけられた。
「なに、あたしの前歴を知ってのこと? ミユキさんに懺悔でもしろって言うの」
「別にシスターになれとか、そういうことじゃないわ。そもそもわたしだって正式なシスターじゃないもの。
テンプル神殿は、例のバケモノ神父がむちゃくちゃにしてしまったから、立て直さないといけないんだけど、
どうにも人手が足りなくて。わたしと一緒に、働いてみる気は無い? もちろん報酬だって出すわ」
「うーん、働いてみる? って言われても……あたしに神殿での仕事なんかあるかなぁ。
神の教えは説けない。力仕事なら男の方が使えるだろうし。まさか暗殺だの錠前いじりだのの腕前が役に立つの」
アキミは、スラム街でギルドに所属しないモグリのスリを働いているところを、コナミに捕えられた。
とっさにアキミは、舌先三寸で冒険者コナミに自分を雇わせた。そのため、なんとか官憲やギルドに突き出されずに済んだ。
その時アキミはコナミのことを“なんというお人好し”と思い、半ば呆れていたのだが、
実際はコナミたちとドラゴンの山を踏破したり、砂漠のダリ遺跡を捜索したり、魔王城に招待されたり、古代超兵器ゴーレムと戦ったり、
前金1000Gを足しても割に合わないぐらいこき使われたので、その呆れた感情はすっかり失せていた。
特にダリ遺跡での『キレ○』や『シンカー+2』といった高性能パーツは、アキミがいなければそう何個も見つけられなかった。
「そんなことはしなくていいわ。アキミなら単なる用心棒でもじゅうぶん心強いし、
退屈になったら、コナミさんとの旅の時みたいに、宝探しにでも行って一山あてるのもいいじゃないかしら」
「そんなに融通が効くんだ」
寝場所には困らず、おそらく食事にも困らず、退屈になったら遠出して宝探しにでも行けばいい。
アキミからすれば、かなりお気楽な身分である。少なくとも、シーフやアサシンよりは暮らしやすいだろう。
しかし、アキミは浮かない顔をしていた。
「面白い話なんだけどさ〜」
「なにか、まずいことでもあった?」
「まずね。トレジャーハントは流石にひとりではきついわ。サポートがいないと安定しないし。
もしひとりでそんなに稼げる仕事だったんなら、あたしはスリなんかしてないわよ」
「うーん、ちょっと考えが甘かったかな」
「まぁハヅキが手助けしてくれるっていうなら、一発当てられるかもしれないけど、もう一個気がかりが……」
「……気がかりって?」
アキミは親指で空を弾く仕草をして見せた。
「……神殿住まいじゃ、賭場には行けないよね」
「あ、そういえばアキミはよく行ってたわね」
アキミは博打をこよなく愛する性分であった。それも、イカサマの手口にまで精通する、筋金入りの博打好きである。
579: 2011/01/05(水) 03:09:26 ID:5BKomTQR(3/23)調 AAS
「まぁ、賭場くらいならミユキさんに言ってなんとかして……もしもだめだったら、出稼ぎの時にこっそりと行けば」
「え、いいの?」
「だってわたしは、これからも正式なシスターになるつもりないし。聖職者なんかもうこりごり。
博打ぐらいでうるさく言うつもりはないわ。あ、でもわたしがこんなこと言ってたのは内緒にしてね?」
「それは当然よ」
アキミとハヅキは、ともに砂漠の亡霊やらエルフやらロック鳥やら高位悪魔やら殺戮兵器やらと渡り合った仲である。
気心の知れた仲間と、たいした不自由も無く暮らしていける。当たり前のようで、なかなか手に入らない生活。
アキミにとって、思い浮かべるにはどうにも眩し過ぎる光景だった。
「ところで、ハヅキはその話、あたし以外にはしてないみたいだけど」
それを一度でも不自由無く手にしていた人間なら、即座に頷いていただろう。
勇者コナミ一行の中にも、この提案に深く考えず首を縦に振りそうな人間がひとりいる……役に立つかどうかはともかく。
「そうね。ミユキさん以外にこの話をしたのは、アキミがはじめてよ」
「それは……正直ちょっと嬉しいけど……なんで? さっき言った通り、あたしは神殿なんか似合わない女よ」
「来て欲しい人間の中で、あなたが一番うんと言う見込みがありそうだったから」
「……? どうしてそう思ったの」
「ここで言っていいものかしら?」
ハヅキはあたりを憚る素振りを見せた。キングダムとエンパイアの試合を観戦しにきた、両国の重鎮たち。
それらに混じって、勇者コナミとその一行――アキミとハヅキを含む――も、野球人形のプレイに歓声を上げたり、
試合に伴うお祭り騒ぎを楽しみにしていたり、騎士と格闘家が剣と拳について語り合っていたり、思い思いに過ごしていた。
アキミとしては、特に負い目は無い。知られたら困る過去もあるが、コナミとの出会い方に比べればどれもマシである。
アキミは軽く手振りした。声を落とせば構わない、と。一行はその程度でも通じる関係だった。
「……だって、あなたは身寄りが無いし、これからの行き先も特に決まってないじゃない?」
「ずばり言うわね。普通はもう少し躊躇うところよ」
「あらら、触れちゃいけなかったかしら。ごめんなさい」
「いーのいーの。身寄りが無いのはしょうがないし、行き先がないのはあたしのせい。
ホント、どうしてこんなに可愛くて仕事もできるアキミちゃんに相応しい場所がないのかなー」
アキミはからからと、女の子らしくない笑い方をした。
コナミに雇われる前から、年齢に似つかわしくない修羅場を踏んできた彼女は、先行きが安定しないことにも危機感が無い。
生きていければ儲けもの。その上で面白おかしくやっていければ万々歳。
加えて、今度の旅はアキミにとって楽しいものだった。スリルと達成感に満ちた冒険の余韻が、先のことを考えさせなかった。
「ところで、そういうハヅキはどうしてテンプル神殿に行くの」
「それは……ミユキさんに口説かれたからよ。ほらわたしって、身寄りも無いし、これからの行き先も決まってないでしょ?
もともと孤児だから親の顔は知らないし、世話になってたチャーチ教会からは売り飛ばされたし。
そんなときに、ミユキさんからお誘いを貰ったの。だからわたしは、ミユキさんにお世話になることにしたんだ」
「なるほどね。で、それと似たような身の上のあたしなら、話が通ると思ったんだ」
率直に考えて、悪い話ではなかった。
ミユキやハヅキ相手であれば、短くとも濃い付き合いがあるだけに、アキミも気楽に構えられた。
「……いいじゃないの。オーケー、その話乗ったわ。改めてよろしく、ハヅキ」
「こちらこそよろしく、アキミ。きっとミユキさんも喜ぶわ」
アキミとハヅキは手を握り合った。
誰かから自分が必要とされる嬉しさ、もう天涯孤独には戻れないだろうという幾許かのほろ苦さ、
球場に残った熱気の残り香など、色々胸に去来するものたちを噛み締めながら、アキミはハヅキの体温を感じていた。
580: 2011/01/05(水) 03:10:14 ID:5BKomTQR(4/23)調 AAS
テンプル神殿は、アキミにとってそれなりに居心地の良いところであった。
スラム街とは比べ物にならないくらい良い住環境。旅の途中のように、モンスターとの遭遇を警戒し続ける必要も無い。
物価も落ち着いてきて、働けばとりあえず食べられる。身体がなまってしまうんじゃないかと心配になるほどだった。
それにしても、近場のリーベックには悪魔ダンジョンがあり、少し北にはルーフェンの森まである。
いずれも腕試しや金稼ぎに十分な場所だった。ルーフェンの森のエルフとは顔見知りでさえある。エルフたちは良い顔をしないが。
そんな生活が数ヶ月ほど続いたある日。
「勇者トイの宝ぁ? あんたそれ本気で言ってるの」
「そうだよ。俺は勇者トイの子孫なんだ……直系じゃないし、今はすっかり落ちぶれてしまったけどな」
事の発端は、タナカというスラム街から流れてきた男の話だった。
何でもタナカは、200年ほど前に活躍した勇者トイの財宝の在り処を、偶然知ったらしい。
しかしその在り処はドラゴンの山であった。勇者の子孫だが勇者そのものではないタナカには、回収など無理な話である。
そこでタナカは、財宝を山分けにする条件で、アキミに財宝の回収を依頼してきた。
「確かにドラゴンの山には、金目のものがあったけどね……ドラゴンが勝手に集めたものにしか見えなかったよ」
実際アキミは、勇者コナミとともにドラゴンの炎を掻い潜り、ドラゴンの巣にあった体の珠を回収してきた経験がある。
回収の際、行きがけの駄賃とばかりに金目のものを巣から奪ってきたりもした。
ドラゴンは、金目のものを好んで巣に溜め込む習性があるのだろうか。まるでカラスである。
「なんとか頼まれてくれないか? 俺が壷を割って地図を見つけてしまった以上、
俺が宝を回収するか、地図を隠し直して一族に伝えなければならないんだが、勇者トイ一族といっても今はこのザマだ。
俺の次の代があるかどうかも分からない。そうなったら、ご先祖に顔向けできないだろう」
アキミは心の中で眉に唾をつけた。以前、コナミが大盗賊ガイドウの宝の件で、おぞましい目にあったのを思い出したからだ。
宝こそ手に入れたが、金と引き換えに出来ない精神的な何かを奪われていた。自業自得だと思ったアキミは助けなかったが。
「まぁ……条件次第では考えてもいいわ。宝が見つかったら、8:2でどう? 勿論2はあんたよ」
「おい、元はといえば俺の家の宝なんだぞ。せめて3はよこせよ」
「だめ。あんた、前金無しでしょ。勇者コナミだってあたしを雇うときは前金を払ったわ。
それにあたしが宝を持ち帰りそこなっても、あんたは何の損もしないけど、あたしは死ぬかもしれないんだよ?
