[過去ログ] 孕ませ/種付/受精/妊娠/妊婦/出産/HRネタ総合【5】 (854レス)
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578: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:23:34 ID:a9XkPMFb(1/18)調 AAS
孕ませ神殿ウルスラ編の続き行きます。
まだ本格的なエロにはいたりませんが、
途中でゾンビの陵辱が入ります。
苦手な人は「ゲーパロ専用」で弾いてください。
579: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:24:46 ID:a9XkPMFb(2/18)調 AAS
<孕ませ神殿>4 <巫女長ウルスラ>3

邪教の巫女の法術によって、テルズが蒼黒い光に包まれるのを、私は呆然と見やった。
その禍々しい教義ゆえに世から追われた邪宗は、
時として非人道的な手段を取ることもいとわない。
それは、若い巫女たちに他宗の知識を教えるときに語りもして、
私自身、十分に熟知しているつもりだった。
だが、ここまでするとは。
死人を生者に見せかけて操り、手駒にすることでさえ女神への冒涜だというのに、
生者を──しかも年端も行かぬ、成人前の男の子を「人外のもの」に変えるとは!
そう。
エレーナと名乗った邪教の巫女は、テルズをおぞましい獣へと変えた。
蒼黒い毛皮の、大きな牙と爪をもつ獣人へと──。
「ふふ、この子は、<自分が獣になる>ことを何より畏れ、嫌悪していた。
その心の闇が、わが術に力をもたらす──お行き! あの腐れ売女どもを食い殺すのよ!」
自分を慕っていた子供を理性のない獣にするだけに飽き足らず、殺人まで犯させようとする女――。
「……許さないわよ、エレーナ!」
錫杖を振り上げて呪(しゅ)を唱える。
──しゃん。
錫杖に取り付けられた護法具が霊力を受けて破魔の音色を鳴らす。
だがその力は、テルズを覆う鈍く暗い呪(じゅ)に遮られて霧散した。
私の祝福──呪(しゅ)が、エレーナの呪詛──呪(じゅ)に打ち負かされたのだ。
「――!!」
振り回したテルズの腕は、まるで丸太のように太い。
その一撃を受けて、死人たちの攻撃をしのいで残っていた巫女がなぎ払われた。
「ほほ、わが術がそんなもので破れると思うたか!」
百年を閲(けみ)した魔女は、嘲笑った。
人々を惑わす美貌が憎々しげに歪み、この女の本性をあらわしている。
「くっ!」
私は錫杖を構え直すと、テルズに向かい合った。
580: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:25:33 ID:a9XkPMFb(3/18)調 AAS
売春巫女は、体術が苦手だ。
そもそも他人を傷つける術(すべ)を訓練していないし、好まない。
春と快楽をひさぐ女は、男を癒すことが生業なのだ。
しかし、この状況ではそんなことを言ってもいられない。
私は、必死に昔のことを思い出した。
今でこそおとなしやかに振舞っているが、生娘の頃は相当なお転婆だったし、
見習い巫女時代は、神殿の衛士も勤めたものだ。
あらゆる意味で身軽だったあの頃の動きをイメージする。
──テルズが太い腕を振り回してせまってくる。
身を躱(かわ)す。
一回、二回。
思ったとおり、その動きは早いが単調だ。
見切れなくはない。
──そう思った瞬間、背後から掴みかかってくる敵がいた。
「死人(しびと)!」
私たちの祝詞によって倒されたはずの死人が、再び立ち上がっていた。
いや。
一体だけでなく、二体、三体。――倒された全ての死人が起き上がろうとしていた。

軋む骨格と硬く強張った筋肉が悲鳴を上げる。
溶けかかった腸が、脂肪が、震えながら垂れ下がる。
弾力を失って久しい皮膚が、床と自重との間でゆっくりと潰れていく。

生死の法則に背いて生者のごとく振舞おうとする屍は、
幽明境を異にする者が支払うべき代償を全て払いながら、なお立ち上がった。
「――!」
反射的に振り仰いだ先で、エレーナが酷薄な笑みを浮かべて呪詛を唱えていた。
あの呪詛がある限り、死人は何度でも蘇るということか。
私は次々に起き上がる、何十年、何百年前の巫女と村人の死体を絶望的な目で眺めた。
ちらりと入り口を確認する。
私たちを逃がさないように、死人たちの何人かが固めていた。
祝福の術を身にまとえば、突破できないこともあるまい。
エレーナが目ざとくそれを見咎め、嘲笑を浴びせる。
581: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:26:04 ID:a9XkPMFb(4/18)調 AAS
「ほほ、もう逃げの算段かえ? 勇ましいのは口だけか」
百歳の魔女巫女は、その美貌は変らぬが、もう口調を偽る事をやめていた。
そう。
私は、すでに自分では、エレーナに勝てないことに気がついていた。
エレーナ一人ならば、あるいは何とかすることが出来るかもしれない。
だが、死人とテルズとがいては敵わない。

