[過去ログ] 【けいおん!!】池沼唯・お仕置き8【池沼平沢唯】 (718レス)
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645: OUTside 2011/01/10(月) 20:09:09 ID:c+0YeS7b0(3/10)調 AAS
「いや……実はムギ以外の他メンはこれから声掛けるんだ。
だからまだ、何人でお邪魔するかは分からない。
けど顧問のさわちゃんは行かないと思うぞ。
澪と梓は……ちょっと説得してみる。
今のトコ確定してんのは私とムギだけだな」
(梓ちゃんはまだしも、秋山さんとか来なくていいよ……)
 胸中に浮かぶ暗い思いを振り払うよう、努めて明るい声を出す。
「さわ子先生はお忙しい人ですから、仕方無いですよ。
吹奏楽と掛け持ちで顧問してるらしいですし。
紬先輩と律先輩だけでも、姉は喜びます」
 敢えて梓と澪を発言内容から外す事で、言外に込めた意を伝えようとした。
その二人は歓迎する対象ではないと。
その時、隣で眺めていた唯が反応を示す。
「あう?りった?りったりった?むぎちゃ?」
 律と紬は唯に対して親切に振舞う為、唯からの好感度は高かった。
「ん?唯が近くに居るのか?」
 唯の声は携帯電話のノイズキャンセル機能を覆す大きさだった為、
律にまで届いたようだ。
「あ、はい。隣に居ます」
「そっか。色々と話したいけど、電話じゃ無理そうだしな」
 その通りだった。憂をしてなお、唯と電話越しの会話は困難が伴う。
唯のような語彙や理解力に劣る者相手のコミュニケーションにおいて、
ボディランゲージの果たす役割は大きいのだ。
「でもま、どうせ今週の日曜に色々話せるからいっか。
憂ちゃん、その時何か手伝える事があれば手伝うよ」
「あ、いえ、そんな。悪いですよ」
 憂は遠慮しつつも、歯痒い思いに囚われた。
唯の乱入により梓と澪を忌避する趣旨が伝わったかどうか怪しい。
いや、伝わったところで連れて来るかもしれない。
律は鈍い人間では無い。
澪や梓が唯に対して距離を置きたい思いを抱いている事など、
見抜いている事だろう。
澪に至ってはあれだけ分かりやすい言動や行動でその思いを主張しているのだ。
仮に鈍い人間であったところで、簡単に見抜ける。
「遠慮すんなって。唯だって私の友達だし、
それに……私達軽音部、放課後ティータイムの元メンバーだしな。
脱退したらそれで関係もはい終わり、ってんじゃ寂しいだろ?
学業時間に囚われずアフタースクールであってもフォローしあう、
それが放課後ティータイムの理念でもあるしさ」
 その発言が示す通り、律は退部した唯を含めて部員全員の仲が良い部活を望んでいる。
それ故に、澪や梓の持つ唯に対する苦手意識を克服させたい、
という願望が生じているのだろう。
日曜日の訪問の目的に、それが含まれている気がした。
(でも会う度に、梓ちゃんや秋山さんとお姉ちゃんの間には亀裂が生じるばかり……。
梓ちゃんとはそこまで表立った亀裂はないけど、
それでもひしひしと感じるよ、会えば会うだけお姉ちゃんの事を嫌いになっていく様を)
 それでも律は、コミュニケーション時間の長さに比例して
仲が良くなっていくと信じているらしい。
確かに心理学上その傾向がある事を、憂も知ってはいる。
卑近な例では憂自身と和、或いは澪と律もその例だろう。
だがそれは、確定的な好悪感情が形成される前段階における話だ。
既に悪感情が形成された後にコミュニケーション時間を充てたところで、
余計その感情を増幅させるだけの結果に終わるだろう。
「そうですか。それは頼もしく思います」
 だが、殊にその事を律に告げる事はしなかった。
自分だって、唯の友達を増やしたいと思っているのだ。
特に梓は憂自身の友人である事もあり、
できれば姉に対する偏見を取り払ってもらいたいと願っていた。
646: OUTside 2011/01/10(月) 20:10:58 ID:c+0YeS7b0(4/10)調 AAS
「ははっ、頼りにしていいよ、憂ちゃん。
私もムギも同じ思いだよ」
「ありがとうございます。機会があれば甘えさせて頂きますね。
あ、そうだ。日曜日は何時頃になりますか?」
「うーん、今の予定だと11時頃予定しているけど……。
梓や澪の都合もあるから、ずれるかもしれないけど。
金曜か土曜辺りに、また連絡するよ」
「あ、はい。宜しくお願いします。ではー」
「ほーい、んじゃー」
 別れの文句を告げたのは憂だが、携帯電話を切ったのは律の方だった。
「りった、りった、きゃきゃきゃっ」
 憂は隣で嬉しそうに笑う唯の頭を撫でた。
「もう電話は切っちゃったよ」
「あうー、うーうー」
 途端、不服を表情に浮かべて訴える唯。
彼女は感情がすぐに表情や態度に出る。
「そんな顔しないの。律さんや紬さん、次の日曜に家に来てくれるみたいだよ」
「あうっ、りったやむぎちゃウチにくるー?」
「うんっ。日曜日にね。だからいい子にしてようね。
いい子にしていれば、律さんや紬さんも喜ぶから」
 不服そうな顔は一転、歓喜の色に染まる。
「あいー、ゆいいい子にするー。
さわちゃは?くる?」
 唯は物事をすぐに忘れてしまうが、山中の事は憶えていたらしい。
軽音部の顧問であり、唯も一ヶ月程の間であるがお世話になっていた。
「来ないみたい。一応誘ってはみるみたいだけど」
 すぐに唯は沈んだ顔を見せた。
唯は感情を制御する能力に著しく欠ける為、感情の起伏は相当に激しい。
「あうー。あずなんは?あずなんくるー?」
「梓ちゃんはこれから誘うみたい」
「あずなん来る、ゆいうれしい。あずなん、かわいい」
 梓の事を、唯は気に入っていた。
反面、梓は唯に好感情を有していないようではあるものの、
その事をストレートな態度で唯に見せる事は少なかった。
そのせいか、唯は梓の悪感情には気付いていないようである。
「そうだね、梓ちゃん可愛いよね」
「きゃきゃきゃ、ゆい、せんぱい。
ゆい、あずなんかわいがる。あずなんもゆい、かわいがる」
 実際には、唯は桜ヶ丘女子高等学校に一年次の5月半ば辺りまでしか籍を有していない。
よって、一学年下の梓とは高校における面識が無く、先輩後輩の関係には無かった。
だが律の指導によるものなのか、梓が唯の敬称に『先輩』を用いている為、
唯は自分を先輩だと思っているらしい。
尤も、『先輩』という言葉の意味など、唯には分からない。
「そうだね……」
 憂はふと思案顔になる。
梓は唯の事を快く思っていない。果たして、姉と会わせて大丈夫だろうか、
その懸念が拭えない。
梓もまた、大切な友人であるのだ。
同学年では彼女を除けば憂の友人など、鈴木純しか居ない。
 梓の名前を連呼して悦に入っていた唯の表情に、再び陰が差した。
憂は訝しげに問うた。
「どうしたの?お姉ちゃん」
 唯は憂の顔を見ると、
怯えたように瞳を潤ませて、震えた声で言葉を紡ぐ。
「あう……みおたは?みおたもくる?」
声だけではなく、体も小刻みに震えている。
 婉曲な態度や表現で唯を忌避する梓と違い、
澪は露骨な言動や行動で唯に対する嫌悪を示している。
そのせいか、唯は澪に怯える事が間々あった。
647: OUTside 2011/01/10(月) 20:12:11 ID:c+0YeS7b0(5/10)調 AAS
「分からない……。でも大丈夫よ。
仮に秋山さんがお姉ちゃんに何かしても……私が守るから」
 憂は唯を抱きしめた。
抱擁されて安心したのか、唯の身体の震えは止まっていた。
「あう、ういがゆいまもる。ういえらいえらい」
 頭頂部を優しく撫でる唯の手に、憂もまた幾分か気分が安らいだ。

