[過去ログ] ●●寝取り・寝取られ総合スレ5●● (769レス)
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470
(1): 2007/08/24(金) 01:47:12 ID:64hLMZ5a(2/2)調 AAS
うお!松屋からもどればいつの間にか温かいお言葉が。
いやー、実は、俺が書くことに耐えられなかっただけで、携帯ではセックスの話が
もっとはっきり出てたんですわ。正直それで楽勝でヌけるくらい。イヤ抜きませんよ!

まあ、むしろ気にせずアプローチをしてみようというのが今のとこ最有力案。
むしろ、こんなきっかけがなけりゃ動けなかったかもしれないと思うと、
オーナーに感謝←それはムリ。あんな子にそんな濃いセックスを教えちゃイカン!クソ中年!

馴合いだ!と怒られそうなので、ここから完全にROMに戻りますが、お言葉をいただいた方には大いなる感謝を。
471
(4): 2007/08/24(金) 01:49:58 ID:QR0Er0X6(1)調 AAS
この寝取られブログ知ってる?
外部リンク[html]:toran.livedoor.biz

事実は小説よりも興奮するなり
ちんこギンギンになりながら読んでました
472: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 01:57:23 ID:qrBHBrZ6(2/16)調 AAS
>>446の続き

登場人物おさらい
主要登場人物
・安室怜……吉良に思いを寄せながらも、唯に汚されてしまった娘。
        白城大学一年生。
・吉良大和……怜のバイト先の先輩であり、白城大学の二年生。
         怜とは両思いだったが、告白するより前に、怜を唯に犯されてしまった。
・日色唯……白城大学の二年生で、吉良と同じ学部。
        怜とは、ブログで知り合った。前章で彼女の貞操を奪う。

脇役
・飛鳥慎……吉良の友人。
・海本……吉良の友人。
・嘉狩明日葉……怜の友人。
・村雨四乃……怜の友人。

はっきり言って名前までいちいち覚える必要の無い人達。
あぁ、何か多分主要人物の誰かの友達なんだろうなー
ぐらいの認識でも全然読めると思う。
473: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 01:58:45 ID:qrBHBrZ6(3/16)調 AAS
人は、何かを卒業する度に、新しい何かに向かって進んで行く。
精神論や人生訓を語ろうと言うわけではない。
単純な、進学や入学の事を言っているのだ。
小学校、中学校、高校、大学。
半数以上の子どもは大学に進学するし、仮に大学には進まなくとも
九割以上の者は、最低限高校くらいは卒業するものだ。
勿論そうでない者も世間にはいるが、日本では少数派だ。
そして、これら教育と学問の過程の中で、
もっとも進学の際に緊張やストレスを伴うのは、中学校だと言われている。
先輩後輩という関係性は、小学校までには殆ど無かった概念だ。
全生徒に共通して着用を義務付けられる、制服というものも、
私学小学校の卒業でない限りは、まぁ初めてのものだ。
成績というものを小学校までより遥かに意識させられるし、
中学校の部活動の質と重さは、小学校のクラブ活動とは比較にならない。
様々な要因が絡み合って、結果、小学校では問題無く過ごしていた子も
中学にあがった途端に適応出来なくなり、過大なストレスを抱える者も出てくる。
結果、その者は不登校児童となり、多くの場合、白い目で見られる事になる。

高校は、まだ良い。
高校は、中学校時代にその問題をクリア出来た者が進む道なのだから。
しかし、中学校で不登校児童となってしまった者は、どうするのだろうか?
夜間高校に通う、通信制高校に進む、或いは進学自体しない……
いろんな選択肢がある。
その選択肢の中には『中学では順応出来なかったけれど、
それでもとりあえず一般的な高校には進学しておく』というものも、含まれる。
それまでと異なる環境、異なる人間達の中にいる事で、
自分を見下す同窓生達の目から逃れ、再スタートしようと試みるという事だ。
それが実を結び、遅めの順応を見せる生徒もいる。
逆に、まるで効果をあげる事が出来ず、高校でも不登校になってしまう者もいる。
そして、私……安室怜は、そのどちらでも無かった。
474: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 01:59:31 ID:qrBHBrZ6(4/16)調 AAS
自分で言うのも何だけど、元々頭は良かった。
中学の頃は、たまにしか……中間試験や期末試験の時期にしか、登校しなかった。
勉強は、家で一人でしていた。それでも試験の点数は高かった。
けれど、たまに教室に現れた私を、誰もが奇異な目で見た。
こんな子、クラスにいたっけ?
転校生じゃないの?
誰もがそんな、珍しい生き物を見るような目で見てくる。
やがて、毎日の出席確認の際に、名を呼ばれるだけで返事をしない、空席の主なのだと判明する。
「あぁ、アレが安室さんか」
「私初めて見たかも」
ひそひそと話しているつもりかもしれないが、
試験直前の静まり返った教室では、嫌でも耳に届いてくる。
正義感の強い担任が、突然怒り出す。
「お前達、陰口はやめるんだ!
 せっかく安室が、勇気を出して来てくれたんだぞ?
 もっと温かく、自然に迎えてやれないのか?」
あぁ、偽善甚だしい。
何が『勇気を出して来た』って?
ただ単に、試験だけは受けないとまずいから、来ただけだと言うのに。
普段登校しないのは、勇気が無いからではなく、成績や上下関係や
その他諸々の事をとやかく言われるのが、煩わしいからだというだけなのに。
何が『自然に迎えてやれ』だって?
先生、あなたにとって私は、教室に迎え入れる存在なのですか?
私は、客人か部外者ですか?
あなたが一番、私をこのクラスの人間だと思っていないじゃないですか。
やがて、私のプライドはズタズタになっていった。
475: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:00:13 ID:qrBHBrZ6(5/16)調 AAS
こうして私は、抜け殻のように空っぽな中学時代を過ごした。
出席日数は少なかったけど、成績は学年でもトップクラスだった。
内申点は低かったが、それでも進学は何とかなるものだ。
私は学区外の、そこそこの偏差値の高校に入学した。
私の地力から言えば、その高校の授業のレベルは、話にならなかった。
普通に家で予習復習や自主学習をしていれば、勝手に成績トップになれた。
中学の頃に比べれば、上下関係も然程気にならなかった。
中学の頃は部活動に所属するのが当たり前のようなものだったから、
自然と先輩後輩の関係が幅をきかせており、鬱陶しい事この上無かった。
けれど高校では、半数近くが部活動無所属だ。
所属している人間は可哀想だけれど、無所属の人間に先輩も後輩も無い。
そもそも、違う学年の人間と関わる事すら無いのだから。
私は、中学の時程不快な気持ちには、ならずに済んだ。
大人しく通学し、大人しく授業に出席し、大人しく成績トップを維持した。
目立つような真似さえせず、休み時間も黙って本を読んでいれば、
中学の頃とは違って、特別変な目で見られる事も無かった。

