[過去ログ] 気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第9章 (734レス)
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247: [さんきゅsage] 2008/09/07(日) 08:29:10 ID:RxBTMM/L(1)調 AAS
>>246
ア、アンタなんかに言われなくても知ってたわよ!
248: 2008/09/13(土) 23:30:44 ID:oyKQWx9L(1)調 AAS
ほしゅ
249: 2008/09/17(水) 23:46:37 ID:fqqu1Coz(1)調 AAS
保管庫にある「ボクっ娘!愛奴調教」の続きが
とても読みたいです。これからって感じなのに・・・
250: 2008/09/18(木) 13:40:13 ID:6Jlt3fn5(1)調 AAS
だいぶ前にこのスレで話題になってたサンデーのヤンキー娘のラブコメ漫画の1巻出てたから買ってきた
馴れ初め編にあたる読み切りは残念ながら載ってなかったが、なかなか面白かった
とらのあなとかの一部書店で書き下ろしのペーパーが数量限定でついてるみたいだからお早めに
251(1): 2008/09/19(金) 11:41:27 ID:U7MNCZmg(1)調 AAS
ツクバさん、更新止まっちゃったね。何かあったのかな?
252: 2008/09/19(金) 22:50:15 ID:4qj6wEoQ(1)調 AAS
>>251
小説サイトが2〜3ヶ月程度に一度更新するだけでもすごいこと
253: 2008/09/24(水) 18:38:10 ID:mkLRDUtM(1)調 AAS
下がりすぎ、アゲますよ
254(1): 2008/09/25(木) 13:37:07 ID:nByuUvCl(1)調 AAS
定期的にあるツクバさん更新うんちゃらは自演?
誰も気にしちゃいねーんだけどw
255: 2008/09/25(木) 22:50:06 ID:5E89XEBt(1)調 AAS
>>254
俺は気にしてる
256: 2008/09/27(土) 13:58:21 ID:+/KyLrMl(1)調 AAS
俺も気にしてる
教えてくれるのはありがたい
257: 2008/09/28(日) 13:19:04 ID:WSxegUII(1)調 AAS
今喜多さん読み返してるんだけど、2ch漫画用語辞典とバキとJOJOに目を通しておけばたいがいのネタはわかるな
2ch漫画用語辞典
外部リンク:www14.atwiki.jp
258: ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:52:36 ID:pODSkiGy(1/15)調 AAS
不器用な彼女の最終話を投下します。
エロナシですので、エロナシが苦手な方は、スルーをお願いします。
259: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:53:15 ID:pODSkiGy(2/15)調 AAS
月曜日の朝。いつもの通学路が、何故か色あせて見える。
普段ならガヤガヤとにぎやかな、通学途中の生徒達の話し声も、どこか遠くから聞こえるように感じる。
いつものように下駄箱を開け、上履きに履き替える。
いつものようにしているのに、どこか夢の中をさ迷っているかのような、ふわふわとした感じがする。
そう、まるで夢の中にいるように思えてくる。……夢、だったのだろうか?
実はまだ金曜日の夜で、明日のデートに備え早めに寝てしまった私が見ている夢なのだろうか?
そうか、これは夢なんだ。きっと土曜日にあった出来事も夢なんだ。
そうだ、そうに決まっている。でなければ、あんな酷いことが起こる筈はない!そう、結城が車に……
「し、島津っち……おはよう」
フラフラとふらつく足取りで教室に入ると、友人達が恐々といった様子で話しかけてくる。
あぁ……夢の中にも皆は出てくるのだな。結城はまだ出てこないのかな?
夢とはいえ、大事な彼女を心配させたんだ。早く会いに来てくれてもいいと思うのだが?
「あの、なんて言ったらいいか分かんないけど……大丈夫だよ!きっと元気になるって!」
「そうそう!結城はバカだけど、島津っちを悲しませるような大バカじゃないって!」
「そうそうそう!あいつはああ見えて、なかなか男らしいところがあるから、きっと大丈夫だよ!」
やはり元気がないように見えるのだろうか?……見えてしまうのも当たり前か。
あれからまる2日間、私は一睡もしていないのだから。
2日間寝ていない?そうか、2日間も続いている夢を見ているのか。
どうやら私は長い夢を見ているようだ。……夢ならどんなによかったことか。
夢でないことは分かっている。今も残っている、結城に触れた手の感触。
結城の変わり果てた顔。色々な管が通っている身体。
痙攣の為か、時折開く瞼。その瞼から覗いた光のない瞳。……あの全て夢だったら、どれほど嬉しいことか。
けど今も聞こえるように耳にこびり付いている。おばさんの鳴き声が。加害者の、涙声での謝罪の言葉が。
その人に対するおじさんの怒りの罵声。そして……私の泣きじゃくる声。
その全てが私の頭の中に記憶として残っている。
……何故私はこんな覚えたくもないことまで覚えてしまうのだろうか?
私はこれからの一生を、この記憶を抱えたまま生きていかなければいけないのだろうか?
「……おはよう」
「……元気になるかな?」
「……あまりバカなどと言わないでほしい」
「……男らしい?そう、結城はとても男らしいんだ」
そう、結城は男らしい。家の手伝いで鍛えられたたくましい腕。
いつも私を抱いてくれた後にしてくれる腕枕が、ここ最近の一番の楽しみなんだ。
でも……その腕も今は力なく、ベッドの上で横たわっている。
260: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:54:17 ID:pODSkiGy(3/15)調 AAS
「し、島津っち……こんなこと聞いていいのか分からないけど、結城は大丈夫なの?」
「……お医者様の言うには、今の結城は息をして心臓が動いているだけの状態らしい。
常人なら即死だったと。鍛えていたから、車に跳ねられた後も心臓が動いているんだ、と」
幸せな時間を過ごすはずだった、結城とのデートの約束。
遅刻ばかりしている結城にあげた、誕生日プレゼントの腕時計。
遅刻をしないようにと、タイマーを待ち合わせ時間の朝9時にセットしてあげたんだ。
まさかその約束の時間を守ろうとして……こんなことになるなんて。
「し、島津っち……だ、大丈夫だよ!こんな綺麗な彼女を残して死ぬなんてことないよ!」
「バ、バカ!死ぬとか言っちゃダメだって!」
「……死ぬ、のだろうか?やはり結城は死んでしまうのだろうか?私を一人にして……ひっく、死んでしまうのだろうか?」
考えないようにしていた最悪な現実。どう考えても変えようのない、耐えられない現実。
デートの待ち合わせ時間に間に合おうと、急いで駅へと向かっていた結城。
駅前の歩道橋を渡ろうとしたとき、信号無視の車が突っ込んできた。
……お医者様が言うには、本人は車に跳ねられたことも気づいていないだろう、ということだった。
あれからまる2日。結城は息をして、心臓も動いている。しかし、ただそれだけだ。
私が好きだった、あのたくましい腕に力が入ることもなく、横たわったままだ。
何度も見詰め合ったあの顔も、寝ているのは結城だと、教えられなければ分からないくらいに、腫れ上がっている。
そう、結城は交通事故に遭い、生死の境をさまよっている。
……お医者様曰く、覚悟をしておいてください、と。
結城が死ぬ……死んでいなくなってしまう!
そう考えただけで、私の目からは涙があふれ出し、止まらなくなってしまう。
「ゴ、ゴメンね?でも事故から2日経ってるんだよね?それでも頑張ってるんだよね?だったら結城を信じようよ!
きっと結城は頑張って生きてくれるって!」
「そうそう!結城は打たれ強いんだから、すぐに元気になるって!」
「そうだよ!結城が元気になったとき、島津っちが泣いてたら悲しむよ?だからさ島津っち、泣かないでよ」
友人達の優しい言葉にますます涙が溢れてくる。
声を上げ、泣きじゃくる私をギュッと抱きしめて慰めてくれる友人達。
皆の温かさが私を励まし、もう結城は死ぬしかないんじゃないのかと、絶望に打ちひしがれていた私を勇気付ける。
「ひっぐ、ぐす……皆、ありがとう。……そうだな。結城は私の泣き顔は嫌いだった。
私が泣いていれば、結城は安心して治療に専念できない。そうだ、私は泣いていてはいけないんだ」
そうだ、結城は私の泣き顔は嫌いだと言っていた。
私が泣いて、結城を心配させてはいけない。うん、結城も頑張っているんだ、私も泣かないように頑張らないといけない。
「……皆、ありがとう。私は決して泣かない。以前結城は、私の泣き顔を見るのが嫌だと言っていた。
そうだ、私が泣いてしまったら、結城は安心して治療に専念できないではないか」
「そうだよ!島津っち、結城を心配させちゃダメだよ!」
「そうそう、それにね、アタシ達も島津っちの悲しい泣き顔なんて見たくないしね」
「うん、友達が悲しむところなんて見たくないよ」
皆は私をギュッと抱きしめてくれて、励ましてくれる。
皆が落ち込んでいる私を励まそうとしてくれている。
こんな私なんかを友達と言ってくれて、一生懸命に励ましてくれる。皆……ありがとう。
つい今しがた泣かないと誓ったはずなのに、もう泣きそうになってしまった。
けど、ここで泣いてはいけない。次に泣く時は、結城の退院の時だ。
思いっきり泣いて、結城を困らせてやろう。ふふふふ、結城は困った顔をしてくれるかな?
261: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:55:01 ID:pODSkiGy(4/15)調 AAS
結城が事故が遭ってから、毎日のお見舞いが私の日課となった。
事故から一週間。おじさんやおばさんにも疲れの色が見えてきた。
ただベッドで横になり、息をしているだけの結城。このような状態で、本当に治るのだろうか?
集中治療室で力なく横たわっている結城。
私は結城の側に付き添い、いつものように心の中で話しかける。
まだ起きないのかい?君はほんとに寝ぼすけさんだな。
いい加減に早起きにならないと、ダメだぞ?早く起きて、また私を抱きしめて欲しい。
こんなに心配をさせているんだ、抱きしめてもらってもいいだろう?
私が君を起こせるようになればいいのだが……将来的には起こしてあげたいな。
その時はたたき起こしてあげよう。……優しく起こして欲しいだと?
ふふふふ、残念ながら我が島津家では、寝ぼすけはたたき起こされると決まっている。
……結城家はどうなのだろうか?結城家では優しく起こすと決まっているのであれば、私もそうしなければいけないかな?