──ならば、することは一つだ。

私は、後ずさりしながらテルズや死人との距離を慎重に測った。
ゆっくりと、錫杖に祝福の霊力をこめていく。
生命力を司る女神の力は、穢れた術を防ぐ力を持っている。
私に与えられた霊力によって、錫杖があたたかみを持ち始めた。
「くくく、さすがは売女。助けに来た相手も、仲間も捨てて逃げるか。──だが、させぬぞえ」
嘲笑うエレーナが、両手を広げて呪を唱えた。
死人どもが全員一斉に飛び掛る。
いや。
飛び掛ったのは、男の死人だけだ。
冷たく湿った手が、私の身体を掴む。その感触に、私は総毛立った。
錫杖を振って打とうとする。
だが、錫杖は、破魔の音色を立てなかった。
「──!!」
私は、錫杖を取り落とした。
「ほほ、霊力を篭めそこなったかえ。未熟者。その程度の力で私に歯向かおうとは……」
エレーナは、手を口元に当てて甲高い声で笑った。
開け放しになった法衣からのぞく大ぶりな乳房が、哄笑とともにぶるん、と揺れる。
男ならば、子供から老人までその肉を鷲?みにし、かぶりつきたいと思うに違いない。
毒をたっぷりと含んだ甘い蜜を滴らせるような笑みを深め、エレーナは私を指さした。
「……では、この未熟で愚かな売女に、ふさわしい罰を与えておやり!」
魔女が手を振る。
――地獄の饗宴が始まった。
582: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:26:34 ID:a9XkPMFb(5/18)調 AAS
陵辱は唇からだった。
かつては人間であった「それ」の顔が、今は人ではない卑しさを湛(たた)えて私の顔に近づく。
重なった。
唇を閉じて抵抗しようとするが、予想していたかのように鼻を掴まれた。
空気を求めて喘いだ。生者は呼吸をしなければならないのだ。
開けた口を待ちかねていた舌が、私の口腔へと入り込む。
死者の舌が。
ぬめぬめと冷たい肉の塊は、腐汁まじりの唾液にまみれていた。
流し込まれる。
苦い。
生者ではありえない温度と感覚に私は戦慄した。
全身に鳥肌が立つ。
──死人たちはそれを手の平で弄んだ。
乳房を、尻を。腹を、背中を。
髪と顔に手が押し付けられたとき、私は思わず悲鳴を上げた。
「ほほほ、嫌なのかえ?」
エレーナが心底嬉しそうな声で嗤った。
嫌なことを、されたくないことをするのが陵辱だ。
「ほほ、貴様は売春巫女なのであろ? ――ならば死人にも春をひさいでみよ!」
はたして、魔女はそれを命じた。
私はいい様もない嫌悪感に全身の血が凍る想いだった。

<どんな殿方にも等しく春をひさぎ、どんな精液でも等しく受け止める>
それが売春巫女の誓いであった。
人である以上、心の中の想いは違って当然だが、
どんなに未熟な巫女でも、客と寝るときはその誓い──すなわち女神様への信仰に従う。
はじめて身を任す旅人を、恋人と代わらぬ抱擁で包み、
性欲を吐き出しに来ただけの醜い男に、夫にするのと変らぬ性技で奉仕し、
見知らぬ男の種で孕む──それが売春巫女だ。
だが、死人、生亡き者は、命を紡げない。
583: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:27:05 ID:a9XkPMFb(6/18)調 AAS
死人の交わりは、生者のそれの真似事に過ぎず、
子種を子宮に放ってもそれは決して芽吹くことがない。
不毛の性交だ。
<大地の母神>の教えに徹底的に背く、ただの肉と腐肉の交差。
禁忌とされる性交を強要される。
私の中に、死よりも恐ろしい戦慄が走った。
「ほほ、どうした、顔が青いぞ、売女」
エレーナは、愉しくてたまらないという表情で嗤った。
邪宗の歪んだ教義のもとでは至高のものとされるのだろうか。

