[過去ログ] 気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第9章 (734レス)
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582: 2010/01/07(木) 10:27:08 ID:OVTuQ84r(1)調 AAS
ベッドでは敏感過ぎる勝気少女
583: ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:21:05 ID:hIxFE99Q(1/10)調 AAS
バス停から

-*-*

「や、やり方・・・ってそ、そんなの知ってるに決まってるでしょう!」
江見さんが紺色の制服のスカートの裾を翻しながら物凄く不機嫌そうに言う。

「じゃあ、どうやるの」
そう言うと江見さんは黙った。ぐぐうっと小さな手が握り締められている。
最近判ってきた。これは言うのが恥ずかしいとか、言いづらくてといった理由じゃない。
知らないのだ。

「知らないんでしょ。」
「知ってる!知ってます!」
「知らないなら知らないって言えば良いのに。」

「知ってるもの!知ってて言わないだけっ!」

はあ、と溜息を吐く。
瞬間、江見さんの額にビキビキと音を立てるかのように血管が浮く。
あー怒っている怒っている。

国内一の企業体の創立者をおじいさんに持ち、
県下一の大きな家に住んでいる一人娘で、
市内で一番ランクの高いこの学校の生徒で、学内一に可愛くて、学年一の秀才である江見桜さんは「知らない」と云う事が大嫌いだ。
負けず嫌いというよりもどちらかというとそういう生き方だと言っても良いくらいに江見さんは知らないと云う事が嫌いだ。
知らない事を知らないとは決して言わず、次の日には徹底的に調べ尽して来る。
つまりは気位が高いという事なのかも知れないけれど、江見さんは我侭ではないのでつまり何だかその行動はやたらと可愛い。

「君、私の事馬鹿にしてるでしょう。」
フランス人形のように自然な栗色の髪と色素の薄い、艶やかな白い肌がわなわなと震えている。
すっと伸びた眦を向けてきっとこちらを睨んでいる。
584: ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:21:38 ID:hIxFE99Q(2/10)調 AAS
「してないよ。知らないでしょって言ってるだけ。」
「知ってる!」
「いや、多分知らないはずだよ。」

いや、多分じゃなくて絶対知らない。でなければこんな事は言わない筈だからだ。
4分前、江見さんは商店街のアーケードを帰る道すがら、僕に向かってこう言ったのだ。
「ねえ、私もそろそろフェラチオ位は君にした方が良いのかな。」
満面の笑みで。

江見さんの声は涼やかで生徒会仕込みの凛とした口調は非常に聞き取りやすく、つまりは良く通る。
向かって左側にいた八百善のオジさんはぎょっとした顔でこちらを見、右側にいたブティック山口の店先にいたおばさんは怪訝な顔をしながら振り向いた。
眼の前を歩いていたカップルの髭面の少し怖そうな男の人は振り向いた後に皆がするように江見さんの顔と制服姿を舐め回すように見て隣の彼女に抓られていたし、
斜め前を歩いていた禿頭のおじさんは振り向きこそしなかったけれど「ん!?」と声を上げ、明らかに背中をビクンとさせた。
因みに僕は口に含んでいた飲みかけのコーラを思い切り噴いた。

時計を見る。ここは田舎だからこの時間にはバスは30分に一本位しか来ない。
バスが来るまではあと15分位はあった。
夕暮れがかった日の光が柔らかく斜めに射してきていて、バス停の影が長く延びている。

最初に江見さんと帰ったのは確か、7月位だった。
僕が生徒会に入って2ヶ月位。その頃の僕には江見さんは一つ年上の、手に届かない位に凄い女の人だった。
大人っぽくて一つ一つの仕草が艶やかでカッコよくて、凛としている。

今よりもずっと日は長かったけれど、でもその日もこの位の夕焼けだった。
このバス停で立っていた江見さんを見て、挨拶するべきかしないべきかで固まっていた僕の顔を見て、
「君も、このバス停使ってるんだね。」と江見さんはそう言ったのだ。
585: ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:22:38 ID:hIxFE99Q(3/10)調 AAS
@@
もしかしたら江見さんなりの好意の示し方なのかもしれない。と思ったのはそれから1ヶ月後だった。
1ヶ月連続で帰り道のバス停で江見さんと会い、
「君も、このバス停使ってるんだね。」と聞かれ続けたからだ。
僕は1ヶ月の間、毎回「そうです。」と答え続け、事の次第を今までの人生の中で一番深く慎重に考えた後に、
競馬をやった事はないけれど恐らく万馬券に全財産を掛けるのと同じような気持ちで
「明日は何時に帰るんですか?」と聞いた。
そして続けて、もし良かったら家の方向も一緒ですし、学校から一緒に帰りませんか。とそう言った。

江見さんが小首を傾げて、暫く考えるような素振りをしたから僕は焦った。
やってしまったかと思ったのだ。
江見さんのその仕草がこれといって冴えた部分のないただの偶々バス停で頻繁に会うというだけの後輩に何だかとても場違いな提案をされたといったように見えたからだ。

江見さんは暫く考えてから僕の顔を見て、
「校門にする?それとも下駄箱にしようか?
下駄箱にする位ならクラスまで迎えに行った方がいいかな?待ち合わせはどれが良いと思う?」
と、そう言ってきた。
「下駄箱やクラスは恥ずかしいので校門で待ち合わせが良いです。」
とそう言うと、江見さんはむっといつもリップクリームを塗りたてのようにつやつやとした唇を突き出して、
「そんな事は判ってる。じゃあ校門にしよう。」
と言った。

そして次の日、校門からの道すがら、江見さんはクラスや下駄箱で待ち合わせをした場合にいかに男の子が恥ずかしいと考えるかと云う事を小説や映画なんかを引き合いに出しながら滔々と熱く語り、その勢いはバス停でもバスの中でも留まる事を知らず、
最後に江見さんはバスを降りる僕に向かって
「・・・という事を私はちゃんと知っているからね。じゃあまた明日。」
と締め括った。
586: ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:23:25 ID:hIxFE99Q(4/10)調 AAS
@@
僕と江見さんが付き合っているのか。というとこれは難しい。
はっきりと付き合っているとは言い切れない。
つまり僕は江見さんの事がとても好きだけれども好きだと言った事はなく。
江見さんが僕の事をどう思っているのかもはっきりと聞いた事はない。

でも毎日一緒に帰るし、たまに電話もするし、休日に遊んだりもする。
そして一度だけキスをした事もある。
つい最近の事だ。1週間前、土曜日に一緒に遊園地に行った時に
最後に乗った観覧車の一番てっぺんで、外を見ている江見さんの横顔が本当に綺麗で、
思わず僕からそうしてしまったのだ。
ゆっくりと顔を近づけたから、避けようと思えば避けれたと思う。
でも僕の顔が江見さんに近づいていって、ついにはちょん、と唇同士がくっつくまで江見さんは僕の顔を見つめ続け、
そしてちょん、と一瞬だけ唇がくっ付いた後、僕は恥ずかしさで俯いてしまったから江見さんがどうしていたかは判らない。

でも帰り道で江見さんはひたすら僕に恋愛映画とキスとその結果としての結末の関連性を説き、
名作ほど最初にキスをした相手と結ばれる可能性が高いと言った。
僕はそれが江見さんなりの照れ隠しのように思った。
そして何故江見さんがそんな事を知っているのかどうかについては深く考えると顔がにやけてしまいそうなので考えない事にした。
587: ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:23:53 ID:hIxFE99Q(5/10)調 AAS
@@

「じゃあ、今ここでしてくれる?」
夕暮れのバス停で僕の隣に立つ江見さんにそう言うと、
江見さんは顔を真っ赤にさせて眦を上げてきっと僕を見上げてからぷいと顔を逸らした。
「君が意地悪を言うから今日はしない。でも明日ならしてあげてもいいけどね。」
つんと顎を上げる。背筋がぴっと伸びているからそうは見えないけれど、
こうして並ぶと江見さんは僕の顎の辺りまでしか身長がない。
多分150Cmかそれ位だ。

「そっか、でも寝転がったり座ったりする場所がないと難しくないかな。」
そう言うと江見さんはひゅんと音を立てるように僕の方に顔を回してきた。
目が猫みたいに爛々と光っている。
江見さんは学校では表情をあまり出さない方だけれど実はよくよく見ると結構表情豊かだ。
今のこれは引っかかったな。という顔だ。

「それは・・・あそこですればいいよ。」
と言ってバス停横のベンチを指差す。このバス停は大通りから一本逸れた所にあるのだけれど、ベンチは人通りの多い大通りの方を向いている。
田舎とはいってもこの時間帯なら人通りは途絶えない。

「寝てするよりも座ってする方が私は得意。」
江見さんはうんうんと頷きながらそう言う。
588: ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:24:15 ID:hIxFE99Q(6/10)調 AAS
「でも、少し恥ずかしくないかな。」
きゅん、と音を立てるように江見さんの視線が僕を射す。
長くて綺麗な睫の奥で虹彩の綺麗な瞳がくるんと回って江見さんの口が開く
「確かに少し恥ずかしいかもしれないけど。でも・・・」
一拍置かれる。
考えてる考えてる。
恐らく今江見さんの頭の中では僕と一緒に学校から帰り始めた頃の事が回っているに違いない。
多分僕がクラスまで迎えに行くのが恥ずかしい、と言った件について。

「・・・私はそんなに恥ずかしいと思わないから。」
「そ、そうなんだ。」
「・・・いや、恥ずかしいのは恥ずかしいけど。そんなに気にする必要はないと思う。」

「そっかあ。」
と僕は答える。

アスファルトの向こうからバスがゆっくりとやってきて、タイヤの音を鳴らしながら僕達の前に止まる。
プシュー、と空気の漏れる音を出しながらバスのドアが開く。

僕と江見さんはバスに乗る。
589: ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:24:38 ID:hIxFE99Q(7/10)調 AAS
@@

5人しか乗っていない、がらんとしたバスの中で江見さんが窓側、僕が通路側に隣り合って座る。
このバスだと僕の方が早く降りる。
ちなみに江見さんは1年生の時は車で送り迎えをして貰っていたそうで、
バス通学に変えたのは今年の7月からだそうだ。

江見さんの耳元に口を寄せる。江見さんがん?と言う感じに顔を寄せてくる。

「・・・さっきのだけど、僕もした方が良いかな。」
江見さんの瞳がくるんくるんと回る。
つん、と細い顎を突き出すようにして、そこに左手の人差し指を縦にして当てる。
ただ今考えてますのポーズだ。

それから、江見さんは江見さんにしては珍しく、少しだけ首元と頬を紅くして言いよどんだ。
「まずは私の方からしてあげたいんだ。この前は、君からだったし。」
だから、今度して貰っても良いけど明日は私から。と江見さんは言った。

