[過去ログ] 気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第9章 (734レス)
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152: ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/05/29(木) 00:06:28 ID:NgbQR/a7(5/7)調 AAS
「では、取り付けるぞ。……んっと、意外と難しいものなんだな」

 被せやすいように、修太の下半身を左手でギュッと握り締め、右手で被せようと試みる。
くっ……なかなかスムーズにはいかないものだ。
このゴムのような弾力の先っぽに上手く被せることができれば……よし!どうにか被せたぞ!
あとは丸く収められているゴムを、全体に伸ばすように被せていけば……あれ?何故伸びないんだ?
おかしいな?使用方法はこれであっているはずなのだが……しまった!裏表逆につけているではないか!
これでは上手く伸ばすことが出来ない!これは……失敗だな。
目を瞑り、歯を食いしばって耐えている修太には悪いが、新しいコンドームでやり直しだ。
これを使っても大丈夫だとは思うが、万が一の事があってはならない。
将来的には子供は欲しいが、今は無理だ。
今の私たちに授かってしまっても、社会的にも経済的にも育てることは出来ない。
……しょ、将来的には欲しいだと?んな、何を考えている!確かに修太とは……そうなれる日が来るのだろうか?
いつかはこのような避妊具などをつけずに、修太と……SEXが出来るのだろうか?
修太を握り締め、私たちのこれからを考えてしまう。
私たちのこれからを、修太はどう考えているのだろう?ふとそう思い、修太の顔を覗いてみる。
……泣きそうな顔で歯を食いしばっていた。ゴメン、素早く取り付けるよ。 

 取り付けるのに少々苦戦はしたが、どうにか上手く取り付けることができた。
取り付けているときの修太の顔といったら……とてもカワイイものだった。
目をギュッと瞑り、手を握り締め、足の指までギュッと丸めて必死に耐えていた。
手で触られるのがそんなにも気持ちのいいものだったのか?
……次する時は、いっぱい触って気持ちよくしてあげるとしよう。

「つ、着け終わったのかぁ?」
「ふふ、終わったよ。……これで、射精しても私が妊娠することはない。
だから……その、修太が私に入ってきても大丈夫だということだ」
「そ、そっか……なぁ彩。ホントにオレなんかが相手でいいのか?今ならまだ間に合う、止めてもいいんだぞ?」

 緊張で少し震えている私を心配してか、そっと握り優しく囁いてくれた。
修太……だから君は馬鹿なんだ!

「……馬鹿。だから君は馬鹿なんだ。私がどんなに君を欲しているか考えたこともないだろう?
最近は毎日君に抱かれる想像をしている。相手が君じゃなきゃこんなことは考えない。
分かるか?私は君だからこそ、抱かれたいんだ。君だからこそ、抱いて欲しいんだ!
君だからこそ……私を奪って欲しいんだ!」

 腰を少し浮かせ、修太の性器に手を添える。

「あ、彩……お前、やっぱりバカだな。オレなんかをそこまで好きになってくれるなんて……ホントのバカだな」
「ふふ……そう、君と同じく馬鹿だよ。馬鹿同士で釣り合いが取れていると思わないかい?」

 ゆっくりと腰を下ろしていく。
すでに十分に滑っている私に修太の性器が当る。その瞬間背筋ゾクリと電流が流る。

「うお……ははは、バカ同士か。確かにオレのような男に惚れるお前はバカだよな」
「ふふ、ん……しゅうたぁ」

 修太が私の中に入ってくることが分かる。
ゆっくりと腰を下ろすたびに、私を引き裂くかのように、突き進んでくる。
今度は私が歯を食いしばってその痛みに耐えて、腰を下ろす。
ミチミチと、私の中で肉を引き裂くかのような音がしていたかと思うと、
『ブツン』と何か、輪ゴムのようなものを引き千切るような音がした。
その瞬間、さっきまでの痛みとは別次元の痛さが身体を駆け巡る。
身体を駆け巡る激痛に唇をかみ締めながら耐えて、ゆっくりと腰を下ろしていく。
そんな私を心配そうな表情で見つめてくれる。
ふふふ、そんな顔をして心配しているのかい?相変わらず君は優しいんだな。
そんな優しい修太に喜んでもらいたくて、一気に腰を沈めた。
その瞬間体中を激痛が駆け巡り、修太が私の一番奥にコツンとぶつかった。 
153: ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/05/29(木) 00:06:51 ID:zz0rDqgG(4/5)調 AAS
「い、たい……うっくぅ、しゅうたぁ、ど、どうだ?気持ちいいか?わ、私の中は気持ちいいだろうか?」
「ああ、すっげぇあったかくて、柔からくてきつくて、めちゃくちゃ気持ちいいぞ」

 ふやけたような顔で私を見つめる修太。
そ、そうか、気持ちがいいのか。私で気持ちよくなってくれて、とても嬉しいよ。
……私はこんなにも痛いのに、何故男は痛くないのだろう?これは不公平ではないのか?
 
「そ、そうか、それはよかったよ。で、では、いっ、痛ぅ……う、動くぞ」

 やっとの思いで、修太を全て受け入れることが出来た。
ズキズキと、鋭い痛みが全身を駆け巡ってはいるが、心の充実感の方が勝っている。
やっと……やっと修太とSEXができた。やっと一つになることが出来た。
そう思うだけで、痛さなど気にならなくなってしまう……とよかったのだが。
現実問題、この痛さではこれ以上動くこともままならないと思う。
……ダメだ!こんな痛みに負けているようではいけない!
最後まで修太には気持ちよくなってもらわねば、何の為にラブホテルで部屋を借りてまでSEXをしているんだ!
意を決して腰を浮かせ、動き出そうとしたのだが……修太に下から抱きしめられた。

「……彩、もう動かなくていいぞ。オレ、このままでも十分気持ちいいぞ」
「し、しかしだな、SEXというものは、女性の膣に男性のペニスを入れてピストン運動をすることにより、
お互いの粘膜を刺激し、快楽を得るものだ。入れただけでは気持ちいいはずはない。
私に気を使ってくれるのは嬉しいが……君が気持ちよくならなければ、私は嬉しくないんだ」
「彩……ははは、お前、やっぱりバカだな」

 私を抱きしめながら、耳元で囁く修太。
バ、バカだと?こんなにも痛い思いをしている私に対して……何故バカなんて酷い事を言うのだ!

「んな?き、君の為にこんなにも痛い思いをしているのに、バカだと?」
「だからバカなんだよ。オレ、気持ちいいのは好きだけどさ、お前の痛がる顔を見たいわけじゃないぞ?
オレ、お前が痛がってるのに気持ちいいからって喜ぶようなバカじゃない。オレはそこまでバカじゃない」

 私を気遣ってくれる修太の優しさに、涙が溢れてくる。
君は……本当にバカだな!私の事なんか気にせず、気持ちよくなってくれればいいのに。

「し、しゅうたぁ……グスッ、それでも私は君に気持ちよくなって欲しいんだ」
「だったらさ、このままでキスしてくれよ。
今のままでも十分に気持ちいいんだからさ、キスしながらだともっと気持ちいいと思うんだ。
お前もキス、大好きだろ?」
「そ、それは……確かに私は君とのキスは大好きだ。
しかしだな、そんな事で君が気持ちよくなるとは思えな……んん!」

 強く抱きしめられてのキス。修太の舌が私を激しく犯す。
舌を絡め取り、唾液を送り込んでくるだけではなく、口腔内を好き勝手に暴れ周り、歯や歯茎までもが舌で犯される。
唾液を飲む度に下半身が頭がおかしくなり、舌が私を犯す度に繋がった下半身が熱くなる。
上半身、下半身共に修太に犯されている。その事実が、私を狂わせた。

「ん、んん!しゅ、たぁ。ん、ちゅ、ちゅちゅ、すきぃ、しゅうたぁすきぃ」
「ん、んぷ、ちょ、ま、待て彩、ちょっと……んぷ」
「しゅうたぁ、しゅうたぁ!スキ、しゅうたぁ〜!」
「う、うあ……あ、彩、オレ、もうイク、出る……う、おおおお〜!」

 激しい修太のキスのせいで、私の何かに火が付いたようだ。
勝手に上下に動き出す下半身。まるで別の生き物のように止まらなくなった、修太を絡め取る舌。
痛さなど既に感じなくなってしまい、一心不乱に腰を振り、深いキスを続ける。
狂ってしまった私は、満足するまでキスを続け、腰を振り続ける。
途中、射精して使えなくなったコンドームを何回も取り替えて、修太を貪ってしまった私。
……ゴメン、その、なんだ……き、君がいきなりキスをしてくるからいけないんだ。
私を狂わせた修太が悪い。……延長料金まで払わせてしまったのは、本当に申し訳なかった。 
154: ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/05/29(木) 00:07:13 ID:zz0rDqgG(5/5)調 AAS
「島津っち、おっはよ〜!ついに結城とえっちしたんだ?」
「いやぁ〜めでたいねぇ。今日の放課後さ、島津っちのおめでとう記念で何か食べに行かない?」
「お?いいねぇ、お祝いだからさ、美味しいもの食べに行こうよ!」

 結城との初めてのSEXを無事に終えた次の日の朝、何故か私達がSEXをしたと知っている友人達に囲まれた。
……無事に終えたと言えるのだろうか?
結城はヘロヘロになって帰って行ったし、私はママにブラジャーが千切れてしまっていたことを突っ込まれ、
結城とのSEXがばれてしまった。
ブラジャーが千切れてしまったことには、正座をさせられ、お説教をされてしまった。
いくら消耗品とはいえ、物は大事にしなきゃいけない、と。
……正論だ。次にSEXする時は、キチンと外してからすることにしよう。
しかしSEXについては、よく避妊をしたねと褒めてくれた。
私がSEXをしたと知ってしまったパパは、バットを持って結城の家に殴りこもうとしていた。
……パパ、私のことを心配してくれるのは嬉しいのだが、
結城を『殺す』だとか、『死んでしまえ!』などとは言わないでほしいな。
そんな物騒なことを言うからママに叱られてしまうんだ。
それにしても何故友人達は私と結城がSEXしたと知っているのだ?

「ちょ、ちょっと待ってほしい。何故結城とSEXしたことを知っているのだ?
まだママとパパにしか知られていないというのに……もしかして結城に聞いたのか?」

 私よりも先に結城が教えたのか?
まぁいい、いろいろな事を教えてくれた友人達には、結果報告をしなければと考えていたからな。
でも教えたのなら、一言言ってほしかったな。……どうせなら2人で一緒に報告をしたかったな。

「違うよ。結城、まだ来てないじゃん。島津っちを見てて、えっちしちゃったんだって思ったの」
「そうそう。だって島津っち、歩き方すっごくヘンなんだよ?」
「がに股っぽい歩きかたしてるしね〜。まだ中に入ってるみたいな感じなのかな?」 

 ヘンな歩き方?そ、そうなのか?私はヘンな歩き方をしていたのか?
確かにまだアソコには結城が入っているような違和感を感じている。
あれだけ求め合ってしまったんだ、まだ入っているように感じているのも、仕方がないことだと思う。
だ、だからなのか?だからヘンな歩き方をしているのか?

「そうか〜。島津っちも大人になっちゃったんだねぇ〜」
「結城に喰われちゃったのかぁ〜。おめでたいような、残念なような。う〜ん、微妙な気がするねぇ」
「く、喰わられた?喰われたとはいったいどういう意味なのだろうか?」
「ん?それはね、島津っちが結城にパクリと食べられちゃったって意味だよ」
「結城に食べられた?何を言っているのか、意味がよく分からな……」
「おはよ〜っす。なぁお前ら、朝からなに騒いでるんだ?」
「あ、おはよー。昨日ね、島津っちがあんたに食べられちゃったって話をしてたの。
こんな綺麗な彼女とえっちできるなんて、この幸せ者!」
「ねぇねぇ、どうだった?島津っちの味は堪能した?天国だった?」

 友人達との会話に割り込んできた男の声。どうやら結城が来たみたいだ。
友人達は標的を私から結城に変えたのか、SEXの事を話しかけている。
そんな友人達の勢いに戸惑っている結城。
私は結城とSEXした事を隠すつもりはない。むしろ大好きな人と初めてのSEXが出来たんだ、誇らしいくらいだ。
結城もきっとそう考えているだろう。しかし詳しく話すのは勘弁してほしい。
あれは私たち2人の大事な秘密なんだ。結城もそう思うだろう?
……何故戸惑っているような、ヘンな顔をしている?
155: ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/05/29(木) 00:07:34 ID:NgbQR/a7(6/7)調 AAS
「食べた?いや、昨日のアレは、どちらかというと、オレが食べられたぞ?」
「へ?結城が食べられたってどういうこと?」
「それがさ、オレ、島津に何度も無理やり立たされてさ、あれは天国というか、地獄……」
「余計なことは喋るな!フン!」
「へ?……へぶん!」

 フゥ〜フゥ〜フゥ〜……だからお前はバカなんだ!
何故二人だけの大事なことを人に話そうとする!そんなバカは蹴り飛ばされて当たり前だ!

「お?今日の下着はセクシーな黒色なんだ?」
「ということは〜……今日もするつもりかな?」
「んな?な、なな、何を言っているんだ?べ、べべべつにホテルに行こうなんてこれっぽっちも考えていない!」
「おおお〜!島津っちが盛ってるよ!結城に餓えちゃってるよ!」
「島津っちって結構大胆だよね?人は見た目じゃ分かんないねぇ」
「こ、この下着はアレだ、結城が私の下着を引き千切ったから仕方なく着てきたんだ!」
「うおお〜!引き千切られたんだ?で、その後で結城を食べちゃったんだよね?
う〜ん、島津っちのえっちって、野生的なえっちなんだねぇ〜」
「ますます人は見た目じゃ分かんないねぇ〜」

 ぐ、ぐぅぅ……朝から教室の真ん中で何故このようにからかわれなければいけない?
これも全部、結城のせいだ!…………ゆ、結城?どうした?何故泡を吹いている?

「ゆ、結城?結城どうしたんだ?何故痙攣している?冗談はよせ、起きるんだ!
……ダ、ダメだ!死ぬな結城!私を一人にしないでくれ〜!」
「う〜ん、この漫才もちょっとマンネリだねぇ。新しいオチが欲しいところだね」
「そうだねぇ〜。でもさ、本人達はいたって真剣だってのが面白いよね?」  

 結城、起きろ!起きるんだ!私を置いてイカないでくれ〜!
156: ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/05/29(木) 00:08:26 ID:NgbQR/a7(7/7)調 AAS
今回は以上です。

今気がついたのですが、タイトルを入れ忘れたことをお詫びします。
157: 2008/05/29(木) 00:27:44 ID:EzKtTL61(1)調 AAS
たっぷりと堪能させていただきました。
GJ!!
158: 2008/05/29(木) 02:12:31 ID:DntC5XG0(1)調 AAS
GJ!!!!
159: 2008/05/29(木) 04:45:54 ID:yIrfHWOO(1)調 AAS
島津っちは実はアホの子だったんだなw

可愛い可愛い。二人とも愛しいよー!GJ!
160: 2008/05/31(土) 13:11:31 ID:vg/VK9cC(1)調 AAS
全く、このバカップルめw
未来永劫幸せになりやがれっ!!

てことでGJをさらに進呈♪
161: 2008/05/31(土) 14:13:26 ID:5UU8/Pdd(1)調 AAS
GJ!
へぶんワロタwww
162: 2008/06/03(火) 22:03:40 ID:ttHAL73Q(1)調 AAS

163: 2008/06/07(土) 10:08:39 ID:IpSFONQL(1)調 AAS
違和感を感じてしまう島津さんは確かにアホの子だww
アホの子GJ!
164
(1): 2008/06/08(日) 22:47:22 ID:3Uo4laR4(1)調 AAS
そういえば最初のほうは一発殴っただけで先生に呼び出されてたわけだが
最近はどうなんだろう
165: 2008/06/08(日) 22:52:26 ID:h+fkBjFT(1)調 AAS
>>164
もう見慣れてしまったんだろww
166: 2008/06/14(土) 13:15:04 ID:h3MJHhxI(1)調 AAS
ho
167: 2008/06/18(水) 10:15:24 ID:hexBuOIe(1)調 AAS
保守
168: 2008/06/20(金) 19:18:12 ID:mJAAnmoj(1)調 AAS
保守
169: 2008/06/29(日) 12:52:12 ID:UeCkQHlf(1)調 AAS

170: 2008/06/29(日) 15:19:05 ID:1T5L8kGs(1)調 AAS
新作の投稿がないと過疎るとはなんと分かりやすいスレだ

ここは1つ強気っ娘のよさについて語りあって新作がくるまでをしのごうではないか
俺は新参だからあまり語れるようなことないんだけども
171: ブギーマン ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 20:21:28 ID:dQvTDuR3(1/10)調 AAS
見知らぬ女を抱いた。抱きたかったから抱いた。侘しいから抱いた。人肌恋しかったから抱いた。
女の裸体を抱き寄せ、互いの唇を重ねる。毛穴から汗がにじみ出た。
大量のアルコールがもたらす酩酊感が意識を遷移させる。女の乳房に顔を埋めた。女の体臭に男根が反応する。
むせ返るような匂いだ。汗と愛液とザーメンが熱で溶けて混じりあう。生酸っぱい臭気を鼻腔いっぱいに嗅いだ。
臭気が濃密さを増していく。そこから先のことは良く覚えていない。

今朝早く、お前がドアを叩いたときに
今朝早く、お前がドアを叩いたときに
おれは言った、「やあ、悪魔。出かける時間だな」

おれと悪魔は並んで歩いた
おれと悪魔は並んで歩いた
おれの女を気のすむまでぶちのめしたい
 
あいつはおれをつけまわす理由が自分でわかっちゃいない
(語り)ベイビー、お前の態度は不実でそっけないな
あいつはおれをつけまわす理由が自分でわかっちゃいない
きっと地面の奥深くに潜んでいるあの悪霊のせいだろうさ

おれの身体をハイウェイのそばに埋めてもいいぜ
(語り)ベイビー、死んだあとどこに埋められるかなんておれにはどうでもいいんだよ
おれの身体をハイウェイのそばに埋めてもいいぜ
そうすりゃおれの悪霊がグレイハウンドバスに乗れるからな

          ──ロバート・ジョンソン『俺と悪魔と』──
172: ブギーマン ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 20:26:32 ID:dQvTDuR3(2/10)調 AAS
フィルターだけになったキャメルを地面に落とし、踏みつける。
夜風にうだるような熱気が孕んだ。蒸し暑い──生温い風が高津英二の首筋を撫でた。
こめかみから浮き出たぬるい汗が頬を伝う。額から吹き出す汗の雫が熱気で蒸発した。
鈍色に光るマンホール、剥きだしのコールタールに唾を吐いた。
地面にべっとりと付着した乾いたガムと潰れたタバコの吸殻が視界に飛び込む。

携帯画面を見た。時刻は午前二時八分。ギターの弦を垂らしたような三日月を黙って睨む。
高津はA&Gのシルバーリングを舌でなぞった。苦い。純粋な銀の味だ。
今夜の戦利品だ。髑髏を象った銀モノの指輪──ドレッドヘアの餓鬼からぶん取ってやった。
こんなものでも売れば酒代くらいにはなる。
あるいはガンジャの二グラムでも拝めるかもしれない。
寂れた深夜の渋谷センター街の路上をうろつきながら、高津はジョニ赤のスキットルボトルを呷った。
 
酒がざらつく咽喉を潤す。勢い良く流れるアルコールが食道を灼いた。
胃袋がアルコールを吸収する。筋や健が強張った。
ギャングもヤクの売人も渋谷から少なくなって久しい。うざったいSCGPのせいだ。
今ではほとんどが六本木に溜まっている。額から流れる一筋の汗を高津は手の甲で拭った。
道玄坂を横切り、わざとアスファルトを踏みつけ、踵を鳴らしながら歩く。