勇者トイが、本気で宝を隠そうと思ってたら、そう簡単に見つかるところに隠したりしないだろうし」
結局タナカは、アキミの口説に折れて宝の地図を見せた。
もったいぶって出された宝の地図は、それらしい外見をしていた。それはますます、アキミにガイドウの宝を連想させた。
アキミはトイの財宝にまったく期待していなかったが、タナカの話に乗ることにした。
そろそろ賭場が恋しくなってきた。ちなみに、リーベックにアキミが楽しめるほどの賭場はない。
「……というわけで、あたし出かけるから」
「ひとりでドラゴンの山に行くのかしら。ちょっと心配ね」
「大丈夫よ? わたしだってついていくから」
「……それでもふたりよ。しかも、あるかどうかも分からない宝を探すなんて」
ミユキは、しばらくアキミの話に難色を示していた。
ドラゴンの山に埋まっているらしい、200年前の伝説の宝を掘り出しに行く、それも女の子ふたりで。
ダリ遺跡でたくさんのパーツを見つけた実績が無かったら、まず冗談と笑われるところである。
人手不足のテンプル神殿で、自分のみならずハヅキまで引き抜いて遊びに――名目は出稼ぎだが――行くということに対して、
アキミも気が咎めるところはあった。トイの宝もついでに探すつもりではあったが。
だからアキミは、ミユキが彼女らの出発を渋る理由を、神殿の人手が足りなくなるからだと考えていた。
ミユキは何か言いたげな様子であったが、ハヅキが続けて説得すると、気乗りしなさそうに頷いた。
「はぁ、これが信用の差ってやつかしらねぇ」
「そう気を落とさないで。むしろここであっさり頷かれたら『あなたはいなくても構わないです』と言われたようなものじゃない?」
「まぁね……それにしても、ミユキさんがあんな煮え切らない顔をするなんて、珍しいわね」
581: 2011/01/05(水) 03:10:49 ID:5BKomTQR(5/23)調 AAS
アキミから見て、ミユキはシスターという職業が似合わないぐらい果敢な性格だった。
彼女はデスアキホの魔手から唯一脱走し、非戦闘員としてではあったが、コナミの旅に最後まで同行した。しかも自分の意思で。
「いいじゃない、せっかくうんと言ってくれたんだから。……無理を言ったから、少しは稼いでこないとね」
「それはあたしにどーんと任せなさい!」
アキミとハヅキは、意気揚々と神殿を出発した。
ハヅキにとっては、野球人形の一件以来の神殿からの外出だった。
「どうしたのハヅキ、顔色が悪いわよ。明日もこの街で休んでいこうか」
「心配しないで……わたしのことはだいじょうぶだから、神殿に帰りましょう?」
アキミたちの最初の遠征は不発に終わった。
トイの宝の地図に従ってドラゴンの山を探索して見たものの、地図の指し示す場所はゴブリンの棲み処と化していた。
ゴブリンどもの眼を盗んで調べてみれば、出てきたものは少々の金目のもの。
それらは全部集めて売り払っても、アキミが久しぶりの博打で稼いだ金に及ばなかった。
「もしかして、ドラゴンの山で拾った金目のものが呪われてたのかしら」
「……っ! の、呪いっていうのは……?」
「剥き出しの金目のものには、たまにそういうブツがあるのよ。呪いだとしたら、確かに早く神殿に行くべきね。
……ごめんね。あたしのわがままに突き合わせたばかりに、ハヅキにもミユキさんにも迷惑をかけて」
「ううん、わたしのほうこそ、サポートするなんて調子の良い事言って、足手纏いになってごめんなさい」
さらに悪いことに、ハヅキの体調が日に日に悪くなっていた。
そのため、アキミもあちこち寄り道するのを自重し、神殿への帰り道を真っ直ぐに辿っている。
ちょうどキャッスル城で一晩休んでいくことになったため、王宮の医師にハヅキを診せてみたが、
連日ドラゴンの山を探索したことによる疲労が溜まっている、としか言われなかった。毒や病気の類ではないらしい。
アキミの危惧通りに、ドラゴンの山のガラクタで呪われたとしたら、文字通り骨折り損のくたびれもうけである。
「ハヅキー、ごはん貰ってきたよー。あ、開けなくていいから、あたしが開けるよ」
ハヅキがベッドから身を起こしかけたときに、アキミは部屋の扉を開けていた。
ふたりはキャッスル城下の宿屋に部屋をとっていた。特に分ける理由も無いため、相部屋である。
「さすが勇者様御用達の宿屋は違うわね。店の人、あたしたちのこと覚えてたわよ。
しかも急なお願いも聞いてくれたわ。消化のいいもの頼んだから、冷めないうちに食べましょ」
アキミが手に乗せていたトレイには、湯気を立てる汁物が二皿。
彩りは無いが、料理を冷めにくくする深い皿。柔らかく煮られた米に、適度なスパイスが食欲をそそる。
「あれ、アキミもそれなの? わたしに付き合うこと無いのに……」
「気にしなくて良いって。あたしだけ美味しいもの食べるのも気がひけるし、それに……」
「それに?」
「……ひとりで食べても、ねぇ。前はそんなこと考えもしなかったのに」
アキミは備え付けの卓と椅子を運んで、ハヅキのベッドのそばに座った。
トレイを卓に置く。銀の匙で食事を掬う。軽く息を吹きかけた後に、ハヅキに目を合わせて、
「ハヅキ、口あけて」
「あの、アキミ? わたしは自分で食べられるから」
「いいから、口あけて」
子供のような扱いに、ハヅキは赤面していたが、アキミが目をきらきらと輝かせて迫るのに押されて、口を開けた。
ゆっくりと、宝箱の錠前をいじるよりも慎重な手つきで、アキミは匙を運ぶ。くちびるに匙が触れる。
「どうかな?」
「もう少し、熱いままのほうがいいかな。冷めちゃってる」
582: 2011/01/05(水) 03:11:30 ID:5BKomTQR(6/23)調 AAS
再びアキミは皿に匙を潜らせる。
「いや、もういいから、気が済んだわよね?」
「気が済んだ? 何の話かしら。まだたくさん残ってるじゃない。もしかして食欲無いの」
アキミの目の輝きはますます増していた。
「ぜったいあなた楽しんでるでしょ?」
「そんなこと無いって。あたしのごはんが食べられないっていうの」
「アキミが作ったわけじゃないでしょうに」
ハヅキは半目でアキミを睨んだ。その視線に力は無かった。
数息、ふたりは見つめ合っていたが、やがてハヅキが観念して口を開けた。嬉々としてアキミが匙を取る。
「あっ――」
互いに不慣れな動作だったせいか、二口目をアキミはわずかに零してしまう。
くちびるから尾を引く雫に、アキミは咄嗟に指を伸ばす。ハヅキの白い肌に指先を滑らせて、垂れかけた雫を拭う。
慌てた勢いで、アキミの指先がハヅキのくちびるに触れる。かすかな息遣いを、繊細なそれで感じる。
ハヅキは顔をくすぐった感触にきょとんとしていた。アキミが描いた軌跡を、自分の指でなぞってみる。
顎に近いところからはじめて、くちびるまで辿り着くと自分の息遣いを感じる。アキミもそれに触れたことは、すぐに察せられた。
粗相を詫びながらアキミが用意した手巾に、黙って口元を拭わせる。柔らかい布の感触は、指先のそれとは違っていた。
夕食が冷ますまでもない温度になっても、アキミはハヅキに匙を握らせなかった。ハヅキも最後までアキミの行動を制止しなかった。
さっぱりとした料理の味つけは、湯気のように記憶から消えていた。
583: 2011/01/05(水) 03:12:04 ID:5BKomTQR(7/23)調 AAS
(冗談のつもり、だったんだけどな)
その日の夜。
アキミはベッドに転がっていた。自分の腕で自分の身体をかき抱いていた。背中のほうには、相部屋のハヅキが寝ているはず。
けれども、彼女は眠っていない。夜更かし癖が急にぶり返したのか。神殿での朝早い生活に慣れてきたせいか、旅立ちの前のアキミは早寝になっていた。
こんな時間まで起きている日など、最近はなかった。
一度やってみたかったから。軽い気持ちで、ハヅキのくちびるに匙を持っていった。
そのときのハヅキの反応は、冒険しているときには無かった感覚を、アキミに芽生えさせた。
だから、ハヅキに軽く睨まれても、アキミはその行為を続けた。むしろあの表情に煽られたのかもしれない。
何となく胸の奥がざわつく感覚に、アキミは困惑していた。目が冴えてしまっている。
直接背中合わせになっているわけでもないのに、後ろに身体を横たえているであろうハヅキを意識してしまう。
(かわいい――じゃないのよ、もうっ)
