[過去ログ] ●●寝取り・寝取られ総合スレ5●● (769レス)
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418: 2007/08/21(火) 02:31:49 ID:r6enqfg+(1)調 AAS
うーん、嫉妬というか、切なさがポイントという事なのでしょうか…
あの、聞いてばかりですいませんが、こちらの方々としては、
・寝取られっぱなし。寂しくジ・エンド
・なんやかんやで主人公のもとに戻ってくる
のどちらが気持ち的にシックリくるものなんでしょうか?
419: 2007/08/21(火) 02:57:25 ID:63cs5d8h(1)調 AAS
しっくりくるという意味合いの取り方で変わってくるが。
寝取られっぱなしは鬱になる傾向としてしっくりくる。
元鞘ルートは寝取り男にあんなことやこんなことをされて、開発されたことに嫉妬するという意味ではしっくりくる。
どちらも俺が抱くしっくり感だけどね。
420: 2007/08/21(火) 03:00:38 ID:cQuR26TA(1)調 AAS
そこらへんは人によるし物語の展開にもよるって感じかな
421: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/21(火) 04:13:44 ID:xlSc4vVB(1/8)調 AAS
あー、申し訳なく、病院送りなってましたm(_ _)m
つっても一泊で戻れた程度なんですが、あまりに体力に余裕がなくって、遅くなってしまいました。
>>406
んっと、一応、終わってるんだけど、まだ終わってないと言うか。
過ぎた事を敢えて、全部書いてないと言うか、「その時点の俺」が知るべくも無い事は、
あまり書いてないわけですね。後で知った別の視点での事、は後から、です。
>>411
問題ないんじゃないでしょうか?
ガッツ書いて下さい。
では、途中までですが、投下いきます。
422: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/21(火) 04:14:22 ID:xlSc4vVB(2/8)調 AAS
翌朝、目覚めは最悪だった。
親に何でここで寝ているのかと不思議そうに見つめられながらも自室に戻ると、やはりしゅうちゃんの姿は見えず、
ああ、やっぱり昨夜のあのドアの音は、しゅうちゃんが帰った音なんだな、とおぼろげな記憶を辿る。
随分、時刻も遅かったけど、まあ何かあったら一報があったろうと、勝手に思う。
全く、勝手に思い込む。
そうして、朝食も取らずに自室のベッドに転がった。
頭の中は既にしゅうちゃんは存在しておらず、めぐの事ばかり考えていたと思う。
友達って言ったのに。照れ隠しなのか。俺の存在は。それこそ友達。でも雰囲気が違うような。それは自意識過剰じゃないか。
色んな事を噛み締めるように、思い出すように反芻する。
高1の頃のあの記憶、画面の中の映像を見るかのようなリアリティの無い映像。
一年を掛けず、そんな風に感じれるくらいには、自分の中で整理は済んでいた。
あれはあれ、今は今、それくらいにはとっくになっていた。
もっと言えば、あれを現実感ある出来事と感じれなくなっていた、感じ取るのを心と頭が拒否していた、と言うのが正しいのかもしれないが。
そうしてここ数ヶ月。また、新しく始まるように、いや違う、途切れたものを取り返すように、過ごしていた、過ごしてきたはずなのに。
勉強も手につかず、じゅくじゅくの傷跡をえぐるように、思う。
昨夜のあの時。
あの男がめぐの背に手をさりげなくやった時、別にいやらしくも何ともなく。
それを振り解きもしないめぐ、たったあれだけで心が掻き乱された。
情けない…全くもって情けない。
こんなに、まだこんなに俺は君のことが。
鳴り響く携帯の着信音。時間はまだ、午前中だったと記憶に残っている。
携帯の画面を見ると、めぐからだった。
暗い気持ちで、それでも希望にすがるように、携帯の通話ボタンを押した。
俺は今、病院に向かっている。頭が混乱している、気持ち悪い、焦る気持ちが俺を急かす、冷静になれと俺を押さえ込む。
どうしよう、どうしてなんだ。
―――しゅうちゃんが病院に運ばれた。
昨夜の事と関係があるのだろうか?
全くもってナンセンスだ、でも確かにその時そう思った。あろうがなかろうが、それでも駆けつけるのは同じだろうに。
でも、確かに思った。俺って結局、俺の事しか、俺の関与する事しか頭に無い人間なのだろうか?
それでも駆けつけた。
423: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/21(火) 04:15:30 ID:xlSc4vVB(3/8)調 AAS
病棟のナースセンター、集中治療室のずっと手前にめぐはいた。あっちに見えるのはしゅうちゃんのご家族だろうか。
めぐは真っ赤な、きっと泣きはらしたのだろう眼をして、しゅうちゃんの眼鏡を握り締めてた。
――その眼鏡はレンズが割れ、汚れ、ぼろぼろに見えた、ように思う。
いつ何があったのかと尋ねる俺に、めぐはよく分からないと答える。
掻い摘んだ話だと、今朝、大怪我でここへ運び込まれたと言う。
今朝…と言う事は昨夜の事は関係ない?あったとしても大きな関係では無い?
全くもって自分の事ばかり、思い出しても腹の立つ。
そうして聞く、昨夜、しゅうちゃんは………家に戻らなかった。
正しくは今朝、夜明けの頃、今まで朝帰りなんてした事の無い娘が心配で、朝までまんじりともせず、
しゅうちゃんを待ち続けたご両親が玄関の外、門の辺りだろうか?音を聞いてしゅうちゃんの帰りを知る。
乱暴な、または乱雑に自転車が倒れるような音、そんな感じらしい。
そうして玄関の扉が開く。そしてご両親が見たものは……。
全身血まみれ、服は引き裂いたかのようにぼろぼろ、光の宿らない眼、そのまま倒れこむ、倒れこんだしゅうちゃんだった、と。
実際、この辺りは俺も記憶がかなり混迷している、未だに俺が何を知り、知らされたのか、どんな順番でそう知ったのか、
混乱が酷すぎてよく憶えちゃあいない。
意識を失ったしゅうちゃんを、慌てて病院に運び込んだ、そう聞いた。
そして、今、しゅうちゃんは意識は無い、昏睡状態だと――、場合によってはこのまま、と。
このままって?このままなんだって?
問い詰める俺に答えられないめぐ。
容態はかなり危ない、それだけ俺は理解した――。
体の中の血液がまるでどうにかなってしまったのかのように、神経がざわめく、耳に入った音がまるでエコーがかかっているかのように響く、
膝に力が入らない、ガクガクする、いや膝だけでない、全身、全身に力が入らない。
俺はきらきら光を反射するリノリウムの床に向かって落ちて行った。崩れていった。
目の前に「どうして、どうして――」それだけ繰り返すめぐがいて。
後から考えれば、これは『どうしてこんな事に』そういう意味なのだろうが、その時の俺には
『どうしてあんな事を?』
と責めているように聞こえた。
その直後、誰とどんな会話をしたのか、今となっては覚えていない。
今となってどころか、その時ですら、混乱の真っ只中にいた俺には、よく覚えてなかったのが本当なのだが。
424: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/21(火) 04:16:27 ID:xlSc4vVB(4/8)調 AAS
それから俺は毎日、病院に通った。
集中治療室と廊下を隔てる壁、ガラスの窓。
頭のガーゼを抑えるネット、腕に覗く白い包帯が痛々しすぎて。
しゅうちゃんの意識が戻ったのはそれから3日が過ぎ、4日目を迎える頃だったと思う。
目覚めたとはいえ、まだ記憶の混濁が激しいのか、俺とかはまだ、話はさせて貰えず、話が出来たのはそれからさらに数日後、
警察とかの聴取が終えた後だった。
救急で運ばれると、警察に連絡が行く。そうでなくとも交通事故なら勿論、警察は来るだろう。その程度に思っていた。思い込みたかっただけかもしれないけれど。
そうして、しゅうちゃんが人と話を出来るようになってようやく知った。
これは事故ではなく、事件であった事を。
ここからはしゅうちゃん自身の記憶が曖昧なので、委細は違っているのかもしれないけれど。
俺には単に、全てを教える事が出来なかったのかもしれないけれど。
それでも、俺に知らされた事すべてを繋げると、こんな感じだった。
あの夜、あれから、しゅうちゃんはよりによって、家までの最短距離、物騒な道のほうで帰ったらしい。
「どうして?」なんて聞けるわけない、少なくとも俺に聞く資格は無い、俺だけは聞く資格が無い。
それに、今さら聞いてもどうしようもない。
道の脇に停まっていたのか、後ろから近づいてきたのか、一台の車。
乗り込んでいたのは2人組の男だったと言う。
「声を掛けられた、泣いてるの?と聞かれた」と。あと、遊ぼうとかいい事しようとか、その手の言葉。
少し下卑た事も言われた、と。そして、最初は無視して、そのうちになにやらしゅうちゃんは言い返したと。
結構な事を言い返したような、含みのある言い方をしゅうちゃんはしていたと思う。
振り切るように自転車を漕いで立ち去ろうとした時。
後ろから近づく車のエンジンの音、慌てて自転車を止めようとしたその時。
――引き摺られた。引っ張られた。投げ出された。
助手席から手が伸びてきてたのをおぼろげながら憶えていると。
どっちが上でどっちが地面なのか分からなくなるような浮遊感を味わった直後、
体に、そして頭に凄い衝撃が伝わってきて。
その後のことはまったく憶えていない、どうやって家に戻ったのかすら、全く憶えていないと。
そうして夜明け頃に、しゅうちゃんは家に辿りつき、病院に運ばれたと。
頭への衝撃が意識が戻らなかった原因らしい、外傷的には大した事がなくとも、こういう事もあるんだと実感した。
そうして俺はやっと知った。
これは俺のせいなんだと知った。
425: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/21(火) 04:17:32 ID:xlSc4vVB(5/8)調 AAS
俺がやったとか、俺の責任だとか、そういう意味じゃあない。
あの夜、あの時、俺だけに選択肢があった。俺だけこの事態を避けれた。
どうして、せめて物騒なところを過ぎるまで送ってやらなかったのか!?
まだ無理やり引き止めたほうがずっとましだったはず。
どうして、せめて明るく帰れる様に接する事が出来なかったのか!?
八つ当たりに正当性なんて全然ない、俺は間違いなく、しゅうちゃんを傷つけた共犯者だろう。
思う、今まで無かった程、遅くなってしまった、きっと安全な道を遠回りする余裕も無かったのだろう。
あの夜のやり取りを思い出す。
酷い人間だった俺がいて…、きっとショックは少なくなかったのだろう。
『泣きながら』ついうっかり言ってしまったのだろう、それが何より如実に語っている。
あれから、ショックと悲しみで人気の無い道を辿るしゅうちゃんに近寄る如何わしい男達、非好意的にあしらわれ、短絡な思考だったのだろうか、そうして怪我をさせられる。
俺は聞けなかった、尋ねるなんて無理だった。
「ねえ、怪我をさせられた後、家に戻るまでの間に、『何か』されたりしなかった?」なんて…、そんなの無理だった。
ただ、怪我の回復を祈り、毎日、毎日病院に通った。めぐもしょっちゅう来てた、あまり会話は無かったと思う。
記憶が戻らない。それが本当かどうかなんて、勿論聞けない。
カラダの状態、少なくとも外傷的な事だけはちゃんと教えてくれた。腕の骨にはヒビが入っていると。
進学希望のしゅうちゃん、かなり痛手な筈、だから勉強に必要なものは一切、俺が運んだし、わからない事があれば、全部俺が調べていった。
罪滅ぼしのつもりかもしれなかったけど。
それでも本当は俺は、どうやって謝ればいいかすら、分からなかった。分かるはずもなかった。
後遺障害―――頭の衝撃は神経か脳になんらかの傷を負っていたらしい、しゅうちゃんは右耳が聞こえなくなっていた。おそらく一生そのままらしい事を知った。
どこで、いつ、どのタイミングで聞かされたのか、正確には憶えちゃいない。指が手のひらに食い込む程握り締め、下唇の裏側を噛み締めていた。自分で噛み切るなんて事が出来るとは思わなかった。
そんなの小説や映画の中だけの話だろうと、でも俺はその時、噛み切ってた。
――口の中に血の味が広がっていった。後悔の味。罪の味。きっと俺は一生この味を忘れる事は無いだろうと思った。
一日で血は止まったけれど、しばらくずっと噛んだ場所はしこりみたいになっていて。それを感じるたびに、心が痛んだ。
それからの日々、俺は正直、待っていたんだと思う。
誰かが教えてくれるのを待っていたんだと思う。
もしも、しゅうちゃんのカラダに何か、犯人に何かされたのだとしたら、きっと俺には永劫教えないはず。
逆に、何もなかったとしたら?
きっと、折を見て、教えてくれるだろう、誰かがそれとなく伝えてくれるだろう、そう思った。
病院関係者は教えてくれるはずがない。教える事が出来ない。確か、守秘義務があったはずだ。
これまでに数回話した、しゅうちゃんのご両親は、それは言いにくいだろう。きっと教えてくれない。
だから、たぶんめぐか、しゅうちゃん本人がさりげなく、それとなく教えてくれるんじゃないか、そう思う日々で。
でも、それは甘い期待だったのかもしれない。
結局最後まで俺は、俺には何も伝えられる事は無かった。
だから、それは、そういう事なんだと、そうなんだって事だと理解した。
426: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/21(火) 04:18:14 ID:xlSc4vVB(6/8)調 AAS
過ぎた日々のしゅうちゃんを思い出す―――。
太陽の下。長い髪を左右にゆらゆらたなびかせて歩いてた。
木漏れ日の下、どうでもいい話に感心したように耳を傾けていた、結構天然でぼけぼけで、よく笑っていた。
プールの水際、はしゃぐ姿。図書館、めぐとともに騒がしく。
でも、もうあんな風には出来ないのかもしれない、そう思うと悲しく、罪悪感は激しく、喪失感は限りなく。
ただ、俺がこの事態を、避けれるのに避けなかった事だけを痛感、文字通りに痛感していた。
時系列は正しくなんて憶えていない。
一度と言わず、しゅうちゃんの家に俺は行った。
引き止めなかった事、送らなかった事、俺に非はいくらでもある。詫びて済むなんて思ってないけど、それでもじっとはしていられなかった。
八つ当たりみたいに辛く当たった事を正直に言うのはすごく辛かった。
でも、それでもあまり責められなかった、と思う……。
いっそ思い切り責めて欲しかったと思うのは甘えなのだろうか。
警察が病院に来た時、最後に会った人間として、話を聞かれた。
めぐが傍にいて、だからその場では言えない俺がいて、結局警察署でって事になった。
もしかして、俺も犯人に一味くらいに思われたのかもしれない。
「あの、ここではちょっと……」なんて、後で考えたらそうなのだろうと思う。
「俺のせいなんです」全部話した。最後にどう接したのか、帰った大体の時刻、何か分かったのか分からなかったのか「そうですか、参考になりました」とだけ、事務的に言われた。その後、病院までちゃんと送ってくれた。
事件後の自転車、しゅうちゃんの白い自転車を一度だけ見た。
前の車輪を支えるフォークが曲がっていた。フレームまで傷だらけ、全体に泥を被ったように汚れていて、ハンドル周りには血の跡が残っていた。
そうなる前に見た、白い、磨かれたように綺麗な自転車を思い出して、
今の姿がまるで病院のベッドの上で横たわって意識の戻らなかったしゅうちゃんを思い出して、
まるで俺を責めている様に見えて。
そして、その時、初めて泣いた。
それからゆっくりと快方に向かうしゅうちゃん。少しの間は車椅子で、俺はしょっちゅう押していたが、そのうちちゃんと自力で歩けるようになった。
(十数日でも寝たきりだと、すぐには歩けないのだそうだ。頭のせいかもしれなかったけど)
夏休みが終わるまでに退院出来ればいいのだけれど、なんて寂しそうに言うしゅうちゃんが居て。
いたたまれない気持ちのままで、それでも毎日通い続ける俺がいて。だんだんとめぐの事も考える余地も余裕もなくしていった。
看護師さんが噂した、あの二人って、そうなのかな、なんて。
でも全く違う、二人は被害者と加害者の関係。
いっそ、しゅうちゃんにはっきりと害されたほうがましなくらい、少なくとも俺は、しゅうちゃんがそうする権利はあると思っていたし、俺はそれを甘んじて受ける義務があると思っていた。
ベッドの上で、退院まだかな、としゅうちゃんが言う。
でも、傷が治っていくのに、案外と退院の話は遅くって、治療の状態の分からない俺には返事のしようがなくって。
そうしてしゅうちゃんは言う。
「あたし、右耳ずっと聞こえないんだって」既にそれは俺に聞かされていた。
「俺のせいだ」俯いて、やっとそれだけ言えた、くらいだったと思う。
「じゃあ責任とってもらっちゃおっかな」軽く、軽い口調だったと思う、冗談なのかそうでないのか、なんて俺に分かる筈もなく。
ただ、当たり前のように当たり前の返事をしていた。
「うん。わかった」それだけ言うのに、30秒はかかったと思う。
開けっ放しだった扉の閉まる気配、めぐだろうと思う。
でも、もうそんなのどうでも良くって。ああ、気を使ったのかな、なんて思っていて。
もうどうでも良かった。
427: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/21(火) 04:19:37 ID:xlSc4vVB(7/8)調 AAS
以上、本日まで休みとってるので、今夜遅くなるかもしれませんが、出来れば続き投下しますね、ではでは。
428: 2007/08/21(火) 05:47:38 ID:9KribOdw(1)調 AAS
長ぇええええここまでくるとエロ関係なく続きが気になるわw
429: 2007/08/21(火) 12:49:08 ID:97poNqpi(1)調 AAS
普通に物語として読んでしまうな。
430: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/21(火) 14:11:14 ID:xlSc4vVB(8/8)調 AAS
あー、エロいとかはもうちょい、ほんとにちょい後ですね。
えっと、需要あれば、それなりに書きます、もう振り切ってると言うか開き直ってる部分も多いし。
まあ、ひろみさん(仮)との事になるんですけどね?
えっと、次はちょい鬱。自分で自分にトドメ刺すって感じです。
しかし、大元の話から離れず、でもボカす、難しいです。こんなに難しいとは思わなかったです。
ちょっと実際と変えるだけで、話の流れ自体が変わりかねないです。
しかし、人間ってやな記憶はきっとオブラートに包むように、まるで他人事であったかのように思い出の中に仕舞うものなんですね、きっと。
きっちり思い出す事がこれほど辛い事だなんて知らなかったです。自分の事であるのを再認識するのがこんなにしんどいなんて知らなかったです。
かなり精神参ってましたが、もうこっからは2つ、いや1つ半くらいしかしんどいの無いので、なんとかなりそうっす。
…しゅうちゃん(仮)パート、実際にはあっと言う間の出来事だったんですが、書くと長いもんですね。書いてる本人が一番びっくりしてたりします、では夜にまた来ます。
431: 2007/08/21(火) 19:09:17 ID:KzhHaM/1(1)調 AAS
えと、他人事のようでも、自分にダメージ食らってると思うんで
無理せずにね
特に男はね
432: 2007/08/21(火) 19:42:38 ID:SVJ/sjnx(1)調 AAS
需要というか、エロいエロくない関係無しに貴方の文章をより長く読みたいので
なるべく略さずにお願い
433: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:46:57 ID:Z9iTqFZP(1/15)調 AAS
>>389の続き、第二話投下開始するべ
434: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:47:43 ID:Z9iTqFZP(2/15)調 AAS
「何お前、あーいうのが好みだったっけ?」
「うるさいなぁ、もう……」
「正直に言えよ。どこまで進んでるんだ?」
その日俺は、友人の飛鳥と海本に、質問攻めにあっていた。
態度に表れていたのか、或いは二人でいるところを目撃でもされたのか。
俺と怜ちゃんの関係は、もはや周知の事実のようだった。
と言っても、まだ別に付き合っているわけではない。
付き合っているわけではないのだが、何故か公認カップルのように扱われる。
怜ちゃんの友人である嘉狩さんや村雨さんも一緒になって、
ここぞとばかりに俺と怜ちゃんの進展具合を聞きだそうとしてくる。
「そう言えば今日は社会学の日だっけぇ?」
「そうね。吉良先輩と安室さんが、二人とも三限目が暇になる予定の日ね」
わざとらしく、遠まわしな表現をする子達だ。
今はまだ二限目。怜ちゃんは一人で別の講義を受けている時間だ。
この後昼休みに入って、昼食を済ませ、それから慎と海本は刑法総論に、
嘉狩さんと村雨さんは情報処理入門に、それぞれ向かうのだ。
そして、まさに今、二限目の終了を告げる音楽が講義棟の中に響いた。
講師が「今日はここまでにします」と宣言し、
学生達がぞろぞろと席を立って、教室を出て行く。
「ほら、早く電話してあげなきゃ。先輩」
「うるさいなぁ、嘉狩さんは……別に、六人全員でご飯食べるだけなら
何も電話するのは俺じゃなくても良いだろう?
と言うか、普通女友達である君らの方が電話するのが自然……」
「あぁもうっ! あの子もそうだけど、まどろっこしい奴め!」
嘉狩はそう言うと、俺の胸ポケットに入っていた携帯電話を無理矢理奪った。
その瞬間、慎と海本が俺の体を拘束する。
「お前らなぁ!」
「えーと、電話帳は、と……あったあった。はい」
嘉狩さんは勝手に俺の携帯電話を操作して、メモリダイヤルから怜ちゃんの名を探し出し
通話ボタンを押してから、拘束されている俺の耳元に受話器をあてた。
ここまでされると、もう抵抗する意味も無い。
拘束が緩んだので、俺は自分で携帯電話を握り、怜ちゃんが出るのを待った。
慎と嘉狩さんは、ニヤニヤしながら俺の方を見てくる。
海本は心の中で「俺達って本当に友達思いだなぁ」などと思っていそうだ。
村雨さんは、少し冷めたところがあるので、他の三人程関心を持っていないかもしれないが。
435: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:48:52 ID:Z9iTqFZP(3/15)調 AAS
ところが。
呼び出し音がもう十回程は鳴っているというのに、怜ちゃんは出なかった。
「……あれ?」
段々、周囲の者達も訝しげな表情で見てくる。
講義はもう終わっている筈なのに、何故電話に出ないのだろうか。
たまに規定の時間を過ぎても講義を続ける変態講師がいるが、
その類の講義を今受けているのだろうか?
