[過去ログ] 新世界より 神栖74町 [転載禁止]©2ch.net (1001レス)
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476: 第9話 呉越同舟 2015/01/07(水) 00:38:15.66 ID:SBD9WNFv0(1/12)調 AAS
 「喰らえ!!」

 四四八は右手を突き出し、咒法の射を使ったエネルギー弾を数十発放った。

 「がぁぁぁ!!!???」

 放ったエネルギー弾は、監視員達の身体を穿ち、コロニーの会議場の壁を穴だらけにする。

 エネルギー弾をまともに受けた監視員達は、バラバラの肉塊となり、惨殺されたような無惨な死骸になっていた。

 ようやく監視員全員を倒すことに成功した。監視員達の呪力によって舞い上げられた多数の瓦礫が、術者が死んだ影響からか、
地上に落下してくる。

 「今の攻撃は……」

 「あたしだよ! 四四八くん!」

 「歩美!」

 歩美だけではなかった。世良、栄光、我堂、鳴滝、晶も全員一緒だ。

 「お前達、無事だったか!」

 「うん、とりあえず生き残ったバケネズミさん達は一通り避難させておいたから」

 「とうとう始まっちゃったね四四八くん……」

 「ああ、だがこれは俺達全員が望んだ戦いだ」

 呪力という力は実に強大かつ、変幻自在、千変万化だ。一言で呪力といってもその奥深さと応用の広さは正しく驚異としか言い様がない。単なる
力押し一辺倒の超能力とはワケが違う。そしてそれ故に惜しかった。如何に本当の神の如き力だとしても、町の連中は非力なバケネズミ達を支配する
目的で使っていることに。崇高な理念や目的、信念で使っているのではない。ただひたすらに自分達が支配する側でいたいのだ。呪力は自分達が神
でいる為の力だと言わんばかりに。
477: 第9話 呉越同舟 2015/01/07(水) 00:38:41.94 ID:SBD9WNFv0(2/12)調 AAS
  「結局あいつらのしてることは弱いもの苛めじゃない。こんな低レベルのことしててプライドはあるのかしら」

 「想像力の足りない人間が、強い力を持てばどうなるかという見本だな……」

 巨大過ぎる力は人間の思考を狂わせる。千年前に人間の中に生まれた呪力によって全てが狂いだしたのだ。生まれながらに大きな力を持って生まれて
くるのは、メリットばかりではない。それ相応にデメリットも付いてまわる。人間が手にするには余りに強すぎる呪力という病に冒されている神栖66町。
彼等は決して旧人類であるバケネズミとは交わらないだろう。

 「貴方達、自分達が何をしているのか理解してるの……!?」

 「誰だ!?」

 四四八が、声の方向に目を向けると、森から出てきた二人の男女がいた。先程の渡辺早季と、朝比奈覚だ。

 「今の社会が平和なのは私達呪力者がバケネズミを管理してるからよ! その平和な社会を壊そうとするなんて気は確か!?」

 「そうだ! お前達はケダモノの肩を持つのか!?」

 バケネズミの味方をした四四八達に対して罵声を浴びせる二人。

 「お前らなぁ! バケネズミが何で反乱起こしたのか知っているのかよ!!」

 晶が二人に喰って掛かる。

 「まさかお前達、バケネズミを人間と同じだとでも思ってるのか? あんな醜いケダモノが俺達と同じに見えるとでも?」

 「人間とは程遠くても、感情や理性があんだよ! お前達に支配されてるのが、どんだけあいつらを苦しませてるのか理解してんのか!?」

 「先に良好な関係を裏切った連中だ。反乱で町の人達が死んでいるんだぞ!! こんなことをしておいて被害者面だと? いい加減にしろ!!」

 晶と覚はお互いに頭に血が昇った状態だ。
478: 第9話 呉越同舟 2015/01/07(水) 00:46:56.19 ID:SBD9WNFv0(3/12)調 AAS
  「何を言おうと先に反乱を起こしたのはバケネズミだろうが!! こいつらのせいで死んだ町の人達に謝れ!!」

