[過去ログ] 三島由紀夫全戯曲上演プロジェクト (632レス)
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474: 2011/08/20(土) 14:16:08.08 ID:Y8bvq8oG(1/8)調 AAS
井上:『からっ風野郎』の時はいかがでしたか。
藤井:『からっ風野郎』の時は、講談社の榎本昌治さんが、僕に「三島の映画やらないか」と言ったんですよ。
「監督? 主演?」って訊ねたら、「馬鹿。主演だ」って言うから、「あ、そう? で、何やるの?」。そうしたら、
「何でも良い」って。(中略)
松本:映画は榎本さんの発想なんですか?
藤井:いやいや、三島さん。
松本:三島さんがそんなに望んでいたんですか?
藤井:ええ。
松本:日活の『不道徳教育講座』にちょっと出てますね。あれがきっかけですか?
藤井:いや、その前からですよ。
松本:何で三島さんは、そんなに望んでいたんでしょうね?
藤井:やっぱり映画に出たかったんじゃないですか(笑)。自分が監督するんじゃなくて、要するに、役者とか
俳優としてですね。
佐藤:その前に『鏡子の家』の映画化の話がありましたでしょう? 大映で。それがいつの間にか『からっ風野郎』の
主演の話になってきますね?

藤井浩明「映画製作の現場から」より
475: 2011/08/20(土) 14:17:09.05 ID:Y8bvq8oG(2/8)調 AAS
井上:『鏡子の家』を市川崑監督でやると、「スポーツニッポン」が報じてますね。
藤井:市川崑さんが『炎上』をやりましたでしょう。傑作だと思うんですけど、市川さんもあれから三島由紀夫に
注目するようになったんです。『鏡子の家』は、雑誌「声」に冒頭部分が載った時から目をつけていて、本に
なると同時に、市川さんに話しました。やる、と言ってくれたんで、永田雅一に、三島さんが書き下ろしの大作を
出したので、市川監督でどうですかと言ったら、それ以上何んにも聞かなくて、「乗った!」って言うんですよ。
会議できめなきゃいけないのに、もうそれで決まっちゃった。そんな時に、主演の話を榎本が持ってきたんですよ。
『鏡子の家』とは関係なく。つまり、三島由紀夫原作の映画化と、三島由紀夫というスターの主演映画が、運悪く
バッティングしてしまった。それで『鏡子の家』のほうが後回しになっちゃったんです。
井上:そういうシチュエーションがあったのですか。

藤井浩明「映画製作の現場から」より
476: 2011/08/20(土) 14:18:09.48 ID:Y8bvq8oG(3/8)調 AAS
松本:脚本はどうでした?
藤井:最初はね、「白坂依志夫でやろう」って言っていた。白坂は、『永すぎた春』でも脚本を書いたし、
三島さんともお互いとてもよく知っているんですよ。(中略)二人は話していて、「インテリをやりたくないん
だったら、じゃあ競馬の騎手をやろう」ってことになった。三島さんの体型って割と小柄だし、良かったんですよね。
それでね、「凄い名馬に乗る競馬の騎手が、八百長をやる話」に、三島さんも乗ったわけなんです。それで脚本を
作って、(中略)この時は重役も皆参加して本読みをやった。脚本を読むと、割とよく出来ていたんですよ。
八百長やって最後にカムバックするんですけど、ゴールインした時に死んでしまう話で三島さんにぴったり。
そしたら、永田雅一がですね、「お前何考えているんだ!」って怒り出したんですね。「俺を何だと思っているんだ。
俺は中央競馬の馬主会の会長だっ!」って。「中央競馬が八百長だって、そんなのは絶対できない!」って(笑)。
佐藤:でも、これ実現していたら良かったでしょうね。

藤井浩明「映画製作の現場から」より
477: 2011/08/20(土) 14:19:11.99 ID:Y8bvq8oG(4/8)調 AAS
井上:しかし、大映の他に日活とか松竹に話は?
藤井:三島さんは、仁義のかたい人だから、そんな軽々しいことはしませんよ。だけど、三島さんは映画のために
二ヶ月もスケジュールを空けているわけですからね。それで「弱かったなぁ」と思った。「とにかく考え直そう」と
いうことになって、フッと思いついたのが、菊島隆三さんが石原裕次郎に当てて書いた脚本があったんですよ。
僕は菊島隆三と親しかったから、すぐに電話して、(中略)「どこにも売ってないですね」って念をおしたら、
「売ってない」って。(中略)そして、菊島さんのところに三島さんとすっ飛んで行って、その場で読んだんですよ、
脚本を。三島さんは「やる! これでいきましょう。」って言った。これが原型なんですよ。それをまた
増村(監督)が直したわけです。三島さんは増村が言う通りにやって良かったわけですよ。(中略)二代目だけど、
気が弱くて、腕力がなくて、組の存続も危ぶまれる、気がいい男。そういう風に全部変えちゃったわけ。あれは、
やっぱり増村の凄いところですね。