だとすれば、電話に出たくても出られないのかもしれない。
そう思って、俺は留守電にメッセージを入れた後、通話を切った。
「怜ちゃん、今日学校には来てるの?」
「さぁ? 私達、今日あの子と一緒に受けるのは社会学だけだもん。
いつもは昼休みに学食で合流するんだけど……」
嘉狩さんも村雨さんも、怜ちゃんが今大学にいるかどうかすら、把握していないらしい。
確かに俺だって、暇な時は大学を抜け出して遊びに行っているけれど……
そうだ、そう言えば。
先週、俺が大学を抜け出して、ゲーセンに行った時。
あの時も彼女は、俺の誘いを断っていた。
その時は、電話には出てくれたが、他の男と一緒だった。
日色唯。
まさか、またあの男と会っているのだろうか?
だから携帯電話が鞄の中で振動している事にも、気付いていないとか?
或いは場の空気的に、出たくても出られないとか?
……馬鹿馬鹿しい。
仕事中やデート中じゃあるまいし、男友達からの電話に出られない空気って、何だ?
……デート中?
「あーもう……」
一人で勝手に、一人で密かに、俺は悪い想像を膨らませ続けた。
そんな筈が無いのだ。
ついたった今まで講義の時間だったのに、それからわずか一分たらずで
もうデートしているなど、有り得ない。
講義をサボっていたのならまだしも、彼女にはまだサボれる程の度胸は無い。
入学してまだ間もない一年生の前期、しかも彼女のような遊ばないタイプの子は
どの講義だったらサボっても試験や単位に差し支えないか、判断するのに時間がかかる。
風邪か何か、そういった正当な理由が無い限り、
彼女のようなタイプはまず間違いなく真面目に講義に出席し続ける。
そしてもし風邪をひいているのならば、デートどころではない。
家でゆっくりと体を休めているところだろう。
安心して良いのだ。安心して良いのだ。
俺は、自分にそう言い聞かせた。
しかし、その日は結局、怜ちゃんは一度も電話に出なかった。
社会学の講義にも、出席しなかった。
その日は彼女はバイトにも入っていなかったので、
彼女が元気なのかどうかすら、俺にはわからなかった。
その時彼女に訪れていた不幸な出来事を
俺が知らされたのは、それから数日後の事だった。
436: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:49:38 ID:Z9iTqFZP(4/15)調 AAS
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はっ……はっ……はっ……」
カーテンを閉め切った暗い室内に、断続的な溜息が静かに響く。
暗いとは言っても、外は昼間。カーテンの隙間からは、光が漏れている。
その微かな光が、汗と涎と、滲んだ涙を仄かに照らし出す。
突然、携帯電話の着信音が鳴った。
しかし、怜はそれを取ろうとはしなかった。
取りたくても、仰向けに寝かされた状態で
大人の男に跨られていては、手を伸ばす事すら難しかった。
しばらくして呼び出し音は切れ、留守電に切り替わる。
「ただ今、電話に出る事が出来ません。発信音の後に、お名前とご用件をどうぞ」
「ピー……あ、もしもし怜ちゃん? 俺だけど」
その声は、まさしく吉良大和のものだった。
「もう昼休みだし、皆で一緒にご飯食べようと思ったんだけど……
また電話します。それじゃ。……ピー」
怜に跨っている男……唯はその手を伸ばし、テーブルの上にあった
怜の携帯電話の電源を、勝手に切った。
「ったく、間の悪い奴だなぁ。お楽しみの最中また電話なんかされちゃ、たまんねぇよ」
そう言って唯は、放心状態になっている怜を見下ろした。
その下腹部は唯の男根に貫かれ、純潔を散らして血を流していた。
ソファの上に、赤い染みが少しずつ広がっていく。
股はみっともなく開かれ、両足が唯の腰の左右を通過している。
パンティは足首にひっかけられたまま、Tシャツはただ首元まで捲り上げられているだけだ。
剥ぎ取られたブラとジーンズが、無造作にソファの横に放り捨てられている。
着信音に妨げられて中断させられていたピストン運動を、唯は再開した。
肉のぶつかる音が、液体の分泌される音と交じり合い、淫靡な空間を形成する。
一方で怜は、恥辱と嫌悪感に苛まれていた。
肉体が勝手に反応して愛液を分泌するのが、たまらなく悔しい。
こんなもの、ただ単に膣壁を保護するために、分泌されているだけのものなのに。
「お願い……もう、止めて……」
すすり泣く声は悲痛で、少女がいかに耐え難い辛苦に晒されているかを物語っていた。
そして吉良達はと言うと、怜の身に何が起こっているか知る由も無いまま
学生食堂で談笑まじりに昼食をとっている最中だった。
カーテンの隙間からは、皮肉な程に輝かしい木漏れ日が降り注いでいた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
437: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:50:23 ID:Z9iTqFZP(5/15)調 AAS
今日こそは、怜ちゃんに会えるだろうか。
俺の心の中は、期待で膨らんでいた。
たった一日、会える筈だった日に会えなかったというだけで、
もう俺の心は寂しさを感じていた。
そもそも彼女とは学年が違うので、講義が重なる事もそう多くは無い。
けれど昼休みぐらい、会える筈だ。
昨日は彼女が風邪をひいていたのか、連絡さえとれなかった。
今日は元気だろうか?
それとも、まだ体調が悪くて欠席しているのだろうか?
気遣ってメールしてみたけれど、返ってきたのは「大丈夫です」という、
簡素で味気ない、たった一言の返信のみだった。
何か彼女に嫌われるような事をしてしまっただろうか?
いいや、心当たりは無い。
けれど、自分でも気付かない内に、彼女が機嫌を損ねるような事を、してしまっているかもしれない。
しかしそれなら、俺一人を避けるのはわかるが、嘉狩さん達とまで会わない理由にはならない。
一体何があったのだろう?
単なる風邪であって欲しいという、俺の希望的観測が的中してくれていれば良いのだけれど。
「なぁ吉良、そんなに安室が気にかかるのか?」
隣の席に座っていた海本が、講師に聞こえないように小声で尋ねてくる。
何故気付かれたのだろうか。声に出していたつもりは無いのだが。
「そりゃあ気付くさ。昼休みが近づくにつれて、お前ソワソワしだしてるもん」
「……放っといてくれ」
言われてみれば、確かに俺は落ち着きを失っていたかもしれない。
やたらと教室の時計を気にしたり、その上で自分の腕時計も見たり、
携帯電話のディスプレイに表示された時刻までもいちいち確認している。
そんな俺の挙動は、傍から見れば滑稽だったろう。
昼休みになって怜ちゃんと会い、表面上は何でもないフリをする俺を
慎や海本達がニヤニヤしながら見てくる様子が、今から想像出来るかのようだ。
しかし、その日も怜ちゃんは電話に出なかった。
昨日と同じように、留守電の応答メッセージが流れてくるだけだ。
「……吉良クン、怜と喧嘩でもしたの?」
嘉狩さんが、面白半分、心配半分で尋ねてくる。
「試しに、私がかけてみましょうか」
村雨さんが気をきかせて、俺の代わりに怜ちゃんに電話してくれた。
これでもまだ怜ちゃんが電話に出ないのであれば、
俺が嫌われているのではなく、単に今電話に出られない事情があるという事だろう。
しかし、村雨さんからの電話には、怜ちゃんは大人しく出てきた。
「……もしもし」
「もしもし、安室さん? 今どこにいるの?」
俺が電話しても出なかったくらいだから、誰が電話しても無駄だろう。
俺も慎達もそう思っていたから、いざ怜ちゃんが
通話に出たと分かった時は、正直少し驚いた。
「今から皆で昼食をとるんだけど、安室さんも……来る、よね?」
「……そうだね」
全面的な肯定とは言いがたい、中途半端な回答だ。
こういう時は、素直に「無理」とでも答えてくれた方がまだ、こちらも楽なのだが。
あまり乗り気でなさそうな彼女に、とりあえず学生食堂で待っているからと言って
村雨さんは通話を切り、俺達は揃って食堂に席を確保しに向かった。
438: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:51:26 ID:Z9iTqFZP(6/15)調 AAS
八人がけの席に座って、怜ちゃんの到着を待つ。
彼女が食堂にやってくるまでに、思ったより時間はかからなかった。
入り口のガラス張りのドアの向こうに、彼女の姿が現れる。
「あー怜、こっちこっちー」
嘉狩さんが、元気良く手を振って彼女を迎え入れる。
しかし、すぐにその手を、決まり悪そうに引っ込めた。
怜ちゃんの表情が、初めて出会った頃以上に陰鬱だったからだ。
「……おはよう」
挨拶の声も、骨のように乾いて聞こえる。
「あ、うん、お早う……つーかどうしたの? 妙に元気無さそうだけど」
「そうでもないよ。元から私って、こんな感じでしょ?」
尋ねる嘉狩さんに、怜ちゃんは少し冗談めかして答えた。
確かに、元から彼女は暗い子だった。
それでも、これ程ではなかたっと記憶している。
出会った頃の彼女の暗さやネガティブさは、単に自分に自信が無い事によるものだった。
今の彼女の陰鬱さは、それとは何か別種ものであるように、俺には見えた。
しかし、少なくとも怜ちゃんは、それを俺達に
悟らせないように振舞っているつもりらしい。
であれば、下手に問いただす事も、俺達には出来ない。
何も気付かないフリをしつつ、俺達は昼食をとった。
怜ちゃんの事が気になりすぎて、俺は何を食べても不味いとしか思えなかった。
加えて、ボソボソとご飯を口に運ぶ怜ちゃんは、俺の百倍は不味そうに飯を食べていた。
食べ終わるまでに人一倍時間がかかっていて、
それでも尚全ては食べ切れていなかった。
元々小食な子だったけれど、今日はいつも以上だった。
その日は彼女と一緒に受ける講義も無かったので、彼女の様子が気になりつつも
何一つ聞き出せないまま、俺は一人でコミュニカティブ・イングリッシュの授業に向かった。
439: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:53:00 ID:Z9iTqFZP(7/15)調 AAS
更に数日後。
彼女と一緒に話す機会と時間が得られたのは、バイト先。
奇しくも、以前二人でバイトの帰りに食事をした日から、ちょうど一週間後だった。
あの時は、一週間後に告白しようと、内心決めていたものだ。
しかし怜ちゃんは、頑なに俺と距離をとろうとしているようだった。
心理的な距離も勿論だが、それ以前に、物理的に距離が離れている。
夕方を過ぎて客も殆ど来ない時間帯なのだから、レジでお喋りでもしていれば良いものを
無駄に店内を歩き回っては、本の並びのズレているところを直していっている。
それ自体は真面目で勤勉な職務態度と言えるのだが、何か腑に落ちない。
レジに……というより、俺に近づきたくないみたいに思えてならない。
俺は思い切って、聞いてみる事にした。
どう尋ねて良いものかも分からないので、遠まわしな言い方はしない。
出来るだけ端的に、ストレートに尋ねる。
「怜ちゃん、俺の事嫌いになった?」
口に出した後で、卑怯な聞き方をしたものだと気付いた。
仮にも先輩にこんな風に聞かれて、はいと答える者など普通はいない。
「え? 別に、そんな……吉良先輩の事を、嫌いになんかなるわけ……」
敬語は使わないでくれと、先週言ったのに、
それでも彼女は俺を『吉良先輩』と呼んだ。
今の俺には、それを非難する言葉を吐く事は出来なかった。
ただ、こんなネガティブな表情のまま接客されたのでは、かなわない。
「とりあえずさ、笑顔だけは心がけようよ。
体調悪いんなら仕方ないけど、それならそう言ってくれれば良いし……」
「いえ、その……すみません。気をつけます」
そうは言うものの、とても笑顔を心がけようとしているようには見えない。
その時俺には、彼女が何だか、静かに少しずつ、
遠くに消えていくかのように見えた。
今掴んでいなければ、そのまま手の届かないところに行かれてしまいそうに思えた。
そう感じるのは、俺の錯覚なのだろうか?
その時の怜ちゃんは、限りなく不安定な存在に見えた。
「怜ちゃん、この後時間ある?」
バイトが終わって、レジも閉め終わり、さぁ帰ろうという時になって
俺は勇気を振り絞って声をかけてみた。
今の彼女の状態では、電話に出なかった時と同様、食事に誘ってもあっさり断られるか、
下手をすると根本的に無視される可能性すら感じた。
それを踏まえた上で、それでも俺は、今呼び止めなければ後悔すると思った。
「……時間なら、ありますけど……何で?」
「いや、何でって言われても……。
晩御飯、食べに行こうかなと思って」
能面のような無表情な顔で問い返す彼女に、俺は何とか言葉を繋ぐ事が出来た。
一瞬は、気圧されて声さえ出ないかと思った程だ。
やはり、何かおかしい。
体調が悪いとか、俺を嫌っているとか、そんなレベルではない。
人間としての根源的な何かが、壊れてしまっているように見える。
このまま、何も答えてもらえないまま、黙って静かに立ち去られるのではないか。
そんな不安さえ感じた。
「……良いですよ。久しぶりに、またファミレスにでも行きましょうか」
相変わらずの敬語だったが、彼女は承諾してくれた。
とても快諾とは言い切れない反応だったのが、少し寂しかった。
とは言え、断られると思っていたので、むしろ良い意味で予想外だ。
「ほ、本当に良いの?」
「……? 何をそんなに驚いてるんですか?
断った方が良かったですか?」
「いや、そんな事は断じて無いけど……」
俺は彼女を伴って、近くのファミレスに向かった。
440: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:53:43 ID:Z9iTqFZP(8/15)調 AAS
食事中、俺達は、他愛の無い話ばかりをしていた。
好きなアーティスト、好きな映画、好きな小説。
以前と代わり映えのしない会話だったけれど、それこそが重要だった。
以前と変わらないという、その事が、今の俺には安心感を与えた。
むしろ、以前程話が弾まなかったとすれば、そっちの方が俺にはショックだったろう。
怜ちゃんは、相変わらず元気は無かったけれど、相槌は普通に返してくれた。
大学やバイトの時より、幾分は明るくなってくれたようだった。
「はぁ……こんなに喋ったの、久しぶりかも」
帰りの道々、彼女は一人呟いた。
「嘉狩さんや村雨さんと一緒の時は、あまり喋らないの?」
「うーん、私元々口数少ないし……根暗だから……。
でも、吉良先輩と一緒にいる時は、何だか口数多くなっちゃうかも」
夜風が、頬と俺の心を撫でた。
その瞬間、俺の中で歯止めになっていたものが消えた。
この所彼女に元気が無かった事も、
時折俺を避けるような素振りを見せていた事も、
全ての懸念を、この一瞬だけ忘れ去ってしまった。
胸の中に仕舞ってある言葉を、今こそ伝えるべきだと直感した。
「怜ちゃん、俺……怜ちゃんに伝えたい事があるんだ」
言いかけた俺の前で、彼女の目が皿のように丸くなるのがわかる。
「俺、怜ちゃんの事、好……」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
最後まで言い切るより前に、怜ちゃんの悲鳴が、俺の言葉を遮った。
唖然とする俺を放ったらかしにして、彼女は……逃げた。
いきなり後ろを振り向いて、狂ったように瞬発的に、その場から走り出す。
それを追いかけねばならないと、俺が判断したのは、
彼女が走り出してからたっぷり一秒は経過してからだった。
441: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:54:35 ID:Z9iTqFZP(9/15)調 AAS
ワケが分からない。
ワケが分からない。
何故、逃げる?
何故、電話に出なかった? 何故、俺と距離を置こうとした?
そのくせ何故、ファミレスでは何事も無かったかのように、楽しく会話しようとしていた?
俺と一緒にいたくないのか、
俺と一緒にいるのを楽しいと感じてくれているのか、
一体どっちなんだ?
逃げる彼女を追いかけている間、止まない疑問が
ずっと俺の脳内に横たわっていた。
「待ってよ、怜ちゃん!」
「止めて! 追いかけて来ないで!」
常から彼女には敬語を使って欲しくないと思っていたが、
こんなシチュエーションで叶えられても、心が痛むだけだ。
運動不足の彼女の足に、俺が追いつくのに、実際には五秒とかからなかった。
「どうして逃げるんだよ!?」
追いついた俺は、彼女を止めるために、そのか細い肩に手をかけた。
瞬間、まるで暴漢にでも襲われたかのような絶叫が、夜道に木霊する。
「きぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
一時は能面とさえ思えた、淡白で何も映し出さなかった顔は
苦痛と恐怖に歪み、涙をボロボロと零し始めた。
膝を折って屈みこみ、頭を抱えて歯をガチガチと鳴らす彼女に、通行人達が振り返る。
もう夜間で、人通りも大分少ないにも関わらず、
わずかに二組程、偶然その場を通りがかっていたのは、俺にとって不幸だった。
非難するような視線が、釘のように俺に刺さる。
一人は携帯電話を取り出し、警察に連絡しかけているようだ。
「ちょっ、待って下さい! 俺達、友達なんです!
何も問題無いですから、はやまらないで!」
俺は通行人達に弁明するのに必死になった。
突発的に怯えだした怜ちゃんを、宥める余裕さえ無かった。
何とか彼女が落ち着き、通行人達に「大丈夫ですから……」と言ってくれるまで
実に数分もの時間を必要とした。
442: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:55:32 ID:Z9iTqFZP(10/15)調 AAS
傍にあった自販機で缶ジュースを二本購入し、
一本を怜ちゃんに手渡した。
「はい。ミルクティーで良かったかな?」
「……ありがとう、ございます……」
彼女は、受け取ったジュースを一口たりとも飲もうとしなかった。
プルトップを開ける、その力さえも出せないかのようだ。
ただ、消え入りそうな小さな声で、一言だけ呟いた。
「私……吉良先輩とは、付き合えません……」
それは、本来衝撃的な言葉の筈だった。
ついせ先週は、玉砕するとは毛程も思っていなかった俺への、
本当なら矢よりも痛く、銃弾よりも貫く筈の残酷な言葉。
しかし今の俺には、そんな言葉そのものには、何らの衝撃も感じなかった。
直前までの、彼女の狂乱ぶりの方が、余程衝撃的だったからだ。
「良ければ、理由を話してくれる?
俺の事、友達としてしか見れないの?」
彼女は、首を横に振った。
「違うんです……私、吉良先輩の事、大好きです……。
でも……だから……だからこそっ……」
その後しばらく、彼女の言葉は途切れた。
今更になって、彼女も俺の事を好きでいてくれたのだと、
俺はこの時初めて知らされた。
けれど、その言葉に素直に喜べるような状況では、なかった。
一分か、二分くらい経ってから、ようやく次の言葉が紡がれた。
その言葉は、さすがに俺を釘付けにした。
「私、もう……汚れちゃった、から……」
再び、怜ちゃんは歯をガチガチと震わせた。
その瞳に、絶望の色が影をさす。
「こないだ、社会学の日に……っ
お……お兄ちゃんに……よごっ……汚、され……っ」
それ以上、俺は彼女に何も言ってほしくなかった。聞きたくなかった。
あまりにも悲痛で、あまりのも予想外で、あまりにも無慈悲で……
この世の言葉では形容出来ない程の失意が、俺を襲った。
彼女の言う『お兄ちゃん』が、日色唯の事だと察知するのにさえ、時間がかかった。
記憶の中で、唯の顔を思い起こす。
軽薄で、不真面目で、信用のおけない、あの男。
激しい憎悪が、俺の中に芽生えた。
今なら、殺人さえも罪に問われないような気がした。
「……あの野郎っ!」
錆びて朽ちかけた鎖のように、ボロボロに繋ぎ合わされた怜ちゃんの言葉から、
俺は全てを悟った。
ここ最近、彼女に元気が無かった理由。
俺と一緒にいる時間を楽しんでくれながらも、俺を避けようとしていた理由。
全てが、ピースのあったパズルのように、瞬時に理解出来た。
彼女もやはり、俺に好意を抱いてくれていたのだ。
けれど、唯によって汚され、俺の胸に素直に飛び込めない体にされてしまった。
俺と一緒にいる時間を楽しんでくれていたのは、俺の事が好きだったから。
俺を避けようとしたのは、俺に合わせる顔が無かったから。
肩に触れただけで悲鳴を上げたのは、恐怖症に陥っていたから。
全ては、彼女の信頼していた『お兄ちゃん』……
日色唯に、その信頼を裏切られたせいだった。
443: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:56:19 ID:Z9iTqFZP(11/15)調 AAS
その夜、俺は彼女の下宿に泊まった。
彼女が唯に組み伏されたというソファも、確認した。
「そこ、本当は上からシーツがかかってたんだけど……」
汚れたから捨てたんですと、彼女は言った。
敢えて何で汚れたかは、俺は聞かなかった。
彼女はもう、その時と同じ血を流す事は、未来永劫叶わない。
「良ければ、経緯を話してくれない?
どんないきさつで、この部屋であいつに……その……」
聞くのは悪いと思いつつも、聞かずにはいられなかった。
答えたくないなら、答えなくて良いよと、俺は付け加えた。
怜ちゃんは、一言一言、掠れるような悲痛な声で、ゆっくりと答えた。
「あの日は……あいつが、ここに遊びに来てたんです……。
あいつをここに呼ぶのは、初めてだったけど……。
私自身は、何度かあいつの部屋に、上がった事もあったし……」
俺にとっては、少し悔しい事実だった。
二人がある程度仲が良い事はわかっているつもりだったが、
怜ちゃんの方から唯の部屋に上がりこむ事を了承し、二度もお邪魔したと言う事は
唯に対してそれなりにガードを下げていたと言う事だろう。
今日初めて彼女の部屋に上がらせてもらえた俺としては、負け越した気分にさせられる。
もっとも、それも仕方の無い事だ。スタートラインがそもそも違う。
俺と怜ちゃんが知り合うより前から、唯と怜ちゃんは知り合っていたのだから。
……そうして数ヶ月の時間をかけて築き上げてきた信頼関係を、
あの男、日色唯はぶち壊しにしたわけだが。
「……あいつを、訴えよう」
俺は提案した。
本当は殺してやりたいが、そんな事をしたら、こっちが犯罪者になってしまう。
罪に問われるのは、あの男だけで十分だ。
しかし、怜ちゃんはそれを断った。
「良いんです……私が、悪いんだから」
「何でだよ!? 怜ちゃんの何が悪いって言うんだ!」
「私が……簡単に、気を許したから……」
そんな馬鹿な話があるか。
信頼し、気を許す方が、悪いだと?