*

 軽音部の部活は、ティータイムと音楽の練習という二つから成り立っている。
今はティータイムの最中だった。
秋山澪、琴吹紬、中野梓、そして田井中律の四人が居る。
顧問の山中さわ子も大抵はティータイムを共にしているが、
顧問の掛け持ち先である吹奏楽部の対外イベントが近い事もあり、
今日はこちらには訪れない事になっていた。
 律は部員の3人に向けて口を開いた。
「あー、ちょっと提案あるんだがいいか?」
 部員の視線が集まる。
「今週の……いや来週の、つまり次の日曜日に皆で唯ん家行こうと思うんだけど」
 唯の妹である平沢憂には昨日電話しており、
訪問の許可は得ていた。
 澪と梓が口を開きかけたが、紬が同調の声を返す方が早かった。
「いいわね。最近唯ちゃんと会ってなかったし、
軽音部の新しい一面が見えるかもしれないし」
 実際には、紬の承諾など既に得ていた。
「私は反対だな。折角の日曜日、どうせ軽音部で何かするなら、
部室で練習でもした方がいいんじゃないか?」
 案の定、澪からの反対意見が放たれる。
「そうですね。憂も介護で大変でしょうし、
私達が押しかけても負担が増えてしまいますよ」
 澪に便乗するように、梓も反対意見を重ねた。
「いや、その負担もお手伝いしたりして軽減しようかと……」
 律の反論は逆効果だった。
「知的障害者の介護って、私達みたいな素人ができるものなんですか?
そこまで甘いものだとは思えません。
素人である家族が介護している例は勿論ありますよ。
憂もそのご両親も素人でしょう、少なくとも憂は。
それでもやっているのは、血の繋がりがあるからです。
家族愛があるから、艱難も乗り越えているんです。
私達の中途半端な力では、逆に憂の足手纏いです」
 梓は先輩が相手でも、怯む事無く自論を展開する。
「あ、いや。簡易な事だよ。
憂ちゃんの足手纏いにならない程度の、さ」
「それ、意味あるんですか?
それに勘違いして欲しくないんですけど、ここ軽音部ですよ?
介護クラブでも唯ちゃん仲良しクラブでも無いんですよ?
軽音部の活動と何も関係ないじゃないですか」
「関係みたいなもの、なら一応ある。唯は元部員だ。
でもそこまで関係性強いものではないからな。部としての活動じゃないよ。
だから強制はしないよ」
 梓の剣幕にやや気圧されながら、律は柔和な態度で以って言葉を返した。
そこまで拒絶している相手を無理矢理連れて行っても、
望んだ成果は得られないだろう。
「律。日曜日は練習に充てないか?
最近は……というには随分と前からだが、お茶に時間を取られ過ぎている。
その分を取り返すためにも、な」
 強制はしない、その一言で黙り込んだ梓だったが、
代わりに今度は澪が割って入ってきた。
648: OUTside 2011/01/10(月) 20:14:07 ID:c+0YeS7b0(6/10)調 AAS
「いや……。少なくとも私は、もう憂ちゃんに行くって約束してるんだ。
だからごめん、日曜は部活できない」
 大仰な溜息を梓が吐いた。
「部活よりも、平沢家のお手伝いの方が大事ですか」
「そういう比較はしてないよ。単純に、先に約束が入ってる方を優先するだけだよ」
 それは正論であるが、澪はすぐに反駁してきた。
「約束と言っても、その約束が履行されない事で憂ちゃんに迷惑掛かるのか?
今日断れば大丈夫じゃないか」
「迷惑云々以前にさ、人としてどうよって話じゃん?」
「別に自分勝手な理由で断ろうっていうんじゃない、
部活という正当な理由があるだろ?」
(正当な理由、ね。どう見ても唯ん家行くのが嫌で、
日曜の部活提案してきたようにしか見えないけど……)
 胸中に浮かんだその考えを押し隠して、努めて明るく律は言葉を返す。
「いや、唯も楽しみにしてるだろうし。やっぱり裏切れねーじゃん?」
「なぁに、唯は知的障害入ってるんだから、すぐに忘れるさ」
 一瞬頭に血が上りかけたが、律は滾る怒りを抑えて返答した。
「そういう考えじゃ、唯が可哀想だって。
それに、練習したければやっていいからさ。
さわちゃんに話通して日曜の部室許可申請出しとくから。
梓と澪だけでも合わせられるだろ?」
 澪は引下らなかった。
「全員でやらないと、効果薄いだろ。
特にお前のドラムが走り気味だから、お前こそ練習する必要があるんだよ」
 澪は律の参加も強要してきた。
唯の家に行きたくないから部活を提案してきただけだ、
そう思っていた律は咄嗟に言葉を返す事ができなかった。
「じゃあこうしない?」
 堪りかねた紬が助け舟を出した。
「土曜日に皆で練習するの。そして日曜日は自由。
どうかしら?」
 土曜日を部活に充ててしまえば、日曜日は空く。
律や紬が唯の家に行くという事ができるのだ。
(さんきゅな、ムギ。それなら行けるはずだ。
まさか土日二日続けて部活、とまでは言わないだろーなー。
さっきまで部活に充てる日を日曜って言ってたもんな。
今更もう一日プラスしちまえば、嫌がらせめいてくるからな。
もし土曜予定入ってるとか言い出したら、
私の日曜の予定の正当性も主張できる)
「……。分かったよ、土曜日に練習しよう、梓も土曜日は大丈夫だな?」
 律の目論見通り、澪は渋々ながらも承諾した。
「あ、はい。土曜日も空いてます」
 澪が崩れたからか、梓もそれ以上反駁する事なく従った。
律は内心安堵した。
だがその安堵も、束の間でしかなかった。
「なぁ、律。という事は律やムギは日曜に唯の家に行くんだよな?
お前達だけじゃ心配だから、私も付いていくよ。
護衛ってワケじゃ無いけど、数が多い方が安全だろうからさ」
「……えっ?」
「澪先輩っ?」
 律は思わず素っ頓狂な声を上げた。
梓もまた澪の言葉が想定外だったのか、訝しげな声を上げる。
「何だ?ダメなのか?最初に唯の家に皆で行こうって提案してきたの、お前だろ?」
「あ、いや。構わないよ、歓迎歓迎」
 確かにこの展開は最上だが、胸中では怪訝の念が燻った。
649: OUTside 2011/01/10(月) 20:15:45 ID:c+0YeS7b0(7/10)調 AAS
(いや、そりゃ澪も居た方がいいよ?
軽音部の皆で仲良くしたい、っつーのが私の願いだし。
でも……おかしくね?
澪は唯の家に行くのが嫌だから、部活を日曜にやろうって提案してきたんじゃないのか?)
 それも律の思い込みで、実際には単純に練習をやりたかっただけだろうか。
(でも実際には……澪は唯に対する敵意を剥き出してるもんな。
それに練習したいだけなら、
最初っから澪の側で土曜日を提案してくれば良かっただけだもんな)
 律の疑念を他所に、澪は梓にも問うていた。
「梓は日曜、どうするんだ?」
「澪先輩も行くなら、行きますよ。私一人だけ行かないんじゃ、浮きますし」
「そうか、有難い。人数は多い方が心強いからな」
 まるで魔境にでも赴くかのような言い方だ。
唯を人間扱いしているとは言い難い澪にとっては、
平沢家はまさしく人外魔境なのかもしれない。
 律は澪の言を糾す事はしなかった。
無駄に争う必要は無い。
だが、梓の物言いは気になった。
「なぁ、梓。浮くとか浮かないとか気にしなくていいぞ?
私達はそんな事で梓を仲間外れにしたりしないからさ」
 梓は溜息を交えて言葉を返してきた。
「憂と私はクラスが一緒なんですよ」
「あ、そうだったな。ごめんごめん」
 憂の視線がある手前、唯を忌避するにしても目立つやり方は避けたいという事だろう。
梓の事情を斟酌してやる事ができなかった点に対して、
律は反省の色を顔に浮かべて素直に謝った。
 だが梓は容赦せず論難の手を放ってきた。
「ていうか”私達は仲間外れにしない”ってどういう意味ですか?