巫女装束を剥ぎ取られた。
死人たちも自分たちの身体を覆う襤褸を破り捨て、汚怪な男根を露出させる。
全員が勃起していた。
「ほほ、つくづく男とは業が深い──たとえ死んでも女が欲しいか。
おお、腐れた男根のくせに天を向いてそそり立っておるわ」
生者といわず死者といわず、そんな男たちを作り出す女が抜け抜けと言う。
自らが生み出した汚猥な人形に蔑みの眼差しを向けたエレーナは片手を挙げ、振り下ろした。
「よかろう。その女を存分に愉しむがいい」
その言葉を待ちかねたように、死人が私の左右の手を掴んで引き寄せる。

──握らされた。
私は、悲鳴を上げようとして、その声を飲み込んだ。
堅く強張った肉の感触は、生者のそれと変らなかった。
表面を覆おう、崩れかけた皮膚と腐汁をのぞけば。
なぜか──私の手は、自然に動いた。
何百、何千という客に施した奉仕を。
「おおお……」
左右の死人がうめいた。
息はしていないが、声を出すことは出来るらしい。
私は、自分の手の動きが、大胆になるのを自覚した。
584: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:27:35 ID:a9XkPMFb(7/18)調 AAS
「ほほ、どうした、――それはお前たちが嫌う生なき者ではないのかえ?
それとも、男根なら、どれでもいいのかえ?」
エレーナの言葉に、私は、身体と頭のどこかが反発するのを感じた。
「……お生憎さま。わたしは、愉しんでいるわよ。お仕事を」
猛然とわいた闘志。
こんな台詞が自分の唇から漏れるのを、私は半ば呆れながら聞いた。
言葉の中には、言った瞬間に真実に変わるものもある。
──女の唇から零れ落ちたものならば、尚更。
私は、手にした男根を強く握った。
強張りに沿って上下にこすりたてる。
ずるずると皮が動く感触さえ、――愛しかった。
まるで、包皮も剥けきっていない少年のそれを愛撫するようにしごきあげる。
中年男の死人たちのうめき声は大きくなった。
「……出したいの? 死人のくせに、生者と同じく?
こんなに大きな大人なのに、まるで皮かむりの坊やみたいに喘いでいるじゃない……」
生きている客を取るときのように、私は言葉を紡いだ。
だが、それがエレーナのような侮蔑を含んだものではなく、
男を──客を奮い立たせるための声音であったことに、私は微笑んだ。
思い切り強く、しかし思い切り優しく手を翻す。
左右の死人は、あっけなく放った。
若者もかくや、という角度でそそり立つ男根から放たれた精液は、
天井までかかるかと思うくらいに勢いが良かった。
はじめは白濁の汁が飛び、次いで黄色が、最後は紫色の粘液が後を追った。
精液と、膿と、腐汁の匂いに私はむせた。