そんな理屈、通ってたまるか。
俺は、彼女に悲鳴を上げられるかもしれない危険性を冒して
それでも彼女を、きつく抱きしめずにはいられなかった。
「怜ちゃんっ!」
「……ひぃっ、あ……」
彼女は、反射的に絶叫しかけた。
けれど、すんでのところで、その声を抑え込む。
「俺が、全部忘れさせてやるから……
あいつの事も……あいつにされた事も、全部……」
すすり泣く声が、暗い部屋に静かに流れる。
その時泣いていたのは、怜ちゃんだっただろうか。それとも、俺の方だっただろうか。
「無理ですよ……いくら、先輩でも……」
「女の子にとって、初めての体験は、一生モノだもん……」
「どう足掻いたって、忘れられるわけ……」
途切れ途切れに、痛切な声が耳に届く。
それでも俺は、彼女を抱かずにはいられなかった。
性欲からではなく、本当の意味で彼女を助け出すために。
その夜俺は、初めて彼女と交わった。
444: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:57:20 ID:Z9iTqFZP(12/15)調 AAS
ベッドの傍に服を脱ぎ散らかして、裸で絡み合う。
柔肌を優しく撫でて、体温を確かめ合う。
見つめあい、近づき、瞳を閉じて、口付けあう。
思えば、彼女とキスするのはこれが初めてだった。
この唇を、あの卑劣な男は奪ったのか。
そう思うと、腹立たしくてならなかった。
「とうとう、キス……しちゃったね」
そう呟いた俺の声に、しかし怜ちゃんは、何も返さなかった。
「……感想は?」
聞いてはみるが、やはり答えようとしない。
ただ、泣き出しそうな目で、俺を見上げてくるばかりだ。
やがて意を決したのか、一言だけ彼女は呟いた。
「気持ち悪い、です……」
つぅっと、一筋の涙が彼女の頬を伝って、シーツの上に零れ落ちた。
俺はもう一度口付けて、それから舌を突き出し、ディープキスに移行した。
この口の中も、あの男の汚らわしい唾液で汚されたのだろうか?
ならば、浄化してやる。
怜ちゃんの体の隅々まで、俺が汚しなおしてやる。
あの男に汚された跡など、無くしてやる。
滑らかな舌と舌が重なり合い、唾液が交換された。
口を離した時には、薄い糸が二人の唇の間に引かれていた。
彼女の貧相な肉付きから予想はしていたけれど、
乳房の方も、やはり貧しい肉付きだった。
ひょっとすると着やせとかしているかも……と少し思っていたのだけれど
彼女は予想通り、ボリュームの控え目な胸をしていた。
俺はそこに顔を近づけると、ディープキスの時と同じように
舌を伸ばして、先端の乳首を転がし始めた。
やはりここも、あの男に弄ばれたのだろうか。
処女膜を貫かれた程なのだから、まさか胸が無事な筈は無かった。
いくら毎日入浴で綺麗に洗っているであろうとは言え、
あの男が舐めたのと同じ部分を、一所懸命に舐めさせられるのは、不快極まりなかった。
そしてそれは、怜ちゃんも同様らしかった。
「私、もう駄目かも……
吉良先輩にこうしてもらえるの、幸せな筈なのに……
感触とか匂いとか思い出して、吐き気がしてきちゃう……」
あまりにも正直過ぎるその言葉に、俺は勝てなかった。
唯の事を忘れさせるつもりで抱いたのに、逆効果だった。
俺の行為の悉くが、怜ちゃんに唯を思い出させる結果と、なっているようだった。
彼女の体は今、俺に犯されているが、彼女の心は、未だに唯に犯され続けていた。
その夜俺は、最終的には彼女の中に挿入し、射精までしたけれど、
ついぞ彼女の嗚咽を止める事は出来なかった。
彼女は最後まで、絶頂に達する事も無く、ひたすら鼻をすすり続けた。
彼女が唯とお揃いのチョーカーを川に投げ捨てたのは、
その日の夜中の内だった。
445: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 22:58:11 ID:Z9iTqFZP(13/15)調 AAS
「でさぁ、それが超ウケるんだってば」
「本当かよ? 唯の言う事だからなぁ」
「んだよソレ。マジいっぺん読んでみってば。論より証……あん?」
講義棟を友人らしき男達と、せせら笑いながら歩いている唯を、俺は見つけた。
元々あの男とは学部が同じなので、見つけるのに然程時間はかからなかった。
廊下の向こう側から歩いてくる唯を、俺は睨み付けた。
その視線に気付いた唯が、訝しげに俺を見てくる。
「よぉ、確か……吉良だっけ?
奇遇だなぁ、お前も次の時間は比較政治論か?」
そ知らぬ顔で話しかけてくる、その面構えも口調も、全てが腹立たしい。
こいつが、今、目の前で息をしている事すらも。
俺は拳を握り締めると、思い切り唯の頬を殴り飛ばした。
「が……っ!?」
「な、お、おいっ……?」
「何やってんだよ、お前!」
唯の友人達は、ワケがわからないといった風に、俺を見てきた。
もっとも唯ですら、何故俺に殴られたのか、わかっていないだろう。
「……ってぇなぁ、んだよテメェ?」
「……るか……」
呟く俺の声は、唯の耳には届かなかったらしい。
奴は、聞き返すようなジェスチャーをしてきた。
聞き漏らさないように、とぼけられないように、声を強くして話す。
「お前にわかるのかっ!?
信頼してた『お兄ちゃん』に酷い事をされた時の、あの子の気持ちが!
お前とペアのチョーカーを川に投げ捨てた時の、あの子の手の震えが!」
瞬間、周りの者達全て、唯も唯の友人達も、関係の無い通行人達も誰も彼もが、
声を止め足を止めて、俺の方を注視してきた。
唯はやっと、何故自分が殴られているのか、理解したようだった。
構わず、俺は糾弾を続ける。
「俺に全てを話してくれたの時のあの子の声の震えが、お前に想像出来るのか!」
そして、そう……両思いの子を、寝取られた男の悔しさが、お前に想像出来るか?
もう一発、俺は唯の頬を、拳を固めて殴り飛ばした。
口の中を切ったらしく、多少の血を吐きながら、唯は床の上に倒れた。
「げほっ、かはっ……いきなり何しやがんだ、この野郎……」
そこへ、たまたま駆けつけた慎と嘉狩さんに、俺は拘束された。
「吉良、止めろ!」
「どんな事情があるのか知らないけど、こんな所で喧嘩はまずいよ!」
しかしそんな言葉は、俺にとってはナンセンスだった。
怜ちゃんをレイプした男が、こうしてシャアシャアとしているのに
そのレイプ魔を殴った俺を、罪に問える者がこの世にいるのか?
446(1): 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 23:00:05 ID:Z9iTqFZP(14/15)調 AAS
その時俺は、どんな表情をしていたのだろうか。
或いはこういうのを、鬼のような形相、というのかもしれない。
俺の表情を覗き込む嘉狩さんの目が、怯えたように青ざめていた。
「よくも……よくも怜ちゃんに、酷い事を……っ」
だが、まだ慎も嘉狩さんも、怜ちゃんの身に起きた事を知らない。
知っているのは、昨日の夜彼女本人からその話を聞かされた俺と、
被害者である怜ちゃん自身と、彼女を襲った張本人である、唯だけだ。
「何……? 怜がどうかしたの?」
「怜ちゃんは……怜ちゃんは、こいつに……」
その瞬間、唯の声が俺の言葉を遮った。
「おいおい、そんな事バラして良いのか、吉良?
軽々しくバラしちまえば、傷つくのは俺じゃなくて、怜の方なんじゃねぇの?」
口元の血を拭いながら、ノロノロと立ち上がる唯。
俺は悔しかった。
声を大にしてこの男の罪を述べられない、今の状況が。
この男のせいで、とうとう怜ちゃんは今日、起き上がる気力すら湧かず
大学も欠席、バイトのシフトも早めにキャンセルして、
一日中自分の下宿の中でカーテンも開けずに、閉じこもっていると言うのに。
俺は慎と嘉狩さんに引っ張られて、渋々その場を後にした。
殺したい程憎い相手が、目の前にいるのに。
唯は立ち上がって埃を払うと、無表情で俺を一瞥した。
どれ程俺が殺意をこめて睨みつけようと、奴は涼しい顔で受け流していた。
447: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/21(火) 23:00:46 ID:Z9iTqFZP(15/15)調 AAS
まだ続くけど、とりあえず第二話終了
448(1): 2007/08/22(水) 00:18:32 ID:JtTYHn+r(1/4)調 AAS
>>411の続きです。しかしこのスレすごいなあ。でもそんなのカンケ(ry
その光景に耐え切れず、オレはその場から脱兎のごとく逃げ出した。混乱が渦巻く頭の中で、オレは
自分の本当の気持ちと、何をすべきかを必死で考えていた。
次の日の朝。
「ソイヤッ!」
「痛ッ!」
と、朝のお約束を交わしたものの、オレの様子がいつもと違う事に春香はすぐ気づいた。
「春香、ちょっと寄り道してかねえか」
「ハ?なに?もう時間ギリギリだよ?つーか、え、ナニ?」
オレは彼女の手を掴むと、黙って近くの公園に引っ張っていった。
最初はブー垂れていた彼女だったが、オレの様子に何かを察したらしく、途中から無言になっていた。
「で、なに」
と言う彼女は、すでにこっちの用事を察していた様で、顔が少し青ざめていた。
「あー、オレ昨日忘れ物を取りに夕方教室にもどってさ…」
彼女の眉がピクッと動いたが、基本表情は変わらず。
「…あんたに関係ないじゃん」
「そ、そりゃそうだけど、けどお前、アイツのヤリチンぶりはよく知ってるだろーが!」
彼女の顔から完全に血の気が引いていった。ベースが黒いのでなんか複雑な顔色に。
「私は特別なんだって…」
「は?」
「彼が言うには、確かにいろんな女と付き合ってきたけど、私は本当に特別なんだって!」
…マジで信じられん。俺の嘘なんて「あのー」といった瞬間に見抜いてしまう晴香が、ベタドラマにさえ
出てこないようなそんなベタゼリフにコロッとやられるなんて。
……いや、違う。こわばった彼女の顔を見て気付いた。たぶん晴香も本当は信じていない。
くそ、どうする、どうするオレ!続きはネット…じゃなく、よし行けオレ!
449: 2007/08/22(水) 00:19:35 ID:JtTYHn+r(2/4)調 AAS
「…そんなん言ったらなあ」
「ハ?」
「そんなん言ったら、オレもお前が好きなんだよ!」
晴香は一瞬呆然とオレの顔を見ていたが、次の瞬間真っ赤になって怒り出した。
「ふざけないで!」
「いやいやいや聞けって!昨日のアレを見てはっきり分かったんだよ」
怒りに震えていた彼女の目から、突然涙がブワッと溢れ出てきた。
「…あんた私を全然女扱いしてくれなかったじゃん!…でも、タケルはホントに、ホントに優しくて…」
行けオレ、パート2!オレは彼女をギュッと抱きしめた。わー、女の子って細いんですねー。
「オレがガキだった。なんつーか、とにかくすまんかった」
もう彼女は一言も発せず、ひたすらオレの腕の中でヒグヒグ泣いていた。
「ハンカチ貸して」
と彼女が細い手を伸ばす。
「ほれよ」
と渡すと、彼女はそれで思い切り鼻をかんだ。アメリカとかヨーロッパの人か!と言いたいがガマン。
学校に向かう道中、二人の間になんか照れくさいような、ぎこちないような空気が流れるが、別に不快な
ものではなかった。
学校に着く直前、彼女は、タケルとの事は今日中にケリをつけると言った。
「大丈夫か?」
「ウハハハ、この春香様を舐めんなよ!」
と、そっくり返って笑う彼女を見て、なんかオレの心はジンワリするのであった。
その夜。オレはお袋に「ちょっとコンビニへ」と言って散歩に出た。と言うのは口実で、春香の顔が
見たくなったのだ。ああそうさ、現金なヤツ、それがオレさ。
もちろん、タケルとの事がどうなったか知りたいというのもあった。そういえば、確か今日は彼女の
お母さんはパートの遅番だから、彼女の家でじっくり話ができる…いや、話だけでは物足りなくなった
二人は…ムム…ムムム…(ボフッ!)←ビデオ屋の「1本100円セール!」ノボリに突入した音
彼女の家が見えた。家の前に自転車が止まっている。近寄ってみると、それはタケルのものだった。心臓が
極限までビートイット←誤用。話が込み入ってるんだろうか。このまま待たせてもらいましょうか…
…と言いつつ春香の家の屋根にいるオレ。裏の塀を登り、1階の屋根をぐるっと回り込むと、2階の彼女の
部屋にたどり着けるのだ。何年ぶりだろうかこのルート。
正直、オレの頭の中ではサイアクの妄想が渦を巻いていたが、一方で、今朝の春香の笑顔は何となく信じても
いいんじゃないかという気もしていた。
やがてオレは目的の窓にたどり着き、そーっと中を覗き込んだ。……なあんだ……心配して損したよ。
450: 2007/08/22(水) 00:26:56 ID:JtTYHn+r(3/4)調 AAS
ベッドの上に素っ裸のタケルが仰向けに寝ていて、その上にこれまた素っ裸の春香がまたがっていた。彼女の、
日焼け跡がくっきり残る小さな白い尻がタケルの逞しい手に鷲掴みにされ、見てるほうが余計な心配をするほど
深々とごついチンポをぶち込まれていた。
彼女はもう自分では身動きがとれないらしく、タケルの逞しい体にしがみついて、切れ切れにあえぎ声を発していた。
やがて、タケルは春香の尻をグッと引き寄せてその奥深くにバッチリ発射し、同時に春香も完全にイッて
しまったらしく、二人は溶け合うようにガックリと体を重ねて動かなくなった。
さあてどうしよう。もうあきらめるところだよな。昨日までのオレなら。
「こんばんわー!」
と、窓をガラッと開けて、一応靴は脱いで上がりこむ。二人がバッと身を起こす。
「なんだよお前!」
とタケルが息巻くが、春香はタオルケットで体を隠し、オレから顔を背けた。
「タケル、やっぱオレお前許せねえわ」
「は?ナニそれ?なんか俺お前に許してもらうような事あったっけ?コイツなにいってんだろうなあ春香」
とタケルがせせら笑いながら春香に同意を求めたが、彼女は無言でうつむいたままだった。タケルがみるみる
不機嫌な顔になる。汗と体液の臭いが立ち込める部屋に、なんとも言いがたい空気が流れた。
やがてタケルが吐き捨てるように
「…チッ、なんかお前らウゼーよ。めんどくせーから帰るわ。ったくよお……」
と言い、尻を掻きながら部屋を出て行った。そのゴッツいチンポを
ひたすら無言だった春香がポツリと言った。
「…こんなだから」
「は?」
「あたしこんなだから」
オレは、頭をポリポリ掻きながら言った。
「…ハァ…ってことは、オレはこれから先、ずっとこんな苦労をしてかなきゃならないって訳ね」
オレの言葉を聞き、信じられないと言う表情で顔をあげた春香が、急に泣きながらオレに抱きついてきた。
オレはニッコリしながら彼女の頭を撫でていたが、実はTシャツ一枚越しの春香の胸の感触に全神経が集中
していた……
……ってなるかなあ、もし今突入したら。
今、目の前では、タケルの上からごろりと転げ落ちるようにベッドに横になった春香が、タケルに何かを
囁かれてクスクス笑っていた。やがて彼女は彼に覆いかぶさるようにしてキスをした。そのキスは彼の首、胸、
ヘソとだんだん下りていき、最後には、まだ結構力強く起立している、二人の体液にまみれたチンポの先に
キスしたかと思うと、本当に愛しげにその肉の塊を咥え込んだ。
そう言えば、オレはよく水泳で鍛えられた彼女の体を「泳ぐアメフト」なんてからかってはケツキックを
くらっていたが、ガッチリした体型のタクヤに重なっている彼女の姿を見ると、やっぱり華奢だなあと改めて
気付かされた。
そして、今朝彼女を抱きしめた時の、たぶんもう2度と触れる事のないであろう細い肩を思い出しながら、
頭を掻き掻きそっとその場を離れた。
それからオレは家に帰り、春香が写った写真(もちろん水着)を机から引っ張り出して、生まれて初めて
彼女でオナニーをした。うん、まあ、なかなか良かったよ。
<めでたしめでたし>
451: 2007/08/22(水) 00:30:37 ID:Abp3qs24(1)調 AAS
oh my god!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
452(1): 2007/08/22(水) 02:56:36 ID:U8oUoxCB(1)調 AAS
これはひどいビッチwwwwww
>ガッチリした体型のタクヤ
タクヤって誰wwwww
453: 2007/08/22(水) 03:27:38 ID:JtTYHn+r(4/4)調 AAS
>>452
あ!…(ガクッ)…「春香」が「晴香」になってるところも……
突然「そのゴッツいチンポを」って何……
基本中の基本がなってませんでした。
反省&精進します……
454: この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/08/22(水) 20:51:07 ID:mfBj3WF/(1/6)調 AAS
1.
突然、凄いヤツが、隣町にある羽島高校の水泳部に出現した…とは噂で聞いてた。
インターハイを目指す俺にとっては、ライバル。もちろん関心を引く話だ。
水泳の華。100メートル自由形。
俺、冨田忠志の現在のベストタイムは53秒12。
この1年で、全国に手が届くまでタイムを伸ばしてきた。
昨年は悲願のインターハイ出場をギリギリで逃した俺にとって、
高校3年のこの夏が、最後の夏だった。
「三島ってヤツらしいぜ。なんと高2だってよ」
さっそく情報を収集してきたらしい同じ水泳部の田中が、部活の最中に話し掛けてきた。
「昨年まではアメリカにいたらしくてよ、今年、日本に帰ってきたらしい」
「帰国子女か」
「52秒台を出したとかいう噂だぜ」
「マジかよ」
「東峰学園の池田と鳥谷だけがライバルだと思ってたのにな、忠志」
「…バカ。ここまで来て、そんなポッと出の、しかも1年後輩に負けてたまるかよ」
闘志が湧いてきた。俺は飛び込み台に立つと、水飛沫を上げてプールに飛び込んだ。
水の中。この青い世界が好きだ。自分の限界までスピードを上げていく。
どこまでも、どこまでも行けそうな気がする。水の抵抗も味方にして、追い越して、
そして、夏の向こうまで。必ず行ける。
そう思っていた。
「夏樹!」
夕暮れの校門で待っている夏樹に、俺は呼びかける。
セーラー服姿の夏樹が振り返る。ショートヘアを揺らし、ニッコリと笑った。
「お疲れ!忠志。今日も頑張ってたじゃん!」
小麦色の肌。半袖から伸びる腕が、健康的で眩しい。
水野夏樹。
陸上部で女子のエースとして活躍している彼女は、走り幅跳びの選手として
俺と同じく、インターハイ出場を目指している。
そして、俺の…ガールフレンド以上、恋人未満って存在。
幼稚園の頃からの幼馴染で、腐れ縁なのか、高校までずっと一緒にいる。
隣近所の親同士が仲が良く、兄妹のように育ってきた。
年頃になってから、お互いを男と女として意識しないわけじゃなかったが、
どうにも幼馴染ってのは面倒なもんで、いざとなると照れて素直になれない。
お互い、内心では好きなことを分かっていながら、言えずにいる。
だからこれまでお互い、彼氏や彼女なんか持ったこともない。
学校でも、どうやら俺たちは公認のカップルってことになってるらしい。
俺は、自分の「初めての相手」は夏樹だ、と決めてる。
夏樹も…そう思ってくれているに違いない。
でも、そのために、まずはこの夏だ。
インターハイに出場を決めて、夏樹にこの10数年の想いを告白する。
俺は、そう決めていた。
455: この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/08/22(水) 20:52:09 ID:mfBj3WF/(2/6)調 AAS
2.
その日は、夏樹とふたりで晩飯にカレーを食った。夏樹手づくりの。
俺と夏樹の両親が「夫婦たちの日」とかを勝手に作って、フランス料理の
コースだかを食べに出かけたせいだ。
「ほんと、バカ親!」
夏樹は笑いながら言うが、俺とふたりってことが、満更でもなさそうだった。
お互い、隣同士の互いの家を行き来する間柄だし、親同士も仲が良いから、
夏樹と晩飯を食うのは珍しいことじゃない。
でも、ふたりっきり…というのは、そう言えば、最近はなかったっけ。
自分の家に一度帰って、シャワーを浴びてきたらしい夏樹は、
短パンにピンクのTシャツだけっていう、ラフな格好。
…でも、なんだよ、そのふとももとか、腰付きとか、反則だろ、って思う。
俺だって、同じような格好してるわけだけど。
エプロンを付けてキッチンに居る夏樹に思わず見とれていたら、釘を刺された。
「…なんだ?じーっと見て。二人きりだからって、襲うなよっ」
「は?バカ。あのオテンバ娘でも料理するんだなーって、思ってただけだよ」
「ふん。食べさせてあげないぞ。こう見えても、お母さんにいろいろ習ってんだから」
軽口を叩き合ってるうちに、カレーが出来上がる。
テーブルを挟んで、二人で食べる。
俺が最初に口に運ぶのを、じーーっと夏樹が見つめてる。一応、緊張してるらしい。
「…ど、どお?」
「……ん。美味いよ」
俺が言うと、ぱぁっと向日葵みたいに笑った、
「…そっか!よしよし、うんうん!」
安心したように夏樹は食べ始めた。
「…なあ」俺は聞く。
「ん?」
「夏樹は、インターハイ…行けそうか?」
「うん!頑張るよ。絶対行く。忠志も、頑張んなきゃダメだよ。一緒に行くんだから」
「…おう」
「忠志なら、絶対行けるよ。この一年、頑張ってたもん」
夏樹がそう言うなら、大丈夫な気がする。
夏樹がそう言ってくれるなら、俺は絶対に負けない。
456: この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/08/22(水) 20:53:04 ID:mfBj3WF/(3/6)調 AAS
3.