ただ、いつも心の中に、靄のようなものがあった。
友人がいないという寂しさ? それもあるだろう。
けれど、もっと根源的なもの。
人間を人間として保全するための、重要なファクター。
いわゆる『自尊心』『プライド』というものが、私には欠けていた。
私は、良い成績をとる事以外には、ただ無為に過ごしていただけだった。
中学の時に味わった、ヒキコモリを見下し侮蔑する、あの視線。
無意識に特別扱い、例外扱いされる、あの疎外感。
いや、特別扱いだとか、例外扱いだとか、そんな生易しいものではない。
病原菌保有者か、良くてせいぜい蚊を見るような、あの生々しい侮蔑の目。
誰もが私を、そこらへんを飛んでいる羽虫のように見ていた。
もはや『見ている』という言葉すら適さないかもしれない。
視界の端に、わずかに留めている、と言った方が適切だろうか。
それも当人達にとって、意識的に視界に留めているわけではない。
飛び回る蚊が、時折たまたま、視界を掠める。その程度。
中学の時に崩壊し、ボロボロにされた私のプライドは、何ら修繕されていなかった。
私を認めてくれる友人を得る事も出来ず、
成績を教師に褒められるという事も無かった。
むしろ、その高校の偏差値にしては妙に高い私の学力を、
教師達は気味悪がってさえいたかもしれない。
そうして、あぁあの子はそう言えば、中学時代はヒキコモリだったんだっけね、
だから内申点は低くて、この高校にしか進学出来なかったんだっけ、
そうそう、出身中学の学年主任からそう伝えられていたっけ、と思い出すのだ。
中学では常に自分の周りに壁を感じて過ごしていたが、
それを言うなら、高校では常に、自分が試験管の中にいるような気分で過ごしていた。
私はいつしか、試験管の中にいても自分以外の人間と繋がり合える世界……
ネットの世界に、度々訪れるようになっていた。
476: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:01:02 ID:qrBHBrZ6(6/16)調 AAS
「そんな時だったわ……あいつと知り合ったのは」
私は吉良君の腕の中で、かつて私の『お兄ちゃん』だった人……
日色唯との、馴れ初めを語っていた。
「へぇ、怜ちゃんが元登校拒否児ね」
「意外だった?」
「いいや、むしろ第一印象そのままだった」
「……正直ね、吉良君」
あれから……私が吉良君と初めて交わってから、二週間が経過していた。
いつしか私は、彼の事を『吉良先輩』ではなく『吉良君』と呼ぶようになっていた。
敬語も、使わなくなっていた。
セックスした回数は、もう覚えていられない程多かった。
付き合い始めてまだたった二週間だけれど、
一日に何度も交わっていたから、回数など事細かに数えていられなかった。
「あいつと知り合ったのは、ブログだったわ……いつか言ったと思うけど」
「あぁ、聞いた覚えがあるね」
私の声も、吉良君の声も、室内に響いていた。
バスルームというものは、やはり声が反響するものなのだなと、改めて思う。
吉良君は浴槽にもたれかかっており、その吉良君に、更に私がもたれかかっている。
勃起した彼のモノが私の尾てい骨のあたりに触れる。
たくましい両腕が、私の体を抱えるようにしながら、
その大きな掌は執拗に私の貧相な乳房を揉み続ける。
「止そう、あいつの話は。どう? まだ気持ち悪い?」
「うん……まだ、少しだけ」
唯に犯された時のトラウマから立ち直れない私を、
吉良君は救い出そうとしてくれていた。
あれから二週間、私も吉良君も、全く大学に行っていない。
一日中裸で抱き合うか、セックスをするか、バイトに行くか、後は食事と睡眠くらいだ。
大学には行きたくなかったし、行けなかった。
行けば、唯がいる。
私とは学年が違うから、遭遇する確率はあまり高くないけれど、零ではない。
ましてや吉良君と唯は同じ学部の同じ学年だから、度々講義で会う。
吉良君が唯を殴り飛ばしたという話は、事後に聞き及んだ。
偶然なりとも二人が再会すれば、今度はどうなるかわからない。
私も吉良君も、唯の顔さえ見たくない、ただそれだけのために、
私の下宿に引き篭もっていた。
477: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:01:53 ID:qrBHBrZ6(7/16)調 AAS
吉良君は私を抱えるようにして、浴槽から立ち上がった。
「あいつに汚された部分、全部俺が綺麗にしてあげるよ」
彼はボディソープを手にとると、両手でそれを擦り合わせた。
見る見る内に泡立ち、滑らかになる。
彼はその滑らかな指先で、私の乳房を覆い隠した。
子どもの額を撫でてやるかのように、優しく胸を触り続ける。
やがて人差し指を立て、爪先でコリコリと乳首を掻きだした。
母乳の出る小さな穴の入り口に、彼の繊細な爪が引っかかる感触が、たまらない。
彼はその後、何分もかけて、念入りに私の胸を洗ってくれた。
この二週間の間で、彼にはもう何度も体を洗ってもらっていたけれど、
この体が唯に汚された事が余程悔しいのか、彼はどれほど洗っても足りないようだった。
「ねぇ、怜ちゃん」
「なに……?」
「あいつに、どんな事されたの?」
突然の言葉に、私は少し体を強張らせた。
「……思い出したくない」
「答えてよ。胸は勿論触られた? よね?
 アソコも弄ばれたんだろうね、当然。中には出されたの?
 それとも、ちゃんと外に出してもらえた?」
「いやっ。思い出させないでってば」
けれど、吉良君はそんな答えでは納得しないようだった。
突然唇を被せてきて、私の言葉を遮らせる。
貪るように舌を伸ばし、わざとらしい程唾液を流し込んでくる。
「この口は? どうなの? フェラとかさせられたの?」
「そっ……そんなの、さすがにされなかったけど……」
「そう。この喉の奥には、まだあいつの汚らしい精液は、流し込まれてないんだね」
そう言って彼は、座るよう私に促してきた。
彼が何を求めているのか、私には理解出来た。
大人しく膝立ちで座りこみ、ちょうど目の前に彼のモノがくる高さにする。
「まだあいつに汚されてないのなら、幸いだよ。
 怜ちゃんのまだ綺麗なトコロ、全部俺が汚していってあげる。
 強姦魔に負け越したままじゃ、悔しいからさ」
478: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:02:35 ID:qrBHBrZ6(8/16)調 AAS
もう見慣れたけれど、やはりこの男性器という代物は、気持ち悪い形をしている。
それを言うなら女性器も大差無いけれど、両者には決定的違いがある。
女性器……膣と子宮と卵巣は、男を受け入れ、子を産むための器だ。
それに引き換え男性器は、ただ貫き、蠢き、精液を迸らせる、凶器だ。
両者が揃わなければ子をなす事は出来ないのだから、
その意味では両者の間に貴賎は無い筈なのだけれど。
どうしても私には、男性器を肯定的に見る事が出来なかった。
それは、嫌々ながら処女膜を貫通され、蹂躙された記憶が引き起こす、心の傷だった。
そしてまだ、傷は癒えていない。
癒えていないにも関わらず、さもそれを可愛がるかのように演技しながら、
私は私の彼氏の男性器を、自らの口にふくむ。
舌の表と裏を使い分けながら、亀頭を入念に舐めまわす。
尿道を蛇のようにつつき、刺激し、先走り汁を味わう。
それは決して美味には感じなかったけれど、こうしてあげると男性は喜ぶらしかった。
唯が私の秘所を舐めた時は、どんな味だったんだろう?
一度吉良君がセックスの時に、私の蜜で濡れた自分の指先を、
私の口の中に滑らせてきた時があったけれど、その時は特に味を感じなかった。
こんなものを、何で男は有難がって吸いたがるんだろう。
「やけに乗り気だね、怜ちゃん。もう少し嫌がるかと思ってたんだけど」
私は、ちゅぽんと音を立てて彼のモノから口を離し、答えた。
「……本当だったらこんなの、唇で触れるだけでもゴメンだわ。
 吉良君のだから、我慢して咥えてあげてるのよ」
「そっか」
吉良君は泡をまとった掌で、私の頭を撫でてきた。
我慢という言葉は、あまり彼のお気には召さなかった筈だった。
当然だろう、我慢してセックスしてあげてると言われて、喜ぶ男はいない。
私のセックスは、これまでずっと我慢ばかりだった。
最初の、唯に犯された時から今まで、ずっと。
吉良君との交わりも全て、本当は我慢しての事だった。
まだ傷は癒えていないのだから、抵抗が残っていて当然だ。
けれど、そんな素振りは極力見せない。見せれば、吉良君が悲しむ。
「……っ! そろそろ、もう……っ」
そう言って吉良君は私の首を両手で固定すると、動けない私の口の中に
思い切り精液をぶちまけてきた。
我慢して飲み込んであげれば、私が喜んでいると思ったのか、彼は満足してくれた。
479: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:03:34 ID:qrBHBrZ6(9/16)調 AAS
「それじゃ……俺今日は、そろそろバイトだから」
まだ幾分まどろんでいる私にそう言って、吉良君はベッドから立ち上がった。
バスルームでのフェラチオの後、部屋に戻ってから何回ヤったかわからない。
半分意識が飛んでいる時もあったので、数はもう数えられたものではない。
「終わったらすぐ帰ってくるから。待っててね」
手を振る私に笑顔で返し、吉良君は玄関から外に出て行った。
私は、一人になった。
「……暇だなぁ」
誰にともなく、私は呟く。
ちょっと前までは、一人で暇な時は、唯とメールするか、唯のブログを覗くかだった。
しかし今では、唯と連絡をとりあうなど、考えられない。
彼がブログにどんな事を書いてるのか、知るのが怖いから、
携帯電話をネットに接続する事さえ出来ない。
全然関係の無いサイトやページを閲覧していても、どうしても
あいつのブログが気になってしまうであろう事が、自分でもわかるから。
しょうがないので、暇潰しにテレビゲームでもしようと思い立った。
実家から持ってきたハードの電源をいれ、テレビのスイッチをつけ、
画面にうつるソフトメーカーのロゴを何とはなしに眺める。
そう言えば、何のソフトが入ってたっけ?
漠然と考えていると、次に画面に映ったのは、対戦格闘ゲームのタイトルだった。
「……馬鹿馬鹿しい」
それは、唯が私に貸してくれたものだった。
近年格闘ゲームの中では主流になりつつあるらしい、
キャラクターの設定やドラマを前面に押し出したタイプだ。
生粋の格闘ゲーマーには、キャラゲーと呼ばれて嫌われる向きもあるとは、唯の弁。
けれど私は、このゲームに登場するキャラクター達の
性格設定や相関関係などに、魅力を感じていた。
唯曰く、私のような女は一部では『腐女子』と呼ばれるらしい。
このソフトが私のハードの中に入っているのは、
しばらく以前に、キャラを気に入った私が、無理を言って借りたからだ。
結局操作が複雑過ぎて、一時間で根を上げたけど。
「これ……返さなきゃなぁ」
思い返してみれば、私は唯から借りたままのものが、結構あった。
ヒモ理論だか何だかの、物理学の解説書。
一昔前の野球アニメのテーマソングのシングルCD。
これらを唯に返さなければならないと考えると、気分が鬱になった。
「今更……会えるわけ、ないじゃん……」
480: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:04:31 ID:qrBHBrZ6(10/16)調 AAS
悔しい。
いつの間にか、気がつくといつも、あいつの事ばかり考えている。
心から好きな吉良君よりも、心の底から嫌悪している唯の事ばかりを。
あいつの事が、脳の中にこびりついて離れない。
まるで頭蓋骨にドリルで穴をあけられて、脳の皺の隙間に
直接精液を流し込まれたかのようだ。
あいつを思い出すと気持ち悪くて仕方ないのに、思い出さずにはいられない。
生活のあらゆるところに、あいつの影があった。
気晴らしに外に出かけてもみたけれど、無駄だった。
あぁ、ここあいつと一緒に歩いたなぁ、とか。
あぁ、あいつここで靴の紐直してたなぁ、とか。
あぁ、あいつここで私を放置して何十分も漫画雑誌立ち読みしてたなぁ、とか。
どこに行っても、どこに行っても、常にあいつがいる。
姿は無いけれど、姿が見える。私の、すぐ目の前か、或いは右隣に。
こんな精神状態で、大学など行けるわけが無かった。
行けば必ず、あいつに会ってしまう。
仮に会わなかったとしても、いつどこで鉢合わせるか、
ビクビクしながら過ごす羽目になる。
あいつが存在しなければ、私は心に傷を抱えながらも、通学は出来るのに。
あいつが存在しなければ、私は今でも大学で友人達と笑っていられたのに。
あいつが存在しなければ、私は大事な貞操を、好きな人に捧げる事が出来たのに。
我知らず、涙が後から後から零れてくる。
失ったものが大き過ぎて、体の中から溢れてくる。
あの日、あいつを部屋に入れなければ良かった。
いやそもそも、あの日、あいつを呼ばなければ良かった。
何故私は、あいつを自ら呼び求めたりしたんだろう。愚か過ぎて言葉も無い。
「うぅ……くっ……」
声を殺して下唇を噛む。
この呪縛から、解放されたい。苦しみを解き放ちたい。
ふと気がつくと、私は洗面台にいた。
泣きはらした顔が、鏡の向こうから私を見つめてくる。
私が涙を拭うと、鏡の中の私も、涙を拭った。
私が剃刀を右手に持つと、鏡の中の私は、左手に同じものを構えていた。
481: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:05:21 ID:qrBHBrZ6(11/16)調 AAS
手の甲に刃を突き立て、すぅっと引く。
綺麗にパックリと避けて、中から血が染み出してきた。
痛む皮膚に慌ててティッシュを被せるけれど、そんなものでは止まらなかった。
「思ったより痛くないけど、思ったより出血するのね……」
痛覚が思考回路を麻痺させているのか、私は思いのほか冷静だった。
いや、或いは、逆に完璧に錯乱していたのかもしれない。
水で洗って消毒するという、当たり前の処置を忘れて、呆然と傷口に見入ってしまったからだ。
そして不思議と、傷口を見ると心が安定していく気がした。
血液に混じって、心の中の毒素が排出されているような感じになった。
私は、狂っているのかもしれない。
こんな事を、気持ち良いと思ってしまった。
止血もせずぼーっと過ごしていると、玄関のドアノブを回す音が聞こえた。
「ただいま。晩御飯の材料買ってき……」
そこまで言いかけたのに、吉良君は手に持っていたビニール袋を落として
慌てて私に駆け寄り、ありったけのティッシュと、持っていたハンカチで
私の手の甲を押さえてきた。
殆ど意識を保っていなかったので気付かなかったけれど、
彼がバイトに出かけてから、いつの間にか五時間は経過していた。
「何やってるんだよ、怜ちゃん!」
「だって……なんか、こうしたかったんだもん……」
本気で心配してくれる吉良君の、真剣な眼差しに、私はまた涙を流してしまった。
あぁ、愚かだ、私は。
こんなに私を大事に思ってくれる人がいるのに、
何故自傷などという、情けない事をしてしまったのだろう。
こんな私を見て、唯なら何と言うだろう。
「……もう限界だ。明日、あいつを学校から追い出そう」
唐突なその言葉に、私は疑問符を投げかける事さえ忘れていた。
「あいつ一人がいるせいで、俺達二人が……いや、怜ちゃんが、
 こんな思いをしなけりゃいけないなんて、間違ってるよ。
 犯罪者は追放するのが当然だ」
その時沁みるように感じたのは、消毒薬を塗布された傷口だったか、
それとも私自身の心だったか。
482: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:06:05 ID:qrBHBrZ6(12/16)調 AAS
翌朝。
私と吉良君は、久しぶりに大学の門をくぐった。
一限目が終わって、休み時間になったばかりの頃だった。
次の二限目、吉良君と唯は、近代美術史の講義を受ける予定の時間だった。
吉良君は私に、柱の影で待つように言うと、指定の教室の中に入って行った。
程なくして退室してきた辺りを見ると、まだ中に唯はいなかったようだ。
「このドアの前で待つ。怜ちゃんは、あいつから見えない所に隠れてて」
「うん……でも、どうするの? 喧嘩……するの?」
「そんな事しないさ。下手に教務課にでもかぎつけられて、
 俺まで停学処分にされちゃ、たまらないからね」
平和的に解決するから、と彼は微笑んだけれど、
どういう意味での平和的解決かは、聞くまでもないようだった。

やがて、教室の近くの階段の方から、複数の笑い声が登ってきた。
私にはすぐに、その声の主がわかってしまった。
気持ちの悪い事だけれど、あいつの声はもう私の中に刷り込まれてしまっている。
「……から、中身がわからないって事が問題なんだよ」
「そうまでして金払う意味がわかんねーってば」
何の話をしているのかわからないが、唯は、唯の友人達を連れて
賑やかに階段を上ってきた。
美術史の教室の反対側にある空き教室の、ドアの窓ガラスの部分から、慎重に覗き込む。
唯の首元には、相変わらず私とペアで買った、チョーカーがぶら下がっていた。
吉良君が、唯に詰め寄っていくのが見える。
「日色、少し話しがある」
「おいおい、苗字は気に入ってないから、唯って呼んでくれってこの前言っ……」
「御託はいらない」
有無を言わせないその迫力に、唯よりも先に、私が怖気づいた。
むしろ唯は怖気づくどころか、飄々と受け流しているように見える。
「怜の話か?」
「お前が馴れ馴れしくあの子の名前を口にするな、レイプ犯のくせに」
「……おい、唯? レイプって一体……」
吉良君が露骨に口にしたその言葉に、唯の周りにいた者達が反応する。
「レ、イ、プ、ねぇ……。
 人聞きの悪い単語を往来で堂々と口にすんなよ。皆ヒくぜ?」
「だったら、お前が往来に来なければ良い。
 今すぐ帰れ。二度と大学に来るな」
「はぁ? お前何様よ。そんなに俺の事が嫌いなら、
 お前が大学に来なけりゃ良いだけの話じゃん」
その瞬間、吉良君が唯の胸倉を掴む。
唯の友人達が静かにザワつくのが、ドア越しの気配でも察知出来た。
その内の一人が、よく事情はわからないまま、とりあえず吉良君の手を
唯から離させようとするが、そんな事で吉良君が手をゆるめるわけはなかった。
「よくもぬけぬけと……怜ちゃんは、お前に追い詰められたせいで、
 昨日はとうとう自分の手を切りまでしたのに……っ」
「……自傷って事か? ……なるほど、ね。
 ま、あいつはいつか、そういう事しそうだと思ってたよ」
唯は自分の友人達に、大丈夫だから先に教室に入っているように言った。
そうして吉良君を連れて、人気の無い非常階段の方に向かった。
483: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:06:54 ID:qrBHBrZ6(13/16)調 AAS
非常階段は、幸い私が隠れている教室のすぐ傍にあった。
非常階段と言っても、ドアはガラス張りで丸見えだし、
それに唯も吉良君もドアを閉めようとしなかったから、傍の私には声も筒抜けだった。
「こないだはいきなり殴りかかってきたかと思えば、
 今度は性犯罪者呼ばわりするわ、自主退学しろっつってくるわ。
 お前に何の権限があんの?」
「勘違いするな、変態。平和的に解決してあげようって言ってるんだ。
 これ以上ゴネるようなら、法に訴えてやっても良いんだ」
「おいおい、強姦罪は親告罪だぜ?
 第三者のお前が何言ったって、事は進まねぇよ。
 第一お前、裁判の事ロクに知らないだろ。訴状の提出の仕方知ってんの?
 金どんだけかかると思ってんの? それに、法廷であの子に証言させるわけ?
 セカンドレイプって言葉、知ってる?
 法廷での質問攻めに、あいつが耐えられんの?
 第一、どう証言するわけ? 俺を部屋に呼んだのは、あいつの方だぜ。
 自分から男誘っといて、ヤられたら訴えるなんて、法的には通るだろうけど
 世間的にはムシの良い話……」
「黙れっ!!」
それまでは二人とも、廊下にいる者達には聞こえない程度の声で話していたけれど
吉良君の怒号だけは、離れた位置で談笑していた無関係の人達の耳にまで、届いた。
「お前一人がここにいるだけで、俺も彼女も大学に来れないんだ。
 俺は兎も角、被害者であるあの子が我慢しなけりゃならない道理は、どこにも無い。
 本当ならお前は殺されても文句が言えない立場なのに、
 退学程度で済ませてやろうと言ってるんだ」
「……なら、殺せよ」
「何?」
「殺したいんだろ? 殺せば良いさ。あの子がそれを望んでるのか?」
484: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:07:41 ID:qrBHBrZ6(14/16)調 AAS
その物言いが、殊更に吉良君を逆上させたようだった。
やはり平和的解決は難しいらしい。吉良君は、本能的に唯に飛び掛った。
「止めて、吉良君!」
思わず割り込みに入った私の、止めようとする声も手も無視して、
吉良君は唯の顔を何発も殴った。
唯のかけていた色眼鏡は非常階段の上を転げ落ちていき、鉄柵の隙間から下に落下した。
首にかかっていたチョーカーは無理矢理引きちぎられ、傍の叢に放り投げられる。
「がっ! ごふっ! げふっ、お……っ!」
馬乗り状態の吉良君の拳を、唯には避ける事は出来なかった。
非力な私には、彼の腕を掴んで止める事も出来なかった。
それを止めたのは、先程教室に入っていった筈の唯の友人達と、
偶然その場に居合わせたらしい、海本君と四乃ちゃんだった。
「止めろ吉良!」
「何があったんですか、吉良先輩!」
海本君が吉良君を唯から引き剥がすと、唯の友人達が、倒れた唯に駆け寄った。
「大丈夫か、唯」
唯を心配するその言葉すら、吉良君に火をつける結果となった。
「何でそんな奴の心配をするんだよ!
 怜ちゃんは、誰にも何も打ち明けられなかったばかりに、
 誰にも心配してもらえなかったのに!」
確かに、唯に犯されてから最初の数日間、私は一人で悩み続けた。
何も知らなかったとは言え、私をほんの数日でも
一人で苦悩させてしまった負い目が、吉良君にはあるのかもしれなかった。
事情を知らない海本君達が、問うような目で私を見てくる。
けれど、私には答えられなかった。
余りある屈辱と恥辱を味わったあの体験を、どうして口に出来ようか。
あぁ、なるほど、これが唯の言った、セカンドレイプというものか。
確かに私には、法廷で証言する事など、出来そうも無かった。
もっとも、訴えようという気さえ、無かったけれど。
485: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:08:22 ID:qrBHBrZ6(15/16)調 AAS
のろのろと立ち上がった唯の顔面は、左頬が赤く腫れ、唇が切れていた。
ぺっと唾を吐くと、それには赤黒いものが混じっていた。
「……俺が消えれば、怜も吉良も納得するんだな?」
「とっとと失せろ、犯罪者」
吉良君は、寒気がする程の即答を返した。
唯は服についた埃を払うと、叢を一瞥した。
投げ捨てられたチョーカーを気にしたみたいだった。
けれど、それを拾いに行く事はしなかった。
「じゃ、俺帰るわ」
唯は友人達にそう言うと、フラフラとおぼつかない足取りで歩き出した。
眼鏡が無いから、足元が不確かなのかもしれない。
これが唯と顔を合わせる最後になるかもしれないと思うと、
滑稽だけれど私は急に、彼に借りたまま返していない本やCDの事を思い出した。
「……ねぇ、借りっぱなしのゲームとか本とか……」
「いらねぇよ。
 そんなモン返すために、わざわざまた俺に会いたかねぇだろ。
 ……じゃぁな」
事情を知らない四乃ちゃんが、兎に角これでは駄目だと思ったのか、
立ち去ろうとする唯を呼び止める。
殴り合いでも、ましてや一方的なリンチでもなく、
話し合って結論を出すべきだと判断したのだろう。
けれど、四乃ちゃんの手が肩に届く前に、唯は歩調を速めて、その手を避けた。
「俺に触らない方が良いぜ、吉良のお友達さん。汚れたくないだろ?」
それは、血と汗と泥にまみれた彼の体に触れて、手が汚れてしまう事を差したのか。
或いは、私を汚した強姦魔として、自分を嘲ってそう言ったのか。
帰りに新しい眼鏡買わなきゃなぁ……と独り言を呟きながら、唯は去って行った。
以降二度と、彼は大学に現れなかった。
安心して通学出来る日々が、久しぶりに私と吉良君の元に帰ってきた。
486: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/24(金) 02:09:03 ID:qrBHBrZ6(16/16)調 AAS
第三話終了
487: 2007/08/24(金) 02:15:34 ID:1MXFtApU(2/2)調 AAS
>>466
うわーきっつー…
俺もバイト先のオーナーがむかつくオッサンだから気持ちわかるわ
せめて俺もお前の幸せを祈らせてもらおう