次の男根は自分から握った。
痩せこけた老人の死体は、文字通り骨が見えるほどであった。
手指を絡めてこすりあげると、死人はおぞましい声をあげて身を捩り、
最初の二人よりも早く絶頂に達した。
量は、年が若い二人よりもたっぷりと出した。
手のひらでそれを受けた私は、それを乳房や太ももに自分からなすりつけた。
585: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:28:08 ID:a9XkPMFb(8/18)調 AAS
「おお、おお」
回りを取り囲んだ死人たちが一斉に男根をつき出した。
手を触れるだけで彼らは射精し、命の匂いのしない精液を浴びせかけた。
私の顔に、髪に、乳に、尻に。
「ああ……」
汚される喜びに潤んだ声が自分の唇からこぼれるのを私は遠く聞いた。
セックス──売春は好きだ。
性欲は強いと自分でも思っている。
でなければ、売春神殿の長などはやっていられない。
だが、禁忌となる死人相手にも、こうも易々とその気になれるか。
──いや。こうでもしなければ気が狂ってしまう。
官能が薄れた瞬間、凄まじい死臭が押し寄せ、私は吐き気を懸命にこらえた。
私は、無理やり言葉を紡いだ。
「死人…でも、殿方は、殿方……。
少しぐずぐず…だけど素敵なお持ち物と、多少匂うけど濃い精液を持っている…わ
こうして、ちゃんと春はひさげるし、もしかしたら…子も…産めるかも……知れないわね……。
あなたの……下僕にしておくのは、惜しい……くらいに立派よ……」
「貴様……」
エレーナの表情が消えた。
百年を生きた魔女巫女は、嬲る相手が、
あくまで自分を失わないでいることに気がついたのだ。
「嬲り尽くしてから殺そうと思ったが、気が変わった。──今、死ね」
エレーナが眇(すが)めた目で私を見下す。
──読み誤ったか。
一瞬、絶望が私を襲う。
唇の端を噛んだ。
精液の味がした。
死人は、私の顔にもたっぷりと汚液をぶちまけていた。
その顔を見たエレーナがにやり、と嗤った。
──いや、予想通りだ。
私は、エレーナがこれからするだろうことを予見しきったこと確信した。
586: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:33:38 ID:a9XkPMFb(9/18)調 AAS
「売女め、……貴様に、一番屈辱的な死を与えよう」
魔女は勝ち誇りながら犬でも呼ぶかのように手を叩いた。
テルズが、まさにその通りの従順さでエレーナの足元に這い蹲(つくば)る。
「お舐め」
立ったまま、傲然と腰をつき出したエレーナは、
自分の数倍もある獣が、その身を縮めて股間に口をよせたのを見下ろすと
真紅の唇に侮蔑の微笑を浮かべた。
その唇が、すぐに震えた──官能に。
びちゃびちゃ、というはしたない音は、テルズの口元からした。
舐めているのだ。
エレーナの性器を。
「ふふ、私が仕込んだだけあって童貞の癖に舌使いだけは大したもの。
──見えるかえ、売女。お前が救いにきた子供が私の下僕になりさがっている様を?」
魔女は、くぐもった声を上げた。
「ごらん。見続けるのだ。この子供が、私を喜ばせる様を。
こやつが私を法悦に導いたとき、お前の首を刎ねてくれるわ。──こやつの手で、な」
テルズに私を殺させる、という宣言に、私は身を捩ってわなないた。
──待ちに待った機会の到来に。
エレーナは、私を殺すのに、自分自身か、テルズに止めを刺させるだろう。
魔女巫女を一目見た私は、そう確信していた。
それも、テルズに止めを刺させる可能性が高い。
彼女の捻じ曲がった執念は、「救いに来た相手に殺される売女」を望むだろうから。
それならば、それに応じた策があった。
私は、右足で自分の足元を探った。
固い感触。
慎重に位置を定めて落としておいた者は、計算どおりの場所にあった。
──霊力をこめた錫杖。
私のありったけの力を封じたそれは、一度だけの奇跡を起こしてくれるはずだ。
「おおっ……おおおっ」
身を仰け反らしたエレーナが獣のように大きな声で喘ぐのを睨みながら、
私はそれを足でつかんだ。
587: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:35:10 ID:a9XkPMFb(10/18)調 AAS
売春巫女は、みな足指が器用だ。
男根を足で愛撫する性技は、どこの売春神殿でも知られた技だ。
弱い女の力でも、手よりも力の強い足指ならは、
男が自分の手でするのに近い強さで男根を愛撫できる。
自慰に慣れすぎて、優しい愛撫に昂ぶれない客を相手にするとき、
一番効果的なのは、足での性交だった。
「おおおおおっ!!」
エレーナが、吠えた。
テルズの舌で達したのだ。
「――お行きっ!! 売女の首を刎ねよっ!!」
女性器から、飛沫(しぶき)のように愛蜜をはねさせながら魔女が叫んだ。
──どっ!
テルズが飛び掛る。
私は右足に掴んだ錫杖を放り上げた。
それは突進してくるテルズの額の辺りにぶつかり、
──しゃん。
先ほどはわざと鳴らさなかった破魔の音が、今度はちゃんと鳴った。
それは、すなわち、私が限界までこめた霊力の全てを解放した証だった。