……君はまた、私をギュッと抱きしめてくれるのだろうか?……抱きしめてくれなくてもいい。
ただ、生きてさえくれたら、それでいい。だから……早く意識を取り戻して欲しい。
でないと、おじさんやおばさんが疲れきって倒れてしまう。
結城、早く目を覚ましてほしい。君がいないと、結城米穀店が立ち行かなくなってしまう。
体に障害が残ってしまったとしても、私がお店を手伝おう。
いや、私が君と一緒に跡取りとして働いてもいい。
だから……早く目を覚ますんだ。私の友達も、学校の皆も結城が目覚めることを待っている。
……ふふふふ、君はいつも待たしてばかりだな。けど、君は遅刻はしても必ず来てくれた。
今回も……大丈夫だよね?皆を待たしてるんだ、またカレーをご馳走しなければ文句を言われてしまうぞ?
ふふふ、けど安心してほしい。今回は君1人にお勘定を払わせるつもりはない。
私は君の彼女だ。今回だけは、君と一緒に払ってあげよう。
……君は文句を言うのだろうか?『事故に遭ってまでお金を払わされるってなんなんだよ!』って。
けど、払うのが君と私の義務だと思う。今皆は、君の為に千羽鶴を折ってくれている。
君が早く退院するようにと鶴を折ってくれているんだ。
ふふふふ、皆の気持ちに答えるためにも、早く退院してカレーをご馳走しなければいけないな。
私も君が退院するまではカレーを食べないつもりだ。君と一緒に食べたいからな。
私のここまでさせているんだ、退院したら、感謝の言葉を囁いて欲しいな。
ギュッと抱きしめて、愛してると囁いて欲しい。……お礼に私も囁いてあげるから。
だから、一日でも早く、怪我を治して退院してほしい。
結城……また明日、君に会いに来るよ。明日こそは直接話し合えると願っているよ。
短い時間だったが、結城との会話を終えて、集中治療室を出る。
ダメだ、結城の姿を見たら、涙がこぼれそうになってしまう。
私が泣いてしまったら、結城が安心して治療に専念できないではないか!我慢だ!我慢するんだ、私!
唇をかみ締め、涙を堪える私。そんな私におじさんが話しかけてきた。
262: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:55:59 ID:pODSkiGy(5/15)調 AAS
「島津さん、ちょっと時間いいかな?」
「おじさん、少しなら大丈夫ですが、いったいなんの用でしょうか?」
おじさんから話しかけてくるとは珍しい。
結城の事故以来、おじさんとおばさんが話しかけてくることは減った。
多分、悲しみに打ちひしがれていた私に気を使ってくれていたのだろう。
一番辛いのはおじさん達なのに……そんな事も分からなかったバカな私に腹が立つ。
そうだ、一番悲しいのはおじさん達なんだ。実の息子が事故に遭ったんだ、私なんかよりもずっと悲しいはずだ。
そうだ!励まさなければいけない!私は友人達に励ましてもらい、どうにか元気になった。
今度は私が励まさなければ!おじさん達に元気がないと、結城も安心して治療に専念できないだろう。
うん、色々な話をして励まそう。誰かを励ます経験はほとんどないのだが、私がしなければいけないんだ。
「用事とかじゃないんだけどね、その……修太のことを教えて欲しいんだ」
「結城のこと、ですか?」
「そう、修太が学校でどういうことをしてたのか、いつもはどんなことを話してたのかとか。
おじさん達、あまり学校での修太の事を知らないんだ。……おじさん達に教えてくれかな?」
悲しそうな顔をしたおじさん。心労からか、憔悴した顔のおばさん。
私が話すことで、少しでも元気になってもらえるのならば、いくらでも話そう。
今ではおじさん達は、私の大事な人達だ。
結城と出会ってから、私には大事な人たちがたくさん出来た。
いつも話しかけてくれ、私が困ったり落ち込んでいたりすると、いつも助けてくれる優しいクラスメートの皆。
慣れないバイトで戸惑っていた私をフォローしてくれて、いろいろなことを教えてくれた優しいおばさん。
いつも豪快に笑い、私を本当の娘のように優しくしてくれるおじさん。
それに、家族以外で生まれて初めて出来た……いや、家族以上に大事な人。
ふふふふ、そう、君のことだよ、結城。
君の事を話すことで、おじさん達が少しでも元気になれば、君も喜んでくれるかな?
……学校での君の事を話すと、あとで君は拳骨をもらうかも知れないな。
けど私に文句は言わないで欲しい。いつもバカなことをしている君が悪いんだ。
それから少しの時間、私は思いつくままに結城の事を2人に話した。
初めての出会いが『長宗我部元親』から始まった事。何度も失礼なことを言われ、その度に蹴飛ばしてしまったこと。
教室の真ん中で気絶した結城を膝枕した話には、おじさん達も声を出して笑ってくれた。
学校の帰り道、私から腕を組み、キスをした話をしたときは、真っ赤な顔で驚いてくれた。
『島津さんはやっぱり変わり者なんだね。修太にお似合いだったよ』と。
どこが変わり者なのか分からないが、2人にお似合いといわれて嬉しかった。
2人が楽しそうに笑ってくれたことで、私も胸が軽くなった気がした。
結城の話しを終え、帰ろうとした私におじさんが話しかけてきた。
『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』と。
私はこの言葉の意味が分からずに、ただ、『ハイ』と頷いただけだった。
病院を出てから考えてみた。先ほど言われた言葉の意味を。
いったいおじさんは何を言いたかったのだろう?もう十分とはいったい何のことなのか?
……分からないな。おじさんがいったい何を言おうとしたのか、よく分からない。
家に帰ってからママに相談をしてみよう。ママなら何か分かるかもしれない。
そう考えて家路を急いだ。今日は少し帰るのが遅くなってしまった。
拓や直樹がお腹をすかして待っているだろう。早く帰って美味しいご飯を作ってあげねばいけない。
そうだ!今日は2人が大好きな餃子にしてあげよう。パパも発泡酒と一緒に食べるのが大好きだし、ママも大好きだ。
皆、餃子をおかずにすれば、喜んでくれるだろうか?喜んでくれたら、嬉しいな。
263: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:56:44 ID:pODSkiGy(6/15)調 AAS
「ママ、ちょっと聞きたいことがあるのだが、少し時間をもらってもいいだろうか?」
美味しい夕食を終え、食器を洗い、手の空いたところでママに話しかける。
病院でおじさんが言った言葉に対してママの意見を聞くために。
『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』
この言葉の意味はいったい何なんだろう?何が十分なのだろう?あとは私だけとはいったいどういうことなのだろう?
おじさんが神妙な表情で言ったこの言葉。意味を考えれば考えるほど、何か嫌な予感がした。
……何故嫌な予感がするのだろう?
「ん?話って何?……結城くんのこと?」
「うん、結城についてなんだが、今日、おじさんに変なことを言われたんだ」
私の家族は、もちろん結城の事故のことを知っている。
パパは、落ち込み、泣きじゃくっていた私を優しく抱きしめてくれ、慰めてくれた。
拓と直樹は、私の大好物のタイヤキや、たこ焼き。屋台の焼きそばを買ってきてくれた。
落ち込んでいる私を、食べ物で慰めようなんてちょっと違うのではないか?
……おなかいっぱいになった後は、何故か落ち着いたとこは秘密にしておこう。
そして、ママは……一緒に寝てくれて、一晩中私の話を聞いてくれた。
優しく頭を撫でてくれ、きっと大丈夫。結城は必ず大丈夫と励ましてくれた。
家族みんなが私を励ましてくれたおかげで、私はどうにか踏ん張ることが出来た。
家族に励まされ、友人達に励まされ……私は立ち直ることが出来たんだ。
……本当に私は恵まれている。
私の些細な相談にも乗ってくれ、落ち込んだ時はいつも励ましてくれる、とても優しい友人達。
私のことをとても大事に思ってくれているパパ。……お小遣いを減らされても、文句一つ言ってこないとても優しいパパ。
いつも騒がしく、手がかかる二人だが、どんなに叱っても私を慕ってくれる自慢の弟達。
怒ると怖いけど、いつも私たち家族のことを考えてくれていて、色々な相談にも乗ってくれる、とても優しいママ。
それに……少しバカだけど、私のことをとても大切に思ってくれていて、とても大事にしてくれる。
バカな私を愛してると言ってくれた、私のとても大事な人。
初めて『愛』という感情を教えてくれた、私の大事な恋人……結城。
本当に……私は本当に恵まれている。
こんなにも優しい人たちに囲まれ、素敵な人に愛してもらえ、
大好きな人を愛することが出来る人間なんて、この世にそうはいないのではないか?
私は幸せだと断言できる。結城が退院してくれれば、もっと幸せになれる。
だから、結城……早く退院して、私を幸せにしてほしい。
264: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:57:36 ID:pODSkiGy(7/15)調 AAS
「……彩?なにニヤけた顔をしてるの?どうせ結城君のこと、考えてたんでしょ?」
「……え?い、いや、結城のことは考えてはいたが、その……マ、ママ!からかわないでほしい」
「あはははは!ゴメンゴメン、あまりにも彩が可愛かったからね。その様子だと、結城君、回復してきたの?」
ママの何気ない言葉に表情を曇らせてしまう。
私は、何をのん気にはしゃいでいたのだ?結城は……私の大切な結城は、まだ意識はなく、苦しんでいるというのに。
私は……バカだ。大バカだ!大好きな人が苦しんでるというのに、何をはしゃいでいるんだ!
「あ、彩?ゴメンネ?ママ、考えなしに言っちゃって……」
「マ、ママは、わるぐない。わだじが、はじゃいだわだじがわるいんだ」
「あ、彩?唇かみ締めてどうしたの?」
「わだじが泣くと、結城があんじんじて治療でぎない。だからわだじはながない」
唇をかみ締め、涙を堪える。私はいつからこんなに泣き虫になったのだろうか?