僕はとても嬉しかった。江見さんのこの前は、が差すものが何だか判ったからだ。

「でもやっぱり外だと、恥ずかしいかもね。」
ヒントに近いかもしれない。やりすぎかも。
江見さんがん?といった感じで今考えてますのポーズに戻る。
江見さんの向こうの窓の外で景色が後ろに向かって飛んでいく。
夕日が江見さんの綺麗な長い髪の毛の上で光る。
590: ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:25:23 ID:hIxFE99Q(8/10)調 AAS
「・・・じゃあ、・・・」
言いかけてつっかえる江見さんに
「僕も良く判らないけど部屋、とか。」
そう言うと、僕の顔をちら、と見てくる。
「落ち着いた所の方が良いと思う。」

たっぷり5秒は間を置いてから江見さんはいかにも私の考えていたとおり、といった感じで頷いた。
「そうだね。焦ってするものではないし、私も部屋の中の方が良いかもとは思ってたんだ。」
江見さんは何度も頷く。
そして、じゃあ明日、夕食を食べにくれば良い。と僕に向かって言った。
江見さんの信じられない位に大きな家には一度行った事がある。
本当にいるかどうかは判らないけれど執事がいるような家だ。
ちなみに近くに牧場があってそこには羊がいる。牛もいる。
江見さんのお父さんはいかにも大人物、という貫禄たっぷりの人で、
しかしやっぱり江見さんのお父さんでその表情から僕に対する隠そうとしても隠し切れないとてつもない警戒心が丸見えで
(「お友達。そうか、そうか。お友達。そうか。いや、桜が男の子を連れてくるなんて初めてで、私は嬉しいんだよははははは。」)、
僕は江見さんと同じようにそのお父さんの事も一発で好きになった。
591: ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:26:18 ID:hIxFE99Q(9/10)調 AAS
僕の降りるバス停に向かってバスが減速する。
江見さんの方を見るとつい、と視線を逸らす。
いつも江見さんは別れ際に寂しそうな顔をしてくれる。
そしてそれを見せないように顔を背けて、座ったまま「じゃあね。」と言う。

でも今日は違った。江見さんは僕と一緒に立ち上がった。
そして降り口の所まで一緒に来て、そっと僕の耳に口を寄せてきた。
「フェラチオ、楽しみにしてていいからね。」

シルバーシートに座っている90歳位のおじいさんが不思議そうに僕達を見た。
おっと、と江見さんが口を抑える。
嬉しそうに笑う。
ばいばい、と手を振ってくる。

地面に降りてから僕はバスに向かって向き直る。
僕も凄く楽しみにしてるよ。という風に笑って頷く。

そして今日の夜は絶対に江見さんからの電話には出ない事を心に決めてから、
僕は動き出したバスの中で勝ち誇った表情で僕を見ている江見さんに向かって手を振った。

電話で言い訳も出来ずに困り果てた明日の江見さんの表情が楽しみだ。と考えながら僕は家に帰る。
僕には少し計画があって、さんざんからかった後で、僕は江見さんの事を桜さんと呼びたいと考えている事を伝えるつもりだ。

僕の計算なら江見さんは小首を傾げるかもしれないけれど、今考えてますのポーズはしないでくれると思う。

きっと思い切りもったいぶった後で許してくれるんじゃないかなと思っている。


592
(1): ◆/pDb2FqpBw 2010/01/07(木) 19:32:54 ID:hIxFE99Q(10/10)調 AAS
-*-*

以上です。
では。
593: 2010/01/07(木) 21:10:39 ID:VFapGP4X(1)調 AAS
一番槍GJ!

なかなか無いタイプの展開ですね
続きはあるのでしょうか
594: 2010/01/07(木) 21:25:07 ID:MKdUDWDO(1)調 AAS
GJ!

続きまってる
595: 2010/01/08(金) 12:51:54 ID:t01YhPx+(1)調 AAS
>>592
是非!続編をお願いしますね
とっても良かったです
596: 2010/01/09(土) 07:20:50 ID:8xd/jhq0(1)調 AAS
>>583-592いいねー
597: 2010/01/10(日) 13:48:52 ID:mJWr4FlV(1)調 AAS
亀レスだが
>>272
泣かせてもらった。っていうかどっぷり読み浸かっちまったじゃねーか
課題やる時間を返せw
598: ええと 2010/01/12(火) 00:57:05 ID:uMWNxo2Z(1)調 AAS
昔読んだエロ漫画の脳内再現ssでもいいですか?
599: 2010/01/13(水) 23:14:27 ID:g5tITIlN(1)調 AAS
無問題
600: ええと 2010/01/14(木) 23:45:52 ID:uhbt643f(1/3)調 AAS
>599
ありがとうございます。
601: ええと 2010/01/14(木) 23:54:47 ID:uhbt643f(2/3)調 AAS
いつからか、気づけばそのドラゴンは国の脅威となっていた。
体長は南の山をはるかに超え、吹く炎は北の湖を干上がらせる。
気まぐれで動かす体に、国民の誰彼ともなく犠牲になる。
このままでは国が滅びるのも時間の問題だった。

「どこから来たのだ……あの忌まわしい魔物は」
王の苦悩は深く、もはや取るべき手段は一つしかなかった。

「お触れを……出せ」
王はついにそれを決意する。
出来れば選びたくなかった道。
たった一つの宝物を手放す決断。
「国を滅びすドラゴンを、倒したものに――」
けれそその瞳はもう迷ってはいない。
「姫を与える、と――」
602: ええと2 2010/01/15(金) 00:01:26 ID:uhbt643f(3/3)調 AAS
姫の齢は15。
幼少のころより、その美貌が際立っていた。
麗しいブロンドに、整った顔立ち。
若くして亡くなったお妃と瓜二つとの評判だ。
数少ない国中の猛者はすぐにその気になった。
我こそはと、ドラゴンに立ち向かう。
けれど結果は思わしくなかった。
あるものはその炎に焼かれ、あるものは胃の腑に収められる。
姫をその手に入れられるものは、なかなか現れることはない。
王は、半ば喜び落胆し、姫は無表情に城下を眺める。
そこにはかつてののどかな風景はなかった。荒れ果てた土地。
ただそれだけが広がる。
603: ええと2 2010/01/15(金) 00:06:40 ID:k4AWO0/F(1/5)調 AAS
けれどついに現れた。
憎きドラゴンを倒す猛者が。
「王様、約束通りおいらに姫を与えてください」
どこの馬の骨かとわからない猛者は、体など一度も洗ったことのない不潔な男だった。
姫はその男を一目見るなり絶望し、病に伏す。
王は、そんな姫を愛しく思うが、一度出したお触れをなかったことには出来ない。
仕方なく、姫は男と城を出る。
――それが忌まわしい運命の始まり。
604: ええと3 2010/01/15(金) 00:13:41 ID:k4AWO0/F(2/5)調 AAS
「さあ、姫様、これで今日からおまえさんはおいらのものだ」
最初の夜、姫が連れて行かれたのは、隣の国との境目の、藪の中だった。
「こちとら、何年もドラゴンを追ってたんだ」
男はにやりといやらしい表情を浮かべる。
「この日のためにな……」
そして小さくつぶやく。
「容赦はしないぜ」
運命に逆らうつもりのなかった姫は、そこで初めて小さく悲鳴を上げた。

「ほら、どうした?」
――小一時間後、男は満足そうに笑う。
「姫さん?」
そこは先ほどと変わらぬ藪の中。
ただし、姫は、すでに破瓜の痛みを味わっていた。
「どんな高貴なお姫様も、酒場の女とおんなじだな」
男は満足げに笑う。
「たいしていい味ではないわ。これなら酒場の安女のほうが扱いやすい分、ずっといい」
605: ええと3 2010/01/15(金) 00:18:53 ID:k4AWO0/F(3/5)調 AAS
「ふ、ふざけるな」
姫は初めて言葉を漏らした。
一糸まとわぬ裸で。
その胸は、まだふくらみが足らず、恥部の毛も生えそろってはないかと思う未成熟な体。
先ほど、生まれて初めて男を受け入れたとは思えぬ、初々しさがあふれている。
姫は、気丈な表情を変えずに言う。
男はひゅう、と口笛を吹く。
姫は男に向かってこう言った。
「わらわは、誰ぞ?」
男の股間は再び盛り上がる。
「わらわは、姫ぞ。その辺の女と一緒にするでない」
男は笑った。
「姫さん、あんた、わかっていないよ」
606: ええと4 2010/01/15(金) 00:20:22 ID:k4AWO0/F(4/5)調 AAS
「姫でもだれでも、濡れる場所は一緒だ」
「一緒?」
607: 春菜5 2010/01/15(金) 01:38:21 ID:k4AWO0/F(5/5)調 AAS
男は姫の未成熟な胸をわしづかみにした。
「痛……」
姫の、小さな悲鳴が漏れる。今までそんな使いは受けたことがないのだから無理はない。
「ふん」
男は、垢のたまった爪で姫の乳首をいじりだす。
「え……や……や」
姫は、電流に似た快感を初めて味わう。
「ほう、感じるのか」
両手でもみしだく。
「く……」
わずかながら腰をくねらせた。
「これは見込みがあるのかも知れなないな」
男は不敵に笑った。

つぎの日、男は藪の中の木に姫の手足を縛ったまま、出かけた。
「ど、どうする気だ?」
初めて姫が不安げな瞳を見せた。
「どうもしない。このまま放っておくだけだ」
姫は昨日から服を着せてもらっていない。一糸まとわぬまぶしい裸体を藪の中で晒している。
「でも、もしかして、魔物や獣が来たら……」
「そのときは、姫さん、あんたの寿命が尽きたと思って諦めな」
「そんな……」
「おまえさんは、商品として、オイらに与えられたんだ。どうしようとおいらの勝手だ」
そう言い捨てて、男は立ち去った。残された姫は、両手両足を、開いたままの恰好で、藪に捨てられた。
――乳房と股間にたっぷりと蜜を塗られて。