>>468
同志がいたようだ正直、この大量投下、全部読んだら心臓が破裂するわ
488: 2007/08/24(金) 09:14:31 ID:CsqYhUh0(1)調 AAS
>>471
ちょっと見たけど男視点だけは駄目だな
あと、堕ちる経過が見たいわけで結果だけなのはそんなに魅力無い
489: 2007/08/25(土) 00:45:42 ID:9NjWQoh2(1)調 AAS
>>448
その後妊娠した挙句捨てられ主人公のところに戻ろうとするが主人公にはすでに可愛い恋人がいたという展開で脳内補完した

>>470
お前それで気にせずアプローチできるって純粋に尊敬するわ。
俺だったら間違いなくバイトやめる
それだけにうまくいってほしいが…どうだろうなぁ
490: 2007/08/25(土) 08:13:45 ID:QYxKTK/E(1/2)調 AAS
>>471
面白い話だったが寝取られというより修羅場風味だな。
逆転裁判のような話だわ。
でも面白かった。
こんな糞な女がいたら俺勝てる自信ないわ。
つーか人間じゃねぇよこの女、恐ろしすぎる。
491: 2007/08/25(土) 08:52:41 ID:QYxKTK/E(2/2)調 AAS
というか何気ない>>466の話が心に響いたわ。
夏休み明けに非処女になりました!みたいな雰囲気が出てる同級生みたいな。
492: 2007/08/25(土) 15:37:46 ID:YlGM49+v(1)調 AAS
>>471
かなり面白かったけど、性的に興奮はしなかったな
493
(2): NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:15:03 ID:oKL6Geec(1/9)調 AAS
すみません、パソがいきなりクラッシュしました。
しょうがないから買い替えてきましたー。
で、かなり書いてたの全部パァ…。
泣かないもんね、泣いてなんかやらないからね、俺が泣くのは女に振られたときだけだ。
いや、言ってみただけです、すみません。

>>471
なんて言うか、すごく悲しい話だと思いました。
このK子さん、酷い書かれかたをされてますが、きっと旦那さんはわざとそう書いたんでしょうね。
K子さん、まるで頭のおかしい人みたいに書かれてますが、きっと本来は全く別の人なんでしょうね、
書かれた内容から察するに、正義感があって、多少は過剰演出な人、みたいな。
それゆえに、まるで洗脳に掛かっているみたいに読めてしまいます。
でないと、旦那さんがあれほど好きだったと書くはずがないです。
K子さんはきっと、辛かったんでしょう、壊してしまった事とか壊してしまったのが自分である事が。
自分のせいだって思うと、耐える事が出来なかった、だから旦那さんのせいにするしかなかったんでしょうね。
きっと壊してしまった結婚の日々は、K子さんにとって、大切なものだった時期があったんでしょうね。
だからその価値は認めたくなかったんだろうし、悪いのは旦那さんでなくてはならなかったんでしょうね。

旦那さんも、そこらは薄々は感じていて、それでも守らなくちゃいけないものの為に、K子さんを憎まなきゃやってられなくって。
それも辛かったんでしょう。
ページの隙間に、「それでもK子はただ、ぼくといるだけで幸せそうな顔をして楽しそうに振舞ってた過去もあったんだ」なんて文章が見えそうなのは読みすぎでしょうか?
494: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:28:11 ID:oKL6Geec(2/9)調 AAS
正義感があって、多少は過剰演出な人、みたいな。
↑元々、と言うか昔は、って意味です、あのブログの時点ではもうどうしようもなく・・・。

>>466
お願いだから、
死にたいほどつらいのに、殺したいほど憎いのに、
気になってしょうがないのに気にならないとか、
アプローチの掛け方なんて、そんなの方法なんて殆どないのに、平気だなんて、
そんな見るに耐えない事を書いちゃだめだよ。
はっきり言って、10回くらい泣かされてしまった。(今も泣いてしまってるぞ)

もちろん、あなたの気持ちが全部わかるなんて思ってない。
思ってないけど、そういうのがどれほど辛いかってのは知ってるつもりでいる。
やるせない気持ち。
もっていく場所も心の中に置き場所すらない気持ち、どうしようも無いなんて嫌すぎるよな。
でも俺くらいは応援しててもいいだろ?
昔の俺の事なんて、もう応援のしようもないからサ。

って事で待っててくれた人がいたのかどうかすら分かりませんが、投下いきまっす。
495: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:30:44 ID:oKL6Geec(3/9)調 AAS
その夜、俺は一睡も出来なかった――。

責任を取るからもういいだろう。
一瞬、頭をよぎった考え。情けない、救われたがる俺自身に反吐が出る。
俺は救われる立場じゃない、救わなければならない立場。

責任を取るってどういう意味。
下衆のような男達に、乱暴されてしまった彼女の心の傷は、たとえ記憶に無かろうと有ろうと、
決して消えたりはしない。きっと、それは永遠に彼女の心に残り続ける傷。
右耳が音を捉える事はなくなった。映画館ホームシアター、臨場感溢れる音とか、もうそんなの関係ない世界。
電話を取る時も、必ず左耳で取らなければならない。人ごみで知り合いに声を掛けられた時、声の主を探すのは大変だろう。
そんな世界の住人にしてしまった。

もう決して取り返せない事にどうやって本当の責任なんて取れるのだろう?
時間を撒き戻せない限りはそんなの不可能だ。

『責任を取る』リリックじゃあるまいし、そんなのただの方便だ。責任を全うする方法なんてそもそも一つ、
予想出来る範囲で悪い事態を最大限に避ける事。
俺はそれが出来なかった。出来なかったからこうなった。
だから、俺がしなければならないのは、責任を取る事じゃなく、罪を背負う事じゃないか――。

そうして、めぐを想う。
本当は吹っ切れてなんていなかった。未練がいっぱい残っていた。
また会えて嬉しかった。楽しかった。彼女は変わっていた。上手に過去を整理出来たのだろうか。俺が望んだ風に変わっていてくれていた。
そう思っていたのはただの希望的観測で――。

もう俺からはきっと遠くの存在になってしまっていたのだろうか……。
期待していた、はっきり期待はあった。
今度こそ、って思っていたのは紛れも無い本心だったように思う。

でも、もう、でももう限界だ、無理だ――。
これで三度目、三回目のトラブル。どんどん酷くなる、今回は人を巻き込んだ。俺の弱さが他人を傷つけた。
しゅうちゃんに一生背負わなければならない傷を負わせた。立ち直った今のめぐにとっては、きっと大切な人だろう、
かけがえの無い人だろう。そのしゅうちゃんに取り返しの付かない事をした。
だから、もう俺は諦めよう、捨ててしまおう。きっともう――方法なんて残っていないから。

そうして翌朝、いつもの様に病院に通う。
496: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:31:49 ID:oKL6Geec(4/9)調 AAS
病院のベッドの上、しゅうちゃんは昼寝をしていた。
別に自堕落なわけじゃなく、体を癒すために、体が求める睡眠なのだろう。
そっとベッドの脇の小さな丸い座面のパイプ椅子を引き寄せて、腰を据える。
すーすーと、安らかな寝息を立てているしゅうちゃんに心が痛む。
寝顔を見つめて思う。

本当はどうしていいか、分からなかった。
責められもせず、叩かれもせず、詰られもせず、ただ彼女の傍にいるだけ。

そうして視線を落とす。
あまり寝顔を見るのも失礼だろうし…、持参した参考書を広げながら、それでも集中できず、窓の外を見ていた――。

そんな数日、一週間も経たないくらい、過ごした日々。

夜、一人の部屋で携帯が鳴った。
めぐからだった。そういえばその日はしゅうちゃんの見舞いに来てなかったようだった。
それでだろうか?

でも違っていて、その内容はあまりに、あまりに俺にはどうしようもなさ過ぎて。
流す涙すらも出てこなくなる言葉。

「どうしたの?」時計に目をやる、午後8時すぎ、寝るには早い、出かけるには少し遅い。話がしたかったのだろうか、でも俺は今は誰とも話したくない。
だって、もう、俺は、俺は、『責任を取ってもらう』『わかった』そう、これが今の俺の立場。
めぐにはもう、もう……。
忸怩たる思いで会話を続けようとする。

でも、その話はあまりに俺の想像の範疇を超えすぎていて、正直、細かい会話なんて忘れてしまった。

「あたしいま、ホテルにいるの」

固まった。俺は固まった。感情も、心も、頭も、体も、いや、心臓の鼓動すら止まったかのような気がした。
言葉の継げない俺に、めぐは確か、こんな事を聞いてきたように思う。

しゅうちゃんの事、しゅうちゃんの今後の事、俺の事、俺の今後の事。
生活の事、進学の事、通学の事、あとは似たような事――。

いま、そんな話をしている場合だろうか。頭の整理がどうにもつかない俺に、めぐは
「ああ、いま、あの人、シャワー浴びてるから」
電話を切りたくなる、叩き壊したくなる、嫌だ、そんな言葉聞きたくない。
『あの人』やめてくれ、今まで何をしてたんだ、めぐ、もうやめてくれよ…。
「外で汗かいちゃったからって……」
497: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:33:17 ID:oKL6Geec(5/9)調 AAS
ぎりぎりの頭の回転で、少しだけ動く頭の回転で、やっと尋ねる。
「今、電話してていいの?」
「うん、大丈夫だと、思う……、ね、あたしどうするべきなのかなぁ?」
何を聞いてるんだ?今、彼氏と…一緒に、……そんなときに俺に、俺に電話なんてしてくる神経が分からない。真意を悟れない。
それでもしゅうちゃんが心配なのだろうか、それほどにしゅうちゃんが心配なのだろう。
そして、それは――俺のせい。

『勝手に、すれば』

小さな声でやっと、答える。小さな、小さな声だったと思う。
それでもなんとかめぐの耳には届いたのだろう。

「わかった。する」

それだけ聞こえた、そうして少しの沈黙の後、電話は切れた。
俺はめぐに、自分の事は自分で決めろって意味で言った。それに対して、そうするって答えてきた筈。
なんだけど、違う予感もある……。
勝手に男となんでもすればいいって意味に取られやしないだろうか?
ふと、そう思う。いや、たぶんそっちの意味でそうなんだろうと思う。
頭がもっとくらくらしてくる。冷静なのか慌てているのかすら自分でも分からなくなるくらいに、呼吸が出来なくなる。俺は無意識に息すら止めて、体中こわばったように固まっていて、
俺はそのままベッドに崩れるみたいに倒れこんだ。
体が重い、それでいて冷たい鉛の塊でも飲み込んだみたいに体の芯から体温が下がったような感覚。
頭が痺れる、指先がわななく。

なんで、なんでそんな電話してくるんだよ!

今からホテルで『あの人』この前のあいつだろう!セックスする前になんて、今の俺にとって考える事すら耐えない状況で電話なんてしてこないでくれよ!
俺の気持ちに全く気が付いてないとでも言うのだろうか?
俺なんて全然見えてなくって、気が付いてないのだろうか?
それとも、別に俺なんてどうでもよくって、俺の気持ちなんてどうでも良かったのだろうか?