「そう……本当にゴメンね?貴女の気持ち、よく考えずにいたママを許してね」
唇をかみ締め、涙を堪えている私を、優しくギュッと抱きしめてくれるママ。
ママ、抱きしめてくれるのは嬉しいのだが、そんなに優しくされるとますます涙が……
「彩、貴女、凄い顔してるわよ?そんな顔じゃ結城君にも笑われちゃうわね。
シャワーでも浴びて、スッキリしてきなさい。話はそれからね。
頭からシャワーを浴びれば顔中濡れちゃって、泣いているかどうかなんて分かんないわよ」
「頭がら浴びるど分がらない?」
「そう、分かんないわ。だから、ね?シャワーを浴びて、スッキリしてきなさい」
「で、でも……」
「溜めておくのは体によくないわ。シャワーが全てを流してくれるわよ。さ、すっきりして来なさい」
優しくほほ笑みながら、そっと背中を押してくれるママ。
ママはいつもそうだ。私が困っている時は、優しくほほ笑みながら、励ましてくれる。
ママの言葉に甘えることにした私。
シャワーが私の涙を流してくれ、シャワーの音が、私の声を掻き消してくれた。
……強くならなければいけない。結城が私のことを心配せずにすむように、もっと強くならなければいけない!
熱いシャワーで涙を流し、心に誓った私。
熱いシャワーは涙を流すだけでなく、私の弱気になった心も温めてくれたようだった。
265: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:58:24 ID:pODSkiGy(8/15)調 AAS
「で、彩。ママに聞きたいことって何?」
シャワーで涙を流し、スッキリとしてお風呂を出てみれば……ママが冷たいアイスを用意してくれていた。
こ、これは!……モチモチとした触感が、まるで本物のお餅のような、お饅頭をモチーフにしたアイス。
2個入りのこのアイスを、拓と直樹の3人でどう分けるかを、いつも争っていた、とても冷たくて美味しいアイス。
アイスの形が月に似ているからその名がついた、『月見満月アイス』ではないか!
しかもママは、驚くことに一人で2個食べてもいいと言ってくれた!
あぁ……モチモチとしたこの触感。口に広がるバニラアイスの冷たくて美味しい芸術的な味。
あぁ……至福のひと時だ。このように美味しいアイスが、コンビニで買えてしまってもいいのだろうか?
「……彩、美味しくて夢中になるのは分かるけど、ママに話があるんでしょ?」
「はぐ!ふぉうふぁった!ふぁふぁ、おひひゃんはわわふぃにふぉういっふぁんふぁ」
「……はぁぁ〜。話は全部食べてからでいいわよ。食べながら話すのは、お行儀がよくないわ」
何故かため息を吐いたママを尻目に美味しいアイスを味わうことにする。
あぁ……お風呂上りの冷たいアイス。これほどの贅沢がほかにあるのだろうか?
はむはむとアイスを食べ終わり、ママに本題の話をする。
……何故少しあきれているような顔をしているのだろうか?
「彩、満足した?で、ママに聞きたいことってなにかしら?」
「ものすごく美味しかった。私だけがこのように美味しい物を食べて、いいのだろうか?」
「もう!話がないならママ、お風呂に入るわよ!」
「ゴ、ゴメンママ!そ、その聞いてほしいことというのは……おじさんに言われた言葉の意味を教えてほしい」
そう、おじさんは何故あんなことを言ったのだろう?
何が十分なのだろう?あとは私だけとはどういう意味なのだろう?
「おじさん?……あぁ、結城君のお父様のこと?」
「そう、結城米穀店の店主であり、結城の父親であるおじさんが、私に不思議なことを言ったんだ。
『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』と。これはいったいどういう意味なのだろう?
考えても考えてもどういう意味なのかよく分からないんだ」
そう、おじさんに謎の言葉を言われてから私は考えた。この言葉にはどういった意味があるのか、を。
けど考えれば考えるほど、何故か胸の奥がザワつくというか……嫌な気分になる。
これはいったいどういうことなのだろう?
「……そっか。そこまで結城君、容態が悪かったのね。結城さん達は覚悟を決めたのね」
「容態が悪い?た、確かに結城はまだ意識を取り戻してはいない。しかしだな!結城は頑張っているんだ!
だからあまり容態が悪いとかは言わないでほし……覚悟を決めた?」
ママの口から出た言葉、『覚悟を決めた』。この言葉を聞いて、何故か体が震えてきた。
な、何故だ?何故震えてしまう?アイスを食べたからか?2個も食べてしまったからなのか?
「彩……取り乱さずに聞いてほしいの。
部外者のアタシにはよく分からないことなんだけどね、多分、結城君……回復はしないと思うの」
「……え?か、回復しない?そ、それはどういう意味なのだろうか?」
「……言葉どおりの意味よ。このまま意識を取り戻すことなく生き続けるのか、それとも……死んでしまうのか」
ママの言った言葉を理解できずにキョトンとしてしまう。
え?意識が戻ることがない?ええ?し、死んでしまう?……嘘だ!結城が私を残して死ぬはずがない!
何故ママはそんな酷いことを言うんだ!
266: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:59:11 ID:pODSkiGy(9/15)調 AAS
「マ、ママ……何故そんな酷いことを言うんだ」
ガクガクと全身が震え、背中を冷たい汗が伝う。
今までなるべく考えないようにしていた。友人達に励まされてからは、まったく考えなかった。
今、目の前まで迫っている悲しい現実……結城の死。
ママの口から発せられた言葉に、私は身動き一つ取れなくなってしまった。
「彩……落ち着いて聞きなさいね?結城君のご両親はね、覚悟を決めたのよ。
可愛い我が子がいなくなってしまうことを」
「そ、そんなはずはない……あの優しいおじさんやおばさんが、結城を見捨てるなんてする訳がない!」
ガクガクと震えながらママの言葉に反論する。おじさん達が結城を見捨てるなんてありえない!
「そんなの当たり前でしょ!誰が好き好んで愛する我が子を見捨てるもんですか!
親というものはね、たとえ我が子が犯罪者になっても見捨てないものよ」
「なら何故結城が死んでもいいと思うんだ!」
「彩……結城君のご両親はね、死んでもいいなんて思ってなんかないわよ。
むしろ結城君と変わってあげたいって思ってるわよ。……ベッドの上で苦しんでる結城君とね」
「当たり前だ!おじさんやおばさんはとても優しいんだ!ママのような薄情なことは決して言わない!」
ママは私の味方だと思っていたのに、何故酷いことを言うんだ!
ママを見損なった!ママなんかに相談した私がバカだった!明日にでも友人達に相談しよう。
皆ならキチンと答えてくれるはず。ママなんかと違い、しっかりと答えてくれるはず。
「彩……なぜ結城君が頑張ってると思う?意識がないのに、事故から一週間。
普通なら即死の状態で、何故一週間も頑張ってくれてると思う?」
「何故結城が頑張っているかだって?そんなものは決まっている!結城は頑張って怪我を治したいと思っているんだ!」
そう、怪我を治し、また皆と学校で騒ぎたいと思っているんだ!
おじさんやおばさんの手伝いをし、結城米穀店を支えたいと思っているに違いない!
私と……デートをのやり直しをしたいと頑張ってくれているんだ!
「ううん、それは違うと思うわ」
「ママ、酷い!何故酷いことばかりを言って私を苛めるんだ!ママは……私が嫌いなのか?」
「彩……アタシはね、彩が大好きよ。彩にパパ、拓に直樹が大好きなの。
例えママが死んじゃっても、守りたいほどに好きなの」
「なら、何故酷いことばかりを……」
「きっとね、結城君も、彩やご両親のことが大好きだから頑張ってると思うの。
頑張って生き続けて……少しでも長く生き続けようと頑張ってるのよ。あなた達が、頑張れるようにってね」
私たちが頑張れるように?ママは何を言っているのだろう?
結城が私たちを応援してくれているとでも言うのだろうか?でも、今応援されなければいけないのは結城のほうだ。
何故その結城が私たちが頑張れるようにと頑張っているのだ?
「……どういう意味なのだろう?何故私たちが結城に応援されなければいけないのだろう?」
「きっとママが結城君と同じ立場になっても、そうしようと思っちゃうんじゃないかな?
多分だけどね……結城君は皆の為に時間を稼いでいるのよ」
「時間を稼ぐ?それはいったいどういう意味なのだろう?」
「それはね、長く生きることで、結城君が死ぬという覚悟を決める時間を作ってくれてると思うの。
だからね、結城君のご両親は覚悟が出来たのよ。
彩にもう十分だって言ったのは、結城君が死ぬことに、覚悟を決めることが出来たってことだと思うの」
「な……お、おじさん達が、結城が死ぬと思っているということなのか?」
おじさん達がそんな酷いことを思うわけがな……そういえば思い当たる節がある。
今日になって急に結城の話をしてほしいと言ってきた。
あれはもしかして結城のことを諦めるためではないのか?
もしかして、結城のことを思い出にするために聞いてきたのではないのか?
酷い……ママもおじさん達も酷い!結城はまだ頑張って生きているんだ!
それなのに、結城が死ぬとか考えているなんて……最低じゃないか!
267: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 19:59:54 ID:pODSkiGy(10/15)調 AAS
「彩……そんな顔、しないでよ。そんな悲しい顔はしないで」
ママの話を聞いて、涙がポロポロと溢れてくる。
もう泣かないと誓ったのに溢れてくる。ママやおじさん達が酷いことを考えているからだ。
何故そんな酷いことを考えるのだろう?何故頑張っている結城を応援しようとしないのだろう?
「……ママが酷いことを言うからだ。おじさん達も酷い。何故皆酷いことを平気で考える?
結城は頑張って生きている。今、こうしてママと話している時も。それなのに、何故酷いことを……」
「……彩はね、結城君が苦しんでいるところを見ていたいの?」
「そんなの見たくない!見たいわけがないじゃないか!」
大好きな人が苦しんでいるところを見たいかだって?そんなものは見たくないに決まっている!
そんなものが見たい人は変態しかいない!
「うん、見たくないわよね?結城君のご両親もね、きっとそうなのよ。
結城君、苦しんで生きてると思うの。だって酷い事故に遭っちゃったんだからね。
痛くて痛くてとっても辛いと思うの。普通なら痛くて苦しいから、すぐに死んじゃうと思うの。
でもね……結城君は皆のために痛いのも苦しいのも我慢して、辛いのも我慢して生きていると思うの」
「ゆ、結城が我慢して生きている?それはいったいどういう意味なのだろうか?」
「それはね、みんなの為。ご両親や彩のために苦しんで生きているの。
みんなが覚悟を決める時間を作ってくれてるのよ。
結城君が死んでも大丈夫なように、自分がいなくなってもみんなが頑張って生きていけるようにって。
みんなに自分が死んでいなくなることを、覚悟してもらうために頑張って生きて、時間を作ってると思うの」
マ、ママは何を言っているんだ?結城が私たちのために時間を作っている?