私が唯先輩を仲間外れにしている、そういう皮肉を込めた発言ですか?」
「あ、いや。そういう意味で言ったんじゃなくってさ……。
ストレートにそのままの意味でしかないよ」
「なら、省略可能な主語『私達』を敢えて使った意味は?
ずぼらで面倒くさがりな律先輩が、
省略できる言葉を意味も無く使用したりするんですか?」
 梓は重箱の隅を突きつつ、毒を含めた言葉を放つ。
流石の律も頭に血が上り怒りの声が喉下まで込み上げたが、何とか飲み込む。
だが、代わりの言葉は中々出てこない。
釈明しようにも、主語を敢えて挿入した必要性が中々頭に浮かんでこない。
そもそも深い考えから主語を略さなかったわけでは無いのだ。
 答えあぐねている律を、梓は歪んだ笑みを片頬に浮かべて眺める。
勝ち誇るようなその表情には、嘲りすら見て取れた。
「止めとけよ、梓。律だって悪気があったワケじゃないさ。
そもそも律はアイロニカルな表現なんてできない人間だよ。
人が好い奴だからさ。ま、その点を悪意ある人間……誰かさんの妹に付けこまれて、
苦労もしているみたいだが」
 言い淀む律に、澪が助け舟を出した。
その発言の中には、律に対する擁護と同時に憂に対する毒も含まれているが。
「っ。澪先輩がそういうのでしたら、不問にしときます」
 梓は大人しく引き下がった。
澪が律の味方をした事が意外だったのだろうか、表情には怪訝が浮かんでいる。
律も澪が梓を宥める側に回った事が意外ではあったが、
蒸し返す気にはなれず疑問を口にする事はしなかった。
「では、日曜日はこの4人は確定ね。
後はさわ子先生が来るかどうかだけど、律っちゃんが誘ってくれるのよね?」
「ああ、声は掛けてみるよ」
 そうは言ったが、彼女に関しては諦め半分、といったところだ。
(ダメ元で声掛けてみる、って感じだな)
期待していない律とは対照的に、
澪は期待に満ちた声音で反応を返した。
650: OUTside 2011/01/10(月) 20:17:01 ID:c+0YeS7b0(8/10)調 AAS
「山中先生も来てくれると心強いな。やはり憂ちゃんに対して一番押しが効くのは、
教師という肩書きを持つ山中先生だ。
幾ら彼女でも、教師の視線の前ではそう無茶な行動や言動はできないだろう」
(憂ちゃんを何だと思ってるんだ。そもそもお前が変な事さえ言ったりしなきゃ、
憂ちゃんは優しくて良い子だよ)
 何処までも憂を怪物扱いする澪に内心辟易する律ではあるが、
その事を声に出して場を乱す事はしない。
「顧問の先生まで呼ぶんですか?いよいよ軽音部のイベントじみて来ましたね。
まぁ、数が多い方が安心である点は澪先輩に同感ですが」
「そういうんじゃ無くってね、唯ちゃんは一ヶ月程だけ桜高に居た時期があるの。
すぐに知的障害者専門の学校に転校しちゃったんだけどね。
その桜高に居た時期に所属していたのが軽音部で、顧問がさわ子先生だったから」
「その話なら律先輩に聞いた事ありますよ」
 梓は紬の話を途中で遮った。
「あ、そう。ごめんね、梓ちゃん。また同じ話しちゃって」
「でもま、梓に話した時は側にムギ居なかったからな。
知らずに説明が重複しちゃうのは仕方が無いって。
それで、唯としてはさわちゃんにも会いたいみたいだ。
数少ない──」
その後を言う事は躊躇われたが、結局言った。
「唯に優しくした人だから……」
(でもその優しさは……。唯が学校辞めるまで、だったんだよな)
 結局、教師だから、という立場故の態度だったのだろうか。
「それで唯先輩が付け上がって、先生も呼んで欲しいとか言ってるワケですか。
社交辞令であっても優しくしちゃうと、勘違いしちゃうタイプなんですね」
 梓の発言の逐一が律の神経を逆撫でするが、
真っ向から応戦しては険悪になるだけだ。
軽く応じつつ話を逸らす事が良策だろう。
「ま、人の好意に対して素直って事だな。
さて、そろそろ練習すっか。残り時間少ないけど」
651: OUTside 2011/01/10(月) 20:17:52 ID:c+0YeS7b0(9/10)調 AAS
「律先輩が練習しようと言うなんて珍しいですね。
まぁ練習したいのは私も山々なので、嬉しい兆候ですけどね。
それが一過性ではなく、
遅々なりとも少しは成長している結果であれば心底から狂喜なんですけど。
でも残り時間少ないのは律先輩の振った話のせいですからね。
残り時間少ないけど、で終わらせるのではなく何か一言欲しいですね」
(話長引かせたのはお前が重箱の隅突くような絡み方したせいでもあるんだけどな)
 例によって、怒りは表に出さない。
「……ごめんな、中野」
「ごめんなさい、まで言えれば上々だったんですが。
そこまでの進化を期待するのは未だ酷に過ぎましたか」
「梓ちゃん、先輩にそんな事言っちゃダメよ」
「はぁ、先生をちゃん付けで呼びタメ口で話す事に比べれば可愛いものだと思いますが。
けれども確かに、相手のレベルに合わせてやる必要も無いですね。
ここは素直に私も謝っときます。えー、ごめんね、律先輩、くすっ」
 笑いを堪えるように口元を手で抑え、目で嘲ってくる。
「ああいや、いいっていいって。
私、先輩後輩関係無いフラットな付き合い方の方がやりやすいから」
 口ではそう言いつつも、律は正直梓の扱いには手を焼いていた。
入部当初はここまで突っかかってくる後輩では無かった。
もっと優しかったが、次第に律に対して豹変した態度を取るようになっていった。
紬に対しても以前に比べれば余所余所しい態度を取っているが、
律に対する辛辣な対応と比せばまだ許容の範疇ではある。
しかし、澪に対しては礼を崩す事は無かった。
(澪と私で、そこまで態度変えるもんかな。
よーく分かんないや、梓の事は。唯の方が素直で可愛らしいな)
 梓の事が頭に引っかかるが、今は練習するべき時だ。
考えるべき時ではない。
そう自分に言い聞かせると、雑念を無理矢理頭から追い払い、
音頭を取った。
「いくぞ。ワン・ツー・スリー・フォー」
 四つの楽器が見事に重なる。
部員の関係とは対照的な調和された音が、心地好く激しく室内に響き渡った。
652
(4): 2011/01/10(月) 20:18:59 ID:c+0YeS7b0(10/10)調 AAS
>>644-651
本日投下分は以上です。ではまた。
653: 2011/01/10(月) 21:44:35 ID:hmYlqMfu0(1)調 AAS
>>652
プロの物書き?
ライトノベルのような回りくどい言い回しがなく、とても読みやすい文章だ
654: 2011/01/10(月) 22:09:07 ID:gBi197R40(1)調 AAS
>>652
もったいぶらないでもっと投下してよ
655: 2011/01/10(月) 23:25:47 ID:35cy3QFD0(2/2)調 AAS
>>652
とても面白いです
梓の嫌味っぷりがなんかリアル
656: 2011/01/11(火) 00:05:43 ID:MKOG3sM/0(1/6)調 AAS
何だかんだいって律最悪だな
657: 2011/01/11(火) 00:52:02 ID:4AEiewNE0(1)調 AAS
現実では、この話の律みたいな認識こそ、多数派なんだよね。
それは健常者の自己満足に過ぎないんだけどね。
658: 2011/01/11(火) 01:07:11 ID:b7fjezbD0(1)調 AAS
そろそろ次スレの時期か
659: 2011/01/11(火) 07:11:16 ID:mFtzaROw0(1/2)調 AAS
まだはやいだろ
660
(1): 2011/01/11(火) 09:10:06 ID:qZM8uSZ20(1)調 AA×

