[過去ログ] バカニュース自治スレ (523レス)
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520: 2018/02/17(土) 09:25:13.38 ID:??? AAS
樹「なんなんだよ?」
覚「それ、よく見てみろよ」
樹「なんだよ? 言えよ、恐いから!」
覚「つ、爪じゃないか?」
その瞬間、3人とも完全に固まった。俺はその時、物凄い恐怖心を抱きながらも、何故か冷静にさっきまでの音を思い返していた。
『ああ、あれ爪で引っ掻いていた音なんだ…』
どうしてそう思ったか解らない。だけど、思い返してみれば繋がらないこともないんだ。
階段を登る時に鳴っていた「パキパキ」という音も、何かを踏みつけていた感触も、床に大量に散らばった爪のせいだったのではないか…と。
そしてその爪は、壁の向こうから必死に引っ掻いている何かのものなんじゃないか…と。
きっと膝をついて残飯を食った時、恐怖のせいで階段を無茶に駆け下りた時、床に散らばる爪の破片のせいで怪我をしたのだろう。
でも、そんなことはもうどうでも良い。確かなことは、ここにはもう居られないということだった。
俺は樹と覚に言った。
俺「このまま働けるはずがない」
樹「わかってる」
覚「俺もそう思ってた」
俺「明日、女将さんに言おう」
樹「言っていくのか?」
俺「仕方ないよ。世話になったのは事実だし、謝らなきゃいけないことだ」
覚「でも、今回のことで女将さん怪しさナンバーワンだよ? もしあそこに行ったって言ったらどんな顔するのか、俺見たくない」
俺「バカ。言うはずないだろ。普通に辞めるんだよ」
樹「うん、そっちのほうがいいな」
そんなこんなで、俺たちはその晩の内に荷物をまとめた。
そしてあまりの恐怖のため、布団を2枚くっつけてそこに3人で無理やり寝た。メザシのように寄り添って寝た。
誰一人、寝息を立てるやつはいなかったけど。
521: 2018/02/17(土) 09:26:45.21 ID:??? AAS
次の日、殆ど誰も口を利かないまま朝を迎えた。沈黙の中、急に携帯のアラームが鳴った。いつも俺達が起きる時間だった。
覚の体がビクッとなり、相当怯えているのが窺えた。覚は根が凄く優しいやつだから、前の晩、俺に言ったんだ。
「ごめんな。俺なんかより修の方が全然怖い思いしたよな。それなのに俺がこんなんでごめん。助けに行かなくて本当ごめん」
その時は本当に嬉しくて目頭が熱くなったけど、でもなぜか俺は覚のその言葉に引っかかるものを感じた。
覚は俺達が立てる音の一つ一つに反応したり、俺の足の傷を食い入るようにじっと見つめたり、明らかに様子がおかしかった。
樹も普段と違う覚を見て、多少ビビリながらも心配したのだろう。
「おい、大丈夫か? 寝てないから頭おかしくなってんのか?」
と軽口を叩きながら覚の肩を掴んだ。すると覚は急に、
「うるさいっ!」
と叫び、樹の腕を凄い勢いで振り払った。
522: 2018/02/17(土) 09:28:17.28 ID:??? AAS
樹と俺は一瞬沈黙した。
俺「おい、どうしたんだよ?」
樹は急の出来事に驚き、声を出せずにいた。
「大丈夫かだって? 大丈夫なわけねーだろ? 俺も修も死ぬような思いしてんだよ。何にもわかってねーくせに心配したふりすんな!」
樹を睨み付けながらそう叫んだ。
何を言っているんだろうと思った。覚の死ぬ思いって何だ? 俺の話を聞いて恐怖していた訳じゃないのか?
樹と覚は仲間内でも特に仲が良かったのだが、その関係も樹が覚をいじる感じで、どんな悪ふざけにも覚は怒らず調子を合わせていた。
だから覚が樹に声を荒げる場面など見たことがなかったし、もちろん当の本人もそんな経験はなかったと思う。樹はこれも見たことないくらいに動揺していた。
俺は疑問に思ったことを覚に問いかけた。
「死ぬ思いってなんだ? お前ずっと下にいたろ?」
「いたよ。ずっと下から見てた」
そして少し黙ってから下を向いて言った。
「今も見てる」
今も? 何を? 俺は訳が解らない。全然解らないのだが、よくある話で覚の気が狂ったのだと思った。何かに取り憑かれたんだと。
そんな思いを他所に、覚は震える口調で、でもしっかりと喋り始めた。
「あの時、俺は下にいたけど、でもずっと見てたんだ」
「階段を昇って行く俺だよな?」
「違うんだ…。いや、初めはそうだったんだけど。修が階段を昇り切ったくらいから、見え出したんだ」
「…何が」
本当はこの時、俺の心の中は聞きたくないという気持ちが大半を占めていた。でも覚は、もうこれ以上一人で抱えきれないという表情だった。
昨晩、俺の話を最後までちゃんと聞いてくれた樹と覚。あれで自分がどれだけ救われたかを考えると、俺には聞かなくてはならない義務があるように思えた。
523: 2018/02/17(土) 09:29:12.31 ID:??? AAS
何が、見えたんだ?」
覚はまた少し黙り込み、覚悟したように言った。
「影…だと思う」
「影?」
「うん。初めは修の影だと思っていたんだ。お前の周りを…動き回る影が…3つ…いや4つくらい見えた」
全身にぶわっと鳥肌が立つのを感じた。どうかこれが覚の冗談であってくれと思った。しかし、今目の前にいる覚はとてもじゃないが冗談を言っているように見えなかった。
「あそこには、俺しかいなかった」
「わかってる」
「そもそも、あの場所に人が4、5人も入って動き回れるはずない」
あの階段は人が一人通れるほどの幅しかなかった。
「わかってる。あれは人じゃない。それに、どう考えても人じゃ無理だ」
覚はぽつりと言った。
「どういうこと?」
「壁に張りついてた。蜘蛛みたいに。壁とか天井に張りついてたんだ。それで、もぞもぞ動いてて、それで、それで…」
自分の見た光景を思い出したのか、覚の呼吸が荒くなる。
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