結城がいなくなることを覚悟してもらうために、頑張って生きて時間を作っている?
「ご両親はね、もう無理して頑張っている結城君をみたくないと思ってるんじゃないかな?
苦しんでいる我が子を見たい親なんていないからね。だから彩に言ったと思うの。
『おじさん達は、もう十分だ。あとは島津さんだけだ』ってね。
ご両親は覚悟を決めたのよ。あとは……貴女が覚悟を決める番。
結城君がいなくなるという現実に、覚悟を決めるの。これはね、他の誰でもない、彩がしなきゃいけないことなの。
じゃないと、頑張っている結城君が可哀想よ」
ママの残酷な言葉に涙が止まらなくなる。
な、何故そんな覚悟を決めなければいけない!私は嫌だ!結城がいなくなるなんて絶対に嫌だ!
268: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:00:37 ID:pODSkiGy(11/15)調 AAS
「わ、だじはぁ、ひぐ、やだぁ!いなぐなるなんで、ぜっだいにイヤダァ!」
「彩……うん、気持ちはよく分かるわ。でもね、覚悟を決めなきゃいけないの」
「イヤダァ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!絶対にいやだぁ〜!結城は私と生きるんだ!死ぬなんて……ひっぐ、やだぁぁ」
「彩……泣かないで、彩。あなたが泣いてたら、結城君、安心して天国にいけないわよ」
泣きじゃくる私をギュッと抱きしめ頭を撫でてくれるママ。けど私の涙は止まらない。
ママが酷いことを言ったから?おじさん達が酷いことを考えていたと知ってしまったから?
……多分、違う。きっとママの言うことが正しいと分かってしまったから。
そう、結城はきっと助からない。きっと近いうちに死んでしまう。
私も分かっていた。結城は助からないだろうと。お医者様も言っていた、覚悟を決めておいてくださいと。
だけど……結城が頑張ってくれていたから、私は結城が生きてくれるんじゃないかと思ってしまった。
結城は生き続けてくれる……そう思い込むようにしていたんだ。
……そうか。結城はそんな私に時間をくれたんだ。
結城がいなくなっても大丈夫なように、生きていけるようにと、覚悟を決める時間を私に作ってくれたんだ。
……バカ。本当に君はバカだな。痛くて苦しいのなら、私のことなど無視して楽になればよかったのに。
本当に君は大バカだ!私なんかのために、痛くて苦しくて辛いのに……意識もないのに頑張ってくれるなんて。
……ありがとう。君が時間をくれたおかげで、どうにか覚悟が出来そうだ。
……うん。明日、君に別れを言いに行くよ。私の覚悟を見せるために。君に安心してもらうために。
「ママ……色々酷いことを言ってゴメンなさい。私も、おじさんたちのように頑張ってみる」
「彩……うん、頑張んなさいね。ママも酷いことを言ってごめんなさいね」
「ママ、今夜は一緒に寝てもらえるだろうか?……今夜は一人では寝る勇気がないんだ」
「うん、ママがギュッと抱きしめて寝てあげるわ。いっぱい泣いてもいいからね?
彩の涙、ママが胸で全部吸い取ってあげるわ」
結局その日はそのままママの胸に抱かれて眠りについた。
ママの胸に顔を埋めながら結城との別れを考えた。……絶対に嫌だ。結城と分かれるなどと考えたくもない!
けど、苦しんでいる結城もこれ以上は見たくない。きっとおじさん達も同じ気持ちだったのだろう。
苦しんでいる結城を見たくないから覚悟を決めたのだと思う。
だったら、私も覚悟を決めて、結城に会いに行こう。
……君は私が泣いているところを見たくないと言っていた。
だから私は泣かない。これからは一生、君のために泣いたりはしない。
君は冷たいって怒るかな?でも、私を残して死んでしまう君が悪い。
悔しければ意識を取り戻せばいい。そうすればいくらでも泣いてあげるよ。
私も……君の胸で泣きたいんだ。明日、意識を取り戻した君の胸で、泣ければ、いい……な。
ママの温もりに包まれて、眠りにつく。
眠りについた私に結城が会いに来てくれた。
心配そうな顔をして、『俺がいなくても大丈夫か?』と。
だから私は言ってやった。
『君がいなくて大丈夫な訳がない。でも、もう大丈夫だ。君のおかげで覚悟を決めることが出来た』と。
私の言葉に頷いた結城は、ほほ笑みながら消えていった。
バカ……だから君はバカなんだ。抱きしめるとか、キスをするとかしてから消えるべきじゃないのかい?
269: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:01:29 ID:pODSkiGy(12/15)調 AAS
日曜日の午後、結城が入院している病院へと来た私は、おじさん達にお願いし、2人きりにさせてもらった。
私の無理なお願いにお医者様は反対したが、おじさんが頭を下げてお願いをしてくれた。
『息子の為なんです、どうか我が侭を聞いてください』と。
おじさんの必死の願いでお医者様も折れてくれ、二人だけにしてくれた。
おじさんに頭を下げ、集中治療室へと入る。ベッドに寝たまま動かない結城の側に近づき、そっと頭を撫でる。
「結城……外はいい天気だ。どうだい?少し起きてみようとは思わないのかい?」
二人だけになって、改めて結城をよく見てみる。
腫れあがって、誰だか分からない顔。時折痙攣する身体。瞼が痙攣して開き、時折光のない瞳を覗かせる。
「今日ここに来る途中、たい焼きを売っているお店を見つけたんだ。
いい匂いがして、とても美味しそうだったよ。……君と、一緒に食べたいな」
……君は本当にバカだな。どうしようもない、大バカだ!
何故こんなにまでなって、頑張って生きていてくれるんだ!
痛いだろうに……辛いだろうに、何故生きていてくれた!
「君と……結城と、食べたかった」
……きっと君のことだ、私が泣くのを見たくないから、とか言ってくれるのだろう。
……バカ。君は本当に大バカだ。君のようなバカは、見たことがない。
「結城と……修太と一緒に色々なお店に行き、美味しい物を食べたかった」
ベッドに横たわったまま動かない結城の手を握る。
……やはり握り返してはくれないのだな。もう、この手に力が戻ることはないのだな。
「お喋りをしながら腕を組み、色々な場所へ行きたかった」
……ありがとう。私は君に会えて本当によかった。
短い……本当に短い間だったけど、私は君にたくさんの思い出をもらえた。
もう、十分だ。これ以上私に優しくしてくれなくてもいいよ。
「私は……君と、一緒に生きていきたかったんだ。ずっと一緒の時を過ごしたかった」
もうこれ以上頑張らなくてもいいよ。
君はもう、十分頑張ってくれた。私達に色々なものを残してくれた。
「……君のことは絶対に忘れない、決して忘れたりはしない。
安心して欲しい。私は一度覚えたものは決して忘れる事はないから。
だから、君から貰った素敵な思い出も忘れない。君と過ごした時間を忘れたりはしない。
君が残してくれた優しさを忘れることは決してない!……だから、安心、して……」
涙が溢れそうになる。ギュッと唇をかみ締め、涙を堪える。
「だ、から……わた、じは、だいじょ、ぶ、だから……」
唇をかみ締め、今、私に出来る精一杯の笑顔を作る。
「あんし、んじて、天国へ……いっでほしい」
今、私に出来る、精一杯の笑顔。
唇をかみながら、顔を引きつらせ、無理やりに作った笑顔。今、私に出来る……精一杯の、不器用な笑顔。
「……さようなら、修太。……愛しているよ」
私が別れを告げた次の日……結城修太は、死んだ。
270: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:02:16 ID:pODSkiGy(13/15)調 AAS
『ピピピピピッ!ピピピピピッ!』
朝九時、愛する人からもらった腕時計のタイマーが鳴る。
約束の時間。君とのデートの待ち合わせの時間。いい天気になってよかったよ。
……ふふふ、なにがペアルック、だ。大学でも男物の時計をしてる私は目立ってしまって仕方がなかったよ。
けど、君が残してくれた大切な時計だ。丈夫で頑丈で……まるで君のようだ。
少し乱暴者の私には似合っている。……あれからずっと、肌身離さず使用させてもらっているよ。
あれから4年……月日が流れるのは早いものだ。今や私は22歳だ。君よりもだいぶお姉さんになってしまったよ。
霊園にある休憩所から、水の入ったバケツと、蝋燭や線香、スポンジの入った鞄、お供え用の花束を持ち、結城の元へと向かう。
今日も時間通りに会いに来たよ。ふふふ、私は君と違って遅刻はしないよ。
たまには遅刻して、待ちぼうけをさせてあげようかとも思うのだが……君に文句を言われたくないからね。
「ちょうど九時だ。……おはよう、結城。急に会いに来てすまない。驚かせてしまったかな?」
霊園にある、結城家と書かれた墓石。私の愛する人はこの下で眠っている。
私は彼の寝床を綺麗にするため、バケツから柄杓で水をくみ上げ、お墓にかける。
「今日は君に報告があるんだ。大学を卒業した後の、就職先が決まったんだ」
水をかけた後、持参したスポンジで汚れを落とす。
「ついに決まったよ。臨時教員とはいえ、春からは私も教師だ。学校の先生だよ」
汚れを落とした後、墓石の周りに生えてきている雑草を丁寧に抜く。
「まだママにも教えていないんだ。前から一番先に教えるのは、君にと考えていたからね」
雑草を抜き終わった後、持ってきたお供え用の花束を花立てに供え、綺麗な水を注ぐ。
「ふふふ、驚いたかい?この私が教師だよ?学校の先生だ」
花を供えた後、蝋燭に火をつけ蝋燭立てに入れる。
「高校を出た後は、すぐに就職するつもりだったのに……これも君のせいだ。君が死んでしまうからだよ」
その蝋燭で、線香に火をつけ香炉に供える。あたりには線香のいい香りが漂いはじめた。
「君が死んでから私は考えたんだ。『これからどうやって生きていけばいいのかな』ってね」
そう、私は考えたんだ。修太が死に、私は何をして生きていけばいいのか、と。
たくさん考えた。バカな頭をフル回転させ考えたんだ。そして……思いついた。教師になろう、と。
「……教えたいんだ。私は色々なことを教わった。ママにパパ、弟達に教わった。
おじさんにおばさん、友人達にも教わったんだ。もちろん……君にも教えてもらった」
君に会うことがなければこんなことは考えもしなかったと思う。
君が死にさえしなければ、思いつきもしなかったと思う。
「私は高校生活で、色々な事を学んだ。教科書では分からない様な事。1人では知りえなかった事。
みんなと知り合っていなければ、決して学ぶことが出来なかった事。私はそれを教えたい。
多分、それは……とても大切なことだと思うから。人生において、とても大切なことだと思うから」
修太……私は教師になり、君との思い出を生徒達に話そうと思う。
君や友人達と過ごした大切な時間を話し、生徒達を導いていこうと思う。
もちろん思い出をそのまま話す訳じゃない。君達からもらった思い出を元に、生徒達を導きたいんだ。
私は君達と出会って、たくさんの経験をした。笑ったり怒ったり、喜んだり……悲しんだり。
人を愛するという素敵な気持ちも教わったし……絶望という、とても辛い感情も教わった。
これらを教えたいんだ。きっとこういう感情は、生きていくのにとても大切なことだと思うから。
私がこんな考えを持ってしまったのも、君のせいだな。君が急に死んだりするからだ。
急に死んだりするからこう考えるようになってしまった。……死んでまで私に影響を与えるとは、君ははた迷惑なヤツだ。
271: 不器用な彼女 ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:03:19 ID:pODSkiGy(14/15)調 AA×

272(6): ツクバ薪割り ◆k8fXz6W8GA 2008/10/01(水) 20:05:40 ID:pODSkiGy(15/15)調 AAS
不器用な彼女は以上で終わりです。
最終話の投下まで、散々待たした挙句、このような結末で申し訳ありません。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
では名無しの戻ります。
273: 2008/10/01(水) 21:10:51 ID:dW28FbYj(1/2)調 AAS
全俺が泣いた
274(1): 2008/10/01(水) 21:13:33 ID:dW28FbYj(2/2)調 AAS
てかベタな展開(修太フカーツ)を待ってたのは俺だけ?