あんなに、あんなに楽しそうにしてくれてたのに。
再会して、俺の横で、俺の横にいるだけで、それだけで幸せそうに笑っていてくれたのは俺の錯覚、願望、気のせいだったのだろうか……。

思わず、電話に手を伸ばしそうになる。でも、電話を握り締める事さえ出来なかった。
どんな風に声を掛けると言うのか。まさか、今だけはそんな事をしないでくれ、とでも言うつもりなのだろうか。
やるなら俺の知らない、気が付く余地が無いところでやってくれとでも言うつもりなのだろうか。
それとも、『そいつ』じゃなくって、俺としてくれとでも言うつもりなのだろうか。
俺はもう、そんな事の出来る立ち位置にいないくせに……。

体は、心の痛みがそのまま体の痛みになってしまうくらいにきつくって、つらいのに、頭だけはそれでも少しだけ回っていて。

しばらく思考を辿りつつ、すこしだけ時間が過ぎて――。
不意にまた、携帯が鳴った。
498: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:34:00 ID:oKL6Geec(6/9)調 AAS
めぐだった、はやる心を抑える、落ち着け、落ち着け、呼吸を整える。未遂に終わって帰ったのだろうか?
泣いていた、分からない、何があったのかわからない。
今、電話してていいのか聞く、暗に今、どうしているのかを聞きたかった…。
「今、家にかえったとこ…」
帰ったところ…。そうして何気なく時計に目をやると、午後10時半、あれから2時間半くらい。
いつのまにこんなに時間が経っていたのだろう。
そして、いま帰ったところ、今までどこにいたの、なんて聞くまでもなくって。

「明日はお見舞いに行くから」

それだけ聞いて、電話を切った。
部屋の中がくるくる回る、天井も床もなく、ベッドも机もなく、何も見えない、いや見えてるけど認識できない。
意識と感覚だけがくるくる回る。

喪失感、絶望感、たぶん、そんな類のものだと思う。
悲しい、辛い、たぶん、そんな類のものだと思う。

ああ、やっと分かった。俺は自嘲的に少しだけ哂う。哂いが引きつる。
俺はもう希望しちゃいけないなかったんだ。望みなんてもっちゃいけないんだ。
めぐとどうにかなろうなんて、虫が良すぎて、甘すぎて、どうしようもなく楽観的で、
だから、だからもう期待なんて持たずに、普通に過ごそう、
友達、それだけ、それ以上はない、それ以下にもならない。
無理やり頭に固定する。たまに心が揺れたりするときもあるかもしれない、なんてそんなのご愛嬌。
意思で自分を固定する、揺れない自分に期待する。

その夜、決心した夜、やっと遅ばせながらに決心できた夜。
あまり眠れなかった夜。

翌日、病院につくのはいつもより遅い時刻だった。

しゅうちゃんはベッドに腰掛ながら、俺が着くのを待ってたようだった。
俺の顔を見るなり、首を少し傾げて微笑みながら中庭に出ようと、俺を誘った。

しゅうちゃんが言葉をつなぐ。
どうやら新学期までに退院出来そうだと。
さっきまでめぐが見舞いに来ていたと。一瞬だけ体がギクリとする。大丈夫だ、もう揺れないんだと自分に念じる。
今日は初めて一人ではなく、来ていたと。口ぶりで分かる、一緒に来た相手。
そうして、めぐに彼氏が出来た、と言っていた。

ああ、そうか、記念日だったのかもしれないな、昨夜は…。
まるで全くの他人事のように、しゅうちゃんの話を聞いている俺。

そうしてしゅうちゃんは空を仰いでいた。大きく。そうして俺に語りかけていた。

「ありがとう、お世話させちゃってごめんね。」
「ねえ…」
そうして、質問をぶつけられた。

「そうくんって、めぐちゃんの事、好きなの?」
499: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:35:36 ID:oKL6Geec(7/9)調 AAS
答えられない、答える資格もない、なにもかも無くしてしまった、何も出来ない間に無くしてしまった。
もう、めぐは遠くへ行ってしまったような情景。辺りに靄がたちこめ、立ちすくむ俺しか見えない。そんな情景。

それでも『うん』と、『もうどうしようもないけどね』そう笑って答えようとして、――失敗してしまう。
堪えなきゃと思って、堪えようとして、でも堪えきれなくって。
視界の中で全てが滲んで歪んでゆく。俺の心もきっと歪んでいたに違い無い、ずっと前からきっと。
俺の目から直接、堪えきれないものがポタ、ポタと落ちて行った。
もう無くしてしまったから、今だけは、今だけはみっともないのは分かってるけど。

俺はきっと、この瞬間までちゃんと理解出来ていなかったのだと思う。
本当に自分がどれほど深く、深くめぐを好きでいたのか。
出会ってからの一年間、どんどん惹かれていった一年間。
俺の部屋に生まれて初めて通した女の子はめぐだった。
初めて腕を組んだのもめぐが最初だった。
女の子とあんなにゆっくり夕日を眺めたのもめぐが最初だった。

シーズンオフの海も行った。

岬沿いの曲がりくねった道路を自転車で二人で駆ける。砕ける波間が輝いて見えてとても綺麗で。
駐車場の隅に2台の自転車を並べて停めて、駐車場の真ん中、鉄製のポール、照明用だったと思う。
めぐがそれに両手で掴まり、その周りをくるくる回ってはしゃいでいた。
缶のジュースを買ってきた俺に飛びつくと、そのまま波打ち際の近くまで歩いていった。

山のてっぺんから下を見下ろしたりもした。

苦しい、きついと、めぐは文句ばかり言っていた。予定よりも一時間以上も遅れて到着した。
少し気温が低い、肌寒いなとこぼすめぐの肩に俺は自分の上着を羽織らせた。
そうして見下ろした風景は今も忘れない光景だ。

映画も行った、買い物なんてしょっちゅうだった。

それから、俺の知らないうちに…いろいろあって、めぐが傷ついて、俺はそれを放ってはおけなくって。
ありったけの勇気を振り絞って、ピエロだと笑われる覚悟で。
少しだけ受け入れられた予感がして、少しずつだけど、またうまくいくなって期待があって。

その後、絶望を知って。
心が壊れて、やけにもなって、いろんな事を憶えても、それでも決して忘れてはしまえなくなってて、少しだけ俺がましになった頃に、また再会できて。
また、期待してしまった――。
500: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:37:20 ID:oKL6Geec(8/9)調 AAS
昔のめぐより、少しだけ、いや、だいぶ大人びて見えるめぐがいて。落ち着いているように見えるめぐがいて。
それでも俺を見る視線が暖かくて、優しくも見えて、瞳はやはり、綺麗なままで――。
嬉しかった、少しずつだけど、また距離が縮まっていくのを感じていて。
あと一歩、いや半歩でもいいから…、もう少しだけ距離が近くなったら、思い切って気持ちを打ち明けてしまおうか?

でも、その半歩は縮まる事はなく――。
きっと、その半歩は俺には無限の隔たりだったのかもしれない、そういう運命だったのかなって。

もしかしたら、あの電話は俺に止めて欲しかったから?なんて思いあがりも甚だしい。
でも、きっと、俺の一言、『勝手に、すれば』自分の事は自分で決めればいいって意味。
それはちゃんと伝わっていたのだろうか。これはこっち勘違いなんかじゃなく、伝わっていなくって。
だから『する』。そして、した。それは勿論、めぐの勝手だし、俺の出る幕じゃないのかもしれないけれど。
でも、少しだけ、少しだけ俺の事を想って欲しかった。
いや、きっとそれも違っていて。
俺はきっと、めぐの一番に成りたかったんだな、成りたがっていたんだな、と思う。
でも、それはもうどうしようも無い、自分でどうしようも無い状態にしてしまっていて。

そう思えて、また涙を流した。しゅうちゃんの肩に手をおいたまま、これ以上ないくらいに無様に。
しゅうちゃんは俺が落ち着くまで、一言もしゃべらず、空を仰いだまま、ただじっとしていてくれた。

「ごめん…」いきなり泣き出してしまった自分が恥ずかしくなる。
「ううん、こっちこそ変な事聞いちゃってごめん」

「どうしようもない奴だな、俺って」
しゅうちゃんは返事をしなかった。

そうしてしゅうちゃんは、しゅうちゃんなりのケジメの言葉を口にする。

「今日までアリガト、責任取ってくれたおかげでだいぶ助かったよ。だからもういいよ」
意味が分からない。責任?そんな簡単なものじゃないだろう?
「だからもういいって……?」
「だから、もういいってこと」
「えと……」
「あはは、やあね、あんなのほとんど冗談よ」笑っているような、それでも寂しいような表情でしゅうちゃんが言う。
「それに変な噂がたつの、困るし」少しだけ微笑んでそう言った。

そっか、みたいな返事を返したと思う。しゅうちゃんはまた、空を仰いでいた。
しゅうちゃんから目を逸らし、わかった、と答えた。
それから少しだけ会話をして、俺は病院から戻った。
明日は分からないけど、また来るね、と言っておいた。

それから、数回はお見舞いには行ったと思う。
退院して、しばらく、そして、しゅうちゃんとは連絡をあまり取らなくなった。

様子だけはどうしても知りたかったので、その代わりにめぐと連絡を取っていた。
辛いと感じたり、そんな感覚すら麻痺していたり、しゅうちゃんの状態だけは気がかりで、連絡は取り合っていた。
501: NTRタト思タラNTテタ 2007/08/26(日) 00:38:05 ID:oKL6Geec(9/9)調 AAS
そうして、月は9月に入り、しばらくしてから電話でめぐと話した会話。

「ところでさ」
「うん……?」
「タバコはやめなよ?」もう俺にはこれくらいしかしてやれないから。
「そうくんだって吸ってるくせにっ、それにあたしのは吸い込んでないもん」
「知ってるけど、続けたらくせになるぞ」いや、もう遅いかもしれないけど。
「自分だけはタバコ吸ってていいの?」これで掛かったようなもの。
「ふうん、つまり、俺が吸うから吸うんだね?じゃ、俺やめるから、めぐもやめて」論法は滅茶苦茶だが、ここは言葉の尻尾を捉える。
「う」言葉が繋げないめぐ。知ってるかい?ここは詰まってくれると助かるんだぜ?
「それにタバコ続けると、葉がヤニで染まっちゃうぞ?いいの?笑顔でこぼれた口元から黄色い歯…、
そんなの100年の恋も醒めるぞ?」多分、これで効くはずだ。
「は…はい、やめます、言う通りにします」クスって何か聞こえた気がする。
めぐは笑っていた、俺も少しだけ笑った、何か久しぶりに笑ったように感じるのは気のせいだろうか。

こうして少しずつ、時間の流れを穏やかに変えていき、受験を迎え、俺は当初よりもランクを落とした大学に入学した。
結局、地元に近い大学に入学した。
502: 2007/08/26(日) 10:09:58 ID:Hf4thoMc(1)調 AAS
今回も乙。
相手の気持ちにたって考えられる人はいいね。
503: 2007/08/26(日) 15:30:28 ID:U0VPzKSK(1)調 AAS
>>493
なんか気持ち悪いなお前
504: 2007/08/26(日) 19:01:42 ID:AqUBQLfH(1)調 AAS
>>493
そうそう、俺も読んだが2人の仲が壊れる経過が書かれてないんで
K子が絶対悪みたいに書かれてるのはどうかと思った
505
(1): 2007/08/26(日) 20:26:15 ID:5aZJobrH(1)調 AAS
ナルシストっていうか自分に酔ってる人じゃないとこんな文章書けないでしょう。
だから、読みたくないならスルーするのが基本ですよ。悪態はいけません。

まぁ他の職人さんにからんでくるのはちょっと痛いですけど。
506: 2007/08/26(日) 20:57:13 ID:6Lhki7GI(1)調 AAS
お前のレスは悪態じゃねえの?
507: 2007/08/26(日) 21:43:07 ID:i6crG9fv(1)調 AAS
気分悪くなる人いるのは当然と思う
どれもかなり強烈だからね
嫌いなのは読まない方がいいよ
各々コテハンなのだから読む前に識別つくだろう

ここ1、2週間夏祭り状態で
各人ともレベル高いだけに、きっついぜ
508: 2007/08/27(月) 00:12:59 ID:/nZZnw3c(1)調 AAS
作品の批評ならいざ知らず、作者本人の人格に対する批判は抜きにしようぜ。
気分悪いなら言語化せずに>>505も言っている二行目を心掛けよう。
スレの雰囲気を悪くしちゃいけない。
509
(1): 2007/08/27(月) 05:42:34 ID:A8ht8d2a(1)調 AAS
憧れの女っていうコミック買ってきたんだけど、なかなか良い寝取られだった
(最後は元鞘なのが残念だったけど)
他に良いNTRコミックってない?
510: 2007/08/27(月) 06:51:02 ID:PIbkumn6(1)調 AAS
>>509
作者は冬の同人で、ヒロインの堕ちる過程を書くらしい。
511: 2007/08/27(月) 06:57:30 ID:3dfx0JK2(1)調 AAS
蛇足のような気がする
512: 2007/08/27(月) 07:17:19 ID:nn/kQ5mH(1)調 AAS
元鞘とわかってる上でのNTRってのもまた別の味がある…のか?
513: 2007/08/27(月) 10:45:35 ID:2gpDqv1+(1)調 AAS
来週結婚予定の彼女が、他の男とお泊り旅行とかしてたよ (((( ;゚∀。)))アヒャヒャヒャヒャアヒャヒャヒャヒャ
2chスレ:news
514: 2007/08/27(月) 11:32:57 ID:swNgA0AZ(1)調 AAS
ここは創作板でつよ
515
(4): 2007/08/28(火) 23:40:16 ID:C+jHSfZI(1)調 AAS
ギャー!何このスレ!長い!重い!
ネタの性質上、振りがどうしても長くなるのはしょうがないにせよ、それにしても!
たまには誰かもっとお手軽でエロい感じのやつを頼む!
ドヘタなりになんとか一つ作ってみたので、この線で…誰か…ボ・ス・ケ(ry

「遅いよ真一!」
「そうだよ真希ちゃんの料理冷めちゃうだろ」
「うっせーな親父、部活長引いたんだからしょうがねーだろ!あんたみたいにひまじゃねーんだよ!」
幼馴染の真希の作った料理がテーブルを飾っている。すでにつまみ食いを始めている、行儀の悪い典型的な
中年体型の男が俺の親父、佐賀一平である。
「じゃ、みんなで食べよ!いただきまーす!」
肥えさせるだけなのに、ビールを注いでやっては、親父の繰り出す、まさにオヤジギャグに笑い転げているのが、
俺の同級生の相馬真希。幼稚園から数えて、高校1年の今まで、3分の2は同じクラスのまさにザ・幼馴染。
スレンダーで、整った顔立ちにみんなだまされるが、実は口より先に手が出る武闘派なのだ。
特に、彼女は、俺から言わせりゃヘボヘボ3流翻訳家の親父の大ファンで、俺ら親子の意見が割れるときには
ほぼ100%親父の味方。何かこう、肩身が狭いってヤツ?今も、小皿に料理をとってやっては、親父の中年体型の
維持に貢献してる。まあ、お袋が死んでもう4年くらいたつが、彼女がこうやって時々まともな飯を作ってくれるから、
俺ら親子もなんとか生きていけてるってトコもあるから、文句は言えないけど。