「や……やめて」
初めに来たのは、狸の親子だった。
姫に気づき、はじめはおびえる様子を見せたが蜜の匂いに気づき、近づいてきた。
姫の手足は厳重に縛られている。
「や……あ、はう……く、ふう」
秘所に下を這わせる小動物に姫の声は漏れる。
「や、やめて…」
ちろちろ……子たぬきの下は止まらない。
乳首は右のほうが敏感なようだ。こしが、びく、びく、と動く。
「…あああああああ」
突然、絶頂に達したのか、背中をのけぞらして、姫がぐったりとする。と、そこへ、どこから見ていたのか、男がにやにやした顔で現れる。
「姫さん」
「……おまえ、見ていたのか……まさか」
「姫さん、あんな獣に、いっちまいましたね。ははっ。これはお笑いだ。高貴な生まれの姫様が、あんな獣に」
「……」
羞恥で黙りこむ姫に男は、さらに蜜を塗る。
「ひゃ……な、何を?」
「心配しなさんな。乳首はまだ立ってますね……おや、ここも濡れてる。ものたりないんじゃないですか」
608: 2010/01/15(金) 15:06:39 ID:WB4m6p1E(1)調 AAS
紫炎
609: 2010/01/16(土) 13:26:57 ID:PF8QVDcO(1)調 AAS

610: 2010/01/16(土) 19:54:48 ID:TfTXqQgI(1)調 AAS

611
(1): ええと 2010/01/16(土) 20:25:56 ID:VREnrREU(1)調 AAS
あれ。
反応あり、なのかな?
必要なら続き書きますけど、初ssなんであまりエロくないかと。
希望のシチュあればどうぞ。
612: 2010/01/17(日) 01:30:23 ID:c8e2NGRq(1)調 AAS
>>611
書きたいように書いてくれ。
613: 2010/01/20(水) 22:53:44 ID:Z7bwhNPy(1)調 AAS
burn
紫炎
614: ええと6 2010/01/24(日) 01:49:52 ID:AbKWKTeB(1/2)調 AAS
「な、なにをするのじゃ……」
姫の目はすでに涙で濡れている。
「濡らす場所が違いますよ」
男は容赦なく笑い、蜂蜜を体中に塗りたくる。その間、問わず語りに語る。
「初めての男がわしのような不潔な男で、初めていかされたのがあんな獣で」
「……」
「それでも姫さんはまだ自分の事を他の女と違うといいますか」
返事は早かった。反射的に姫はうなずいた。そういう教育しか受けてこなかったのだ。
「……そうですか」
男の眼が暗く染まる。
「なら」
立ち上がったその手には見慣れない道具が握られていた。
「わしも本気を出しますぞい」
縄になど縛られたことのない、姫の手首には生傷が既にできていた。痛みにいまでも涙が出る。
でも、それすらまだ、ましだと思える――地獄の初まりだった。
615: ええと7 2010/01/24(日) 02:22:17 ID:AbKWKTeB(2/2)調 AAS
「姫さん」
男は箱のようなものから、黒い塊を取り出した。
「わしのような中年の男が、なんでドラゴンを倒せたと思う?」
「え?」
姫は嫌な予感がして目をあける。
「こいつの……おかげさ」
黒塊はねちゃねちゃとした「何か」に形を変えていた。男はそれを姫の体の上に乗せる。
「……いや」
初めてそんな声が出た。
「おや、杯めて弱音を吐きましたね」
「……」
「またダンマリですか? 泣いて、やめて下さいと言えば、こいつは箱に戻りますよ」
ぬちゃ。
姫の腹の上で、そいつはどこに進もうか悩んでる。
丸い蛇。
おかしな言い方だが、それがぴったりくる。
黒くて、丸い蛇。
それも、形を自由自在に変えられる。
「……ひ!」
「時間切れだ」
姫が懇願する前に、それは姫の乳房に狙いを定めた。ロープのように細長く形を変えて、両の乳房をギリギリと締め付ける。
「痛い……」
涙声でつぶやいた。
「良くなりますよ」
男は少し離れた所から見守っている。片手で自分自身のそれをしごきながら。
「お願い……許して」
「いやですよ」
そっけなく断られて、姫はついに頬に涙を流す。
「痛い……」
「痛いだけじゃないです」
男の息遣いは荒い。
「腰を浮かせてみなさい。もう少し楽になりますぜ」
姫は素直に従う。黒い蛇はすかさず陰部へ移動した。
姫の秘所に狙いを定めてつつきだす。あらかじめ塗ってあった蜂蜜が甘く粘る。
616: 2010/01/24(日) 16:32:21 ID:/3W4Up+y(1)調 AAS
書いてくれるのは嬉しいが
ある程度書きためて投下の前後に挨拶(投下します、以上etc)してくれるといいかも
617: 2010/02/01(月) 18:00:08 ID:EZc6IDWd(1)調 AAS
マダァー? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
618: 2010/02/12(金) 22:01:20 ID:yit0uyVk(1)調 AAS
ageないけどほす
619: 2010/02/18(木) 08:13:27 ID:1SXNXFMV(1)調 AAS
待ち。
620: 2010/02/23(火) 03:24:11 ID:qDGixq3u(1)調 AAS
保守あげ
621: 2010/03/01(月) 15:36:13 ID:PC30MYRl(1)調 AAS
保守
622: 2010/03/08(月) 06:54:02 ID:eyZdMuEQ(1)調 AAS
まだ待ち。
623: 2010/03/20(土) 17:50:57 ID:ROaSybg5(1)調 AAS
保守
624: 2010/03/31(水) 16:04:31 ID:5WvgfM4t(1)調 AAS
保守
625: 2010/04/09(金) 22:27:13 ID:4Z9IqbCx(1)調 AAS
捕手
626: 2010/04/16(金) 02:07:36 ID:B23PwTjO(1)調 AAS
不器用な彼女の生還ルートを希望しつつ保守
627: 2010/04/18(日) 13:28:18 ID:EtgM7mEl(1)調 AAS
それは俺も読みたい
628: 2010/04/29(木) 01:30:22 ID:gJH+q6OE(1)調 AAS
頭を撫でるのがスイッチな強気っ子
629: 2010/05/04(火) 23:23:10 ID:lRcF2Jez(1)調 AAS
いいと思います
630: 2010/05/20(木) 10:01:25 ID:G63QVM7K(1/13)調 AAS
保守ついでに投下させていただきますね。
631: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:03:45 ID:G63QVM7K(2/13)調 AAS
「小玉ヶ丘高等学校から来た神尾凛と申します。よろしくお願い致しますわ」
クラスの大半の男はその姿に見惚れ、
クラスの大半の女はその姿に憧れと嫉妬の眼差しを向けている。
担任の岡田の話によると、この転校生はとある会社の社長令嬢らしい。
よく漫画やアニメで同じような場面を見て"こんな展開あるわけねえだろ"などと思ったことがあるが、
実際ありえない話でもなかったんだな……。
そんな風に思いながら俺は再び転校生を見る。
ストレートのロングヘアー、前髪は程よく整っている。
髪の色は黒。まあ日本人なのだから当たり前といえば当たり前か。
ちょっとつり気味の凛々しい目、シミ一つない白い肌。引き締まった唇。
なるほど、野郎共の瞳がハートマークになるのも頷ける。
点数を付けるなら満点をくれてやってもいい。
「えーと、席は……確かそこは空席だったよな?」
そう言って岡田が俺の隣の席を指す。
「ああはい、そうです」
俺が返事をすると、岡田は転校生に隣の席に座るよう指示をした。
転校生のお嬢様は、隣の席までゆっくりと歩きそのまま椅子を引いて座った。
晴れてお嬢様の隣同士となった俺に、クラス中の男子からの視線が突き刺さる。
"呪われろ"、"クソ虫野郎"、"ゴミクズ"、挙句の果てには"死にさらせ"という呟きまで聞こえた。
俺がお前らに何をしたというんだ。
まあ、あんな嫉妬丸出しの呟きなんて気にしない。
俺は隣のお嬢様に声を掛ける。
632: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:05:23 ID:G63QVM7K(3/13)調 AAS
「あ、俺は野上雅也っていうんだ、よろしく」
一応、今日から同じクラスとなるんだ。
仲良くしておいて損はない。
しかし、お嬢様はそんな俺をチラリと見てすぐに前を向いた。
シカトですか、そうですか。
お嬢様にとって俺は道に転がってる石のような存在なんでしょうね。
転向早々この俺に喧嘩を売ってるわけですね。ちくしょうめ。
辺りから"プギャー!"とか"ざまぁwww"といった俺をあざ笑う声が聞こえてくる。
空中に吊るしてやろうか。