275: 2008/10/01(水) 21:40:00 ID:u9BMzWG3(1)調 AAS
>>274
ベタな展開だと思ってたから余計にビックリして目から汗が・・・
なにはともあれGJ
276: 2008/10/01(水) 22:11:53 ID:Hl2dOpV0(1)調 AAS
>>272
お疲れさん。
バカやってる二人に慣れてた所に予想してなかった
結末でちょっとショックだ。
277: 2008/10/03(金) 23:13:09 ID:JARBDDy6(1)調 AAS
>>272
お疲れ様でした
なんか、最後の方は風神と大学助教授がチラついたな
278: 2008/10/04(土) 16:27:27 ID:/m07XQ/h(1)調 AAS
>>272
1週間後・・・そこには元気にヤリ狂う2人の姿が!
っていうハッピーエンド的展開だと普通に思ってたからちょっとショックだわ。
なにはともあれお疲れ様でした。島津っちには幸せになってもらいたい
279: 2008/10/07(火) 23:09:09 ID:pxAHs3KC(1)調 AAS
>>272
お疲れさまでした。
まさかの展開だっだので驚いた。
なんか泣けてきた
280: 2008/10/09(木) 06:05:04 ID:B0CUHNVX(1)調 AAS
初めから見てたらこの終わりかたはキッツイなぁ。
マジで涙でそうになる・・・
でも良かったです
お疲れさまでした。
281: 2008/10/18(土) 06:31:16 ID:fIBpx+WY(1)調 AAS
ほしゅ
282: 2008/10/21(火) 02:01:33 ID:Lau9tn68(1)調 AAS
捕手
283: 2008/10/26(日) 19:46:44 ID:E1JO5q/z(1)調 AAS
☆
284: 2008/11/01(土) 18:58:03 ID:K1u+K0Vs(1)調 AAS
あげほしゅ
285: 2008/11/07(金) 22:49:44 ID:bXGQB8MF(1)調 AAS
ほしゅ
286: 2008/11/09(日) 23:59:59 ID:9ZESDX8s(1)調 AAS
hosyu
287: 2008/11/11(火) 13:48:32 ID:OoPFPNAp(1)調 AAS
ほ
288: 2008/11/15(土) 09:53:35 ID:6gc3wQFi(1)調 AAS
し
289: 2008/11/16(日) 13:02:33 ID:azvgRdn/(1)調 AAS
し
290: 2008/11/16(日) 14:34:45 ID:aiMtrzU/(1)調 AAS
し
291: 2008/11/18(火) 17:32:21 ID:0wGwLrnp(1)調 AAS
し
292: 2008/11/19(水) 20:59:32 ID:MxuEMGNe(1)調 AAS
し
293: 2008/11/21(金) 23:44:21 ID:jhVxUc0C(1)調 AAS
し
294: 2008/11/22(土) 20:00:39 ID:znafviBx(1)調 AAS
し
295: 2008/11/23(日) 17:41:27 ID:Qn5fQSPD(1)調 AAS
泣いた
296: 2008/11/23(日) 18:20:09 ID:3xRJ4Gkt(1)調 AAS
とりあえずあげ
297: 2008/11/28(金) 01:09:34 ID:N46SNHv4(1)調 AAS
ほしゅ
298: 2008/12/02(火) 00:51:26 ID:lkljoKMh(1)調 AAS
hosu
299: 2008/12/02(火) 11:24:57 ID:Nwso/6l2(1)調 AAS
ほーたるこい
300: 2008/12/07(日) 02:49:36 ID:qNPXIHDW(1)調 AAS
保守
301: 2008/12/07(日) 17:41:50 ID:WTChqRZ7(1)調 AAS
ほ
302(1): 2008/12/08(月) 22:18:37 ID:vuCTJ3vu(1)調 AAS
泣いた
303: 2008/12/09(火) 15:50:02 ID:Z3kq7Kyn(1)調 AAS
>>302
「何故君は泣いているの?」
「ひっく、うっさいわよ!このバカ!」
「理由を話してくれなきゃ分からないよ」
「どうせアタシなんかより他のスレの方がいいんでしょ?もうほっといてよ!」
「き、急になにを言いだすんだい!」
「どうせアタシなんか素直じゃないし口答えばっかりしちゃうし、アンタに文句言ってばかりだし……」
「すぐに嫉妬しちゃうし、寂しがりやだし……それに、二人きりになれば素直だしね」
「な、なに真顔で恥ずかしいこと言ってんのよ!アンタなんかどっかのスレに行っちゃえばいいのよ!」
「……確かにここには色々なスレがあるよ。おとなしい娘やメイドさん。ハーレムのスレもあるね」
「や、やっぱり飽きたんだ……ぐす、アタシに飽きちゃったんだ」
「でも、ね?僕が好きなのは、文句を言いながらもずっとそばにいてくれて、時々叩いてきたりするけど、
二人きりになると涙を浮かべながら謝ってきて、優しい仲直りのキスをしてくれる、君のようなスレさ」
「バ、バカ……なに恥ずかしいこと言ってんのよ」
「寂しい思いをさせてゴメン……これからはずっと君を見てるよ」
「あ、謝るくらいなら最初からアタシだけを見ててよ!」
「ゴメン……これからは離れていても君だけを見てるよ」
「バカ……側で見てなさいよ」
「うん、分かった」
「わ、分かったのなら仕方ないわね。仲直りをしてあげるわ」
頬を赤く染めた彼女がそう呟き、目を閉じて唇を突き出してきた。
僕はそんな愛しい彼女をギュッと抱き締め仲直りのキスをする。
唇から伝わる彼女のこのスレへの思いを感じ取り、僕は彼女に囁いた。
「これからもずっと一緒だ。……保守だよ」
304: 2008/12/11(木) 16:50:44 ID:iZVDsiIE(1)調 AAS
ほ
305: 2008/12/16(火) 11:56:16 ID:FXuErYIE(1)調 AAS
し
306: 2008/12/17(水) 21:11:03 ID:Ug2A1dw9(1)調 AAS
ゅ
307: 2008/12/19(金) 00:08:58 ID:pqEftN+x(1)調 AAS
☆
308: 2008/12/19(金) 11:24:07 ID:Oj+tF+2K(1)調 AAS
し
309: 2008/12/20(土) 02:16:44 ID:QlCj4N6V(1)調 AA×

310: 2008/12/20(土) 03:10:40 ID:mt9bgIGK(1)調 AAS
保守ばかりじゃなく、職人さんが来ることを祈りながら、萌え語りでもしようぜ。
気の強い娘に似合う髪型は、もちろんツインテールだよな?
ツインテールで幼なじみな気の強い娘が王道だと思うが、逆に邪道な気の強い娘って何かあるかな?
311: 2008/12/20(土) 06:24:03 ID:VJBppKvz(1)調 AAS
家に帰って裏声使ってお人形さんと会話
312: 2008/12/21(日) 00:37:56 ID:WPohibV1(1)調 AAS
それを男に見つかって真っ赤になるわけだなww
313: 2008/12/21(日) 04:00:12 ID:BhHNSzjn(1)調 AAS
ツンデレじゃなくて悪友ってのもいいよな
314: 2008/12/22(月) 22:57:12 ID:IoOPYK5m(1)調 AAS
つまりこのスレはツンデレスレなのか?