退屈だった。退屈は罪だ。退屈はそれ自体が罪だ。退屈なのに何もする気が起きない。
星一つない夜空を見上げた。今夜は星空も自分の寝ぐらで休んでいるのだろう。
173: 悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 20:32:22 ID:dQvTDuR3(3/10)調 AAS
今日は家に帰って静かに酒でも飲むかと一人ごち、高津は自宅のアパートに足を向けた。
人影の途絶えた路地。静寂な空間に軋む己の骨音をブルースハープの代わりに聴きながら。
*      *     *      *     *      *     *      *
苗字は母方のもので高津は今でもそれを名乗っている。時代おくれのブルースを聴き、高津がジンを口に含む。

時折、高津は自分の人生に嫌気が差してたまらなくなる事があった。
人生に嫌気が差すとジンを浴びるように飲む。
すると気分は更に憂鬱になり、やりきれなくなる。
憂鬱な気分に落ち込むと死にたくなる。死にたくなると見境がつかなくなった。
ブルースがついて回る状態になるのだ。
誰彼かまわず噛み付き、高津は喧嘩を吹っかけて回った。
いつしかヤクザも与太公も高津を避けるようになり、陰で『気狂いピエロ』と呼んでは蛇蝎のごとく嫌悪した。

十七年間という人生の記憶をたぐり寄せても良い思い出という奴は何一つ浮かんではこない。
高津の人生はやりきれなさの連続だった。だからこそ高津は酒とブルースをこよなく愛する。
大久保にある安普請のアパートで物心つく前から高津は母親と二人きりで生活していた。
赤錆に覆われたトタン板作りの吹けば飛ぶような安アパートだ。
父親はいなかった。母親に聞いてみようとも思わなかった。
母親の売春行為がばれて生活保護を打ち切られてしまい、ボロの服を着て腹を空かせていたのだけは覚えている。

湿り気のせいでぶよぶよに腐って黒く変色した古畳の上で高津はいつも震えていた。
母親と客とのセックスの様子と喘ぎ声を聴きながら、幼い頃の高津は肩を潜めて震えていた。
破れた障子の向こう側で母と客のシルエットが映る。生臭い匂いが鼻をついた。
愛液と精液の入り交ざった臭気だ。吐き気がした。生唾を飲み込んだ。朝日が訪れるまで、高津は耳を塞いだ。
174: 悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 21:48:11 ID:dQvTDuR3(4/10)調 AAS
台所から漂う生ゴミの異臭、腐汁をしたたらせた鶏肉を旨そうについばむ太ったチャバネゴキブリ、
茶色い触覚を震わせて生ゴミを漁るチャバネゴキブリの群れ。眼球が白濁したネズミの死骸。
高津はいつも怯えていた。痛みに雑言に苦痛に怯えていた。石ころになれればどれだけ幸せだったろうか。
秋代は鬱憤晴らしに実の我が子をいたぶった。
お前を見ているとイライラしてくるッ、汚い子だね、あっちへおいきッ、

罵声を浴びせられた。灰皿代わりにタバコの火を押し付けられた。顔が気に入らないと怒鳴られ、横面を拳で打たれた。
ペニスを針で突き刺され、小指をへし折られた。来る日も来る日も、苛め抜かれ続け、高津の精神は限界だった。
だから殺した。誰を。母親を。どうやって。金属バッドで。
寝込みを襲い、今までの怒りをぶつけるかのように、高津は何度も秋代の身体目掛けてバッドを振り下ろした。
激痛で涙と鼻水まみれになった秋代の顔面──額にバッドを叩き込んだ。

額がひっしゃげ、バッドが頭蓋骨にめり込む感触。生まれて始めて体感した衝撃に血管が凝固した。
赤い網膜を張り付かせた眼球が、視神経ごと飛び出したあの光景は今でもはっきりと記憶している。

高津の最初の殺人だ。この時、十一歳だった高津は児童自立支援施設に送られた。
親殺しのレッテルを貼られて。
二度目の殺人は忘れもしない十四歳の七夕祭り──施設を抜け出した高津は喧嘩になった相手のひとりを刺殺した。
使用した凶器は砕けたビール瓶。
喧嘩の最中に割れたビール瓶の尖端が、誤って相手に突き刺さってしまった。

殺す気は無かったという高津の言い分が家庭裁判所で通り、
初等少年院に送致後、一年ほどで出所した。
175: 悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 21:53:08 ID:dQvTDuR3(5/10)調 AAS
十五歳で娑婆に舞い戻った高津を引き取ったのは自分の父親だと名乗る秋城英一という男だった。
己に流れる血──高津は男が自分の本当の父親であることを本能で悟った。
英二という自分の名前も恐らくこの男から取ったものなのだろう。
感慨などは全く湧かなかった。ただ、悟ったというだけの話だ。

英一の息子だから英二。安直な名前の付け方だ。
松涛にある自宅内の敷地は四百坪ほどの広さがあり、かなりの金を持っている事だけはわかった。
三階建ての奢侈な住宅に通されたとき、高津は腹の底から憎悪が沸々と煮えたぎるのも感じた。
この家と比べてみれば、自分と秋代の住んでいたアパートはブタ小屋か公衆便所よりひどい。
男の妻は二年前に他界し、今では娘とふたり暮らしだとのことだ。だからどうしたというのだろうか。

そもそも何故、こいつは俺を引き取ったのだろうか。それが一番の疑問だった。
高津にとって、親子の愛情だとか血の絆という奴は何の意味も持たない。
実の母から虐げられ、実の母を殺した少年には何もかも虚しいだけだ。
『お父さん、お帰り。そいつ誰よ?』
階段から降りてきた少女が高津を指差す。そいつ誰よとはご挨拶だ。

この女は俺にぶちのめされたいのか。それとも殺して欲しいのか。
高津のガラス球のように光る冷たく鋭利な瞳が少女を突き刺した。
少女の相貌が青白く退色していく。その視線に英一は気づかず、少女に高津を紹介した。
間抜けな男だ。隙だらけの間が抜けた男だ。
『未優、弟に向かってそいつという言葉があるか。今日から私達は英二と三人で暮らすんだぞ』
『あたし、そんな奴と一緒に暮らすなんて真っ平ごめんよッ、絶対にいやだからねッッ!』
未優が下がってきた階段を駆け上り、自室へ引きこもる。
176: 悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 21:58:29 ID:dQvTDuR3(6/10)調 AAS
別にこちらから住まわせてくれだとか引き取ってくれと言った覚えはない。
最初からひとりで生きていくつもりだった。
盗みでもタタキ(強盗)でも何でもやって暮らしていくつもりだった。
『あんたの娘は俺の事がお気に召さないようだよ。余計ないざこざは俺もごめんこうむるんでね。
俺を大久保まで送っていってくれよ。あとはひとりでなんとかするさ』
英一が少し慌てながら振り返った。高津に愛想笑いを浮かべる。

『まあ、そういわないでくれ。未優もいきなりの事で少し動転しているんだよ』
『まさか、話してなかったのか』
『いや……前々から少し話してはいたんだが……』
『どっちにしてもこうも毛嫌いされちゃ話し合う余地はないだろうさ。
誰が好き好んで人殺しなんかと暮らしたいと思うんだ。あんたの娘の言い分ももっともだろうよ。
それからな、俺の事は高津と呼べ。英二なんぞと名前で呼ばれるのは妙に馴れ馴れしくて頂けないからな』
なんとか英一が食い下がって高津を引き止め、一晩だけでもと部屋に案内した。

高津は文字通り、一晩だけ泊まり、その日の内に自分の居所を探してきた。
高級住宅など高津の肌にはどうしても合わなかったからだ。
あれからもう二年が経つ。なんとか塀の中に放り込まれるのをやり過ごしてきた。
あれほど自分を毛嫌いしていた未優は今ではなんだかんだと、つきまとって離れようとしない。
ブルースのようにつきまとって、いくらはなれようとしても纏わりついてくる。
高津はひっしゃげたキャメルのパッケージから、タバコを一本取り出して、口にくわえた。
ギターを手に取る。ピックの代わりに十円玉を使って無造作に鳴らした。

気が狂いそうな気持ちだぜ、自殺でもしなきゃおさまりがつきそうにない気分だぜ
お前を見るたびに、俺の心の奥がどうにかなっちまいそうなんだよ

*      *     *      *     *      *     *      *
未優は窓辺から差し込む光を頬に感じ取り、目を覚ました。時計を見遣る。

ベッドの上で間延びすると部屋着を脱いで軽いストレッチを行った。
オリーブグリーンのTシャツにリーバイスのジーンズに着替える。。ラフな服装だ。
今日は休校日だった。
英二はまだ眠っているのだろうか。テレビをつけてリモコンを操作する。
ブラウン管から流れるニュース──軽薄そうなコメンテーターやら、
我が物顔の太った女評論家やらが大声でごちゃごちゃと何かをまくしてていた。
177: 悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 22:14:42 ID:dQvTDuR3(7/10)調 AAS
チンピラに追い討ちをかける英二。顔面を殴った。殴った。殴った。殴った。殴った。
両腕を交差させ、何度もフルスイングでチンピラを殴り飛ばす弟は、唇を引きつらせて微かに笑っていた。
顔皮が鮫にでも食いちぎられたかのように歪に裂けた。飛沫あげた血が英二の襟元に付着する。
生まれて初めて見る光景だった。暴力。子供同士の喧嘩ではない。本物の暴力だ。
鮮血が飛び散る圧倒的な暴力に未優は茫然自失した。

英二が懐からアイスピックを取り出した刹那、未優は我に返った。
『お願いだから止めてよッ、殺す気なのッ!』
英二の後ろ首を羽交い絞めにして、懸命に取り押さえる。肘で未優を押しのけると馬乗りになった英二が立ち上がった。
血を滴らせた拳を舌で舐める。英二は未優に尋ねた。
『酒もってないか?』
未優は震えたまま、首を横に振るだけだった。
*      *     *      *     *      *     *      *
重く疲れた頭をもたげ、高津がバーボンのボトルに口をつける。十三センチのジャックナイフを掌で弄んだ。
ジッポーのヤスリを親指でこする。キャメルに火をつけた。濃厚な紫煙がゆるやかに立ち昇る。

玄関ドアを叩く音──こんな朝っぱらから誰だ。また、未優が尋ねてきたのだろう。
「入りたきゃ勝手に入りなよ。鍵はかけてないからな」
玄関ドアが赤く錆びついた音を立てて開いた。未優が顔を覗かせる。
相変わらずいつ来ても薄暗い部屋だ。日当たりが悪いせいもあるのだろう。
陰鬱で湿っぽく狭い部屋だった。この部屋の掃除など一度もしたことがないのだろう。

「何にもない部屋ね。狭いし不潔だし、よくこんなとこで暮らせるわよね」
「嫌なら来るんじゃねえよ。一体俺に何のようだ」
空気が淀んでいる。アルコールの匂いが未優の鼻腔粘膜を刺激した。高津がわざとらしく下品にゲップを漏らす。
「こんな朝からお酒飲んで身体悪くするわよ」
「朝飯を飲んで何が悪いんだ」

「馬鹿英二、朝ごはんは飲んじゃなくて食べなさいよ」
「口の減らねえ女だな。そんなんだからいつまで経っても男ができねえんだよ」
「そ、そんな事あんたに言われる筋合いなんてないわよ!」
未優が玄関の電気をつけて、部屋の奥へあがった。酒瓶が所かしこに転がっている。
「何か食べにつれていってあげるわ」
「悪いがそんな気分じゃねえんだ。夕べの酒がまだ残っててな」

「とにかく、お酒飲むのやめなさいよ」
「てめえとシラフでなんざ喋れるか。いいから俺の事はかまうんじゃねえよ。
親父殿から言われたとおり、学校にゃ真面目に通ってるんだからな。金蔓は大事にしねえとな」
178: 悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 22:17:25 ID:dQvTDuR3(8/10)調 AAS
間違えた。修正。

気になるようなニュースはない。未優はすぐさまテレビのスイッチを切った。
英二に会いたい。弟に会いたい。会いたいが何を話せばいいのだろう。
本心ではない。傷つけたくもない。英二が好きだ。
だが、顔を合わせればいつもこの口から出る心ない言葉は辛辣で無神経で、英二のハートを打ち砕く。
英二は私に苛立つ。今にも殴り倒しそうな剣幕で怒鳴る。
ウイスキーボトルを壁に叩きつけ、失せろと怒鳴る。それでもかまわない。
私は英二に命と心を救われた。一度ではない。二度も救われた。
私は英二が好きだ。愛しているのだ。だから、殺されてもかまわない。

おれと悪魔は並んで歩いた
おれと悪魔は並んで歩いた
おれの女を気のすむまでぶちのめしたい
あいつはおれをつけまわす理由が自分でわかっちゃいない

 
未優は無意識に口ずさんでいた。いつも英二が歌うブルースの歌詞を、口ずさんでいた。
アルコールとニコチンで爛れた咽喉仏を搾り出し、中古の古ぼけたギターを弾いている英二の姿が胸裏に浮かぶ。
不機嫌そうに顔を歪め、あらゆる感情をブルースにぶつける英二。
それは怒りであり、哀しみであり、絶望であり、諦観だ。そっけない英二の態度。
それでも会いたくてたまらなかった。あの悪魔に。

会いたい理由ならわかっているはずだ。それともわかったと思い込んでいるだけなのか。
英二は酒とブルースに依存し、中毒している。それは一歩ずつ、確実に死へと近づいている証拠だ。
高津は間違いなくアルコール中毒者で気が狂っている。あの時、英二が垣間見せた狂気と暴力への衝動。
未優に絡んだチンピラの哀れな末路。突発的であまりにも鮮烈だった。

ヴェルサーチのサングラスをかけたオールバックのチンピラ──英二が脇腹に拳をめり込ませた。
蹲るチンピラの顎目掛けて爪先を放つ。低く鈍い音が立った。
衝撃を受けたチンピラの顎が横に奇妙にねじくれる。
倒れるチンピラ──馬乗りになった。男は地元の人間ではなかったのだろう。
出なければ英二に対してあんな無謀な真似はしなかったはずだ。

チンピラに追い討ちをかける英二。顔面を殴った。殴った。殴った。殴った。殴った。
両腕を交差させ、何度もフルスイングでチンピラを殴り飛ばす弟は、唇を引きつらせて微かに笑っていた。
顔皮が鮫にでも食いちぎられたかのように歪に裂けた。飛沫あげた血が英二の襟元に付着する。
生まれて初めて見る光景だった。暴力。子供同士の喧嘩ではない。本物の暴力だ。
鮮血が飛び散る圧倒的な暴力に未優は茫然自失した。

英二が懐からアイスピックを取り出した刹那、未優は我に返った。
『お願いだから止めてよッ、殺す気なのッ!』
英二の後ろ首を羽交い絞めにして、懸命に取り押さえる。肘で未優を押しのけると馬乗りになった英二が立ち上がった。
血を滴らせた拳を舌で舐める。英二は未優に尋ねた。
『酒もってないか?』
未優は震えたまま、首を横に振るだけだった。
179: 悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 22:25:20 ID:dQvTDuR3(9/10)調 AAS
*      *     *      *     *      *     *      *
重く疲れた頭をもたげ、高津がバーボンのボトルに口をつける。十三センチのジャックナイフを掌で弄んだ。
ジッポーのヤスリを親指でこする。キャメルに火をつけた。濃厚な紫煙がゆるやかに立ち昇る。

玄関ドアを叩く音──こんな朝っぱらから誰だ。また、未優が尋ねてきたのだろう。
「入りたきゃ勝手に入りなよ。鍵はかけてないからな」
玄関ドアが赤く錆びついた音を立てて開いた。未優が顔を覗かせる。
相変わらずいつ来ても薄暗い部屋だ。日当たりが悪いせいもあるのだろう。
陰鬱で湿っぽく狭い部屋だった。この部屋の掃除など一度もしたことがないのだろう。

「何にもない部屋ね。狭いし不潔だし、よくこんなとこで暮らせるわよね」
「嫌なら来るんじゃねえよ。一体俺に何のようだ」
空気が淀んでいる。アルコールの匂いが未優の鼻腔粘膜を刺激した。高津がわざとらしく下品にゲップを漏らす。
「こんな朝からお酒飲んで身体悪くするわよ」
「朝飯を飲んで何が悪いんだ」

「馬鹿英二、朝ごはんは飲んじゃなくて食べなさいよ」
「口の減らねえ女だな。そんなんだからいつまで経っても男ができねえんだよ」
「そ、そんな事あんたに言われる筋合いなんてないわよ!」
未優が玄関の電気をつけて、部屋の奥へあがった。酒瓶が所かしこに転がっている。
「何か食べにつれていってあげるわ」
「悪いがそんな気分じゃねえんだ。夕べの酒がまだ残っててな」

「とにかく、お酒飲むのやめなさいよ」
「てめえとシラフでなんざ喋れるか。いいから俺の事はかまうんじゃねえよ。
親父殿から言われたとおり、学校にゃ真面目に通ってるんだからな。金蔓は大事にしねえとな」1
バーボンを飲み干すと空になったボトルを無造作に放った。
ボトルが別のボトルとぶつかり、がつんという鈍い音を鳴らした。高津が新しいジンのボトルを取り出す。
「用が無いなら出て行ってくれ。俺はひとりになりたいんだ」

「それよりもどこかに出かけましょうよ。休みの日くらいこんな所にいるのは勿体無いじゃない」
「てめえはちゃんと人の話を聞いたことがあるのか」
高津の言葉を無視して、未優が高津の脇を掴んだ。
*      *     *      *     *      *     *      *
井の頭公園をふたりで散歩し、通りの喫茶店で紅茶の飲み比べをして歩いた。
とはいっても飲むのは未優だけで英二は紅茶に口をつけようとしない。英二は紅茶より酒のほうがいいのだ。
始終無言の英二はどこか遠くを見つめていた。

私のことを嫌いにならないでよ、英二、お願いだから嫌いにならないでよ。
そっと未優が英二の身体に肩を寄せ付けた。うざったそうに英二が未優の身体を押しのける。
「暑苦しいぞ、ベタベタ触るんじゃねえよ」
「別にいいじゃない。姉弟なんだし」
180: 悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. 2008/06/30(月) 22:33:59 ID:dQvTDuR3(10/10)調 AAS
「お前の頭はめでてえな」
渋谷区神南にある「たばこと塩の博物館」にも足を運ぶ。休日だというのに人影はまばらだ。百円の入場料を払う。

タバコの葉とパイプと興味を引かれたのか、真剣な顔つきで英二は熱心に眺めていた。特にタバコの歴史が気に入ったようだ。
「タバコってのはマヤ文化の頃からあったんだな。文字のない時代から吸われ続けていたのか。タバコの神のレリーフは気に入った」
「色んなパイプもあって面白かったわ。ねえ、火打ち石セット買ってみる?」
「そんなもん一体どうする気だよ」
「英二がいらないならお父さんにでもプレゼントするわ」
「そいつはいい考えだ」
*      *     *      *     *      *     *      *
背の高いスツールに腰を下ろし、高津がカウンターに置かれたハイネケンの小瓶を掴む。
ロフトを改造しただけのシンプルな店だ。心地よい。しかめ面した未優が隣の席でぶつぶつと文句を垂れている。
「この店が嫌なら帰れよ」
「べ、別に嫌ってわけじゃないわよッ」
「それならなんでさっきから文句を言うんだ」
ノンアルコールカクテルを美味くも無さそうに飲む未優を横目で観察しながら、高津がビールに口をつけた。
「少し待ってろ。今から面白いもんが見られるからよ。ここはただのバーじゃない。ショー・バーなんだ。
客の飛び入り参加OKのな。お、どうやら始まるみてえだぞ」
小さなステージを指差して、高津が未優を促す。誘われるように未優の顔が真後ろにあるステージへと振り返った。
マイクを握った二十代前半の端麗な容貌をした女がステージに立っている。
黒いベルベッドのように艶やかな、女のセミロングの髪が揺れた。
ドライアイスのスモッグと、客達の吐き出すタバコの煙に反射するライトの光。女は爪先で軽くリズムを取った。
女が唇をマイクに近づけ、歌いだす。女の持ち歌はキャブ・キャロウェイの『Minnie The Moocher』だ。

宿無しで尻軽女だったミニーの話をしよう ベリーダンサーの下っ端で、 
がさつで酷い女だったが、心はクジラみたいにでかかった
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー ヒディ ヒディ ヒディ ヒー 

くねる腰に合わせて蛇行しながら女がスキャットを巧みに発する。客の視線は女の腰と尻に釘付けだった。
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー ヒディ ヒディ ヒディ ヒー 
何人かの客達が女につられてスキャットする。

ミニーはスモーキーってジャンキーの世話をしてやっていた 
ミニーはそいつを愛してたが、男はヘロインにイカレてた。
野郎はミニーをチャイナ・タウンに連れてって、ヘロインをミニーにキック(ヤクを打つ)しやがったのさ
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー ヒディ ヒディ ヒディ ヒー 
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー ヒディ ヒディ ヒディ ヒー
ハイディ ハイディ ホー ハイディ ハイディ ホー
ミニーはスウェーデンの王様を夢見てたよ 王様はミニーの欲しいものをなんだってくれるから
純金と鉄で建てた家も、ダイヤモンドの車輪をつけたプラチナの車も
だけど死んじまった哀れなミン、もう死んじまったミン、ああ、ミニー・ミン!