―キーンコーンカーンコーン―

お決まりのチャイムが鳴り、1時限目の授業が始まる。
担当の教師が来て、教科書を開くよう指示をする。
―いかんいかん。
こんな高飛車な女やバカ丸出しの罵倒に構ってる場合じゃない。
俺は机から教科書を取り出し、指示されたページを開く。
頬杖をつきながら教科書を見ていると、何やら隣から声が聞こえてきた。
「ちょっとあなた。私この学校の教科書を持ってないの、見せていただけないかしら?」
うん、きっと気のせいだ。
俺の隣の席には誰も居ない。だって空席だもの。
断固無視。
「ちょっと、聞いてるんですの!?」
はいはい無視。ハナクソほじっちゃお。
633: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:06:36 ID:G63QVM7K(4/13)調 AAS
「……あなた、もしかして耳が遠いのかしら?」
まったく、うるさい女だ。自分からシカトしてきた癖に、自分がされるとこれか。
さっきのシカトされた恨みを込めながら、俺は思いっきり皮肉を込めて言ってやった。
「おや? 私の名前は"あなた"じゃありませんよ。さっき自己紹介しませんでしたっけ?」
語尾に(笑)を付けるかの如く馬鹿にした口調で、さらに続けてやった。
「IQのお高いお嬢様は、自己紹介してきたお相手のお名前も覚えられないのでございますか?
 それとも、お耳がお遠くなっているのでございましょうか? それならば、良い耳鼻科をご案内致しますよ」
と一気に捲くし立てて、俺は視線を教科書に戻した。
確認したわけじゃないが、きっと顔を真っ赤にして震えてるに違いない。
ああいい気分だ。爽快だ。人をコケにするからこうなるんだ。因果応報ってやつだ。
「……それは大変失礼致しましたわ。では改めて野上さん、教科書を見せていただけませんこと?」
若干声が上ずっているように聞こえた。オホホホホ。くやしいのうくやしいのう。
まあ、あまり虐めて泣かれでもしたら厄介だ。これくらいにしてやろう。
俺は教科書をお嬢様の見える位置に移動させた。
「どうも」
そう言ってお嬢様は俺の教科書を覗き込んだ。
そして俺の教科書を見た瞬間、お嬢様は"ぷっ"と笑いを堪えるような声を上げる。
一体どうしたというのだろうか。俺は教科書を隅から隅まで見回した。
ふと歴史の人物画を見ると見事にラクガキされた跡があった。
「……あなた、こんなものを教科書に書いてて恥ずかしくないんですの?」
お嬢様は明らかに見下した目で俺を見ている。
さっきの笑い声はラクガキに笑ったんじゃなく、ラクガキをした俺を笑ったに違いない。
しかしこれは誤解だ。これは俺がやったのではない。
いくら俺でも高校生にもなって教科書の人物画にラクガキする程子供じゃない。
おそらく、弟が俺の教科書を勝手に覗いてラクガキしたんだろう。
しかし、"これは弟がやったんだ"なんて言っても言い訳がましい。
ああああ、どうしたものか。俺顔真っ赤。
634: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:07:31 ID:G63QVM7K(5/13)調 AAS
「あら、ここにも落書きがありますわね。貴方の知能指数の低さが伺えますわ」
と言いながら鼻で息をしながら俺を見下した表情で見つめてきた。
コノ・ペチャパイ・ヤロウ。ドウシテ・クレ・ヨウカン。
今まで殴りたくなった男や実際殴った男は何人もいたが、殴りたくなった女はコイツが始めてだ。
もしこいつが男だったら、今頃マウントポジションでフルボッコにしているだろう。
しかし、悲しいことにこいつは女なのだ。
さすがに女をフルボッコにしたら、クラス中から非難を浴びるだろう。
そして、変態リョナDV男とか卒業するまで言われ続け、俺の学園生活は終了を迎えることになる。
ここは男らしくグっと堪えなければ。
「実は俺、こういう人物像とか人物画を見ると、つい落書きしちゃう病気でね。仕方がないんだよ、うん」
「あらまあ、そうでしたの? あなたに相応しい病気ですわね。早く治るといいですわねぇ」
「ははは、なるべく早く治るように頑張るよ!」
ちなみに脳内では既に1000回くらいこの女を殴っている。
『もういいよ、現実でも殴っちまえ。』
そう囁くのは本能むき出しの俺。
『女を殴るのはやばいだろ、常識的に考えて……。脳内だけにしておけ、な?』
そう囁くのは冷静沈着な俺。
『ここは放課後に弁当の食べ残しとゴミを、こいつの机の中に入れて復讐するというのはどうか』
そう囁くのはどこか逝っちゃってる俺。
まあコイツの意見を選ぶと大抵ロクな結果にならんので無視する。
とりあえず今は冷静沈着な俺の意見に従っておこう。うんそうだ、それがいい。
「治療の方頑張ってくださいませ。悪化したら大変ですわ」
ははは、殴りてぇ……。
しかし、待て俺。まあ待て。
635: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:08:33 ID:G63QVM7K(6/13)調 AAS
よくよく考えればこういうお嬢様タイプと仲良くなって損はない。
金持ちは傲慢で嫌味な分、心が広いところがある。
事実、小学生の頃に金田というボンボンがいたが、そいつは嫌味こそ多かったが心は広かった。
奴の家に行けば高級な菓子などが食べられたし、古くなったオモチャをくれることもあったし、
奴のオモチャを壊してしまった時は「どうせ新しいオモチャ貰えるからいいよ」とあっさり許してもらった。
このお嬢さんもきっとこういうタイプに違いない。
ならば傲慢な態度など気にせずに仲良くなっておくべきだろう。
うまくすれば金目の物を貰えるかもしれない。
「おい野上! 聞いているのか!」
「……うぇあ!? な、なんすか先生」
脳内世界から、急に現実世界に戻された俺は間抜けな返事をしてしまう。
どうやら先生が俺に何か問題を出していたようだが、全く聞いていなかった。
やばい、どうしよう。俺赤っ恥。
「先生、私が代わりにお答え致しますわ」
お嬢様はそう言って席を立ち、俺の代わりに先生の問題に答えた。
まるで教科書に載っている模範解答のような完璧な答えを出し、先生を唖然とさせていた。
お見事でございますなぁ、お嬢様。
更にクラスメイトの好感度が上がったようでございますなぁ。
ただ、俺の好感度は急落しているようですなぁ。俺涙目ですなぁ。
"かっこわるw"とか"あいつダサくない?w"とか俺を失笑する声が聞こえてくるのは気のせいと思いたいですなぁ。
「あの、先生……。俺ちょっとお腹が痛いんで便所いってきます……」
そう言って俺は便所に行くふりをして屋上へ向かった。
636: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:09:26 ID:G63QVM7K(7/13)調 AAS
「うおー!うがー!ぬあー!!」
屋上のど真ん中で一人、頭を抱えてゴロゴロして悶える俺。
傍から見ればキモイことこの上ないだろう。
人生でこんなに腹が立ったのは生まれて初めてだ。屈辱だ。ちくしょう。
ストレス発散に屋上の柵をガンガン蹴って殴る。脚と拳が痛くなるだけだった。ちくしょう。
たまたま見回りをしていた先生に見つかって、こっぴどく叱られた。ちくしょう。
たった一日で、ただでさえ低かった俺の評価がさらに下がってしまった。俺さらに涙目。
5時限目の授業終わり、HRの前の休み時間では、お嬢様の周りにすっかり人だかりができていた。
無論、隣の席に座っている俺は、石ころのように無視されている。
たった一人、デブスの女が話しかけてきたが、"邪魔だから消えろ"みたいなことを言ってきた。
全力で殴りたかったが、こいつも一応女だったので我慢し、
デブスの席の椅子と机を接着剤で固定するという地味な復讐をして鬱憤を晴らした。
ついでに机の中に食べ残しが入ったコンビニ弁当を入れておいた。

―キーンコーンカーンコーン―

そして放課後。俺にとって悪夢のような1日は終わりを告げた。
もう今日は何もしたくない気分であった。
早く帰ろう。おうちに帰ろう。おいしいおやつを食べて、
ホカホカご飯を食べて、暖かい布団で眠ろう。そして悪夢のような1日にバイバイしよう。
颯爽と昇降口を出て、校門へと足を運んだ。
そして、校門を通過したところで、何者かとぶつかった。
「きゃ!」
幸い、体格が良い俺は怪我ひとつせずにすんだが、
代わりにぶつかった相手が転倒して尻餅をついたようだ。
まあ別にどうでもいい。適当に謝って早く帰ろう。
「ごめん、すまん、失礼。それじゃ!」
あれ、さっきの人、どこかで見た気がするなぁ?
いや、きっと気のせいだ。さあ早く帰ろう。
637: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:10:36 ID:G63QVM7K(8/13)調 AAS
「ちょっとお待ちなさい! それで謝ったつもりですの!?」
しかし、手を掴まれて強引に静止させられた。
気のせいと思いたかったが、やはり相手はあのお嬢様だった。
何この少女漫画みたいな展開。ねーよ。
「……あら、あなたでしたの。凄い偶然ですわね」
お嬢様が"お前、わざとぶつかっただろ"と言いたげな視線を送ってきた。
本当に偶然ぶつかったのだが、信じてもらえそうにもない。
何とか上手くやり過ごそうと考えていると、
お嬢様のスカートで何かがもぞもぞと動いているのを発見する。
「……お前、スカートになんかついてるぞ」
「あら、一体何がついていると言うのかしら?」
お嬢様は鼻で笑い、スカートを見ようともしなかった。
「いやいや見ろよマジで。イモ虫みたいのがついてんだけど」
「む……し……?」
ピクリと反応させると、お嬢様はおそるおそる自分のスカートを見た。
そして小さな尺取虫がついてるのを確認すると、ピタリと動きを停止させた。
お嬢様の顔が青ざめていく。
「ひっ……」
そして体をプルプルと小刻みに震わせて、大きな悲鳴を上げた。
「い、いやぁぁあああああ!」
「ちょ、どうし」
「虫! 虫嫌い! 取って、取ってぇぇぇえええ!」
尋常じゃない取り乱し方に、俺は思わず後ずさりする。
お嬢様は思い切り体を動かしているが、尺取虫はうんともすんとも言わない様子で
よっこらせっくすとスカートの道をよじ登っていた。
638: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:12:27 ID:G63QVM7K(9/13)調 AAS
「な、何をしてるんですの! 早く、早く取って下さい! お願い! やぁああ!」
半ば懇願するように俺の手を取ってスカートまで持っていく。
「ちょ、おま! 落ち着けって!」
「やぁああ! 早く! 早く取って! お願い、取ってぇ!」 
お嬢様は、俺の手を取りながらスカートを捲り上げた。
パンチラとかそういうレベルではない。丸見えだった。
ていうか何をしてくださってるんですかこの人。
「いやいやいや! 取るから落ち着け! お前自分が何してるかわかって」
「お、お願い……早くして……早くぅ……」
だめだこいつ……。早いところこの尺取虫を取っ払おう。
スカートの端にくっついていた尺取虫をつまんで、草むらに捨てる。
たったこれだけのことで、スカート捲り上げるか? おかしいだろ……。
「おい、虫取れたぞ。早くスカートを元に戻せよ!」
さすがにお嬢様のパンツをいつまでも見ているわけにもいかずに、
視線を微妙に逸らしながら言った。
しかし、このシーンを客観的に見るとスカートを捲り上げている
パンツ丸見えのお嬢様を俺がセクハラしているようにしか見えないだろう。
「おい! 一体どうし……た……」
そして、お嬢様の悲鳴を聞いて駆けつけた教師に都合よく今のシーンを目撃される。
俺、どうみても変態です。本当にありがとうございました。
「……さて、野上。先生と一緒に生徒指導室まで行こうか?」
「全力でお断りします」
キリっとした瞳で断る。俺は何も悪くない。
639: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:13:32 ID:G63QVM7K(10/13)調 AAS
「なぁに、遠慮するな! 夜まで徹底的に話し合おう! お前の父さん母さんを交えて!」
「トウサンとカアサン、旅行で出かけているヨ」
「はっはっは!嘘はいかんなぁ! さあ、行こうか! ご両親に迷惑かけちゃいかんぞぉ!」
「嫌だぁぁあああー―――! 行きたくないー――――ッ!!」
ずるずると教師に引きずられ、そのまま校舎の方へ強制的に移動させられる。
お嬢様の周りには人だかりが出来ていた。何やら慰めと怒りの声が聞こえてきた。
どうやら俺は変態のレッテルが貼られることになるようだ。
ああ、終わった。俺の高校生活終わった。ていうか俺何もしてないんですが。
意気消沈しながら、地獄の裁判所へ送られようとしている所に、救いの手が伸びた。
「ま、待って下さい先生!野上さんは、その……」
人ゴミを掻き分けて、お嬢様が駆け寄ってくる。
「ん、どうした?」
「あ、あの、野上さんはただ……」
お嬢様は説明しにくそうにオロオロしていた。
自分からパンツ見せたんだから、説明しにくいのだろう。
ていうか、説明なんてどうでもいいから、早いところ誤解をといてくれ。
「わ、わたしのスカートについてた虫を取ろうとしただけで、やましいことは、何も……」
「そ、そうなのか?」
「は、はい……」
お嬢様は顔を赤らめながら、返事をした。
そんな風にもじもじするくらいなら、最初から誤解を招くようなことするな……。
「そうか、俺はてっきりこいつがセクハラでもしたのかと思ってな!」
「先生、疑いが晴れたんなら、解放ほしいんですが」
「おっとっと!いやあ、誤解してすまなかったな!」
640: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:14:55 ID:G63QVM7K(11/13)調 AAS
すまなかったじゃねーよ、人の話を聞かずに変態扱いしやがって。
このことはいつかPTAにチクってやるからな、ダメ教師め。
教師は満足そうに校舎へと戻り、周りでヒソヒソ話をしていた奴らは、
バツが悪そうにその場を離れていった。この野次馬共め。
「あ、あの……大丈夫かしら?」
「大丈夫じゃねーよ! お前のせいで俺の評価はズタボロだ! どうしてくれる!」
そう、いくらこいつが誤解を解いたからといって、俺の評価が良くなるわけじゃない。
もはや全校生徒にとって、俺=変態というのは公式設定になっているだろう。
彼女ができないのは当然、友達も離れていくかもしれない。
「う……。も、申し訳ありませんでしたわ……」
「謝ってすむ問題か、ちくしょう!」
「むぅ……じゃ、じゃあどうすればいいんですの?」
「責任をとれ、責任を! 慰謝料とか、金とか、あるだろ、ほら! 損害賠償とか!」
金持ちから金を要求する。これは当然の権利だ。さあよこせ。
「……弱みに付け込んで、金を要求するなんて最低ですわ」
「うっ!」
あ、あれ? 俺別に悪いこと言ってないよね?
なのになんでコイツの言ってることが正しく聞こえるんだろう。
「じゃあ、何もないっていうわけ!? 俺はもはや、彼女はおろか、友達すら……」
「ああもう! それじゃあ私があなたの恋人になりますわ!」
641: おとなりのお嬢様 2010/05/20(木) 10:17:21 ID:G63QVM7K(12/13)調 AAS
……はい? あれ、ちょ、何言ってるのこの人、大丈夫?
「ちょ、ちょっと待て! 何でそうなる!」
「せ、責任を取れと言ったのはあなたでしょう?」
確かに責任取れとは言ったが、彼女になれなんて一言も言ってないのですが。
ていうか、責任を取る=恋人になるって、お前……。
「その理屈はおかしいだろ……」
「そ、それにあなただって……わ、わたしのパン……うぅ……」
なんかスカートの前に手を置いてもじもじしている。
パンティーがどうした。あれはお前が勝手に見せたんだ。
俺が見せてくれと、どこかの変態ばりに頼み込んだんじゃない。
「とにかく、あなただって私の下着を見たのですから、責任はとってもらいますわ!」
「だからあれはお前がみせたんだよ! ていうか、何の責任だ何の!」
思い切り反論したが、そのままそそくさと行ってしまった。
なんだか凄い面倒なことになってしまった……。どうしよう。
ちなみに校門で口論していたため、思い切り注目の的になっていたのは言うまでもない。
周りからは、パンツがどうとか下着がどうとかいうヒソヒソ話が聞こえてきた。
もう、なんていうか、俺=変態でいいです……。
ちなみにこの一件で俺の周りには友達はおろか知人的ポジションすら失ったのは言うまでもない。
642
(2): 2010/05/20(木) 10:20:28 ID:G63QVM7K(13/13)調 AAS
以上です。
何かお嬢様的なものを書きたくなったら
いつの間にか長くなっていたでござるの巻でした。
お粗末様でした。
643: 2010/05/20(木) 13:15:17 ID:jtuBgsa+(1)調 AAS
>>642