突然、羽島高校の水泳部から合同練習の申し込みがあって、その日の
我が名桜高校水泳部は、皆、かなりの興奮状態だった。
噂を聞きつけて、プールサイドには見学の生徒たちが鈴なりになっている。
「県予選前に、殴り込みかよ、おもしれえ。やってやろーじゃねえの!」
田中が息巻いている。でも、俺は冷静だった。
ただ、その1年後輩の三島ってヤツを見てみたい。そう思っていた。
やがてプールサイドに、スイムウェアを付けた羽島高校のメンバーが現れだす。
引率の教師が、こちらの部長先生に挨拶をしている。
(…どれが三島ってヤツだろ)
そう思っていると、プールサイドをスタスタとこちらに向かってくる男がいる。
172センチの俺より…背が少し、高い。
細身のくせに、その身体は、相当鍛えていると一目でわかる筋肉の付き方をしている。
サラサラとした茶髪を、片手でふわっと掻き揚げた。
身体は立派だけど…0.1秒を競う競技で、この髪型はありえないだろ?
「…冨田さんって、どちらですか?」
そう聞いてきた。間違いない。こいつが、三島。
「俺だけど」
俺は前に出た。周囲が互いの高校のエースの邂逅に、固唾を飲んでる雰囲気が伝わる。
「…俺、三島尚哉です」
1年後輩とは思えない落ち着いた雰囲気を漂わせ、静かに言う。
「…速いんですってね。どの程度か、見せてもらうのを楽しみにして来ました」
…カチンと来た。
「俺が冨田忠志。よろしくな」
手を差し出す。三島がその手を握り返してきた。握り負けそうになる圧迫があった。
(…こいつ!)
そう思ったとき、背後で声がした。
「忠志!」
振り返ると、金網越しに、陸上部のユニフォームを来た夏樹がいた。
「頑張れ、忠志!応援してるぞ、負けるなっ」
夏樹が手を振った。夏樹、サンキュ。これで勇気百倍だ。
「…彼女さんですか?」
その時、三島が俺の肩越しに、夏樹を見た。
何か、胸騒ぎがした。こんな男に夏樹を見られるだけでも、イヤだった。
「どうでもいいだろ。とにかく、勝負といこうぜ」
「…そうっすね」
三島が夏の青空の下で、薄く笑った。
457: この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/08/22(水) 20:54:00 ID:mfBj3WF/(4/6)調 AAS
4.
人気のなくなったプールサイド。俺はまだそこに座り込んでいた。
…完敗だった。
100メートル自由形の勝負。俺は、どんどんとヤツに離されていく自分を
感じながら、どうにも出来なかった。ヤツの足だけが、水の壁の向こうに見えていた。
「…俺の勝ちっすね」
俺がゴールした時、三島はとっくに濡れた髪を掻きあげていた。
信じられなかった。この一年、人の3倍、いや、4倍の練習をしてきたはず。
「体調悪かったんじゃないですか?今のがベストですか?」
「…なに?」
「あ、気を悪くしました?すんません、口悪くて…。んじゃ、握手お願いします」
三島は人を食った態度で笑いながら、勝負後の握手を、求めてきた。
それに応じないなんてブザマな真似は、そのときの俺には出来なかった。
俺の手がヤツの手の中に吸い取られ…そして、ぎゅううっと握り潰されていた。
俺は、ようやく聞いた。
「…どれくらい水泳やってるんだ?」
三島はニヤリとした。聞いて欲しかったというように。
「…3ヶ月ですよ。アメリカでは、バスケばっかりやってたんで」
3ヶ月。
小学生の頃から泳いでいた俺が、3ヶ月の素人に負けたのか。
「…忠志」
声がした。俺はゆっくりと見上げる。夏の眩しい日差しが、夏樹の表情を影にしていた。
「…大丈夫、負ける事だってあるよ」
夏樹が、俺のそばにしゃがんだ。
「…残念だったね」
同情の響きが辛かった。
「次は勝てるってば」
夏樹の前で負けた。俺を信じてくれてる夏樹の目の前で。
「次?もう時間がないだろ!」
俺は思わず声を荒げた。夏樹がじっと俺を見つめる。
「県予選まで、もう2週間ないんだ。どうしようもないだろ!」
「忠志」
「あいつ、水泳やって3ヶ月だってよ。そんなヤツに、ずっとやって来た俺が…」
「忠志、トップにならなくてもいいんだよ、3位までに入れば…」
夏樹がそう言って、俺はつい、苛立った。
「そんなんじゃ意味ねーんだよ!」
「忠志」
俺は立ち上がった。これ以上、同情されたくなかった。夏樹にだけは。
この世界でただひとり、夏樹にだけは。
俺は身体を翻すと、夏樹をプールサイドに残して、更衣室へ歩き出した。
夏樹の哀しげな視線を背中に感じながら。
458: この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/08/22(水) 20:55:59 ID:mfBj3WF/(5/6)調 AAS
5.
三島に負けたことでスランプに陥った俺が、インターハイ予選で負けたのは
仕方のないことだったかも知れない。
精神的に立ち直るには、時間がなさすぎた。
俺は、県予選でまたも三島に惨敗し、結局、県内5位に終わって、インターハイの
出場権までも逃した。
俺の夏は、これで、終わったんだ。
どうしてこんなことになったのだろう。俺はずっと胸の中でその問いを繰り返していた。
夏樹は、女子陸上の走り幅跳びで、見事、インターハイの出場権を掴んだ。
でも、何もかもが無駄だった。俺は虚脱してしまっていた。
「応援に来てよね」
インターハイに出かけていく朝、夏樹は俺の部屋にやってきて言った。
「忠志の分まで、頑張るからさ」
黙っている俺に、夏樹はさすがに怒った。
「…いつまで落ち込んでるんだよ!そんなの忠志らしくない!バカ!」
俺を元気付けようとしてくれてるのは分かったけど、身体に力が入らなかった。
だって、この夏の為だけに、俺は頑張ってきたんだから。
そして、夏樹が出掛けていったインターハイも、今日で終わる。
俺は、自分の部屋のベッドに仰向けになって、天井を見つめていた。
大会の間、夏樹から連絡はなかった。電話も、メールも。
夏樹が全国4位に入賞したことは知っていた。
その時だけ、「おめでとう」と頑張ってメールを送ったけれど、返事はなかった。
「…怒ってるのかな」
天井に向けて俺は呟いた。
今夜、夏樹が帰ってきたら、謝ろう。いつまでも落ち込んでいても仕方がない。
水泳人生が終わったわけじゃなかった。まだ、大学がある。
ようやく、そんなふうに考えられる自分がいた。
夏樹が戻ってきたら、思い切り肩を叩いて「やったな!おめでとう!」と
言ってやろう。
きっと、夏樹も心からの笑顔を見せてくれる。
そうして、ここしばらくの自分の行動を素直に謝って…もう一度、色々とやり直そう。
そう思った。
もう、何もかもが、遅かったことなんて、知らずに。
夏樹は、インターハイから帰って来たその日、俺の家には来なかった。
(…明日、来るつもりなのかな。)
でも、土産くらい今夜のうちに持ってきたっていいのにな、と思う。
俺は、深夜、自分の部屋のカーテンを開けて、隣家の2階の夏樹の部屋を伺ってみた。
カーテンが閉まっている。でも、灯りが点いていた。
帰ってるんだ。
「お帰り」とメールを送ろうか。でも疲れているのかも知れないな。
『お帰り!今、窓からそっち見てるぜ。窓、開けてくれよ』
携帯メールの文字をそこまで打ち、俺はしばらく考えた。
そして結局、そのままメールを消去して、カーテンを閉ざした…。
俺は知らなかった。
夏樹がその時、携帯電話を握り締めて荒い息をついて、自分の耳に当てていたことも。
自分の部屋のベッドの上で、電話の相手の声に操られて、真っ裸になっていたことも。
大きく、その両脚を開いていたことも。
まだ幼い乳房のてっぺんで、桃色の乳首が、固くツンと尖っていたことも。
携帯電話を持たない右手の指先が、その股間の女の部分に深く潜り込んでいたことも。
夏樹を、思うままに翻弄している相手も。
…俺はまだ、何も知らなかった。
459: この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/08/22(水) 20:57:14 ID:mfBj3WF/(6/6)調 AAS
本日はここまでにさせていただきます。
460: 2007/08/22(水) 21:22:51 ID:jIcl8ggq(1)調 AAS
なんかスレが盛り上がってきたGJ!!
461: 2007/08/22(水) 22:03:20 ID:eEL98s/a(1)調 AAS
正直な話こういうのを待っていた!
続き楽しみです〜
462: 2007/08/22(水) 22:38:54 ID:DPcrbSq2(1)調 AAS
次回の投下、全裸で待ってるよ。
463: 2007/08/23(木) 01:35:03 ID:uzx5s+Uj(1)調 AAS
わっふるわっふる
464: 2007/08/23(木) 09:35:52 ID:JBW/8Ar/(1)調 AAS
ここ最近では一番いいねー
こうゆう読ませる文章は続きが楽しみだぜ
465: 2007/08/24(金) 00:13:48 ID:1MXFtApU(1/2)調 AAS
ううう…投下は嬉しいがこうもNTR連続だとダメージに耐えられるか俺
ところで最近サンデーで連載中の飛び込み漫画がすごいNTR展開だな
正直エロのないNTRは不快なだけなのでやめてほしいよ
466(4): 2007/08/24(金) 00:35:33 ID:64hLMZ5a(1/2)調 AAS
豪華なフランス料理にやや胃もたれを感じたあなたに、タクアンのきれっぱしを投下。(言っとくけど下手クソだよ!)
俺、今のバイトをまあ給料がいいんで結構長くやってるんだけど、
オーナー(45歳・妻・子供2人)がかなりイヤミなヤツって以外はまあ不満なし。
で、8月頭に新しいバイトが入って、それが同中っていうか同級生の子だったのよ。
会ったのはクラス会が1回だけあってそれ以来かな。
彼女は結構目立ってた方で、クラス内ランクで言うと上の中くらい。(ちなみに俺は中の下…ウソ下の上)
その時からヤセてて、まあそれは今もそうなんだけど、胸が…胸が成長してたんですよ!上の上に格上げ!
なんかまぶしくて見れないけど!で、俺は下の上だったのに、名前を覚えててくれたのがかなりうれしかったっす。
それで、うちのバイトは金がいいだけあって仕事中はメチャ忙しくて彼女と話す暇なんて全然ないわけですが、
8月10日ごろだったか、上がりがたまたま一緒で、メシにさそったのよ!マジで俺の今までの人生で最大の決断!
「再開の記念におごらせてよ」とか言って寒いなー!!
でも、まーあっさりOKで、つっても駅前のデニーズだけど。
彼女は細長い足にピッチピチのジーンズで、ピンクっぽいタンクトップに、黒の見せキャミっつーのかなアレ。
見せキャミなのにやっぱりまともに見れねーけど!しかし肩細いなあ、って見てたか。
でまあいろんな話したんだけど、
彼女は中学の時からやってた部活をヒザ壊してドクターストップで、またできるかは微妙らしいけど、
とにかく暇なんでバイトを始めたんだと。
それで次は俺が一番したくねー話で、
「Tくんさー、Nのこと好きだったでしょ。アレどうなったん?」
ちなみにこの話は一時けっこークラスで話題になってて、実は彼女はそれで俺の名前を覚えてたっぽいorz
で、その話は事実無根だったんで、そう言うと、
「え、じゃ誰が好きだったん?時効やん、言ってみ?」
…ここでさあ、「イヤ…実は…君が」とか言えっかフツー?ホントはそうだったから迷ったけどさあ!
…スマン、やっぱ俺にはムリ!!適当にごまかしましたよ。
あとオーナーの話。ヤツは、さっきイヤミって書いたけど、もう一つ属性があって、それはエロ!!
彼女の肩に手をおいて「どう?馴れた?」とかさー、見ててマジムカツク!
「そーだねけっこーセクハラだよねー、昨日入力のやり方聞いたらさー、
『それはこうだよ』とかいって私のもってるマウスの上から手え握ってきてさー!なんか汗っぽくてキモかったよ!」
…ヤローマジ殺してー
で、結局彼女が「いーよいーよ」とか言うのを、約束だからとか言ってムリヤリおごって店をでて、
「また誘っていい?」(これも俺的にはかなり必死)と聞くと
「全然いーけど、もうオゴるとか言わんでね」と言われてまあいっかと。
で、その後何回かメシ食って、
・少なくとも今は彼氏はいない
・部活やらない人間がどうやって時間をつぶしてんのか全くわからない
・オーナーのセクハラは確かにチョットって感じだけど、どうせ夏休み限りだし、時給いいからまあガマンガマン
てな話をしました。
しかしみんなここからどう発展させるんですかねえ。スキル無さすぎだなー俺。
それでですねー、昨日の夜ですよ。
ひまだったんで、ホントの入りの1時間ぐらい前に、まあシフト上では彼女とちょうど入れ替わりだけど、
顔ぐらい見れっかなーって感じで行ったんですわ。
俺らは裏から入るんだけど、入ろうとしたら彼女が廊下で携帯で話してて、それがですよ!
「…え?海が見えるかどうか?そりゃ見えたほうがいいですけど、予約が取りづらいんだったら、Sさん
(オーナーの下の名前ね)の好きで決めていいですよ。…いや、絶対泊まりはムリですよお。昨日だって
結局家に着いたら11時過ぎちゃってて、メッチャ怒られたもん。あれだけ今日は早く帰らせてって
言ったのにどっかのエロオジサンのせいで全くもー」
だって!なんじゃそりゃ!!書いててまた腹たってきた!!なんかもう死にてえ、いや殺してえ!!!
しかしなあ、よりによってオーナーとはなあ。腹でてるしウッスラハゲてるし、マジでおっさんなんだけどなー。クッソー!
場所も時間も大体分かったから、写真でも撮って奥さんにばらしたろかとか、ケーサツにチクればつかまっちまう
年齢だなーとか考えたけど、まーさすがにそれはしないわ。
ヒマだから見に行く位はするかもしんないけど。イヤしないしない。
じゃそういう事で!正直文章ヘタクソですまんかった!だが悔いは無い!
467: 2007/08/24(金) 00:45:21 ID:qrBHBrZ6(1/16)調 AAS
お前に幸あらん事を祈るわ
468(1): 2007/08/24(金) 00:51:56 ID:3/qwtX9D(1)調 AAS
あとでまとめサイトで読むことにしようっと
じゃないと耐えられん
469: 2007/08/24(金) 01:07:11 ID:dswlBfd1(1)調 AAS
あー、きっと男にあんまり免疫なかったんだね、彼女。
お酒飲まされたのかな?スキンシップの成果かな?一瞬の心のほころびにつけ込まれちゃったんだろうね。
せめて傍にしっかりした男性がいればまた、違う結果があったのかもしれないけど、残念、彼女のそばにそういう男性はいなかった。
あとは諦めるか諦めないかせめて後悔の無いようにね?
なんてスレ遵守の事を言わずに本音で書くと、俺、今かなり年下の高校生の仲良しの子いるんだけど、多分、彼女は同級生からは怪しい目で見られているんだろうと思う。
俺の部屋に日がとっぷり暮れた後でも平気で無防備に遊びにきたりするし、タバコに火を付けると、
「また吸ってるー!体に悪いんだから!」とか言って勝手に咥えてるのをさっと取り上げて灰皿に押し付けて消しちまうし、
名前はお互いにファーストネームで呼び合ってるが、それでも一切、やましい事はしてない、これからすることも絶対に無いと断言できる。
はっきり言って可愛い子だと思うし、しょっちゅうブラなんて透けてて、これまた大きい乳との境目なんてムハーものなんだけど、
それでもそういうのヤなんだよね。それに彼女も俺の事、絶対になんとも思ってないはずだ。
かなりエロ話もする、嫌がってるのが面白くて、調子に乗って怒りはじめるまでする、それでもむしろ、この子が早く「彼氏出来そうだ〜」なんて話を聞かせてくれるのを本気で心待ちにしてたりする。
そのバイトの子が君の予想通りの事になってるかもしれないし、ひょっとしたらまだ(ヤバイ)、なのかもしれないし、全然違うのかもしれない。
上手くは言ってやれないが、本当に悔いの無い決断を望みます。
470(1): 2007/08/24(金) 01:47:12 ID:64hLMZ5a(2/2)調 AAS
うお!松屋からもどればいつの間にか温かいお言葉が。
いやー、実は、俺が書くことに耐えられなかっただけで、携帯ではセックスの話が
もっとはっきり出てたんですわ。正直それで楽勝でヌけるくらい。イヤ抜きませんよ!
まあ、むしろ気にせずアプローチをしてみようというのが今のとこ最有力案。
むしろ、こんなきっかけがなけりゃ動けなかったかもしれないと思うと、
オーナーに感謝←それはムリ。あんな子にそんな濃いセックスを教えちゃイカン!クソ中年!
馴合いだ!と怒られそうなので、ここから完全にROMに戻りますが、お言葉をいただいた方には大いなる感謝を。
471(4): 2007/08/24(金) 01:49:58 ID:QR0Er0X6(1)調 AAS
この寝取られブログ知ってる?
外部リンク[html]:toran.livedoor.biz
事実は小説よりも興奮するなり
ちんこギンギンになりながら読んでました
472: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 01:57:23 ID:qrBHBrZ6(2/16)調 AAS
>>446の続き
登場人物おさらい
主要登場人物
・安室怜……吉良に思いを寄せながらも、唯に汚されてしまった娘。
白城大学一年生。
・吉良大和……怜のバイト先の先輩であり、白城大学の二年生。
怜とは両思いだったが、告白するより前に、怜を唯に犯されてしまった。
・日色唯……白城大学の二年生で、吉良と同じ学部。
怜とは、ブログで知り合った。前章で彼女の貞操を奪う。
脇役
・飛鳥慎……吉良の友人。
・海本……吉良の友人。
・嘉狩明日葉……怜の友人。
・村雨四乃……怜の友人。
↑
はっきり言って名前までいちいち覚える必要の無い人達。
あぁ、何か多分主要人物の誰かの友達なんだろうなー
ぐらいの認識でも全然読めると思う。
473: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 01:58:45 ID:qrBHBrZ6(3/16)調 AAS
人は、何かを卒業する度に、新しい何かに向かって進んで行く。
精神論や人生訓を語ろうと言うわけではない。
単純な、進学や入学の事を言っているのだ。
小学校、中学校、高校、大学。
半数以上の子どもは大学に進学するし、仮に大学には進まなくとも
九割以上の者は、最低限高校くらいは卒業するものだ。
勿論そうでない者も世間にはいるが、日本では少数派だ。
そして、これら教育と学問の過程の中で、
もっとも進学の際に緊張やストレスを伴うのは、中学校だと言われている。
先輩後輩という関係性は、小学校までには殆ど無かった概念だ。
全生徒に共通して着用を義務付けられる、制服というものも、
私学小学校の卒業でない限りは、まぁ初めてのものだ。
成績というものを小学校までより遥かに意識させられるし、
中学校の部活動の質と重さは、小学校のクラブ活動とは比較にならない。
様々な要因が絡み合って、結果、小学校では問題無く過ごしていた子も
中学にあがった途端に適応出来なくなり、過大なストレスを抱える者も出てくる。
結果、その者は不登校児童となり、多くの場合、白い目で見られる事になる。
高校は、まだ良い。
高校は、中学校時代にその問題をクリア出来た者が進む道なのだから。
しかし、中学校で不登校児童となってしまった者は、どうするのだろうか?
夜間高校に通う、通信制高校に進む、或いは進学自体しない……
いろんな選択肢がある。
その選択肢の中には『中学では順応出来なかったけれど、
それでもとりあえず一般的な高校には進学しておく』というものも、含まれる。
それまでと異なる環境、異なる人間達の中にいる事で、
自分を見下す同窓生達の目から逃れ、再スタートしようと試みるという事だ。
それが実を結び、遅めの順応を見せる生徒もいる。
逆に、まるで効果をあげる事が出来ず、高校でも不登校になってしまう者もいる。
そして、私……安室怜は、そのどちらでも無かった。
474: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 01:59:31 ID:qrBHBrZ6(4/16)調 AAS
自分で言うのも何だけど、元々頭は良かった。
中学の頃は、たまにしか……中間試験や期末試験の時期にしか、登校しなかった。
勉強は、家で一人でしていた。それでも試験の点数は高かった。
けれど、たまに教室に現れた私を、誰もが奇異な目で見た。
こんな子、クラスにいたっけ?
転校生じゃないの?
誰もがそんな、珍しい生き物を見るような目で見てくる。
やがて、毎日の出席確認の際に、名を呼ばれるだけで返事をしない、空席の主なのだと判明する。
「あぁ、アレが安室さんか」
「私初めて見たかも」
ひそひそと話しているつもりかもしれないが、
試験直前の静まり返った教室では、嫌でも耳に届いてくる。
正義感の強い担任が、突然怒り出す。
「お前達、陰口はやめるんだ!
せっかく安室が、勇気を出して来てくれたんだぞ?
もっと温かく、自然に迎えてやれないのか?」
あぁ、偽善甚だしい。
何が『勇気を出して来た』って?
ただ単に、試験だけは受けないとまずいから、来ただけだと言うのに。
普段登校しないのは、勇気が無いからではなく、成績や上下関係や
その他諸々の事をとやかく言われるのが、煩わしいからだというだけなのに。
何が『自然に迎えてやれ』だって?
先生、あなたにとって私は、教室に迎え入れる存在なのですか?