そんなある日。部活開始早々、足を捻ってしまい、湿布を張ってもらって、俺はいつもより2時間以上早く家に帰った。
家の前には、真希の自転車があった。最近彼女は、ファンが講じて、親父の仕事上の軽い雑用を勤めながら、
翻訳の初歩の手ほどきを受け始めていた。まあ、親父も少しは人様の役には立つっつー事だ。

鍵を開けて入ると真希の靴がある。居間には誰もいなくて、コーヒーの香りだけが立ち込めていた。
たぶん真希が親父のために入れて、奥の書斎に持っていったんだろう。なぜか、なんとなく軽い嫉妬を感じながら、
奥の書斎を覗きに行こうとすると、その軽く開いた書斎のドアから
「ウッ…アッ…アン…ハァッ」
という、切なげな女性の喘ぎ声が聞こえてきた。ハ?何?何だよ!…ははあ、親父、若い子にAVとかを
「あ、まちがっちゃった」とかいって見せて反応を楽しむ、重度セクハラだな。それはすでに犯罪だぜ…とか
考えながら書斎を覗き込むと、そんな都合のいい妄想はあっさり吹き飛んだ。

親父が、仕事で仮眠するときにベッド代わりに使っているかなりでかいソファーの上で、素っ裸の真希の上に
乗っかって、そのプヨついた尻をガンガン振っていた。
「…ま、真希ちゃんどう…もう全然痛くないでしょ…」
「…あ、うん…この格好だと…アッ…ハッ…そ、そんなに深く入らない…から…」
「…そう?…深いのも…そんなに嫌いじゃ…ないみたい…だけどな…」
というと、親父は彼女の小さなお尻を抱えてヒョイと立ち上がった。真希が悲鳴を上げながら親父の首に
しがみつく。いわゆる駅弁ファック?
彼女の小ぶりの尻に、親父の、たぶん大人の平均と比べてもかなり大き目のチンポがズコズコ突き刺ささ
れる。二人とも汗びっしょりだ。
「イヤ…あ、当たっちゃう…深い…怖いよ…」
「…何で…怖いの…」
「なんか…わたし…なんか…ヘンに…」
「…教えたろ…なんていうんだっけ、そんな時は!」
というと、親父は彼女の細い腰をグッと抱きしめ、本当に根元の根元までそのデカチンを彼女に激しく
ぶち込みはじめた。
「ア…イ…イク…」
「そうそう!ほらほら、これでどう?!」
「イッちゃう…いっちゃ…ア…ヒィッ!」
真希は親父に強くしがみついて、腰をビクビクッと痙攣させる。親父も「ウッ」と硬直して動かなくなる。
しばらくして、まだチンポが刺さりっぱなしの彼女のアソコから、親父の出したらしいアレが、
ぼとり…ぼとり…と垂れてきた。親父…せめてゴムぐらいつけろよ…

今日は親父と真希の結婚式。この2年間、何とか彼女を奪い取ろうとがんばって、何度かうまくいきかけたが、
そのつどあっさりヤツのデカチンに奪い返されてしまった。結局、彼女は、アソコと、口と、いつの間にか
開発されたアナルにひたすら精液を注ぎ込まれ続け、その結果が今日のこの日、という訳だ。いや、
結婚が何だ!ここからが、寝取り、寝散られライフのスタートだ!!俺たちの青春は、まだ始まったばかりなんだ!(マジでおそまつさま)
516: 2007/08/28(火) 23:49:34 ID:QtEYxuNI(1)調 AAS
次の患者さんどうぞ
517: 2007/08/28(火) 23:54:27 ID:lPjF0vG6(1)調 AAS
>>515
なかなか良かったよ。
最近はあれ?ここってエロパロ板だった・・・よね・・・とかって思ってたから
また書いてくれ〜
518: 2007/08/28(火) 23:57:56 ID:dgizXamS(1)調 AAS
え、これパロディなの?
519: 2007/08/29(水) 10:07:02 ID:CXCH+vRl(1)調 AAS
>>515

最初の四行がどうしようもなく香ばしい
520: 2007/08/29(水) 10:51:30 ID:0oUbWhrB(1)調 AAS
>>515
NTRはフリがクドくてなんぼだろーが
521: 2007/08/29(水) 11:24:48 ID:ZV3oyycI(1)調 AAS
嗚呼、なんて運が悪いんだ。僕はいつもこうだ。
突然、隣町の八城高校の不良に因縁を付けられて人気のない商店街の
路地裏に連れ込まれた。
「へへへ、ボクちゃんよぉ。お金、持ってない?」
「ちょっとだけ、貸してくれよ。な?」
3人の人相の悪い奴らに囲まれて、僕はどうしようもなく震えながら
「は…はい、お金ならここに…ありますから…」
財布を取り出して、にやついてる不良に渡そうとした、その時、
「……こらぁ!」
ハァハァ息を弾ませて、路地の入り口に、セーラー服姿の少女が立っていた。
「千尋ちゃん!」僕は涙をにじませて叫ぶ。
「…こぉのチンピラどもぉ。よっくも、私の幼馴染をぉ〜…」
千尋ちゃんがそう言って、こちらへ一歩一歩、ズンズンと歩み寄ってくる。
「なんだぁ、このアマ?バカじゃねえのか」
「でもよぉ、結構、可愛いじゃねえか。へへへ、おもしれぇ〜」
不良Aが、にやついた瞬間。ガツン!!すごい音。
滑るように不良の懐に飛び込んだ千尋ちゃんが、不良Aのあごに
アッパーストレートを見舞っていた。
「ぐふぅ」まともに食らった不良A、たちまち地面にくず折れてKO。
「…な、な、なァ?!」
面食らった不良Bに、体勢を整える時間を与えず、千尋ちゃんは健康的な
太ももを惜しげもなく晒して、そのみぞおちに強烈なキックを叩き込む。
「…げふっ!」不良B、あえなくヨダレ垂らして撃沈。
慌てた不良Cが、「こ、この野郎」と千尋ちゃんに殴りかかる。
千尋ちゃん、軽くスウェイ。
「くっ…く!こ、この野郎!」
ドスッ。グシャ。千尋ちゃんのワンツーがキレイに不良Cの顔面に入る。
白目を剥いてぶっ倒れる不良C。
「やったぁ〜!千尋ちゃん!」
僕は手を叩いて、千尋ちゃんに駆け寄る。
「大丈夫だったか? 優一」
千尋ちゃんは、わずかに息を乱しただけで、僕を気遣ってくれた。
小さい頃から、こうやって千尋ちゃんは、ずうっと僕を守ってきてくれた。
僕にとっては同級生っていうよりも、遥か年上のスーパーガールみたいな存在。
それが千尋ちゃんだ。

でも、千尋ちゃんは、この10日後、この不良どものボスと対決してフルボッコ。
そのままボスと不良ABCにマワされて、写真とビデオ撮られて言いなりに。
何度も犯られるうちにボスに心も陥落して、高らかにセックス奴隷宣言。
今日、僕の所に、不良A,B,Cのチンポを全裸で嬉しそうに舐めている
首輪に繋がれた千尋ちゃんの写真が送られてきました。

(完)
522: 2007/08/29(水) 11:32:55 ID:oa+/8waV(1)調 AAS
……最早マッハ堕ちですらねえ……
523: 2007/08/29(水) 11:42:41 ID:0lGkLMoT(1)調 AAS
>>515の熱意は評価する
524: 2007/08/29(水) 17:28:44 ID:Jf7rsGIf(1)調 AAS
俺はノリの軽さも含めてかなり好き
寝取られと言うよりは、あこがれのあの子が…という落差を楽しむパターンだな
525
(1): 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:25:46 ID:vLP5oV3K(1/15)調 AAS
第四話投下

ただし今回はエロ要素完璧に皆無
まぁ、幼女が膝の上に乗ってキャッキャしてるのが好きな人は
その辺のシーンで適当にヌいといてくれ
526: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:26:30 ID:vLP5oV3K(2/15)調 AAS
・怜視点

緑を増して厚着になる木々とは反対に、
街行く者達の服装は、薄く涼しくなっていく。
既に地元の小学校や中学校ではプール開きされており
近くを通ると、子ども達の跳ねるような声と水音が耳に入ってくる。
季節は、初夏。
唯が大学を去ってから、二ヶ月が経とうとしていた。