「ぎぐっ!!」
くぐもった奇妙な声を上げてテルズが悶えた。
私は残りの力を振りしぼって祝詞をテルズの身体にかけた。
両手は死人に押さえつけられている。
ならば──。
私は、足を振り上げた。
錫杖を放り投げた器用な足指は、テルズの獣のたてがみをうまく掴んだ。
いや。
私の足指の中で、それは見る見るうちに髪の毛
──つややかで柔らかい子供の髪の毛に戻っていく。
よろけ、一歩踏み出すテルズを引き寄せ、身を捩って振り、
その背中を思いっきり蹴り飛ばす。
少年の意識のない身体は、私の最後の祝詞に守られ、
死人を押しのけ、転がるようにして戸口から放り出された。
588: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:35:42 ID:a9XkPMFb(11/18)調 AAS
あとは、<神殿>に突入するときに二人だけ外に残した巫女が、
なんとかして逃げ延びさせてくれるだろう。
――エレーナが、霊力を使い果たした私を嬲り殺す間に。
「……貴様。……最初から……テルズを……」
エレーナは、呆然とした表情で私を眺めた。
「ふふ。思ったとおり、貴女が死人を操れる<領域>は、この<神殿>内だけだったようね」
テルズが消えた戸口に駆け出して行く死人はいなかった。
エレーナも、それを命じない。
いや、命じることが出来ないのだ。
死者に偽りの生を与える術はひどく困難なのだ。
一体二体ならともかく、これほどまでに大勢の死者を操るのは、
儀式によって霊力を高めた<領域>の中でなければ不可能だった。
「貴女が、自分一人で復讐と人々の堕落を考える女でなければ、
これはうまくいかない戦術だった。
だれかもう一人でも、貴女が信じる生身の仲間がいたら、負けていたのは私のほうよ」
「何を世迷いごとを――。負けているのは貴様のほうじゃ!」
魔女はわめいた。
驕慢な魔女が唾を飛ばさんばかりの勢いで叫ぶのを、私は微笑して見つめた。
「いいえ、私の勝ちよ。――言ったでしょう、私はあの子を取り戻しにきたの。
たとえ、私が今から殺されても、テルズが戻れば、私の勝ち」
「この売女ァァァ!」
怒りの声は裏返り、空虚な神殿内に響き渡った。
その姿は、到底、若く美しい女には見えない。
世の摂理に逆らって、姿を偽る魔女の本性がむき出しになっていた。
「――死ネェェェェェッ!」
そのことばは、声ではなく、脳に直接響いた。
――血が、汚液に変わるような恐怖と嫌悪感。
内臓が反転するような感覚に、両手の自由を奪われた私は
口元を押さえることすらできず、嘔吐した。
込み上げてくる吐瀉物の中に、奇怪な蟲でも混じっているような感覚。
──人間、生きていれば「死にたい」と思ったことは何度でもあるだろう。
だが、今の私ほどそれを強く感じた人間はいるまい。
生きながら屍になっていくような感覚。
589: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:36:18 ID:a9XkPMFb(12/18)調 AAS
いや。
エレーナは、私を生ける死人に変えようとしているのだ。
それも死体に術を掛けるのではなく、生きたままで。

髪の毛がごっそりと抜け落ちた。
皮膚が弛み、溶け、ずるりと垂れ下がる。
肉は骨から剥がれ、筋は千切れて行く。

痛い。
苦しい。
何よりも恐ろしいことに、それを感じる意識は途絶えなかった。
文字通り、地獄の苦しみが襲い掛かる。
私は、自殺を禁じる<大地の母神>の巫女であることさえ恨んだ。
「――っ!!!」
エレーナが何かを叫び、私を指さして詰め寄ろうとする。
狂うことさえ出来ずに、さらなる拷問を私の屍が受けようとしたその時。

――それは起こった。

(大丈夫。いま、治します)
「え――?」
耳元で誰かがささやく声が聞こえた瞬間、
不意に、私は自分の身が軽くなったのを感じた。

膿み崩れはじめた身体に血が通い、体温が戻る。
解け崩れた肌に水気と張りが戻る。
肉は骨の元に戻り、髪の毛さえも再び私の頭を覆った。

温かい力が満ち溢れる。
原初の生命力。
左右の死人たちが溶けるように崩れ落ち、私は一人で立った。
驚愕の表情を浮かべるエレーナに対して、何をすればいいのかは、
私を包み、耳元でささやく霊気が教えてくれた。
590: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:36:49 ID:a9XkPMFb(13/18)調 AAS
流れに導かれるように、手を伸ばす。
身を翻して逃げようとするエレーナを、それは的確に捉えた。
「――!!!」
目には見えない何かに縛られたエレーナは、聞き取ることが出来ない悲鳴をあげ、
じたばたともがいたが、その姿は薄らぎ、やがて――消え去った。
私に力を与えていた何かが、満足げに去って行こうとする。
その力が完全に消える前に、私は──なぜか呪を小さく呟いていた。