私は、客人か部外者ですか?
あなたが一番、私をこのクラスの人間だと思っていないじゃないですか。
やがて、私のプライドはズタズタになっていった。
475: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:00:13 ID:qrBHBrZ6(5/16)調 AAS
こうして私は、抜け殻のように空っぽな中学時代を過ごした。
出席日数は少なかったけど、成績は学年でもトップクラスだった。
内申点は低かったが、それでも進学は何とかなるものだ。
私は学区外の、そこそこの偏差値の高校に入学した。
私の地力から言えば、その高校の授業のレベルは、話にならなかった。
普通に家で予習復習や自主学習をしていれば、勝手に成績トップになれた。
中学の頃に比べれば、上下関係も然程気にならなかった。
中学の頃は部活動に所属するのが当たり前のようなものだったから、
自然と先輩後輩の関係が幅をきかせており、鬱陶しい事この上無かった。
けれど高校では、半数近くが部活動無所属だ。
所属している人間は可哀想だけれど、無所属の人間に先輩も後輩も無い。
そもそも、違う学年の人間と関わる事すら無いのだから。
私は、中学の時程不快な気持ちには、ならずに済んだ。
大人しく通学し、大人しく授業に出席し、大人しく成績トップを維持した。
目立つような真似さえせず、休み時間も黙って本を読んでいれば、
中学の頃とは違って、特別変な目で見られる事も無かった。
ただ、いつも心の中に、靄のようなものがあった。
友人がいないという寂しさ? それもあるだろう。
けれど、もっと根源的なもの。
人間を人間として保全するための、重要なファクター。
いわゆる『自尊心』『プライド』というものが、私には欠けていた。
私は、良い成績をとる事以外には、ただ無為に過ごしていただけだった。
中学の時に味わった、ヒキコモリを見下し侮蔑する、あの視線。
無意識に特別扱い、例外扱いされる、あの疎外感。
いや、特別扱いだとか、例外扱いだとか、そんな生易しいものではない。
病原菌保有者か、良くてせいぜい蚊を見るような、あの生々しい侮蔑の目。
誰もが私を、そこらへんを飛んでいる羽虫のように見ていた。
もはや『見ている』という言葉すら適さないかもしれない。
視界の端に、わずかに留めている、と言った方が適切だろうか。
それも当人達にとって、意識的に視界に留めているわけではない。
飛び回る蚊が、時折たまたま、視界を掠める。その程度。
中学の時に崩壊し、ボロボロにされた私のプライドは、何ら修繕されていなかった。
私を認めてくれる友人を得る事も出来ず、
成績を教師に褒められるという事も無かった。
むしろ、その高校の偏差値にしては妙に高い私の学力を、
教師達は気味悪がってさえいたかもしれない。
そうして、あぁあの子はそう言えば、中学時代はヒキコモリだったんだっけね、
だから内申点は低くて、この高校にしか進学出来なかったんだっけ、
そうそう、出身中学の学年主任からそう伝えられていたっけ、と思い出すのだ。
中学では常に自分の周りに壁を感じて過ごしていたが、
それを言うなら、高校では常に、自分が試験管の中にいるような気分で過ごしていた。
私はいつしか、試験管の中にいても自分以外の人間と繋がり合える世界……
ネットの世界に、度々訪れるようになっていた。
476: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:01:02 ID:qrBHBrZ6(6/16)調 AAS
「そんな時だったわ……あいつと知り合ったのは」
私は吉良君の腕の中で、かつて私の『お兄ちゃん』だった人……
日色唯との、馴れ初めを語っていた。
「へぇ、怜ちゃんが元登校拒否児ね」
「意外だった?」
「いいや、むしろ第一印象そのままだった」
「……正直ね、吉良君」
あれから……私が吉良君と初めて交わってから、二週間が経過していた。
いつしか私は、彼の事を『吉良先輩』ではなく『吉良君』と呼ぶようになっていた。
敬語も、使わなくなっていた。
セックスした回数は、もう覚えていられない程多かった。
付き合い始めてまだたった二週間だけれど、
一日に何度も交わっていたから、回数など事細かに数えていられなかった。
「あいつと知り合ったのは、ブログだったわ……いつか言ったと思うけど」
「あぁ、聞いた覚えがあるね」
私の声も、吉良君の声も、室内に響いていた。
バスルームというものは、やはり声が反響するものなのだなと、改めて思う。
吉良君は浴槽にもたれかかっており、その吉良君に、更に私がもたれかかっている。
勃起した彼のモノが私の尾てい骨のあたりに触れる。
たくましい両腕が、私の体を抱えるようにしながら、
その大きな掌は執拗に私の貧相な乳房を揉み続ける。
「止そう、あいつの話は。どう? まだ気持ち悪い?」
「うん……まだ、少しだけ」
唯に犯された時のトラウマから立ち直れない私を、
吉良君は救い出そうとしてくれていた。
あれから二週間、私も吉良君も、全く大学に行っていない。
一日中裸で抱き合うか、セックスをするか、バイトに行くか、後は食事と睡眠くらいだ。
大学には行きたくなかったし、行けなかった。
行けば、唯がいる。
私とは学年が違うから、遭遇する確率はあまり高くないけれど、零ではない。
ましてや吉良君と唯は同じ学部の同じ学年だから、度々講義で会う。
吉良君が唯を殴り飛ばしたという話は、事後に聞き及んだ。
偶然なりとも二人が再会すれば、今度はどうなるかわからない。
私も吉良君も、唯の顔さえ見たくない、ただそれだけのために、
私の下宿に引き篭もっていた。
477: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:01:53 ID:qrBHBrZ6(7/16)調 AAS
吉良君は私を抱えるようにして、浴槽から立ち上がった。
「あいつに汚された部分、全部俺が綺麗にしてあげるよ」
彼はボディソープを手にとると、両手でそれを擦り合わせた。
見る見る内に泡立ち、滑らかになる。
彼はその滑らかな指先で、私の乳房を覆い隠した。
子どもの額を撫でてやるかのように、優しく胸を触り続ける。
やがて人差し指を立て、爪先でコリコリと乳首を掻きだした。
母乳の出る小さな穴の入り口に、彼の繊細な爪が引っかかる感触が、たまらない。
彼はその後、何分もかけて、念入りに私の胸を洗ってくれた。
この二週間の間で、彼にはもう何度も体を洗ってもらっていたけれど、
この体が唯に汚された事が余程悔しいのか、彼はどれほど洗っても足りないようだった。
「ねぇ、怜ちゃん」
「なに……?」
「あいつに、どんな事されたの?」
突然の言葉に、私は少し体を強張らせた。
「……思い出したくない」
「答えてよ。胸は勿論触られた? よね?
アソコも弄ばれたんだろうね、当然。中には出されたの?
それとも、ちゃんと外に出してもらえた?」
「いやっ。思い出させないでってば」
けれど、吉良君はそんな答えでは納得しないようだった。
突然唇を被せてきて、私の言葉を遮らせる。
貪るように舌を伸ばし、わざとらしい程唾液を流し込んでくる。
「この口は? どうなの? フェラとかさせられたの?」
「そっ……そんなの、さすがにされなかったけど……」
「そう。この喉の奥には、まだあいつの汚らしい精液は、流し込まれてないんだね」
そう言って彼は、座るよう私に促してきた。
彼が何を求めているのか、私には理解出来た。
大人しく膝立ちで座りこみ、ちょうど目の前に彼のモノがくる高さにする。
「まだあいつに汚されてないのなら、幸いだよ。
怜ちゃんのまだ綺麗なトコロ、全部俺が汚していってあげる。
強姦魔に負け越したままじゃ、悔しいからさ」
478: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:02:35 ID:qrBHBrZ6(8/16)調 AAS
もう見慣れたけれど、やはりこの男性器という代物は、気持ち悪い形をしている。
それを言うなら女性器も大差無いけれど、両者には決定的違いがある。
女性器……膣と子宮と卵巣は、男を受け入れ、子を産むための器だ。
それに引き換え男性器は、ただ貫き、蠢き、精液を迸らせる、凶器だ。
両者が揃わなければ子をなす事は出来ないのだから、
その意味では両者の間に貴賎は無い筈なのだけれど。
どうしても私には、男性器を肯定的に見る事が出来なかった。
それは、嫌々ながら処女膜を貫通され、蹂躙された記憶が引き起こす、心の傷だった。
そしてまだ、傷は癒えていない。
癒えていないにも関わらず、さもそれを可愛がるかのように演技しながら、
私は私の彼氏の男性器を、自らの口にふくむ。
舌の表と裏を使い分けながら、亀頭を入念に舐めまわす。
尿道を蛇のようにつつき、刺激し、先走り汁を味わう。
それは決して美味には感じなかったけれど、こうしてあげると男性は喜ぶらしかった。
唯が私の秘所を舐めた時は、どんな味だったんだろう?
一度吉良君がセックスの時に、私の蜜で濡れた自分の指先を、
私の口の中に滑らせてきた時があったけれど、その時は特に味を感じなかった。
こんなものを、何で男は有難がって吸いたがるんだろう。
「やけに乗り気だね、怜ちゃん。もう少し嫌がるかと思ってたんだけど」
私は、ちゅぽんと音を立てて彼のモノから口を離し、答えた。
「……本当だったらこんなの、唇で触れるだけでもゴメンだわ。
吉良君のだから、我慢して咥えてあげてるのよ」
「そっか」
吉良君は泡をまとった掌で、私の頭を撫でてきた。
我慢という言葉は、あまり彼のお気には召さなかった筈だった。
当然だろう、我慢してセックスしてあげてると言われて、喜ぶ男はいない。
私のセックスは、これまでずっと我慢ばかりだった。
最初の、唯に犯された時から今まで、ずっと。
吉良君との交わりも全て、本当は我慢しての事だった。
まだ傷は癒えていないのだから、抵抗が残っていて当然だ。
けれど、そんな素振りは極力見せない。見せれば、吉良君が悲しむ。
「……っ! そろそろ、もう……っ」
そう言って吉良君は私の首を両手で固定すると、動けない私の口の中に
思い切り精液をぶちまけてきた。
我慢して飲み込んであげれば、私が喜んでいると思ったのか、彼は満足してくれた。
479: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:03:34 ID:qrBHBrZ6(9/16)調 AAS
「それじゃ……俺今日は、そろそろバイトだから」
まだ幾分まどろんでいる私にそう言って、吉良君はベッドから立ち上がった。
バスルームでのフェラチオの後、部屋に戻ってから何回ヤったかわからない。
半分意識が飛んでいる時もあったので、数はもう数えられたものではない。
「終わったらすぐ帰ってくるから。待っててね」
手を振る私に笑顔で返し、吉良君は玄関から外に出て行った。
私は、一人になった。
「……暇だなぁ」
誰にともなく、私は呟く。
ちょっと前までは、一人で暇な時は、唯とメールするか、唯のブログを覗くかだった。
しかし今では、唯と連絡をとりあうなど、考えられない。
彼がブログにどんな事を書いてるのか、知るのが怖いから、
携帯電話をネットに接続する事さえ出来ない。
全然関係の無いサイトやページを閲覧していても、どうしても
あいつのブログが気になってしまうであろう事が、自分でもわかるから。
しょうがないので、暇潰しにテレビゲームでもしようと思い立った。
実家から持ってきたハードの電源をいれ、テレビのスイッチをつけ、
画面にうつるソフトメーカーのロゴを何とはなしに眺める。
そう言えば、何のソフトが入ってたっけ?
漠然と考えていると、次に画面に映ったのは、対戦格闘ゲームのタイトルだった。
「……馬鹿馬鹿しい」
それは、唯が私に貸してくれたものだった。
近年格闘ゲームの中では主流になりつつあるらしい、
キャラクターの設定やドラマを前面に押し出したタイプだ。
生粋の格闘ゲーマーには、キャラゲーと呼ばれて嫌われる向きもあるとは、唯の弁。
けれど私は、このゲームに登場するキャラクター達の
性格設定や相関関係などに、魅力を感じていた。
唯曰く、私のような女は一部では『腐女子』と呼ばれるらしい。
このソフトが私のハードの中に入っているのは、
しばらく以前に、キャラを気に入った私が、無理を言って借りたからだ。
結局操作が複雑過ぎて、一時間で根を上げたけど。
「これ……返さなきゃなぁ」
思い返してみれば、私は唯から借りたままのものが、結構あった。
ヒモ理論だか何だかの、物理学の解説書。
一昔前の野球アニメのテーマソングのシングルCD。
これらを唯に返さなければならないと考えると、気分が鬱になった。
「今更……会えるわけ、ないじゃん……」
480: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:04:31 ID:qrBHBrZ6(10/16)調 AAS
悔しい。
いつの間にか、気がつくといつも、あいつの事ばかり考えている。
心から好きな吉良君よりも、心の底から嫌悪している唯の事ばかりを。
あいつの事が、脳の中にこびりついて離れない。
まるで頭蓋骨にドリルで穴をあけられて、脳の皺の隙間に
直接精液を流し込まれたかのようだ。
あいつを思い出すと気持ち悪くて仕方ないのに、思い出さずにはいられない。
生活のあらゆるところに、あいつの影があった。
気晴らしに外に出かけてもみたけれど、無駄だった。
あぁ、ここあいつと一緒に歩いたなぁ、とか。
あぁ、あいつここで靴の紐直してたなぁ、とか。
あぁ、あいつここで私を放置して何十分も漫画雑誌立ち読みしてたなぁ、とか。
どこに行っても、どこに行っても、常にあいつがいる。
姿は無いけれど、姿が見える。私の、すぐ目の前か、或いは右隣に。
こんな精神状態で、大学など行けるわけが無かった。
行けば必ず、あいつに会ってしまう。
仮に会わなかったとしても、いつどこで鉢合わせるか、
ビクビクしながら過ごす羽目になる。
あいつが存在しなければ、私は心に傷を抱えながらも、通学は出来るのに。
あいつが存在しなければ、私は今でも大学で友人達と笑っていられたのに。
あいつが存在しなければ、私は大事な貞操を、好きな人に捧げる事が出来たのに。
我知らず、涙が後から後から零れてくる。
失ったものが大き過ぎて、体の中から溢れてくる。
あの日、あいつを部屋に入れなければ良かった。
いやそもそも、あの日、あいつを呼ばなければ良かった。
何故私は、あいつを自ら呼び求めたりしたんだろう。愚か過ぎて言葉も無い。
「うぅ……くっ……」
声を殺して下唇を噛む。
この呪縛から、解放されたい。苦しみを解き放ちたい。
ふと気がつくと、私は洗面台にいた。
泣きはらした顔が、鏡の向こうから私を見つめてくる。
私が涙を拭うと、鏡の中の私も、涙を拭った。
私が剃刀を右手に持つと、鏡の中の私は、左手に同じものを構えていた。
481: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:05:21 ID:qrBHBrZ6(11/16)調 AAS
手の甲に刃を突き立て、すぅっと引く。
綺麗にパックリと避けて、中から血が染み出してきた。
痛む皮膚に慌ててティッシュを被せるけれど、そんなものでは止まらなかった。
「思ったより痛くないけど、思ったより出血するのね……」
痛覚が思考回路を麻痺させているのか、私は思いのほか冷静だった。
いや、或いは、逆に完璧に錯乱していたのかもしれない。
水で洗って消毒するという、当たり前の処置を忘れて、呆然と傷口に見入ってしまったからだ。
そして不思議と、傷口を見ると心が安定していく気がした。
血液に混じって、心の中の毒素が排出されているような感じになった。
私は、狂っているのかもしれない。
こんな事を、気持ち良いと思ってしまった。
止血もせずぼーっと過ごしていると、玄関のドアノブを回す音が聞こえた。
「ただいま。晩御飯の材料買ってき……」
そこまで言いかけたのに、吉良君は手に持っていたビニール袋を落として
慌てて私に駆け寄り、ありったけのティッシュと、持っていたハンカチで
私の手の甲を押さえてきた。
殆ど意識を保っていなかったので気付かなかったけれど、
彼がバイトに出かけてから、いつの間にか五時間は経過していた。
「何やってるんだよ、怜ちゃん!」
「だって……なんか、こうしたかったんだもん……」
本気で心配してくれる吉良君の、真剣な眼差しに、私はまた涙を流してしまった。
あぁ、愚かだ、私は。
こんなに私を大事に思ってくれる人がいるのに、
何故自傷などという、情けない事をしてしまったのだろう。
こんな私を見て、唯なら何と言うだろう。
「……もう限界だ。明日、あいつを学校から追い出そう」
唐突なその言葉に、私は疑問符を投げかける事さえ忘れていた。
「あいつ一人がいるせいで、俺達二人が……いや、怜ちゃんが、
こんな思いをしなけりゃいけないなんて、間違ってるよ。
犯罪者は追放するのが当然だ」
その時沁みるように感じたのは、消毒薬を塗布された傷口だったか、
それとも私自身の心だったか。
482: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:06:05 ID:qrBHBrZ6(12/16)調 AAS
翌朝。
私と吉良君は、久しぶりに大学の門をくぐった。
一限目が終わって、休み時間になったばかりの頃だった。
次の二限目、吉良君と唯は、近代美術史の講義を受ける予定の時間だった。
吉良君は私に、柱の影で待つように言うと、指定の教室の中に入って行った。
程なくして退室してきた辺りを見ると、まだ中に唯はいなかったようだ。
「このドアの前で待つ。怜ちゃんは、あいつから見えない所に隠れてて」
「うん……でも、どうするの? 喧嘩……するの?」
「そんな事しないさ。下手に教務課にでもかぎつけられて、
俺まで停学処分にされちゃ、たまらないからね」
平和的に解決するから、と彼は微笑んだけれど、
どういう意味での平和的解決かは、聞くまでもないようだった。
やがて、教室の近くの階段の方から、複数の笑い声が登ってきた。
私にはすぐに、その声の主がわかってしまった。
気持ちの悪い事だけれど、あいつの声はもう私の中に刷り込まれてしまっている。
「……から、中身がわからないって事が問題なんだよ」
「そうまでして金払う意味がわかんねーってば」
何の話をしているのかわからないが、唯は、唯の友人達を連れて
賑やかに階段を上ってきた。
美術史の教室の反対側にある空き教室の、ドアの窓ガラスの部分から、慎重に覗き込む。
唯の首元には、相変わらず私とペアで買った、チョーカーがぶら下がっていた。
吉良君が、唯に詰め寄っていくのが見える。
「日色、少し話しがある」
「おいおい、苗字は気に入ってないから、唯って呼んでくれってこの前言っ……」
「御託はいらない」
有無を言わせないその迫力に、唯よりも先に、私が怖気づいた。
むしろ唯は怖気づくどころか、飄々と受け流しているように見える。
「怜の話か?」
「お前が馴れ馴れしくあの子の名前を口にするな、レイプ犯のくせに」
「……おい、唯? レイプって一体……」
吉良君が露骨に口にしたその言葉に、唯の周りにいた者達が反応する。
「レ、イ、プ、ねぇ……。
人聞きの悪い単語を往来で堂々と口にすんなよ。皆ヒくぜ?」
「だったら、お前が往来に来なければ良い。
今すぐ帰れ。二度と大学に来るな」
「はぁ? お前何様よ。そんなに俺の事が嫌いなら、
お前が大学に来なけりゃ良いだけの話じゃん」
その瞬間、吉良君が唯の胸倉を掴む。
唯の友人達が静かにザワつくのが、ドア越しの気配でも察知出来た。
その内の一人が、よく事情はわからないまま、とりあえず吉良君の手を
唯から離させようとするが、そんな事で吉良君が手をゆるめるわけはなかった。
「よくもぬけぬけと……怜ちゃんは、お前に追い詰められたせいで、
昨日はとうとう自分の手を切りまでしたのに……っ」
「……自傷って事か? ……なるほど、ね。
ま、あいつはいつか、そういう事しそうだと思ってたよ」
唯は自分の友人達に、大丈夫だから先に教室に入っているように言った。
そうして吉良君を連れて、人気の無い非常階段の方に向かった。
483: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:06:54 ID:qrBHBrZ6(13/16)調 AAS
非常階段は、幸い私が隠れている教室のすぐ傍にあった。
非常階段と言っても、ドアはガラス張りで丸見えだし、
それに唯も吉良君もドアを閉めようとしなかったから、傍の私には声も筒抜けだった。
「こないだはいきなり殴りかかってきたかと思えば、
今度は性犯罪者呼ばわりするわ、自主退学しろっつってくるわ。
お前に何の権限があんの?」
「勘違いするな、変態。平和的に解決してあげようって言ってるんだ。
これ以上ゴネるようなら、法に訴えてやっても良いんだ」
「おいおい、強姦罪は親告罪だぜ?
第三者のお前が何言ったって、事は進まねぇよ。
第一お前、裁判の事ロクに知らないだろ。訴状の提出の仕方知ってんの?
金どんだけかかると思ってんの? それに、法廷であの子に証言させるわけ?
セカンドレイプって言葉、知ってる?
法廷での質問攻めに、あいつが耐えられんの?
第一、どう証言するわけ? 俺を部屋に呼んだのは、あいつの方だぜ。
自分から男誘っといて、ヤられたら訴えるなんて、法的には通るだろうけど
世間的にはムシの良い話……」
「黙れっ!!」
それまでは二人とも、廊下にいる者達には聞こえない程度の声で話していたけれど
吉良君の怒号だけは、離れた位置で談笑していた無関係の人達の耳にまで、届いた。
「お前一人がここにいるだけで、俺も彼女も大学に来れないんだ。
俺は兎も角、被害者であるあの子が我慢しなけりゃならない道理は、どこにも無い。
本当ならお前は殺されても文句が言えない立場なのに、
退学程度で済ませてやろうと言ってるんだ」
「……なら、殺せよ」
「何?」
「殺したいんだろ? 殺せば良いさ。あの子がそれを望んでるのか?」
484: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:07:41 ID:qrBHBrZ6(14/16)調 AAS
その物言いが、殊更に吉良君を逆上させたようだった。
やはり平和的解決は難しいらしい。吉良君は、本能的に唯に飛び掛った。
「止めて、吉良君!」
思わず割り込みに入った私の、止めようとする声も手も無視して、
吉良君は唯の顔を何発も殴った。
唯のかけていた色眼鏡は非常階段の上を転げ落ちていき、鉄柵の隙間から下に落下した。
首にかかっていたチョーカーは無理矢理引きちぎられ、傍の叢に放り投げられる。
「がっ! ごふっ! げふっ、お……っ!」
馬乗り状態の吉良君の拳を、唯には避ける事は出来なかった。
非力な私には、彼の腕を掴んで止める事も出来なかった。
それを止めたのは、先程教室に入っていった筈の唯の友人達と、
偶然その場に居合わせたらしい、海本君と四乃ちゃんだった。
「止めろ吉良!」
「何があったんですか、吉良先輩!」
海本君が吉良君を唯から引き剥がすと、唯の友人達が、倒れた唯に駆け寄った。
「大丈夫か、唯」
唯を心配するその言葉すら、吉良君に火をつける結果となった。
「何でそんな奴の心配をするんだよ!