「飲み会?」
「そ。そろそろ学部試験の時期だろ?
 それ終わったら夏季休講期間に入るから、そのぐらいの頃に
 一度皆で集まって、居酒屋にでも行こうって話がね。
 今男子の間で持ち上がってるんだけど」
吉良君がそんな事を言い出したのは、バイトの最中だった。
例によって暇な時間帯で、店内に客は一人もいない状態だった。
「でも、私も嘉狩さんも村雨さんも、皆未成年だよ?
 一応お酒、飲めない事は無いけど……」
「へぇ、意外だな。怜ちゃんって、アルコールいけるクチなんだ。
 てっきり全く飲めないタイプかと思ってたんだけど……」
そう言われて私は、答えに詰まった。
ひとしきり考えた後、隠す必要も無いと思って、事実を打ち明けた。
「昔……あいつの影響で、飲んでみた事があって」
私達二人の間で『あいつ』と言えば誰を指すかは、言わずもがなだった。
「……また唯か。やれやれ、案外根が深いね」
私は、かつて唯に連れられて、バーとレストランを兼ね合わせたような
少し大人びた雰囲気の店に行った時、そこで唯がカシスオレンジを
注文していた事を、吉良君に話した。
カクテルを頼む辺りがまたキザっぽいと、吉良君は
より唯に対して不愉快な印象を募らせたようだった。
と同時に、事ある毎に私が唯の事を思い出すのが、悔しかったらしい。
しかし、それも仕方の無い事だった。
あんな事が起こるまでは、私と唯はよく一緒に遊びに行っていた。
二人で簡単な花見に行った事もあったし、映画だって勿論行ったし、
一晩カラオケで潰した後にあいつの運転で海まで行って
日の出を見るなんて言う、青臭い事までやっていた。
あまりにいろんな事をやっていたので、吉良君と何をやるにしても
常に唯の影がつきまとっていたのだ。
527: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:27:23 ID:vLP5oV3K(3/15)調 AAS
それは兎も角として、飲み会の話は数日かけて纏まっていった。
参加メンバーは私と吉良君、それに慎君に海本君に、
女子は嘉狩と村雨さんと、あと数名適当に調達するらしい。
と言うのも、参加メンバーが十人揃えば、割引が適用されるからだそうだ。
せっかくの飲み会なのだから、固定メンバー以外の者も誘おうという考えもあるようだ。
残り四人に関しては、慎君にアテがあるようなので、
そちらに任せておく事になった。
慎君の知り合い、友達だからと言って、他のメンバーとも顔馴染みとは、限らない。
むしろ、その日初めて会う者とすら酒を酌み交わすのが
飲み会の醍醐味との事で、吉良君もやや乗り気のようだった。
私はと言うと、人見知りがかなり激しい方なので、あまり気楽ではなかったけれど。
だから、私でも少しは話した事のあるような人が
残り四人の枠の中に含まれていれば、良いんだけれど……などと考えていた。
そんな後ろ向きな気持ちが、天に通じたのだろうか。
或いは逆に、天罰と言うのかもしれない。
学部試験を終え、夏季休講に入り、初日に所定の居酒屋の前で集合した時
残り四人の参加メンバーの中に、あいつがいた時は、心底驚いた。
528: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:28:11 ID:vLP5oV3K(4/15)調 AAS
待ち合わせは、居酒屋の前だった。
空気がピリつくのがわかる。
吉良君は、有無を言わせずつっかかって行った。
「日色唯、何でお前がここにいるんだ」
唯は、掴まれた胸倉を意にも介さず、手をヒラヒラさせて答えた。
「そんなもんコッチが聞きたいわ。
 挟道さんに誘われて来てみたら、まさか怜やお前がいるとはね」
挟道さんと言うのは、吉良君達と同じ学年の、三十路前半の人妻だった。
元々は別の大学の卒業生で、銀行に勤めていたのだけれど
取得したい資格があった関係で、白城大学に通いなおしたらしかった。
彼女は六歳になる自分の娘を連れて来ていた。名前は志保ちゃんというらしい。
それと後一人は、慎君と同じゼミを受講している、
聖月子という、妙に厳かな名前の女の子だった。
話を整理してみると、まず慎君が聖さんを飲み会に誘ったらしい。
と同時に聖さんに、他に参加してくれそうなメンバーがいないか、
当たって欲しいと頼んだようだった。
聖さんは挟道さんを誘い、挟道さんは当時既に退学していた、唯を誘ったという流れだ。
だから、唯がここに来るという事は、吉良君や私はおろか、
慎君さえ今日この瞬間まで知らなかったらしい。
「こいつ、確かこないだ吉良と喧嘩してた奴だよな?」
その慎君は、事情を何も知らないながらも、吉良君が殴りかかる程なのだから
余程この唯という男は悪い奴なのだと、決めてかかっているのだろう。
探るように、或いは睨むように、唯を見据えた。
「まぁまぁ、良いじゃないの。今日は仲直りもかねて、飲みましょう!」
同じく何も事情を知らない挟道さんが、志保ちゃんを抱き上げて言う。
子どもの前で火花を散らすのは止めてと、暗に言っているようだ。
参加人数は、私達のような未成年は勿論、志保ちゃんのような
幼児を含めて、これでどうにかやっと十人きっかりだった。
これに割引サービスを適用するかどうか、飲み屋のバイトの人も
随分迷ったみたいだったけれど、そこで割引をケチるよりも
気持ちよく飲んでもらって、リピーターになってもらった方が
最終的には店の利益になると判断した店長さんが、快く許可してくれた。
未成年は飲み屋には入れない決まりだけれど、
これも暗黙の了解か、或いは十人分もの売り上げを落としたくなかったのか
身分証の提示も求められる事なく、私達は入店出来た。
529: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:28:59 ID:vLP5oV3K(5/15)調 AAS
席につくとまず、吉良君達男性陣は、ビールを一杯ずつ注文した。
どうやら大人の世界には、飲み屋ではまず生中、という
暗黙の了解があるらしく、彼らはメニューも見ずに店員に注文していた。
海本君曰く、カクテルやチューハイは、店によっては無い所もあるけれど
ビールだけはどの店にも必ずあるので、最初はこれを頼むのが定石らしい。
飲みたい酒を、時間をかけて選ぶのは、その後と言う事だ。
大人の女性である挟道さんにとっても、それは常識らしく、
彼女も男性陣に続いて、ビールを注文していた。
けれど、唯だけは違った。
「あ、俺ウィスキーお願いしまっす。ロックで」
事も無げに、定石を無視する。
この年齢の男がウィスキーをロックで注文するというのは、中々無いらしい。
店員の女の人が、一瞬虚をつかれたような顔をするのがわかった。
吉良君にとっては、これもまた、気に食わないらしかった。
レモンティーのレモン果汁を混ぜないだの、
女の子とのデートでカシスオレンジを飲むだの、
飲み屋で最初からウィスキーで飛ばすだの、そういった事が
いちいち格好つけているみたいで、どうにも受け付けられないらしい。
私を寝取られた恨みもあってか、吉良君は露骨に唯に、呆れた視線を送った。
「ウィスキー頼んじゃ悪ぃかよ? 俺、ビールは苦手なんだよー」
吉良君の視線の意味を感じ取ったのか、唯は浮くように軽い口調でそう言った。
どうやら根本的に、この二人の相性は良くないらしい。
それはそうだろう。
吉良君と相性の良い私が、唯とは相性が悪いのだから。
530: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:29:49 ID:vLP5oV3K(6/15)調 AAS
挟道さんの娘の志保ちゃんは、挟道さんの右隣、
そして唯の左隣に座っていた。
唯の注文したウィスキーが、ウーロン茶にでも見えたのだろうか。
氷が入っているという点も、子どもにとっては興味をそそられるようだ。
テーブルの上に手を伸ばし、興味津々といった風にコップを見つめる。
「駄ぁ目。これはお酒なんだよー、志保ちゃん」
そう言ったのは、唯だった。
普段の気取った感じではない、あくまで子どもに接する時の口調だった。
私は、彼のそういう話し方を聞いた事が無かったので、少し驚いた。
こいつ、こんな幼稚園の先生みたいな喋り方も出来たんだ……。
「これ、おさけ? おちゃじゃ、ないの?」
「お茶は、お母さんが志保ちゃんの分も、お店の人に頼んでくれたからねー。
 もう少ししたら、持ってきて貰えるよ」
「のど、かわいた」
「うーん、困ったねぇ。でも、子どもはお酒飲めないからねぇ」
「なんで、のめないの?」
「そうだなぁ……何でだと思う?」
子どもの問いかけに対して、問いかけで返すのは、卑怯だと思った。
けれど、問われれば真剣に自分なりの答えを模索するのが、子どもというものだ。
「わからないから聞いたんだよ」などという答え方を、子どもはしない。
志保ちゃんも、一所懸命答えを考えていた。
「うーんとね、えーっとねぇ……こどもがのんだら、カゼひいちゃうのかなぁ?」
面白い答えだ。
恐らくは、父親が酔っ払った時に顔が赤くなっているのを、
子ども心に病気か感冒症と同じ類のものだと、思ってしまっているのだろう。
「うん、そうかも知れないね」
唯は、志保ちゃんの答えを否定しなかった。
不思議と、子どもの扱いに慣れている様子だった。
唯と話す時間が楽しかったのか、お茶がテーブルに届くまでに少し時間があったけれど、
その間志保ちゃんは全く「お茶、お茶」と急かさなくなっていた。
隣で見ていた挟道さんは、少し関心している風だった。
531: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:30:34 ID:vLP5oV3K(7/15)調 AAS
「……何だよ?」
出し抜けに、唯が私の方を見て、そう言ってきた。
その時になって初めて、私はこいつを注視していた事に思い至った。
「べ、別に……アンタにそういう一面がある事なんて、知らなかったから。
 ……ちょっと意外だなって、思っただけ」
だが、私が答えた瞬間には、もうそんな事はどうでも良くなっていたのか、
唯は志保ちゃんのお皿に、ローストビーフやミニトマトをよそってあげていた。
母親というものは、たまには育児から解放されて、
思い切り飲み食いしたいと、常に思っているものらしい。
唯は挟道さんのそんな気持ちを推し量ったのか、
積極的に志保ちゃんの面倒を見てあげているようだった。
これだけ切り取って見ると、微笑ましい風景だ。
さしづめ、幼い女の子と親戚のお兄ちゃん、といった感じだ。
恐らくは今、慎君達は唯に対する第一印象を、少し改めているだろう。
ただ一人、吉良君だけは相変わらず不快そうな顔をしていたけれど。
「こら、志保。お兄ちゃん、重いでしょ?」
「あはは、大丈夫っすよ。気にしないで良いからねー、志保ちゃん」
いつの間にか志保ちゃんは、唯の膝の上に座っていた。
居心地が良いのだろうか、お気に入りの座席を確保したようだった。
まだ会が始まって十分かそこらなのに、もう唯は
幼子の心をがっちり掴んでしまった。
私の隣で、吉良君が「……強姦魔に懐いちゃって、良いのかな」と
呟いたのが聞こえたけれど、私は敢えて聞こえないフリをした。
「唯クンと話すの初めてだけど、何か第一印象とは随分違うのねぇ」
嘉狩はそう言って、唯と志保ちゃんを、交互に眺めた。
「正直さ、初めて唯クンを見たのが、吉良君と喧嘩してた現場だったからさ。
 あんまり良い印象無かったんだけど、意外と良いお兄さんって感じじゃん?」
何も知らないくせに……と吉良君が脳内で呟いた声が、私にも届くような気がした。
532: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:31:16 ID:vLP5oV3K(8/15)調 AAS
構わず、嘉狩は唯君に話し続ける。
「さっきの口ぶりだと、怜とは馴染みみたいね?
 どういう関係なの? ひょっとして、聞いちゃまずい関係?」
聞いちゃまずいかもと思いながらも、切り込むように聞くのは
彼女のオープンな性格故の、特権だろうと思う。
彼女になら、無用に踏み込まれる事に、誰しも然程不快感を覚えない。
世の中には、先天的にそういうお得な性格、性質の人がいるものだ。
ただそんな人でも、吉良君と私が付き合っている事を鑑みて
あまり私と唯の関係を掘り下げて聞くのは良くないかも、とは思っているらしい。
「どういう関係って、なぁ……?
 怜に聞いてみな。少なくとも俺の口からは答えられねぇよ」
子どもを退屈にさせないための配慮からか、唯は志保ちゃんの頭を
優しく撫でてあげながら言った。
大人同士で勝手に会話を始めてしまえば、つまらなくなるのが子どもだと、
熟知しているようだった。
当然、私の口からも答えようが無い。
友達だよ?
そんな答え方、吉良君の手前言えるわけがない。
ちょっと前まで、友達でした?
じゃあ、何故今友達ではなくなったのかと聞かれたら……答えられない。
ちょっと前に、犯されました?
そんな回答、もはや論外だ。
仕方なく、私は答えをはぐらかす事にした。
「アンタって、よく子どもに好かれるわよね」
嘉狩の質問をスルーして、唯に話をふる。
けれどそれは、吉良君にとっては気分の良いものではなかったらしい。
それはそうだ。
レイプ犯に被害者が、自分から話しかけるなど、
正気の沙汰とは思えない……そんなところだろう。
軽く眉間に皺を寄せて、私の方を訝しげに見てくる。
さも旧知の仲であり、親しげであるように話しかけた事も、気に食わないようだ。
しかし唯は、その事に気付いているのかいないのか、普通に会話を繋いだ。
「子どもに好かれるのなんか、簡単さ。
 自分が子どもを好きでいるだけで、子どもの方は放っといても自分を好いてくれる。
 自分に好意を持ってくれてる人間を、嫌ったり疎んだり出来る程、
 子どもの脳みそは廃れた構造しちゃいねぇよ。
 そんな器用な真似が出来るのは、大人だけさ」
それは、至言のように思えた。
少しだけ、吉良君の唯を見る目が、変わった。
一人志保ちゃんだけが、話の内容が難しくて、よくわかっていないようだった。
533: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:31:58 ID:vLP5oV3K(9/15)調 AAS
飲み会が解散して、二次会にカラオケに行こうという
話になった時は、本当に大変だった。
会計を済ませ、店の出入り口から出た時だ。
既に時刻は二十時少し前で、子どもがこれ以上長居出来る時間ではない。
挟道さんは志保ちゃんを連れて、家に帰ろうとしたのだが、
志保ちゃんは泣いて唯に縋っていた。
「びぇぇぇぇぇん! おにいぢゃぁぁぁぁぁぁん!」
余程唯の事を気に入ってしまったのか、少女は唯の足に
ぴったりとくっついて、離れようとしなかった。
涙と鼻水が唯のボトムを汚していたけれど、唯はそんな事は気にしなかった。
それよりも、少女が泣いて喚いている事の方を、真剣に心配していた。
「ほら、志保ちゃん。お兄ちゃんが困ってるじゃないの」
挟道さんは、志保ちゃんを無理矢理抱き上げた。
そのまま挨拶もそこそこに、足早に皆の前から去ろうと考えているらしかった。
それを唯は引き止めると、隣にあったゲームセンターの
入り口の横、店の外側においてあるクレーンゲームの筐体に向かった。
「ちょっと待ってて下さい、お母さん」
唯は志保ちゃんの前だからか、挟道さんとは呼ばずに、お母さんと呼んだ。
そう言えば小さい頃、私の父方の叔父が、私の父を『怜ちゃんのお父さん』
と呼んでいたけれど、つまりはあれと同じ理屈だろう。
唯は手早くコインを入れ、一発で景品のヌイグルミをゲットした。
「はい、志保ちゃん。これあげる」
「まぁ。良いのかしら、日色君」
「気にしないで下さい、お母さん。ほんのサービスですから」
どうやら、少女へのプレゼントのために、わざわざとってあげたらしい。
一瞬、志保ちゃんが泣き止んだ。
「……クマさんだー」
「そうだよー。でもクマさん、泣く子は好きになってくれないなぁ」
その瞬間、志保ちゃんが慌てて涙を拭う。
「ないてない! しほ、ないてないよ!」
「そうだね。偉いねぇ、志保ちゃんは」
唯はそう言って屈み込むと、少女と同じ目の高さになって、
持っていたヌイグルミを少女に与えた。
そうして小さな声で、耳元で呟くように、少しだけ言葉を付け足す。
「別に、泣くのは悪い事じゃないんだよ」
「そうなの? でもママもパパも、ないちゃメッ、ていうよ?」
「うーん、とねぇ。泣きたい時は、泣いたら良いと思うんだ。
 でも、いつまでも泣き続けてたら、駄目なんだと思うよ」
そうして唯は、立ち上がった。
「もう、泣かないよね?」
「うんっ! だいじょうぶだよ!」
志保ちゃんは母親と手を繋ぐと、元気良く片手を振って、別れを告げた。
「バイバーイ、おにいちゃん!」
「うん。またねー、志保ちゃん」
唯の、驚く程の紳士ぶりに、私達はみな、呆気に取られていた。
志保ちゃんが「バイバイ」の後に呼んだのが唯のみで、
私達の存在を少女にあっさり忘れられていたであろう事にすら、気が回らなかった程に。
534: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:32:47 ID:vLP5oV3K(10/15)調 AAS
「さて、と……俺もそろそろ、帰りますか」
唯は、それまでかけていた色眼鏡を外して、
鞄の中から取り出した無色透明のレンズの眼鏡に、かけかえた。
夜なので、色眼鏡だと見えにくいのだろう。
眼鏡何本持ってるんですか、と小声でツッコんだのは、村雨さんだ。
しかし私は、唯が眼鏡をファッションの一部として捉えており、
服を着替えるような感覚で眼鏡を使い分ける癖があるのを、知っていた。
「もう帰んの? まだいても良いじゃん」
聖さんが、つまらなさそうに口を尖らせて言った。
「明日も朝からバイトなんだよ。立哨警備のな。
 大変なんだぜー? 朝五時に起きて朝礼に向かわなきゃいけないんだから」
「へぇ、警備員なんかやってんだぁ。暑苦しい事やってのんねぇ」
「割りが良いんだよ。ただ立ってるだけで、時給千円だからな。
 フリーターにはおいしいバイトって事」
「フリーターだったの? てっきり、うちの大学の学生かと思ってた」
「退学したんだよ」
唯を退学においやった張本人である、吉良君……
いや、吉良君と私、と言った方が正しいか。
吉良君と私が目の前にいるので、唯は特に退学の理由を
事細かに話そうとはしなかった。
その手の理由は、どの道やんごとなき代物が多い。
聖さんも、勿論慎君達も、その辺りを推し量ってか、別段深く聞き出そうとはしなかった。
理由を知っているのは今のところ、唯と吉良君と、私だけだった。
535: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:33:30 ID:vLP5oV3K(11/15)調 AAS
・吉良視点

日色唯という男の事が、よくわからなくなった。
いや、厳密に言うと、元からよくはわかっていなかった。
俺はただ、初めて会った時の軽薄そうな印象と、怜ちゃんから伝え聞いていた評価と、
怜ちゃんが唯にレイプされたというエピソードのみで、唯という男を量っていた。
その結果、俺の中では唯は、単なる人間の屑という結論に至っていた。
しかし、実際はどうなのだろう?
少なくともあの男は、今日だけで三度、俺の中での心象を
がらりと変えてしまうような振る舞いを見せた。
一度目は、志保ちゃんの面倒を見てあげていた時。
二度目は、子どもに好かれる秘訣を怜ちゃんに教授した時。
三度目は、志保ちゃんをピタリと泣き止ませ、アフターフォローまでこなした時。
三度目はまぁ、物で釣ったと言えない事もないが、手際の見事さは確かだ。
これだけ見れば、単なる好青年にしか見えない。
しかし実態は、信用してガードを下げてくれた女の子を、
ここぞとばかりに押し倒し、欲望のままに汚す男なのだ。
そうだ、こんな男など、信用してはならない。
この男は、見下げ果てた外道なのだから。
……そう、思っていた。思おうとしていた。
しかし、常に違和感がつきまとう。
志保ちゃんとの触れ合い方を見てからは、逆にこの男が
女性をレイプしたという事の方が、信じがたくなってきていた。
何か決定的な事を、見落としている気がしてならない。
現時点では、知っている事があまりに少なすぎた。
自分は、もっとあの男の事を、知らなければならないような気がした。