藤井浩明「映画製作の現場から」より
478: 2011/08/20(土) 14:23:47.20 ID:Y8bvq8oG(5/8)調 AAS
松本:だけど、『からっ風』の三島には、どこか借りてきた猫のようなところがありますね。
藤井:その点、『人斬り』は文句のつけようかないでしょう。
松本:そうですそうです。あの存在感は見事ですね。
藤井:もうぴったりです。一本やっているからキャリアが違うっていうかな(笑)。
山中:『人斬り』の時は藤井さんがマネージャーみたいなことをなさってたんですか?
藤井:勝新太郎がまだ大映にいて、(中略)僕はその頃企画部長やっていた。勝が僕にね、「ちょっと頼みが
あるんだけどさ、三島さんに出て貰えない?」とか言うんですよ。
松本:五社監督からじゃなかったんですね。
藤井:ええ。それで「何やるの?」って聞いたら、「人斬り新兵衛だ」って言った。僕はね、一発で出ると思った、
三島さんは。だけど、少し勿体つけなきゃいけない、マネージャーとしては。そこで「勝さん、それはわかんないよ」
と言った(笑)。(中略)で、三島さんに「こういう話が来ているんですけどね」と言ったら、「俺やるよ」って、
やっぱり一発で決まった。

藤井浩明「映画製作の現場から」より
479: 2011/08/20(土) 14:25:07.83 ID:Y8bvq8oG(6/8)調 AAS
藤井:三島さんは、「この田中新兵衛なら絶対にやる!」って言うんですよ。で、勝さんに、「この間、話したら、
三島さんは、やっても良いと言っているけど」と伝えたら、「会わせてくれ」って。勝もとっても喜んで
くれました。(中略)
松本:三島さんは勝さんの演技に全面的に支えられている感じですね。それが見ていて、気持ちよかった。
藤井:そうですね。それで、(中略)京都の撮影所まで行く。そうしたらね、勝新太郎がね。京都駅のホームまで
迎えに来ているんですよ。で、自分の車で、自分の運転で、都ホテルへ送ってくれて、「それじゃ、三島さん
明朝何時に撮影所で」って言う。その時、「テープにもう入れてある」って言うんですよ。三島さんの台詞と
勝の受けの台詞と両方を。次の日に行って、僕がテープを聴きますとね、勝が一々全部フォローしてくれて
いるんですよ。「ここはこう言った方が良い」とか。
佐藤:三島は、勝新太郎に随分世話になったとか、面倒見てもらったとか書いていますけど、そういうこと
だったんですね。

藤井浩明「映画製作の現場から」より
480: 2011/08/20(土) 23:16:47.70 ID:Y8bvq8oG(7/8)調 AAS
藤井:それで、セットに入って、宣伝用の撮影にかかったら、当時日本で一番有名なキャメラマンの宮川一夫さんがね、
ふらっと入ってきたんですよ。「あれ宮川さんどうしたの?」って言ったら、「三島さんと君が来ているというから、
俺、応援に来たんだ」って。それで天下の宮川さんが、三島さんのメイクをチェックしてくれるんです。すると、
スタッフの気持ちが全然違ってくるんですよ。宮川さんが三島由紀夫のためにここへ来てくれている。それは
異例のことです。それでいてね、三島さんっていう人は勉強家ですから、都ホテルに戻って「明日は撮影所に
十時」とか予定を確認するでしょ。そうするとね、荷物をポンと机の上に置く。原稿用紙と『椿説弓張月』の本です。
(中略)もう撮影所へ来たんだからそっちの方へ頭が行くのかと思うと、そうじゃないんですね。夜の何時頃からに
なると、『椿説弓張月』に取りかかる。その時は『人斬り』じゃないんですよ。そして、朝起きると、また
大スターになっているんです。

藤井浩明「映画製作の現場から」より
481: 2011/08/20(土) 23:17:21.60 ID:Y8bvq8oG(8/8)調 AAS
井上:たとえば昭和四十四年の六月七日は京都で『人斬り』のラッシュを見てから、帝劇に駆けつけて
『癩王のテラス』の稽古はじめをして、翌日は楯の会の六月例会です。次の九日は楯の会の活動をやって、十日は
『椿説弓張月』のスタッフ会議、こういう感じですね。動き回っている。
佐藤:切り替えと集中力が凄いですね。
藤井:凄いですね。ちょっと真似できないですよ。
佐藤:それでどうなんですか、実物は。色んな人が書いてますけど、やっぱりあたりを払うような存在感がある?
藤井:それはあるんじゃないですか。
佐藤:そういうのと、映画の銀幕に乗るのとは関係があるんでしょうか? つまり、スターと呼ばれる人は、
もうそこにいるだけで、何かオーラを発していて、それが銀幕に自然に現われるものなんですかね?
藤井:やっぱりね、三島さんは大スターなんですよ。
佐藤:『人斬り』の宣伝写真で、仲代達矢、勝新太郎、石原裕次郎と四人で並ぶけど、負けてないですね。

藤井浩明「映画製作の現場から」より
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