661: 2011/01/11(火) 09:47:25 ID:xV+TMjkc0(1/6)調 AAS
>>660
太ってるww
662: 2011/01/11(火) 14:20:20 ID:d3wO6DIC0(1)調 AA×

663
(1): 2011/01/11(火) 16:32:36 ID:gssJQJnk0(1/2)調 AAS
唯はいつもいろんな人にボコられているから、唯の住んでる街の人は血気盛んな人が多いと思われる。

現実に考えて、確かに障害者を嫌う人はいるけど、暴行まで至るのはあまり少ないだろうから。
664: 2011/01/11(火) 16:52:26 ID:gssJQJnk0(2/2)調 AAS
>>663

血気盛んじゃなくて、怒りっぽい人だった

スマン
665: 2011/01/11(火) 17:13:21 ID:rNgmV2EI0(1/2)調 AAS
>>652
乙。
早く続きが読みたいな。面白くてあっという間に読んでしまう。
社会貢献も期待してます。最近池沼が酷い目にあうssが少ないのでもっとやってくれ
666
(1): 2011/01/11(火) 18:24:12 ID:SUv/jrc90(1)調 AAS
俺はむしろ最近唯が酷い目にあうssばっかでつまらんと思ってたぐらいなのに
人によってその辺の感覚は全然違うんだな
667: 2011/01/11(火) 18:56:46 ID:oJxrUF0Q0(1/3)調 AAS
俺は唯が酷いめにあうssが好きだなあ
滑稽でわらえる
668: 2011/01/11(火) 20:19:17 ID:wux95op90(1)調 AAS
律を最悪と思えなかった俺は多数派だったのか
669: 2011/01/11(火) 20:29:33 ID:5WynUnCG0(1/10)調 AAS
こんばんは、>>644-651の続きを投下します。
670: OUTside 2011/01/11(火) 20:31:04 ID:5WynUnCG0(2/10)調 AAS
 下校の門限も近いというのに、音楽室には煌々と灯りが灯っている。
軽音部の使用する部室の名称が第二音楽室である事から、
この音楽室も正式名称は第一音楽室になるのだろうが、
普段生徒も教師も単に音楽室としか呼称していない。
 この音楽室を部活動の場として使用しているのは、吹奏楽部であった。
その音楽室の前で律は一人、
演奏に混じって響く待ち人が叱咤する声を聴きながら佇んでいた。
とうに軽音部としての活動は終わり、梓達も帰宅しているはずだ。
普段は澪と一緒に帰っていたが、今日は用事があるという事で澪は先に帰らせた。
その用事が何であるか知っている紬は付き添いを申し出たが、律は断った。
「イベント近いだけあって、気合入ってるな」
 他人事のように、呟いた。
その呟きとほぼ同時に、演奏が止んだ。
続いて、叱咤と労いを巧みに織り交ぜる待ち人の声が聞こえて来る。
先ほどは演奏に混じっていた為明瞭に聞き取れなかったが、
演奏が止んだ今は一字一句聞き取れた。
(話の流れからすっと、締めのお説教と労いってトコかな。
やっと終わりか。それにしても、あの人意外と厳しいトコあんのな)
 その声が止むと同時に、部員が異口同音に口にした。
「有難うございました」と。
軽音部とは対照的に、規律の取られた部であるらしい。
顧問が同じであるにも関わらず、生じている差異は大きなものがあった。
堅苦しい雰囲気が苦手な律は、軽音部の雰囲気の方が好みだと感じた。
 扉が開かれ、部員達が吐き出されてくる。
軽音部よりも大所帯だが、律は特段気後れする事は無かった。
音楽室から出てくる面子の中に知った顔を見つけては、手を振るくらいの余裕もあった。
 一番最後に、待ち人が音楽室から出てきた。
左右には、生徒が付き添って何やら話している。
(げっ、他の人間にはあんま聞かれたくない話なんだよなぁ。
まぁでも……)
 耳を澄まして聴いてみれば、そう重要な話でも無いらしい。
笑いあってさえいる所を見れば、他愛も無い話なのだろう。
(なら、ちょっと借りるか)
「さわちゃーんっ」
 待ち人の名を愛称で呼びながら、手を挙げて近づく。
「田井中さん?こんな時間にどうしたの?」
「ちょっと部活の事で話があってさ」
 左右の生徒は訝しげな視線を送っていたが、
律の発言で軽音部の部長であると気付いたらしい。
「じゃあね、先生」
「明日も厳しくお願いします、先生」
それだけ言うと、二人連れ立って廊下の奥へと姿を消した。
 気を利かせてくれたわけでは無いだろうが、律は内心感謝していた。
部外者を交える話では無いのだから。
「部活の話ってなぁに?一人でこんな時間に訊ねてきたって事は、
何か喫緊の問題でもあったのかしら」
 不安の篭った眼差しが律に注がれる。
671: OUTside 2011/01/11(火) 20:32:32 ID:5WynUnCG0(3/10)調 AAS
「あーいや。部活の話、ってワケでも無いんだよね。
部活に無関係ってワケでも無いから、さっきは部活の事で話があるって言ったけど」
 山中の表情に険が走った。
「唯ちゃんの事?」
 深刻そうな声音で、山中は言葉を吐き出す。
想定していた以上に険しい反応に、律は少し面喰った。
「ああ、つってもそう深刻な話でも無いって。
日曜に平沢家訪問するんだけど、さわちゃんもどう?ってお誘い。
唯も会いたがってるしさ」
「それは……軽音部の部活としての行事かしら?
お誘いだけじゃなく、その申請も含めた話かしら?」
「いや、面子は全員軽音部で構成されてるけど、部としての行事じゃない。
プライベートなノリで遊びに行く、って感じ」
「なら、教師の私が参加したら変じゃない」
 今度は、律の表情に険が走る番だった。
だが怒りを抑え、努めて鷹揚に言葉を紡いだ。
「……他人行儀だぞー、さわちゃん。
付き合いは短かったとはいえ、唯とは仲良かったじゃん」
「あの時は、教師と生徒だった。仲良くして、理解してあげたいと思った。
でも今はもう」
「おっと、そこまで」
 山中の発言を途中で遮った。聴きたくなかった。
「ま、駄目なら無理強いしないよ。ほら、吹奏楽部だって忙しいんじゃん?
なら仕方ないかなーって」
 頭の後ろで手を組むと、山中に背を向けた。
(思ってた以上に、冷たい人なんだな。
あれだけ優しくしといて、転校したらはいそれまで、ですか。
まぁそりゃ教師と生徒の関係なんて元来そんなもんだろーけどさ。
さわちゃんまでそのテの人間だなんて、幻滅だし。
唯はこんなのに会いたいとか言ってるのか。
優しいお面被ったその他大勢に会いたいってか)
 歩きだす律の背に、山中の声が届く。
「待って、りっちゃん」
 律は足を止めて振り返る。
「ん?」
 もしかして、心変わりしたのだろうか。
『私も行くわ』
その言葉を期待して、山中の言葉を待った。
気の早い事に律の脳裏では、喜ぶ唯の顔が浮かんでいる。
「軽音部は全員参加するの?」
 山中の口から出た言葉は、律の想像の埒外にあるものだった。
「うん。ムギも澪も梓も」
「そう……」
 山中は考え込むように眉間に皺を寄せて腕を組んだ。
「どうしたんだよ?何か全員参加だと不都合でもあるー?」
 顔は笑顔だが、若干の棘が語勢に篭った。
深刻を湛えた山中の表情が律には気に入らなかった。
「一点だけ確認させて。プライベートなノリで遊びに行くというのなら、
強制とかは一切してないのよね?」
「当たり前だろっ」
 反射的に放たれた言葉は、思考を経ていないので遠慮のない強い口調となった。
「そう……。ならいいんだけれど」
 律の勢いに怯む事は無かったが、山中の発言は何処か歯切れが悪かった。
672: OUTside 2011/01/11(火) 20:33:41 ID:5WynUnCG0(4/10)調 AAS
「そ。ま、ムギはともかく、澪と梓は最初は渋ってたけどね。
それも休日は練習したいから、っていう理由からだったし。
だから土曜日の練習を提案して日曜フリーにしたら、
澪も着いてくるって事になった。梓も澪が来るなら行くってさ。
でさ、用事ってのは唯ん家にさわちゃん誘う事の他に、そっちでもあってさ。
要するに土曜日の第二音楽室使用許可の申請ってワケ。
これは別に明日でも良かったんだけどね」
 先ほど怒鳴るような口調で返した事を気まずく思う律は、
懇切に澪達が参加を表明した流れを説明した。
「……そう。あ、土曜日の件だけど、了解よ。
部室使っていいわ」
 山中は少し考える仕草を見せてから、許可を出した。
「あんがと。じゃ、今日はこんだけだから」
「ええ、りっちゃんも遅くまで大変ね。
部長のお仕事、大変でしょう?
部員の事にまで手が回らなくなる事もある。
そういう時はね、物事に優先順位を付けていく事も大切だと思うの。
りっちゃんは一人で、時間も有限。
何もかもをやろうとしても、結局は空回って満足な結果は引き出せないわよ。
挙句、周囲を傷つけてしまう事になるかもしれない。
あ、いや、私もタイムマネジメント下手だし、
タスクに優先順位付けて効率化図れてるワケじゃ無いんだけどね。
だからあまり偉そうな事は言えないんだけれど」
「いや、いきなり何スケールの大きい話始めてんだよ。
私は大丈夫だよ、部活も澪や紬がサポートしてくれてるし、
それほど部長の責が重圧に感じた事は無いな」
 実際に、軽音部はそれほど熱心な音楽活動をしているわけではなく、
ティータイムがかなりの比重を占めている。
律はアドバイスしてくれる山中に好感を抱きつつも、
そのアドバイスは的が外れているとも思った。
(唯も交えたHTTバンドの実現ってのは確かに高い目標だけど、
部活動とはちょっと違うしな。
純粋な部活動で難儀してるのっつったら、
梓が反抗的な事くらいか)
 律の脳裏に悩みとして浮かぶのは、後輩中野梓への対応だった。
「そう……」
 山中はまだ何か言いたそうにしていたが、
「……なら、いいわ」
結局その話はそこで打ち切られた。
 律にしても山中が何かを言いあぐねている事は察していたが、
敢えて突っ込んで引き出そうとはしなかった。
気にならないと言えば嘘になるが、
激しい剣幕で言葉を放った事を思い返して踏みとどまった。
言いたくない事を言わせようとすれば、
それは多少なりとも言動が敵対的にならざるを得ない。
短い間に特定の人間にこれ以上敵意を重ねたくは無かった。
「んじゃ、また明日ね、さわちゃん」
だから律は、この話をここで切り上げて踵を返した。
「ええ、また明日、りっちゃん」
 山中の声を背中に受けて、律は廊下を一人歩いた。
673: OUTside 2011/01/11(火) 20:34:53 ID:5WynUnCG0(5/10)調 AAS
*