高津は女に見覚えがあった。ああ、そうだ。二週間前に円山町のラブホテルで抱いた女だ。
ほくそえみながら、高津はビール瓶を掌でまわした。
181: 2008/06/30(月) 23:03:42 ID:mktAg7O3(1)調 AAS
支援要る?
182: 2008/07/03(木) 10:24:41 ID:SjrTJAkj(1)調 AAS
なんかハードボイルドな感じですね。続きに期待です。 
ただお願いなんですが、投下終了時になにか投下が終わったことが分かるレスをしていただけるとありがたいです。
183: 2008/07/03(木) 11:40:04 ID:s2VrPZKP(1)調 AAS
この人は続き書かないから、待つだけ無駄だよ。

そして半年くらい放置した自作のことは、きれいに忘れる。
184: 2008/07/04(金) 17:28:08 ID:qP8g4al3(1)調 AAS
まあまあ、そういうこと言ってちゃ余計続き創り難くなるだろうから黙っていようぜ
185
(2): 2008/07/06(日) 01:10:55 ID:mN0T37sb(1)調 AAS
「ミニー・ザ・ムーチャー」はジャズ板でもわかる奴が少数、
ミステリ板のハードボイルドスレで知ったかする奴が若干という類の曲だから、小道具としてはちと……
キャブ・キャロウェイってエロパロ板で通じるか?
186: 2008/07/06(日) 06:30:26 ID:CUz7PR1q(1)調 AAS
>>185

ブルースブラザース!
187: 悪霊のブルース ◆kBKsYEB7q. 2008/07/06(日) 11:21:34 ID:6LkQQOC4(1)調 AAS
>>185

マイナーだからこそいいんだ。
188: 2008/07/10(木) 16:09:08 ID:0N99fv8i(1)調 AAS
ほしゅ
189: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 01:58:18 ID:uNUMrK8w(1/5)調 AAS
2次で投下さして下さい。
元ネタはFF6。
とりあえず陵辱ものです。
190: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 01:59:57 ID:uNUMrK8w(2/5)調 AAS
 皇帝の寝所の扉の前には、一人の少女が立っていた。
プラチナブロンドの髪は背中の半ばで揃えられ、
冷たさすら感じさせる整った美貌によく似合っている。
 一見すると人形のような顔立ちだが、
深いブルーの瞳に宿る強い意志の光がその印象をかき消している。
 また、身に着けているものも普通の女性とは少し違っていた。
帯刀こそしていないものの、淡い若草色のチュニックにブーツという
男性のようないでたちをしている。
 それもそのはず、彼女はこの国で小隊を率いている軍人なのだ。
 魔法を使いこなし、冷徹なやり方で完全な勝利を収める彼女は、
いつしかこう呼ばれるようになっていた。常勝将軍、と。

 だが彼女にも秘密がある。今まで隠し続けている秘密だった。
彼女はドアノブに手をかけ、ため息をつく。 
数秒躊躇した後、重い鉄製の扉をゆっくりと押した。

 室内は、無機質な扉の外からは想像もつかないほどの豪奢な装飾が施されていた。
各地の一級品ばかりを寄せ集めた、成金趣味の塊のような部屋だ。
床には虎の毛皮が敷かれ、中央に据えられたベッドは黄金の細工が施された
天蓋付という念の入れようだ。
 血の色のような深い赤の布団にくるまった、初老の男がゆっくりと顔をあげた。
冠こそかぶっていないが、見事なあごひげでその男が誰なのか
明らかにしていた。
世界を征服するとさえ噂されている軍事大国の皇帝、ガストラだ。

「セリス、確か30分前に呼んだはずだが?」
ガストラはベッドサイドにおかれた琥珀色のテーブルを指先でトントンと叩いた。
セリスはきっ、と睨みつける。
「今更何の用?」
「軍隊は随分と楽しいようだな?呼んでもすぐに来ないとは。
まぁ良い。今日は久々に楽しませてもらおう」
 反抗的な態度を意に介した様子もなく上機嫌でそう言うと、
ガストラは見るからに高価そうなワインを口に運んだ。
赤い液体がしわがれた男の喉に吸い込まれていく。
 セリスの顔色が目に見えて変わった。
青ざめたように顔から色味が引いていく。
「私はもう、そんな事をするつもりはない。他にいくらでも女がいるだろう」
きっぱりとセリスは口に出した。
191: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 02:00:46 ID:uNUMrK8w(3/5)調 AAS
 ガストラは悠然とベッドにかけると、
身に着けていたローブの前をはだけ、再び不敵な笑みを浮かべた。
「まずは…じっくりしゃぶってもらおうか」
 セリスにむかってあごをしゃくる。
「なっ…な、誰が…そんな、事を…」
 セリスは言い淀んだ。
ガストラの目が細められ、凄みを帯びる。
「それとも、お前の部下が血に染まるのを見たいのか?
処刑するのに理由など要らんことなどお前が一番よく知っているのだろう?」
「卑怯者…!脅迫とは反吐が出る」
「お前が断るかどうかは好きにすれば良い。寛大な皇帝だろう?」
 そう言うと、ガストラは低い声で笑った。

 セリスは険しい表情のままごくりと唾を飲み込む。
おずおずとガストラの前に跪いた。
 膝をついたセリスの頭上からは嘲笑う低い笑い声が更に浴びせられる。
我慢すればいい、昔みたいに心を閉ざせばいいだけの事、
そう呪文のように自分に言い聞かせると、
セリスは唇をきつく噛みしめ、ガストラの股間に顔をうずめた。
 
 既にガストラのペニスは透明な粘液が先端を濡らしている。
セリスは舌先でその液体を舐め取るように這わせながら、
中心から外周へ円を描くように滑らせる。
唇で先端をすっぽりと覆い、吸いあげるようにして上下にゆっくりと動き始める。
指先で根本をさすりながら、唾液を塗りこむかのように、
強く吸い付いたまま唇の上下運動を加速させる。
 にちゃにちゃと音を立てながら肉棒を咥え続けるセリスの頭を撫でながら、
ガストラは満足そうにささやく。
「行儀が悪いな、お前は。そんなにペニスが美味いのか?
音を立ててむしゃぶりつきおって…」
192: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 02:01:34 ID:uNUMrK8w(4/5)調 AAS
 すると、それまで穏やかだったガストラの表情が曇る。
「ずいぶんと偉くなったものだな?
儂の前で泣きながら絶頂に達した可愛いお前はどこに行った?
何度もねだっただろう?
あの時のお前の顔は最高だった。まるで娼婦そのものの顔を…」
 やめて、とセリスは半ば悲鳴のような声で遮ると、頭を振った。
脳裏に今まで記憶に刻み込まれてきた忌まわしい痴態の数々が蘇る。
「それになんだその格好は?男のような格好をしおって。
ささやかな反抗のつもりか。
まぁ所詮お前にできる反抗などその程度だ。可愛いものよ」

 唇と指先とで擦られ、熱く固くなったそれを、
更に口の奥に捩じ込むようにしてガストラはセリスの頭に手を添え、
動かし始める。
 くぐもった悲鳴をあげたセリスにも構わず、
ガストラは己の肉棒をセリスの柔らかな薄桃色の口中へと捩じ込む。
間を置かずして、先端から白濁液が迸った。
 口を離すことも許されず、口中に吐き出された液体を、
セリスはごくりと喉を鳴らし、ペニスを咥えたままの体勢でゆっくりと嚥下した。
口の中に広がる味、喉を通る感触にセリスは顔を歪める。
 やっと口を自由にする事を許されると、セリスはよろよろと立ちあがった。

「どうした、まだ退がって良いとは言っておらんぞ」
いつのまに背後に来たのか、ガストラはセリスの腕を掴むと、
恐ろしい力で引き寄せた。思わずセリスは小さく悲鳴をあげ、
勢い余ってベッドに倒れこむ。
 ガストラはセリスの上に馬乗りになると、
着衣を脱がしにかかった。チュニックを引きちぎり、ブラジャーをはずすと、
ツンと勃ったピンク色の突起が現れる。
 それを口に含んで舌で転がした。甘噛みをしてやると、
セリスは身をよじった。

 ガストラはセリスを組み敷いたまま顔を覗き込んだ。
顔を背けているが、少し開けられた唇からちらちらと覗く舌が誘っているようだ。
「儂の寵愛を受けるだけでお前は満足できぬのか?
軍属になるなどと抜かしおって…素直なのは身体だけだな?」
ガストラの指はセリスの太ももをゆっくりと焦らすように
円を描いてなぞり始める。
軽く爪を立てるようにしてセリスの敏感な部分を掻くと、
すぐに下着に染みが広がり、指先に薄布と共に、透明な粘液が纏わりつく。
ガストラは鼻を鳴らした。
「ふふ、メスの匂いをぷんぷんさせおって。
なんだこのいやらしい臭いは、セリス"将軍"?
お前がこんな卑猥な女だと知ったら部下達はどう思うだろうな?
それとも、下級兵士に犯される事を想像してオナニーでもしていたか?
犯されるのが何より感じるんだろう?淫乱め」

「ふざけるな…!私は、その、ような事……っ」
 反論しかけて、セリスは言葉を飲んだ。
ガストラの指先が肉粒を探り当て、弄び始めたからだ。
「そのような…何だ?言ってみろ」
 セリスは口を固く閉じる。
「言え、セリス。反抗は許さんぞ」
 セリスの頭の中ではガストラに対する罵声が渦巻いていた。
だが、口をつくのは喘ぎ声だけだった。
「あ、ぁっんっ…っ」
鼻にかかった声をあげながら、身を捩る。
ガストラはセリスの反応に、くっくっと満足そうに笑う。
193: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 02:02:36 ID:uNUMrK8w(5/5)調 AAS
とりあえずここまで。
長くてすみません…
194: 2008/07/11(金) 20:33:04 ID:j9IYhzdR(1)調 AAS

FF6はやったことないけど期待
195: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 23:43:21 ID:sbrSGE4v(1/6)調 AAS
「お前は本当にいやらしい声を出す。
そんなに男に媚びる声を出して恥ずかしくないのか?
なぁセリス将軍。これでもお前は感じていないという気か?」
 いじられた肉芽は痺れるような快感をセリスの下半身に広げている。
「い、ゃぁ、あっ…将、軍と呼ぶ、な…」
「そう、お前は儂の愛玩人形でいればよい。
昔のようにまた身体に覚えこませてやろう。お前の主人は儂だということをな」

 ガストラはやっと大人しくなったセリス抱き起こすと、
ベッドサイドに置かれた巨大な鏡の前に座らせた。
羽交い絞めのような体勢で背後に陣取ると、
大きくM字に開脚する屈辱的な体勢を取らせる。
 ベッドサイドに置かれた巨大な鏡に卑猥な姿が映り、
セリスは思わず目を背けた。
 ガストラはセリスの顎に手をかけ、鏡のほうへ無理矢理向き直らせる。
「よく見ろ。くく…涎を垂らしすぎたせいで、
下着の上からヒダの色が透けておるわ」
「嫌っ…見たくない、こんな、の」

 既にセリスの愛液はショーツを透明にするまで溢れていた。
うっすらとピンク色の粘膜が透けて見えるのが余計にいやらしい。
力任せにガストラがそれをはぎとると、
ぐちゅ、という音と共に透明な糸が伸びる。
 ぬらぬらと光るそこをガストラは2本の指で開いた。
うっすらと赤みを帯びた突起が現れる。
親指でその皮をむき、すり潰すように突起を刺激する。
セリスの身体が喘ぎ声と共にびくっとはねた。
「太ももまで蜜が零れ落ちておる。乳首だけでなく、
クリトリスも勃起させおって。こうされるのが何より好きなんだろう?お前は」

 セリスは子供がするように、いやいやと首を左右に振る。
 鏡の中ではガストラの指が上下するたびに、
蕩けそうになったピンク色の肉ヒダから、蜜がどろどろと吐き出されて来る。
ガストラの指は膣口をゆっくりとつついた。
指に吸い付くようにヒダがまとわり付く。
ガストラは己の太い指を一本中に沈めた。
ちゅぷ、という音と共に奥へ沈められていく。
 セリスの表情が変わり、頬が上気し始めた。
根本まで指が沈むと、あぁ、と満足とも快感とも取れる声をあげた。
196: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 23:44:02 ID:sbrSGE4v(2/6)調 AAS
「どうした、またいやらしい声を出して。そんなに中までかき回して欲しいのか?」
「そ、そんなこと、誰がっ…、っくぅ」
 ガストラの指は内側の粘膜の一番敏感な場所に絞ってピストン運動を始める。
「お前はここが弱かったな。そら、擦られて嬉しいだろう」
身体の中心がかっと熱くなり、蜜の海のなか出し入れされる指の感触に、
セリスは堪らず腰を浮かせる。
「そこは、や、やめ、てっ、あっ、それ以上はっ、ぅぁうっ…」
ガストラの指は奥へとヒダを擦りあげながら、親指で執拗に淫核を撫で回している。
 同時に攻められるのが余程感じるのか、
すすり泣きのような声をあげ、セリスはぴくぴくと身体を仰け反らせる。
 くっくっと笑いながら、ガストラ空いている方の手で
セリスの乳首を指で軽くつまむようにして捻る。

「どうした、さっきから喘ぐばかりで能が無いな。
乳首も勃ちっぱなしではないか。おまけにケツまで涎でドロドロにしおって…
見てみろ、お前の淫らな汁が水溜りをつくっておるぞ」
 ガストラの言葉と、鏡で自分の乱れる姿を強制的に見せられることが、
セリスの精神を追い込んでいく。
 いくらガストラの言葉を否定してみても、
膣口は、中へ早く侵入してほしいとばかりに開いている。
荒く息をつきながら、拒否するように首を左右に振るだけで精一杯だった。
「そろそろぶち込んで欲しいんだろう?そうねだってみろ。ん?」
 ガストラはセリスの耳にささやく。
悪魔の囁きに、無意識のうちにセリスはごくりと唾を飲み込んだ。

「淫乱な私をバックで犯して下さい、そう哀願しろ」
 セリスにとって決して口にしたくない言葉だった。
残された精一杯の力で鏡の中のガストラを睨みつける。
「そんな事、言うと思う、の…か」
 ガストラはセリスの首筋をねっとりと舌で舐め上げると、
セリスの耳たぶを口に含んだ。
「お前が従順なら、儂も処刑などする気はない。
それとも、全員が殺されていくところを見たいのか?いい趣味だな」
 セリスは無言のまま、俯いている。
「残念だ。お前が可愛がっていた下級兵士がいたろう。
13かそこらの子供だったか。まずはあの子供からだ。
処刑人はお前にさせてやる。せいぜい苦しませずに殺してやるんだな」
 ガストラは興味がなくなったかのように冷たく言い放つと、
立ち上がった。弾かれたようにセリスも立ち上がる。
 抱きつくようにしてガストラに縋り付いた。
「お願い、許して…下さい。ちゃんと、言います。だから…」
 セリスは白くなるほど自分の唇を強く噛んだ。
観念したように、目を閉じる。
197: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 23:45:01 ID:sbrSGE4v(3/6)調 AAS
「お、犯して……下さ、い、」
 激しい屈辱でセリスの声は震えている。
「聞こえんな。なんだ?」
 かすれた声でセリスは再び哀願した。
「私、を…犯して。バックで…突き上げて欲しい、です」
「突き上げて欲しいだと?牝犬め。初めからそう言えばいいものを」
 ガストラは満足したのか、セリスを鏡の前に立たせ、
四つんばいの格好をさせた。セリスに恥ずかしい体勢をさせたまま、
ガストラは何もせず低く笑っている。

 愛液まみれの割れ目から、我慢し切れなかった涎のように、
透明な粘り気をもった液体がぽたぽたと垂れる。
「お願い…早く、下さ…い」
 セリスは泣き出しそうな声で小さく言った。
「よしよし。また涎を垂らしおって。やっと素直になったな。
今捩じ込んでやるからな…くっく…随分締め上げてくる…
ヒダが吸い付いてくるわ。どうだ、満足か?淫売が」
 ガストラの歪に曲がった楔が体内に打ち込まれると、
セリスは快感から身体を仰け反らせた。胎内をかき回される感覚が蘇る。
と同時に昔から教え込まれてきた快楽の感覚が全身を巡り、
ぞくっと鳥肌が立つ。思わず唇から吐息を漏らした。
 いままでガストラにされる時は、嫌悪しか感じたことは無かった。
なのに今こうしてガストラに貫かれていると、
快感と共に安堵すらセリスは覚えていた。
 肉体と感情の亀裂の狭間で混乱しながらも、
少しずつ快楽に押し流されていた。

 ガストラは肉棒を最深部まで捩じ込むと、
両手でセリスの乳房を揉みしだき、セリスの耳元に口を寄せた。
重さを持った柔らかな双丘がガストラの手に吸い付く。
「お前は儂のものだ。
こうしてやるとお前はいつも可愛い声で鳴いたものよ…。
そう、その声だ。くく、気持ちがいいのか?
鏡でよく自分の顔を見てみるがいい」
 鏡に映る女は口端から涎を垂らし、
淫蕩な表情で突き上げられるのを待っている。
四つん這いの格好を恥じるでもなく、
ただ打ち付けられる楔に悦びの吐息を漏らしていた。
昔も今も、私は皇帝のメス犬でしかない、セリスがそう自覚した時、
薄い氷の上でなんとか保っていた理性が割れた。
 規則的に打ち込まれる律動に合わせ、
喘ぎながら奥に導くように尻を突き出し、自分からも動かし始める。
 砕けた理性をかきあつめようとしても、身体の動きは止まらなかった。
ガストラのペニスを貪るように下の口で飲み込む。
肉のぶつかり合う音と、粘り気のある水音が部屋に満ちる。
次々に溢れてくる愛液は、セリスが既に限界にきている事を示していた。
198: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 23:45:54 ID:sbrSGE4v(4/6)調 AAS
 体中の血液が膣に集中して脈打っているのをセリスは感じていた。
固い肉棒が最深部まで出入りし、膣の中を擦られるだけで何度も達しそうになる。
それでも、最後まで達する事だけはプライドで必死に押さえ込んでいた。
 両の拳を握り締め、感情を切り離そうとセリスは必死になる。
「太ももの裏に、鳥肌が立っているぞ。絶頂に達しそうなのだろう?」
 セリスの太ももはびっしりと鳥肌が立っている。
必死で快感を堪えていた。ガストラは指でその凹凸をすぅと撫でる。
ぞくぞくと更なる快感がセリスの背中を走った。
もはや堪えきれない快感だった。
だめ、と小さく唱えセリスはガストラの手を振り払おうと身体を小刻みに揺らす。
だが抵抗にすらならず、ガストラの快感を煽るだけだ。