しかし、ではどうすれば?
俺は唯の連絡先など知らない。話し合う事など出来ない。
怜ちゃんに聞けばわかるだろうか?
いや、彼女も唯の連絡先は、電話番号もアドレスも、メモリから消したと言っていた。
……馬鹿馬鹿しい。仮に連絡先が分かったとて、それでどうだと言うのだ?
俺の方から、唯に連絡をとると言うのか?
用件は何だ? どう説明する?
駄目だ、どう考えても、自然な方法であいつと話し合う機会を得る事は、出来ない。
536: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:34:16 ID:vLP5oV3K(12/15)調 AAS
いや、待て。
話し合わねばならないのか?
会話でなければいけないのか?
そんな事は無い。要は、あいつの事をもっと知る事が出来れば良いのだ。
方法は、ある。
人づてに聞くのも良いが、相手が唯なら、別のやり方も出来る。
飲み会の帰り道、俺は隣を歩く怜ちゃんに、唯のブログのURLを聞き出してみた。
「え、あいつのブログの……?
 もうお気に入りから削除しちゃったから、URLなんてわからないよ。
 でも、何で今更?」
「いや……ただ何となく、気になって」
そう、ただ何となく気になっただけだ。
別に唯と親睦を深めたいとか、溝を埋めたいとか、ましてや
怜ちゃんを襲った事を許してやろうと考えているとか、そんな事ではない。
だから、別にブログを閲覧出来なくても、困る事は何も無い。
どの道恐らくもう二度と会わない相手なのだから、深く知る必要など毛頭無い。
「でも……あのブログ、パソコンからも見れるから。
 ひょっとしたら、履歴に残ってるかも……」
その瞬間、素直に「見たい」と思ってしまった自分に、気がついた。
何故俺は、ここまで唯の事を気にかけている?
ただちょっと子どもに優しくしただけで、
たったそれだけの事で、あいつを見直しかけている。
本来俺にとって、あいつは生涯許す事の出来ない、敵の筈なのに。
537: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:35:01 ID:vLP5oV3K(13/15)調 AAS
怜ちゃんの下宿に戻って、ノートパソコンを起動させた。
画面が立ち上がるまで少し時間があるので、その間しばらく待つ。
やがてブラウザが立ち上がり、怜ちゃんは履歴を検索し始める。
スレイプニルというタブブラウザを用いているそうで、
俺にはよくわからないけれど、半年以上前の履歴も残っているそうだ。
これも唯に教えてもらったのだと、彼女は言った。
やがて、お目当てのURLが見つかった。
クリックしてみると、そこはブログというより、電子掲示板の類に見えた。
以前怜ちゃんの携帯電話から見せてもらった時は、
何分携帯端末用のレイアウトだったので、ちょっと気付きにくかった。
「スレッド式の掲示板と、形式は一緒だよ。
 ブログというよりは、掲示板に各々がスレッドを立てて日記を書き込んでる……みたいなもの。
 ただ、コメントを書き込む事自体は誰でも出来るんだけど、
 スレッドを立てるのと、コメントの削除だけは、登録が無いと駄目なの」
スレッドだの何だの、俺にはよくわからない事だった。
とにかく、この掲示板の上で、多数の利用者がハンドルネームで日記を記し、
更に多数の利用者達が、ハンドルネームすら用いずに、コメントを残す事が出来るようだった。
いわゆる捨てハンと呼ばれるものらしく「あ」だの「a」だの、
明らかにその場しか使わないと思われる、適当なハンドルネームが使われている。
律儀にハンドルネームを使っているのは、スレッドを立てた本人達だけだ。
『ZERO』。
それが、唯のハンドルネームであるらしかった。
「最初はさ、このHNに少し興味をひかれて、覗いてみたの。
 だって、私の本名が『レイ』なんだもん」
そう言って彼女は、自分の親指と人差し指で輪を作り、0を表した。
どうやら、怜=レイ=0→ZEROという連想らしい。
538: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:35:44 ID:vLP5oV3K(14/15)調 AAS
ZEROと名乗る者の日記は、内容自体は特段変わった事は無かった。
何月何日何曜日、バイトでこんな事があった、その時どう思った。
その程度の事が、独特の軽妙な切り口で記されている。
しかし、それよりも俺の目をひいたのは、他の利用者達からの
諸々のコメントの内容の方だった。
「yumi:
 ZEROさんも大変ですねぇ〜。
 私も今バイトしてるんですけど、店長が凄い嫌な人で、
 私も同僚の人達も、もう辞めようかって言ってるんです。
 でも時給は良いし、店長以外の人は良い人ばっかりだから
 まだふんぎりがつかないんです。
 どうしたら良いんでしょうか?」
一瞬、目が止まってしまった。
他人の日記にコメントを残す事が出来るという事自体、
ネットに慣れていない俺にとっては不思議な事なのに、
ましてや他人の日記上で、相談事を持ちかけている者がいる。
ネットの世界では、これは当たり前の事なのだろうか? 怜ちゃんに尋ねてみる。
「……うーん、どうだろう。
 あんまり見かけないけど、でもこいつの日記は、こういうのばかりだよ」
「こういうのばかり……って……」
「何でかよくわからないんだけど、唯の日記って、いろんな人が集まるんだよ。
 で、やっぱり理由はわからないんだけど、結構悩み事とか相談事とか、書き込まれるの。
 まぁ、あいつも律儀に話聞いてあげたり、答えてあげたりしてるからね……。
 いつの間にかこの掲示板では、あいつの日記は半分くらい
 人生相談請負みたいな事になっちゃってるわ。結構前から」
確かに見てみると、他にも結構ちらほらと相談事が書き込まれいる。
また恐ろしい事に、ZEROという名の人間……唯は、逐一話を聞いてやり、
アドバイスや助言を惜しみなく送っている。
「ZERO:
 どんな職場にだって、嫌な人間は必ず一人はいるもんさ。
 割り切ってしまえば、周りは全部味方なわけだから、まだ頑張れると思うぜ。
 周りが全部敵って職場環境も、世の中にはあるんだし」
妥当だが、的確でもあるアドバイスだ。
一般論に過ぎないと言えばその通りだが、内容は極めて正しい。
ますます、あの男の事がよくわからなくなった。
何しろ本当に、唯の立てたスレッドでは、こういった内容ばかりが連なっていたのだから。
試しに他の利用者のスレッドも閲覧してみたが、
思い思いの記事が書かれているだけで、他者に相談をもちかけられるどころか
そもそも他の利用者達と交流、会話さえしていないのが、殆どだった。

俺は、もっと遡って過去の記事やコメントも読みたいと思ったが
あまりにも量が膨大であるらしく、断念した。
怜ちゃんによれば、あいつはもう二年以上ここで日記を書いているらしい。
二年分も読んでいられないので、とりあえす携帯電話にURLだけ記録しておいて
暇な時にでも閲覧してみる事にした。
539: 374 ◆ldQo/fT6KU 2007/08/29(水) 18:36:31 ID:vLP5oV3K(15/15)調 AAS
第四話終了
540
(2): 2007/08/29(水) 21:35:42 ID:ZOyLDGfw(1/2)調 AAS
>>525
上から、上から、目線が下りて来るー
541
(2): 2007/08/29(水) 22:06:29 ID:8708LtrU(1)調 AAS
>>540
荒れるから止めろって。
俺はもうNG登録してるから見てないけど、楽しんでる人は適当にヌいてるんだろうし。
作品の批評とかならしてもいいと思うけど、基本スルーを心がけようぜ。
542
(1): 2007/08/29(水) 22:43:54 ID:+HFxXZMW(1)調 AAS
8708LtrUの言い回しが香ばしすぎる件
543: 2007/08/29(水) 23:25:43 ID:NwUkQxMO(1)調 AAS
>>540-542
自演うざいなー。
544: 2007/08/29(水) 23:58:15 ID:ZOyLDGfw(2/2)調 AAS
>>541
ほんとだ、荒れちゃいましたね。ゴメンなさい、気をつけます。
545
(2): 2007/08/30(木) 00:43:39 ID:NAZ5dJwB(1)調 AAS
さてサンデーにNTRがあった件について
546: 2007/08/30(木) 00:45:35 ID:1Lywcmgo(1)調 AAS
>>545
スレ違い。
それとも、君がDIVEネタで投稿してくれるというのか?
547: 2007/08/30(木) 05:11:04 ID:bVBMDV0l(1)調 AAS
 勇君が悪いんだよ・・

 私たちもう高校生になったのにキスだってほとんどしてない。
 勇君は知らないよね、キスにも色々あること、舌と舌を絡めること。
 勇君は童貞っていうんだよね、私は違うんだよ、あそこも口も胸も、お尻の穴だって
開発されちゃったんだ、勇君の身近な人に。
 おかしいよね、勇君以外とこんなことしたくないのに勇君に知られたくないから
またこんなことしないといけない、痛みなんかとっくになくなっちゃった。
 でもね、気持ち良くはなかったよ、相手が下手とかじゃない、友達とかの話を聞く限りじゃ
多分上手い人だと思う、でも私は勇君が好きだから、してる時の勇君を想ってるから
感じたりしないんだよ、だけど勇君を考えて自分で慰めると凄く気持ち良いんだよ。

 でもね、私も三年もこんなことしていたらおかしくなってきちゃった。
 私も頑張ったんだよ、勇君にいきなりキスしたことあったよね、
勇君の部屋だったし勇君になら何をされてもよかったのに、結局何もなかったね、
だって勇君は手を繋ぐだけで顔を真っ赤にしちゃう人だもんね。

 嬉しかったよ、卒業式言ってくれた言葉、だけど私には答えは一つしか用意されてなかった。

「ごめんなさい」

 大切に想うのと何もしないのは違うんだよ。

 大好きだよ、勇君。
548: 2007/08/30(木) 07:15:44 ID:zl5XgLbI(1/2)調 AAS
>>545
最近投下が多いからといってそこまで厳密にすることないだろう。
俺も実に寝取られくせぇと最初から思ってたよあれは
549: 2007/08/30(木) 07:53:02 ID:2IodbuIC(1)調 AAS
原作NTRなんだからしょうがない
550: 2007/08/30(木) 20:34:20 ID:zl5XgLbI(2/2)調 AAS
俺ああいう自分がまぎれもなく兄裏切ってるくせにいかにもお前が悪いんだ的な言い方するヤツって大嫌いだわ。
彼女は彼女でさびしいからって構ってくれる男のところにホイホイなびくし。
正直、痛い目みてくれなきゃ気がすまん
まぁここで何を言ってるんだという感じだが
551: 2007/08/30(木) 21:39:38 ID:zg9/7f/N(1)調 AAS
これ以上はこっちで話したほうが良くない?

彼女または片想いの娘が犯られてしまう作品26
2chスレ:erocomic

まぁ別の話題でスレが寝取られるのも悪くはないかw
原作知ってるけど弟と彼女はこれから先、空気扱いされるだけだよ。
552: 2007/08/30(木) 23:17:23 ID:Tq50cZDn(1)調 AAS
個人的にあーいうのはエロ板で扱うべき「寝取られ」とは思わない
ヨヨとかそっちの系統

虹板でもずっと同一視されてきてるけど、一般作品の寝取られとエロ作品の寝取られって全然性質違うと思うんだよなぁ。
一般作品のよーな展開+エロもあるよ、みたいなのなら兎も角
553: 2007/08/31(金) 01:32:50 ID:d96wo3WK(1)調 AAS
まぁなんだ。
一ついえるのはもし俺なら相手の罪悪感を煽りのなんだのして絶対別れさせるね
小者だなぁ俺ORZ
554: 2007/09/02(日) 07:48:42 ID:LIjd5EhU(1)調 AAS
ヨヨも十分寝取られと言えると思うのは俺だけだろうか
いやアレはいいトラウマゲーだった
555: 2007/09/02(日) 10:22:53 ID:9sN7eefe(1)調 AAS
サラマンダーよりはやーい!

上書き保存と名前を付けて保存ですか
556: 2007/09/02(日) 16:53:21 ID:diIyGBBV(1/2)調 AAS
ヨヨが主人公は自分に惚れてる扱いをするのがすっげー腹たったっけ
こっちはなんの意思表示もしてねーだろ!
557
(2): 2007/09/02(日) 17:16:09 ID:+bTfRE/g(1/3)調 AAS
ヨヨの話しだすと途端に乗る人たちがいるね。
正直すーぱーふぁみこんとかって触った事ないけど
ここの板にはまさかそこの世代の人がいるのか、それともエミュでやってる人なのか
どっちなんだろ・・・
558: 2007/09/02(日) 17:22:08 ID:nu11/nii(1/4)調 AAS
スーファミ触ったことない人がこのスレいるのも違和感あるがな
559: 2007/09/02(日) 17:29:53 ID:diIyGBBV(2/2)調 AAS
PS時代到来が大体10年くらい前だろ?
大体ゲームって小学生くらいからやりだすから20以上なら普通に触ったことあると
思うけどなぁ。
バハムートラグーンってスーファミ末期の作品だし。
560: 2007/09/02(日) 17:59:59 ID:7PbABEbx(1)調 AAS
ヨヨは名前が変えられるからな・・・
561: 2007/09/02(日) 18:13:55 ID:nu11/nii(2/4)調 AAS
片思いのあの娘にして、ゲームソフトを破壊した少年時代を思い出して欝
562: 2007/09/02(日) 20:14:45 ID:dLtASO4J(1/2)調 AAS
こんだけ盛り上がるって事は、あれが寝取られの原体験ってヤツが
けっこーいると見た。つか俺だけど
563: 2007/09/02(日) 20:44:27 ID:1t5UyzsE(1)調 AAS
名前変更がなかったらここまでには・・・
564
(1): 557 2007/09/02(日) 22:43:48 ID:+bTfRE/g(2/3)調 AAS
なるほど。調べたら今から11年前なんですね。
あらすじ見たら小学生に理解できる内容かとか思ったけど結構みなさん嵌ってたんですね。
300円くらいで売ってたので買ってみようか
565: 2007/09/02(日) 22:55:48 ID:XVHLPqP5(1)調 AAS
うざい自己主張すんな
566: 2007/09/02(日) 23:03:01 ID:nu11/nii(3/4)調 AAS
釣りだと思ってたのに…マジとか酷いな
567
(1): 2007/09/02(日) 23:07:12 ID:spdv8T7T(1/2)調 AAS
だいたい20代前半なら小学生のころにSFCが全盛期だったはず
後半でも別にやっててもおかしくない。
逆に平成生まれでも兄弟の影響とかでやってた奴はいくらでもいた。
つまり18〜28くらいならSFCを未知の物体のように言うのはおかしい