 日曜日、示し合わせた時間より10分以上前に、律と澪は集合場所に到着した。
そこには既に紬が待っていた。
「あれ?早めに着くように家出たんだけど。
意外だなー、もうムギが来てたなんて。
もしかして待った?」
 律の問いに対し、紬は笑みを交えて首を振る。
「私もちょっと前に来たところよ。
りっちゃんは澪ちゃんと一緒に来たのね」
「まー、家も近いし。
後は梓だな。梓が来たら出発しよう」
 ポケットの携帯電話を意識しながら律は答える。
まだ10分強の時間はあるが、
もしかしたら梓が来ないかもしれないという思考が頭に擡げている。
昨日の練習が終わった時に待ち合わせ場所や時間の最終確認を行ったが、
その時には梓は参加する前提で話に加わっていた。
それでも梓の反抗的な態度が脳裏を過ぎり、
欠席の可能性を排除しきれないでいた。
 だがその思考も、集合時間5分前に梓が姿を見せた事で四散した。
代わりに、梓の装いに対して律の頭に疑念が浮かんだ。
それは澪や紬にしても同じらしく、怪訝を表情に走らせて梓を眺めている。
「どうかしましたか?」
 視線を向けられた梓は、飄々とした態度で問いかけてきた。
「何で上下ジャージ……」
 律が三人を代表してそう言うと、梓は溜息混じりに言葉を返してきた。
「動きやすい格好でいないと、何かあった時に危険ですから。
それに、折角お洒落しても唯先輩に汚されたんじゃ堪ったものじゃありませんから」
「へー、梓は賢いな。皆ジャージにすれば良かったかもな。
私も、せめてパーカーのフードだけでも被った方がいいかな」
 澪は感嘆の声で梓を褒めたが、律は内心快くはなかった。
(汚されたくない、ってのはまだ分かる。実際に唯は涎掛けとか汚れてる。
でも、何かあったときって、まるで唯が危険人物みたいな言い方じゃん)
 胸中に不満が燻るが、それを口に出して梓と対立する気は無かった。
まだ始まったばかりだというのに、今から険悪な雰囲気を形成するわけにはいかない。
「皆揃った事だし、行こっか」
 律は率先して歩き出した。
「そうだな、さっさと済ませよう」
「そうですね、手早くやっちゃいましょう」
 消極的な言葉を放ちながら、隣を澪が歩き、
梓が後ろに続いた。
「そうね、憂ちゃんや唯ちゃんも待ってるだろうし、急がないとね」
 二人の発言を無理矢理肯定的な意に変えて、紬が殿を務めた。
674: OUTside 2011/01/11(火) 20:36:15 ID:5WynUnCG0(6/10)調 AAS
 平沢家に着くと、律は手馴れた動作でチャイムを押した。
律一人でなら、何度も訪れた事がある家だ。
 暫くして、インターホン越しに憂の声が響いた。
「はい」
「憂ちゃん?私田井中律含めてけいおん部四名の到着だよん」
「すぐに開けますね」
 その言葉が終わってから数秒も経たずにドアが開き、
憂が明るい顔を覗かせた。
「待ってましたよ、皆さん。お姉ちゃんも喜びます。
さ、上がって下さい」
 律がドアを潜ると、玄関を上がった所で既に唯が待ち構えていた。
律の顔を認識するや否や、その表情には満面の笑みが漲った。
「おっす、唯」
「りった、りった、きゃきゃきゃっ」
 嬉しそうに両手を叩いてはしゃいでいる姿を見て、
来て良かったと律は心底から思った。
「おーう、りっただぞー。いい子にしてたかー?」
 頭を撫でてやると、擽ったそうに目を細めた。
「ゆい、いー子してたよー。りった、きゃきゃ」
「あ、りっちゃんばっかりずるーい。
唯ちゃん、お久しぶりね」
 紬も次に顔を覗かせ、柔和な笑みで以って唯に話しかけた。
「むぎちゃ、むぎちゃ、きききっ」
 紬にもまた、唯は嬉しそうな反応を見せた。
憂も唯の笑顔を見て、満足そうに微笑んだ。
次に梓が入ってきた。
「お邪魔します」
と静かな声で口にされた言葉は、唯ではなく憂に向けられている。
だが、唯は目敏く梓を見つけて、一際嬉しそうな声を張り上げる。
「あーっ、あずなんだーっ」
 叫ぶと同時に、土足にも関わらず玄関に下りて梓に抱きつく。
「きゃっ。や、止めて下さいっ」
 悲鳴を上げて引き下がる梓に配慮してか、憂が唯に離れるよう促す。
「お姉ちゃん、梓ちゃん苦しそうだよ?
離れてあげて?ね?」
 だが唯は構う事無く、梓を抱きしめる。
「あずなん、こーはいっ。かわいーこーはいっ。
いい子いい子するのー」
 抱きついた姿勢のまま、梓の頭頂部を手で撫でた。
梓は屈辱に顔を歪めて、救いを求めるように憂に視線を投げる。
「お、お姉ちゃん。駄目だよー」
「ほら、唯。梓ばっかりずるいぞー。りったと遊ぼうぜ、な?」
 憂と律が力を合わせて引き剥がして、不満気に唸る唯を慰めた。
「うー、うー。ゆい、あずなんをいい子いい子するのーっ」
「ほらほら、寂しい事言わないでりったも構ってくれよ」
「お姉ちゃん、私達と遊ぼ?ね?」
「むぅー、むふぅー」
 その不満を込めた唸りも唐突に止み、
代わりに警戒するような表情が唯の顔に浮かんだ。
675: OUTside 2011/01/11(火) 20:37:22 ID:5WynUnCG0(7/10)調 AAS
「久しぶりだな、唯」
 フードを被っていても、声の主が誰であるか分かったらしい。
唯は怯えの篭った瞳で、澪を見上げた。
「みおた……」
「そう、澪だよ。憶えてたんだな。驚いたよ。
その記憶容量を九九覚える事に費やせば良かったのに。
いや、お前の場合は足し算か?」
 嘲弄的な声と、冷たい眼差し。
それは律達には決して向けられる事の無い、剥き出された敵意。
唯の唸り声を制するには充分だった。