初心なネンネじゃあるまいし、とひとり言ちる。そもそも色々とおかしい気がする。
ハヅキとふたりきりで明かした夜は、今夜がはじめてではないというのに。
彼女の困惑を黙殺して遊んでいたせいか。罪悪感というほど深刻なものではないが、やってしまったかという思いはある。
今更になって気恥ずかしさが湧いてきた。これが夕食の時に湧いてきてくれたなら自重できたのに。
持て余したざわつきが眠気に侵食されはじめるまで、アキミはベッドで蹲っていた。
声が聞こえる。
浅い眠りだった。モンスターの襲撃に備えるうちにそうなったのだが、アキミは何故目が覚めてしまったのか、すぐには分からなかった。
明瞭としない意識であたりを窺う。懐に忍ばせた短剣を握る。その堅さが、彼女を覚醒させる。
誰かが床を踏む音はしない。殺気も感じない。不審な薬の匂いもしない。部屋にはハヅキとふたりきり。
思い過ごしか。ハヅキが本調子でない状況で緊張して神経が昂ぶっていたせい、とひとりで納得する。
また声が聞こえる。
今度は間違いなかった。アキミは茹だりそうな心臓を押さえつけて、もう一度周りの様子を確認する――これはハヅキの声だ。
この部屋にはアキミとハヅキしかいない。息苦しそうな声音がする。別の意味で心配になってきた。
外からの侵入者の気配は無さそうだが、これはただごとではない。ハヅキの容態が悪化しているのか。
ハヅキの状態が対処できないほど深刻なものになったならば、何か手段を考えなければならない。
例えば、王宮のあるかないか微妙なコネで強引に人手を借りるとか。
「アキミ……」
空気中に拡散していく呟き。どこか湿っぽくなった夜の帳。
そこには、混乱魔法にかかる直前の感覚に似た、触れてはいけないようなものがあった気がした。
自分の名前が、ここまで熱っぽい響きを持つのかと思って、アキミは背筋がむず痒くなる。頬が火照るのを感じる。
「なんだ、起きてたんじゃない? あなたも眠れなかったんでしょ」
首だけで振り返ったアキミのほの暗い視界いっぱいに、ハヅキの姿が映った。わずかな囁きも届きそうな距離。
その姿にアキミは、洞窟の淫魔(ルーズ)――ハヅキとは似ても似つかないはずの――が二重写しになって見えた。
584: 2011/01/05(水) 03:12:36 ID:5BKomTQR(8/23)調 AAS
声さえあげさせずに、ハヅキは馬乗りになってアキミを組み敷いた。
そのまま肩口を手で抑えて、アキミのくちびるを貪る。不意を突いて歯列に割り込もうとしたとき、鋭い痛みが走った。
「いたいわ……もう。噛むことはないでしょう?」
「あんた、これはどういうことなのよ」
「あなたがいけないのよ、全部あなたのせいなんだから」
抵抗する腕を掻い潜って、アキミの服に手をかける。力を込めて押し退けられても、構わず引っ剥がす。
数え切れないほどの魔物を仕留めた腕も、ハヅキに対して抵抗らしい抵抗ができない。
仲間に対して本気で振り払うことを躊躇っているのか、
(それだけじゃないでしょう? アキミ)
「や、やめてよハヅキ、冗談きついって、今ならまだっ」
「もう無理よ。耐え切れないの。あなたが……欲しい」
またハヅキはアキミのくちびるを襲った。今度は舌でくちびるを弄び、上から唾液を送り込む。
強張ってしまったアキミの肢体を撫でつつ、脱がせる作業を再開する。アキミの肌があらわになっていく。
細くしなやかな腕。指で触れるたびに反射運動が感じ取れる鎖骨。栗色の髪に指を通す。
「アキミ、もう息が荒くなってるんじゃない?」
「ハヅキっ、どうしてっ……いやっ、やめてってば、あたしはっ」
首筋に指を這わせて呼吸の手触りを味わう。髪で隠れていた耳朶に、ハヅキは迫った。
そこが生暖かい吐息に巻かれただけで、アキミは眉根を寄せる。舌で耳殻を舐る。溝のひとすじひとすじまでが、唾液で濡らされていく。
蠢く粘膜。その後に残る冷たさ。それに浸らせる暇も与えず、ハヅキは耳穴まで侵入する。
舌が捻じ込まれる。音が直接アキミの頭に流し込まれる。ぐちゃぐちゃと下品な水音が、抗いようも無いほど近くから襲ってくる。
未経験のそれらに、アキミは翻弄されていた。背徳感だったり、羞恥心だったりが、代わる代わる顔を出す。
「いいわね、顔真っ赤にして、とっても可愛い」
「ねぇ、ハヅキ、あたしが悪かったから、だからもう冗談はやめて」
「冗談……? わたしは、ここまできて、悪ふざけで済ませるつもりなんかないわ」
(冗談なんかじゃないわ。たぶん、ずっと考えていたことだから)
熱に浮かされた顔つきのまま、ハヅキはアキミの肌を堪能する。胸のふくらみに頬を寄せれば、鼓動が聞こえてきそうだった。
顔が辛うじて分かるほどの夜目で、アキミの身体を眺める。視線に敏感なアキミは、それだけで火の出るような思いをさせられる。
アキミは細身だが、服を脱がせて見れば、女としての柔らかそうな曲線も持っていた。
さらに暗闇にぼうと浮き上がる肌の色が、無残に脱ぎ散らされた服とあわせて、劣情を煽ってくる。
「恥ずかしがるのもいいけど、アキミはきれいよ?」
もうアキミは、まともにハヅキの顔が見られなかった。それなのに、ハヅキの表情が分かってしまう。
振り向いた瞬間の、悪魔女を連想させるような、蕩けきった表情が。
ハヅキはアキミの胸に手を伸ばした。小さなハヅキの手にはやや余るふくらみを、ゆっくりと揉みしだく。
それはアキミをいたわるものではなく、自分がその瑞瑞しい触り心地を愉しむためのものだった。
「ふぁ……はぁ……あ……」
「こうやっておっぱいいじってると、あなたが興奮してるのが分かっちゃうわね?」
優しげな手の動きが、緩急を伴ったものに変わっていく。おもちゃを弄るようにぷるぷると震わせる。
麓から頂に向かって搾り出すように力を込める。堅くなり始めた胸の頂に向けて、ねばつく吐息を吹きかける。
「もっといじって欲しくなってきたんでしょ」
「ひゃっ、そんな、そんなこと」
587: 2011/01/05(水) 03:17:43 ID:5BKomTQR(9/23)調 AAS
ハヅキは指をふくらみに食い込ませながら、指の間で胸の頂を挟み込み、しごきだした。
心臓のあたりが締め付けられる錯覚が走る。まどろんでいた官能が身を起こしていく。
反応に気を良くしたのか、ハヅキはもっと大胆な責めに転じる。くちびるに挟む。舌で唾液を塗りつける。
軽く歯型がつきそうなくらいの甘噛み。強く吸い付いて、乳首を口内に閉じ込めて、舌と歯でなぶる。
「ああぁっ、ひいぃぁあっ、だめ、だめだったらっ」
口唇に責められていないほうの頂は、手指が襲い掛かる。抓る。捻る。引っ張る。
口による責めと緩急を連動させて、爪先で焦らすように引っかく。治まりかけたところに、まただんだん刺激を強くしていく。
許容量を超えた激しさに、アキミはいやいやと首を振る。切羽詰ってくるアキミの嬌声に、ハヅキは酔い痴れる。
嗜虐心に意識が浸っていく。可愛らしく、いやらしく、
(もっと、もっと鳴いて。わたしに声を聞かせて?)
「だめ、なんて嘘ついちゃいや」
ハヅキは一度責め手を離し、脇腹からかすかに浮き出たアキミの肋骨を撫でる。
肢体の曲線美のアクセントになる腰骨をくすぐる。アキミの腰がかすかに浮きかけた。
半ば無意識の為させたことであったが、アキミは自分の動きに気付いてしまった。
「期待してるんでしょう?」
「ちが、ちがうって、そんなことないって、いや、い、あうぅぅんっ……」
ハヅキは脚の位置を直すと、既に潤んでいたアキミの秘所をなぞり、彼女の蜜を陰核に塗り込めた。
無遠慮な手つきに、アキミは思わず背中をのけ反らせる。心の意思に反して、身体が震える。声が溢れてしまう。
「いっちゃったんだ。アキミは、ここがそんなにいいの?」
息も絶え絶えになったアキミを、ハヅキは無邪気に笑いながら見下ろしていた。
みんな同じ、もう少しで、同じところまで墜ちていける。指先に残っていた蜜を、見せ付けながら舐める。
「アキミの味はおいしいね。もっと、もっとわたしにちょうだい……」
アキミがその言葉を理解する前に、ハヅキはアキミの両脚の間に身体を置いて、秘所を指で割り開いていた。
あんまりな格好に、殆ど本能的にアキミは抵抗しようとする。しかし、ハヅキの目の前に晒された秘所は逃げられない。
(みんな同じだから、そんなに怖がらないで?)