644: 2010/05/20(木) 18:06:35 ID:JV0USMDb(1)調 AAS
GJ
続きに期待だ
645: 2010/05/22(土) 21:58:43 ID:U/lzmPGl(1)調 AAS
グッジョブ!!!
646: 2010/05/23(日) 05:15:46 ID:x4bsKPo/(1)調 AAS
>>642
続きはまだ????
647: 2010/05/25(火) 05:54:24 ID:dKiUhe08(1)調 AAS
期待
648: 2010/06/10(木) 08:04:49 ID:MGKLhNni(1)調 AAS
保守
649: 2010/06/19(土) 22:55:11 ID:qSojHLMk(1)調 AAS
保守
650: ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 20:48:57 ID:jOm1kT3c(1/10)調 AAS
ご無沙汰しております。(2年ほど)

なんの事やらな人はもし宜しければ
外部リンク[html]:uni.lolipop.jp
外部リンク[html]:uni.lolipop.jp
辺りをご参照頂ければと宣伝。
651: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 20:49:29 ID:jOm1kT3c(2/10)調 AAS
THUNDERSTRUCK

-*-*

皆は、いや、通常の男の人は、人生で始めて女の子のおっぱいを見た時の事を覚えているものなのだろうか。
そう。女の子の胸。乳。乳房。いや、おっぱいという呼称がこの場合は最適だろう。
勿論母親のでも、姉妹のでもないそれだ。
なんていうか。つまり、その、ええと、同年代の、とても美しい人の。おっぱい。

それとも、その、僕の意思は兎も角として、19歳の今この時まで清い童貞を貫き通している
(というよりも女性と交際した事の無い)僕だから、
この光景はきっと網膜に張り付いて一生忘れないに違いない。とか今そう思っている、
そういうものなのだろうか。
普通の人ならああ、おっぱいね。ふふん。そんな事、大した事じゃあないじゃないか。
とかそんな感じに軽く言うのだろうか。
笑いながらいつだったかなあ。いつ見たっけなあ、そんな事、ちっとも覚えてないなあとか簡単に言うのだろうか。
652: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 20:49:54 ID:jOm1kT3c(3/10)調 AAS
僕は多分違うと思う。
一生忘れないと断言できる。
さっきのあの一瞬の事を僕は一生忘れないと力強く断言出来る。
ポタポタと水の滴る真っ白なミルクを錬り込んだような肌。
タオルで腕で抑えてるんだけどぷやん。と弾む感じで眼の前に提示されたおっぱい。
いかにも柔らかそうな、何だか逆に凡そ人の肌とは思えないような、
例えればこの世で一番甘い、口に入れれば一瞬で溶けてしまうようなケーキを
そのまま形にしたような優しさと柔らかさを兼ね備えているようなおっぱい。
張り出した二つの真っ白なおっぱいのその谷間の部分には水滴が溜って、
そしてその水滴が息づく様なピンク色の先端部分を伝って床に落ちる。
つ、つ、と水滴が柔らかく肌を伝って、先端にゆっくりと向かい、
そのピンク色の先端部分で一瞬だけ時を止めるように静止する。
そして一瞬後、ぷるん、と音を立てるようにピンク色の乳首から水滴が跳ねるのだ。
そう、正に弾き飛ばされる。といった感じで。
653: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 20:54:33 ID:jOm1kT3c(4/10)調 AAS
兎に角。僕は今までの人生でこれ以上のものを見たことが無かった。
昔、家族旅行で行ったフランス旅行の時に見たモナリザの絵を見た時や
(思ったより小さいなと思いながらも僕は今、教科書に載っている絵を見ているんだと思ってとても感動した)、
この前歴史好きの僕が始めて熊本に1人で旅行に行った時に感じた熊本城の威容とか。
あの時も僕は思ったものだ。ああ、僕はこの光景をずっと忘れないぞ。と。
じっと瞬きもせずにモナリザを見つめ、熊本城を見上げていた間、僕はその一瞬が僕の人生にとって特別な一瞬だと確信していたのだ。

でも今やそれらの素晴らしい瞬間の記憶も僕の中ではやや色褪せて見えてしまっている。
目の前にある二つの、ぷるんと大きく、真っ白で形の良い、艶めいていて、魅力的で、柔らかそうなおっぱいは
その、そんなものよりずっと心にどかん。と直で響いてきてしまったのだ。

僕は瞬きをしなかった。
いや、これはもう僕個人の意思によってそうしなかった、という類の話では無いだろう。
失礼を承知で言わせて貰えばピューリッツァー賞を取ったカメラマンが
その瞬間、恐らくこいつはピューリッツァー賞ものだぞ、何て事は心の片隅にも無く、
ただファインダーを覗き、瞬きもせずシャッターを押した、その瞬間のように
つまりそれはそのカメラマン自身にとって恐らく、微塵もそれ以外の対象を意識なんかせず、
それが必要なのだと自分の身体を構成する全てのもの、細胞や、血液なんてそんなちゃちなレベルではなく
今までの人生における人間関係や、自分を構成し形作ってきた歴史や文化、そして地球と宇宙(コスモ)、
そういうもの全てが大声でそうしろと叫んできたその結果としてそうだったのと同じように、
・・・
僕は僕より幾つか年上のおねえさんの、しかもとても美しいその人の
凄く柔らかそうで、大きくて、真っ白で、それでいて弾けそうな弾力を持ったおっぱいを前に
一瞬も瞬きをしなかった。
654: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 20:54:57 ID:jOm1kT3c(5/10)調 AAS
きゃあと可愛らしく叫び、片手で口元を、そしてもう片手で下半身を隠そうとした後、
その人が凄まじいスピードでお風呂場の方に後ずさった時も、
僕は一瞬も瞬きせず、視線でおっぱいを追いかけた。
そして今、ゆっくりと迫りくる(しかし恐らくはそういうように検知されているというだけで、
実際は恐ろしいスピードで飛んできている)大き目の洗濯ものを入れているのであろう籠を脳内で感知しつつも
やはり目は寸分たりともおっぱいからは離れずに、僕はそのままそんな事を考えている。

一瞬後の事なんかは脇に置いておいて。

つまりとてもチープな言い方を許してもらえれば、
僕はその時、始めて見る女の子のおっぱいに、とても感動してしまっていたのだ。
655: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 20:55:59 ID:jOm1kT3c(6/10)調 AAS
@@

「匠君が悪い。絶対に悪い。」

はっと目を開けると頭がグワングワンとした。側頭部が熱くて痛い。確実にタンコブが出来ている。
目の前の景色が横になっている。どうも僕は床に寝かされているらしかった。

そして、目の前では匠先輩が正座をしていて、その向かい側に先程の女の人が真っ赤な顔をして
何だか泣きそうな声で匠先輩を指差して糾弾している真っ最中だった。
無論、その女の人は髪が濡れてはいたけれどラフな大き目のTシャツにチェックのスカートという感じで洋服を着ていた。
しかし僕は、間違いなく一瞬前に、この何だかこうやってみると凄まじいまでに美人な女の人の生のおっぱいを眼にしたのだ。
656: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 20:57:15 ID:jOm1kT3c(7/10)調 AAS
「た、た、た、確かに不用意に玄関に出た私も悪いかもしれない。
で、で、で、でも普通その、友達を連れてくるのなら連れて来ると一報を入れるべきだ。」