「……お見事ですな」
「……<大地母神>の巫女のお力、これ程の物とは……」
注意深く<神殿>内を探り、
全てが終わったことを確認して戻ってきた女騎士たちが、私に感嘆の声を浴びせる。
私が、いや、私に力を貸してくれた何者かがエレーナを倒したすぐ後に、
<婚姻と出産の守護女神>の女騎士たちが駆けつけてきた。
交渉役の巫女の指示で加勢にやって来たと言う彼女たちは、
戦いがすでに終わっていたことに対して驚き、また大いに恥じた。
そして、倒れこむようにして座っている私の代わりに、
私の部下たちを介抱し、<神殿>の中を清め、様々な事後処理を行ってくれた。
「あの魔女めは、我々にとっても怨敵でした」
「どれほどの騎士があやつにやられたものか!」
「――それを完全に滅ぼすとは……」
「――まさに、女神のお力の賜物でしょうな……」
二人の瞳に浮かんだ真摯な色を見て、私は小さくため息をついた。
──冗談ではない。
本当の私は、魔女エレーナを滅ぼすどころか、自力で立ちあがることすらままならない状態だ。
私に力を貸した<彼女>は、自分の部下にもそのことを教えないつもりらしい。
現場主義の女騎士たちに、他宗の人間との応対を滑らかにさせるには、
その力を見させればよい、という判断か。
――つくづく、完璧な小娘だ。
二人の肩を借りて隠れ神殿から出た私は、街の<神殿>につくやいなや、一昼夜を眠り通した。
591: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:37:22 ID:a9XkPMFb(14/18)調 AAS
「あの……」
「――何?」
「……すみません……」
「そう。……自分がしたことの意味、分かった?」
「はい……多分……」
テルズは、もじもじと身をよじらせた。
悔悟の思いもあるが、今自分が置かれた状況のせいもある。
「あの、巫女長、もう行っても……いいですか?」
「駄目よ、テルズ。贖罪のために何でもする、と言ったのはあなたでしょう?
――私の湯浴みに付き合いなさい」
丸一日眠って回復した私を待っていたのは、うちひしがれた少年だった。
イリアたちの慰めも届かず、後悔と自責に身もだえするテルズに与える罰は、もう決まっていた。
だけど、その前に、少し楽しんでもいいだろう。
死人の瘴気に当てられた巫女たちも、全員無事に戻ることが出来たことでもあるし。

戦いの汚れと寝汗を洗い流す湯浴みについてくるように命じたとき、テルズは困惑した。
女の園――もっとも神殿は、どこをとっても女の園だが――に放り込まれた少年は、
裸でうろつく女たちの真っ只中で、自分の裸体を恥ずかしげに隠そうと身を縮みこませる。
ここは、神殿の大浴場。
巫女は、春をひさいだ前や後で、ここで身体を洗う。
おどおどと前を隠すテルズを、巫女たちがくすくす笑いながら指さす。
少年は、茹でたように真っ赤になった。
「ほら――こっちよ」
私は、テルズの背中を押して、幹部用の区画に連れ込んだ。
「――戦いですっかりくたびれてしまったわ。
……テルズ、私の身体を洗ってちょうだい」
ゆったりとしたスペースを独占して寝そべりながら、私はそう命令した。
少年は飛び上がらんばかりに驚いた。
「あ、あの……」
「何?」
「い、いえ……」
ごくりと唾を飲み込んだテルズは、意を決した風に私に近づいた。
592: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:38:51 ID:a9XkPMFb(15/18)調 AAS
「……おっぱいはもっと強く。死人の匂いが取れないわ」
「は、はいっ……」
「……お尻を避けてたら、いつまでたっても洗い終わらないわよ?」
「は、はいっ……」
恥ずかしさのあまり泣きそうな声をあげるテルズを頤使して私は身体を洗い終えた。
少年は手ぬぐいで前を隠すことも許さなかったから、
若い茎が天を突かんばかりにそそり立っている様子がちらちらと目に入ったが、
私は気付かぬふりをしてテルズの手による奉仕を受け続けた。
「――で、何かわかった?」
「え?」
不意の質問に、テルズは顔を上げてこちらを見た。
「私の身体を洗って、じゃないわよ。エレーナの神殿に行って見て、の話」
「……正直、よくわかりません。ただ……」
「ただ……」
「……エレーナさんのしたことは良くないことだと思いました。
エレーナさんの言っていることは、全部が全部まちがってはない、と今でも思います。
巫女長に言うのも……その失礼ですが……<神殿>よりも勝っている部分もたしかにあった、と思います。
でも、……死んだ人を操ったり、意思を奪ってまで、その<教義>を守らせようとするのは、
……何か、違う気がします……。うまく説明できないのですが……」
街を支配する<神殿>に大いに逆らった少年は、邪教のあぎとから逃れても、
信じた心は変わらない、強情な子だった。