怜ちゃんは、誰にも何も打ち明けられなかったばかりに、
誰にも心配してもらえなかったのに!」
確かに、唯に犯されてから最初の数日間、私は一人で悩み続けた。
何も知らなかったとは言え、私をほんの数日でも
一人で苦悩させてしまった負い目が、吉良君にはあるのかもしれなかった。
事情を知らない海本君達が、問うような目で私を見てくる。
けれど、私には答えられなかった。
余りある屈辱と恥辱を味わったあの体験を、どうして口に出来ようか。
あぁ、なるほど、これが唯の言った、セカンドレイプというものか。
確かに私には、法廷で証言する事など、出来そうも無かった。
もっとも、訴えようという気さえ、無かったけれど。
485: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:08:22 ID:qrBHBrZ6(15/16)調 AAS
のろのろと立ち上がった唯の顔面は、左頬が赤く腫れ、唇が切れていた。
ぺっと唾を吐くと、それには赤黒いものが混じっていた。
「……俺が消えれば、怜も吉良も納得するんだな?」
「とっとと失せろ、犯罪者」
吉良君は、寒気がする程の即答を返した。
唯は服についた埃を払うと、叢を一瞥した。
投げ捨てられたチョーカーを気にしたみたいだった。
けれど、それを拾いに行く事はしなかった。
「じゃ、俺帰るわ」
唯は友人達にそう言うと、フラフラとおぼつかない足取りで歩き出した。
眼鏡が無いから、足元が不確かなのかもしれない。
これが唯と顔を合わせる最後になるかもしれないと思うと、
滑稽だけれど私は急に、彼に借りたまま返していない本やCDの事を思い出した。
「……ねぇ、借りっぱなしのゲームとか本とか……」
「いらねぇよ。
そんなモン返すために、わざわざまた俺に会いたかねぇだろ。
……じゃぁな」
事情を知らない四乃ちゃんが、兎に角これでは駄目だと思ったのか、
立ち去ろうとする唯を呼び止める。
殴り合いでも、ましてや一方的なリンチでもなく、
話し合って結論を出すべきだと判断したのだろう。
けれど、四乃ちゃんの手が肩に届く前に、唯は歩調を速めて、その手を避けた。
「俺に触らない方が良いぜ、吉良のお友達さん。汚れたくないだろ?」
それは、血と汗と泥にまみれた彼の体に触れて、手が汚れてしまう事を差したのか。
或いは、私を汚した強姦魔として、自分を嘲ってそう言ったのか。
帰りに新しい眼鏡買わなきゃなぁ……と独り言を呟きながら、唯は去って行った。
以降二度と、彼は大学に現れなかった。
安心して通学出来る日々が、久しぶりに私と吉良君の元に帰ってきた。
486: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:09:03 ID:qrBHBrZ6(16/16)調 AAS
第三話終了
487: 2007/08/24(金) 02:15:34 ID:1MXFtApU(2/2)調 AAS
>>466
うわーきっつー…
俺もバイト先のオーナーがむかつくオッサンだから気持ちわかるわ
せめて俺もお前の幸せを祈らせてもらおう
>>468
同志がいたようだ正直、この大量投下、全部読んだら心臓が破裂するわ
488: 2007/08/24(金) 09:14:31 ID:CsqYhUh0(1)調 AAS
>>471
ちょっと見たけど男視点だけは駄目だな
あと、堕ちる経過が見たいわけで結果だけなのはそんなに魅力無い
489: 2007/08/25(土) 00:45:42 ID:9NjWQoh2(1)調 AAS
>>448
その後妊娠した挙句捨てられ主人公のところに戻ろうとするが主人公にはすでに可愛い恋人がいたという展開で脳内補完した
>>470
お前それで気にせずアプローチできるって純粋に尊敬するわ。
俺だったら間違いなくバイトやめる
それだけにうまくいってほしいが…どうだろうなぁ
490: 2007/08/25(土) 08:13:45 ID:QYxKTK/E(1/2)調 AAS
>>471
面白い話だったが寝取られというより修羅場風味だな。
逆転裁判のような話だわ。
でも面白かった。
こんな糞な女がいたら俺勝てる自信ないわ。
つーか人間じゃねぇよこの女、恐ろしすぎる。
491: 2007/08/25(土) 08:52:41 ID:QYxKTK/E(2/2)調 AAS
というか何気ない>>466の話が心に響いたわ。
夏休み明けに非処女になりました!みたいな雰囲気が出てる同級生みたいな。
492: 2007/08/25(土) 15:37:46 ID:YlGM49+v(1)調 AAS
>>471
かなり面白かったけど、性的に興奮はしなかったな
493(2): NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:15:03 ID:oKL6Geec(1/9)調 AAS
すみません、パソがいきなりクラッシュしました。
しょうがないから買い替えてきましたー。
で、かなり書いてたの全部パァ…。
泣かないもんね、泣いてなんかやらないからね、俺が泣くのは女に振られたときだけだ。
いや、言ってみただけです、すみません。
>>471
なんて言うか、すごく悲しい話だと思いました。
このK子さん、酷い書かれかたをされてますが、きっと旦那さんはわざとそう書いたんでしょうね。
K子さん、まるで頭のおかしい人みたいに書かれてますが、きっと本来は全く別の人なんでしょうね、
書かれた内容から察するに、正義感があって、多少は過剰演出な人、みたいな。
それゆえに、まるで洗脳に掛かっているみたいに読めてしまいます。
でないと、旦那さんがあれほど好きだったと書くはずがないです。
K子さんはきっと、辛かったんでしょう、壊してしまった事とか壊してしまったのが自分である事が。
自分のせいだって思うと、耐える事が出来なかった、だから旦那さんのせいにするしかなかったんでしょうね。
きっと壊してしまった結婚の日々は、K子さんにとって、大切なものだった時期があったんでしょうね。
だからその価値は認めたくなかったんだろうし、悪いのは旦那さんでなくてはならなかったんでしょうね。
旦那さんも、そこらは薄々は感じていて、それでも守らなくちゃいけないものの為に、K子さんを憎まなきゃやってられなくって。
それも辛かったんでしょう。
ページの隙間に、「それでもK子はただ、ぼくといるだけで幸せそうな顔をして楽しそうに振舞ってた過去もあったんだ」なんて文章が見えそうなのは読みすぎでしょうか?
494: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:28:11 ID:oKL6Geec(2/9)調 AAS
正義感があって、多少は過剰演出な人、みたいな。
↑元々、と言うか昔は、って意味です、あのブログの時点ではもうどうしようもなく・・・。
>>466
お願いだから、
死にたいほどつらいのに、殺したいほど憎いのに、
気になってしょうがないのに気にならないとか、
アプローチの掛け方なんて、そんなの方法なんて殆どないのに、平気だなんて、
そんな見るに耐えない事を書いちゃだめだよ。
はっきり言って、10回くらい泣かされてしまった。(今も泣いてしまってるぞ)
もちろん、あなたの気持ちが全部わかるなんて思ってない。
思ってないけど、そういうのがどれほど辛いかってのは知ってるつもりでいる。
やるせない気持ち。
もっていく場所も心の中に置き場所すらない気持ち、どうしようも無いなんて嫌すぎるよな。
でも俺くらいは応援しててもいいだろ?
昔の俺の事なんて、もう応援のしようもないからサ。
って事で待っててくれた人がいたのかどうかすら分かりませんが、投下いきまっす。
495: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:30:44 ID:oKL6Geec(3/9)調 AAS
その夜、俺は一睡も出来なかった――。
責任を取るからもういいだろう。
一瞬、頭をよぎった考え。情けない、救われたがる俺自身に反吐が出る。
俺は救われる立場じゃない、救わなければならない立場。
責任を取るってどういう意味。
下衆のような男達に、乱暴されてしまった彼女の心の傷は、たとえ記憶に無かろうと有ろうと、
決して消えたりはしない。きっと、それは永遠に彼女の心に残り続ける傷。
右耳が音を捉える事はなくなった。映画館ホームシアター、臨場感溢れる音とか、もうそんなの関係ない世界。
電話を取る時も、必ず左耳で取らなければならない。人ごみで知り合いに声を掛けられた時、声の主を探すのは大変だろう。
そんな世界の住人にしてしまった。
もう決して取り返せない事にどうやって本当の責任なんて取れるのだろう?
時間を撒き戻せない限りはそんなの不可能だ。
『責任を取る』リリックじゃあるまいし、そんなのただの方便だ。責任を全うする方法なんてそもそも一つ、
予想出来る範囲で悪い事態を最大限に避ける事。
俺はそれが出来なかった。出来なかったからこうなった。
だから、俺がしなければならないのは、責任を取る事じゃなく、罪を背負う事じゃないか――。
そうして、めぐを想う。
本当は吹っ切れてなんていなかった。未練がいっぱい残っていた。
また会えて嬉しかった。楽しかった。彼女は変わっていた。上手に過去を整理出来たのだろうか。俺が望んだ風に変わっていてくれていた。
そう思っていたのはただの希望的観測で――。
もう俺からはきっと遠くの存在になってしまっていたのだろうか……。
期待していた、はっきり期待はあった。
今度こそ、って思っていたのは紛れも無い本心だったように思う。
でも、もう、でももう限界だ、無理だ――。
これで三度目、三回目のトラブル。どんどん酷くなる、今回は人を巻き込んだ。俺の弱さが他人を傷つけた。
しゅうちゃんに一生背負わなければならない傷を負わせた。立ち直った今のめぐにとっては、きっと大切な人だろう、
かけがえの無い人だろう。そのしゅうちゃんに取り返しの付かない事をした。
だから、もう俺は諦めよう、捨ててしまおう。きっともう――方法なんて残っていないから。
そうして翌朝、いつもの様に病院に通う。
496: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:31:49 ID:oKL6Geec(4/9)調 AAS
病院のベッドの上、しゅうちゃんは昼寝をしていた。
別に自堕落なわけじゃなく、体を癒すために、体が求める睡眠なのだろう。
そっとベッドの脇の小さな丸い座面のパイプ椅子を引き寄せて、腰を据える。
すーすーと、安らかな寝息を立てているしゅうちゃんに心が痛む。
寝顔を見つめて思う。
本当はどうしていいか、分からなかった。
責められもせず、叩かれもせず、詰られもせず、ただ彼女の傍にいるだけ。
そうして視線を落とす。
あまり寝顔を見るのも失礼だろうし…、持参した参考書を広げながら、それでも集中できず、窓の外を見ていた――。
そんな数日、一週間も経たないくらい、過ごした日々。
夜、一人の部屋で携帯が鳴った。
めぐからだった。そういえばその日はしゅうちゃんの見舞いに来てなかったようだった。
それでだろうか?
でも違っていて、その内容はあまりに、あまりに俺にはどうしようもなさ過ぎて。
流す涙すらも出てこなくなる言葉。
「どうしたの?」時計に目をやる、午後8時すぎ、寝るには早い、出かけるには少し遅い。話がしたかったのだろうか、でも俺は今は誰とも話したくない。
だって、もう、俺は、俺は、『責任を取ってもらう』『わかった』そう、これが今の俺の立場。
めぐにはもう、もう……。
忸怩たる思いで会話を続けようとする。
でも、その話はあまりに俺の想像の範疇を超えすぎていて、正直、細かい会話なんて忘れてしまった。
「あたしいま、ホテルにいるの」
固まった。俺は固まった。感情も、心も、頭も、体も、いや、心臓の鼓動すら止まったかのような気がした。
言葉の継げない俺に、めぐは確か、こんな事を聞いてきたように思う。
しゅうちゃんの事、しゅうちゃんの今後の事、俺の事、俺の今後の事。
生活の事、進学の事、通学の事、あとは似たような事――。
いま、そんな話をしている場合だろうか。頭の整理がどうにもつかない俺に、めぐは
「ああ、いま、あの人、シャワー浴びてるから」
電話を切りたくなる、叩き壊したくなる、嫌だ、そんな言葉聞きたくない。
『あの人』やめてくれ、今まで何をしてたんだ、めぐ、もうやめてくれよ…。
「外で汗かいちゃったからって……」
497: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:33:17 ID:oKL6Geec(5/9)調 AAS
ぎりぎりの頭の回転で、少しだけ動く頭の回転で、やっと尋ねる。
「今、電話してていいの?」
「うん、大丈夫だと、思う……、ね、あたしどうするべきなのかなぁ?」
何を聞いてるんだ?今、彼氏と…一緒に、……そんなときに俺に、俺に電話なんてしてくる神経が分からない。真意を悟れない。
それでもしゅうちゃんが心配なのだろうか、それほどにしゅうちゃんが心配なのだろう。
そして、それは――俺のせい。
『勝手に、すれば』
小さな声でやっと、答える。小さな、小さな声だったと思う。
それでもなんとかめぐの耳には届いたのだろう。
「わかった。する」
それだけ聞こえた、そうして少しの沈黙の後、電話は切れた。
俺はめぐに、自分の事は自分で決めろって意味で言った。それに対して、そうするって答えてきた筈。
なんだけど、違う予感もある……。
勝手に男となんでもすればいいって意味に取られやしないだろうか?
ふと、そう思う。いや、たぶんそっちの意味でそうなんだろうと思う。
頭がもっとくらくらしてくる。冷静なのか慌てているのかすら自分でも分からなくなるくらいに、呼吸が出来なくなる。俺は無意識に息すら止めて、体中こわばったように固まっていて、
俺はそのままベッドに崩れるみたいに倒れこんだ。
体が重い、それでいて冷たい鉛の塊でも飲み込んだみたいに体の芯から体温が下がったような感覚。
頭が痺れる、指先がわななく。
なんで、なんでそんな電話してくるんだよ!
今からホテルで『あの人』この前のあいつだろう!セックスする前になんて、今の俺にとって考える事すら耐えない状況で電話なんてしてこないでくれよ!
俺の気持ちに全く気が付いてないとでも言うのだろうか?
俺なんて全然見えてなくって、気が付いてないのだろうか?
それとも、別に俺なんてどうでもよくって、俺の気持ちなんてどうでも良かったのだろうか?
あんなに、あんなに楽しそうにしてくれてたのに。
再会して、俺の横で、俺の横にいるだけで、それだけで幸せそうに笑っていてくれたのは俺の錯覚、願望、気のせいだったのだろうか……。
思わず、電話に手を伸ばしそうになる。でも、電話を握り締める事さえ出来なかった。
どんな風に声を掛けると言うのか。まさか、今だけはそんな事をしないでくれ、とでも言うつもりなのだろうか。
やるなら俺の知らない、気が付く余地が無いところでやってくれとでも言うつもりなのだろうか。
それとも、『そいつ』じゃなくって、俺としてくれとでも言うつもりなのだろうか。
俺はもう、そんな事の出来る立ち位置にいないくせに……。
体は、心の痛みがそのまま体の痛みになってしまうくらいにきつくって、つらいのに、頭だけはそれでも少しだけ回っていて。
しばらく思考を辿りつつ、すこしだけ時間が過ぎて――。
不意にまた、携帯が鳴った。
498: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:34:00 ID:oKL6Geec(6/9)調 AAS
めぐだった、はやる心を抑える、落ち着け、落ち着け、呼吸を整える。未遂に終わって帰ったのだろうか?
泣いていた、分からない、何があったのかわからない。
今、電話してていいのか聞く、暗に今、どうしているのかを聞きたかった…。
「今、家にかえったとこ…」
帰ったところ…。そうして何気なく時計に目をやると、午後10時半、あれから2時間半くらい。
いつのまにこんなに時間が経っていたのだろう。
そして、いま帰ったところ、今までどこにいたの、なんて聞くまでもなくって。
「明日はお見舞いに行くから」
それだけ聞いて、電話を切った。
部屋の中がくるくる回る、天井も床もなく、ベッドも机もなく、何も見えない、いや見えてるけど認識できない。
意識と感覚だけがくるくる回る。
喪失感、絶望感、たぶん、そんな類のものだと思う。
悲しい、辛い、たぶん、そんな類のものだと思う。
ああ、やっと分かった。俺は自嘲的に少しだけ哂う。哂いが引きつる。
俺はもう希望しちゃいけないなかったんだ。望みなんてもっちゃいけないんだ。
めぐとどうにかなろうなんて、虫が良すぎて、甘すぎて、どうしようもなく楽観的で、
だから、だからもう期待なんて持たずに、普通に過ごそう、
友達、それだけ、それ以上はない、それ以下にもならない。
無理やり頭に固定する。たまに心が揺れたりするときもあるかもしれない、なんてそんなのご愛嬌。
意思で自分を固定する、揺れない自分に期待する。
その夜、決心した夜、やっと遅ばせながらに決心できた夜。
あまり眠れなかった夜。
翌日、病院につくのはいつもより遅い時刻だった。
しゅうちゃんはベッドに腰掛ながら、俺が着くのを待ってたようだった。
俺の顔を見るなり、首を少し傾げて微笑みながら中庭に出ようと、俺を誘った。
しゅうちゃんが言葉をつなぐ。
どうやら新学期までに退院出来そうだと。
さっきまでめぐが見舞いに来ていたと。一瞬だけ体がギクリとする。大丈夫だ、もう揺れないんだと自分に念じる。
今日は初めて一人ではなく、来ていたと。口ぶりで分かる、一緒に来た相手。
そうして、めぐに彼氏が出来た、と言っていた。
ああ、そうか、記念日だったのかもしれないな、昨夜は…。
まるで全くの他人事のように、しゅうちゃんの話を聞いている俺。
そうしてしゅうちゃんは空を仰いでいた。大きく。そうして俺に語りかけていた。
「ありがとう、お世話させちゃってごめんね。」
「ねえ…」
そうして、質問をぶつけられた。
「そうくんって、めぐちゃんの事、好きなの?」
499: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:35:36 ID:oKL6Geec(7/9)調 AAS
答えられない、答える資格もない、なにもかも無くしてしまった、何も出来ない間に無くしてしまった。
もう、めぐは遠くへ行ってしまったような情景。辺りに靄がたちこめ、立ちすくむ俺しか見えない。そんな情景。
それでも『うん』と、『もうどうしようもないけどね』そう笑って答えようとして、――失敗してしまう。
堪えなきゃと思って、堪えようとして、でも堪えきれなくって。
視界の中で全てが滲んで歪んでゆく。俺の心もきっと歪んでいたに違い無い、ずっと前からきっと。
俺の目から直接、堪えきれないものがポタ、ポタと落ちて行った。
もう無くしてしまったから、今だけは、今だけはみっともないのは分かってるけど。
俺はきっと、この瞬間までちゃんと理解出来ていなかったのだと思う。
本当に自分がどれほど深く、深くめぐを好きでいたのか。
出会ってからの一年間、どんどん惹かれていった一年間。
俺の部屋に生まれて初めて通した女の子はめぐだった。
初めて腕を組んだのもめぐが最初だった。
女の子とあんなにゆっくり夕日を眺めたのもめぐが最初だった。
シーズンオフの海も行った。
岬沿いの曲がりくねった道路を自転車で二人で駆ける。砕ける波間が輝いて見えてとても綺麗で。
駐車場の隅に2台の自転車を並べて停めて、駐車場の真ん中、鉄製のポール、照明用だったと思う。
めぐがそれに両手で掴まり、その周りをくるくる回ってはしゃいでいた。
缶のジュースを買ってきた俺に飛びつくと、そのまま波打ち際の近くまで歩いていった。
山のてっぺんから下を見下ろしたりもした。
苦しい、きついと、めぐは文句ばかり言っていた。予定よりも一時間以上も遅れて到着した。
少し気温が低い、肌寒いなとこぼすめぐの肩に俺は自分の上着を羽織らせた。
そうして見下ろした風景は今も忘れない光景だ。
映画も行った、買い物なんてしょっちゅうだった。
それから、俺の知らないうちに…いろいろあって、めぐが傷ついて、俺はそれを放ってはおけなくって。
ありったけの勇気を振り絞って、ピエロだと笑われる覚悟で。
少しだけ受け入れられた予感がして、少しずつだけど、またうまくいくなって期待があって。
その後、絶望を知って。
心が壊れて、やけにもなって、いろんな事を憶えても、それでも決して忘れてはしまえなくなってて、少しだけ俺がましになった頃に、また再会できて。
また、期待してしまった――。
500: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:37:20 ID:oKL6Geec(8/9)調 AAS
昔のめぐより、少しだけ、いや、だいぶ大人びて見えるめぐがいて。落ち着いているように見えるめぐがいて。
それでも俺を見る視線が暖かくて、優しくも見えて、瞳はやはり、綺麗なままで――。
嬉しかった、少しずつだけど、また距離が縮まっていくのを感じていて。
あと一歩、いや半歩でもいいから…、もう少しだけ距離が近くなったら、思い切って気持ちを打ち明けてしまおうか?