 「そうよ、どんな理由であれ、バケネズミが反乱を起こしたことによって町の人達が死んだことに変わりない。あんなことをしておいて
バケネズミに正義があるとでも?」

 喚き散らす覚と、反乱を起こしたバケネズミを一方的に悪だと糾弾する早季。

 「いい加減にしろよお前等……!」

 晶が二人に近づき、覚の胸倉を掴む。

 「いい加減にするのはお前達だ! まだ俺の言うことが理解できないのか!?」

 「……晶、よせ。こいつらに何を言っても無駄だ」

 「けど四四八!!」

 四四八はこうもバケネズミ側の事情など一切合切無視し、一方的に自分達が被害者だと言ってのける町の人間達の救いのなさに
内心甚だ憤っていた。爆発寸前のマグマが自分の体内で燻っているような感覚になる。

 朝比奈富子から聞いた千年にもわたる争いの歴史は終わり、スクィーラの生きる時代は平和なのだが、その平和の裏ではバケネズミ達が
理不尽な仕打ちを受けながら暮らしているのだ。所詮呪力を持つ者と、持たない者との差と言ってしまえばそれまでだが、歩み寄る人間の
一人や二人すらもいないとは救いようがなかった。

 これも一つの社会の形なのだろう。しかし四四八自身、目の前で苦しむバケネズミ達を「社会の形」という一言で見殺しにするなど、自分の
理念、ひいては千信館の理念に反する行いだ。「仁義八行」、この四文字は四四八自身のポリシーであり、誇りとしている考えだ。四四八から
見れば町の行う支配体制は到底見過ごすことのできないものだった。
479: 第9話 呉越同舟 2015/01/07(水) 01:00:46.32 ID:SBD9WNFv0(4/12)調 AAS
  四四八は、晶を下がらせ、覚と早季の二人に近づく。

 「もう一度問おう、本当にバケネズミと歩み寄る気はないんだな? 今回の反乱はバケネズミだけに責任があると?」

 「当たり前だ! 連中が行った非道は許せない!! 信頼を裏切ったケダモノ共!!」

 「そうよ、私達は平和に暮らしていたのに、それをバケネズミが!」

 「……もういい、黙れ」

 四四八は最早この二人の言葉は一言として聞きたくなかった。

 「何か言ったか!?」

 「何よ?」

 「黙れよ貴様等ァ!!!!!!!!!!」

 怒髪天を突いた四四八は、二人の顔面に鉄拳を叩き込む!

 「ぐべぇ!?」

 「ぎゃ!?」

 二人は、四四八の拳をモロに受け、口から折れた歯を吐き出しながら、森の木に叩きつけられた。

 「もういい、分かった。お前達に期待した俺が愚かだったみたいだ。そこまで言うのならお前達の町と戦ってやる!!!!」

 そう四四八が言うと同時に「ソレ」は聞こえてきた。
489: :第9話 呉越同舟 2015/01/07(水) 20:28:32.19 ID:SBD9WNFv0(5/12)調 AAS
  「ふっ、どうやら案の定、お前達も連中と戦うことになったようだ」

 「あぁ……、こういうのを呉越同舟って言うんだっけセージ? 敵対していた者達が共通の敵の為に団結するって、使い古されたパターンだけど、
こういうのは所謂王道って言うんだろうねぇ……」

 聞き覚えがある、忘れはしない、忘れるわけがない。地の底から響き渡る幽鬼を思わせるこの声を、この世の不協和音を全て合わせたかのような
耳障りなこの声を。

 およそ血の通った人間には到底出せないであろうこの声の主を四四八、並びに他の仲間達もよく知っているであろう声だ。

 そう、第四層起きたあの出来事を生み出した張本人、そして四四八の母である恵理子をその手で殺した男……。

 「柊聖十郎……!!」

 「久しぶりだな、四四八……」

 目の前にその男が現れた。自分の妻であり、四四八の母恵理子を何の躊躇もなく虫でも潰すかのような気軽さで、その命を奪い取った男。

 それと同時に現実の世界では天才学徒として世に知られた存在でもあるこの男こそ、夢界六勢力の一角、逆十字の首領柊聖十郎だ。

 「何をしにきた貴様……!」

 四四八は、燃え盛る憎悪と憤怒に満ちているであろう眼差しを、柊聖十郎に向けていた。
490: 第10話 いざ、戦いの時 2015/01/07(水) 20:29:20.22 ID:SBD9WNFv0(6/12)調 AAS
  「やあ、水希。君と肩を並べて戦えるなんて僕は何て幸せ者なんだろうか。これは何よりも『彼』が望んでいたことなんだよ?」

