[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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553: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/19(土)23:55 ID:rN7N/hbG0(1/7) AAS
>>552
ありがとうございます!

そんな戦いも終盤です…
554: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/19(土)23:56 ID:rN7N/hbG0(2/7) AAS
 私は、私達は、正しかったのだろうか。そう問い続けた日々だった。

 飛び交う戦火の中へ身を投じた若かりし頃の私。サイド3独立の気運もあったに違いないが、心の何処かではそれすら些細に思っていたのではないか。
 実際地球へ降下する事が決まった時、その必要性に疑問を抱かなかった訳ではない。
 早期終戦のタイミングを逸したジオン公国があそこで止まることは出来なかっただけの事だと、誰もが気づいていた筈だ。サイド3での独立すらままならずに地球など治められるはずがない。

 それでも戦ったのは何故か。ひとえに、私自身の存在証明の為だった。しかしそれは大きな矛盾を孕む。
 戦いを終える為の戦いに自らの存在価値を見出しってしまったのだから、始めから破綻した思考だったのだ。その矛盾は、常に私の背後で重くのしかかっていた。
 だが、ある意味で国を失っても尚また舞い戻った戦場で、私は真に守るべきものと出会ったのかもしれない。
 だからこそ、私は目の前の敵を許せないのではないか。まるで自らの所業を煮詰めた様な存在に見えた。戦う為に戦う事が許されてしまうなら、人は過ちを繰り返し続けるだろう。
 連邦が産み、ジオンが育ててしまったその螺旋の芽は、今ティターンズによって花開こうとしている。
555: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/19(土)23:57 ID:rN7N/hbG0(3/7) AAS
 朦朧とした意識の中、私は自分が立ち上がっていることに気付く。敵に機体を貫かれたときコックピットの直撃こそ免れたものの、その熱で顔と左半身が焼かれていた。
 余りの痛みに一瞬意識が飛んだが、気が張っているのか今は不思議と気にならない。だが機体を動かしているのは殆ど無意識だった。アドレナリンに任せて破損したヘルメットを投げ捨てる。
 次々に溢れ出てくる言葉は敵に向けたものだったのか、自分に向けたものだったのか。最早私には判断はつかなかった。今はただ斬る。それだけだ。
556: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/19(土)23:57 ID:rN7N/hbG0(4/7) AAS
 中尉が投げた発振器にはインコムのワイヤーを幾重かに重ねたものが絡みついている。見てみるとガンダムは瓦礫で身動きが取れなくなっているようだ。
 後少しの抜け出す余力が無いというところか。私は中尉の意図を察した。
『…まぁ構わん。斬り捨てればいいだけの事』
 ジムクゥエルが少しずつ近づいてくる。敵も歩くだけの力しか残っていないと思われた。
『引けッッッ!!大尉!!!』
 合図を受けて、マラサイの持てる力全てを込めてワイヤーを引いた。膝が、肩が、火花を散らしながら砕ける。
 ワイヤーにしがみついていたガンダムが、自機バーニアも最大限に使うことでどうにか瓦礫の中から脱した。ガンダムはそのままバーニアの勢いで敵に向かって突っ込んだ。
557: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/19(土)23:58 ID:rN7N/hbG0(5/7) AAS
『…!!貴様ら!!』
 狼狽える敵。しかしそれ以上の隙は与えない。
『くたばれッッッ!!!』
 左脚を踏ん張ると、中尉はアッパーで敵の腹を殴りつけた。その威力は凄まじく、敵のジムクゥエルが浮き上がるほどだった。殴りつけた反動でガンダムの腕は関節からバラバラになっていく。
『ぐおおお…ッッッ』
 敵が唸る。だがそれでも尚バーニアを吹かし体勢を整えた。そのままガンダムに向かってサーベルを投げつける。
 焦りとダメージで狙いがコックピットから逸れたのだろうが、それでもサーベルはガンダムの頭部に直撃した。
 センサーやカメラの中枢を破壊されたガンダムは、そのまま後ろへと仰向けで倒れる様にして沈黙する。
558: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/19(土)23:58 ID:rN7N/hbG0(6/7) AAS
『行け!!!』
 動けない機体から中尉の声がこだまする。絡むワイヤーを振り払ったマラサイは、四肢を引き摺りながらも敵目掛けて飛び上がった。
 敵よりも高い高度を取ったところで推進剤が切れ、半ば落下するように振りかぶる。
『さあ殺せ!!!お前達が正しいという証明の為に!!!』
 敵の叫びは、最早私の心には届かなかった。さらば、私の運命の螺旋。戦うことでしか自分の価値を見い出せなかった過去の私がそこに居た。
 ビームサーベルを最大出力で発振すると、機体の全重量を乗せるようにしてそれを振った。
 残った1本のサブアームを自機の腕と重ねるように防御姿勢を取った敵機だったが、それごとまとめて腹部から真っ二つに切り裂く。
 片膝を突いて着地したマラサイの背後で、敵機は爆散した。
559: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/19(土)23:59 ID:rN7N/hbG0(7/7) AAS
 敵機の破片や瓦礫が飛び散る中、マラサイは静かに目を閉じる様に、モノアイの灯りを落とした。
『…やったのか』
 力のない中尉の声が遠くで聞こえる。それを最後に機体のシステムも落ちてしまった。辺りは暗闇に包まれた。
「すまない…私は…」
 瞼がどんどん重くなっていく。眠くて堪らない。溶けていく思考の中、見えるはずもない空の切れ間がただただ眩しかった。
 右手でそれを遮る様にしながら、白く拡がっていく光の中へと、私は静かに意識を手放した。

64話 運命の螺旋
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