「いやぁあっ、やめ……ひゃあんっ、あんんんっ!」
ハヅキは直に秘所へ舌を這わせた。ぴちゃぴちゃとわざとらしい水音を立てて、まだ開かれない入り口を嬲る。
張り詰め始めた陰核を指でいじめる。薄い草叢を撫で付けて遊ぶ。蜜と唾液が混ざり合って、アキミの秘所を覆っていく。
アキミの声は、最早泣き叫んでいると言ったほうが似合うものになっていた。
「うわぁ、アキミのここ、すごい熱くなってる。火傷しちゃいそうね」
アキミの秘所の中に、ハヅキは指を侵入させた。およそひとの身体とは思えない締め付けと熱。
動かすことさえ難しいはずの内奥を、ハヅキの細い指が蹂躙していく。
「いやっ、ハヅキ! ほんとにそこはだめ、だめだから、おねがいっ」
「だめ、もっとわたしと一緒になろう……? 気持ちいいわよ? だから、あなたも――」
指をもう一本増やす。きつい膣内を浅いところから馴らしていく。アクセント代わりに、開いた指で時折陰核を撫でる。
涙声が途切れる。感触を頼りに、蜜を掬い上げて塗りたくる。内奥に打ち込んだ指にもまぶして、抜き差しを滑らかにする。
ざらついた天井を擦って回ると、アキミが悲鳴をあげる。どんな強敵の前でも出さなかったような、怯えの混じった声音。
588: 2011/01/05(水) 03:18:18 ID:5BKomTQR(10/23)調 AAS
「ねぇ、アキミ、どうしたの、もっと愉しまないとだめよ?」
ハヅキは、単に慣れない膣内の性感にアキミが戸惑っているものだと思っていた。
(その方が良かった。自分と同じだったら、自分と同じになれる。わたしが同じにしてみせる)
(そうすれば、きっと、夜毎押し寄せるものに、苛まれなくて済むから)
ハヅキはアキミを宥めるために、指による責めを取りやめて、口唇によるそれに切り替えようとした。
舌で秘所の水気を広げようと、秘所の周りから舐め上げた。
蜜とは違う、べっとりと張り付くような生臭さが、ハヅキの味蕾を染めた。
ハヅキは、アキミに打ち込んでいた二本の指を見た。視線を上げて、くしゃくしゃに歪められたアキミの顔を見た。
(いやっ、アキミ……わたし、こんなの、嘘っ)
「あ――わ……わたしっ……」
何か、とても大事なものが、目の前でがらがらと崩れていった気がしていた。
アキミが我に返ったとき、ハヅキはまだアキミのベッドの上に転がっていた。
転がったまま、調子がおかしくなったゴーレムのように、ひたすら何事かを呟いていた。
589: 2011/01/05(水) 03:18:54 ID:5BKomTQR(11/23)調 AAS
アキミとハヅキは、数日後にテンプル神殿へ帰り着いた。王宮衛士隊の数人かが、護衛についていた。
アキミがヤマダに無理を言って手配した人手である。
「ハヅキは……あなたに話していなかったのね」
重い口ぶりで事の顛末を話したアキミに、ミユキは抑揚の無い声で話しかけた。
ハヅキは自分の部屋ではなく、ミユキの部屋に置いておかれた。彼女の荷物は、アキミと王宮からの人手が運んだ。
禁治産者のような扱いだ、とアキミは思った。
「アキミ。もしあなたが、まだ神殿にいてくれるのなら、あの子から離れないでいてくれるなら、聞いて欲しいことがあるの」
アキミは、やっとの思いで顔を上げた。ミユキの目から逃げそうになるのを、懐剣を握り締めて抑える。
「あの子が……チャーチ教会からバケモノ神父へ売り飛ばされたことは、知ってるわよね」
アキミはミユキの目を見返した。バケモノ神父との二度に渡る戦闘は、未だに鮮烈な記憶として残っていた。
バケモノ神父――デスアキホと名乗っていた――は、神父になりすました悪魔だった。
女を集めて奴隷にし、飽きたら売り飛ばす。リーベックの街から女の姿が消えるほど、それを繰り返した。
そこから脱走したミユキが勇者コナミに助けを求めたことから、勇者たちとデスアキホの戦いが始まった。
このテンプル神殿で、最初にデスアキホと戦った。上級悪魔をも上回るタフな肉体と魔法の実力に、コナミたちは苦戦する。
「あの子は、デスアキホに攫われた女の人の中でも、とりわけひどい目に合わされた。皆までは言わないわ」
デスアキホは本気で戦うつもりが無かったのか、自分の集めた女たちをワープさせると、コナミたちの前から逃げ去った。
コナミたちは、野球人形の一件の途中であったが、デスアキホの悪行を見逃すことが出来なかった。
そしてサンドの街で再戦。デスアキホを退け、囚われていた女たちを解放した。解放された中に、ハヅキも含まれていた。
「デスアキホはハヅキに相当執心していたらしいわ。あなたたちに解放されてから分かったことなんだけど、
ハヅキにはある特殊な呪いがかけられていた。簡単に言えば、催淫の呪いね」
「……そんな状態で、あたしたちに同行していたというの?」
「呪いは、わたしの魔法で何とか抑えていたの。でも、わたしが未熟だったせいで、解除するまではいかなかった。
おそらくデスアキホにとどめを刺すしか……デスアキホが再び現れたとき、わたしとハヅキだけでは、あのバケモノには到底叶わないわ。
だから、あなたたちに同行していたの。ごめんなさい。黙って利用するような真似をして」
「それはあたしだけに言っても、仕方が無いでしょ」
結局デスアキホと遭遇しないまま、野球人形の一件は解決した。一行は解散し、ミユキとハヅキはテンプル神殿に赴いた。
アキミはハヅキに誘われて、ともにテンプル神殿に身を置くことになった。
590: 2011/01/05(水) 03:19:30 ID:5BKomTQR(12/23)調 AAS
「あなたに関しては、現在進行形で用心棒やってもらってるから。余計に謝らないといけない。
あなた以外にも助けを求めるべきだったんだろうけど、信頼できそうな人は皆どこかに旅立ってしまった。
……ハヅキがあなたに声をかけたのは、男というものに不信感があったのか、催淫の呪いが悪化したときのことを考えてたのかも」
「それで、あたしがハヅキを神殿から連れ出したせいで、呪いがぶり返したって言うことなの?」
「……端的に言えばそうよ」
どうして言ってくれなかったのよ――と口に出しかけて、アキミは言葉を飲み込んだ。
アキミの外出にハヅキを付き合わせることは、アキミがハヅキに話の流れで約束させたことで、ミユキは関知していない。
そしてアキミが外出を提案したとき、ミユキは首を縦に振らなかった。
「あのとき、どうにも煮え切らない顔してたと思ったら……予想はしてたわね」
「わたしがもっと強く止めていれば、ね。女の子同士なら大丈夫か、と思ったのはわたしの油断だった」
ミユキの話が途切れた。アキミは、ハヅキと歩いていった道のりを、サンドから順に思い起こしていた。
渇きと暑さの支配するサルムス砂漠。死者の都ダリ遺跡。人と魔を分かつクリフの崖。魔王が一番温厚な魔王城。城下街。迷いの森。ドラゴンの山。
「ハヅキは、ずっとあのままなの?」
「今はそっとしておいて。神殿はそういう面倒を見るところでもあるから、ある程度は回復するはずよ」
あれだけ広いこの国で、ハヅキがまともに行き来できるのは、こんなちっぽけな神殿だけだった。
気ままな自分の身の上をハヅキに重ね合わせたことが、アキミには馬鹿馬鹿しく感じられた。
やがてアキミは意識を目の前の部屋に引き戻すと、ミユキに向き直った。
「ミユキさん。あたしは、何かハヅキにしてあげられることはないかな。
あれから、ハヅキはあたしと話もできていないの。あたしとハヅキは仲間なんだよ。
下らない呪いのせいで、こんな目に合わされるなんて、あたしはぜったい嫌よ」
(シスターミユキが解決策を思いついたら続く)
591: 2011/01/05(水) 03:20:53 ID:5BKomTQR(13/23)調 AAS
『テンプル神殿異聞その0』
その牢獄は、監禁される側にとっても、する側にとっても、立派なものとは言えなかった。
(随分……人数が少なくなってしまったわね)
石壁に背をもたれさせながら、ミユキは心中で呟いた。
ミユキがここに押込められてから、しばらく経っている。日付の感覚があやふやになってきた。
だというのに、この牢獄を訪れる人間は、ターバンを巻いたあの男の手下しか見た事が無い。
人間以外を含めるならば、ミユキたちを押し込めるときに、あの男自身が一度だけやってきたが。
テンプル神殿の一角に急ごしらえで作られた牢獄に、ミユキたちはいた。
たち、と言っても、共通する特徴は全員が若い女であることぐらいだった。
ミユキがこの牢獄に入ってから、女たちは徐々に数を減らしている。
時折新入りが入ってくることもあるが、減っていくペースの方が速かった。
牢獄から出された女たちはどうなるのか。
『いやぁっ、やめてっ、やめてくださいっ、お願いしますから、どうかそれだけはっ……!』
『キミの代わりなんて、いくらでもいるんだよね。これも仕事、だと思って、せめて最後に、ボクの役に立っておくれ』
牢獄の女たちはびくりと肩を震わせた。
牢獄の鉄格子のすぐ外に置いてある水晶玉から、その場にいないはずの声が聞こえてくる。
どうやらあの男の玩具らしい。水晶玉はこの牢獄に向けて、別の部屋で繰り広げられる音声を投げつけてくる。
(……また始まった)
牢獄から出された後はどうなるのか、ミユキたちは見た事は無い。ただ水晶玉から一方的に聞かされるだけだった。
あの男は牢獄の女たちから、気力体力が充実してそうな者をひとりずつ牢獄から連れ出していく。