でも、その半歩は縮まる事はなく――。
きっと、その半歩は俺には無限の隔たりだったのかもしれない、そういう運命だったのかなって。
もしかしたら、あの電話は俺に止めて欲しかったから?なんて思いあがりも甚だしい。
でも、きっと、俺の一言、『勝手に、すれば』自分の事は自分で決めればいいって意味。
それはちゃんと伝わっていたのだろうか。これはこっち勘違いなんかじゃなく、伝わっていなくって。
だから『する』。そして、した。それは勿論、めぐの勝手だし、俺の出る幕じゃないのかもしれないけれど。
でも、少しだけ、少しだけ俺の事を想って欲しかった。
いや、きっとそれも違っていて。
俺はきっと、めぐの一番に成りたかったんだな、成りたがっていたんだな、と思う。
でも、それはもうどうしようも無い、自分でどうしようも無い状態にしてしまっていて。
そう思えて、また涙を流した。しゅうちゃんの肩に手をおいたまま、これ以上ないくらいに無様に。
しゅうちゃんは俺が落ち着くまで、一言もしゃべらず、空を仰いだまま、ただじっとしていてくれた。
「ごめん…」いきなり泣き出してしまった自分が恥ずかしくなる。
「ううん、こっちこそ変な事聞いちゃってごめん」
「どうしようもない奴だな、俺って」
しゅうちゃんは返事をしなかった。
そうしてしゅうちゃんは、しゅうちゃんなりのケジメの言葉を口にする。
「今日までアリガト、責任取ってくれたおかげでだいぶ助かったよ。だからもういいよ」
意味が分からない。責任?そんな簡単なものじゃないだろう?
「だからもういいって……?」
「だから、もういいってこと」
「えと……」
「あはは、やあね、あんなのほとんど冗談よ」笑っているような、それでも寂しいような表情でしゅうちゃんが言う。
「それに変な噂がたつの、困るし」少しだけ微笑んでそう言った。
そっか、みたいな返事を返したと思う。しゅうちゃんはまた、空を仰いでいた。
しゅうちゃんから目を逸らし、わかった、と答えた。
それから少しだけ会話をして、俺は病院から戻った。
明日は分からないけど、また来るね、と言っておいた。
それから、数回はお見舞いには行ったと思う。
退院して、しばらく、そして、しゅうちゃんとは連絡をあまり取らなくなった。
様子だけはどうしても知りたかったので、その代わりにめぐと連絡を取っていた。
辛いと感じたり、そんな感覚すら麻痺していたり、しゅうちゃんの状態だけは気がかりで、連絡は取り合っていた。
501: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:38:05 ID:oKL6Geec(9/9)調 AAS
そうして、月は9月に入り、しばらくしてから電話でめぐと話した会話。
「ところでさ」
「うん……?」
「タバコはやめなよ?」もう俺にはこれくらいしかしてやれないから。
「そうくんだって吸ってるくせにっ、それにあたしのは吸い込んでないもん」
「知ってるけど、続けたらくせになるぞ」いや、もう遅いかもしれないけど。
「自分だけはタバコ吸ってていいの?」これで掛かったようなもの。
「ふうん、つまり、俺が吸うから吸うんだね?じゃ、俺やめるから、めぐもやめて」論法は滅茶苦茶だが、ここは言葉の尻尾を捉える。
「う」言葉が繋げないめぐ。知ってるかい?ここは詰まってくれると助かるんだぜ?
「それにタバコ続けると、葉がヤニで染まっちゃうぞ?いいの?笑顔でこぼれた口元から黄色い歯…、
そんなの100年の恋も醒めるぞ?」多分、これで効くはずだ。
「は…はい、やめます、言う通りにします」クスって何か聞こえた気がする。
めぐは笑っていた、俺も少しだけ笑った、何か久しぶりに笑ったように感じるのは気のせいだろうか。
こうして少しずつ、時間の流れを穏やかに変えていき、受験を迎え、俺は当初よりもランクを落とした大学に入学した。
結局、地元に近い大学に入学した。
502: 2007/08/26(日) 10:09:58 ID:Hf4thoMc(1)調 AAS
今回も乙。
相手の気持ちにたって考えられる人はいいね。
503: 2007/08/26(日) 15:30:28 ID:U0VPzKSK(1)調 AAS
>>493
なんか気持ち悪いなお前
504: 2007/08/26(日) 19:01:42 ID:AqUBQLfH(1)調 AAS
>>493
そうそう、俺も読んだが2人の仲が壊れる経過が書かれてないんで
K子が絶対悪みたいに書かれてるのはどうかと思った
505(1): 2007/08/26(日) 20:26:15 ID:5aZJobrH(1)調 AAS
ナルシストっていうか自分に酔ってる人じゃないとこんな文章書けないでしょう。
だから、読みたくないならスルーするのが基本ですよ。悪態はいけません。
まぁ他の職人さんにからんでくるのはちょっと痛いですけど。
506: 2007/08/26(日) 20:57:13 ID:6Lhki7GI(1)調 AAS
お前のレスは悪態じゃねえの?
507: 2007/08/26(日) 21:43:07 ID:i6crG9fv(1)調 AAS
気分悪くなる人いるのは当然と思う
どれもかなり強烈だからね
嫌いなのは読まない方がいいよ
各々コテハンなのだから読む前に識別つくだろう
ここ1、2週間夏祭り状態で
各人ともレベル高いだけに、きっついぜ
508: 2007/08/27(月) 00:12:59 ID:/nZZnw3c(1)調 AAS
作品の批評ならいざ知らず、作者本人の人格に対する批判は抜きにしようぜ。
気分悪いなら言語化せずに>>505も言っている二行目を心掛けよう。
スレの雰囲気を悪くしちゃいけない。
509(1): 2007/08/27(月) 05:42:34 ID:A8ht8d2a(1)調 AAS
憧れの女っていうコミック買ってきたんだけど、なかなか良い寝取られだった
(最後は元鞘なのが残念だったけど)
他に良いNTRコミックってない?
510: 2007/08/27(月) 06:51:02 ID:PIbkumn6(1)調 AAS
>>509
作者は冬の同人で、ヒロインの堕ちる過程を書くらしい。
511: 2007/08/27(月) 06:57:30 ID:3dfx0JK2(1)調 AAS
蛇足のような気がする
512: 2007/08/27(月) 07:17:19 ID:nn/kQ5mH(1)調 AAS
元鞘とわかってる上でのNTRってのもまた別の味がある…のか?
513: 2007/08/27(月) 10:45:35 ID:2gpDqv1+(1)調 AAS
来週結婚予定の彼女が、他の男とお泊り旅行とかしてたよ (((( ;゚∀。)))アヒャヒャヒャヒャアヒャヒャヒャヒャ
2chスレ:news
514: 2007/08/27(月) 11:32:57 ID:swNgA0AZ(1)調 AAS
ここは創作板でつよ
515(4): 2007/08/28(火) 23:40:16 ID:C+jHSfZI(1)調 AAS
ギャー!何このスレ!長い!重い!
ネタの性質上、振りがどうしても長くなるのはしょうがないにせよ、それにしても!
たまには誰かもっとお手軽でエロい感じのやつを頼む!
ドヘタなりになんとか一つ作ってみたので、この線で…誰か…ボ・ス・ケ(ry
「遅いよ真一!」
「そうだよ真希ちゃんの料理冷めちゃうだろ」
「うっせーな親父、部活長引いたんだからしょうがねーだろ!あんたみたいにひまじゃねーんだよ!」
幼馴染の真希の作った料理がテーブルを飾っている。すでにつまみ食いを始めている、行儀の悪い典型的な
中年体型の男が俺の親父、佐賀一平である。
「じゃ、みんなで食べよ!いただきまーす!」
肥えさせるだけなのに、ビールを注いでやっては、親父の繰り出す、まさにオヤジギャグに笑い転げているのが、
俺の同級生の相馬真希。幼稚園から数えて、高校1年の今まで、3分の2は同じクラスのまさにザ・幼馴染。
スレンダーで、整った顔立ちにみんなだまされるが、実は口より先に手が出る武闘派なのだ。
特に、彼女は、俺から言わせりゃヘボヘボ3流翻訳家の親父の大ファンで、俺ら親子の意見が割れるときには
ほぼ100%親父の味方。何かこう、肩身が狭いってヤツ?今も、小皿に料理をとってやっては、親父の中年体型の
維持に貢献してる。まあ、お袋が死んでもう4年くらいたつが、彼女がこうやって時々まともな飯を作ってくれるから、
俺ら親子もなんとか生きていけてるってトコもあるから、文句は言えないけど。
そんなある日。部活開始早々、足を捻ってしまい、湿布を張ってもらって、俺はいつもより2時間以上早く家に帰った。
家の前には、真希の自転車があった。最近彼女は、ファンが講じて、親父の仕事上の軽い雑用を勤めながら、
翻訳の初歩の手ほどきを受け始めていた。まあ、親父も少しは人様の役には立つっつー事だ。
鍵を開けて入ると真希の靴がある。居間には誰もいなくて、コーヒーの香りだけが立ち込めていた。
たぶん真希が親父のために入れて、奥の書斎に持っていったんだろう。なぜか、なんとなく軽い嫉妬を感じながら、
奥の書斎を覗きに行こうとすると、その軽く開いた書斎のドアから
「ウッ…アッ…アン…ハァッ」
という、切なげな女性の喘ぎ声が聞こえてきた。ハ?何?何だよ!…ははあ、親父、若い子にAVとかを
「あ、まちがっちゃった」とかいって見せて反応を楽しむ、重度セクハラだな。それはすでに犯罪だぜ…とか
考えながら書斎を覗き込むと、そんな都合のいい妄想はあっさり吹き飛んだ。
親父が、仕事で仮眠するときにベッド代わりに使っているかなりでかいソファーの上で、素っ裸の真希の上に
乗っかって、そのプヨついた尻をガンガン振っていた。
「…ま、真希ちゃんどう…もう全然痛くないでしょ…」
「…あ、うん…この格好だと…アッ…ハッ…そ、そんなに深く入らない…から…」
「…そう?…深いのも…そんなに嫌いじゃ…ないみたい…だけどな…」
というと、親父は彼女の小さなお尻を抱えてヒョイと立ち上がった。真希が悲鳴を上げながら親父の首に
しがみつく。いわゆる駅弁ファック?
彼女の小ぶりの尻に、親父の、たぶん大人の平均と比べてもかなり大き目のチンポがズコズコ突き刺ささ
れる。二人とも汗びっしょりだ。
「イヤ…あ、当たっちゃう…深い…怖いよ…」
「…何で…怖いの…」
「なんか…わたし…なんか…ヘンに…」
「…教えたろ…なんていうんだっけ、そんな時は!」
というと、親父は彼女の細い腰をグッと抱きしめ、本当に根元の根元までそのデカチンを彼女に激しく
ぶち込みはじめた。
「ア…イ…イク…」
「そうそう!ほらほら、これでどう?!」
「イッちゃう…いっちゃ…ア…ヒィッ!」
真希は親父に強くしがみついて、腰をビクビクッと痙攣させる。親父も「ウッ」と硬直して動かなくなる。
しばらくして、まだチンポが刺さりっぱなしの彼女のアソコから、親父の出したらしいアレが、
ぼとり…ぼとり…と垂れてきた。親父…せめてゴムぐらいつけろよ…
今日は親父と真希の結婚式。この2年間、何とか彼女を奪い取ろうとがんばって、何度かうまくいきかけたが、
そのつどあっさりヤツのデカチンに奪い返されてしまった。結局、彼女は、アソコと、口と、いつの間にか
開発されたアナルにひたすら精液を注ぎ込まれ続け、その結果が今日のこの日、という訳だ。いや、
結婚が何だ!ここからが、寝取り、寝散られライフのスタートだ!!俺たちの青春は、まだ始まったばかりなんだ!(マジでおそまつさま)
516: 2007/08/28(火) 23:49:34 ID:QtEYxuNI(1)調 AAS
次の患者さんどうぞ
517: 2007/08/28(火) 23:54:27 ID:lPjF0vG6(1)調 AAS
>>515
なかなか良かったよ。
最近はあれ?ここってエロパロ板だった・・・よね・・・とかって思ってたから
また書いてくれ〜
518: 2007/08/28(火) 23:57:56 ID:dgizXamS(1)調 AAS
え、これパロディなの?
519: 2007/08/29(水) 10:07:02 ID:CXCH+vRl(1)調 AAS
>>515
最初の四行がどうしようもなく香ばしい
520: 2007/08/29(水) 10:51:30 ID:0oUbWhrB(1)調 AAS
>>515
NTRはフリがクドくてなんぼだろーが
521: 2007/08/29(水) 11:24:48 ID:ZV3oyycI(1)調 AAS
嗚呼、なんて運が悪いんだ。僕はいつもこうだ。
突然、隣町の八城高校の不良に因縁を付けられて人気のない商店街の
路地裏に連れ込まれた。
「へへへ、ボクちゃんよぉ。お金、持ってない?」
「ちょっとだけ、貸してくれよ。な?」
3人の人相の悪い奴らに囲まれて、僕はどうしようもなく震えながら
「は…はい、お金ならここに…ありますから…」
財布を取り出して、にやついてる不良に渡そうとした、その時、
「……こらぁ!」
ハァハァ息を弾ませて、路地の入り口に、セーラー服姿の少女が立っていた。
「千尋ちゃん!」僕は涙をにじませて叫ぶ。
「…こぉのチンピラどもぉ。よっくも、私の幼馴染をぉ〜…」
千尋ちゃんがそう言って、こちらへ一歩一歩、ズンズンと歩み寄ってくる。
「なんだぁ、このアマ?バカじゃねえのか」
「でもよぉ、結構、可愛いじゃねえか。へへへ、おもしれぇ〜」
不良Aが、にやついた瞬間。ガツン!!すごい音。
滑るように不良の懐に飛び込んだ千尋ちゃんが、不良Aのあごに
アッパーストレートを見舞っていた。
「ぐふぅ」まともに食らった不良A、たちまち地面にくず折れてKO。
「…な、な、なァ?!」
面食らった不良Bに、体勢を整える時間を与えず、千尋ちゃんは健康的な
太ももを惜しげもなく晒して、そのみぞおちに強烈なキックを叩き込む。
「…げふっ!」不良B、あえなくヨダレ垂らして撃沈。
慌てた不良Cが、「こ、この野郎」と千尋ちゃんに殴りかかる。
千尋ちゃん、軽くスウェイ。
「くっ…く!こ、この野郎!」
ドスッ。グシャ。千尋ちゃんのワンツーがキレイに不良Cの顔面に入る。
白目を剥いてぶっ倒れる不良C。
「やったぁ〜!千尋ちゃん!」
僕は手を叩いて、千尋ちゃんに駆け寄る。
「大丈夫だったか? 優一」
千尋ちゃんは、わずかに息を乱しただけで、僕を気遣ってくれた。
小さい頃から、こうやって千尋ちゃんは、ずうっと僕を守ってきてくれた。
僕にとっては同級生っていうよりも、遥か年上のスーパーガールみたいな存在。
それが千尋ちゃんだ。
でも、千尋ちゃんは、この10日後、この不良どものボスと対決してフルボッコ。
そのままボスと不良ABCにマワされて、写真とビデオ撮られて言いなりに。
何度も犯られるうちにボスに心も陥落して、高らかにセックス奴隷宣言。
今日、僕の所に、不良A,B,Cのチンポを全裸で嬉しそうに舐めている
首輪に繋がれた千尋ちゃんの写真が送られてきました。
(完)
522: 2007/08/29(水) 11:32:55 ID:oa+/8waV(1)調 AAS
……最早マッハ堕ちですらねえ……
523: 2007/08/29(水) 11:42:41 ID:0lGkLMoT(1)調 AAS
>>515の熱意は評価する
524: 2007/08/29(水) 17:28:44 ID:Jf7rsGIf(1)調 AAS
俺はノリの軽さも含めてかなり好き
寝取られと言うよりは、あこがれのあの子が…という落差を楽しむパターンだな
525(1): 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:25:46 ID:vLP5oV3K(1/15)調 AAS
第四話投下
ただし今回はエロ要素完璧に皆無
まぁ、幼女が膝の上に乗ってキャッキャしてるのが好きな人は
その辺のシーンで適当にヌいといてくれ
526: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:26:30 ID:vLP5oV3K(2/15)調 AAS
・怜視点
緑を増して厚着になる木々とは反対に、
街行く者達の服装は、薄く涼しくなっていく。
既に地元の小学校や中学校ではプール開きされており
近くを通ると、子ども達の跳ねるような声と水音が耳に入ってくる。
季節は、初夏。
唯が大学を去ってから、二ヶ月が経とうとしていた。
「飲み会?」
「そ。そろそろ学部試験の時期だろ?
それ終わったら夏季休講期間に入るから、そのぐらいの頃に
一度皆で集まって、居酒屋にでも行こうって話がね。
今男子の間で持ち上がってるんだけど」
吉良君がそんな事を言い出したのは、バイトの最中だった。
例によって暇な時間帯で、店内に客は一人もいない状態だった。
「でも、私も嘉狩さんも村雨さんも、皆未成年だよ?