315: 2008/12/22(月) 23:56:35 ID:YKhYBSY1(1)調 AAS
ツンデレ娘は気の強い娘の中の一人でしかないよ
316: 2008/12/25(木) 22:42:33 ID:fFSztu4E(1)調 AAS
寝るか
317: 2008/12/26(金) 06:21:04 ID:+q6QIHsO(1)調 AAS
「あんた誰が好きなの?」
「誰かなぁ…」
「まさか私とか!私かわいいしナイスバディだし、むっつりのあんたならありえない話じゃないわね!」
「うん」
「え?」
「看破されたら仕方ない。お前が一番好きだ」
「そんな…わ、私そんな…不細工だし体も平たいし…」
「…?」
318: 2008/12/27(土) 15:42:53 ID:IfKnU6D3(1/2)調 AAS
『弱っちー男は強い女、強そうな女に惹かれ、強い男は性格がえばりんぼうなので強い女を生意気と嫌い弱そうな女を好む。』
外部リンク[html]:www.sunmarie.com
↑(一部抜粋)男性ホルモンが多い男性は攻撃的で、闘争心が強いから「エストロゲン」が豊富な女性との相性は◎。
でも男性ホルモン少なめの男性は中性的なので、同じく中性的か少し男性的な女性との相性が◎よ。
中性的でシャイな男
シャイな男というのは、自ら果敢に攻めるということがないため、気が強くてちょっとわがままな女性や、しっかり者でリーダーシップのとれる年上の女性と付き合うことが多いようです。
俺様系の強引男
男としてのプライドが高く、どちらかと言えば女性を卑下する傾向も強いのが特徴です。
女に対しては綺麗でか弱いという幻想を抱いていることも少なくありませんですので、自分より有能そうなバリキャリの女性や、男勝りで女らしさに欠ける女性などは敬遠しがち。
似ていないひとに惹かれる=自分に無い魅力に惹かれる。自分とは違う遺伝子が欲しい。
強いもの同士・弱いもの同士は引かれ合わない
ヤフー知恵袋にあった書き込み↓
自分の職場に、見るからにとても気が強い女性がいます。
そんな女性の彼氏として務まるのは、やっぱり女性慣れしていてリードできる男性だろうな、と思っていたのですが、何と誰が見ても物静かな雰囲気の男性でした。
正直、「これだけ気が強い女の子の彼氏って、どんな人なんだろう・・・」と思っていたのですが、とてもビックリです。
外部リンク[php3]:www.chatran.net
↑
なぜだか、ずっと、強い女性が好きでした。
それも単純に、アクション系の見た目強い女性、戦う女性が好きで、見ていてスカッとして憧れてしまうのでした。
自分自身は運動神経が鈍くて精神的にも弱く、すぐ落ち込んだりイジイジしやすい大人しめのダメダメタイプだったから、
よけいにそういう女性に憧れたのかもしれません。
外部リンク[htm]:www.yomiuri.co.jp
↑
――主人公に元気のいい女の子が多いですね。
自分から一番遠い存在で、書いていて楽しいからでしょうか。
ぼくは気が弱いので、引っ張っていってくれる強い女の子が好きです。
それに、家に閉じこもってばかりいる子では、物語が進展しない(笑)。
ぼくが運動音痴(おんち)だったので、運動神経バツグンの主人公を書くなど、自分にできない夢を登場人物に実現してもらっています。
外部リンク[html]:www.so-net.ne.jp
気の強い女性が好きで、自分がリードするのは苦手。寺岡呼人によれば、そんな町田直隆の恋愛関係はミュージシャンの本道らしいんです。
319: 2008/12/27(土) 16:02:21 ID:uzMH9Y0h(1)調 AAS
懐かしいコピペだな。
スレ住人やSをMに変えたい奴はどう解釈されるのか。
320: 2008/12/27(土) 16:10:07 ID:IfKnU6D3(2/2)調 AAS
>>1みたいに女にか弱さを求める男は男らしいたくましい男です。
自分は逆なんで分かるんです。
強い女を女の癖に生意気だ!と言ってる男は弱々しい男たちではありません。
なぜなら、弱っちー男は女に対し弱さや弱そうなところに腹立ち、強さに惹かれるからです。
顔、体つき男勝りなのが好みです。といっても有名人にいい例がいないので画像を貼ることができませんが。
それは自分自身が弱っちーためになよなよした感じの女に腹立つんです。
強そうな女が魅力的に見えるのとは反対です。
弱いくせになにが弱い女が嫌いだ?ではなく腹立つものは腹立つんです。
多分遺伝子が弱い女を避け、強い女を求めてるのでしょう。
声も低いのが好みです。低くてでかい声で怒鳴るとその声がかっこいいし勃起します。
ですから、女はか弱いほうが女らしくて可愛いって性癖は強い男たちが言ってる台詞です。
実際テレビでタレントたちに可愛がられてるぶりっ子系は嫌いなタイプですし。
321: 2008/12/30(火) 19:15:09 ID:IHIjNgXM(1)調 AAS
緊急保守!
322: 2009/01/01(木) 04:54:54 ID:BgByWZsP(1/2)調 AAS
「ふっふっふ……ついにお前達にも最後が訪れるようだな」
私は口角を上げ、ニヤリと心から愉快そうな笑みを浮かべた。
拳を地面に叩きつけながら唇を噛む武闘家。
MPが切れ、悔しそうに顔を歪ませる僧侶。
杖を頼りになんとか立ち上がろうとする魔法使い。
そして…私が最も痛めつけたい憎き勇者が地面に膝をついている。
…残念ながら顔は俯いていて見えないが。
「お前等なんか私が本気になればこんなものだ!
所詮は人間…諦めて私の父上の下僕となるがいい」
黒く伸びたツインテールを風で揺らしながら私は得意気に薄い胸を張る。
「誰が…魔王なんかにっ…!」
屈辱に塗れた声を漏らしたのは普段きつい目つきで私を睨みつける武闘家。
「従うわけない…でしょ!」
漸く立ち上がった魔法使いが私を睨みつけながら強がって見せる。
「私達は……この命が尽きようとも、貴方達に抗うわ…!」
最後に、腰まで届く髪を靡かせながらどこまでも神を信ている僧侶が言い切った。
「ばっかじゃないのアンタ達。それ、ボロボロの状態で言う事じゃないのにさー」
私はあまりの必死さについつい噴出してしまった。
ああおかしい、こういうバカどもを力で捻じ伏せるのはこの上なく快感だ…。
そんな有頂天の私に、やっと口を開いた勇者の声が響いた。
「…わかった。従おう!」
顔を上げてやけに強い口調でそう言った勇者を他の3人はありえないものを見るような目で見ていた。
…それは私も同様だった。
「俺は従う!今すぐ魔王の元……いや、お義父さんに会わせてくれ!!」
……誰しも口を開けずにいた。
ただ1人、バカ勇者が熱く拳を握り締めているだけだった。
「…? もしかしてミリちーは結婚してから紹介したいタイプだったのか?
いやいやそれはさすが駄目だろう。道徳的に…いくら魔王だからといって…」
1人延々と駄目だ駄目だ、まずは挨拶から…とかなんとかバカな事を勇者は呟いている。
私は漸く…キレた。
323: 2009/01/01(木) 04:55:42 ID:BgByWZsP(2/2)調 AAS
「ばっ………バカな事を言うのも大概にしろ!!このバカ勇者!!!」
「ええっ!?どこがバカな事なのさ。おれ真剣だよ?」
「誰が…アンタみたいな正義正義した勇者と結婚するか!!
私は魔王の娘だぞ!いい加減脈がない事くらい気づけ!」
「ハッハッハー、いいんだよいいんだよ無理しなくて。
本当はミリちーが俺にゾッコンラブ!だってことは承知してるからさー」
そう言いながら勇者がにこやかに私に近づいてくる。
「っ!? く、来るなぁぁーー!!」
その笑顔に身の危険を感じ、身体が勝手に魔法を繰り出していた。
けれど勇者はボロボロになっていた筈なのに…何故か食らっても平気な顔をしていた。
「なっ、なんでぇ!?アンタ私に負けて………」
「んー、ミリちーに負けたらお義父さんのところに連れて行ってくれるかなーとか思って。
だから今日はわざと手を抜いてみたよー」
…プツンと、私の中の何かが切れた。
「………ふ…………」
「…ふ? …不倫でも貴方を愛したい?」
「……ふぇぇぇん………折角…折角勝ったと思ったのにぃ…!」
この日の為に沢山準備をしてきたのに。
お小遣いを溜めて強い武器を買ったり…。
モンスター達や部下達のスケジュールが合う日を選んで…。
念には念を入れてトラップや魔封じの札だって用意した。
お金もかかって時間もかかって…漸く作ったチャンスだったのに…!
「うううぅぅぅぅぅぅっ……ひどいよぉ…折角頑張ったのに!うわぁぁーーーん!!」
とうとう私は泣き出してしまった。
涙が止め処なく溢れてくる。
憎き勇者は私の涙にオロオロしているようだ。
「み、ミリア様!ここは一先ず退却いたしましょう!」
「…うっ、ぐす…うん……退却ぅぅ………」
涙声で部下にそう指示して、ぐいっと涙を拭う。
そしてビシッと勇者どもに指を突きたてる。
「…きょ、今日はこのくらいで勘弁してやる!
次会った時がお前達の最期………なんだからぁぁ!」
最期は涙声でうまく言えたか心配だったけど、私は一刻も早くこの場を立ち去りたくて足早に部下の作った転送用魔方陣の上に乗った。
「ミリちー!愛してるよーーーー!!!!」
バカ勇者が手を振りながらまたバカげた事を言っている。
「…アンタなんか、だぁぁぁぁーーーーーーっい嫌いなんだからぁぁぁーー!!」
私は精一杯勇者に向って言葉を返す。
…なんでこんなバカ勇者にわざわざ反応してやってるのか自分でもわからないけど、とにかくあいつはむかつく奴だ!
だから大嫌いだ!
私は徐々に転送されながら、ニコニコと笑顔で手を振る勇者をいつまでも見続けていた。
投下場所間違えたりもしたけどあけおめ保守ネタ
324: 2009/01/02(金) 00:40:14 ID:sexZAzBX(1)調 AAS
なんというお年玉…!
ミリア可愛ええー!!
325: 2009/01/05(月) 00:41:14 ID:ixEdgz70(1)調 AAS
保守
326: [な] 2009/01/05(月) 09:49:15 ID:G2kN0rY9(1)調 AAS
>>272
亀レスだけど泣きまくった
智代アフター思い出した
結末が悲しい物語って見るに耐えないはずなのに美しいと感じる
327: 2009/01/08(木) 03:44:44 ID:BGW6oeJh(1)調 AAS
私、負けません!