そして連れ出した女たちを様々な責め苦で屈服させ、奴隷に仕立て上げ、その様子を牢獄の女たちに延々と聞かせ続けていた。
牢獄の中では、脱走を図ろうとする女が減った。会話も減った。わけのわからないひとりごとを呟く女は増えていった。
拘束具が無いことなど、何の慰めにもなっていなかった。単に必要が無いと判断されただけだろう。
今となっては、何かしらの現実に根ざした思考を行っている者は残っていないと思われた。
奴隷がひとり売り飛ばされたようだった。何に使われるかは分からない。ミユキは水晶玉をねめつけた。
この状況に付き合うのも、嫌気が差してきている。といっても、目前に転がっている屍のような女たちの仲間入りも御免だった。
うっかり恨み言の一つも言えない。あの水晶玉は、こちらの音も拾ってどこかに届けるらしかった。
あの男の趣味だけではなく、一応監視の道具も兼ねているらしい。
(リーベックの腰抜けたちに期待するのもうんざりしてきたし、そろそろわたしもまずいかしらね)
監禁されている末路がまずいのか、それに慣れつつある自分がまずいのか、ミユキは考えなかった。
592: 2011/01/05(水) 03:21:33 ID:5BKomTQR(14/23)調 AAS
その日、あの男――アキホは上機嫌だった。新しい玩具が手に入ったのだった。
元々アキホは、自身の悪魔の力を使い、神父に成りすましてテンプル神殿に入り込んでいた。
そして邪魔な男どもをあの手この手で排除し、逆らう女は徹底的に責め抜いて奴隷とする。
飽きた奴隷は適当な相手に売り飛ばして金にする。それを繰り返して、アキホは神殿内にハーレムを作り上げてきた。
さらに手下を通して神殿の隣邦リーベックを事実上支配しているが、アキホ自身はあくまで表向きは神父として振舞っている。
最近のアキホは退屈していた。アキホの趣味に適う玩具が、なかなか手に入らなかったからである。
アキホは嗜虐趣味の持ち主で、抵抗する女を嬲って這い蹲らせることを何より好んでいる。
しかし、調教の手間を省くために考えた仕掛け――水晶玉――が思いの外効き過ぎて、牢獄に躾け甲斐のある女が残っていない。
かといってリーベックの街のめぼしい女は、ことごとく捕えて奴隷にしてしまった。
既に陥とした奴隷を肉体的苦痛でのた打ち回らせるのも、最初は楽しかったが、今では飽きが来ていた。
そんなアキホの前に、新しい獲物がやってきた。王国南部のチャーチ教会から、貢物が届いていた。
アキホの肥えた目を満足させる容姿の、まだ折れていない少女。名前は、ハヅキといった。
「こ、これはまさか、みんな……」
「ふうん、人間の癖にかしこいね。一目見ただけで分かるなんて。助けを呼んで、泣き叫ぶのを期待したんだけど」
ハヅキがテンプル神殿で最初に迎えた朝、アキホはハヅキに与えられたことになっている個室で、調教の開始を告げた。
呆気にとられたハヅキであったが、アキホの意図を察するとすぐに魔法で抵抗し、部屋を強引に脱出しようとした。
部屋のすぐ外には、既に調教済みの奴隷たちが何人か立っていた。
鈍い音が部屋と廊下に響いた。アキホが鉄の杖を以て、ハヅキの横っ腹を打ち据えたのだった。
たまらずハヅキは、床に倒れて身体をくの字に折り曲げる。
ハヅキ愛用の五芒星の杖は、アキホに蹴り飛ばされて手から離れてしまった。
「ゲホッ、カハッ、ハッ」
「お前達は“水”の用意を。他のものには、いつもどおり、聖務に励むよう伝えてある。
ハヅキ、といったよね。この紙人形が、何だか、分かるかな?」
アキホの奴隷達が部屋の扉を開けるのを聞いて、脱出しようと手足に力を入れたハヅキが、驚愕に表情を歪めた。
紙人形の首がアキホによって軽く曲げられると、歪んだままのハヅキの顔が床からアキホを見上げた。
「あ、あなた、わたしに何をしたのっ」
「これは、ちょっとした呪いで、この人形の呪いをかけられた人間は、この人形と同じ動きをしてしまうんだよ。
その呪いを、夜のうちにかけさせてもらった。使い捨てだから、長続きしないけど、最初の愉しみには十分さ」
ハヅキはアキホを鋭い目つきで見据えていた。昨日見た可憐な顔は、人を睨んだことさえほとんど無さそうだった。
アキホはその視線を受けて、むしろ嬉々とした様子を隠さなかった。
「いいねぇ、今のうちに、もっとそういう目で睨んでくれ。さて、まずは調教の準備運動をしよう。そこに、四つん這いになってもらおうか」
593: 2011/01/05(水) 03:22:05 ID:5BKomTQR(15/23)調 AAS
アキホは薄笑いを浮かべながらハヅキを見下ろしていた。ハヅキは部屋の床に突っ伏したまま、一向に動かない。
紙人形の呪いに、完全に自由を奪われている。アキホは勿体をつけた手つきで、紙人形をいじった。
ぎくしゃくとした四肢の動きで、ハヅキが姿勢を変える。両肘両膝を床につけて、尻を高く上げさせた。
ハヅキは頬を紅潮させてくちびるを噛んだ。殆どの生活を教会で過ごしてきた彼女にとって、味わったことの無い羞恥だった。
「さてキミはさっき、このボクを傷つけようとしたね? おいたをした子には、お仕置きが必要だ。
チャーチ教会ではどうやってたか知らないけど、ここは、ボクのやり方でやらせてもらおう」
ハヅキが部屋の天井へ突き上げている臀部の、すぐ横にアキホが立った。
ハヅキの視界は床だけになっていた。それでもアキホが凝視しているのを感じたのか、肢体を微かに揺らした。
「な、何をするのっ?」
「何って、そりゃお仕置きだよ。小さい頃やられなかった? お利口さん、だったんだね」
アキホは無言でハヅキの下半身の着衣をたくし上げ始めた。ハヅキの抗議の声に構わず、アキホはハヅキの肌を晒していく。
尻の肉付きは、アキホでなくても薄いと判断する程度だった。膨らみは少女らしい慎ましやかなもので、瑞瑞しい色が眩しい。
少し下に目を下ろせば、申し訳程度の草叢で覆われた陰部が目に入る。秘裂は闖入者を拒むように、ぴったりと閉じられていた。
すっきりとした腿は太過ぎず細過ぎず、肌の色と相俟って健康的な魅力を醸し出している。
アキホは視線でハヅキを堪能すると、ハヅキからは見えない笑みを浮かべて、右手を軽く素振りした。
そのまま右手はこなれた軌道を描き、ハヅキの臀部を打った。
「あぅっ……!」
「痛い? 痛いかなぁ。痛いから、お仕置きなんだ。もっと痛がってくれ。痛いなら、痛いって言ってもいいんだよ」
皮膚が鳴らす甲高い音。手のひらに残る弾けた感触。噛み殺されたハヅキの呻き。アキホの気分は早くも高揚していた。
ぱん、ぱんと打ち続く打擲音はハヅキの耳にも入っていた。子供染みたお仕置きは、苦痛よりも屈辱が上回っていた。
尻肉が打たれるたびに、ハヅキは食い縛った歯の間から息を吐いた。アキホからは見えないが、おそらく眉根を寄せて耐えている。
苦悶が塗りたくられた顔を思い浮かべながら、しばらくアキホはハヅキの尻を張っていたが、不意に右手の動きを止めた。
「強情だね。木の股から生まれたわけじゃあるまいし。痛みぐらい、感じてるでしょう」
「これがお仕置き、ね……」
赤くなったハヅキの下半身の曲線を、アキホがそっと指で撫でた。
予想しなかった刺激に、ハヅキは息を乱す。ぞわぞわとした痺れが、臀部の頂点から垂れ落ちてくるようだった。
「へぇ、もっとすごいお仕置きが欲しいんだ。いいよ。ボクもたっぷり教えてあげようと思ってたんだ……」
からからから、と乾いた音がした。先ほどアキホの指図を受けた奴隷達が、車輪つきの台車を押してきた。
台車には、大量の水で満たされた水槽と、鉄製らしい奇妙な台が載せられていた。
594: 2011/01/05(水) 03:22:37 ID:5BKomTQR(16/23)調 AAS
奴隷達が、数人がかりで奇妙な台をどすんと床に下ろした。台と言っても奇妙な形だった。
強いて言えば、直角三角形を底面とする三角柱を横倒しにしたような格好だった。
底面の直角と鋭角の部分が床に接していて、どうにか物を置けそうな面にも20度ほどの傾斜がついていた。
重さを軽減するためか、内部は空洞になっていた。台というより、一枚の鉄板を折り曲げた外見だった。
「これから何をされるのか、分かるかな」
「知らないわ。その、出来損ないの鉄板みたいなものは何なの?」
「本当は、もっとおおげさな拘束具も使うんだけど、これは無いから分かりづらいか。まあ、そのうち分かるさ」
アキホは奴隷達に命じて、ハヅキの身体を持ち上げさせた。そして、ゆるい傾斜がついている三角柱に横たえさせる。
横から見れば、ちょうど凵iデルタ)のように見える台の斜辺の部分に、ハヅキは頭が下にくるよう設置されている。
両脚は膝関節で曲げられ、ハヅキが滑り落ちないように膝裏が面の端に引っ掛けられた。膝下だけが、支えも無しに揺れていた。
ひんやりとした金属の感触が、白い肌に接する。紙人形の呪いはまだまだ健在らしく、ハヅキは筋肉にうまく力が入れられない。
「さて、お仕置きが終わって、次は調教の時間だ。使うのはただの井戸水だけど、せいぜい愉しませてくれよ……」
「……何もかも、自分の思い通りになるとは思わないほうがいいわ」
「いかにも人間らしい言い草だね。おい、始めろ」
アキホの言葉で、奴隷のひとりが漏斗を咥えさせようとする。動物の角か骨のらしきそれを、ハヅキは口を堅く閉じて拒む。
別の奴隷が無言で柄杓を取り、水槽から水を汲み上げてハヅキの顔に浴びせる。