というわけで、557の言い分は完全にイミフ
568: 2007/09/02(日) 23:14:53 ID:RX69xaxo(1)調 AAS
>>567を援護射撃。
21だけどスーファミ超やってた。ちなみにPSがでたのは小5ぐらいのときかな。
しかしバハラグはここで知った後プレイしました。
569: 557 2007/09/02(日) 23:26:33 ID:+bTfRE/g(3/3)調 AAS
ごめんごめん。スレ違いなのにあんまりヨヨ、ヨヨって騒ぐ馬鹿が多いから釣ってみたw
もう書き込まないけどほどほどになw
570
(1): 2007/09/02(日) 23:30:30 ID:Ebs9HvNU(1)調 AAS
後釣り宣言レスは、いつ見ても心地良い。
571: 2007/09/02(日) 23:32:12 ID:nu11/nii(4/4)調 AAS
夏の風物詩だな
572: 2007/09/02(日) 23:36:00 ID:wHMSXqAi(1)調 AAS
心地いいwwが
現実で相手にされないからってこんなとこで相手してもらおうとすんなww
573: 2007/09/02(日) 23:41:42 ID:dLtASO4J(2/2)調 AAS
ヨヨネタってほんと高確率で荒れるなー
574: 2007/09/02(日) 23:55:14 ID:spdv8T7T(2/2)調 AAS
>>570
こいつは多分はなっから釣ってたつもりだったんだと思うが
釣りの内容が論理的に間違ってるあたり駄目駄目、って意味で俺は突っ込んだ。
別に宣言しなくても分かってもらえる範囲だから、黙ってればまだ良かったのにな。
575: 2007/09/03(月) 00:08:16 ID:F1aJ6W2n(1)調 AAS
言わないと負けた気がして我慢ならなかったんだろw
576: 2007/09/03(月) 02:33:09 ID:H7F84o9t(1)調 AAS
夏ですね
577: 2007/09/03(月) 03:50:59 ID:aRIL4jUX(1)調 AAS
後釣り宣言しなきゃ釣りと認識してもらえないような低俗な釣り
578: 2007/09/03(月) 04:51:40 ID:YUpLAHi3(1)調 AAS
ばはむーちょドラグーン
579: 2007/09/03(月) 10:44:51 ID:CkoxpEPN(1)調 AAS
後釣りにすら釣られるこの爆釣ぶり…
お前らスルーできませんか?
580: 2007/09/03(月) 12:05:18 ID:/EH725Et(1)調 AAS
そのレスをつける時点で、スルーうんぬんを語る資格はないと思う
581: 2007/09/03(月) 15:56:07 ID:jGQfP6/B(1)調 AAS
お前らスレの伸びを見て、『イヤッホーゥ新作キター!』とかwktkして
スレ覗いた俺の期待を返せ、返せよぅ! 。・゚・(ノД`)・゚・。
582: 2007/09/03(月) 16:13:08 ID:I/B1JGQY(1)調 AAS
最近連載が滞ってるね
まぁ先週までが凄かったんだが

NTテタの人とかアムロ・レイの人とか、今どーしてんだろ
583: この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/09/03(月) 18:21:32 ID:Sxlxkmrt(1/4)調 AAS
6.

声がしたような気がして、目が覚めた。
甲高いお袋の声が、階下から聞こえていた。
「まぁまぁ、夏ちゃん。いらっしゃい。今回は良かったね、おめでとう」
…夏樹?
枕もとの時計を見る。朝の7時15分?。
俺は慌ててベッドから跳ねるように、起き上がった。
「あら、お土産?ありがとう。えーと、まだ忠志は寝てるだろうなぁ…」
能天気なお袋の声が、届いてくる。
夏樹も夏樹だ。俺が朝寝坊タイプって知ってるくせに、何でこんな朝早く。
俺はTシャツと短パン姿のままで、ドタドタと階段を駆け下りた。
「あ、忠志。良かったわね、夏ちゃん来てくれてるわよ、お土産持って」
降りてきた俺に、お袋が意味ありげに笑いながら言う。
俺は玄関に立っている夏樹を見つめた。半月ぶりに。
夏樹は変わってなかった。当たり前だ。薄い青のTシャツ、赤のトランクス。
ただ、インターハイに行く前より、肌はもう少し小麦色に焼けていた。
夏樹は俺に向けて軽く手を振った。
「…おはよ、忠志」
「おう、お帰り」
「夏ちゃん。忠志ったらね、やっとふて腐れてたのが治ったみたいよ」
お袋が笑いながら、そんなことを言う。
「いいよ、お袋は。あっち行っててよ」
「はいはい。じゃあ、またね夏ちゃん、お父さんとお母さんによろしくね」
「はい、おばさん」
夏樹の土産を手にしたお袋は、そのまま、リビングの方へ歩いていった。
「ったく、仕方ねー親だよな」
俺はそう言って、振り向く。あはは、と夏樹が笑った。
半月ぶりに会うけれど、よかった。いつもの夏樹だ。そんなの、当たり前だけれど。
「…よかったな。全国4位。おめでとう」
「うん。ありがと。…頑張ったよぉ」
「メール、したんだけどさ」
「あ、うん」
そこで、なぜか、わずかの間があって。
「…読んだよ、メール。嬉しかった。ありがと。返事しなくてゴメンね」
「いや、悪かったのは俺だから。…怒ってたんだろ。当たり前だよな」
「……」
その問いに、夏樹は答えなくて。
「俺、これから頑張るからさ」
俺が矢継ぎ早に言うと、夏樹は顔を上げて、俺をじっと見た。
「まだ大学もあるし。夏樹が叱ってくれたからさ。やっぱ、頑張ろうって」
「…そっか、うん」
夏樹が微笑んだ。
「心配かけてゴメンな、夏樹」
「ううん。いいんだ。忠志は…そうでなくちゃね」
「夏樹」
「…ん?」
「今日、昼から一緒に映画でも、行かないか?お祝いにさ、何かオゴるよ」
仲直りの記念に。俺は思い切って誘った。
夏樹が、ちょっと視線を床に落とした。急にその表情が翳った…そんな気がした。
それから夏樹は、一度、こくん…と喉を鳴らして。
「…ごめん、今日は、ダメ」
584: この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/09/03(月) 18:22:22 ID:Sxlxkmrt(2/4)調 AAS
7.

「そ、そっか」
夏樹の意外な返答に、俺は、肩透かしをくらって、次の言葉を見失った。
夏樹は両手を身体の前で組んで、すまなそうに言う。
「ゴメンね、誘ってくれたのに」
「いや、いいよ。何か用事あったんだ?」
「…うん」
夏樹の用事。なんだろう?インターハイから帰ったすぐ翌日に、夏樹が入れている
予定なんて、全く想像できなかった。
「真知子たちとさ、祝勝会の約束しちゃって!」
…とでも、舌をぺろりと出してくれたら…と思ったけれど。
夏樹は、それ以上、何も言わなかった。
仕方なく「じゃあさ、明日なら」と俺が言いかけたとき、
「忠志」
夏樹の口調が、遮るように響いて、俺は少し驚く。
「あのさ、私から誘うよ。また連絡する」
「…」
「なんか、ごめん、昨夜も遅くて…。ちょっと疲れてるみたいなんだ、私」
「…そっか、そりゃそうだよな」
「ゴメン。ちょっと家に戻って、もう一度休むね」
そう言うと、夏樹はもう踵を返して、まるで、この場から早く逃げようとするみたいに玄

関のドアノブを握っていた。
「…夏樹」
俺は、喉に何かが刺さったようなもどかしさを覚えて、その背中に声を掛ける。
夏樹の動きが止まる。顔だけで俺のほうを振り向いた。
「…ゆっくり休めよ。ホントに、疲れてるみたいだぞ、お前」
「……うん」
夏樹がドアノブを廻し、扉を開いた。
途端に、ふわっと玄関から入り込んだ朝の風が、夏樹のTシャツを少し煽った。
(……あ)
それで、初めて気付いた。
夏樹の首の後ろに、銀色のネックレスが、見えていた。
夏樹がアクセサリーをしているのって、これまでに見たことがなかった。
これが、違和感だったのだろうか。ふと、そう思って。
四角い玄関ドアの向こうの空に、真っ白な入道雲が昇り始めていた。
それに反射する夏の光の影で、夏樹の表情は見えにくかった。
「ゴメンね、忠志」
夏樹はもう一度そう言って、ドアの向こう側に足を踏み出した。
ジイジイジイジイ……と蝉の声が、耳に響き出す。
名残りの夏が、一生懸命、この町に掴まって、逝くまいとしていた。
でも、止めることは出来ない。夏は、終わってゆく。
これから何度も何度も、夏は永遠のように訪れるけれど。
けれども、たった一度だけの、この夏は。
585: この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/09/03(月) 18:24:40 ID:Sxlxkmrt(3/4)調 AAS
8.

夏樹が帰ってきてから、もう3日。
あと5日間で、高校最後の夏休みも終わる。
けれど、宙に浮いた俺たちのデートの約束は、まだ果たされないままだった。
この3日間、夏樹から俺には何の連絡もなかった。
別に、これまでだってそれほど頻繁に連絡を取っていたわけじゃない。
だから、それほど気にすることでもないけれど、今回は、俺の中で変な
「引っ掛かり」が消えていかなかった。
その日の午後、携帯が鳴った。
「おーっす、暇?何してんの?茶でも飲みに行かねえ?」
田中からだった。
気分転換もいいかと思い、田中と駅前で落ち合った。
冷房の効いた喫茶店に入る。
「元気になったじゃん、お前」
田中が言う。コイツなりに、俺のことを心配してくれていたのだろう。
「…いつまでも落ち込んでられないからな」
夏休み以後の水泳部のこと。部長を誰にするかとか、進学のこととか、
話すうちに、時間が過ぎていった。
「……あれ?」
田中が不意に、咥えていたストローをぽろりと口から離した。
ぽかん、という表情で、窓の外、駅の改札口の方を見つめる。
「どした?」
俺が聞くと、田中は相変わらず窓の向こうを見つめたままで、言った。
「…あれ、夏樹ちゃんじゃね?」
「え?」
俺は思わず、振り返った。田中が見つめた同じ方向を見やる。
間違いなくそれは夏樹だった。駅の改札口の人ごみの中に、夏樹はいた。
意外だった。スカートルックは好きじゃない夏樹が、真っ白のワンピースを着ていた。
夏樹のこんな服装を、見た記憶がなかった。
丈が短めのスカート部分から、形のいいすらりとした脚が伸びていた。
ワンピースにあわせた白いサンダル。綺麗な足のくびれ。
そして…ポニーテールにまとめた髪。首筋に、あのネックレスが…光っていた。
「…どこ行くんだろな?」
田中がそう言った。俺に答えを求めるように。でも、俺は、答えられない。
券売機の前に立った夏樹は、バッグから財布を取り出し、切符を買おうとしている。
『…あのさ、私から誘うよ。また連絡する』
夏樹の言葉が頭の中を廻った。
俺が見たことのないワンピース姿で。夏樹が。
どこへ、いや、誰に?…会いに行こうとしているんだろう。
夏樹は自動改札機をくぐると、ホームへ続く階段を上がり、やがて、見えなくなった。
田中の変な視線を感じながら、俺は黙り込んでいた。
暮れる夏が、加速しながら、狂い始めていた。
586
(2): この夏の向こうまで ◆7UgIeewWy6 2007/09/03(月) 18:25:24 ID:Sxlxkmrt(4/4)調 AAS
あまり推敲する時間もなく、進展も遅くすみません。
本日はここまでとさせていただきます。
587: 2007/09/03(月) 21:23:22 ID:tYL5WUMO(1)調 AAS
投下が多く続いてたけど、この作品が一番オーソドックスでとても気になる
当然ながら鬱な作品になるんだろうけど、なんらかの希望を見出せればいいなあと思う
588: 2007/09/03(月) 22:02:58 ID:To1QXzoR(1/2)調 AAS
俺もこの雰囲気すげー好き。ネットリ進行こそ寝取られの味。
このままガンガンいきましょう!

あ、そうだ、好きだからこそ1つだけ突っ込み。
前回の終わりで、急に神視点になっちゃった(テレホンH)とこは、やっぱ気になる。
俺も寝取られは絶対一人称じゃなきゃとは思ってるんだけど、そうすると寝取られの
現場を自然に入れるのがすごくムツカシイ…けど、そこは踏ん張りどころだとあたし思うの!

…なんて雑音をムシして書く、それもSSの醍醐味。個人的には超鬱なオチを期待しています!
589
(1): 2007/09/03(月) 22:30:36 ID:V7PEisGu(1)調 AAS
彼氏彼女のカップルがいて、彼氏が彼女を寝取られる作品はあるけど、彼女が彼氏を寝取られる作品ってないねぇ
なんで?
590: 2007/09/03(月) 22:33:55 ID:DfKV0JlF(1)調 AAS
>>589
女が男を寝取られる話は他のスレに投下しても
追い出されないからじゃないか?嫉妬スレとか
591: 2007/09/03(月) 22:44:56 ID:v2hUd9g6(1)調 AAS
逆もまた一考なり。そういう作品もあればいいな
592: 2007/09/03(月) 22:46:28 ID:q5b5c6uH(1)調 AAS
>>564
あらすじとか関係なく、当時のスクウェアのブランド力は凄かったんだよ
とりあえず新作が出りゃみんな買ってたんだ。
593: 2007/09/03(月) 22:50:39 ID:To1QXzoR(2/2)調 AAS
女の人って、彼が他の女性とエッチしてる事を考えたとき、嫉妬はするだろうけど、
男のように妙なコーフンを感じるってのは無いんじゃないの?
594
(1): 2007/09/04(火) 00:21:59 ID:sw1Dux9f(1/3)調 AAS
女は男を自分の所有物という風には思わないだろうからね
595: 2007/09/04(火) 00:27:24 ID:C5TxBezZ(1)調 AAS
保管庫にそういうSSなかったっけ?
単純にスレ内男女の数の差じゃないの?
596: 2007/09/04(火) 00:28:18 ID:28RNl8Qg(1)調 AAS
>>586
この時点でかなり欝に…
もう大好き!
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