「でも涼子さん今日、うちに来るなんて一言も言って無かったよね。」
「な、な、匠君は私が悪いというのか?私が悪いって言うんだな。そんな事を言ったって
私の横を通ったダンプカーが雨水を跳ね飛ばして服がびしょびしょになってしまったんだからしょうがないじゃないか。
匠君の家なら近いし、シャワーを借りようと思っただけだ。匠君は私にびしょびしょのまま家に帰れとそう言うのか?」

「そ、そんなことは言ってないけど・・・」

「わ、わ、私だって一言言っておけば良かったなと思って、だから玄関の鍵が回った時、
君がびっくりするといけないと思って、
だからびっくりしないように慌ててドアを開けたんじゃないか。そ、そ、そ、そうしたら」

「仁科君がいたと。でもその行動は多分、俺でもびっくりしたと思うよ。」

「うう、う、うああ・・・・み、見られた・・・というか、積極的に見せたと言うんじゃないかああいう状況は。
あ、あんな格好で私は・・・」

「お風呂場のドアから顔を出す程度なら良かったのにね。」

「ば、ば、馬鹿、だ、だって、鍵を開けるなんて匠君以外にいるなんて思わないじゃないか。
普通、匠君の部屋に鍵を開けて入ってくるのは、匠君じゃないか。」

泣き声でそう言っている、先程の玄関で見た女の人、
まあつまり匠先輩の彼女である涼子先輩なのであろう女性が頭を抱えた所で、僕はゆっくりと顔を上げた。
657: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 20:59:56 ID:jOm1kT3c(8/10)調 AAS
「あのー。」
僕の声に匠先輩と涼子先輩と思われる女性が顔をこちらに向ける。

「ああ、大丈夫?」
匠先輩が柔らかい笑顔を向けてきてくれるのに少し落ち着いて僕は口を開いた。
「あ、あ、あの。」
よろよろと起き上がって、匠先輩と同じように正座をする。その僕の顔を涼子先輩と思われる女性が見ている。
勿論今は涼子先輩は服を着ている訳だけれど僕はドギマギとし、そして不埒にもおっぱいだけでなく、
それ以外の部分も思い出せないかどうか自分の記憶を一生懸命探った。

しかし兎に角、話には聞いていたけれど落ち着いてみても凄い美人だ。
無造作にきゅいと結んだ髪が凄く可愛らしい。
今まで怒っていたからか、少し上気している感じの頬も色っぽい。
その涼子先輩が僕の方を見ている。
さっき僕はその、形良くクン、と持ち上がっているTシャツの下にある、生のおっぱいを見てしまった訳だ。
乳房の先端まで全て余さずそっくり。

「あ、仁科君だっけ。さ、さっきはも、申し訳ない。私は岸涼子という。
その、変な格好を見せてしまった上、お、思わず洗濯籠なんかを投げてしまって・・・」
「い、いえ。と、とんでもないです。そ、その。僕こそす、すみませんでした。
こちらこそは、はじめまして涼子先輩。仁科です。」
658: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 21:02:15 ID:jOm1kT3c(9/10)調 AAS
直接そうやって御互いを見ながら挨拶をした瞬間に色んなものが頭の中で整理されて、
急に恥ずかしくなってきて顔が熱く火照ってくるのが自分でも判った。
つまり、僕はつい先程、何度も言うように僕の人生の中で初めてのおっぱいを、涼子先輩のそれを見たのだ。
これは、とんでもない事だ。そう思う度に顔が熱くなっていく。
こういう時は、というかどういう時だろうとこの状況では女性の方が恥ずかしいだろうし、
僕が顔を紅くしては失礼というものだろう。
きっと涼子先輩は気分を害するに違いない。
いや、これ以上害する余地があるとしての事だけれど。

そんな事を考えながらマズイ、マズイとパニックになると尚更顔が熱くなるのを止められない。
しかしどうしようもなくて、ぐっと顔を下に俯かせてしまった僕に向かって、
涼子先輩は怒りもしなければ皮肉を言う事もなかった。

ただ、非常に冷静な口調でこう言ってきたのだ。

「仁科君。涼子先輩ではない。私の事は涼子、もしくは言いづらいのであれば
匠君と同じように涼子さんと呼んでくれ。」
659
(1): uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/21(月) 21:04:03 ID:jOm1kT3c(10/10)調 AAS
-*-*-*-*-*-*-

THUNDERSTRUCKはAC/DCのそれです。
全部で5話位を想定していますがまだ書いていません。

ノシ
660: 2010/06/21(月) 21:45:37 ID:JvYbAKQd(1)調 AAS
アヴェンジャーで戦車をヴォオオオ・・・するA−10しか浮かばんかった俺。

親方の乗ったA−10にアヴェンジャーで蒸発させられてくる・・・
661: 2010/06/21(月) 21:52:07 ID:PxsTOhNC(1)調 AAS
おお、自作自演のうに大先生か・・・w
662: 2010/06/21(月) 23:23:12 ID:tLo73fRv(1)調 AAS
>>659GJ!
涼子さんの新作か、これは期待せざるを得ない。
663: 2010/06/22(火) 00:02:19 ID:thovA1y6(1)調 AAS
匠君と涼子さんの人か!

ファンですよ
また読めて嬉しいです
664: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/28(月) 14:24:42 ID:VLRAc/xb(1/7)調 AAS
THUNDERSTRUCK 2

@
もうちょっと前に話を戻そう。

僕が地元のつてを使って匠先輩の電話番号を教えてもらい、
なけなしの勇気を振り絞った上で電話を掛け、そして相談事をしたのには理由がある。

とある女性に思い切り振られたからである。

もうちょっと説明する。
僕には好きな人がいる。ずっと好きだった人がいる。
鍋島茉莉先輩という、高校の時の一年先輩の人だ。
同じ吹奏楽部に所属した縁で知り合って以来、僕はその、鍋島茉莉先輩の事をずっとずっと好きだった。
ちなみに先輩の卒業前に一度だけ告白して、返事を貰う前に僕は逃げた。
つまり、僕の一方的な片思いだ。
茉莉先輩は、高校を出た後、とても有名な大学に合格して東京に出て行った。
うちの高校では、過去に2人しか現役合格していない大学へ。
665: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/28(月) 14:25:06 ID:VLRAc/xb(2/7)調 AAS
即ち、とても名門な大学へ。
無論、背丈と顔つき存在感だけでなく、成績も普通である僕なんかはE判定も良い所の大学である。
普通は、諦めるのかもしれない。
いや、諦めるものだ。
しかし僕は勉強した。その、茉莉先輩に追いつきたかったから。
多分にストーカー的な根性かもしれないけれど僕は茉莉先輩に返事を貰っていなかったから
もしかしたら僕も茉莉先輩と同じ大学に入れたらもしかしたら
先輩は褒めてくれるんじゃないか。
そしてもし受かったら、結婚してくれるんじゃないか。
そんな風に考えたのだ。
やや気が早いのは自分でも認める。

自分でも不純だとは思うけれど僕は死に物狂いで頑張った。
正しい生活を心がけ、睡眠時間を確保しつつそれ以外の時間は全て勉強に振り向けた。
言うは安し、行なうは難しである。その道のりは艱難辛苦を極めた。
C+判定からが辛かった。
しかし僕は挫けず、将来、誰かに17,18歳の時に何をしていたの?と聞かれたら勉強してました。
と即答できる位に勉強した。
666: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/28(月) 14:25:26 ID:VLRAc/xb(3/7)調 AAS
勿論不安になった時には茉莉先輩に助けてもらった。
目を閉じると茉莉先輩がこう言ってくれるのだ。
「仁科君、頑張って。」
「仁科君ならできるよ。」
そう言って励ましてくれた。
僕は勉強の前に茉莉先輩に励ましてもらい、模擬試験の前には茉莉先輩に祈りを捧げ、
寝る前には茉莉先輩におやすみを言った。

ああ。ええ。それは童貞の妄想ですよ。自分でも判っている。
自分でも気持ち悪いなと思った。
でもあの辛い日々を、茉莉先輩が支えてくれた事に、間違いは無い。

そして僕は死に物狂いで頑張った結果、なんと奇跡的に合格を果たした訳です。
自分でもびっくり。

そして同時に合格通知を片手に我に返った訳です。

僕は何か違う夢を見ていたのかもしれないと。
僕は勘違いをしていたのではないのだろうか。と。
667: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/28(月) 14:25:47 ID:VLRAc/xb(4/7)調 AAS
僕は大学に受かれば茉莉先輩と付き合えうことが出来る。位の勢いで妄想していた訳だけれど
現実に直面してみればそんな筈は無い。
2代前の元吹奏楽部副部長である茉莉先輩と1代前の元吹奏楽部副部長である僕という縁だけを頼りに
この一年、東京に出た茉莉先輩と時折連絡をしていたのは確かだが、
それも後輩達の定期演奏会の応援の連絡だとか、まあ部活関係の話が主で時折
「大学はどうですか?」位の雑談が入れば良い方だった。
というか告白して逃げた時の事を思い出してそんなに上手く話せなかった。

そんな僕が大学にまで先輩を追っかけて行きました。なんていって、先輩は喜ぶのだろうか。と。
いや喜ぶはずが無い。ていうかそれって、かなりきもいんじゃないだろうか。

「先輩、僕、大学に受かりました!先輩を追っかけて来たんです!」
「うわ、きもっ。」
いや、優しい茉莉先輩はそんな事は多分言わないけれど。
でも、そう思われたりしないだろうか。

ていうか勝手にこっちが思ってただけで
「先輩、僕、大学に受かりました!」
「・・・?っ・・・?・・・あー!あーあー。懐かしいねーえー・・・と、誰・・・だっけ、んーーーとに、に、そう!仁科君。」
みたいに忘れられてたりするかもしれない。
うわ、その方が傷つく。かなり傷つく。
668: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/28(月) 14:26:10 ID:VLRAc/xb(5/7)調 AAS
それまで合格通知が来たらそのまま指輪でも買って茉莉先輩を迎えに行こうか。
までは思ってなかったにしろなんかそれに近いことすら妄想していた僕は、現実に合格通知を受け取った瞬間、
そんな恐怖感というか不安感というか、そんな感情で一歩も動けなくなってしまったのだ。