鼻に水が入って咽(むせ)た拍子に、漏斗が口腔に突っ込まれた。
漏斗を持った奴隷が漏斗を保持し、柄杓の奴隷が再び柄杓に水を汲み、漏斗の中に注ぎ込む。
朝汲みの冷たい水がハヅキの喉に流し込まれる。ハヅキがそれを飲み干すと、また柄杓に水が汲まれる。
その動作が規則的に繰り返され、アキホは食い入るようにハヅキを見ている。
2杯、3杯程度ではハヅキの様子に変わりは無い。意に反して水を呑まされているが、ごく常識的な量だ。
漏斗も柄杓も特別大きなものではなく、咳き込むことがあっても、注がれた水の全てを飲み干すことができた。
水責め――傍から見ると、これはそれほど残酷な拷問には感じられない。
漏斗と水で口が塞がれているので、悲鳴が出ることも無い。肌を炙ったり裂いたりすることもないので、派手な傷も見えない。
縄で絞めたり石で圧迫するわけでもないので、肉体のどこかが鬱血して変色したりもしない。
それでもアキホは、あるひとつの欠点を除いて、この拷問を好んでいる。
「ググ、ガホッ、ゲホッ」
水槽の水かさが少し減った、と分かる頃には、ハヅキも様変わりしていた。
人間の胃は水を直接吸収するようにはできておらず、漏斗から飲み干された水はそのままハヅキの腹に溜まっていく。
飲み干せなかった水が口内から溢れると、それが顔を濡らし、鼻に入り込み、またハヅキを咽させる。
水に濡れたハヅキの髪が、べっとりと額に張り付く。再び漏斗に水が注がれる。
そんな動作が何回も続く。水は変わらず柄杓で注がれ続ける。その内、ハヅキが身体を捩らせる頻度が多くなっていく。
水が注ぎ込まれてしまえば、それを飲み干すまで碌に呼吸は出来ない。
鼻でかろうじて息を持たせているが、それもだんだん細くなっていくことをアキホは知っていた。
吸収できない水分は胃の中に留まり続け、ハヅキの腹は妊婦のように膨らんでいた。
598: 2011/01/05(水) 03:25:30 ID:5BKomTQR(17/23)調 AAS
「……苦しい? まだ水槽には、たっぷり水が残っているよ」
ひゅうひゅうと異常な呼吸音が漏斗から聞こえる。ハヅキは身体を上下させて呻いている。
膨張させられた胃が、内臓に負担を強いていた。頭がやや下にされているこの体勢では、水の重みも頭の方向にかかる。
つまり胃が横隔膜を圧迫して、肺腑の動きを妨げている状態だった。自然と肺活量が減らされ、息が苦しくなる。
最も大きな臓器の肝臓にも、胃の重荷が背負わされている。腹を殴られた時に似た息の詰まりが、じわじわとハヅキを苛む。
「この、程度で、あなたに屈したりなんかしないわ……こんな、ことが、いつまでも続くとは、思わないで」
「……いつまでそんなことが言ってられるかな。おい……水を止めろ」
柄杓の奴隷が動きを止めた。水の流入が止まり、ハヅキは反射的に息を大きく吸う。
同時にアキホは、右手で思い切りハヅキの膨らんだ腹を押し込んだ。
「グェ、ゲブッ、オグッ」
「はは……苦しそうだなあ……もっと、もっといくよ」
胃を押され食道から逆流した水が、吸い込もうとした空気と混じって喉と器官を責め立てる。
消化され切っていない昨夜の夕食が、水と胃液に混じって嘔吐(えず)かせる。顔が酸っぱい匂いのする吐瀉物にまみれる。
アキホと奴隷達は、体重をかけて溜まりに溜まった水を押し出す。
腹にかかる圧力と、消化器官を走る痛みに、ハヅキは何度も封じられているはずの四肢を震わせた。
鉄の台から反吐混じりの水が流れ落ち、部屋の床に水たまりを広げていく。
「だいたい出し切ったみたいだね……どうする? やめて、とひとこと言えば、やめてあげなくもないけど」
「そんな……そんな、ことは、言わない……どうせ、楽しんでるんでしょ……」
「ご名答……やっぱり、人間の癖にかしこいね。それでは、もう一度……」
漏斗の奴隷が再び注ぎ口をハヅキに押し付ける。
まだハヅキは抵抗するが、鼻を抓まれて耐え切れなくなったところに、強引に押し込まれる。
柄杓が傾けられる。今度は決まったペースではなく、ハヅキが呼吸する素振りを見計らって水が注がれる。
ハヅキが首から上だけを振り回して藻掻く。腹がまた出っ張りだした頃には、飲みきれなかった水で胸まで濡れていた。
「気分はどうかな、さっきよりも、たくさん水を飲んでもらったんだが……」
「こんなの、たいしたことない……お腹でもなんでもやってみなさいよ……コナミさんが、こんな、ことを、知ったら、ただじゃ済まないわ……」
「コナミ……ああ。昨日やってきた、あの自称勇者たちか。ボクの正体を見抜けなかったボンクラに、何を期待してるんだか」
目蓋に力が入らなくなってきても、ハヅキは気丈にアキホを睨もうとした。
満足げに頷いたアキホは、無言で腹を押す。ハヅキが目を見開いた。
吐出の潰れた水音とは違う、勢い良く噴出する液体の音。ハヅキの股間から小水が湧き出ていた。
少女の惨めな様に、アキホは声を上げて笑った。ハヅキは羞恥に啜り泣く暇も無く、腹部に打撃が加えられる。
くしゃくしゃになった悲鳴らしき音が、うっすらと赤みの差した水が、くちびるの狭間から漏れ出てくる。
アキホと奴隷達は、再び水を吐き出させる作業にかかった。時折杖で叩きながら、絞り出すように作業は進められた。
ハヅキは最初よりも激しく身体をのたうたせる。最早さっきの気丈さは跡形も無かった。
小水が鉄の台の傾斜を滴って、ハヅキの腰から上を汚していった。やがて既に零れていた水と混じって、区別がつかなくなった。
腹がへこむ頃には、肌はすっかり色を失い、冷え切っていた。
ぜいぜいとした喘ぎが無ければ、水死体と言われても不思議に思われない姿だった。
「ふん、もうこんな時間か。ボクはお昼を食べてくる。お前たちは、これを見張っていろ……」
アキホは淡々と調教の中断を告げた。部屋の扉が開き、足音が遠ざかっていく。
奴隷達は感情の失せた目で、ぜいぜいと息を整えるハヅキを見ていた。
599: 2011/01/05(水) 03:26:02 ID:5BKomTQR(18/23)調 AAS
(あの男……午後もやるつもりかしら)
ハヅキが調教されている様は、水晶玉を通じてミユキの耳にも届いていた。水音と苦しげな嘔吐だけで、内容は想像できた。
(悔しいけど、あの男相手じゃ魔法を使っても太刀打ちできない。抜け出すなら、あの男が対応できない時を選ばないと)
ミユキもテンプル神殿で魔法の修行を重ねていたが、魔法でも戦闘でもアキホの方が上手だった。
しかも牢獄に押込められたときに杖を奪われてしまい、この状態では回復魔法ひとつ使えない。
(それに、リーベックまでがあの男の手に落ちているなら、脱出しても助けを求められるのは余所者しかいない)
牢獄に足音が近づいてくる。アキホの手下が、申し訳程度の食事を運びにきたらしい。
牢獄の女たちは、ミユキを除いて誰も関心を持っていないようだった。
「おい、食事だぞ、取りに来い……ふん、ここまで来ると薄気味悪いな。
もし正気の奴が残ってたら、他の奴に食べさせておけよ……死なれたら、俺たちが危ないんだからな」
牢獄の扉越しに、専用の受け渡し口から人数分の食器が置かれた。
手下が覗き穴から様子を窺っても、女たちは誰も反応しない。やがて手下は牢獄を離れていった。
(そろそろわたしも……覚悟を決めるべきかしら。うまくいくかは分からないし……下手したら、あの男よりひどい手だけど)
ミユキは一瞬だけ逡巡したが、やがて皮膚に歯を食い込ませた。皮膚からは鉄臭い血と、べたつく組織液が滲んだ。
ミユキが牢獄で葛藤していた頃、ハヅキは鉄の台の上に乗ったままだった。
腹の水が抜かれて尚、呻吟してみせるハヅキに対して、奴隷達は何もしなかった。
ハヅキが苦悶の表情を浮かべながら身を捩じらせ、そのはずみでバランスが崩れたかのように、ハヅキの身体は台から落ちた。
奴隷達が反応する間もなく、ハヅキは部屋の隅によたつきながら走る。アキホに蹴り飛ばされた杖を掴む。
ようやく動き出した奴隷達はハヅキを押さえ込もうとするが、触れる直前で電撃魔法を見舞われ、ばったり倒れて動かなくなった。
「ごめんなさい……あなたたちのせいじゃないのに」
奴隷がひとりも動かなくなったことを確認したハヅキは、息を整えつつ自らに治癒魔法をかける。
本来切り傷や火傷に効果のある魔法だが、それでも多少水責めのダメージは回復した。
扉の近くに寄り、廊下に足音が無いのを確認する。逸る心を抑えてドアノブを握り、ハヅキは一気に扉を開けた。
「待ちくたびれたよ、ねえ……ハヅキ?」
扉の向こうで待っていた影を認識する前に、再びハヅキは横っ腹に鉄の杖の痛烈な打撃を食らった。
魔法を一節も詠唱する間も無く、ハヅキは自らの排泄物に汚れた床に突っ伏した。
「紙人形が吐き出された水に濡れて効果を失ってたことなんて、ボクが気付かないわけないでしょ……。
……それにしても、ここまでやってくれるとは思わなかったよ、お膳立てした甲斐があったね……」
倒された奴隷達には目もくれず、アキホはハヅキを滅多打ちにした。顔や身体に傷はつけず、手足ばかりを乱打した。
やがて骨が折れると、ハヅキは刺激に堪えきれず声を上げた。肉と骨を打つ音と混じって、声はさらに部屋に響いた。
ハヅキの手足が、人目で機能を失ったと分かるほどになると、アキホはようやく杖を止めた。
600: 2011/01/05(水) 03:26:34 ID:5BKomTQR(19/23)調 AAS