 「神野ぉ……!」

 世良も四四八と同じく今この瞬間にも暴発しそうな勢いで神野明影を憤怒に彩られた双眸で睨んでいる。

 四四八等、戦真館のメンバーにとっては正真正銘不倶戴天の敵である柊聖十郎と神野明影。この二人が四四八達に持ちかけてきたのは
『共闘』だった。

 「僕等にとっての共通の敵、即ち神栖66町を夢界にいる全勢力で叩き潰すのが僕の主のお望みさ。町の連中を潰さないと色々と面倒な
ことになるからねぇ。神栖66町、ひいてはこの時代に存在する呪力者の存在は絶対に無視できないんだよ。僕とセージだけじゃなくて、
君達にとっても最悪の事態を招きかねないんだ」

 神野明影は以前のような嘲笑的な道化師の雰囲気を控えめにして、四四八達に今回の事態の説明をした。

 「だからといってお前達と組めと言うのか……?」

 「言ってるじゃないか。肩組んで団結しなきゃ勝てる相手じゃないって」

 逆十字、べんぼうの両勢力と同盟をするということは今までにされてきたことを一時的であるが、水に流すという意味でもあった。

 簡単に同盟とは言うが、そう易々と受け入れることのできる四四八達ではなかった。確かに町の連中の行ってきた非道の数々を目の当たり
にしたのは事実だ。確かに町は強大な呪力者の集まりではあるものの、それでも戦真館メンバーだけで立ち向かうのは不可能ではないと四四八
は思っていた。

 「そう簡単に納得できるかよ!」

 晶が神野に食って掛かる。

 「それは俺も同じことだ。お前等のような凡愚共と同盟を組まされる身にもなってみろ。だが俺の道具として利用してやる分には
それもいいと思っている。精々俺の役に立ってみるがいい」

 「セージ、今回は戦いに来たんじゃないよ。彼等を煽るような真似は逆効果だと思うけどねぇ」
491: 第10話 いざ、戦いの時 2015/01/07(水) 20:29:48.29 ID:SBD9WNFv0(7/12)調 AAS
  「やあ、水希。君と肩を並べて戦えるなんて僕は何て幸せ者なんだろうか。これは何よりも『彼』が望んでいたことなんだよ?」

 「神野ぉ……!」

 世良も四四八と同じく今この瞬間にも暴発しそうな勢いで神野明影を憤怒に彩られた双眸で睨んでいる。

 四四八等、戦真館のメンバーにとっては正真正銘不倶戴天の敵である柊聖十郎と神野明影。この二人が四四八達に持ちかけてきたのは
『共闘』だった。

 「僕等にとっての共通の敵、即ち神栖66町を夢界にいる全勢力で叩き潰すのが僕の主のお望みさ。町の連中を潰さないと色々と面倒な
ことになるからねぇ。神栖66町、ひいてはこの時代に存在する呪力者の存在は絶対に無視できないんだよ。僕とセージだけじゃなくて、
君達にとっても最悪の事態を招きかねないんだ」

 神野明影は以前のような嘲笑的な道化師の雰囲気を控えめにして、四四八達に今回の事態の説明をした。

 「だからといってお前達と組めと言うのか……?」

 「言ってるじゃないか。肩組んで団結しなきゃ勝てる相手じゃないって」

 逆十字、べんぼうの両勢力と同盟をするということは今までにされてきたことを一時的であるが、水に流すという意味でもあった。

 簡単に同盟とは言うが、そう易々と受け入れることのできる四四八達ではなかった。確かに町の連中の行ってきた非道の数々を目の当たり
にしたのは事実だ。確かに町は強大な呪力者の集まりではあるものの、それでも戦真館メンバーだけで立ち向かうのは不可能ではないと四四八
は思っていた。

 「そう簡単に納得できるかよ!」

 晶が神野に食って掛かる。

 「それは俺も同じことだ。お前等のような凡愚共と同盟を組まされる身にもなってみろ。だが俺の道具として利用してやる分には
それもいいと思っている。精々俺の役に立ってみるがいい」

 「セージ、今回は戦いに来たんじゃないよ。彼等を煽るような真似は逆効果だと思うけどねぇ」
492: 第10話 いざ、戦いの時 2015/01/07(水) 20:58:44.17 ID:SBD9WNFv0(8/12)調 AAS
 スクィーラは、気がつくと自身のコロニーである塩屋虻の入り口に立っていた。あの影法師の言っていたスクィーラに課せられた使命。