ガストラはうすら笑いを浮かべ、かまわず腰を打ち付ける速度を上げた。
「やっ…ぁ、熱い、…ぁんっ、や、だめっ…ぁぁっ」
 全身が熱くなり何も考えられなくなる。
セリスはスイッチが入ったように絶頂へ一気に上り詰めた。
頬を紅潮させ、艶声を切れ切れに上げながら身体をびくびくと震わせた。
足の力が抜け、その場にへたりこむ。
 栓が抜かれた数秒後、セリスの頬に生暖かい液体が伝った。
セリスは鏡越しに髪の毛に絡みついた汚辱の証を放心したまま、眺めていた。
小さく、呟く。
「この国にいる限り、私は…皇帝に奉仕する淫売でしかないのね…」
199: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 23:48:38 ID:sbrSGE4v(5/6)調 AAS
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「セリス、どうした?」
 名を呼ばれ、セリスはぎくりとして顔を上げた。
「あ、ロック」
 気づくと、すぐ横に男が立っていた。
あの男の下から逃げるきっかけをくれたのはこの男だった。
悪夢から現実に引き戻してくれたようで、セリスはほっと息を吐く。
「ずっとここにいたのか?」
「ええ…。いざあそこに戻ると思うと、なんだか緊張してるみたい。
情けない話ね」
 飛空挺の甲板からは、遥か彼方の水平線にサーチライトの光がうっすらと見える。
あと数時間で帝国城に到着する筈だ。
嫌な予感が澱のように脳裏から離れない。
 忌まわしい過去を思い出したせいだろうか、セリスは少し震えていた。
ロックの温かい手が肩に置かれる。
「大丈夫、俺が守るよ」
 力強い言葉に、セリスは小さく頷くともう一歩ロックの側に近寄った。

 嫌な予感が現実のものになろうとは、まだ二人とも気づいてはいなかった…。


200: ◆qVkH7XR8gk 2008/07/11(金) 23:50:13 ID:sbrSGE4v(6/6)調 AAS
よく考えるとスレ違いな気がせんでもないが…
以上です。
ありがとうございました。
201: 2008/07/16(水) 14:04:03 ID:l7CzLoEQ(1)調 AAS
おお!FF6完結してたー!GJでした!
202: ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:24:10 ID:FsOEuYoY(1/15)調 AAS
お久しぶりです。不器用な彼女の続きが書けましたので投下します。 
ただ、現在アク禁に巻き込まれてますので携帯で投下します。 
馴れない投下方法ですので失敗があるかもしれないことをご了承ください。
203: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:24:44 ID:FsOEuYoY(2/15)調 AAS
『ピピピピッ!ピピピピッ!』

 タイマーをセットしていた時計のアラームが鳴り、夢のような一時が終わりを告げる。
週末の土曜日、いつものホテルでのデート。
3回も愛し合った私達は、お互いを抱きしめるようにベッドに寝転び、まどろんでいた。
愛する修太に抱きしめられるように寝転がり、腕を枕にして横顔を眺める。
……私はこの一時が大好きだ。お互いを激しく愛し合い、その激しさを冷ますようなこの一時が大好きなんだ。
私の頭の下にある修太の逞しい腕。幼い頃から家の手伝いで米袋を担いでいたせいだろうか?
同年代の男よりも男らしい硬い筋肉が付いている。私はこの逞しい腕に強く抱きしめられるのが大好きなんだ。
タイマーの音に急かされるように私は修太の腕から頭を上げ、タイマーを止める。
ふふふふ、この腕を枕に寝るというのは何度してもいい気分だ。
修太の汗の匂いを嗅ぎながら、腕の逞しさを感じることが出来る。……これほど幸せを感じる時はそうはないだろう。
腕枕から身体を起こし、タイマーを止めた瞬間、お尻に感じる違和感。
先ほどまで散々触っていたにもかかわらず、まだ触り足りないのか?
お尻を下から上へと撫でるように優しく、時折お尻の谷間に滑り込ますようにいやらしく触ってくる。
手がお尻を撫でる度、背筋をゾクゾクと電気に似たような感覚が走り、
お尻の谷間に滑り込んでくる度に、子宮がズキズキと疼いてくる。
こら、そんなイヤらしい触り方をするヤツがあるか。……疼いて我慢できなくなってしまうではないか。

「ん……こら、もう時間だ。そろそろシャワーを浴びて着替えないと、延長料金を取られてしまうぞ」
「ん〜?彩のお尻って柔らかくて、スベスベしてて最高だなぁ」
 
 最高だと褒めてくれたのは嬉しい。君に褒めてもらえるならどんなことでも嬉しいよ。
でも早く着替えないと延長料金を請求されてしまう。だから名残惜しいが早くシャワーを浴びて着替えなければ。

「……んん!だ、だからもう時間だと言っている!」

 お尻を触ってくる修太の手を抓る。
まったく……君は3回も出したというのに、まだ求めてくるのか。
……私も全然足りないのを我慢をしているんだ、君も我慢をしなさい。

「ちぇ!もう一回くらいはしたかったのにな。なぁ、ラストくらい1回いいだろ?」

 後ろからそっと抱きしめ、耳元で囁く修太。
耳にかかる修太の息が、耳元で囁かれる甘い誘いが私の頭を痺れさせる。
あ、あと1回か……どうせならもう2,3回くらいはしたいな。……ダメだダメだ!延長料金が高くついてしまう!

「ダメだ!延長料金を取られてしまう!」
「ええ〜?別にいいじゃんか。金払うのオレだし、彩が気にかける事ないだろ?
延長料金くらいオレが払ってやるからさぁ……いいだろ?」

 後ろからギュッと抱きしめられ、そのまま両手で胸を揉まれてしまう。
首筋にキスをされ、胸を揉まれ続ける。
胸を揉まれ乳首を摘まれる度、首筋にキスを落とされ耳元で囁かれる度に、押さえつけていた欲望が暴れだす。
欲望によって壊れかけの理性をなんとか繋ぎとめ、胸を揉んでいる両手を払いのける。
204: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:27:15 ID:FsOEuYoY(3/15)調 AAS
「ダ、ダメだ!……今、延長したら帰るのが遅くなってしまう。おじさん達に何を言われるか分かったものじゃない。
……来週だ。来週のデートは午前中からホテルに来よう。
来週には気の済むまで抱いてもいいから……抱いてもらうから。それまでは我慢してほしい」
 
 私も我慢するんだから、君も我慢してほしい。
私の提案に手が止まり、考え出した修太。きっとおじさんという言葉に引っかかってしまったのだろう。
もし私達が毎週ホテルでSEXをしていると知られたら、どうなるか想像もしたくない。
おそらく修太はおじさんに半殺し……いや、殺されてしまうのではないか?
最近のおじさんとおばさんは、私を実の娘のように大事に扱ってくれている。
ついこの間もあと少しで事件になってしまうようなことがあった。
店番をしていた私にナンパ目的で話しかけてきた若い男がいたんだ。
その男に気づいたおばさんが慌てておじさんを呼びに行き、
駆けつけたおじさんが男の胸倉を掴み、殺してしまうのではないかと思うほどの凄い勢いで怒鳴りつけたんだ。
実際私が止めなければ殴りつけていたと思う。そうなれば傷害事件としておじさんは逮捕されていたのではないか?
私のことをそこまで大事に思ってくれているおじさん達には感謝の言葉しかないが……
パパと同じく、少し……いや、かなり大げさのような気がする。
ナンパ目的で声をかけてきたとはいえ、一応はお客様だ。
そのお客様に10キロの米袋を投げつけるのは、いかがなものなんだろう?

「来週まで我慢するのか?そんなの無理だって!だってさ、オレ、もうこんなになってるんだぜ?
なぁあと一回だけ、いいだろ?な?なな?」

 考え事をしていた私のお尻にツンツンと当る、修太のペニス。
硬く、そして、とても熱くなっている。私なんかにこんなにも興奮してくれたいるんだ……物凄く嬉しい。

「こんなに硬くして……そ、その、手でもいいのであれば、修太の部屋でしてあげよう」
「おおおお!手コキか?手コキってヤツか!おし!絶対にしてくれよ?約束だからな!なな!」
「あ、あぁ、約束だ。だから早くシャワーを浴びて部屋に戻ろう」
「おお、さっさと汗流して帰ろうな。手っこき手コキ〜、気持ちい手コキ〜」

 嬉しそうに満面の笑みで歌いだす修太。手でするだけなのに、そこまで嬉しいものなのか?
……何故コンドームを持っているんだ?

「シャワーを浴びるだけなのに、何故コンドームを持っている?」
「まぁまぁ、それよりも早くシャワーに行こうぜ」

 問いかけに答えず、私の両肩を押し、シャワー室へと連れて行こうとする。
……まさかお風呂でするつもりなのか?

「ちょ、ちょっと待て!お前、お風呂でするつもりなのか?そんな時間はないと言っているだろうが!」
「まぁまぁまぁ、早くしなきゃ時間がないんだろ?」
「た、確かに時間はないな。って、何故コンドームの封を破く!
部屋に帰ってから手でしてあげると言っているだろうが!」
「まぁまぁまぁまぁ、それはそれ。これはこれってことでいいだろ?」
「な、何がいいだろうだ!いい加減にしないと本気で怒……んん!きゅ、急に触ってくるなんて反則、ひゃう!」

 無理やりお風呂に連れ込まれ、そのまま後ろからギュッと抱きしめられる。
後ろから回された逞しい腕が私を力強く抱きしめ、胸に回された手は、ムニムニと私の胸を揉み解す。
その手の動きがイヤらしく、首筋を這う舌の感触が子宮を疼かせる。
その疼きに抵抗していた私の理性は、耳元で囁かれた甘い言葉で崩壊してしまった。

「だ、だから、んあ!時間が……んん!延長料金を取られてし……あん!」
「彩……好きだぞ。オレ、お前のことが大好きだ。愛してるぞ」
「しゅうたぁ……わ、私も好き……愛してる!」
「うお!ちょ、ちょっと待て!彩、ちょっとストップ……んぐ!」

 修太のせいで崩壊してしまった私の理性。
理性の壊れた私は、本能のままに修太を押し倒し、キスの雨を降らせてしまった。
205: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:29:49 ID:FsOEuYoY(4/15)調 AAS
「ん、ちゅ……ちゅる、ぢゅちゅ……んん、すきぃ。しゅうたぁ……ん、すきぃ……ちゅぢゅ」

 バカな私なんかに愛を囁いてくれた唇に舌をねじ込み、修太の舌を絡めとる。
首筋にギュッと強く抱きつきながら、舌で修太を犯す。
ちゅくちゅくと舌を動かしながら、修太の唾液を味わい、私の唾液を送り込む。
すると修太も舌を絡めてきてくれ、ギュッと抱きしめてくれた。
修太に抱きしめてもらっている……修太に強く抱きしめてもらいながら激しいキスをされているんだ。
……そう考えただけで、私の身体は潤んでしまい、受け入れる準備が整ってしまった。

「しゅうたぁ、わたしぃ、もうわたしぃ……欲しい。君が欲しいんだ。
これを……この大きな君をわたしに入れて欲しい。もう我慢出来ない!
これも全部君が悪いんだ、君がすべて悪いんだ!」

 馬乗りになり、はち切れんばかりに大きくなっている修太に手を添え、私へと導く。
少し腰を浮かせ、後は腰を下ろすだけ……腰を下ろせば一つになれる。腰を下ろすだけで修太と一つになれるんだ。
本能に支配された私は、早く修太を体の中で感じたいがために腰を下ろそうとした。
けど、そんな私を両手を使い、力ずくで止める修太。……何故そんな意地悪をするんだ?君は私が欲しくないのか?

「ちょっと待ったぁ!コンドームつけなきゃヤバイって!お前、前から避妊はちゃんとしなきゃダメだって言ってたろ?
今すぐ着けるからさ、ちょっと待ってくれよ」
「……ダメだ。待てない。待ちたくない!一刻でも早く、君と一つになりたい!1秒でも早く君と愛し合いたいんだ!」
「彩、落ち着け!すぐだから!すぐ着けるから落ち着けって!」
「イヤだ!子供が出来ても生んであげる!だから早く君を入れて……んん!」

 くちゅ……異物を受け入れるのには十分すぎるほど潤んでいる私に何かが入ってきた。
その何かは、ペニスでは出来ない複雑な動きで私の中を動き回り、クチュクチュと掻き出すように私を犯し始めた。

「しゅ、たぁ……ヤ、だぁ……ゆび、イヤぁ……君が、いいのに……指なんかで感じたくな……んん!」
「もうちょっと待ってろよ……コンドーム、あと少しで着けれるからな。それまでは指で勘弁な」

 クチュクチュクチュ……私を掻き出す指が2本に増え、いっそう激しく私を犯す。
私は修太に覆いかぶさったまま、体の下に寝転がっている修太の指で犯されて快楽に支配されていく。
指で感じるはイヤなのに、私の意志に反して身体はドンドンと高まっていき……すぐに限界を迎えた。

「やぁだぁ……こんな、こんなの、いやぁ……い、やぁ……や、あ、んあああ!」

 腰から全体へ波及するかのように痙攣が広まっていく。
修太の指でグチュグチュと犯された私は、快楽に抵抗することも出来ず、一気に達してしまった。
ペニスではなく、指で達してしまった。……指なんかでイッてしまったんだ。
快楽に支配されている頭で考える。私は……イクことができればなんでもいい女なんじゃないか?
グスッ、私はなんて淫乱な女なんだ。修太がいいと言いながら、我慢できずに指なんかでイッてしまうなんて。
……こんな淫乱な女は嫌われてしまうのではないか?修太に嫌われてしまったのではないか?
自分自身が情けなくて涙が出てくる。……そんな泣きじゃくる私をギュッと抱きしめてくれる優しい修太。
抱きしめてくれながら、耳元で優しく囁いてくれた。
206: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:32:35 ID:FsOEuYoY(5/15)調 AAS
「彩……ゴメンな?オレがコンドームを着けるのに手間取っちまったから、指なんかでしちゃってさ。
でもさ、指でイッたお前の顔、メチャクチャ綺麗だったぞ?オレ、惚れ直したぞ」
「ひっぐ……しゅ、たぁ……ゴ、ゴメ……しゅうたぁ〜!」

 優しい言葉に涙が止まらない。ただし、先ほどまでと違い、悔し涙ではなく嬉し涙だ。
……修太に綺麗と言ってもらえた。惚れ直したと言ってもらえた!
人間というものはいい加減な生き物だ。我ながら呆れてしまう。
先ほどまでは死にそうなくらいに情けなく、悔しかったのに、今では嬉しすぎて天にも昇ってしまいそうだ。
そうか……修太は私に惚れ直したのか。……ますます私を好きになってくれたのか!
嬉しくて嬉しくて、ますます涙が止まらなくなってしまった私。
そんな泣きじゃくる私の頭を、優しく撫でてくれるとても優しい修太。
私は君のそんな優しいところも大好きだ。

「ホントにゴメンな?オレ、お前を泣かせるつもりなかったのに……オレ、ホントにバカだよな。
好きな女を泣かせちまうんだからな。ホントにゴメンな」
「……ヒック。しゅうたぁ……わたしぃ、わたしぃ〜!」

 優しい言葉にますます涙が零れ、声を出すことが出来なくなる。
何故君はここまで私を泣かせることが出来るんだ?

「ホントにゴメンな?……今日はもう帰ろうか?オレ、これ以上お前の泣き顔を見たくないんだよ。
オレ、お前の笑ってる顔が一番好きなんだ。オレ、お前を悲しませたくないんだ。……オレ、お前を守りたいんだよ」

 ……嬉しい。笑ってる顔が好きだと言ってもらえた。守りたいと言ってもらえた!
今までの人生の中で、今日ほど嬉しい日はない!
だが、修太と一緒なら、これからはもっと嬉しい日を……
修太と2人で笑いあえる、嬉しい日々を過ごすことが出来ると思う。
修太も私と過ごすことでそうであってくれたら、嬉しいな。……帰るだと?

「ダメだ!私はまだ君を感じていない!指なんかじゃ終わらせない。私は君を感じたい。君が欲しいんだ!」
「あ、彩?だってお前、号泣してたじゃんか」
「君のせいで泣いてたんだ!だから責任を取って……私を犯して欲しい。
はしたない話だが、私はまだ濡れている。君を受け入れたくて濡れたままなんだ。
君も大きいままじゃ辛いだろう?だから早く君を私の中に入れて欲しい。
私をこの大きな君でグチャグチャに突きまくり、指ではなく、君自身でイかせてほしい。
……私は君でイきたいんだ。君と一緒にイきたいんだ」

 修太は私の言葉に優しく微笑み、そっと唇を合わせるような優しいキスをしてくれた。
207: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:34:36 ID:FsOEuYoY(6/15)調 AAS
「お前はホントにバカだな。オレなんかにそんな嬉しいことを言ってくれるのは、世界中を探してもお前だけだぞ?」
「そうだ、私はバカだ。バカだからこそ、君を好きになった。バカだからこそ、君と恋人になれた。
私は自分がバカでよかったと、心の底から思っているよ。バカだからこそ、君とこうして愛し合えている」
「彩……オレもバカでよかったよ。ハハハ、お前とこうしてられるのもバカのおかげだな!」
「……バカ。また私を泣かせてどうするつもりだ?」
「どうって……こうするつもりだよ」

 くちゅ……大きいままの修太が、私の入口に添えられる。
その瞬間、背筋をゾクゾクとした、電気のようなものが走りぬける。
あぁ……何度してもこの瞬間が大好きだ。修太を私の中に向かい入れるこの瞬間が、とても大好きなんだ。

「彩……愛してるぞ。じゃあ、入れるからな」
「ん……愛してる。私も修太が大好き……んあああ!」

『ぐちゅ!ぐちゅ!ぐちゅ!』

 修太の上に乗ったままの私を、ギュッと身動きできないくらいに強く抱きしめながら力強く貫く。
息が出来ないくらいに抱きしめられて、パンパンと、お風呂場に音が響くくらいに激しく突き上げられる。
下から修太に激しく子宮を突かれる度に頭が真っ白になる。
キスで口をふさがれて、唾液流し込まれる度に、私が私じゃなくなる。
ラブホテルのお風呂場で、息が出来ないくらいに強く抱きしめられながら激しくキスをされ、激しく貫かれる。
その行為の一つ一つが私を狂わせていき、身体で感じる修太の激しさが、私を壊す。

「しゅうたぁ……しゅうたぁ!わた、も、いクぅ……イク!イクイクイク!」
「あやぁ……オレも、出そうだ!すっげえ気持ちよすぎてもう出そうだ!」
「イクぅ〜!イく!イク!イグぅ〜!イ、ヒィ!……んああああ〜!」

 ズグン!……子宮を貫くのではないか?そんな勢いで私を貫いた修太の激しさに、一気に達してしまった私。
修太も同時に射精をしてくれたようだし……コンドームで修太の精液を感じられないのが残念だ。
早く君の子供を生める年齢になりたいものだ。……早く、君の子供を生みたいな。
まぁ差し当たっては……子供を作るための行為の練習を重ねるとしようかな?