「秋山さん、お姉ちゃんを怯えさせるのは止めてくれませんか?」
「ん?脅かした憶えなんて無いけど。
変な因縁付けないでくれないか?」
「ああ、素が怖いんでしたね。失礼しました。
失礼ついでに言いますが、家の中に入ったのならフードを外したら如何ですか?」
「外す必要は無いな。
家の中で被り物を外すのは礼儀の問題だ。
逆に着けている必要はある。
ほら、フードじゃヘルメット代わりにもならないけど、
何も頭を庇う物が無いよりはマシだ。これは安全面や衛生面の問題だな」
 言外に告げていた。
唯や憂が礼儀を払うに値しない相手であると。
そして、唯が危険で不潔な存在であると。
 早くも火花を散らす二人に、律が慌てて割って入った。
「まーまー、クールダウン、クールダウン。
澪もさ、ほら、フード外そうぜ?」
「分かったよ」
 澪はあっさりと退き、フードを外した。
「ごめんなさい、少し熱くなり過ぎちゃいましたね」
 澪が退いたのを見て、憂も一言詫びた。
尤も、視線は澪では無く律に向けられていた。
「あ、どうぞ皆さん。靴を脱いで上がって下さい」
 律と言葉を交わす事ですっかり平常心を取り戻したのか、
憂は表情も雰囲気も一転させて皆を促した。
「あ、じゃあ、お邪魔するわね」
 紬が靴を揃えて上がった。
律達も紬に倣って後に続く。
「お姉ちゃんの部屋も私の部屋もこの人数は手狭だから、
取り敢えずリビングへと場所を移しましょう。
こちらです」
「きゃきゃきゃっ、いっぱい、いっぱい」
「そうだね、お友達が沢山来てくれて良かったね、お姉ちゃん」
「あーう」
 嬉しそうに語らう平沢姉妹に先導されて、リビングへと律達は入っていった。
676: OUTside 2011/01/11(火) 20:38:44 ID:5WynUnCG0(8/10)調 AAS
 リビングに着くと、憂から適当に座って下さいとの指示を受けた。
律や紬は特に気にせずソファに腰掛けたが、
梓はソファを丁寧に検分してから腰掛けた。
唯の涎や排泄物の跡が付いていないか確認していたのだろう。
澪に至っては更に露骨で、バッグから座布団サイズのビニールシートを取り出して、
ソファの上に置いてその上から腰掛けていた。
 梓と澪の仕草に一瞬眉根を寄せた憂だったが、
特別咎めるような事は言わなかった。
実際に、全員の着席を確認した後で憂の口から放たれた言葉は、
「ちょっと待ってて下さいね。
今、飲み物用意しますから」
という接客の際の定型句でしかなかった。
「あ、憂。私手伝うよ」
 梓が立ち上がりかけたが、憂は制するように手を振った。
「え、大丈夫だよ。
梓ちゃんはお客さんなんだから、寛いでて」
「いや、手伝うって」
 梓は半ば無理矢理立ち上がり、憂に同行しようとする。
(まさか座る時の梓の態度に憂ちゃんがキレて、
変な物入れるかもとか疑ってるのかなー?
ははっ、ありえねー。
憂ちゃんはお前と違って優しい子だから、そんな事しないよ)
 律は内心で梓を嘲ったが、
梓の懸念は別の所にあるという事を間もなく思い知る。
「あう?あずなん、ういといっしょ?
ゆいもあずなんとういに着いてくー」
 嬉しそうに立ち上がった唯を、梓が激しい剣幕で制した。
677: OUTside 2011/01/11(火) 20:39:29 ID:5WynUnCG0(9/10)調 AAS
「ダメですっ。唯先輩は座ってて下さい。
飲み物入れる時に来たら危ないです。
ムギ先輩、唯先輩の子守よろしくお願いしますね」
 どうやら、唯となるべく離れていたいが為に憂の手伝いをするらしかった。
頻繁に唯から抱きつかれる梓にしてみれば、
唯との接触は必要最小限に留めておきたいのだろう。
憂への不審故では無く、唯への嫌悪故の付き添いだったのだ。
 寧ろ、憂に対して不審を露わにした者は澪であった。
「ああ、そうだ梓。
私の飲み物は、皆と一緒のを入れてくれ」
 澪の発言には、憂に任せては変な物を飲まされかねない、
その危惧がありありと表れていた。
だからこそ梓を指定し、皆と一緒という指示を出したのだ。
律にもそれは分かったし、憂も分かったのか不機嫌な顔になった。
「だって、梓ちゃん。じゃあ、秋山さんの分は梓ちゃんにお願いするね。
秋山さんの分なんて、私すぐに忘れちゃいそうだし」
 憂は澪に向けて毒を含めた発言を放つと、
視線を律に転じて言葉を続けた。
「あ、いや、秋山さんの事はキッチンに居る間も意識から逸らせそうも無いけどね」
 律はその言葉の意味を瞬時に理解し、肯く事で了解の意を伝える。
要は、自分が居ない隙に唯を虐めないように澪を監視して欲しい、
そう言っているのだ。
 律の首肯を見て安心したのか、憂は梓を伴ってリビングから出て行った。
(各人の好悪感情が入り乱れてやがるな……)
 複雑な人間関係が齎した寸劇が眼前で展開され、
全員仲の良い軽音部という理想の高さを律は改めて思い知った。
(うっへぇ、心とか色々折れそう。
てか今のやり取りには関係無かったけど、
私自身も梓から嫌われてるっぽいしなー)
 律自身、梓を苦手に感じているのだ。
678
(2): 2011/01/11(火) 20:42:33 ID:5WynUnCG0(10/10)調 AAS
>>670-677
本日は以上です。
ではまた。
679: 2011/01/11(火) 20:43:31 ID:B97DxBqs0(1/2)調 AAS
楽しみに待ってます!
680: 2011/01/11(火) 20:53:59 ID:rNgmV2EI0(2/2)調 AAS
>>678
乙。続き待ってます