「あーあ、こういうことしたくなかったから紙人形使ったのに、それとも、こういうのが好みだったの?」
ハヅキは抵抗することも無く倒れていた。意識はあるようだったが、先ほどの乱打のせいで這うこともできない。
胴体の部分だけ無傷なせいか、失敗した手足をトルソーに無理矢理くっつけたようにも見える。
「痛い……? 痛いかな……治して欲しいかい、ボクは治癒魔法も得意なんだ」
水でてらてらと光るハヅキの髪を引っ掴んで、アキホは自分の方を向けさせた。
泣いているかどうか分かり辛いのが、アキホにとって唯一水責めの欠点だった。
「おっと。その前に……キミはまた粗相をしたんだっけ、治してあげるのはそれからにしようか……。
ハヅキ……舐めろ。この部屋の床を舐めて綺麗にするんだ、キミが出したものだからなぁ」
そう言ってアキホは、ハヅキの顔を手から離して落とす。ハヅキのぼやけた視界に火花が散った。
さらに片足でハヅキの顔を踏みつけ、床のぬかるみに押し付けた。
わずかにぬかるみが跳ねて、水と吐瀉物と小水の入り混じったそれが、ハヅキの顔をさらに汚した。
「どうしたの、手足が動かなくてもそれぐらいできるよ。何……もとは、キミの腹の中にあったものじゃないか」
アキホはぐりぐりと足を動かして、より強くハヅキの顔をぬかるみの中に抑え付けた。
既に折れた奴隷へのお仕置きには、いつしか徒労感さえ感じていたアキホも、
顔を踏まれつつも一向に舌を伸ばす様子の無いハヅキに対しては、久しく味わっていなかった興奮を覚えていた。
「はは……そうか。ハヅキはいけない子だな……そうだ。あれだけ水を飲んだんだから、身体が冷えてるじゃないか」
わざとらしい猫撫で声で、アキホはハヅキにささやいた。鼻を突く胃液の匂いさえ、自身の演出の産物と思えば愛おしかった。
小柄な身体――勿論彼の本来の姿ではない――に似合わない力強さで、ハヅキの身体を持ち上げ、水責めのときと同じように鉄の台に載せた。
そしてハヅキの四肢を折った杖とは別の、赤い宝玉のついた杖を握った。
「ボクの魔法で、少し暖めてあげよう」
アキホは鉄の台の空洞に赤い宝玉の杖を差し入れると、短く呪文を唱えた。一瞬赤い宝玉が禍々しく輝き、空洞の中を炎が蠢く。
詠唱と音で、ハヅキも状況を察することが出来た。何もできることは無かった。
「あアッ、ウウ、あああああぁッ!」
アキホの火炎魔法の勢いは、鉄の台を満遍なく熱するには十分なものだった。
はじめてハヅキのまともな悲鳴を聞くことの出来たアキホは、魔法を操る手を止めてハヅキを凝視した。
「……まだ台の水だって蒸発していないのに、随分情けない悲鳴を上げるんだなぁ」
肌を焼かれる感触に、太腿の筋肉ががくがくと痙攣した。それに合わせて骨折した膝下がぶらぶらと揺れる。
手足がまったく使えず、重心も動かせないこの姿勢では、鉄に染み込んだ熱から逃れることは叶わなかった。
不自由な身体をがたつかせて、ハヅキは台の上で悶えていた。突然太腿をひくつかせたかと思えば、また小水が漏れ出ていた。
小水の湯気とアンモニア臭が、水を吸った衣服から立ち上る蒸気と混ざって、部屋に溶けて行った。
アキホはハヅキの様子に見入っていたが、鉄の台が冷えてくると、その都度火炎魔法で熱した。
ハヅキの濡れていた衣服が、完全に乾き切る頃までそれを繰り返すと、ついにハヅキは気絶した。
601: 2011/01/05(水) 03:27:07 ID:5BKomTQR(20/23)調 AAS
異変に気付いたアキホの手下は、テンプル神殿の中でもっとも不運な男だったかも知れない。
手下の男自身も、アキホの威を借りて横暴を働いていたが、それだけアキホの一睨みに弱かった。そのため、
「なっ……なんだこれは……おいっ」
昼食を片付けに牢獄まで来た手下が目にした光景は、まさに悪夢だった。
女たちが身動きしていないのはいつものことだった。うわ言がぶつぶつと聞こえてくるのもそうだった。
異様だったのは、覗き穴から見えたもの。薄暗い牢獄の中に、赤黒いものが視界に入る。
つい目が止まり、目を近づけて覗き込む。手下が思い当たるものはひとつしかなかった。
手下は度を失った。無我夢中で牢獄の錠に手をかけた。がちゃがちゃと耳障りな音ばかりが立った。
アキホの独占欲所有欲の強さは、手下として嫌と言うほど見せ付けられてきた。
少々飽きが来ていたとは言え、アキホの物であるはずだった女たちに何かあれば、手下はただで済まない。
やっとの思いで錠を外し、扉を跳ね飛ばす勢いで開く。女たちは一塊になって倒れていた。そのうちの何体かが異様だった。
申し訳程度に着せられていた衣服には、揃って胸部に不吉なシミがべっとりとついている。
「クソッ、いったい何が起きたってんだ! おいッ、しっかりしろ!」
手近に寝転がされていた女の身体を改める。治療用の杖を握り、血を流している傷を探す。
もし女が傷ついているのならば、どうにかしてそれを誤魔化さなければならない。無かったことにしなければならない。
服を剥がしてもっとよく調べようと、手下が腰をかがめたとき、筆舌に尽くしがたい痛みが手下の急所を襲った。
(治療魔法使えるくせに、血ぐらいで泡食うとか……親玉とは大違いね。これだけ人間転がしてるんだから、それなりの血ぐらい流せるわよ)
ミユキは小煩い水晶玉を一目だけ見つめると、小走りで牢獄を去っていった。あの男はまだお楽しみらしかった。
仮初の同居人たちは動かなかった。ミユキは特に脱出を促したりしなかった。
ミユキが彼女らに歯爪を突き立て血を流させた時も、彼女らからは、あるかないかの反応しか返ってこなかったからだった。
「ねぇ……“教頭”せんせい? この間の届け物はとても嬉しかったよ。すっかり愉しませてもらっている」
アキホは、チャーチ教会の神父をテンプル神殿に招いていた。ハヅキが失神した後、急に思いついたのである。
思いついてすぐそれを実行できることが、アキホの実力を端的に示していた。
人の足では十日以上かかる道程をワープしてチャーチ教会に現れ、また神父ごとワープしてテンプル神殿に戻ってくる。
ただの人間――隣のスラム街で人身売買に一枚噛む程度の一介の神父――は、アキホの意向に従うしかなかった。
「い、一体なんなのよ。あたしも忙しいんだから、急な呼び出しは困るわ」
「いや、さぁ。愉しいのはいいんだけど、ひとつ困ったことがあってね」
“教頭”としては、どうにもアキホの存在は面白くなかった。
キングダム王国で聖職者――の立場を利用して甘い汁を吸う者――としては後発の癖に、今や自分より大きな顔をしている。
特にハヅキを献上させられたのは、“教頭”にとってひどく心象を害する出来事だった。
かといって、そこいらの暗殺者など問題にもならない戦闘力を持っているため、迂闊に手出しが出来ない。
純粋にアキホ自身にのみ目を向けても、とても好感が持てない相手だった。
行動や立ち居振る舞いがいちいち陰湿で、どうして聖職者などやっていられるのか、という疑問さえ覚えていた。
もっとも、アキホの方も“教頭”に対して同じ疑問を持っていたのだが。
602: 2011/01/05(水) 03:27:41 ID:5BKomTQR(21/23)調 AAS
ハヅキはやや縦長のXの字の拘束台に、皮手錠で手首足首を拘束されて、仰向けに横たえられていた。
この手の拘束具は、通常の神殿や教会でもお仕置きのため使われることがあるが、ここでは奇妙なことに拘束台が、儀式用の荘厳な至聖所に鎮座していた。
素行の悪い修道者などを懲らしめる、いわば神殿の恥の象徴が、神殿においてもっとも尊ぶべき場所に置かれている。
悪徳神父である“教頭”も、この常識外れの趣向には面食らったようだ。
寝かせられているハヅキは、穏やかな表情だった。衣服は、奴隷たちによって通常のシスターのものに着替えさせられている。
その布の下は、とても同日に水責めと焼き責めを受けたとは思えない身体だった。アキホの治癒魔法の為せる技である。
「実はね、ハヅキは……ここに辿り着くまでに、タチの悪い淫魔に憑依されてしまったようなんだ。
“教頭”せんせいは、ハヅキを手塩にかけて育てられた、と聞いている。チャーチ教会でそんなことは起きないよね」
「淫魔……いったい何なの」
「どうやらハヅキの中には、リーベックの洞窟の淫魔が隠れていると見える。
これから彼女を折檻してその淫魔を燻り出そうと思うんだけど、神徳のたかぁくていらっしゃる“教頭”せんせいにも協力願いたくてね」
「折檻ですって! いったい何を……」
アキホは黙って蝋燭を“教頭”に押し付けた。七本に束ねた真っ赤な蝋燭だった。もう一束、同じものがアキホの手にあった。
「真っ赤な蝋燭は珍しいかい? 海の向こうでは、白や黄色よりこっちがよく使われるんだって。何でも、血で染めた赤らしいよ」
「なっ……なんて物をあたしにっ」
「冗談だって。蜜蝋に血なんかで色つけようとしたら、分離してしまうよ」
アキホは至聖所を煌々と照らす燭台のひとつから種火を貰い、自身の蝋燭束に火を灯した。“教頭”はアキホから火を貰った。
ステンドグラス越しの傾き始めた夕日と、いくつも並べられた燭台の光が、ハヅキたちを隈なく照らしていた。
「それでは、ボクの指示通りに動いてよね。まず、ボクがハヅキを起こす」
アキホは意識を失ったまま、仰向けのハヅキの首元を寛げると、鎖骨の近くに蝋燭束を近づけた。