──まるで誰かさんのように。

少年をとがめるかわりに、私は微笑を浮かべた。
「……上出来よ、テルズ。そこまでわかっていれば、私から何も言うことはないわ」
「え……?」
命を助けてもらった相手になんて言い草か、と言われるかと思ったテルズは
意外なことばに息を飲む。
「その答えは、あなたが自分で探しなさい」

──それは、私が自分自身に向けた言葉でもあった。
593: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:39:21 ID:a9XkPMFb(16/18)調 AAS
あの時。
死人に犯されかけながら、私は奇妙な感覚に襲われていた。
禁忌とされているはずの、死人との交わり。
だが、その中で、私はたしかに死人の「温もり」を感じた。
あのおぞましい、汚怪な感触は今も肌が覚えている。
だが──。
はじめはエレーナ、邪宗の巫女に対しての反発と挑発でしかなかったその行為の中で、
私の中で、確かに何かが芽生えた。
それが堕落なのか、それとも何か違うものなのか。
今の私に答えはなかった。
あるいは──。
あるいは、私の信仰は、「狭い」ものであったのかもしれない。
エレーナのように。
命を紡ぐ女神の教えは、もっと広いものなかもしれない。
死人ですら、もとは大地より産まれた者。
妄信と言っていいほどに信じた対象が崩れ去り、悩み苦しみながら
安易にそれを捨て去ることが出来ない──否、捨てない少年の姿は、私自身の姿でもあった。
だから、私は、答えを探す小さな同志に優しく微笑みかけた。

「巫女長――あの、罰は……」
微笑みかけられた少年は、もう一度、先ほどとは違う唾を飲み込みながら聞いた。
私は、両手を伸ばしておどおどとした表情を浮かべるその幼い顔を挟み込んだ。
顔を近づけ、唇を合わす。
「――今日ここで<大人>になって、この街の発展に尽くすこと。
それが、さっき決められたあなたへの罰よ」
「え……」
「そして、あなたの<成人の儀>のお相手は、私。――こんな小母さんじゃ不満?」
「え……あ、あの、いやっ!」
テルズは真っ赤になって立ちすくんだ。
動機はどうあれ、あれだけのことをしたのだ。
街の掟にしたがって<成人>することをテルズは了承していた。
しかし、罰がそれだけであることと、相手が私だということは予想もしていなかっただろう。
594: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:39:53 ID:a9XkPMFb(17/18)調 AAS
「私は腹帯はしていないけど、まあ、あれは私が承認して付けさせるもの。
死人に嬲られたけど、やっぱりその胤で孕むことはないし、
私はしばらくお客を取っていないから、
……今孕めばそれはあなたの子供。巫女長のお墨付きで<成人>よ。
──うふふ、これって職権濫用かしら?」
「――!!」
実際、ここ最近、少なくとも二ヶ月ほど私は客を取っていなかった。
先刻、そのことに気が付いたときと、急に身体の奥が熱くなった。
巫女長としての大仕事を終えたあとだ、久しぶりに一人の売春巫女として春をひさいでみたい。
「まだエレーナの術がテルズに残っているかもしれないから」という理由で
自ら少年の筆下ろしに名乗りを上げたのは、実はそういう思いがあった。
もちろん、同じ命題を抱えた相手に対する親近感もある。
あまりのことに言葉もない様子のテルズの慌てぶりを楽しみ、
私はもう一度少年の瞳をのぞきこんだ。
「……私と愛を交わしたくない、テルズ?」
「……か、交わしたいです」
思ったとおり、瞳の奥は、もう濁っていない。
エレーナの呪縛は完全に解けていた。
「そう、じゃ決まりね。私の身体で大人になりなさい……」
私はゆっくりとテルズの唇に自分の唇を重ねながら言った。
595: ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 2007/01/20(土) 14:41:54 ID:a9XkPMFb(18/18)調 AAS
今回はここまでです。
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