328: 2009/01/13(火) 17:27:55 ID:3vH6Kc/Q(1)調 AAS
ほ
329: 2009/01/13(火) 19:35:57 ID:Sg4TZTvF(1)調 AAS
ん
330: 2009/01/13(火) 20:00:01 ID:T8MopP0m(1)調 AAS
と
331: 2009/01/13(火) 21:09:24 ID:gonjRDy0(1)調 AAS
う
332: 2009/01/13(火) 22:55:19 ID:YKzOe11J(1)調 AAS
は
333: 2009/01/13(火) 23:13:03 ID:3tiM7Obg(1)調 AAS
ぺ
334: 2009/01/14(水) 01:16:51 ID:cC7lRPlI(1)調 AAS
や
335: 2009/01/14(水) 02:27:43 ID:edkg71on(1)調 AAS
ん
336: 2009/01/14(水) 03:32:47 ID:/D2o9t8l(1)調 AAS
ぐ
337: 2009/01/14(水) 15:55:39 ID:t0m1nG6y(1)調 AAS
ソ
338: 2009/01/14(水) 22:14:15 ID:i8h5m+GP(1)調 AAS
ー
339: 2009/01/14(水) 23:06:00 ID:BLXEL+Ei(1)調 AAS
メ
340: 2009/01/15(木) 00:48:28 ID:bfksChEe(1)調 AAS
ン
341: 2009/01/15(木) 01:52:14 ID:X4m8QjgW(1)調 AAS
と
342: 2009/01/15(木) 03:32:57 ID:HtpeMTEZ(1)調 AAS
も
343: 2009/01/15(木) 11:25:42 ID:PK7B6v5n(1)調 AAS
よ
344: 2009/01/18(日) 16:38:15 ID:azGG2ilh(1)調 AAS
本当はベヤングそーめん友よ。
これは難題だ…
345: 2009/01/18(日) 17:33:12 ID:9lJ8GKnH(1)調 AAS
とも よや すら かに
346: 2009/01/18(日) 20:20:32 ID:nKEivr0B(1)調 AAS
そーめん
347: 2009/01/20(火) 19:22:10 ID:aQMQx4Cu(1)調 AAS
「ペヤング」とは「ペアでヤングな」の略らしいな。
貧乏な主人公(男)。同じクラスの少女に唐突に弁当を恵まれて狼狽。
「ほら、これ食べなさいよ。か、勘違いしないでよね!いっつも昼に教室の隅っこで一人でソーメンすすってて陰気臭いのよ!!」
親友に男の前では言えない本心を打ち明ける女。
「ホントは…ホントは……あいつと一緒に…一緒にソーメンすすりたいだけなのに…」
そんな若い二人。
うん、ありがち。
348: 2009/01/20(火) 19:42:59 ID:9L5N/Mob(1)調 AAS
ペヤング=先生=クルサード・・・
349: 2009/01/20(火) 21:58:33 ID:bB3UxAv7(1)調 AAS
やきそばだけかと思っていた。
そーめんも、まろやかなのか?
350: 2009/01/24(土) 04:01:44 ID:uhTazF4Q(1)調 AAS
まろやかも何も、ペヤング辛いぞ
味は薄いんだけど何でか辛い
ヒリヒリする
351: 2009/01/24(土) 17:30:42 ID:bqV+VeoO(1)調 AAS
ぺヤングのヒリヒリ感=化学調味料かなぁ
352: 2009/01/31(土) 21:08:47 ID:fpBdbvK6(1)調 AAS
ほ
353: [pkkhiro4] 2009/02/01(日) 00:51:10 ID:Mu2tV/IW(1)調 AAS
し
354: 2009/02/01(日) 01:19:20 ID:8QhYEgNY(1)調 AAS
ゅ
355: 2009/02/03(火) 20:29:26 ID:zJAdoy32(1)調 AAS
|
356: 2009/02/07(土) 14:21:17 ID:vGrPMHD0(1)調 AAS
ほ
357: 2009/02/08(日) 11:49:33 ID:QWxF0MEg(1)調 AAS
の
358: 2009/02/09(月) 12:09:41 ID:Uw8uhkZp(1)調 AAS
日
359: 2009/02/10(火) 02:22:38 ID:5vQwdqq4(1)調 AAS
さちねえさんの話は保管庫にあるので最後なの?
360: 2009/02/14(土) 23:54:15 ID:fEVquR0t(1)調 AAS
そのとおり。
また作者さんがフロッピーディスクを紛失したんだろう。
361: 2009/02/22(日) 15:39:53 ID:QGXnJCZ9(1)調 AAS
足軽堂さんの鯖落ちた?
362: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:19:58 ID:NHu/P1zW(1/12)調 AAS
夢についての閑話
-*-*-*-*-*
うそだろう。
いやいやいやいやいやいやいやいや。
ありえないありえないありえないありえないありえない。
うん。
学校に遅刻しそうで走っていたら
「わー!どいてどいてー」
どしーん。
「いたたたた・・・気を付けなさいよね!」
「な、なんだよそっちこそ!」
「今日は転校生を紹介します。」
「なーなー。女かな。美人だと良いよな。」
「どっちでもいいよ・・・くっそ、いてて。」
「今日からこのクラスの仲間になります・・・」
「あーーー!!」
「あーーー!!」
ぐらいありえないと言えばいいだろうか。
うん。多分それくらいには、ありえない。
363: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:21:07 ID:NHu/P1zW(2/12)調 AAS
@@
「ねえ。貴志くん。醤油はどこ?」
「あ、その上です。右の棚の下。ヤマサの。そうそれです。」
「・・・私は醤油入れどこって聞いたつもりなんだけど……、このまま使ってるわけね。
醤油入れぐらいは買おうよ。貴志くん。」
呆れた顔でこっちを見てくる和歌葉先輩の顔を見て頷く。
「あんまり使ってないので・・・」
顔が熱い。恐らく和歌葉先輩に向かって頷いた僕の顔は今、ものすごい呆けているんだろう。
熱の所為だと勘違いしてくれれば良いのだけれど。まともに顔を見れない。
「まあいいけど。いくら男の子の1人暮らしだって基本的なものは買っておいたほうが良いよ。」
「そ、そうですね。」
なんだろうか。これは。
目の前にエプロン姿の和歌葉先輩がいる、のは判る。
えらく可愛い。ものっそい可愛い。超可愛いって感じ。
いつものびっとした感じはそのままに、エプロンは熊さんだ。
スカートはお気に入りなんだろう、時々履いている赤のチェックのスカート。アメリカの女子高生みたいな奴。
そしてやばいくらいに真っ白で細い脚。
薄手のブラウスを腕まくりしている。何だか全体的に和歌葉先輩女子高生バージョン的な格好。
そしてトレードマークみたいに綺麗に編まれた長い一本の三つ編み。
狙ってやってるのだろうか。
物凄く似合うけれどそう言ったら言ったで和歌葉先輩は怒りそうな気もする。
364: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:21:56 ID:NHu/P1zW(3/12)調 AAS
「うっわ、案の定油も鍋も無いや。どうなってるんだきみの家は。持ってきてよかった。
ねえ、貴志君、きみ、梅干し大丈夫だよね。」
「…はい。」
「…あれ、熱上がったかな。」
僕の顔を見て、少し眉を潜めると、和歌葉先輩はぺっぺっと手から水を切ってこっちに近づいてきた。
「いえ、大丈夫です!全然、大丈夫ですから!」
「起き上がっちゃダメだってば。」
ぺと。とベッドから起き上がろうとした僕のおでこにかがみ込んで来た和歌葉先輩のひんやりとした手が当たる。
そしてそのままぐぐぐ、と力でベッドに押し倒される。
僕を押し倒した和歌葉先輩はつまり上半身を僕にくっ付けるように状態を倒しており、
そしてつまりその体勢、僕から見ると和歌葉先輩が圧し掛かる様にしている事によって僕の眼前に広がる未知との遭遇的な何か。
つまりブラウスの上の隙間から覗くすっごく際どい部分。
真っ白くて、柔らかそうで、ええと、思ったよりも大きいおっぱいの部分。とブラジャー。
おでこには和歌葉先輩の手。眼前にはおっぱい。
「んー。大丈夫かな。ご飯食べたら、解熱剤飲みなね。」
すっと体が離される。
和歌葉先輩が掛け布団をぽんぽんと叩く。
僕の顔を見て、にっこりと笑う。
やっぱめっちゃ可愛い。和歌葉先輩。
ああ、そうか。
僕は死ぬのかもしれない。
ふと思い至って、余りに自分の考えたその事が真実味を帯びていて背筋がぞっとした。
365: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:23:11 ID:NHu/P1zW(4/12)調 AAS
僕は今きっと、寒い自分の部屋にいるのだ。
エアコンも止まり、ひき込んだ酷い風邪の所為で意識はきっと朦朧としている。
1日前に食べたカップラーメンは片付けられないままきっと机の上に冷え切った汁が残ったまま放置されている。
電気は消えていてしん、と何の音もしない。
普段から使わない薬入れは空だ。
冷蔵庫にはビールと麦茶しか入っていない。
そんな中で弱弱しく咳込んでいるのだ。
最後にこんな幸せな夢を見ながら。
「うん、塩が無い。これは予想外だった。ね、貴志君、塩ってどこかな。もしかして無いなんて…寝ちゃった?」
だって、そんなはず無いもの。
和歌葉先輩がここにいるなんて、そんなはず無いもの。
366: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:24:20 ID:NHu/P1zW(5/12)調 AAS
@@
酒の上での過ち。という言葉を聞いて皆はどのような事を考えるだろうか。
酒の上での過ち=ちょっとした失敗
と考える人間はきっと幸せな人間だ。ね。
ちょっとした失敗なんだろうね。きっと。
吐いちゃって周囲に迷惑を掛けてしまった、とか。
絡んでしまった、位なんだろうね。
笑いながら語れちゃうんだろうね。ね。
持ちネタにしちゃったりするんだろうね。
僕は酒の上での過ちと聞く度に暗澹たる気分になる。
絶望的な気分になる。
死にたくなる。
その事を思い出す度、高い建物にいれば窓を破って外に飛び出したくなるし頭を掻き毟りたくなる。