「はぁはぁはぁ……彩、気持ちよかったぞ。じゃあシャワーを浴びて、汗を流そうか?」
「はぁ〜はぁ〜はぁ〜……次はベッドでしてほしい」
「……へ?次って?お前、またヘンなスイッチ入っただろ!今日は4回もしたんだ、もう出ねぇっての!」
「変なスイッチだと?君が入れたんだろうが!責任取って体の疼きが収まるまで抱いてもらうからな!」
「ちょ、ちょっと待て!落ち着け彩!オレ、ホントにもう無理……んぷっ!」
「ん、ちゅ、ちゅば……しゅうたぁ、んちゅ、ちゅぢゅ……すきぃ、あいしてるぅ」
「よ、よせ!落ち着け!落ち着い……んんん〜!」

 ……2時間も延長してしまったのは反省をしないといけない。延長料金でお金も高くついてしまった。
帰りが遅いとパパとママにも怒られてしまったし、来週からは、もっと早くにホテルに入るとしよう。
208: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:36:39 ID:FsOEuYoY(7/15)調 AAS
「う〜ん……お前の気持ちも分かるがなぁ、もったいなくはないか?」

 月曜日の放課後、担任の先生に呼び出され、私の進路についての話をされる。
先生曰く、『就職ではなく大学に進学し、もっと色んな勉強をするべきだ』とのこと。
進学し、色々な勉強をすれば給料のいい会社にも就職でき、その方が家計も助かるだろうとの考えのようだ。

「いえ、以前から決めていることです。私は働いて家計を助けようと考えています」
「しかしだなぁ、お前のような賢い子が、就職なんてもったいないぞ。
いい大学を出たら、凄い給料のもらえる会社にも就職できるんだぞ?
そっちのほうがよくないか?後々を考えると、絶対進学した方がいいって!」

 確かにその通りだろう。しかし、私が進学をすれば、弟達が大学に行けなくなるかもしれない。
我が島津家は、私たち兄弟全員が進学できるほど裕福ではないのだ。
それに、進学をしてしまうと家を出て、大学の近くで1人暮らしをしなければいけなくなるだろう。
島津家の家計を取り仕切っている私が家を出てしまうと、誰が島津家の家計を支えるのだ?
パパもママも、私たちのために一生懸命働いてくれている。
仕事で忙しいパパやママの負担を軽減させる為、私が家事を取り仕切らなければいけないんだ。
……まぁ私も時々は大学に行ってみたいと思うこともある。
最近、クラスの友人達が話している大学に進学してからのこと。
色々なサークルに入り、大学生活を楽しみたいと嬉しそうに話している。
そんな楽しそうな話を聞いていると、私も進学について、考えてしまうこともままある。
しかしだな、進学し地元を離れるということは……高校卒業後には家業を手伝う予定の結城と離れてしまうことになる。
……嫌だ。結城と離れて暮らすなど、今では考えられないことだ。
パパやママ、弟達には悪いが、家族と離れて生活することよりも、結城と離れ離れになることのほうが嫌なんだ。

「私の将来のことを心配してくれているのは、とてもありがたいです。しかし、私は地元で働くつもりです。
出来れば公務員となり、家族を支え、弟達を大学に行かせてあげたいんです」
「……そうかぁ、そこまで言うのなら先生、無理に進学は薦めないよ。
しかしだな、まだ時間はあるんだ。就職すると決め付けないで、ゆっくりと考えればいい。
他の生徒と違って、お前は勉強に時間を割く必要もないからな。
大事な将来のことだ。焦って決めずに親や友人と相談し、ゆっくりと考えなさい」
「……はい、分かりました。話は以上ですか?では私は結城に勉強を教える約束をしているのでこれで失礼します」

 私の為に時間を割き、進路相談をしてくれた先生に頭を下げ、生活指導室を出る。
先生には悪いが、就職することはもうずいぶんと前から決めていることだ。
……そんな事よりも早く結城の部屋に行かなければ。
今日も私が作った小テストを解いてもらおう。成績がよければご褒美として……手でしてあげよう。
ふふふふ、私が手でしてあげるといったら、嬉しそうな顔をしていたことだしな。
嬉しさのあまり、『彩、大好きだ!愛してる!』と言ってくれないだろうか?……言ってくれるといいな。

「島津っち〜。廊下でなに結城の事を考えてるの?顔、ニヤケっぱなしだよ〜」
「いいねぇ〜、ラブラブだねぇ〜。2人の愛は燃え盛ってるんだねぇ〜」
「あはははは!盛ってるのは島津っちだけどねぇ〜。結城、またゲッソリしてたよ?今度は何回させたの?」

 結城の事を考えていた私を呼び止めるクラスメートの声。
んな?何故結城の事を考えていたと分かるんだ?私の心の中が分かってしまうとは……皆は超能力者なのか?

「ゆ、結城の事を考えてしまうのは仕方がないことだと思う。好きな人なのだから考えるのは当たり前だろう?」
「も、燃え盛ってる?た、確かに、その……2人きりだと燃えてしまっているな」
「な、何回といわれても……土曜日に7回、昨日が3回だ。これが平均的じゃないのか?」

 私の質問への答えに、はぁ〜っとため息を吐く友人達。
皆ため息なんか吐いてどうしたんだ?

「島津っち……盛るにも程があるよ。少しは我慢しなきゃ結城がヤリ疲れて死んじゃうよ?」
「やり疲れるとはいったい何のことだろうか?……んな、何故死んでしまうんだ!どうしてだ!」

 結城が死ぬと言った友人の両手で肩を掴みブンブンと揺さぶる。何故だ!何故死んでしまうんだ〜!
209: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:38:50 ID:FsOEuYoY(8/15)調 AAS
「ちょ、ちょっと島津っち?冗談!冗談だから!そんなに揺らさないでぇ〜!アタシが死んじゃうよ〜!」
「お、落ち着いて?深呼吸して落ち着こうね?」
「そそ、島津っち、落ち着こうよ。いくら結城がバカでも、こんな綺麗な彼女を置いて死なないって!」

 ……冗談?死ぬというのは冗談だったのか?
ふぅぅ〜、すっかり騙されてしまったな。まったく……いくら友人といえ、悪い冗談は止めてほしいな。 

「ふぅぅ〜、冗談なのか。いくらなんでもそんな冗談は止めてくれないか?死ぬほど驚いてしまったよ」
「ア、アタシは死ぬかと思ったけどねぇ〜。あ、頭がフラフラだよぉ〜」

 結城が死ぬかもと言った友人は、私が力いっぱいに激しく揺らした為か、軽く目を回しフラフラとふらついている。
悪い冗談を言うからそうなるんだ。……ゴメン、少し揺らしすぎた。

「と、ところでさ、今日も結城の部屋に行くの?結城、下駄箱で待ってたよ」
「え?ま、待っててくれたのか?時間がかかるから先に帰るようにと言ったのに……まったくバカなヤツだな」

 ホントにバカなヤツだ。先に帰って待っているようにと言ったのに……腕を組んで一緒に帰るとしよう。

「アハハハ、島津っち、スッゴク嬉しそうな顔してるよ?」
「ホントだねぇ、見てるこっちまで嬉しくなっちゃうよねぇ」
「そういえばさ、今日ってさ、結城の誕生日だよね?島津っち、プレゼントはなにあげるの?」

 今日が誕生日?誰の?……結城?ええ?そ、そんな話、知らない!私は聞いていないぞ!
 
「ええ?ゆ、結城の誕生日?そ、そんな話、知らないぞ!私は聞いていない!」
「へ?そうなの?島津っち、アイツの誕生日知らなかったの?恋人なのに?」
「アイツってさ、毎年誕生日になると『今日はオレの誕生日だ!何かくれよぉ』
ってクラス中にプレゼントをねだってきてたんだよね。確かアタシ、去年は消しゴムをあげたっけ?」
「アタシはシャー芯3本あげたよ。1本じゃ少ないって文句言ってたけど、3本あげたらメチャ喜んでたよ」

 な、何故だ?何故そんな大事なことを教えてくれない?何故恋人である私に教えてくれないんだ?
……グスッ、結城にとっては、私との関係は自分の誕生日を教える必要のない関係ということなのか?
ひっぐ、そうなのか?私は1人で恋人だと思い込んでいたのか?
結城にとっては、恋人でもなんでもないのか?
わ、私は、ひぐ、皆が知っている誕生日を教えてもらえないくらいの、希薄な関係の女なのか?
……やだ。嫌だ!そんな関係は嫌だ!私は恋人がいいんだ!結城の恋人でいたいんだ!

「し、島津っち?ゴ、ゴメンね?謝るから泣かないでよ……島津っちが泣いてると、アタシ達まで泣きたくなるんだから」
「そ、そうだよ、泣かないでよ。結城が誕生日を教えてなかったのにも理由があるんだよ」
「そうそう、アイツってバカだから、きっと自分の誕生日を忘れてるんだよ」
「……ぐすっ。結城はそこまでバカじゃない。きっと私に教える気がなかったのだろう。
教えるほどの女じゃないと思われているんだ。きっと私の事を恋人でもなんでもないと思っているんだ。
ひっぐ、何故私は嫌われたんだ?う、うえぇ、いやだぁ〜!うええ〜ん!」

 結城に嫌われた。そう考えただけで涙が溢れてくる。
学校の廊下だというのに、声をあげて泣きじゃくってしまう。
こんなにも大勢の前で泣きじゃくるようなバカな女だから、嫌われてしまったのか?
やはり結城はバカな女は嫌なのか?何故私はバカに生まれてしまったんだ?

「わ、わわ!島津っち、号泣しちゃったよ!ど、どうすれば……」
「ああ!結城が来た!結城に責任取らせようよ!」
「結城、早くきなさい!アンタの恋人が泣いてんのよ?早く慰めなさい!」

 え?ゆ、結城が来てくれたのか?私の為に?……いや、偶然通りかかっただけだろう。
結城はバカな女は嫌いなんだ。バカな私の為に来てくれるなんてありえない……ゆ、結城?

 学校の廊下で泣きじゃくる私を、ギュッと強く抱きしめてくれた結城。
何故だ?何故抱きしめてくれたんだ?君にとって私はどうでもいい女ではないのか?
210: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:40:39 ID:FsOEuYoY(9/15)調 AAS
「おい、ホントに大丈夫か?お前、なんでこんなところで泣いてたんだ?」

 泣きじゃくる私を抱きしめながら、優しく頭を撫でてくれる、とても優しい結城。
……何故だ?何故そんなにも優しくしてくれる?君にとって私はどうでもいい女ではないのか?
そんなに優しくされると……淡い期待を持ってしまうではないか。

「コラ、結城!アンタねぇ、島津っちを泣かせて、悲しませてどういうつもりよ!」
「そうよ!アンタ、なんで今日のこと島津っちに教えてなかったのよ!
島津っち、教えてもらってなかったことがショックで泣いちゃったんだからね?」
「アンタ、島津っちの恋人失格ね!島津っちの気持ち、ちゃんと考えたことあんの?
島津っち、アンタに嫌われてるって泣いちゃったんだよ?」 

 私の為に一気にまくし立ててくれた優しい友人達。
たとえ結城に嫌われていたとしても、優しい皆がいれば、私は生きていけそうだ。……皆、ありがとう。

「へ?オレに嫌われてる?なんで?オレ、島津のこと大好きだぞ?」
「ならなんで誕生日のこと黙ってたのよ!島津っち、教えてもらってないってショックで泣いちゃったのよ!」 
「誕生日?誰の?」
「アンタのでしょうが!忘れてたなんて言わせないわよ!」
「オレの誕生日?……ああああああ!そうだった!今日オレの誕生日だった!すっかり忘れてたぁ!」

 ……はい?結城の言葉に涙が止まる。あれほど流れていた涙がピタリと止まってしまった。
悲しさが消えたからではない。結城の予想外の言葉に驚いて止まってしまったんだ。
ま、まさか……友人の言うとおりだったのか?じ、自分の誕生日を忘れてただけなのか?

「わ、忘れてたぁ〜?ウソつくな!去年まであんだけプレゼントをたかって来てたでしょうが!」
「い、いや、だってさ、今年は島津にいろいろ勉強教えてもらってるじゃん?だからだよ」
「それがどうしたのよ!関係ないでしょうが!」
「いやいや、だっていろいろ覚えさせられてるんだぜ?そりゃ誕生日くらい忘れちまうよ」
「わけ分かんないこと言ってるんじゃないわよ!」

 ……何故だろう?結城がなにを言いたいのかが私にはハッキリと分かってしまった。
211: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:42:42 ID:FsOEuYoY(10/15)調 AAS
「結城、少し確認をしたい。
君が私に誕生日を教えてくれなかったのは、ただ単に自分の誕生日の事を忘れていたからなんだな?」
「おお、少しは元気になったか?あまり泣かないでくれよな。オレ、お前の泣き顔見たくないんだからさ」
「質問に答えてくれ。誕生日を忘れていたから教えてくれなかったんだな?」
「おう、そうだぞ。すっかり忘れてたなぁ。どおりでお袋が今日は島津と一緒に帰って来いって言ってた訳だ」
「そうか、忘れていただけなのか」

 よかった。嫌われていた訳でないのだな?……なんだろう?この胸に湧き上がる感情は?

「その忘れた理由なんだが、君が言いたいのはこうじゃないのか?」

 胸に湧き上がる感情を抑え、なるべく冷静に話す。冷静に話さないと友人達には分からないからな。

「私と勉強することによって、いろんな知識を覚えることが出来た。
そのかわり以前は覚えていた知識が、新しい知識に押し出されるかのように頭から出て行ったと言いたいんだな?」
「それそれ!その通りだぞ!やっぱりお前、頭いいなぁ。オレが言いたいこと、すぐに分かってくれるんだからな」

 嬉しそうに話す結城を見ていた友人達が視線で何かを訴えかけている。
……何故だろう?友人達の気持ちも分かる。それはきっと私も同じ気持ちだからだと思う。
この胸に湧き上がる感情のままに行動しろということなんだと思う。

「そっかぁ〜、今日はオレの誕生日なんだな。おっと忘れてた!なぁお前ら、誕生日プレゼントなにかくれよぉ〜」
「……るな」
「お?島津、何か言ったか?」
「ふ・ざ・け・る・な!と言ったんだ」
「……なぁ、いくら頭の悪いオレでも分かるぞ。お前、怒ってるだろ?なんで怒ってるんだ?」
「何故怒っているかだと?それはお前の頭がところてんの様に覚えていたものが押し出されるからだ!」
「お、落ち着かないか?オレ、お前の怒った顔も見たくないんだよ」
「……プレゼントをあげよう。とても強力なヤツだ、しっかりと喰らうがいい。……ふん!」
「く、喰らう?食べ物なの……へべし!」

 グシャリと足に感じる肉を潰すような感触。ここまで会心な蹴りは初めてじゃないのか?
その証拠に、私の蹴りを顔面に喰らい、倒れこんだ結城は痙攣をしている。
……ふん!私を心配させた罰だ!しばらくは痙攣しておけ!
212: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:44:25 ID:FsOEuYoY(11/15)調 AAS
「……なんか今日はさ、二人の惚気コントに巻き込まれたって感じしない?」
「ホントだねぇ。心配して損しちゃったね」
「それよりさ、下着、ブルーのストライプだったよ?島津っちも下着にお金をかけだしたねぇ」

 だから下着の品評は恥ずかしいから止めてくれないか?
……そろそろいいかな?これ以上床に寝かせておくのは、可哀想だ。

「けど結城もホントにバカだよねぇ。自分の誕生日を忘れちゃうなんてさ」
「だいたい結城って約束とか忘れること多いし、時間にもルーズだしねぇ」
「島津っちと付き合いだしてから改善されたと思ったけど、そうでもなかったんだねぇ」

 痙攣してる結城に膝枕してる私の目の前で結城の欠点を話し合う友人達。
確かにその通りだ。結城はよく約束を忘れたり、デートに遅れてきたりする。
きっとあまり時間を気にしない性格だからなんだろう。そこが結城らしいといえば結城らしいんだが……
デートの待ち合わせ時間くらいはキチンと守って欲しいな。
時計くらい身につけて、少しくらいは時間を気にして欲しいものだ……時計?

「そ、そうか!時計だ!腕時計だ!」
「おわ!きゅ、急に大声出して立ち上がるなんて、島津っちどうしたの?」
「皆、教えて欲しい。近くに男物の腕時計を売っている、いい店はないか?」
「へ?腕時計?あ、もしかして結城への誕生日プレゼント?」
「それよりさ、膝枕してたのに急に立ち上がるもんだから、結城の首、凄いことになってるよ?」

 腕時計をプレゼントして、デートの待ち合わせ時間を守ってもらうように教育しよう!
私は遅刻した結城がいつ来るのか待っている時間も大好きだ。
しかし、遅刻して過ぎてしまったその時間を一緒に過ごす方がいいに決まっている!
きっと結城もそうに決まっている。私と少しでも長く一緒にいたいに決まっているんだ。
そう思い、足元で寝たままの結城を見てみる。……人間の首というものはああいう形に曲がるものなんだろうか?

「ゆ、結城?何故首が変になってる?起きろ!目を覚ませ結城!起きるんだ〜!」

 ビクビクと痙攣が治まらない、首が変に曲がってる結城を揺する。
嫌だ!目を覚ましてくれ!起きてくれぇ〜!

「う〜ん、オチは一緒だけど、オチまでの流れは今までとは違ってたねぇ」
「けど結局はこうなっちゃうんだね。結城も災難だねぇ」
「それよりいい腕時計を売っているお店、ここら辺にあったかなぁ?」

 10分後、何事もなかったかのように目を覚ました結城を連れて、友人達に教えてもらったお店に腕時計を買いに行った。
結城はよく物にぶつかったりしてしまうから、壊れないように頑丈なのがいいだろう。
そう思い、とても頑丈なデジタルタイプの腕時計を買い、結城の誕生日のプレゼントとした。
ちょうどパパにお小遣いを渡す為にお金を下ろしていてよかったよ。
結構な値段がしてしまったが、どうにか買うことが出来た。ありがとう、パパ。
……今月のお小遣いなんだけど、私のバイト代が出るまで待っててほしい。
今月分だけでは足りないので、足りない分は分割で返すつもりだ。
それまではしばらく辛抱して欲しい。優しいパパならきっと今月分のお小遣いが少なくても辛抱してくれるはずだ。
213: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:46:28 ID:FsOEuYoY(12/15)調 AAS
「おい、オヤジ!これを積んだら午前の配達の分は終わりなんだな?」

 配達用の軽自動車に米袋を積み込み、オヤジに確認する。
朝っぱらから力仕事はシンドイよな。けど、金がいるから仕方ないしな……ホテル代が結構かかるんだよな。

「おう、これで終わりだ。積み終わったら、さっさと汗拭いて、着替えて出て行けよ。
今日もデートなんだろ?島津さんを待たせるんじゃないぞ?」
「大丈夫だって!今日は遅刻しないって!なんせこの腕時計があるんだからな」

 オレ自身が忘れていた誕生日にもらった、島津からのプレゼント。
黒色のカッコイイ腕時計。頑丈で防水加工ってのをしてて水に濡れても大丈夫なんだそうだ。
オレ、こんなまともなプレゼントを貰ったのって初めてだから、めちゃくちゃ嬉しくってさ。
貰ってから24時間毎日つけてるんだ。
この腕時計をつけてるとさ、いっつも島津と一緒にいるような気分になれるんだよ。
オレ、島津にもその気持ちを味わってほしくて、オレと同じ時計を買ってプレゼントしたんだ。
所謂ペアウオッチってヤツだな!島津の細い腕にはちょっとでかい様な気もしたけど、喜んでくれたからいいや。

「しかし、アンタのようなバカ息子にあんないい子が恋人になってくれるなんてねぇ……奇跡ってあるもんだねぇ」

 お袋は今だに信じられないらしい。オレと島津が恋人同士だってことが。
確かにはた目から見れば、島津は美人で天才で、オレなんかを相手にしてくれるような女じゃない。
でもな?……アイツもオレと同じくバカなんだよなぁ。

「お袋、最近そればっかりだな。じゃあオレ、そろそろ着替えて行く準備をするわ」
「今日はデートの待ち合わせ、午前中なのかい?珍しく早いんだね」
「別にいいだろ?仕事はちゃんと手伝ったんだからさ」

 そう、今日のデートは午前中、9時に待ち合わせだ。
いつもの駅前での待ち合わせ。いつものようにそのままホテルへと向かうことになると思う。
……先週は島津のスイッチが入っちまい、とんでもない目に遭ってしまった。
まぁ気持ちいいからいいんだけど……さすがに5発くらいまでに押さえてくれないかな?

「なにニヤニヤしてんだい!しかしあの子も変わり者だねぇ、こんなバカのどこがいいんだろうね?」
「お袋、自分の息子をバカ呼ばわりはないだろ?これでもテストじゃ平均以上取れるようになったんだぞ?」
「おい!いつまで喋ってんだ!いい加減着替えて待ち合わせ場所に行かねぇか!」
「オヤジも心配性だな。まだ時間あるって!
待ち合わせ時間になったら、アラームがなるようにタイマーをセットしてるんだよ。
オレだって遅刻しないように考えてるんだから、そう心配するなよ」

 そう、この9時にセットしたタイマーが鳴れば、待ち合わせの時間。
この腕時計には色んな機能がついているらしく、やっとタイマー機能を使い方が分かったところなんだ。
島津はすでに全ての機能を使いこなせるようになったと威張ってた。
今日、SEXをしたあとにでも教えてもらうとするかな?
214: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:48:31 ID:FsOEuYoY(13/15)調 AAS
「9時にタイマーが鳴るようにセットしてるから、それまでは大丈夫だよ」
「じゃあ9時に出て行くんだね?朝ごはんはどうするんだい?島津さんと何か食べるのかい?」
「9時にここを出るってことは、待ち合わせは10時くらいか?9時までは……20分もねぇな。
準備は出来てるんだろうな?たまにはビシッとしねぇと嫌われちまうぞ?」
「たまにはって……オレはいっつもビシッとしてるっての!
今日だって、待ち合わせの9時に遅刻しないようにしっかりとタイマーを合わせてるんだからな!」
「……は?お前、いま何時に待ち合わせって言ったんだ?9時とか言わなかったか?」
「そうだよ、9時だよ。9時に待ち合わせだから、9時にアラームが鳴るようにセットしてるんだ。
どうだ?オレ、ビシッとしてるだろ?」

 腕時計を指差し、勝ち誇るオレ。オレでもたまにはビシッと決めるんだよ!
まぁ遅刻しないことがビシッと決めてるかどうかは知らないけどな。

「お前は……本当にバカなんだなぁ。とうさん、悲しくなってきたぞ」
「……島津さん、この子と付き合っててもいいのかねぇ。
こんな大バカを相手にしてたら、あの子までバカになりそうで怖くなっちゃうよ」
「なんだよ2人とも。いきなりため息なんか吐いて、どうしたんだ?」
 
 ガックリと肩を落とし、大きなため息を吐くオヤジにお袋。2人とも急にどうしたんだ?