僕には元々そういう所がある。
気が弱いくせに考えなしで突っ走って、立ち止まる。
しかし一年間もの勉強生活で鍛えられた僕は少しだけ変っていた。

僕は茉莉先輩への気持ちを紙に書いた。
受験勉強の間に考えていた事、その前に考えていた事、これから考える事。
そういった事を何度も何度も書き直して、何度も何度も読み返した後、
僕は躊躇せずに茉莉先輩へ電話を掛けた。
669: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/28(月) 14:26:31 ID:VLRAc/xb(6/7)調 AAS
3コール後に「もしもし」と電話に出た茉莉先輩に僕は言った。

「大学に受かりました。」と。
「茉莉先輩と一緒の大学に受かりました。」と。
そこら辺で涙がこぼれて、僕は紙を握り締めながら受話器に向かって喋った。

ずっと茉莉先輩の事を考えていたと。
ずっと茉莉先輩と話したかったと。
ずっと茉莉先輩に会いたかったと。

僕は訥々と喋り続け、言葉は何度も何度も同じ所を廻り、
折角紙に書いた事の5分の1も伝えられなかった。
でも今考えてみるとそれをきちんと伝えられていたら僕は5倍ほどきもかった筈だから良かったのかもしれない。

何度もしゃくり上げながら僕は最後に、「茉莉先輩が好きです。」
とそう言った。
昔の告白の続きとして。
一つの事を成し遂げた男として。
堂々とそう言ったのだ。
茉莉先輩は僕の言葉を聞いた後、暫く沈黙した。

そしてたっぷりと逡巡するような沈黙の後に茉莉先輩はこう言ったのだ。
「・・・・・・・・・ええと、今、私、付き合ってる人がいるから。」

誰と?
と絞り出した僕の声に茉莉先輩は暫くうろたえたような声を出した後、こう言った
「・・・き、君の知らない、私がずっと好きだった鈴木匠さんって人。」
と。
670
(1): uni ◆/pDb2FqpBw 2010/06/28(月) 14:27:14 ID:VLRAc/xb(7/7)調 AAS
-*-*-*-*-*-*-

感想ありがとうございます。
続きは書けましたら。

ノシ
671: 2010/06/28(月) 18:17:46 ID:CpRtAnRg(1)調 AAS
>>670GJ!
あの話の続きか、ずっと気になってた。
あの妄想しまくりの先輩の心情が気になるな。
672: 2010/06/29(火) 03:55:18 ID:B0TMOu53(1)調 AAS
GJです。ジュブナイルっぽい甘酸っぱさがたまりません。
『灯り』から読んだので、この子達のその後はずっと気になってました。
気長に待ちます。
673: 名無しさん@そうだ選挙に行こう 2010/07/10(土) 21:57:23 ID:fW4l3uNQ(1)調 AAS

674: 2010/07/17(土) 07:38:17 ID:Tnh7o7yR(1)調 AAS
いつもは憎まれ口ばっかりなのに、手を繋ぐと急に大人しくなる幼馴染み
675: 2010/07/19(月) 12:26:02 ID:oWwX7vPl(1)調 AAS
足軽さんのHP消えたのか?
676: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:14:24 ID:HnciCvmB(1/11)調 AAS
THUNDERSTRUCK 3
@@
私は怒っている。
自分で言うのもなんだけれどこれは私にしては珍しい事だ。
ムカムカして苛々として胸の中が嫌な気持ちで一杯になり、頭の中で自分は悪くないと考えて
私が怒っている相手がいかに責任感が無い人間なのだろうかというような事が
頭の中でぐるぐるぐるぐると回るのだ。

ぐるぐるぐるぐると。
何故こんなに怒っているのか、今一つ自分でも判らないけれど、でもこれだけは判る。
この感情はきっと憤怒と言って良いものだ。

私にもささやかではあるが、人生設計というものがある。
大抵の人と同じようにそれには2種類あって、一つはそれには宝くじの当選を願うような甘く夢見るようなそれだ。
もう一つは今の自分に出来うる望んでも良い現実的なものだ。

優しくて素敵な彼氏。(匠先輩であれば言う事は無い)
大学の成績で成功すること。
夏休みの友人との貧乏ではあるが楽しい旅行。
サークルの定期演奏会(私は吹奏楽サークルに所属している)が楽しいものである事。
そして遠い将来については望んだ職業への就職。
程々の給料とやりがいのある仕事。
26歳位での好きな人との結婚。
子供は二人。出来れば女の子と男の子。
今はまだ想像もつかないけれど、もしかしたら子供はもっといても良いかもしれない。
出来れば旦那様となる人とは子供が出来ても時々デートをしたりするような関係がいい。
(匠先輩であれば言う事は無いし、きっと匠先輩は結婚しても優しいままだろう。)
年に一度は家族で旅行するのもいいと思う。(何にせよ楽しい事は多い方がいい。)
677: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:15:17 ID:HnciCvmB(2/11)調 AAS
こういう人生設計は、実現できるかどうかはともあれ他の人とそう変わるものでは無いだろうと思っている。
が、これはああいう事だろうか。
結婚する相手は年収1000万円以上が良いとか、恋人は背が高くてカッコいい方が良いとか、車はイタリア製じゃなくちゃ嫌だとか。
まあ、そういう事なのだろう。
規模は多少違うかもしれないけれどそういう事の一つなのだろう。
希望って奴だ。
叶えばいいと思う、希望。

あまりこうがいい、こうじゃなきゃ嫌だ。と周りに吹聴するのがはしたない事である事くらいは知っている。
確かにこう言った事を人に言うのは憚られる。
でも心の中に思い描く分には誰に迷惑をかける訳じゃない。
それに、それ自体が悪いものではないはずだ。

例えば私は恋人を車で選ぼうとは思わないけれど、もし恋人にはイタリア製の車に乗ってほしいと思ったのならそれはそうなるように努力する切っ掛けになるだろう。
きっと日本で私と同じくらいの年齢でイタリア製の車に乗った男の人は鼻持ちならない嫌らしい男だろうし、(匠先輩は自分のお金で買った国産の中古車に乗っている。誠実で、匠先輩らしく、とても好ましい。)
そういう男は決まって分不相応な注文を女の子に向かってするに違いない。
例えばミニスカートを履けとか、もっと化粧をしろとか、俺の後ろを歩けとか、そういった事だ。
イタリア製の車に乗っている恋人を持ちたいのならそういう要求に応える努力をする事になるだろう。

別にそれは悪いことじゃない。
何もしないよりずっとマシだ。
そう、何 も し な い よ り ず っ と マ シ だ。
678: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:16:19 ID:HnciCvmB(3/11)調 AAS
希望とは努力の前にあるものなのだ。
こうありたいからこうする、こうでなくちゃ嫌だからこうする、というように希望とは何かをする原動力になるものだ。
逆に言えば希望があるのなら、それを達成すべく努力をすべきではないだろうか。

話は変わるが私に1年前に告白してきた年下の男子がいる。
仁科君という朴訥な感じのする男だ。背はぬぺりとやや高い。
吹奏楽部の後輩で、彼の控えめではあったが、私に向けられていた好意には薄々気がついていた。
彼の好意の表し方はとても控えめで、誠実で、ゆっくりとしたものだった。
部室でたまたま二人きりになった時に耳まで紅くしていた事。
そういうキャラでも無いくせに、たぶん、私が部長だったからっていう理由で、
薦められたリーダーを受けて苦労しながらみんなを纏めた事。
積極的に話しかけてくる事は無かったけれど、近くにいる時は懐いている犬のように離れなかったこと。

もしかしたらそれは部活の先輩であるという事がそうさせたのかもしれない。
もしかしたら同級生だったらもっと積極的にアプローチしてきたのかもしれない。
でも多分そんな事はないのだろう。
仁科君というのはそういう人間だった。
679: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:25:36 ID:HnciCvmB(4/11)調 AAS
私の卒業直前に仁科君は私を呼び出す事に決めた。
私は何故呼び出されたのかは判っていたし、何を言われるのかも判っていたし、
自分がどう応えるのかも判っていた。

夕暮れの音楽室で、私は並んでいる机の一つに腰掛けて
足をぶらぶらさせながら窓の外の校庭と良く部活の空き時間に弾いたピアノとを交互に眺めながら仁科君を待った。
実の所それまでにもこうやって男の子に呼び出されたことが無い訳ではなかったけれど、
多分、不思議とそれまでの中で一番緊張していたように思う。
確か、私はどう答えるべきか、少し悩んでいたのだ。
それまではこう答える事にしていた。
「部活が忙しいし、好きな人がいるから。」
「受験勉強が忙しいし、好きな人がいるから。」

その時何故そんなに悩んだのか今となっては覚えていない。
でもその時の私はどう答えようかと真剣に悩んでいたように思う。
私は卒業間近で当然部活も終わり、そして大学も決まっていた。
部活が忙しいからとか、受験勉強が忙しいからと言えないから悩んでいたのだろうか。
そうかもしれない。
もしくは違うかもしれない。

仁科君はそれまでの私の人生の中で、ある意味一番長く一緒にいた男の子だった。
友情を感じていたし、忠実な犬のような所のある彼を可愛く思っていたのも確かだ。
だから、
どう言ったらいいか、そんな事を考えていたのかもしれない。
680: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:26:58 ID:HnciCvmB(5/11)調 AAS
呼び出された音楽室でぼんやりそんな事を考えながら待っていると、
仁科君は息を切らせて教室に入ってきた。
そしていきなり私の顔を見て
「先輩の事が好きです。」
と、そう言ってきた。

もう少し考えたらどうだろうか、と、思ったものだ。
息を落ち着け、姿勢を整えてからでもいいのでは?
2塁に盗塁を試みたランナーが審判を見上げるようなタイミングで言うことは無いんじゃないだろうか。
そう思ったものだ。

でも仁科君はいつになく必死な表情で、誰も気づいてはいないだろうけれど形のよいと私が思っている額に汗を浮かべ、そう言ってきた。
それから私の表情を見て、何かまずいと思ったのだろう。しどろもどろになりながら
「僕は先輩の事が好きです。」
と繰り返した。

それからパニックになった仁科君は顔を真っ赤にして俯きながら話し続けた。
まるで私の答えを聞きたくないというかのように頑なな喋り方で、
部活に入ってから、私が卒業するまでの事を、順番に、喋ってきた。

遠慮なく言えばかなりスマートではなかった。
好意とは短くストレートに、かつインパクトのある言葉で伝えるものだ。
「僕は死にません」とか。
681: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:28:01 ID:HnciCvmB(6/11)調 AAS
でも仁科君の言葉は何故だか不思議なほど心に響いた。
仁科君が私のことを私以上に知っていたからだ。
私が忘れていた大変だった事を仁科君は覚えていた。
私が忘れていた楽しかったことも仁科君は覚えていた。