 それを果たさなければならない時が来たのだ。そう、今度こそ本当の最後の戦いになるだろう。スクィーラは塩屋虻コロニーの中に入って
いった。

 コロニーの中に入ったスクィーラの目には建物は破壊され、地面にはコロニーに住むバケネズミ達の姿が飛び込んでくる。

 反乱を起こした代償、今の目の前の惨状はこの一言が全てを現していた。初めてミノシロモドキから真実を聞かされた時の衝撃は今でも
覚えている。あの時は数日間も放心状態に陥ってしまった。そして次の一ヶ月の間は自分の今の姿と祖先達のこと、今の社会構造についての疑問
と、自分達の現在の立場について大いに苦悩した。

 放心、苦悩、疑問、憤り、憎悪、やるせなさ、その他諸々のマイナス感情に支配されてしまったのだ。自分の配下のバケネズミ達も似たような
心境だっただろう。

 今のバケネズミ達の立場を考えてみれば、ミノシロモドキに記録されていた残酷な真実は到底受け入れ難いものだったのは確かだ。

 しかしやがてその真実をスクィーラは受け入れた。幾ら悩んだ所で、悲しんだ所で今の自分達の立場がひっくり返るわけではない。
この真実を町に伝えた所で分かってもらえるのだろうか? 今思えば四回目で町に直訴に行くなど自分からすれば考えられないことだった。
自分の性格を考えれば自己犠牲などするわけがない。

 スクィーラは自分の汚さを十分に理解していた。コロニーを生き残らせ、発展させる為であればそれこそどんな汚い手段も取ってきた。
利用できるものはとことん利用する。ミノシロモドキの真実を知った後も更に非道とも呼べる行いに手を染める。

 自分を産んだ母の脳を手術し、生ける屍に変えたこと。町の人間達に立ち向かう為に救世主、悪鬼の子供を育て上げたりもした。数千の部下達を
使い捨てにした。町から赤子を攫い、第二第三の悪鬼にしようとした。今更後悔などはしない、するわけがない。

 全ては自分達の立場を変える為に行ったことだ。こうでもしなければ町の連中に勝利することなど到底不可能だったから。

 しかしそのような汚い手段を用いても、結果は町に敗れた。敗れたスクィーラは裁判にかけられ、傍聴席の町民達の嘲笑と罵倒を一身に受け、
無限地獄の刑にかけられた。
493: 第10話 いざ、戦いの時 2015/01/07(水) 21:22:20.69 ID:SBD9WNFv0(9/12)調 AAS
 自分のことを理解しているように見えた渡辺早季だとて、大雀蜂の傘下のコロニーを生き残らせたものの、町の人間達が行うバケネズミに対する
非道な仕打ちの数々を見てみぬふりを続け、塩屋虻の生き残りが反乱をすれば、日本中のバケネズミのコロニーを殲滅しろという町民の声を
受け入れ、それを実行した。

 渡辺早季という女は偽善者そのものだ。反乱を起こさざるをえなかったバケネズミの立場を都合よく無視して町の人間を攻撃した行為だけを
責め続けたのだから。自分の住んでいる町がバケネズミに対してどのような仕打ちや支配を行ってきたのかをまるで見ていない。

 そうでなければ檻の中にいたスクィーラに謝罪を要求などできまい。バケネズミ達の受ける苦しみなど結局の所どうでもいいのだ。

 それはそうだろう、余りにも人間とはかけ離れすぎた自分達バケネズミなど家畜程度の見方しかしていまい。

 共存? 和解? 歩み寄る? そんなことなど絶対に不可能だ。

 旧人類はバケネズミに改造され、新人類が支配者となったことは大いに疑問が残る。そもそも旧人類が新人類を終始苦しめ、支配していたのとは
違う筈だ。暗黒時代の神聖サクラ王朝は呪力者が非能力者を支配する国であったし、呪力を使って略奪や虐殺を行う輩も多数存在していた。

 にも関わらず、新人類同士は「攻撃抑制」と「愧死機構」により殺し合いはできないのに、旧人類はバケネズミという人間とはかけ離れた姿に
変えられ、新人類は改造された旧人類を一方的に殺せるということ自体がおかしい。