「お前なぁ……待ち合わせ時間にアラームが鳴るようにセットしてもダメだろうが!」
「……なんで?」
「お前、アラームが鳴ってから家を出るつもりだったろ?そのアラームがなった時点でもう待ち合わせ時間なんだよ!
アラームが鳴った時点で、島津さんは待ち合わせ場所でお前を待ってるんだ!
ホントにお前はバカだ!大バカだ!」

 凄い剣幕で怒鳴りつけてくるオヤジ。
……は?どういう意味だ?待ち合わせに遅れないように9時にセットしたタイマーが鳴ったら、既に待ち合わせ時間?
……うわ!マジだ!マジでその通りだ!ヤバイ!今日も遅刻だ!

「ヤ、ヤベエ!ち、遅刻だ!オレ、行ってくる!」
「このバカ息子!島津さんにしっかりと謝るんだぞ!」
「気をつけて行くんだよ。島津さんに失礼しないようにね」

 急いで着替えて慌てて家を出る。
やべぇなぁ〜、島津、今日のデートをメチャクチャ楽しみにしてたからな。
遅刻なんかしたら怒られちまうよ。まぁどう足掻いても間に合わないんだけどな。
急いで駅まで自転車を走らせる。立ち漕ぎ全開でダッシュで走るぜ!
でも待ち合わせ場所の駅まで3駅もあるんだよなぁ、どんなに急いでも絶対に間に合わないよなぁ。
どうやって機嫌をとればいいんだろ?ひたすら謝りたおすか?う〜ん、どうしよう?
どうすればいいのか悩むオレは、赤信号に引っかかり、駅まであと少しというところで足止めを食う。
チクショウ、さっさと青になれよな。1秒でも早く島津のところへ行かなきゃまた蹴り倒されちまう。
焦るオレを焦らすかのようになかなか変わらない赤信号。
イラつく気持ちを抑え信号が変わるのを待つ。
信号が変わった瞬間、自転車を漕ぎ出す。
自転車を一歩漕ぎ出した時、腕時計のアラームが鳴り響いた。

(うわ!もう9時になっちまったのか?はぁぁ〜今日も遅刻確定かぁ)

 そう思い、自転車を止め、アラームを止めようとした瞬間、けたたましい車のクラクションの音がした。
なんなんだ?そう思った瞬間、キキキキィー!っと聞こえた大きなブレーキ音。
その瞬間、ドン!という音と共に暗くなる視界。
真っ暗になった視界の中、彩の…微笑んでいる……顔を………見たような気が…………した。
215: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:50:19 ID:FsOEuYoY(14/15)調 AAS
『ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!』

 腕時計のアラームが鳴り、待ち合わせの時間の9時が来たことを告げる。
……はぁぁ〜、やはり遅刻なのか?腕時計をプレゼントしたくらいでは遅刻は直らないのか?
まったく結城のヤツは……今日は時間も十分にあるんだ、たくさん結城を感じさせてもらうとしよう。
腕時計のアラームを止め、周りを見渡す。……やはりいないな。遅刻確定、だな。
仕方がない、結城が来るまでの時間を利用して、もう一度腕時計の使い方を勉強しなおすとしよう。
どうせ使い方が分からないと泣きついてくるに決まっている。
優しく教えてあげて感謝させないといけないな。こんないい時計をプレゼントしてくれてありがとう、と。
結城にプレゼントしてもらった時計を撫でながら、説明書を手に取り、機能についての勉強をする。
……ふふふふ、何が『同じ時計がいい』だ。なにが『ペアウオッチで恋人って感じがするだろ?』だ。
女である私に男物の時計をプレゼントするなんて、君くらいなものだぞ?
私の手首を覆い隠すような大きさの腕時計。まるで私を守ってくれているかのようだ。
……ありがとう。一生大事にするよ。だから君も一生大事にするように!
プレゼントした時計も……恋人である私も。
ペラペラと説明書を流し読みしながら結城が来るのを待つ。
早く……早く結城に会いたいな。結城が来たら、抱きついてみようかな?ふふふふ、きっと驚くだろうな。
私を待たせた罰だ、抱きつくくらいはさせてもらうとしよう。
……腕時計のタイマーのように、止めることが出来たらいいのにな。
この『会いたい』と思う気持ちはとてもやっかいだ。
ついさっきまで会っていたのに、デートが終わり家に帰るともう会いたくなってくる。
会いたいと思ってしまったら、もう止めることは出来ない。
いくら電話で話しても、君の体温を感じることが出来なければ意味がないんだ。
はぁぁ〜。早く来ないかな?早く私を抱きしめてくれないかな?
……私は、この時間が好きだ。結城を待っているこの切ない時間が大好きなんだ。
この時間は私がどんなに結城の事が好きかを自覚させてくれる大切な時間だ。
そして、この時間があるからこそ、結城の顔を見た瞬間の嬉しさが倍増する。
結城にも、こういう時間があってくれたら嬉しいな。

 遠くで聞こえる救急車のサイレンを聞きながら、結城の事を想う。
早く……早く君に会いたいな。君も今、私の事を想っていてくれたら、嬉しいな。
216: ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/07/17(木) 23:51:48 ID:FsOEuYoY(15/15)調 AAS
今回は以上です。次でラストの予定です。
217: 2008/07/18(金) 00:53:42 ID:2p6eozfT(1)調 AAS
おつ〜。

>遠くで聞こえる救急車のサイレンを聞きながら、結城の事を想う。
嫌な予感がするのですが・・・
218: 2008/07/18(金) 01:09:55 ID:wUTutgoA(1)調 AAS
なんというか君のぞっぽかったですねw
男女逆だったけど
彩かわいいよ彩
219: 2008/07/18(金) 06:40:53 ID:zcLpvXko(1)調 AAS
GJGJ
いやいや、そこで直ぐにまさかと思わないのが島津っちぽくていいじゃない

>オレはいっつもビシッとしてるっての!
どうみてもムスコの事です本当にありがt(ry
220: 2008/07/18(金) 07:26:03 ID:jNYUgXHh(1)調 AAS
まあ結城は頑丈だから死にはしないだろう
個人的には二人が病室でおっぱじめないか期待・・・じゃなくて不安だな
221: 2008/07/19(土) 13:01:55 ID:L0KmytBT(1)調 AAS
浮上
222
(3): 2008/07/19(土) 13:05:19 ID:FpUQwfv1(1)調 AAS
パンツを汚してしまった強気っ娘が
ノーパンになったためにしおらしくなってしまうものに需要があr
223: 2008/07/19(土) 13:18:43 ID:/OUJ7Wzb(1)調 AAS
>>>222
・需要がありますか→あるんなら書いてみたい
・需要があります→誰かに書いてほしい

さあどっちだ、言うんだ
224: 2008/07/21(月) 20:55:23 ID:u1jEmt4W(1)調 AAS
俺は書いてほしいが果たしてこのスレで良いのか?
225: 2008/07/22(火) 23:41:05 ID:9XaryVgd(1)調 AAS
ノーパン羞恥でゴ〜!! Part 3
2chスレ:eroparo
恥ずかしがる女の子に萌えるスレ
2chスレ:eroparo

どっちかで。
226
(1): 2008/07/23(水) 01:28:32 ID:vhDE39EH(1)調 AAS
>>222
誘い受けなら止めてくれないかな。
期待が激しく膨らんで日常生活で挙動不審になるからっ
227
(1): 2008/07/24(木) 00:30:47 ID:xcS64eMq(1)調 AAS
身に付けた丈の短いスカートから、自身の愛液で濡れた下着が見えてしまわないように、
懸命に姿勢を整えながら、>>226は意思の強さを感じさせる顔を赤くして、そう告げた。
228: ぱんつはいてない 2008/07/26(土) 01:35:32 ID:K/AlO5kh(1/2)調 AAS
 前の授業は体育だった。男子はこのクソ暑い中、外で走り幅跳びだとふざけんな。
 女子はプールでまだ生乾きの髪がちょいと色っぽい。階段で誰もいないのをいいことに
顔を寄せたらするっと避けられた。
「早くしなさい、次の授業始まっちゃうでしょう」
「もおいーよ、先行っとけ。委員長が遅れちゃまずいだろ」
「委員長だ・か・ら。クラスの動向は気になるわ。張り切りすぎて倒れる寸前になるバカがいるんだし」
「そんなバカは見捨ててしまえ」
 枠に寄りかかってしっしっと手を振ると、鼻を鳴らして俺の腕を取りかけて、やめた。
焦ったように駆け上がってしまう。さっきの避けようといい何か癪にさわる。
 困った顔をして数段上から教科書でスカートを押さえつつ見下ろす。
 相変わらずすらっと伸びた脚と黒のハイソが際立って……悔しいが見とれる。
「拗ねないでよ。あんたのその、一生懸命な所……向こう見ずとも言うけどね。
私は見てるんだから。…………好きよ」
 最後の所で照れ隠しにあっちを向いた。もう耳が赤くなってる。
 その一言で我ながら単純だと呆れるがまあいい、態度の悪さは帳消しだ。
二段飛びで昇って横に並ぶついでに、今日のパンツは何色だと軽くめくってみる。
「やあぁん! 駄目!」
 翻ったスカートの中は――――はいてなかった。……履いてない?!

「ちょ、おま……何で」
「もうバカバカバカいやえっちばかスケベ!」
 いつもなら殴られ蹴られしてるはずが、本人も動揺してるのかそのまま座り込んで
スカートの裾を引っ張りながら茹でダコ状態になってしまった。
「最近暑いでしょう? 今日は午前中プールだし、早く入りたいなあって思って、
……家から水着来てきたの」
「……で、パンツ忘れて来たと?」
 普段からは信じられない気弱な声で告白して、俺の言葉にこっくりと頷いた。
「さすがの強気委員長もノーパンでは心許ないか。上はどうした?」
「キャミ着てるし、気を付けてれば目立たないかなっ、て……」
 乳でかくないから大丈夫だろ、と喉で笑うとべちんと手の平で顔面をはたかれた。
「だだだ誰にも言わないでよ。友達にも内緒なんだから、言ったら殺すわよっ」
「イマドキ小学生でもやらねえヘマだよな。……なあ、俺を避けたのって、バレたくなかったから?」
「他に理由がある?」
「いーや。やっぱオマエ可愛いな。好きだぜ」
 何のてらいもなく言い放ちやがって。一瞬ガードが緩んだとこにキスを返す。
 胸を軽く撫でると、確かにノーブラだ。しかも柔らかい唇の感触とふやけた躰の匂い、
濡れた髪の手触りに加え、はいてない、とくればちょっとヤバイだろ。
「ダメよ駄目、授業行かなきゃ」
 怒りつつも唾液垂れてる口元と摺り合わせる太股がますますそそる。
「もうとっくに始まってるよ、サボりだサボり。……しようぜ」
「なに言ってんのよっ、嫌、いーやーっ! あんたバテてるんでしょ」
「下半身別。勃起しちまった。このまま授業行ったら挙動不審者扱いだな」
「こーのーヘンタイ! 本物の痴漢になるつもり?!」
「ノーパン委員長のせいだと大人しく自首するだけです俺は」
「ずるいわよ。脅迫してんの」
「オマエもこの状態で無理だろ? せめてトイレ行かないとな?」
 ハイソ越しに引き締まったふくらはぎから奧に手を滑らす。慌てて脚を閉じても
無理だって。はいてないんだからやめろっつっても生で触り放題だ。
 くちゅっと鳴る音にいくら目をつぶっても、切ない声と吐息は抑えきれるもんじゃない。
「やめて、トイレはいや、嫌だってばぁ。…………別の所で、して」
 ――――勝った。
「屋上へ行こう。今なら誰もいない」

 ……久しぶりだったんでやりすぎた。ちょいと反省。
 昼休みにコンビニへパンツ買いに行くと言ってたのに、委員長は疲れて動けず、
代わりに行ってやるという俺の申し出を無下にしたおかげで、放課後までノーパンだった。
 ぎりぎり睨み付ける眼に、命の危険を感じてしまったりした。
229: 2008/07/26(土) 01:37:57 ID:GHwGYWW4(1)調 AAS
おっきした
230: 128 2008/07/26(土) 01:39:59 ID:K/AlO5kh(2/2)調 AAS
>>222氏ではありませんがノーパンでひとつ
失礼しました
231: 2008/07/27(日) 11:34:04 ID:3i2hvTRP(1)調 AAS
はいてないシチュはいいかもしれん
232: 2008/07/29(火) 23:58:35 ID:e4n6/cmr(1)調 AAS
>>227
また最初のほうみたいなことになるかと思ったらならなかった
やっぱあれは例外中の例外の事態だったか
233
(1): 2008/07/31(木) 00:31:13 ID:zc/fATAD(1)調 AAS
リレーは難しいからな
234: 2008/08/01(金) 22:00:08 ID:3Lfz1mAA(1)調 AAS
「リレーは難しい」
そう思って自分の気持ちを無理に押さえ込もうとする>>233であったが、
1度火が着いた想いは2度と消え去ることは無かった。
まるで自身の秘所からとどめなく溢れ出す蜜のように。
235: 2008/08/02(土) 14:11:25 ID:umjZYDUK(1)調 AAS
「ちょっと、あなたたちも手伝いなさいよ」
「うるせーよ、一人でやってろ」
美咲真理は一人で後片付けをしていた
京子たちが水泳の授業後の片付けをさぼってしまうからだ
「まったくあの人たちは・・・」
先日もあの娘たちは先生に注意されているというのに・・・

「あっ、早く着替えないと次の授業に遅れちゃう」
真理は足早に更衣室に向かった
236: 2008/08/06(水) 01:14:01 ID:lHqA5f2I(1)調 AAS
保守
237: 2008/08/09(土) 02:34:28 ID:TMVj1mdq(1)調 AAS
保守
238: 2008/08/15(金) 18:41:32 ID:55IHYtyF(1)調 AAS
「保守、保守って…!私はあんたの女房役じゃありません!」
「あの…それ…『捕手』ってダジャレ?」
「う、うるさいわね!だいたい、あんたはいちいち細かい所を見過ぎよ!」
「そ、それは…きみの事を考えて…さ」
「わたしはあんたなんか居なくても…居なくても…

大丈夫だから…」
彼女の目には、光る物があった。
そっと青年がハンカチを差し出したが
「泣いてません!」
彼の夏は、始まったばかり。

保守。
239: 2008/08/16(土) 04:43:06 ID:WaMz3G+9(1)調 AAS
あー。どっかに美人でグラマラスなツンデレお姉ちゃん落ちてないかなー。
240: 2008/08/19(火) 09:06:08 ID:uMKEQL1q(1)調 AAS
デトロイトメタルシティを読んだんだが、レイっていう女が痴漢されたときに可愛くなるのに少し萌えた。
241: 2008/08/24(日) 14:10:52 ID:NTBxPkl9(1)調 AAS
保守
242: 2008/08/29(金) 21:39:30 ID:t1atbw5M(1)調 AAS
保守
243: 2008/09/04(木) 01:53:37 ID:XKJydHow(1)調 AAS
ききき喜多さんがキター!
244: 2008/09/04(木) 23:35:15 ID:If9j3caQ(1)調 AAS
てめえそんな嘘で人を騙せると…ほんとにキテルー!!!
245: 2008/09/05(金) 12:02:31 ID:5hzoCoH/(1)調 AAS
おいおいおい、エイプリルフールはまだまだ先だぜ?そんな野暮な嘘はやめときな……ってホントにキテター!
246
(1): 2008/09/06(土) 23:14:29 ID:ACk2H/o+(1)調 AAS
ツクバ屋さんも更新してたぜ
247: [さんきゅsage] 2008/09/07(日) 08:29:10 ID:RxBTMM/L(1)調 AAS
>>246
ア、アンタなんかに言われなくても知ってたわよ!
248: 2008/09/13(土) 23:30:44 ID:oyKQWx9L(1)調 AAS
ほしゅ
249: 2008/09/17(水) 23:46:37 ID:fqqu1Coz(1)調 AAS
保管庫にある「ボクっ娘!愛奴調教」の続きが
とても読みたいです。これからって感じなのに・・・
250: 2008/09/18(木) 13:40:13 ID:6Jlt3fn5(1)調 AAS
だいぶ前にこのスレで話題になってたサンデーのヤンキー娘のラブコメ漫画の1巻出てたから買ってきた
馴れ初め編にあたる読み切りは残念ながら載ってなかったが、なかなか面白かった
とらのあなとかの一部書店で書き下ろしのペーパーが数量限定でついてるみたいだからお早めに
251
(1): 2008/09/19(金) 11:41:27 ID:U7MNCZmg(1)調 AAS
ツクバさん、更新止まっちゃったね。何かあったのかな?
252: 2008/09/19(金) 22:50:15 ID:4qj6wEoQ(1)調 AAS
>>251
小説サイトが2〜3ヶ月程度に一度更新するだけでもすごいこと
253: 2008/09/24(水) 18:38:10 ID:mkLRDUtM(1)調 AAS
下がりすぎ、アゲますよ
254
(1): 2008/09/25(木) 13:37:07 ID:nByuUvCl(1)調 AAS
定期的にあるツクバさん更新うんちゃらは自演?
誰も気にしちゃいねーんだけどw
255: 2008/09/25(木) 22:50:06 ID:5E89XEBt(1)調 AAS
>>254

俺は気にしてる
256: 2008/09/27(土) 13:58:21 ID:+/KyLrMl(1)調 AAS
俺も気にしてる
教えてくれるのはありがたい
257: 2008/09/28(日) 13:19:04 ID:WSxegUII(1)調 AAS
今喜多さん読み返してるんだけど、2ch漫画用語辞典とバキとJOJOに目を通しておけばたいがいのネタはわかるな

2ch漫画用語辞典
外部リンク:www14.atwiki.jp
258: ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:52:36 ID:pODSkiGy(1/15)調 AAS
不器用な彼女の最終話を投下します。
エロナシですので、エロナシが苦手な方は、スルーをお願いします。
259: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:53:15 ID:pODSkiGy(2/15)調 AAS
 月曜日の朝。いつもの通学路が、何故か色あせて見える。
普段ならガヤガヤとにぎやかな、通学途中の生徒達の話し声も、どこか遠くから聞こえるように感じる。
いつものように下駄箱を開け、上履きに履き替える。
いつものようにしているのに、どこか夢の中をさ迷っているかのような、ふわふわとした感じがする。
そう、まるで夢の中にいるように思えてくる。……夢、だったのだろうか?
実はまだ金曜日の夜で、明日のデートに備え早めに寝てしまった私が見ている夢なのだろうか?
そうか、これは夢なんだ。きっと土曜日にあった出来事も夢なんだ。
そうだ、そうに決まっている。でなければ、あんな酷いことが起こる筈はない!そう、結城が車に……

「し、島津っち……おはよう」

 フラフラとふらつく足取りで教室に入ると、友人達が恐々といった様子で話しかけてくる。
あぁ……夢の中にも皆は出てくるのだな。結城はまだ出てこないのかな?
夢とはいえ、大事な彼女を心配させたんだ。早く会いに来てくれてもいいと思うのだが?