つまり、なんだか妙に、ぐっとくる告白だった。
しかし私には好きな人がいたから、断らなくちゃいけなかった。
好きな人とはつまり、匠先輩である。

誠実な告白をしてくれた仁科君に対して、私は誠実に断らなくてはならないと思った。
と、思う。正直、あまり覚えていないのだ。
なんだか妙に顔が火照って、頭が真っ白になり、慌てていたように思う。
挙句私は言葉に詰り、仁科君は走って逃げた。

そう、走って逃げたのだ。
仁科君は。

根性が無いのではないだろうか。もっとこう、ガツンとすべきでは?
ああ、確かに私はYESとは言わなかっただろう。
なぜなら私は素敵な匠先輩のことが好きだったからだ。

人には持ち味というものがあるのは判る。得意不得意もあろう。
しかしもうちょっとこう、押してみたらどうなるだろうとか思わないものなのだろうか。

結果仁科君は言うだけ言って走って逃げ去り、私は東京に来て19歳となった。
682: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:31:20 ID:HnciCvmB(7/11)調 AAS
自分で言うのも何だが19歳の一年間は人生の中で恋愛をする期間として貴重なものではないかと私は考察する。
ああそうだ。優しくて素敵な彼氏を作るには最適な期間だ。
就職活動は遥か彼方。大学入試の緊張感からは開放され、見るものすべてが目新しい19歳の1年間。
過酷な受験勉強を終えた結果としてかどうかは判らないが
私の控えめであった胸は心持ち、少しだけ成長したように思ったし、
結果としてそれなりに魅力的なスタイルも保てているのではないかと考えている。

ああそうだ。
確かに私の好きな匠先輩には少々私では敵いっこなさそうに見える恋人がいる。
涼子さんというその匠先輩の恋人は顔と身体も良い上に性格までいい。
恋敵である私を可愛がってくれるほどだ。
必死で粗を探すものの今の所、私には涼子さんの悪いところは見つかっていない。
(しいて言えば何故か盲目なまでに匠先輩に惚れているらしいという位だ。
しかしそれは私にとって都合が悪いという意味以上には悪いことではない。)

しかし、しかし私だって捨てたものでは無いのではないだろうか。
戦ってみても悪くは無いのでは?と思えるほどには私も大人っぽくなっているのではないだろうか。

そう、本気で戦ってみても悪くは無かったのだ。
広島東洋カープだって先発の調子が良くてかつバッターがヒットを打ち、そして相手の調子が悪ければ、たまには巨人にだって勝つ。
それに賭けてみても良かったのでは?
それだけじゃない。
言わせてもらうと私だってモテるのだ。
イタリア製の車を持った男の子にドライブを誘われた事だってある。
体育会系の爽やかなスポーツマンにしつこくデートを迫られたこともある。

それぞれ魅力的な提案だった。
おいしいものをご馳走してくれそうだったし、(見返りに何を求められるかは知れたものでは無かったけれど)楽しいところに連れて行ってくれそうだった。

19歳の恋愛をするには悪くなかった筈だ。
でも私は涼子さんと戦う事も放棄し(その代わりに仲良くなり、それはそれでとても楽しかった。)、大学で誘われたデートも全て断った。
つまり全ての選択肢を私は蹴ったのだ。
683: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:36:57 ID:HnciCvmB(8/11)調 AAS
ああ、もちろん私は私と同じであれとは言わない。
人それぞれ考えがあって良いのだから、
私に好きと言ったのなら、きちんと跪いて私の美しさを讃えながら手の平にキスをする所までやるべきだとは言わない。

好きにすればいい。好きって言ったまま言いっぱなしで逃げるのだって勝手だ。
言いっぱなしで好きなままでいるってのも勝手にすればいい。

しかし一つ言わせてもらえれば告白したのならせめて小まめに連絡してくるってのは選択肢に無かったのだろうか?
ん?
部活以外の連絡もまめにしてご機嫌を伺うべきと思わなかったのか?
私を放っておく事になにか意図でも?
特別なことは期待してないけれど常識を身につけなさい。普通の。
間違ったことを言っているだろうか。

1年間放っておいた挙句、同じ大学に合格した?
馬鹿にするのもいい加減にすべきじゃないだろうか。
彼の一年間の努力は買おう。自分の大学の事をこう評するのもなんだが
私の知っていた彼の成績は到底ここに現役合格できるようなものでは無かった。
生半な努力では無かったのだろう。それは認める。
それに、少しうれしい。もし彼の努力の幾分かの原因に私に対する希望があったのなら。

でも私の一年間はどうなる?
私の人生の中で恋愛をする期間として貴重であるはずの19歳の一年間は。
どうしようもなかったのか?ん?
本当にどうしようもなかったのだろうか?
684: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:37:56 ID:HnciCvmB(9/11)調 AAS
例えばこういうのはどうだろう。
「茉莉先輩と同じ大学に入りたいのですが、学力が足りないのです。
勉強を教えてくれませんか?」
そう言えば私だって悪い気はしなかったのでは?
そうじゃないだろうか。違うだろうか。
私はそう思うんじゃないだろうか?違うだろうか?
その位は考え付くべきじゃないの?

無論軽々に返事は出来ない。
何といっても私には匠先輩という好きな人がいるのだから。
その人以外と二人きりになるというのは多少、考えものだ。
いや、かなりもったいぶる必要があるだろう。
だがそれくらいの事は頼まれれば出来たかもしれない。
何といっても私があれだけ可愛がった仁科君なのだ。

週末の度に地元に戻るのは大変だっただろうけれど両親は喜ぶだろうし、
日々学力の上がる後輩を見るのは私にとっても嬉しい事だっただろうし。

無論仁科君らしい、と思ったのも確かなのだけれど自分だけで頑張って自分だけで満足するってのは、どうだろう。
もうちょっとやり方があったんじゃないかな。
と元部長で、お姉さん役であった私は思わないでもない訳だ。

間違ってる?
685: uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:41:33 ID:HnciCvmB(10/11)調 AAS
と、ここ数日そんなことばかりが頭を回り、
仁科君の電話以降、この憤懣やる方ない気分をどうしてくれようかと持て余してた挙句、
結局のところ私はいつも通りに匠先輩と涼子さんにこの鬱憤をぶちまけようと思いついた。
匠先輩と涼子さんはいつでも私の話を親身になって聞いてくれる。

幼馴染とはいえいつもいつも恋人のいない19歳の女が訪問するのは如何とは思うし、
匠先輩にも涼子さんにも悪いとは思うのだけれど、居心地が良いのだから仕方が無い。
私は今日も力いっぱい文句を言ってやろうと思って通い慣れた匠先輩の住んでいるアパートへ歩いたのだ。

手に近くのスーパーで買った差し入れを入れたビニール袋を持ちながら
桃の木のある坂道を登り、くたびれたコンクリートの塀の脇を抜けて駅からアパートへの道を私は歩いた。

そしてアパートに着くといつも通りにドアをノックし、いつもどおりに返事を待たずにドアを開けた。
しかし玄関に身体を入れながらの
「こんにちは。」
の声は途中で尻すぼみになった。

部屋の中には匠先輩と涼子さんと、それから何故か判らないけれど、
私が力いっぱい文句を言ってやろうと考えていた仁科君が座っていたからだ。

全員がびっくりした顔をしていただろうけど
仁科君はとりわけびっくりした顔をしてがたんと音を立てて立ち上がった。

私も当然驚いた。

何でここにいるの?
先回りしてたの?
私に文句を言われる為に?
686
(1): uni ◆/pDb2FqpBw 2010/07/22(木) 18:42:03 ID:HnciCvmB(11/11)調 AAS
-*-*-*-*-*-*-

感想ありがとうございます。
続きは書けましたら。

ノシ
687: 2010/07/22(木) 20:16:47 ID:QA+RFDMV(1)調 AAS
>>686GJ!
やっと出会ったか。これからの展開に期待だわ。

つかどんだけカープ好きなんだよww
688: 2010/08/07(土) 03:41:09 ID:Wbo26rWT(1)調 AAS
久々に喜多さん読もうと思ったらサイト消えてた
調べたら鯖自体が停止してるみたいだ
長いこと更新してなかったけど、このまま終了はしないで欲しいなあ
689: 2010/08/13(金) 05:17:58 ID:/cluUGYW(1)調 AAS
気の強いロリ系が読みたい
690: 2010/09/04(土) 03:16:38 ID:hcp2e05m(1)調 AAS
保守
691: 2010/09/15(水) 13:27:45 ID:Qi+YpeGr(1)調 AAS
uniさん、はりーあっぷぷりーず
692: 2010/09/24(金) 04:59:24 ID:vbOTFvKR(1)調 AAS
保守
693: 2010/09/30(木) 16:33:07 ID:bbNrsarn(1/2)調 AAS
このスレだけでしか書いてない訳でもあるまいよ
694: 2010/09/30(木) 16:34:30 ID:bbNrsarn(2/2)調 AAS
これが、誤爆だと、伝われこの思い!!!
695: 2010/10/08(金) 22:46:11 ID:u3Dkt+JZ(1)調 AAS
ほしゅあげ
696: 2010/10/25(月) 02:30:04 ID:XgTEKnU1(1)調 AAS
保守
697: 2010/11/02(火) 19:25:41 ID:1krrMjN5(1)調 AAS
気の弱いスレが落ちってしまった・・・
698: 2010/11/06(土) 11:32:41 ID:aRPYt6PY(1)調 AAS
ごめんなさい
699
(1): 2010/11/15(月) 21:04:59 ID:XfIScEPD(1)調 AAS
規制解除されてたら一本書いて来る
700: 2010/11/15(月) 22:06:45 ID:daTfrlrV(1)調 AAS
>>699
頼んだで
701: 2010/11/17(水) 10:44:33 ID:1oLiDJay(1)調 AAS
ツンデレとはどう違うの?
702: 2010/11/28(日) 21:19:37 ID:g5B43B9w(1)調 AAS
ライバルだと思っていた男に助けられて惚れてしまう女の話
703: 2010/12/12(日) 05:35:30 ID:4u6WAlE6(1)調 AAS
保守
704: 2010/12/26(日) 07:25:08 ID:ImpcAWgM(1)調 AAS
保守
705: 2011/01/07(金) 10:00:15 ID:25Vv1Pac(1)調 AAS
ほしゅ
706: 2011/01/18(火) 22:56:40 ID:1r0KAzAE(1)調 AAS
age
707: 2011/01/20(木) 20:00:27 ID:/PNXOLOE(1)調 AAS
 
708: 2011/01/23(日) 23:51:34 ID:RPOpMCST(1)調 AAS
保守
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