 傍から見ても余りに新人類側に有利な計画だ。

 過ぎたことを悔やんでも仕方のないことだが、旧人類をバケネズミに改造した科学技術集団を見つけたら、肉片も残さずにこの世から消し去りたい
気分になる。
 
 「覚悟しろ神栖66町……。これが、これが最後の戦いだ……!」
494: 第10話 いざ、戦いの時 2015/01/07(水) 22:11:49.46 ID:SBD9WNFv0(10/12)調 AAS
 スクィーラは破壊された町の中を歩みながら改めて固く決意する。

 「待っていたぞスクィーラ、盧生に近い者よ」

 聞き覚えのある声がした。スクィーラは声の方角に向けて歩みを速めると、そこには見知った顔がいた。

 「貴方は……」

 「久しぶりだな。こうしてまた会えるのは嬉しいぞ」

 スクィーラを待っていた人間は甘粕だけではなかった。戦真館の面々、神野明影、柊聖十郎、神祇省の壇狩摩、貴族院辰宮の辰宮百合香までいた。

 「久しぶりじゃのう、スクィーラ。この戦いにはわしも参加させてもらうでよ」

 壇狩摩が蜥蜴のような目を細めながら言う。

 戦真館に入学して以降、数回程顔を合わせたことがある。その時に狩摩の配下である鬼面衆と手合わせして勝利を収めた。

 「貴方も変わりなようですね狩摩様」

 「お前、随分と様変わりしたのぉ。最初にお前の姿を見た時にはてっきり廃神(タタリ)の類かと思ったわ」

 壇狩摩と顔を合わせた時には人間の姿だったので、今のこの姿に驚かれるのは無理もないだろう。

 「お久しぶりですね、塩屋……いえ、スクィーラ殿」

 「相変わらずのようですね。辰宮様も」
496: 第10話 いざ、戦いの時 2015/01/07(水) 23:34:02.84 ID:SBD9WNFv0(11/12)調 AAS
 貴族院辰宮家の令嬢、辰宮百合香が、スクィーラに笑顔を向けて軽く会釈をする。

 百合香と、その執事である幽雫宗冬には初めて顔を合わせた際に本当の姿を見せている。

 「スクィーラ! 無事だったのか!?」

 「塩屋くん!」

 「塩屋!」

 戦真館のメンバーがスクィーラに駆け寄る。

 「皆さん……、急にいなくなって申し訳ありません」

 「気にするな、お前にはお前の事情があるんだろう」

 「柊様……」

 スクィーラは、自分の瞳を真っ直ぐと見据える四四八の眼差しは、スクィーラを家畜の類として見下している神栖66町の者達とは明らかに
違うものだった。対等な存在に向ける視線であり、しっかりと相手を見ている目だ。

 町の人間達の中に四四八達戦真館のメンバーのような者がせめて一人でもいてくれたら……。
497: 第10話 いざ、戦いの時 2015/01/07(水) 23:39:50.77 ID:SBD9WNFv0(12/12)調 AAS
  「スクィーラよ、これより我等の世界の命運を掛けた決戦を行う。遠慮は無用だ、町の連中に情けは無用だ。生き残る為に知恵を絞っていても、自分達が支配者で
あるという愉悦に浸りたいのだ。自分達の祖先と同じ過ちを繰り返していることに気付かないとは救いようがない」

 「連中が自分達の過去の行いに真摯に向き合えると思うか? そんなことなど不可能だろう。連中はひたすらに自分達こそが神という崇高な存在
だと思い込んでいるだけよ。呪力という力に「胡坐をかき」、呪力を振りかざして思う存分にバケネズミを支配し、蹂躙する。こんなことを
していて町の未来や日本の未来など語る資格などあると思うか?」

 「未来を語るならば自分達の過去の行いを振り返り、自分達の落ち度を反省してその上で未来に繋げるべきだろう。所詮は支配することでしかバケネズミと
の関係を持てない分際で未来を容易く語るとは片腹痛いわ。自分達のしてきたツケがそのまま返ってきている至極単純な道理も解せない阿呆共が君臨する未来な
ど微塵の価値すらもない」

 甘粕は熱の篭った弁舌を振るう。神栖66町はバケネズミの受ける苦しみも、反乱をするまでに彼等を追い込んでしまったという事実もまるで理解していないのだ。

 そう、ここからが本当の戦い、スクィーラにとっての最後の戦いが始まるのだ……。
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