>>666
一日とかおばあちゃんとか個人的にものすごいバッドエンドだったからなー。
散々好き勝手やって、挙句の果てに人まで殺してるし。
やっぱ、好き放題した結果自分に返ってくる…。見たいなのがいいね
681: 2011/01/11(火) 21:15:46 ID:bUDTcnD+0(1/4)調 AAS
OUTsideすげーわ
早く続きみてーwwwwwwwwwwwwwwwwww
682: 2011/01/11(火) 21:18:35 ID:xV+TMjkc0(2/6)調 AAS
>>678
期待
しかしchange trickといいこの作品といい、作者は反吐が出るような人間を書くのが実にうまいな
もちろんいい意味で

他のSSより若干池沼度の低い唯(平沢憂の憂鬱くらい?)の描写とあいまって、展開が楽しみでならない
683: 2011/01/11(火) 21:44:09 ID:bUDTcnD+0(2/4)調 AAS
500KB近いな
次スレ立てるか
684: 2011/01/11(火) 21:52:33 ID:MKOG3sM/0(2/6)調 AAS
登場人物みんな歪んでるよな
そこがいい

あと、律は糞
685
(1): 2011/01/11(火) 21:56:04 ID:xV+TMjkc0(3/6)調 AAS
律は偽善的な駄目人間かもしれんが梓の方がクソだろ

内心どう思ってても、一応部の雰囲気を気づかう先輩に対してあの態度は人間のくずにゃん
686: 2011/01/11(火) 21:59:09 ID:bUDTcnD+0(3/4)調 AAS
【けいおん!!】自慰を覚えた池沼唯9【お股弄り】
2chスレ:anichara2
687: 2011/01/11(火) 22:20:49 ID:MKOG3sM/0(3/6)調 AAS
>>685
部の雰囲気を気遣うなら率先して練習するべきだし、憂との約束だって
あらかじめ部員に相談してからするベkだ