一応お酒、飲めない事は無いけど……」
「へぇ、意外だな。怜ちゃんって、アルコールいけるクチなんだ。
てっきり全く飲めないタイプかと思ってたんだけど……」
そう言われて私は、答えに詰まった。
ひとしきり考えた後、隠す必要も無いと思って、事実を打ち明けた。
「昔……あいつの影響で、飲んでみた事があって」
私達二人の間で『あいつ』と言えば誰を指すかは、言わずもがなだった。
「……また唯か。やれやれ、案外根が深いね」
私は、かつて唯に連れられて、バーとレストランを兼ね合わせたような
少し大人びた雰囲気の店に行った時、そこで唯がカシスオレンジを
注文していた事を、吉良君に話した。
カクテルを頼む辺りがまたキザっぽいと、吉良君は
より唯に対して不愉快な印象を募らせたようだった。
と同時に、事ある毎に私が唯の事を思い出すのが、悔しかったらしい。
しかし、それも仕方の無い事だった。
あんな事が起こるまでは、私と唯はよく一緒に遊びに行っていた。
二人で簡単な花見に行った事もあったし、映画だって勿論行ったし、
一晩カラオケで潰した後にあいつの運転で海まで行って
日の出を見るなんて言う、青臭い事までやっていた。
あまりにいろんな事をやっていたので、吉良君と何をやるにしても
常に唯の影がつきまとっていたのだ。
527: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:27:23 ID:vLP5oV3K(3/15)調 AAS
それは兎も角として、飲み会の話は数日かけて纏まっていった。
参加メンバーは私と吉良君、それに慎君に海本君に、
女子は嘉狩と村雨さんと、あと数名適当に調達するらしい。
と言うのも、参加メンバーが十人揃えば、割引が適用されるからだそうだ。
せっかくの飲み会なのだから、固定メンバー以外の者も誘おうという考えもあるようだ。
残り四人に関しては、慎君にアテがあるようなので、
そちらに任せておく事になった。
慎君の知り合い、友達だからと言って、他のメンバーとも顔馴染みとは、限らない。
むしろ、その日初めて会う者とすら酒を酌み交わすのが
飲み会の醍醐味との事で、吉良君もやや乗り気のようだった。
私はと言うと、人見知りがかなり激しい方なので、あまり気楽ではなかったけれど。
だから、私でも少しは話した事のあるような人が
残り四人の枠の中に含まれていれば、良いんだけれど……などと考えていた。
そんな後ろ向きな気持ちが、天に通じたのだろうか。
或いは逆に、天罰と言うのかもしれない。
学部試験を終え、夏季休講に入り、初日に所定の居酒屋の前で集合した時
残り四人の参加メンバーの中に、あいつがいた時は、心底驚いた。
528: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:28:11 ID:vLP5oV3K(4/15)調 AAS
待ち合わせは、居酒屋の前だった。
空気がピリつくのがわかる。
吉良君は、有無を言わせずつっかかって行った。
「日色唯、何でお前がここにいるんだ」
唯は、掴まれた胸倉を意にも介さず、手をヒラヒラさせて答えた。
「そんなもんコッチが聞きたいわ。
挟道さんに誘われて来てみたら、まさか怜やお前がいるとはね」
挟道さんと言うのは、吉良君達と同じ学年の、三十路前半の人妻だった。
元々は別の大学の卒業生で、銀行に勤めていたのだけれど
取得したい資格があった関係で、白城大学に通いなおしたらしかった。
彼女は六歳になる自分の娘を連れて来ていた。名前は志保ちゃんというらしい。
それと後一人は、慎君と同じゼミを受講している、
聖月子という、妙に厳かな名前の女の子だった。
話を整理してみると、まず慎君が聖さんを飲み会に誘ったらしい。
と同時に聖さんに、他に参加してくれそうなメンバーがいないか、
当たって欲しいと頼んだようだった。
聖さんは挟道さんを誘い、挟道さんは当時既に退学していた、唯を誘ったという流れだ。
だから、唯がここに来るという事は、吉良君や私はおろか、
慎君さえ今日この瞬間まで知らなかったらしい。
「こいつ、確かこないだ吉良と喧嘩してた奴だよな?」
その慎君は、事情を何も知らないながらも、吉良君が殴りかかる程なのだから
余程この唯という男は悪い奴なのだと、決めてかかっているのだろう。
探るように、或いは睨むように、唯を見据えた。
「まぁまぁ、良いじゃないの。今日は仲直りもかねて、飲みましょう!」
同じく何も事情を知らない挟道さんが、志保ちゃんを抱き上げて言う。
子どもの前で火花を散らすのは止めてと、暗に言っているようだ。
参加人数は、私達のような未成年は勿論、志保ちゃんのような
幼児を含めて、これでどうにかやっと十人きっかりだった。
これに割引サービスを適用するかどうか、飲み屋のバイトの人も
随分迷ったみたいだったけれど、そこで割引をケチるよりも
気持ちよく飲んでもらって、リピーターになってもらった方が
最終的には店の利益になると判断した店長さんが、快く許可してくれた。
未成年は飲み屋には入れない決まりだけれど、
これも暗黙の了解か、或いは十人分もの売り上げを落としたくなかったのか
身分証の提示も求められる事なく、私達は入店出来た。
529: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:28:59 ID:vLP5oV3K(5/15)調 AAS
席につくとまず、吉良君達男性陣は、ビールを一杯ずつ注文した。
どうやら大人の世界には、飲み屋ではまず生中、という
暗黙の了解があるらしく、彼らはメニューも見ずに店員に注文していた。
海本君曰く、カクテルやチューハイは、店によっては無い所もあるけれど
ビールだけはどの店にも必ずあるので、最初はこれを頼むのが定石らしい。
飲みたい酒を、時間をかけて選ぶのは、その後と言う事だ。
大人の女性である挟道さんにとっても、それは常識らしく、
彼女も男性陣に続いて、ビールを注文していた。
けれど、唯だけは違った。
「あ、俺ウィスキーお願いしまっす。ロックで」
事も無げに、定石を無視する。
この年齢の男がウィスキーをロックで注文するというのは、中々無いらしい。
店員の女の人が、一瞬虚をつかれたような顔をするのがわかった。
吉良君にとっては、これもまた、気に食わないらしかった。
レモンティーのレモン果汁を混ぜないだの、
女の子とのデートでカシスオレンジを飲むだの、
飲み屋で最初からウィスキーで飛ばすだの、そういった事が
いちいち格好つけているみたいで、どうにも受け付けられないらしい。
私を寝取られた恨みもあってか、吉良君は露骨に唯に、呆れた視線を送った。
「ウィスキー頼んじゃ悪ぃかよ? 俺、ビールは苦手なんだよー」
吉良君の視線の意味を感じ取ったのか、唯は浮くように軽い口調でそう言った。
どうやら根本的に、この二人の相性は良くないらしい。
それはそうだろう。
吉良君と相性の良い私が、唯とは相性が悪いのだから。
530: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:29:49 ID:vLP5oV3K(6/15)調 AAS
挟道さんの娘の志保ちゃんは、挟道さんの右隣、
そして唯の左隣に座っていた。
唯の注文したウィスキーが、ウーロン茶にでも見えたのだろうか。
氷が入っているという点も、子どもにとっては興味をそそられるようだ。
テーブルの上に手を伸ばし、興味津々といった風にコップを見つめる。
「駄ぁ目。これはお酒なんだよー、志保ちゃん」
そう言ったのは、唯だった。
普段の気取った感じではない、あくまで子どもに接する時の口調だった。
私は、彼のそういう話し方を聞いた事が無かったので、少し驚いた。
こいつ、こんな幼稚園の先生みたいな喋り方も出来たんだ……。
「これ、おさけ? おちゃじゃ、ないの?」
「お茶は、お母さんが志保ちゃんの分も、お店の人に頼んでくれたからねー。
もう少ししたら、持ってきて貰えるよ」
「のど、かわいた」
「うーん、困ったねぇ。でも、子どもはお酒飲めないからねぇ」
「なんで、のめないの?」
「そうだなぁ……何でだと思う?」
子どもの問いかけに対して、問いかけで返すのは、卑怯だと思った。
けれど、問われれば真剣に自分なりの答えを模索するのが、子どもというものだ。
「わからないから聞いたんだよ」などという答え方を、子どもはしない。
志保ちゃんも、一所懸命答えを考えていた。
「うーんとね、えーっとねぇ……こどもがのんだら、カゼひいちゃうのかなぁ?」
面白い答えだ。
恐らくは、父親が酔っ払った時に顔が赤くなっているのを、
子ども心に病気か感冒症と同じ類のものだと、思ってしまっているのだろう。
「うん、そうかも知れないね」
唯は、志保ちゃんの答えを否定しなかった。
不思議と、子どもの扱いに慣れている様子だった。
唯と話す時間が楽しかったのか、お茶がテーブルに届くまでに少し時間があったけれど、
その間志保ちゃんは全く「お茶、お茶」と急かさなくなっていた。
隣で見ていた挟道さんは、少し関心している風だった。
531: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:30:34 ID:vLP5oV3K(7/15)調 AAS
「……何だよ?」
出し抜けに、唯が私の方を見て、そう言ってきた。
その時になって初めて、私はこいつを注視していた事に思い至った。
「べ、別に……アンタにそういう一面がある事なんて、知らなかったから。
……ちょっと意外だなって、思っただけ」
だが、私が答えた瞬間には、もうそんな事はどうでも良くなっていたのか、
唯は志保ちゃんのお皿に、ローストビーフやミニトマトをよそってあげていた。
母親というものは、たまには育児から解放されて、
思い切り飲み食いしたいと、常に思っているものらしい。
唯は挟道さんのそんな気持ちを推し量ったのか、
積極的に志保ちゃんの面倒を見てあげているようだった。
これだけ切り取って見ると、微笑ましい風景だ。
さしづめ、幼い女の子と親戚のお兄ちゃん、といった感じだ。
恐らくは今、慎君達は唯に対する第一印象を、少し改めているだろう。
ただ一人、吉良君だけは相変わらず不快そうな顔をしていたけれど。
「こら、志保。お兄ちゃん、重いでしょ?」
「あはは、大丈夫っすよ。気にしないで良いからねー、志保ちゃん」
いつの間にか志保ちゃんは、唯の膝の上に座っていた。
居心地が良いのだろうか、お気に入りの座席を確保したようだった。
まだ会が始まって十分かそこらなのに、もう唯は
幼子の心をがっちり掴んでしまった。
私の隣で、吉良君が「……強姦魔に懐いちゃって、良いのかな」と
呟いたのが聞こえたけれど、私は敢えて聞こえないフリをした。
「唯クンと話すの初めてだけど、何か第一印象とは随分違うのねぇ」
嘉狩はそう言って、唯と志保ちゃんを、交互に眺めた。
「正直さ、初めて唯クンを見たのが、吉良君と喧嘩してた現場だったからさ。
あんまり良い印象無かったんだけど、意外と良いお兄さんって感じじゃん?」
何も知らないくせに……と吉良君が脳内で呟いた声が、私にも届くような気がした。
532: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:31:16 ID:vLP5oV3K(8/15)調 AAS
構わず、嘉狩は唯君に話し続ける。
「さっきの口ぶりだと、怜とは馴染みみたいね?
どういう関係なの? ひょっとして、聞いちゃまずい関係?」
聞いちゃまずいかもと思いながらも、切り込むように聞くのは
彼女のオープンな性格故の、特権だろうと思う。
彼女になら、無用に踏み込まれる事に、誰しも然程不快感を覚えない。
世の中には、先天的にそういうお得な性格、性質の人がいるものだ。
ただそんな人でも、吉良君と私が付き合っている事を鑑みて
あまり私と唯の関係を掘り下げて聞くのは良くないかも、とは思っているらしい。
「どういう関係って、なぁ……?
怜に聞いてみな。少なくとも俺の口からは答えられねぇよ」
子どもを退屈にさせないための配慮からか、唯は志保ちゃんの頭を
優しく撫でてあげながら言った。
大人同士で勝手に会話を始めてしまえば、つまらなくなるのが子どもだと、
熟知しているようだった。
当然、私の口からも答えようが無い。
友達だよ?
そんな答え方、吉良君の手前言えるわけがない。
ちょっと前まで、友達でした?
じゃあ、何故今友達ではなくなったのかと聞かれたら……答えられない。
ちょっと前に、犯されました?
そんな回答、もはや論外だ。
仕方なく、私は答えをはぐらかす事にした。
「アンタって、よく子どもに好かれるわよね」
嘉狩の質問をスルーして、唯に話をふる。
けれどそれは、吉良君にとっては気分の良いものではなかったらしい。
それはそうだ。
レイプ犯に被害者が、自分から話しかけるなど、
正気の沙汰とは思えない……そんなところだろう。
軽く眉間に皺を寄せて、私の方を訝しげに見てくる。
さも旧知の仲であり、親しげであるように話しかけた事も、気に食わないようだ。
しかし唯は、その事に気付いているのかいないのか、普通に会話を繋いだ。
「子どもに好かれるのなんか、簡単さ。
自分が子どもを好きでいるだけで、子どもの方は放っといても自分を好いてくれる。
自分に好意を持ってくれてる人間を、嫌ったり疎んだり出来る程、
子どもの脳みそは廃れた構造しちゃいねぇよ。
そんな器用な真似が出来るのは、大人だけさ」
それは、至言のように思えた。
少しだけ、吉良君の唯を見る目が、変わった。
一人志保ちゃんだけが、話の内容が難しくて、よくわかっていないようだった。
533: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:31:58 ID:vLP5oV3K(9/15)調 AAS
飲み会が解散して、二次会にカラオケに行こうという
話になった時は、本当に大変だった。
会計を済ませ、店の出入り口から出た時だ。
既に時刻は二十時少し前で、子どもがこれ以上長居出来る時間ではない。
挟道さんは志保ちゃんを連れて、家に帰ろうとしたのだが、
志保ちゃんは泣いて唯に縋っていた。
「びぇぇぇぇぇん! おにいぢゃぁぁぁぁぁぁん!」
余程唯の事を気に入ってしまったのか、少女は唯の足に
ぴったりとくっついて、離れようとしなかった。
涙と鼻水が唯のボトムを汚していたけれど、唯はそんな事は気にしなかった。
それよりも、少女が泣いて喚いている事の方を、真剣に心配していた。
「ほら、志保ちゃん。お兄ちゃんが困ってるじゃないの」
挟道さんは、志保ちゃんを無理矢理抱き上げた。
そのまま挨拶もそこそこに、足早に皆の前から去ろうと考えているらしかった。
それを唯は引き止めると、隣にあったゲームセンターの
入り口の横、店の外側においてあるクレーンゲームの筐体に向かった。
「ちょっと待ってて下さい、お母さん」
唯は志保ちゃんの前だからか、挟道さんとは呼ばずに、お母さんと呼んだ。
そう言えば小さい頃、私の父方の叔父が、私の父を『怜ちゃんのお父さん』
と呼んでいたけれど、つまりはあれと同じ理屈だろう。
唯は手早くコインを入れ、一発で景品のヌイグルミをゲットした。
「はい、志保ちゃん。これあげる」
「まぁ。良いのかしら、日色君」
「気にしないで下さい、お母さん。ほんのサービスですから」
どうやら、少女へのプレゼントのために、わざわざとってあげたらしい。
一瞬、志保ちゃんが泣き止んだ。
「……クマさんだー」
「そうだよー。でもクマさん、泣く子は好きになってくれないなぁ」
その瞬間、志保ちゃんが慌てて涙を拭う。
「ないてない! しほ、ないてないよ!」
「そうだね。偉いねぇ、志保ちゃんは」
唯はそう言って屈み込むと、少女と同じ目の高さになって、
持っていたヌイグルミを少女に与えた。
そうして小さな声で、耳元で呟くように、少しだけ言葉を付け足す。
「別に、泣くのは悪い事じゃないんだよ」
「そうなの? でもママもパパも、ないちゃメッ、ていうよ?」
「うーん、とねぇ。泣きたい時は、泣いたら良いと思うんだ。
でも、いつまでも泣き続けてたら、駄目なんだと思うよ」
そうして唯は、立ち上がった。
「もう、泣かないよね?」
「うんっ! だいじょうぶだよ!」
志保ちゃんは母親と手を繋ぐと、元気良く片手を振って、別れを告げた。
「バイバーイ、おにいちゃん!」
「うん。またねー、志保ちゃん」
唯の、驚く程の紳士ぶりに、私達はみな、呆気に取られていた。
志保ちゃんが「バイバイ」の後に呼んだのが唯のみで、
私達の存在を少女にあっさり忘れられていたであろう事にすら、気が回らなかった程に。
534: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:32:47 ID:vLP5oV3K(10/15)調 AAS
「さて、と……俺もそろそろ、帰りますか」
唯は、それまでかけていた色眼鏡を外して、
鞄の中から取り出した無色透明のレンズの眼鏡に、かけかえた。
夜なので、色眼鏡だと見えにくいのだろう。
眼鏡何本持ってるんですか、と小声でツッコんだのは、村雨さんだ。
しかし私は、唯が眼鏡をファッションの一部として捉えており、
服を着替えるような感覚で眼鏡を使い分ける癖があるのを、知っていた。
「もう帰んの? まだいても良いじゃん」
聖さんが、つまらなさそうに口を尖らせて言った。
「明日も朝からバイトなんだよ。立哨警備のな。
大変なんだぜー? 朝五時に起きて朝礼に向かわなきゃいけないんだから」
「へぇ、警備員なんかやってんだぁ。暑苦しい事やってのんねぇ」
「割りが良いんだよ。ただ立ってるだけで、時給千円だからな。
フリーターにはおいしいバイトって事」
「フリーターだったの? てっきり、うちの大学の学生かと思ってた」
「退学したんだよ」
唯を退学においやった張本人である、吉良君……
いや、吉良君と私、と言った方が正しいか。
吉良君と私が目の前にいるので、唯は特に退学の理由を
事細かに話そうとはしなかった。
その手の理由は、どの道やんごとなき代物が多い。
聖さんも、勿論慎君達も、その辺りを推し量ってか、別段深く聞き出そうとはしなかった。
理由を知っているのは今のところ、唯と吉良君と、私だけだった。
535: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:33:30 ID:vLP5oV3K(11/15)調 AAS
・吉良視点
日色唯という男の事が、よくわからなくなった。
いや、厳密に言うと、元からよくはわかっていなかった。
俺はただ、初めて会った時の軽薄そうな印象と、怜ちゃんから伝え聞いていた評価と、
怜ちゃんが唯にレイプされたというエピソードのみで、唯という男を量っていた。
その結果、俺の中では唯は、単なる人間の屑という結論に至っていた。
しかし、実際はどうなのだろう?
少なくともあの男は、今日だけで三度、俺の中での心象を
がらりと変えてしまうような振る舞いを見せた。
一度目は、志保ちゃんの面倒を見てあげていた時。
二度目は、子どもに好かれる秘訣を怜ちゃんに教授した時。
三度目は、志保ちゃんをピタリと泣き止ませ、アフターフォローまでこなした時。
三度目はまぁ、物で釣ったと言えない事もないが、手際の見事さは確かだ。
これだけ見れば、単なる好青年にしか見えない。
しかし実態は、信用してガードを下げてくれた女の子を、
ここぞとばかりに押し倒し、欲望のままに汚す男なのだ。
そうだ、こんな男など、信用してはならない。
この男は、見下げ果てた外道なのだから。
……そう、思っていた。思おうとしていた。
しかし、常に違和感がつきまとう。
志保ちゃんとの触れ合い方を見てからは、逆にこの男が
女性をレイプしたという事の方が、信じがたくなってきていた。
何か決定的な事を、見落としている気がしてならない。
現時点では、知っている事があまりに少なすぎた。
自分は、もっとあの男の事を、知らなければならないような気がした。
しかし、ではどうすれば?
俺は唯の連絡先など知らない。話し合う事など出来ない。
怜ちゃんに聞けばわかるだろうか?
いや、彼女も唯の連絡先は、電話番号もアドレスも、メモリから消したと言っていた。
……馬鹿馬鹿しい。仮に連絡先が分かったとて、それでどうだと言うのだ?
俺の方から、唯に連絡をとると言うのか?
用件は何だ? どう説明する?
駄目だ、どう考えても、自然な方法であいつと話し合う機会を得る事は、出来ない。
536: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:34:16 ID:vLP5oV3K(12/15)調 AAS
いや、待て。
話し合わねばならないのか?
会話でなければいけないのか?
そんな事は無い。要は、あいつの事をもっと知る事が出来れば良いのだ。
方法は、ある。
人づてに聞くのも良いが、相手が唯なら、別のやり方も出来る。
飲み会の帰り道、俺は隣を歩く怜ちゃんに、唯のブログのURLを聞き出してみた。
「え、あいつのブログの……?
もうお気に入りから削除しちゃったから、URLなんてわからないよ。
でも、何で今更?」
「いや……ただ何となく、気になって」
そう、ただ何となく気になっただけだ。
別に唯と親睦を深めたいとか、溝を埋めたいとか、ましてや
怜ちゃんを襲った事を許してやろうと考えているとか、そんな事ではない。
だから、別にブログを閲覧出来なくても、困る事は何も無い。
どの道恐らくもう二度と会わない相手なのだから、深く知る必要など毛頭無い。
「でも……あのブログ、パソコンからも見れるから。
ひょっとしたら、履歴に残ってるかも……」
その瞬間、素直に「見たい」と思ってしまった自分に、気がついた。
何故俺は、ここまで唯の事を気にかけている?
ただちょっと子どもに優しくしただけで、
たったそれだけの事で、あいつを見直しかけている。
本来俺にとって、あいつは生涯許す事の出来ない、敵の筈なのに。
537: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:35:01 ID:vLP5oV3K(13/15)調 AAS
怜ちゃんの下宿に戻って、ノートパソコンを起動させた。
画面が立ち上がるまで少し時間があるので、その間しばらく待つ。
やがてブラウザが立ち上がり、怜ちゃんは履歴を検索し始める。
スレイプニルというタブブラウザを用いているそうで、
俺にはよくわからないけれど、半年以上前の履歴も残っているそうだ。
これも唯に教えてもらったのだと、彼女は言った。
やがて、お目当てのURLが見つかった。
クリックしてみると、そこはブログというより、電子掲示板の類に見えた。
以前怜ちゃんの携帯電話から見せてもらった時は、
何分携帯端末用のレイアウトだったので、ちょっと気付きにくかった。
「スレッド式の掲示板と、形式は一緒だよ。
ブログというよりは、掲示板に各々がスレッドを立てて日記を書き込んでる……みたいなもの。
ただ、コメントを書き込む事自体は誰でも出来るんだけど、
スレッドを立てるのと、コメントの削除だけは、登録が無いと駄目なの」
スレッドだの何だの、俺にはよくわからない事だった。
とにかく、この掲示板の上で、多数の利用者がハンドルネームで日記を記し、
更に多数の利用者達が、ハンドルネームすら用いずに、コメントを残す事が出来るようだった。
いわゆる捨てハンと呼ばれるものらしく「あ」だの「a」だの、
明らかにその場しか使わないと思われる、適当なハンドルネームが使われている。
律儀にハンドルネームを使っているのは、スレッドを立てた本人達だけだ。
『ZERO』。
それが、唯のハンドルネームであるらしかった。
「最初はさ、このHNに少し興味をひかれて、覗いてみたの。
だって、私の本名が『レイ』なんだもん」
そう言って彼女は、自分の親指と人差し指で輪を作り、0を表した。
どうやら、怜=レイ=0→ZEROという連想らしい。
538: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:35:44 ID:vLP5oV3K(14/15)調 AAS
ZEROと名乗る者の日記は、内容自体は特段変わった事は無かった。
何月何日何曜日、バイトでこんな事があった、その時どう思った。
その程度の事が、独特の軽妙な切り口で記されている。
しかし、それよりも俺の目をひいたのは、他の利用者達からの
諸々のコメントの内容の方だった。
「yumi:
ZEROさんも大変ですねぇ〜。
私も今バイトしてるんですけど、店長が凄い嫌な人で、
私も同僚の人達も、もう辞めようかって言ってるんです。
でも時給は良いし、店長以外の人は良い人ばっかりだから
まだふんぎりがつかないんです。
どうしたら良いんでしょうか?」
一瞬、目が止まってしまった。
他人の日記にコメントを残す事が出来るという事自体、
ネットに慣れていない俺にとっては不思議な事なのに、
ましてや他人の日記上で、相談事を持ちかけている者がいる。
ネットの世界では、これは当たり前の事なのだろうか? 怜ちゃんに尋ねてみる。
「……うーん、どうだろう。
あんまり見かけないけど、でもこいつの日記は、こういうのばかりだよ」
「こういうのばかり……って……」
「何でかよくわからないんだけど、唯の日記って、いろんな人が集まるんだよ。
で、やっぱり理由はわからないんだけど、結構悩み事とか相談事とか、書き込まれるの。
まぁ、あいつも律儀に話聞いてあげたり、答えてあげたりしてるからね……。
いつの間にかこの掲示板では、あいつの日記は半分くらい
人生相談請負みたいな事になっちゃってるわ。結構前から」
確かに見てみると、他にも結構ちらほらと相談事が書き込まれいる。
また恐ろしい事に、ZEROという名の人間……唯は、逐一話を聞いてやり、
アドバイスや助言を惜しみなく送っている。
「ZERO:
どんな職場にだって、嫌な人間は必ず一人はいるもんさ。
割り切ってしまえば、周りは全部味方なわけだから、まだ頑張れると思うぜ。
周りが全部敵って職場環境も、世の中にはあるんだし」
妥当だが、的確でもあるアドバイスだ。
一般論に過ぎないと言えばその通りだが、内容は極めて正しい。
ますます、あの男の事がよくわからなくなった。
何しろ本当に、唯の立てたスレッドでは、こういった内容ばかりが連なっていたのだから。
試しに他の利用者のスレッドも閲覧してみたが、
思い思いの記事が書かれているだけで、他者に相談をもちかけられるどころか
そもそも他の利用者達と交流、会話さえしていないのが、殆どだった。
俺は、もっと遡って過去の記事やコメントも読みたいと思ったが
あまりにも量が膨大であるらしく、断念した。
怜ちゃんによれば、あいつはもう二年以上ここで日記を書いているらしい。
二年分も読んでいられないので、とりあえす携帯電話にURLだけ記録しておいて
暇な時にでも閲覧してみる事にした。
539: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:36:31 ID:vLP5oV3K(15/15)調 AAS
第四話終了
540(2): 2007/08/29(水) 21:35:42 ID:ZOyLDGfw(1/2)調 AAS
>>525
上から、上から、目線が下りて来るー
541(2): 2007/08/29(水) 22:06:29 ID:8708LtrU(1)調 AAS
>>540
荒れるから止めろって。
俺はもうNG登録してるから見てないけど、楽しんでる人は適当にヌいてるんだろうし。
作品の批評とかならしてもいいと思うけど、基本スルーを心がけようぜ。
542(1): 2007/08/29(水) 22:43:54 ID:+HFxXZMW(1)調 AAS
8708LtrUの言い回しが香ばしすぎる件
543: 2007/08/29(水) 23:25:43 ID:NwUkQxMO(1)調 AAS
>>540-542
自演うざいなー。
544: 2007/08/29(水) 23:58:15 ID:ZOyLDGfw(2/2)調 AAS
>>541
ほんとだ、荒れちゃいましたね。ゴメンなさい、気をつけます。
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