赤蝋燭の炎が揺らめくのを、“教頭”は固唾を飲んで見守っていた。やがて、赤い雫がハヅキの白い鎖骨に落ちる。
「――――っ!」
悲鳴と言うより呼吸音に近いものが、ハヅキのくちびるの間から出てきた。
すぐに意識は覚醒したが、動くようになっていた手足をばたつかせても、皮手錠についた鎖がじゃらつくだけだった。
「……今度は、何?」
「キミは、本当にいい子だねハヅキ……これから、キミも知っている“教頭”せんせいに手伝ってもらって、
キミの中に潜んでいる淫魔を退治しようとしていたところなんだ……ねぇ、せんせい?」
「あ……う、そ、そうよ。全てアキホ神父が取り計らってくれたわ」
ハヅキは拘束されていない首を動かして、孤児だった自分を拾い、育て、売り飛ばした男の顔を見た。
その目は、特に何の感慨も映していないとアキホは見たが、“教頭”はハヅキの視線から身体を避けた。
「それじゃいくよ。まずはこの邪魔な修道服を始末しようか」
アキホは蝋燭をナイフに持ち替え、真新しい修道服を縦から真一文字に切り裂いていった。ハヅキは反射的に顔をしかめる。
これまで拷問はされてきたが、異性の前で素肌を晒す経験ははじめてだった。
しかもその異性は、婚約者だったはずの男と、今まで親代わりだと思っていた男であった。
「ボクも初めて見たけど、きれいな肌だね。肉付きも、この年頃の割にはある方かな? さすがは“教頭”せんせいの秘蔵っ子だ」
603: 2011/01/05(水) 03:28:15 ID:5BKomTQR(22/23)調 AAS
“教頭”は蝋燭の束を握り締めながら歯噛みしていた。下心があったにしろ、幼い頃からハヅキを大切にしていたのは確かだった。
才能があると知れば魔法を教え、教会という場所を生かして、世間の都合の悪い物を見せずに育ててきた。
全ては、ハヅキを自分好みの女に仕立て上げるため。それが完成間近になって、半ば強引に奪い去られた。
鼻先に繋げられている半裸の少女は、ふくらみかけの稜線は、水滴を弾く白い肌は、“教頭”のものとなるはずだった。
「ひいぃぃぁあああっ! あっ、あつっ、あああぁあアアアアっ!」
“教頭”の回想は、ハヅキの悲鳴で塗り潰された。
「“教頭”せんせい、ボクは左側から炙りだすから、キミは右側から同じように蝋燭で炙ってくれ」
アキホは切り裂かれたハヅキの衣服を捲くりあげ、腋窩に直接蝋燭の火を近づけていた。
白い肌の上を火が這い回る。火傷するほどの距離ではないが、熱さと痺れがハヅキの中にじんわりと広がっていく。
「あ、あなた、またわたしの身体に何か――」
「せーんせい、早くやってあげないと、ハヅキが淫魔に憑りつかれたままだよ?」
“教頭”はアキホの笑っていない瞳を見てしまった。軽そうな声音に、まったくそぐわないものだった。
見えない力に押さえつけられるようにして、蝋燭の火を近づける。再びハヅキが悲鳴を吐き出す。
「いいね、そうそうその調子……もっとそういう声で鳴かせるんだ」
火を左右から近づけては離し、近づけては離しを繰り返す。玉の汗が浮かんでくる。
気絶する前の鉄板での責めも火炎魔法を使っていたが、炎そのものに比べれば温度は低く、温度の変化もゆるやかだった。
一方蝋燭責めは、上から吊られたような動きをする炎に、直接ハヅキの肌を舐めさせる。より熱や痛みを感じさせる責めだった。
首筋。赤い蝋の垂れたままの鎖骨。かすかに浮いた肋骨。二の腕。ふくらはぎ。ハヅキは身体を痙攣させ、喘ぎ悶え続ける。
汗が蒸発する。皮手錠の鎖が、X字の拘束台が音を立てる。時折赤い蝋が肌に垂れて、血と紛うばかりに花開く。
アキホは“教頭”とともにしばらく火炙りを続けていたが、不意にアキホが手を止めた。
「さて、そろそろかな。淫魔ってのは、普段は上手に隠れているけど、こうやってとろとろ炙ってやると姿を現してくるんだよ」
(……よくそんな出任せを抜け抜けと言えるわね。自分が悪魔のくせに)
その台詞はアキホお気に入りの口上だった。神父の前では、誰もが罪を背負わされた仔羊だった。
もっともらしいことを言って神父を演じる愉しみは、人間たちを見て覚えた。
アキホにとっては、持ち上げてから落としていく悪魔の話術より、こちらの方が向いているかもしれない。
「例えばさ……こうしてやると、ね」
アキホは軽く指先をハヅキの肌に触れさせると、そのまま胸の曲線をなぞった。
「ひああぁあんっ」
さっきまでとは明らかに違う声が、ハヅキの喉から漏れ出てきた。反応の変化に驚愕したのは、他でもないハヅキ自身だった。
苦痛とは違う、じわじわと内奥に散乱していく感覚は、未知のものだった。
そのまま慎ましやかな膨らみの表面を軽く撫でていく。ハヅキの意思を飛び越えて、くちびるの間から切なげな息が吐かれる。
「ほうら、だんだん男に媚びるようになってきた」
白かった肌が見る間に紅潮していく。肌色と調和した薄い色の乳輪を引掻き、まだ柔らかい乳首をぎゅっと抓る。ねじる。しごく。
愛撫と言うほどの労わりはなく、責め苦というほどの強さもない。それでも徐々にハヅキの身体は感応しだした。
「はぁううっ、いやあぁ、あぅうっ、やめ、やめてっ!」
「ほうら、ずいぶん甘い声を出すようになってきた」
かつてない種の刺激に、ハヅキはびくりと引き攣る筋肉の動きを抑えられないままだった。
じくじくと下腹のあたりに溜まっていく衝動を、本能的には悟っていた。しかし、意識の上では認められなかった。
604: 2011/01/05(水) 03:29:13 ID:5BKomTQR(23/23)調 AAS
「アキホ様!」
息せき切った様子の男が、至聖所の扉を押し開けた。アキホの手下のひとりだった。アキホも、ハヅキも、“教頭”も、誰も反応しなかった。
手下は一直線にアキホに向かい、“教頭”の姿を憚ってか、小声でアキホに何事か囁いた。アキホはハヅキを弄ぶ手を止めなかった。
自分を無視したままのアキホに、手下が苛立たしさを顕わにし始めた頃、アキホがぼそりと呟いた。
「――それで? 追っ手出して捕まえたの」
「い、いえ、手分けして探させてはいるのですが、ひとりだけ見つからず……このままでは、この神殿のやっていたことが明るみに」
咄嗟に出しかけた言葉を飲み込み、アキホの問いに手下は返事をした。アキホは持っていた赤蝋燭の束をハヅキの臍の上に置いた。
いきなり受けた炎の奇襲に、ハヅキが絶叫を上げる。アキホは赤蝋燭の代わりに、愛用の杖を握った。
「それで、何か他に問題はあるの?」
「な、何か他にって」
「無いんだね」
アキホは淡々とした口調だった。ハヅキには一度も聞かせていない、平坦で感情の籠らない声だった。
次の瞬間、手下の身体は火柱になっていた。ハヅキは勿論“教頭”の耳にも、詠唱は一音節たりとも聞こえなかった。
「……お前たちの処理は、王国に任せることにしてたから。こうやってボクがいちいち燃やすのも、めんどうだしね」
アキホにとってテンプル神殿は、玩具になれるはずだったものと、その場だけの道具を放り込んでおく施設に成り下がっていた。
王国が処理を請け負ってくれるなら、わざわざ自分が片付けることはしない。そんなことより、面白い遊びが目の前にある。
「ひゃあぁぅっ、ああぅ、あああぁあっ!」
ハヅキの扇情的な叫びが、至聖所に響き渡った。もう時は黄昏で、燭台の灯りと混じって作られた蜜柑色の視界がぶれた。
敏感な場所への刺激に身をくねらせ、時に赤蝋燭の熱に喚きたてる。全ての感覚に靄がかかってしまったようだった。
「おや、“教頭”せんせい? 何を呆けているのかな……まぁいいけどね。少しでも見知った人が居れば、彼女も我に返るかなぁと思ったんだけど」
“教頭”の足元には、赤い水溜りができていた。握り締めたままの赤蝋燭から垂れた蝋が、冷えて固まったものだった。
彼は動けなかった。内心アキホに戦慄さえしていた。悪魔といえど、自分と同じ悪徳神父? 冗談ではない。
この悪魔にとって神殿は、一時的な遊び場と玩具箱でしかない。飽きてしまえば、放り捨てるだけのものだ。
「それじゃ、これ以上じゃまが入る前に、仕上げと行こうか」
“教頭”の様子を気にしていない風に、アキホはハヅキの草叢をまさぐった。無造作な手つきで、女陰を割り開く。
割れ目は汗か何か判然としない液体で、かすかに湿っていた。
「なぁっ……や、やめて、わたしは、わたしはまだっ……」
「淫魔はここで男を咥え込んで、精を搾り取るんでしょ? だから、ここを浄めてあげなきゃ終わらないんだ」
拘束された身体を、ハヅキは必死に捩った。抗う力も無いまま、アキホのやらんとするところを察してしまった。
アキホは七本の赤蝋燭の束を、火のついたまま女陰の中に差し込んだ。指すら受け入れたことの無い未開の粘膜を、熱せられた蝋燭が突き進んでいく。
人体でもっとも敏感な部分を火で炙られ、ハヅキは首を振り乱して凄惨な咆哮をばら撒いた。
赤蝋燭の雫に混じって、聖血が拘束台を濡らした。“教頭”は、ハヅキの秘所を赤蝋燭が往復する様を凝視していた。
やがてハヅキの身体から力が抜けた。心臓の脈が、皮膚を通して透けて見えそうなほど激しく打たれていた。
「誰かが大切にしていたものを奪うって、何度やっても愉しいよね?」
“教頭”は、アキホの屈託無い笑みに目を向けられなかった。赤蝋燭の火は、いつの間にか消えていた。
(その1へ続く)
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