律の偽善が雰囲気を壊してる
688: 2011/01/11(火) 22:21:19 ID:oJxrUF0Q0(2/3)調 AAS
いつものしょうもない唯のssを希望
689: 2011/01/11(火) 22:24:39 ID:MKOG3sM/0(4/6)調 AA×

690
(3): 2011/01/11(火) 22:32:14 ID:mFtzaROw0(2/2)調 AAS
新しいss書き終わったんだけどとても東海出来る空気感じゃありません
691: 2011/01/11(火) 22:35:11 ID:MKOG3sM/0(5/6)調 AAS
>>690
come on!
692: 2011/01/11(火) 22:44:15 ID:xV+TMjkc0(4/6)調 AAS
>>690
せっかく新スレたったんだからそっちに投下してほしい
新スレの景気づけのためにも
693: 2011/01/11(火) 22:47:06 ID:oJxrUF0Q0(3/3)調 AAS
ぜひ新ssお願いします!
694
(4): 2011/01/11(火) 22:50:32 ID:MKOG3sM/0(6/6)調 AA×

695: 2011/01/11(火) 23:00:36 ID:B97DxBqs0(2/2)調 AAS
>>694
ツボですwwwwwwwwwww
696: 2011/01/11(火) 23:19:53 ID:bUDTcnD+0(4/4)調 AAS
>>694
きめぇええええええwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
697: 2011/01/11(火) 23:22:27 ID:xV+TMjkc0(5/6)調 AAS
>>690
せっかく新スレたったんだからそっちに投下してほしい
新スレの景気づけのためにも
698: 2011/01/11(火) 23:24:02 ID:0VipZtPl0(1)調 AAS
>>694
ぎゃあああああwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
699: 2011/01/11(火) 23:25:17 ID:xV+TMjkc0(6/6)調 AAS
すまん誤爆orz
700: 2011/01/12(水) 01:20:29 ID:jIirpCTO0(1)調 AAS
>>694
こ れ は 酷 い wwwwwwwww
701: 2011/01/12(水) 03:24:03 ID:noUvQ+QY0(1/2)調 AAS
172 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2011/01/10(月) 05:11:45 ID:adkHjB1/0
2010年12月25日
エロけいおん!アホな子「平沢唯」をお仕置きセックス
外部リンク[html]:www.elog-ch.com

「け○おん!ゆ○」でお仕置きSEX
学校で追試を受けている唯が、あろう事か試験中に居眠り。
それを見た先生がお仕置きセックスするという動画です。
アホな子の唯は先生におっぱいを触られても抵抗せず、ごめんなさいと謝るばかり。
しだいに先生のイタズラはエスカレートし、黒タイツを破かれて制服のまま犯されてしまいます。
アホなので状況がわかっているのか怪しいですが、チ○ポをハメられて悦んでいるようなので
たぶん大丈夫でしょう。
702
(1): 2011/01/12(水) 12:09:34 ID:2Q8vINDg0(1/4)調 AA×

703: 2011/01/12(水) 12:25:06 ID:GiXSK6ib0(1)調 AAS
食べられたwww
704: 2011/01/12(水) 13:23:43 ID:192XF6h90(1)調 AAS
>>702
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
705: 池沼唯育成ゲーム 2011/01/12(水) 16:30:19 ID:lTahvJwT0(1/2)調 AAS
このゲーム(SS)は、みんなの選択によって話の流れが変わっていくゲーム(SS)だ!

プロローグ

4月…
平沢唯(15)はここ、なかよし学校(養護学校)に入学した。
実は彼女は、知的障害者なのだ。しかも重度の。
そのせいか、中学時代はいつも虐められていた。(とは言っても、唯本人はそんな自覚無いのだがw)

しかし、唯が虐められていた原因は障害者という理由だけではなかった。
それは、唯本人が怠惰な性格をしていたからだ。
そのため、生まれてから全然進歩が無い…
だから、近所では「池沼唯」と言われて嫌われていた。

果たして、池沼唯こと平沢唯は無事学校を卒業して、社会に貢献できるのだろうか!?

※ちなみに1回につき、1ヶ月で進みます。

4月
入学式…

憂「お姉ちゃん、学校生活楽しみ?」

唯1「あーう!(^q^)」
 2「うーい!あいすー!(^q^)」
 3「ブブブーー!」 「うーい!ウンチもらちたー!("q")」

>>710
706: 2011/01/12(水) 18:37:08 ID:PIaI1o/g0(1)調 AA×

707: 2011/01/12(水) 18:48:46 ID:zuGxfNEg0(1)調 AAS
おもしろそうじゃないか
708
(1): 修正しました 2011/01/12(水) 19:51:37 ID:2Q8vINDg0(2/4)調 AA×

709: 修正しました 2011/01/12(水) 19:54:39 ID:2Q8vINDg0(3/4)調 AA×

710
(2): 2011/01/12(水) 20:16:47 ID:ePRisN6w0(1/4)調 AAS
唯 「ブブブーー!」 「うーい!ウンチもらちたー!("q")」
711: 2011/01/12(水) 20:17:44 ID:ePRisN6w0(2/4)調 AAS
>>708
糞出しすぎwww
なので>>710は選択肢3で
712: 2011/01/12(水) 21:16:11 ID:kS0y9fuQ0(1)調 AAS

713: 池沼唯育成ゲーム 2011/01/12(水) 21:17:08 ID:lTahvJwT0(2/2)調 AAS
「ブブブーー!」

…………

唯のウンチを漏らした音が、体育館中に響き渡る!
先生や他の生徒達は唖然としていた。

唯「うーい!ウンチもらちたー!("q")」

ぷっつん…

憂の何かが切れた!

憂「入学早々何やっとんじゃ!池沼さんよ!!」ぺシーン!

唯「びぃえーーん!うーいぶったー!("q")」

憂の評価が2下がった!(12月(年末)の時点で憂の評価が10以下の場合、施設行きになるので注意してね!)

入学式の後、1年生のクラスで自己紹介をすることになった。

先生「じゃあ次は平沢さんね」

唯「あーう!(^q^)」

唯1「ひらさわゆいです!すきなものはアイスです!(^q^)」
 2「ひらさわゆいです!しゅみはうんたんです!(^q^)」
 3「ひらさわゆいです!とくいなことはぶたさんになることです!ゆいぶたさん!ブーブー!(^oo^)」

>>716
714: 2011/01/12(水) 21:35:17 ID:ePRisN6w0(3/4)調 AAS
新しい試みでおもろいけど
もうちょっとでこのスレ終わるぜ
あと6KBだから大きいAA2、3個で終わる

次スレでやろうぜ
715: 2011/01/12(水) 23:23:10 ID:CdoHuuIF0(1)調 AA×

716
(2): 2011/01/12(水) 23:26:24 ID:noUvQ+QY0(2/2)調 AA×

717: 修正しました 2011/01/12(水) 23:26:40 ID:2Q8vINDg0(4/4)調 AA×

718: 2011/01/13(木) 00:06:03 ID:ePRisN6w0(4/4)調 AA×

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