「あの、なんて言ったらいいか分かんないけど……大丈夫だよ!きっと元気になるって!」
「そうそう!結城はバカだけど、島津っちを悲しませるような大バカじゃないって!」
「そうそうそう!あいつはああ見えて、なかなか男らしいところがあるから、きっと大丈夫だよ!」

 やはり元気がないように見えるのだろうか?……見えてしまうのも当たり前か。
あれからまる2日間、私は一睡もしていないのだから。
2日間寝ていない?そうか、2日間も続いている夢を見ているのか。
どうやら私は長い夢を見ているようだ。……夢ならどんなによかったことか。
夢でないことは分かっている。今も残っている、結城に触れた手の感触。
結城の変わり果てた顔。色々な管が通っている身体。
痙攣の為か、時折開く瞼。その瞼から覗いた光のない瞳。……あの全て夢だったら、どれほど嬉しいことか。
けど今も聞こえるように耳にこびり付いている。おばさんの鳴き声が。加害者の、涙声での謝罪の言葉が。
その人に対するおじさんの怒りの罵声。そして……私の泣きじゃくる声。
その全てが私の頭の中に記憶として残っている。
……何故私はこんな覚えたくもないことまで覚えてしまうのだろうか?
私はこれからの一生を、この記憶を抱えたまま生きていかなければいけないのだろうか?

「……おはよう」
「……元気になるかな?」
「……あまりバカなどと言わないでほしい」
「……男らしい?そう、結城はとても男らしいんだ」

 そう、結城は男らしい。家の手伝いで鍛えられたたくましい腕。
いつも私を抱いてくれた後にしてくれる腕枕が、ここ最近の一番の楽しみなんだ。
でも……その腕も今は力なく、ベッドの上で横たわっている。
260: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:54:17 ID:pODSkiGy(3/15)調 AAS
「し、島津っち……こんなこと聞いていいのか分からないけど、結城は大丈夫なの?」
「……お医者様の言うには、今の結城は息をして心臓が動いているだけの状態らしい。
常人なら即死だったと。鍛えていたから、車に跳ねられた後も心臓が動いているんだ、と」

 幸せな時間を過ごすはずだった、結城とのデートの約束。
遅刻ばかりしている結城にあげた、誕生日プレゼントの腕時計。
遅刻をしないようにと、タイマーを待ち合わせ時間の朝9時にセットしてあげたんだ。
まさかその約束の時間を守ろうとして……こんなことになるなんて。

「し、島津っち……だ、大丈夫だよ!こんな綺麗な彼女を残して死ぬなんてことないよ!」
「バ、バカ!死ぬとか言っちゃダメだって!」
「……死ぬ、のだろうか?やはり結城は死んでしまうのだろうか?私を一人にして……ひっく、死んでしまうのだろうか?」

 考えないようにしていた最悪な現実。どう考えても変えようのない、耐えられない現実。
デートの待ち合わせ時間に間に合おうと、急いで駅へと向かっていた結城。
駅前の歩道橋を渡ろうとしたとき、信号無視の車が突っ込んできた。
……お医者様が言うには、本人は車に跳ねられたことも気づいていないだろう、ということだった。
あれからまる2日。結城は息をして、心臓も動いている。しかし、ただそれだけだ。
私が好きだった、あのたくましい腕に力が入ることもなく、横たわったままだ。
何度も見詰め合ったあの顔も、寝ているのは結城だと、教えられなければ分からないくらいに、腫れ上がっている。
そう、結城は交通事故に遭い、生死の境をさまよっている。
……お医者様曰く、覚悟をしておいてください、と。
結城が死ぬ……死んでいなくなってしまう!
そう考えただけで、私の目からは涙があふれ出し、止まらなくなってしまう。

「ゴ、ゴメンね?でも事故から2日経ってるんだよね?それでも頑張ってるんだよね?だったら結城を信じようよ!
きっと結城は頑張って生きてくれるって!」
「そうそう!結城は打たれ強いんだから、すぐに元気になるって!」
「そうだよ!結城が元気になったとき、島津っちが泣いてたら悲しむよ?だからさ島津っち、泣かないでよ」

 友人達の優しい言葉にますます涙が溢れてくる。
声を上げ、泣きじゃくる私をギュッと抱きしめて慰めてくれる友人達。
皆の温かさが私を励まし、もう結城は死ぬしかないんじゃないのかと、絶望に打ちひしがれていた私を勇気付ける。

「ひっぐ、ぐす……皆、ありがとう。……そうだな。結城は私の泣き顔は嫌いだった。
私が泣いていれば、結城は安心して治療に専念できない。そうだ、私は泣いていてはいけないんだ」

 そうだ、結城は私の泣き顔は嫌いだと言っていた。
私が泣いて、結城を心配させてはいけない。うん、結城も頑張っているんだ、私も泣かないように頑張らないといけない。

「……皆、ありがとう。私は決して泣かない。以前結城は、私の泣き顔を見るのが嫌だと言っていた。
そうだ、私が泣いてしまったら、結城は安心して治療に専念できないではないか」
「そうだよ!島津っち、結城を心配させちゃダメだよ!」
「そうそう、それにね、アタシ達も島津っちの悲しい泣き顔なんて見たくないしね」
「うん、友達が悲しむところなんて見たくないよ」

 皆は私をギュッと抱きしめてくれて、励ましてくれる。
皆が落ち込んでいる私を励まそうとしてくれている。
こんな私なんかを友達と言ってくれて、一生懸命に励ましてくれる。皆……ありがとう。
つい今しがた泣かないと誓ったはずなのに、もう泣きそうになってしまった。
けど、ここで泣いてはいけない。次に泣く時は、結城の退院の時だ。
思いっきり泣いて、結城を困らせてやろう。ふふふふ、結城は困った顔をしてくれるかな?
261: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:55:01 ID:pODSkiGy(4/15)調 AAS
 結城が事故が遭ってから、毎日のお見舞いが私の日課となった。
事故から一週間。おじさんやおばさんにも疲れの色が見えてきた。
ただベッドで横になり、息をしているだけの結城。このような状態で、本当に治るのだろうか?
集中治療室で力なく横たわっている結城。
私は結城の側に付き添い、いつものように心の中で話しかける。

 まだ起きないのかい?君はほんとに寝ぼすけさんだな。
いい加減に早起きにならないと、ダメだぞ?早く起きて、また私を抱きしめて欲しい。
こんなに心配をさせているんだ、抱きしめてもらってもいいだろう?
私が君を起こせるようになればいいのだが……将来的には起こしてあげたいな。
その時はたたき起こしてあげよう。……優しく起こして欲しいだと?
ふふふふ、残念ながら我が島津家では、寝ぼすけはたたき起こされると決まっている。
……結城家はどうなのだろうか?結城家では優しく起こすと決まっているのであれば、私もそうしなければいけないかな?
……君はまた、私をギュッと抱きしめてくれるのだろうか?……抱きしめてくれなくてもいい。
ただ、生きてさえくれたら、それでいい。だから……早く意識を取り戻して欲しい。
でないと、おじさんやおばさんが疲れきって倒れてしまう。
結城、早く目を覚ましてほしい。君がいないと、結城米穀店が立ち行かなくなってしまう。
体に障害が残ってしまったとしても、私がお店を手伝おう。
いや、私が君と一緒に跡取りとして働いてもいい。
だから……早く目を覚ますんだ。私の友達も、学校の皆も結城が目覚めることを待っている。
……ふふふふ、君はいつも待たしてばかりだな。けど、君は遅刻はしても必ず来てくれた。
今回も……大丈夫だよね?皆を待たしてるんだ、またカレーをご馳走しなければ文句を言われてしまうぞ?
ふふふ、けど安心してほしい。今回は君1人にお勘定を払わせるつもりはない。
私は君の彼女だ。今回だけは、君と一緒に払ってあげよう。
……君は文句を言うのだろうか?『事故に遭ってまでお金を払わされるってなんなんだよ!』って。
けど、払うのが君と私の義務だと思う。今皆は、君の為に千羽鶴を折ってくれている。
君が早く退院するようにと鶴を折ってくれているんだ。
ふふふふ、皆の気持ちに答えるためにも、早く退院してカレーをご馳走しなければいけないな。
私も君が退院するまではカレーを食べないつもりだ。君と一緒に食べたいからな。
私のここまでさせているんだ、退院したら、感謝の言葉を囁いて欲しいな。
ギュッと抱きしめて、愛してると囁いて欲しい。……お礼に私も囁いてあげるから。
だから、一日でも早く、怪我を治して退院してほしい。
結城……また明日、君に会いに来るよ。明日こそは直接話し合えると願っているよ。

 短い時間だったが、結城との会話を終えて、集中治療室を出る。
ダメだ、結城の姿を見たら、涙がこぼれそうになってしまう。
私が泣いてしまったら、結城が安心して治療に専念できないではないか!我慢だ!我慢するんだ、私!
唇をかみ締め、涙を堪える私。そんな私におじさんが話しかけてきた。
262: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:55:59 ID:pODSkiGy(5/15)調 AAS
「島津さん、ちょっと時間いいかな?」
「おじさん、少しなら大丈夫ですが、いったいなんの用でしょうか?」

 おじさんから話しかけてくるとは珍しい。
結城の事故以来、おじさんとおばさんが話しかけてくることは減った。
多分、悲しみに打ちひしがれていた私に気を使ってくれていたのだろう。
一番辛いのはおじさん達なのに……そんな事も分からなかったバカな私に腹が立つ。
そうだ、一番悲しいのはおじさん達なんだ。実の息子が事故に遭ったんだ、私なんかよりもずっと悲しいはずだ。
そうだ!励まさなければいけない!私は友人達に励ましてもらい、どうにか元気になった。
今度は私が励まさなければ!おじさん達に元気がないと、結城も安心して治療に専念できないだろう。
うん、色々な話をして励まそう。誰かを励ます経験はほとんどないのだが、私がしなければいけないんだ。

「用事とかじゃないんだけどね、その……修太のことを教えて欲しいんだ」
「結城のこと、ですか?」
「そう、修太が学校でどういうことをしてたのか、いつもはどんなことを話してたのかとか。
おじさん達、あまり学校での修太の事を知らないんだ。……おじさん達に教えてくれかな?」

 悲しそうな顔をしたおじさん。心労からか、憔悴した顔のおばさん。
私が話すことで、少しでも元気になってもらえるのならば、いくらでも話そう。
今ではおじさん達は、私の大事な人達だ。
結城と出会ってから、私には大事な人たちがたくさん出来た。
いつも話しかけてくれ、私が困ったり落ち込んでいたりすると、いつも助けてくれる優しいクラスメートの皆。
慣れないバイトで戸惑っていた私をフォローしてくれて、いろいろなことを教えてくれた優しいおばさん。
いつも豪快に笑い、私を本当の娘のように優しくしてくれるおじさん。
それに、家族以外で生まれて初めて出来た……いや、家族以上に大事な人。
ふふふふ、そう、君のことだよ、結城。
君の事を話すことで、おじさん達が少しでも元気になれば、君も喜んでくれるかな?
……学校での君の事を話すと、あとで君は拳骨をもらうかも知れないな。
けど私に文句は言わないで欲しい。いつもバカなことをしている君が悪いんだ。

 それから少しの時間、私は思いつくままに結城の事を2人に話した。
初めての出会いが『長宗我部元親』から始まった事。何度も失礼なことを言われ、その度に蹴飛ばしてしまったこと。
教室の真ん中で気絶した結城を膝枕した話には、おじさん達も声を出して笑ってくれた。
学校の帰り道、私から腕を組み、キスをした話をしたときは、真っ赤な顔で驚いてくれた。

『島津さんはやっぱり変わり者なんだね。修太にお似合いだったよ』と。

 どこが変わり者なのか分からないが、2人にお似合いといわれて嬉しかった。
2人が楽しそうに笑ってくれたことで、私も胸が軽くなった気がした。
結城の話しを終え、帰ろうとした私におじさんが話しかけてきた。

『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』と。

 私はこの言葉の意味が分からずに、ただ、『ハイ』と頷いただけだった。
病院を出てから考えてみた。先ほど言われた言葉の意味を。
いったいおじさんは何を言いたかったのだろう?もう十分とはいったい何のことなのか?
……分からないな。おじさんがいったい何を言おうとしたのか、よく分からない。
家に帰ってからママに相談をしてみよう。ママなら何か分かるかもしれない。
そう考えて家路を急いだ。今日は少し帰るのが遅くなってしまった。
拓や直樹がお腹をすかして待っているだろう。早く帰って美味しいご飯を作ってあげねばいけない。
そうだ!今日は2人が大好きな餃子にしてあげよう。パパも発泡酒と一緒に食べるのが大好きだし、ママも大好きだ。
皆、餃子をおかずにすれば、喜んでくれるだろうか?喜んでくれたら、嬉しいな。
263: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:56:44 ID:pODSkiGy(6/15)調 AAS
「ママ、ちょっと聞きたいことがあるのだが、少し時間をもらってもいいだろうか?」

 美味しい夕食を終え、食器を洗い、手の空いたところでママに話しかける。
病院でおじさんが言った言葉に対してママの意見を聞くために。

『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』

 この言葉の意味はいったい何なんだろう?何が十分なのだろう?あとは私だけとはいったいどういうことなのだろう?
おじさんが神妙な表情で言ったこの言葉。意味を考えれば考えるほど、何か嫌な予感がした。
……何故嫌な予感がするのだろう?

「ん?話って何?……結城くんのこと?」
「うん、結城についてなんだが、今日、おじさんに変なことを言われたんだ」

 私の家族は、もちろん結城の事故のことを知っている。
パパは、落ち込み、泣きじゃくっていた私を優しく抱きしめてくれ、慰めてくれた。
拓と直樹は、私の大好物のタイヤキや、たこ焼き。屋台の焼きそばを買ってきてくれた。
落ち込んでいる私を、食べ物で慰めようなんてちょっと違うのではないか?
……おなかいっぱいになった後は、何故か落ち着いたとこは秘密にしておこう。
そして、ママは……一緒に寝てくれて、一晩中私の話を聞いてくれた。
優しく頭を撫でてくれ、きっと大丈夫。結城は必ず大丈夫と励ましてくれた。
家族みんなが私を励ましてくれたおかげで、私はどうにか踏ん張ることが出来た。
家族に励まされ、友人達に励まされ……私は立ち直ることが出来たんだ。
……本当に私は恵まれている。
私の些細な相談にも乗ってくれ、落ち込んだ時はいつも励ましてくれる、とても優しい友人達。
私のことをとても大事に思ってくれているパパ。……お小遣いを減らされても、文句一つ言ってこないとても優しいパパ。
いつも騒がしく、手がかかる二人だが、どんなに叱っても私を慕ってくれる自慢の弟達。
怒ると怖いけど、いつも私たち家族のことを考えてくれていて、色々な相談にも乗ってくれる、とても優しいママ。
それに……少しバカだけど、私のことをとても大切に思ってくれていて、とても大事にしてくれる。
バカな私を愛してると言ってくれた、私のとても大事な人。
初めて『愛』という感情を教えてくれた、私の大事な恋人……結城。
本当に……私は本当に恵まれている。
こんなにも優しい人たちに囲まれ、素敵な人に愛してもらえ、
大好きな人を愛することが出来る人間なんて、この世にそうはいないのではないか?
私は幸せだと断言できる。結城が退院してくれれば、もっと幸せになれる。
だから、結城……早く退院して、私を幸せにしてほしい。
264: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:57:36 ID:pODSkiGy(7/15)調 AAS
「……彩?なにニヤけた顔をしてるの?どうせ結城君のこと、考えてたんでしょ?」
「……え?い、いや、結城のことは考えてはいたが、その……マ、ママ!からかわないでほしい」
「あはははは!ゴメンゴメン、あまりにも彩が可愛かったからね。その様子だと、結城君、回復してきたの?」

 ママの何気ない言葉に表情を曇らせてしまう。
私は、何をのん気にはしゃいでいたのだ?結城は……私の大切な結城は、まだ意識はなく、苦しんでいるというのに。
私は……バカだ。大バカだ!大好きな人が苦しんでるというのに、何をはしゃいでいるんだ!

「あ、彩?ゴメンネ?ママ、考えなしに言っちゃって……」
「マ、ママは、わるぐない。わだじが、はじゃいだわだじがわるいんだ」
「あ、彩?唇かみ締めてどうしたの?」
「わだじが泣くと、結城があんじんじて治療でぎない。だからわだじはながない」

 唇をかみ締め、涙を堪える。私はいつからこんなに泣き虫になったのだろうか?

「そう……本当にゴメンね?貴女の気持ち、よく考えずにいたママを許してね」

 唇をかみ締め、涙を堪えている私を、優しくギュッと抱きしめてくれるママ。
ママ、抱きしめてくれるのは嬉しいのだが、そんなに優しくされるとますます涙が……

「彩、貴女、凄い顔してるわよ?そんな顔じゃ結城君にも笑われちゃうわね。
シャワーでも浴びて、スッキリしてきなさい。話はそれからね。
頭からシャワーを浴びれば顔中濡れちゃって、泣いているかどうかなんて分かんないわよ」
「頭がら浴びるど分がらない?」
「そう、分かんないわ。だから、ね?シャワーを浴びて、スッキリしてきなさい」
「で、でも……」
「溜めておくのは体によくないわ。シャワーが全てを流してくれるわよ。さ、すっきりして来なさい」

 優しくほほ笑みながら、そっと背中を押してくれるママ。
ママはいつもそうだ。私が困っている時は、優しくほほ笑みながら、励ましてくれる。
ママの言葉に甘えることにした私。
シャワーが私の涙を流してくれ、シャワーの音が、私の声を掻き消してくれた。
……強くならなければいけない。結城が私のことを心配せずにすむように、もっと強くならなければいけない!
熱いシャワーで涙を流し、心に誓った私。
熱いシャワーは涙を流すだけでなく、私の弱気になった心も温めてくれたようだった。 
265: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:58:24 ID:pODSkiGy(8/15)調 AAS
「で、彩。ママに聞きたいことって何?」

 シャワーで涙を流し、スッキリとしてお風呂を出てみれば……ママが冷たいアイスを用意してくれていた。
こ、これは!……モチモチとした触感が、まるで本物のお餅のような、お饅頭をモチーフにしたアイス。
2個入りのこのアイスを、拓と直樹の3人でどう分けるかを、いつも争っていた、とても冷たくて美味しいアイス。
アイスの形が月に似ているからその名がついた、『月見満月アイス』ではないか!
しかもママは、驚くことに一人で2個食べてもいいと言ってくれた!
あぁ……モチモチとしたこの触感。口に広がるバニラアイスの冷たくて美味しい芸術的な味。
あぁ……至福のひと時だ。このように美味しいアイスが、コンビニで買えてしまってもいいのだろうか?

「……彩、美味しくて夢中になるのは分かるけど、ママに話があるんでしょ?」
「はぐ!ふぉうふぁった!ふぁふぁ、おひひゃんはわわふぃにふぉういっふぁんふぁ」
「……はぁぁ〜。話は全部食べてからでいいわよ。食べながら話すのは、お行儀がよくないわ」

 何故かため息を吐いたママを尻目に美味しいアイスを味わうことにする。
あぁ……お風呂上りの冷たいアイス。これほどの贅沢がほかにあるのだろうか?
はむはむとアイスを食べ終わり、ママに本題の話をする。
……何故少しあきれているような顔をしているのだろうか?

「彩、満足した?で、ママに聞きたいことってなにかしら?」
「ものすごく美味しかった。私だけがこのように美味しい物を食べて、いいのだろうか?」
「もう!話がないならママ、お風呂に入るわよ!」
「ゴ、ゴメンママ!そ、その聞いてほしいことというのは……おじさんに言われた言葉の意味を教えてほしい」

 そう、おじさんは何故あんなことを言ったのだろう?
何が十分なのだろう?あとは私だけとはどういう意味なのだろう?

「おじさん?……あぁ、結城君のお父様のこと?」
「そう、結城米穀店の店主であり、結城の父親であるおじさんが、私に不思議なことを言ったんだ。
『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』と。これはいったいどういう意味なのだろう?
考えても考えてもどういう意味なのかよく分からないんだ」

 そう、おじさんに謎の言葉を言われてから私は考えた。この言葉にはどういった意味があるのか、を。
けど考えれば考えるほど、何故か胸の奥がザワつくというか……嫌な気分になる。
これはいったいどういうことなのだろう?