ああああああああああああああああと叫びたくなる。
この前は近所のTUTAYAで思い出してしまって訳も無く店内を猛スピードで歩き回った。
そ、その、和歌葉先輩に対して。
それまでは上手くやっていたのだ。
上手くやっていたと思う。僕なりに。
好きな人に対する態度として、そんなに変な事はしていなかった。
サークルの勧誘で和歌葉先輩に勧誘してもらって。
地元が一緒っていう縁で僕の事をとっても可愛がってくれて。
だから、和歌葉先輩の事が好きになって。
和歌葉先輩と話がしたくて、もっと仲良くなりたくて。
1年間かけてようやく仲良くなって、もしかしたら今度デート出切るかもって事にもなりそうで。
和歌葉先輩も、もしかしたら僕のことが、なんて馬鹿なことさえ考えて。
それなのに、酒の上の過ちでぶち壊したのは、僕だ。
367: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:25:08 ID:NHu/P1zW(6/12)調 AAS
経緯はこうだ。
その日、というか2週間前、僕は同じ学科の奴らと飲みに行き、酔った挙句に忘れ物を思い出してサークル棟に行った。
するとそこに和歌葉先輩がちょこなんと座って勉強をしていた。
しかも。
サークル室のドアを開けたその時、和歌葉先輩がふと机から顔を上げて僕を見たその時、
ちょっと和歌葉先輩が嬉しそうな顔をしたように見えて、それで僕は有頂天になってしまったのだ。
その、普段はクールで勉強が出来て総代で卒業も間違い無しなんて言われている和歌葉先輩だけれど
ふと先輩は時々そうやって感情をみせてくれる。
僕だけにと思ったのはきっと自惚れだ。
でもそう云う時ってとても和歌葉先輩は無防備で可愛らしく見えて、
それで僕は勘違いをしてしまったのだ。
楽しく話をして(少なくとも僕はそう思っていた。)サークルの話とか、授業の話とかをして。
その時、僕と先輩の距離が近すぎたのが原因だと思う。
僕は椅子を逆側に座ってがこがこ揺らしていて和歌葉先輩は普通に背筋を伸ばして座っていた。
僕は酔っ払っていて、髪型とかがだらしなかったんだろう。
和歌葉先輩は
「貴志君、髪の毛がはねているよ。」
といって僕の頭に手を伸ばした。
サークルの窓の外は真っ暗で、窓から大学の広い敷地と、敷地内にある電灯だけが薄ぼんやりと見えてた。
サークル室に置いてある和歌葉先輩が中学生の時に使っていたっていうラジカセからは奥華子の曲なんかが流れてて、
夜中だからそれ以外の音は何も聞こえなかった。
そして和歌葉先輩の手が僕の頭を擽るように動いて。
そして僕はあろう事か、先輩の手を取って僕の方に引き寄せて、和歌葉先輩にキスをしたのだ。
思いっきり。
舌とか入れた。初めての癖に。
先輩の唇は柔らかくて、差し入れた舌が感じる口の中はあったかくて、そして甘い匂いがした。
先輩の唾液が僕の舌に感じられて、僕は震えるぐらい、感動した。
和歌葉先輩は本当にびっくりしたみたいに目を見開いていて、みるみる首筋まで真っ赤になった。
不思議な事に僕が唇を離すまで先輩は抵抗をせずに受け入れてくれていた。
きっと、びっくりして動けなかったんだろう。
368: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:25:40 ID:NHu/P1zW(7/12)調 AAS
うん。バカだな。やった僕もびっくりした位だ。先輩はもっとだ。
もしかしたら怖かったのかもしれない。
いや、怖かったに決まっている。
酔っていた僕はどんな顔をしていたのだろう。
赤い顔をして、酒臭くて、そして、和歌葉先輩に向かって欲望丸出しな、きっと醜い顔をしていただろう。
一分位して唇を離した瞬間、和歌葉先輩は目を見開いたままで。
それからはっと我に返ったみたいに唇を押さえた。
そして。
「貴志君の、馬鹿ぁっ!!!」
と叫んでばちこーーーーーんと僕のほっぺたを叩いたのだ。
僕も僕で混乱していてそのまま走って逃げた。
誰もいない大学の構内を、電灯の光に案内されるように僕は泣きながら全力で走った。
そして走りながら考えた。
終ったのだと。
僕の軽率な行動でとんでもない事をしてしまった。
和歌葉先輩を傷つけてしまった。
もう、僕と和歌葉先輩の仲も、おしまいだ。
きっともう先輩は口なんて聞いてもくれないに違いない。
そしてそれだけじゃない。
僕と先輩の仲も、そして先輩以外に僕しかメンバーのいない、
僕が入るまで先輩が1人で守ってきた水道管ゲームサークルもこれでおしまいなのだ。と。
369: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:26:31 ID:NHu/P1zW(8/12)調 AAS
@@
「塩がないなら味噌だ。という感じで途中で軌道修正できるあたり、自分の才能が時々怖くなる。うん。いける。多分。」
ふう。ふう。とスプーンの上に乗せたお粥を醒ましながら先輩はそのスプーンを半分、ぱくりと口に咥えた。
普通それは僕に食べさせてくれるのでは。と思った瞬間、
先輩はそのスプーンをそのまま、僕の口元へと持って来た。
それは先程、先輩の口にちょっと咥えられたスプーンで。
上には凄くおいしそうなおかゆが乗っている。
これは、罠なのではないだろうか。
ふと頭を過ぎる。
このスプーンを咥えようとすると先輩が鬼の形相になって鍋ごと頭からばしゃーって。あちちあちち、って。
「ほら、あーん。」
そんな事も無く、僕の口の中にスプーンが突っ込まれる。
何とも食欲をそそる、葱の風味と少しの味噌の風味が合わさった香りが口内に広がる。
急におなかがぐうと鳴って、自分が腹ペコだった事を思い出す。
「ほら、貴志君、もう一口。」
1人で食べれます。と言っても和歌葉先輩はスプーンを僕の口元に運び続けてくれた。
僕は生まれたての雛鳥みたいな気分になりながら、差し出されるお粥を食べ続けた。
温かいお粥がどんどんとお腹に溜まっていって、
それと同時にどんなに布団に包まっていても冷え切っていた僕の身体も温まってきた。
370: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:27:05 ID:NHu/P1zW(9/12)調 AAS
これが夢じゃない事は、もう判っていた。
部屋の電球は明るくて、部屋の中は温かくて、そして和歌葉先輩が目の前にいる。
食べ終わってから、僕は和歌葉先輩に向かって聞いた。
「和歌葉先輩、どうして」
「どうしてはこっちのセリフです。」
瞬間、遮られる僕の言葉。そしてなぜか敬語になる先輩。
「というかね、貴志君。ありえないでしょう。」
そして怒る和歌葉先輩。
「風邪ひいてるからちょっとだけにしておくけど。
急にキスしてきた上に走って逃げるわその上姿を現さなくなるわ。どうなってるの?
普通、キスっていうのはお付き合いをしている間柄でするものでしょう。」
「はい。」
突然飛び出た全くの正論に言葉も無いが、なんだかそういう話でも無い気もする。
とりあえず怒られているので正座は出来ないが神妙に頷く。
「しかも酔っ払った上でキスなんて。男の子ならもうちょっとちゃんとした舞台を整えるべきじゃない?
ううん。整えるべき。整えるべきです。」
和歌葉先輩はわたわたと手を振りながら主張してくる。
「はい。」
何を言っているか判らないけれど、頷く俺。
371: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:27:47 ID:NHu/P1zW(10/12)調 AAS
「こっちにだって心の準備だとか考えていた事とか、色々ある訳。そういうのをすっ飛ばしたら、ダメなの。
水道管ゲームだって、UNOだって、ルールをちゃんと覚えればもっと面白くなるって私、きみに教えたでしょう?」
「はい。」
「それに、私も初めてだったからびっくりして引っ叩いちゃって良くなかったけれど、
君もびっくりした女の子を放って走って逃げるって何?どういう事?
その上次の日も次の日もサークルに現れないってどういう事?
私言ったよね。水道管ゲームもUNOも1人で出来ないんだからサークルには毎日来る事って君に言ったよね。」
「はい。」
「あんな事された上に、サークル部屋に1人ぼっちでいる私の事を君は考えなかったわけ?」
「すいません。」
「女の子はね。1人でいるのに弱いの。判ってる?
わたし、じゃない水道管ゲームサークルは、君がいないともう成り立たないの!」
先輩は僕の目を見ながら、そう言って怒る。
先輩の目はちょっと潤んでいて、色白の可愛らしい顔で、怒っているから口がへの字型に曲がっていて。
「そ、その上、いい加減もうどういう事?と思って文句言おうと思って君の家にきたら寝込んでるし唸ってるし。
家の中には何も無いから家に色々取りに帰ったりスーパーに行ったり大変だったんだから。」
「はい。」
「で、何かいう事は。」
372: ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:28:51 ID:NHu/P1zW(11/12)調 AAS
僕は息を吸った。
どうせ夢ならええいままよ。というものだ。
え?夢じゃないって言ったって?
そう。夢じゃない事は判っている。
でも和歌葉先輩が僕の事を嫌いになっていない事、
今ここにいてくれるって事は夢みたいなものだ。
だから、夢だと思って言うべき事を、しっかりと息を吸って僕は言う。
「和歌葉先輩が好きです。」
先輩は面食らったみたいな顔をして、それからぼん。と赤くなった。
「あ、あ、ありがとうございますとかでしょう。ここは・・・」
「和歌葉先輩が好きです。順番が逆になってごめんなさい。
僕は先輩の事が大好きで、それでこれからも一緒にいたい。
それから今日の先輩の服、すっごく可愛い。」
「ま、また急にそんなこと・・・」
「ダメですか?」
僕がそう言うと、先輩はむむむむむ。と困ったように両手を振った後、
両手の一番近くにあった自分の三つ編みを掴んでねじった。
暫く考えるようにした後、
「へ、返事は君の風邪が治ってからっ。も、もう食器片付けるからね。」
そう言って横を向いてしまう。
そして。
「少しは貴志君、にも気を揉んでもらわないといけないから、君の風邪が治ってからっ。」
和歌葉先輩はそう言い足すと、食器を持って立ち上がって、少しだけ僕を睨んでからぷいと僕から顔を反らせた。
373(1): ◆/pDb2FqpBw 2009/02/23(月) 16:30:19 ID:NHu/P1zW(12/12)調 AAS
-*-*
ご無沙汰しております。
小ネタですが、まあ、たまには。
では。
ノシ
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