「……そっか。そこまで結城君、容態が悪かったのね。結城さん達は覚悟を決めたのね」
「容態が悪い?た、確かに結城はまだ意識を取り戻してはいない。しかしだな!結城は頑張っているんだ!
だからあまり容態が悪いとかは言わないでほし……覚悟を決めた?」

 ママの口から出た言葉、『覚悟を決めた』。この言葉を聞いて、何故か体が震えてきた。
な、何故だ?何故震えてしまう?アイスを食べたからか?2個も食べてしまったからなのか?

「彩……取り乱さずに聞いてほしいの。
部外者のアタシにはよく分からないことなんだけどね、多分、結城君……回復はしないと思うの」
「……え?か、回復しない?そ、それはどういう意味なのだろうか?」
「……言葉どおりの意味よ。このまま意識を取り戻すことなく生き続けるのか、それとも……死んでしまうのか」

 ママの言った言葉を理解できずにキョトンとしてしまう。
え?意識が戻ることがない?ええ?し、死んでしまう?……嘘だ!結城が私を残して死ぬはずがない!
何故ママはそんな酷いことを言うんだ!
266: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:59:11 ID:pODSkiGy(9/15)調 AAS
「マ、ママ……何故そんな酷いことを言うんだ」

 ガクガクと全身が震え、背中を冷たい汗が伝う。
今までなるべく考えないようにしていた。友人達に励まされてからは、まったく考えなかった。
今、目の前まで迫っている悲しい現実……結城の死。
ママの口から発せられた言葉に、私は身動き一つ取れなくなってしまった。

「彩……落ち着いて聞きなさいね?結城君のご両親はね、覚悟を決めたのよ。
可愛い我が子がいなくなってしまうことを」
「そ、そんなはずはない……あの優しいおじさんやおばさんが、結城を見捨てるなんてする訳がない!」

 ガクガクと震えながらママの言葉に反論する。おじさん達が結城を見捨てるなんてありえない!

「そんなの当たり前でしょ!誰が好き好んで愛する我が子を見捨てるもんですか!
親というものはね、たとえ我が子が犯罪者になっても見捨てないものよ」
「なら何故結城が死んでもいいと思うんだ!」
「彩……結城君のご両親はね、死んでもいいなんて思ってなんかないわよ。
むしろ結城君と変わってあげたいって思ってるわよ。……ベッドの上で苦しんでる結城君とね」
「当たり前だ!おじさんやおばさんはとても優しいんだ!ママのような薄情なことは決して言わない!」

 ママは私の味方だと思っていたのに、何故酷いことを言うんだ!
ママを見損なった!ママなんかに相談した私がバカだった!明日にでも友人達に相談しよう。
皆ならキチンと答えてくれるはず。ママなんかと違い、しっかりと答えてくれるはず。

「彩……なぜ結城君が頑張ってると思う?意識がないのに、事故から一週間。
普通なら即死の状態で、何故一週間も頑張ってくれてると思う?」
「何故結城が頑張っているかだって?そんなものは決まっている!結城は頑張って怪我を治したいと思っているんだ!」

 そう、怪我を治し、また皆と学校で騒ぎたいと思っているんだ!
おじさんやおばさんの手伝いをし、結城米穀店を支えたいと思っているに違いない!
私と……デートをのやり直しをしたいと頑張ってくれているんだ!

「ううん、それは違うと思うわ」
「ママ、酷い!何故酷いことばかりを言って私を苛めるんだ!ママは……私が嫌いなのか?」
「彩……アタシはね、彩が大好きよ。彩にパパ、拓に直樹が大好きなの。
例えママが死んじゃっても、守りたいほどに好きなの」
「なら、何故酷いことばかりを……」
「きっとね、結城君も、彩やご両親のことが大好きだから頑張ってると思うの。
頑張って生き続けて……少しでも長く生き続けようと頑張ってるのよ。あなた達が、頑張れるようにってね」

 私たちが頑張れるように?ママは何を言っているのだろう?
結城が私たちを応援してくれているとでも言うのだろうか?でも、今応援されなければいけないのは結城のほうだ。
何故その結城が私たちが頑張れるようにと頑張っているのだ?

「……どういう意味なのだろう?何故私たちが結城に応援されなければいけないのだろう?」
「きっとママが結城君と同じ立場になっても、そうしようと思っちゃうんじゃないかな?
多分だけどね……結城君は皆の為に時間を稼いでいるのよ」
「時間を稼ぐ?それはいったいどういう意味なのだろう?」
「それはね、長く生きることで、結城君が死ぬという覚悟を決める時間を作ってくれてると思うの。
だからね、結城君のご両親は覚悟が出来たのよ。
彩にもう十分だって言ったのは、結城君が死ぬことに、覚悟を決めることが出来たってことだと思うの」
「な……お、おじさん達が、結城が死ぬと思っているということなのか?」

 おじさん達がそんな酷いことを思うわけがな……そういえば思い当たる節がある。 
今日になって急に結城の話をしてほしいと言ってきた。
あれはもしかして結城のことを諦めるためではないのか?
もしかして、結城のことを思い出にするために聞いてきたのではないのか?
酷い……ママもおじさん達も酷い!結城はまだ頑張って生きているんだ!
それなのに、結城が死ぬとか考えているなんて……最低じゃないか!
267: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:59:54 ID:pODSkiGy(10/15)調 AAS
「彩……そんな顔、しないでよ。そんな悲しい顔はしないで」

 ママの話を聞いて、涙がポロポロと溢れてくる。
もう泣かないと誓ったのに溢れてくる。ママやおじさん達が酷いことを考えているからだ。
何故そんな酷いことを考えるのだろう?何故頑張っている結城を応援しようとしないのだろう?

「……ママが酷いことを言うからだ。おじさん達も酷い。何故皆酷いことを平気で考える?
結城は頑張って生きている。今、こうしてママと話している時も。それなのに、何故酷いことを……」
「……彩はね、結城君が苦しんでいるところを見ていたいの?」
「そんなの見たくない!見たいわけがないじゃないか!」

 大好きな人が苦しんでいるところを見たいかだって?そんなものは見たくないに決まっている!
そんなものが見たい人は変態しかいない!

「うん、見たくないわよね?結城君のご両親もね、きっとそうなのよ。
結城君、苦しんで生きてると思うの。だって酷い事故に遭っちゃったんだからね。
痛くて痛くてとっても辛いと思うの。普通なら痛くて苦しいから、すぐに死んじゃうと思うの。
でもね……結城君は皆のために痛いのも苦しいのも我慢して、辛いのも我慢して生きていると思うの」
「ゆ、結城が我慢して生きている?それはいったいどういう意味なのだろうか?」
「それはね、みんなの為。ご両親や彩のために苦しんで生きているの。
みんなが覚悟を決める時間を作ってくれてるのよ。
結城君が死んでも大丈夫なように、自分がいなくなってもみんなが頑張って生きていけるようにって。
みんなに自分が死んでいなくなることを、覚悟してもらうために頑張って生きて、時間を作ってると思うの」

 マ、ママは何を言っているんだ?結城が私たちのために時間を作っている?
結城がいなくなることを覚悟してもらうために、頑張って生きて時間を作っている?

「ご両親はね、もう無理して頑張っている結城君をみたくないと思ってるんじゃないかな?
苦しんでいる我が子を見たい親なんていないからね。だから彩に言ったと思うの。
『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』ってね。
ご両親は覚悟を決めたのよ。あとは……貴女が覚悟を決める番。
結城君がいなくなるという現実に、覚悟を決めるの。これはね、他の誰でもない、彩がしなきゃいけないことなの。
じゃないと、頑張っている結城君が可哀想よ」

 ママの残酷な言葉に涙が止まらなくなる。
な、何故そんな覚悟を決めなければいけない!私は嫌だ!結城がいなくなるなんて絶対に嫌だ!
268: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:00:37 ID:pODSkiGy(11/15)調 AAS
「わ、だじはぁ、ひぐ、やだぁ!いなぐなるなんで、ぜっだいにイヤダァ!」
「彩……うん、気持ちはよく分かるわ。でもね、覚悟を決めなきゃいけないの」
「イヤダァ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!絶対にいやだぁ〜!結城は私と生きるんだ!死ぬなんて……ひっぐ、やだぁぁ」
「彩……泣かないで、彩。あなたが泣いてたら、結城君、安心して天国にいけないわよ」

 泣きじゃくる私をギュッと抱きしめ頭を撫でてくれるママ。けど私の涙は止まらない。
ママが酷いことを言ったから?おじさん達が酷いことを考えていたと知ってしまったから?
……多分、違う。きっとママの言うことが正しいと分かってしまったから。
そう、結城はきっと助からない。きっと近いうちに死んでしまう。
私も分かっていた。結城は助からないだろうと。お医者様も言っていた、覚悟を決めておいてくださいと。
だけど……結城が頑張ってくれていたから、私は結城が生きてくれるんじゃないかと思ってしまった。
結城は生き続けてくれる……そう思い込むようにしていたんだ。
……そうか。結城はそんな私に時間をくれたんだ。
結城がいなくなっても大丈夫なように、生きていけるようにと、覚悟を決める時間を私に作ってくれたんだ。
……バカ。本当に君はバカだな。痛くて苦しいのなら、私のことなど無視して楽になればよかったのに。
本当に君は大バカだ!私なんかのために、痛くて苦しくて辛いのに……意識もないのに頑張ってくれるなんて。
……ありがとう。君が時間をくれたおかげで、どうにか覚悟が出来そうだ。
……うん。明日、君に別れを言いに行くよ。私の覚悟を見せるために。君に安心してもらうために。

「ママ……色々酷いことを言ってゴメンなさい。私も、おじさんたちのように頑張ってみる」
「彩……うん、頑張んなさいね。ママも酷いことを言ってごめんなさいね」
「ママ、今夜は一緒に寝てもらえるだろうか?……今夜は一人では寝る勇気がないんだ」
「うん、ママがギュッと抱きしめて寝てあげるわ。いっぱい泣いてもいいからね?
彩の涙、ママが胸で全部吸い取ってあげるわ」

 結局その日はそのままママの胸に抱かれて眠りについた。
ママの胸に顔を埋めながら結城との別れを考えた。……絶対に嫌だ。結城と分かれるなどと考えたくもない!
けど、苦しんでいる結城もこれ以上は見たくない。きっとおじさん達も同じ気持ちだったのだろう。
苦しんでいる結城を見たくないから覚悟を決めたのだと思う。
だったら、私も覚悟を決めて、結城に会いに行こう。
……君は私が泣いているところを見たくないと言っていた。
だから私は泣かない。これからは一生、君のために泣いたりはしない。
君は冷たいって怒るかな?でも、私を残して死んでしまう君が悪い。
悔しければ意識を取り戻せばいい。そうすればいくらでも泣いてあげるよ。
私も……君の胸で泣きたいんだ。明日、意識を取り戻した君の胸で、泣ければ、いい……な。

 ママの温もりに包まれて、眠りにつく。
眠りについた私に結城が会いに来てくれた。
心配そうな顔をして、『俺がいなくても大丈夫か?』と。
だから私は言ってやった。
『君がいなくて大丈夫な訳がない。でも、もう大丈夫だ。君のおかげで覚悟を決めることが出来た』と。
私の言葉に頷いた結城は、ほほ笑みながら消えていった。
バカ……だから君はバカなんだ。抱きしめるとか、キスをするとかしてから消えるべきじゃないのかい?
269: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:01:29 ID:pODSkiGy(12/15)調 AAS
 日曜日の午後、結城が入院している病院へと来た私は、おじさん達にお願いし、2人きりにさせてもらった。
私の無理なお願いにお医者様は反対したが、おじさんが頭を下げてお願いをしてくれた。
『息子の為なんです、どうか我が侭を聞いてください』と。
おじさんの必死の願いでお医者様も折れてくれ、二人だけにしてくれた。
おじさんに頭を下げ、集中治療室へと入る。ベッドに寝たまま動かない結城の側に近づき、そっと頭を撫でる。

「結城……外はいい天気だ。どうだい?少し起きてみようとは思わないのかい?」

 二人だけになって、改めて結城をよく見てみる。
腫れあがって、誰だか分からない顔。時折痙攣する身体。瞼が痙攣して開き、時折光のない瞳を覗かせる。

「今日ここに来る途中、たい焼きを売っているお店を見つけたんだ。
いい匂いがして、とても美味しそうだったよ。……君と、一緒に食べたいな」

 ……君は本当にバカだな。どうしようもない、大バカだ!
何故こんなにまでなって、頑張って生きていてくれるんだ!
痛いだろうに……辛いだろうに、何故生きていてくれた!

「君と……結城と、食べたかった」
 
 ……きっと君のことだ、私が泣くのを見たくないから、とか言ってくれるのだろう。
……バカ。君は本当に大バカだ。君のようなバカは、見たことがない。

「結城と……修太と一緒に色々なお店に行き、美味しい物を食べたかった」

 ベッドに横たわったまま動かない結城の手を握る。
……やはり握り返してはくれないのだな。もう、この手に力が戻ることはないのだな。

「お喋りをしながら腕を組み、色々な場所へ行きたかった」

 ……ありがとう。私は君に会えて本当によかった。
短い……本当に短い間だったけど、私は君にたくさんの思い出をもらえた。
もう、十分だ。これ以上私に優しくしてくれなくてもいいよ。

「私は……君と、一緒に生きていきたかったんだ。ずっと一緒の時を過ごしたかった」

 もうこれ以上頑張らなくてもいいよ。
君はもう、十分頑張ってくれた。私達に色々なものを残してくれた。

「……君のことは絶対に忘れない、決して忘れたりはしない。
安心して欲しい。私は一度覚えたものは決して忘れる事はないから。
だから、君から貰った素敵な思い出も忘れない。君と過ごした時間を忘れたりはしない。
君が残してくれた優しさを忘れることは決してない!……だから、安心、して……」

 涙が溢れそうになる。ギュッと唇をかみ締め、涙を堪える。

「だ、から……わた、じは、だいじょ、ぶ、だから……」

 唇をかみ締め、今、私に出来る精一杯の笑顔を作る。

「あんし、んじて、天国へ……いっでほしい」

 今、私に出来る、精一杯の笑顔。
唇をかみながら、顔を引きつらせ、無理やりに作った笑顔。今、私に出来る……精一杯の、不器用な笑顔。  

「……さようなら、修太。……愛しているよ」

 
 私が別れを告げた次の日……結城修太は、死んだ。
270: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:02:16 ID:pODSkiGy(13/15)調 AAS
『ピピピピピッ!ピピピピピッ!』

 朝九時、愛する人からもらった腕時計のタイマーが鳴る。
約束の時間。君とのデートの待ち合わせの時間。いい天気になってよかったよ。
……ふふふ、なにがペアルック、だ。大学でも男物の時計をしてる私は目立ってしまって仕方がなかったよ。
けど、君が残してくれた大切な時計だ。丈夫で頑丈で……まるで君のようだ。
少し乱暴者の私には似合っている。……あれからずっと、肌身離さず使用させてもらっているよ。
あれから4年……月日が流れるのは早いものだ。今や私は22歳だ。君よりもだいぶお姉さんになってしまったよ。
霊園にある休憩所から、水の入ったバケツと、蝋燭や線香、スポンジの入った鞄、お供え用の花束を持ち、結城の元へと向かう。
今日も時間通りに会いに来たよ。ふふふ、私は君と違って遅刻はしないよ。
たまには遅刻して、待ちぼうけをさせてあげようかとも思うのだが……君に文句を言われたくないからね。

「ちょうど九時だ。……おはよう、結城。急に会いに来てすまない。驚かせてしまったかな?」

 霊園にある、結城家と書かれた墓石。私の愛する人はこの下で眠っている。
私は彼の寝床を綺麗にするため、バケツから柄杓で水をくみ上げ、お墓にかける。

「今日は君に報告があるんだ。大学を卒業した後の、就職先が決まったんだ」

 水をかけた後、持参したスポンジで汚れを落とす。

「ついに決まったよ。臨時教員とはいえ、春からは私も教師だ。学校の先生だよ」

 汚れを落とした後、墓石の周りに生えてきている雑草を丁寧に抜く。

「まだママにも教えていないんだ。前から一番先に教えるのは、君にと考えていたからね」 

 雑草を抜き終わった後、持ってきたお供え用の花束を花立てに供え、綺麗な水を注ぐ。

「ふふふ、驚いたかい?この私が教師だよ?学校の先生だ」

 花を供えた後、蝋燭に火をつけ蝋燭立てに入れる。

「高校を出た後は、すぐに就職するつもりだったのに……これも君のせいだ。君が死んでしまうからだよ」

 その蝋燭で、線香に火をつけ香炉に供える。あたりには線香のいい香りが漂いはじめた。

「君が死んでから私は考えたんだ。『これからどうやって生きていけばいいのかな』ってね」

 そう、私は考えたんだ。修太が死に、私は何をして生きていけばいいのか、と。
たくさん考えた。バカな頭をフル回転させ考えたんだ。そして……思いついた。教師になろう、と。

「……教えたいんだ。私は色々なことを教わった。ママにパパ、弟達に教わった。
おじさんにおばさん、友人達にも教わったんだ。もちろん……君にも教えてもらった」

 君に会うことがなければこんなことは考えもしなかったと思う。
君が死にさえしなければ、思いつきもしなかったと思う。

「私は高校生活で、色々な事を学んだ。教科書では分からない様な事。1人では知りえなかった事。
みんなと知り合っていなければ、決して学ぶことが出来なかった事。私はそれを教えたい。
多分、それは……とても大切なことだと思うから。人生において、とても大切なことだと思うから」

 修太……私は教師になり、君との思い出を生徒達に話そうと思う。
君や友人達と過ごした大切な時間を話し、生徒達を導いていこうと思う。
もちろん思い出をそのまま話す訳じゃない。君達からもらった思い出を元に、生徒達を導きたいんだ。
私は君達と出会って、たくさんの経験をした。笑ったり怒ったり、喜んだり……悲しんだり。
人を愛するという素敵な気持ちも教わったし……絶望という、とても辛い感情も教わった。
これらを教えたいんだ。きっとこういう感情は、生きていくのにとても大切なことだと思うから。
私がこんな考えを持ってしまったのも、君のせいだな。君が急に死んだりするからだ。
急に死んだりするからこう考えるようになってしまった。……死んでまで私に影響を与えるとは、君ははた迷惑なヤツだ。
271: 不器用な彼女 ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:03:19 ID:pODSkiGy(14/15)調 AA×

272
(6): ツクバ薪割り  ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:05:40 ID:pODSkiGy(15/15)調 AAS
不器用な彼女は以上で終わりです。
最終話の投下まで、散々待たした挙句、このような結末で申し訳ありません。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
では名無しの戻ります。
273: 2008/10/01(水) 21:10:51 ID:dW28FbYj(1/2)調 AAS
全俺が泣いた
274
(1): 2008/10/01(水) 21:13:33 ID:dW28FbYj(2/2)調 AAS
てかベタな展開(修太フカーツ)を待ってたのは俺だけ?
275: 2008/10/01(水) 21:40:00 ID:u9BMzWG3(1)調 AAS
>>274
ベタな展開だと思ってたから余計にビックリして目から汗が・・・

なにはともあれGJ
276: 2008/10/01(水) 22:11:53 ID:Hl2dOpV0(1)調 AAS
>>272
お疲れさん。
バカやってる二人に慣れてた所に予想してなかった
結末でちょっとショックだ。
277: 2008/10/03(金) 23:13:09 ID:JARBDDy6(1)調 AAS
>>272
お疲れ様でした

なんか、最後の方は風神と大学助教授がチラついたな
278: 2008/10/04(土) 16:27:27 ID:/m07XQ/h(1)調 AAS
>>272
1週間後・・・そこには元気にヤリ狂う2人の姿が!
っていうハッピーエンド的展開だと普通に思ってたからちょっとショックだわ。
なにはともあれお疲れ様でした。島津っちには幸せになってもらいたい
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